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特許7241682重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/86 20060101AFI20230310BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C07D233/86
C07B59/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019520547
(86)(22)【出願日】2016-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 CN2016110978
(87)【国際公開番号】W WO2018072300
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-10-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】201610901502.0
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515329931
【氏名又は名称】ヒノバ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユアンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】デュー ウー
(72)【発明者】
【氏名】クウァン トンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲン シー
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】木村 敏康
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104341352(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104803918(CN,A)
【文献】特表2013-520519(JP,A)
【文献】特表2015-501820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D233/86
CAplus/RECISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法であって、
【化1】
式中、R、Rが単独でC~Cのアルキル基から選択され、
、R、Rいずれも重水素であり
式(I)の化合物と式(II)の化合物を原料とし、置換反応により式(III)の化合物を得るステップ(1)と、
式(III)の化合物のカルボキシ基をエステル化して、式(IV)の化合物を調製し、RがC~Cのアルキル基から選択されるステップ(2)と、
式(IV)の化合物と式(V)の化合物とが環化結合することにより、式(VI)の化合物を得るステップ(3)と、
式(VI)の化合物のエステル基を除去し、反応により式(VII)の化合物を得るステップ(4)と、
式(VII)の化合物および式(VIII)の化合物を原料とし、アミド縮合反応により式(IX)が示す重水素化イミダゾリジンジオン化合物を得るステップ(5)と、
を含むことを特徴とする、重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法。
【請求項2】
Rがメチル基であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、反応の温度が40~120℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、反応の温度が-10~60℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、反応の温度が40~90℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(4)において、反応の温度が-10~70℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(5)において、反応の温度が-10~40℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
上記ステップ(3)の環化結合において、溶媒がジメチルスルホキシド、またはジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルによる混合溶媒であり、ジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルとの体積比が50:1~1:10であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
上記ジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルとの体積比が1:2であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(4)において、上記反応が、アルカリ金属水酸化物から選択される塩基の存在下で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
上記塩基の水酸化物が、LiOH、KOH、またはNaOHから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(5)において、上記アミド縮合反応が、イソプロピルクロロホルメート、N,N’-カルボニルジイミダゾール、またはHATUから選択される縮合剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(1)において、上記置換反応が、塩基性環境下で、Cu、CuIおよびN,N-ジメチルグリシンを触媒として行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(2)において、上記カルボキシ基をエステル化した試薬が、ヨウ化メチルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法であって、
【化2】
式中、R、R、Rいずれも重水素であり、R、R10が単独でC~Cのアルキル基から選択され、
式(A)の化合物および式(B)の化合物を原料とし、アミド縮合反応により式(C)が示す化合物を得るステップ(1)と、
式(C)の化合物および式(D)の化合物を原料とし、置換反応により式(E)の化合物を得るステップ(2)と、
式(E)の化合物のカルボキシ基をエステル化して、式(F)の化合物を調製し、R’がC~Cのアルキル基から選択されるステップ(3)と、
式(F)の化合物と式(G)の化合物とが環化結合することにより、式(IX)が示す重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を得るステップ(4)と、
を含むことを特徴とする、重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法。
【請求項16】
R’がメチル基であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物合成の分野に関するものであり、具体的には重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(prostatic carcinoma prostati、英語略称PCa)は、男性の生殖系に最もよく見られる悪性腫瘍であって、年齢とともに発症が増加するが、その発症率には顕著な地域差があり、欧米地域における発症率が比較的高い。男性の癌による死亡では、肺癌に次いで前立腺癌が第2位となっている。これまで、前立腺癌は、我が国の腫瘍スペクトルにおいては小疾患に属するため、十分に重要視されてこなかったが、社会の発展とともに進む高齢化、都市化、飲食構造の西洋化、検査技術の進歩に伴い、我が国における前立腺癌の発症率は、明らかに上昇傾向にある。天津医大第2病院と、天津市前立腺癌診療連携グループが2011年に行った外国の前立腺癌に関する調査によれば、天津市の前立腺癌の発症率は、20年間で5倍と急速に上昇しつつあり、また、泌尿器系腫瘍による入院患者のうち、前立腺癌の患者の占める割合は13.4%に達し、従来の希少癌からよく見られる腫瘍へと変化したことが示されている。全国の男性の前立腺癌の発症率にも、同じ傾向が見られる。
【0003】
アンドロゲン受容体(androgen receptor)は、ダルトン分子量が11万のリガンド依存性のトランス転写調節タンパク質である。アンドロゲンは、前立腺癌の病原となって癌が悪化していく過程において、例えばにきび、男性脱毛症など、男性ホルモンに関連する疾患において非常に重要な役割を果たす。
【0004】
従来の前立腺癌の治療方法は、手術、または、ビカルタミド(bicalutamide、Casodex)のようなアンドロゲン受容体(androgen receptor)拮抗薬による治療である。しかし、2~4年の治療後には、患者に薬物耐性が生じるとともに、ビカルタミドには癌の増殖を刺激する副作用があるため、ビカルタミドの使用を停止しなければならなくなる。目下、ビカルタミドと同じ結合標的を有する化合物、及び、他の市販用の転移性前立腺癌治療薬がすでに開発されている。例えば、特許CN201280052853.9である。
【0005】
そのうち、以下の化合物は、比較的良好な薬学的性質を有する。
【式1】
【0006】
【0007】
しかしながら、特許CN201280052853.9により開示されている合成経路では、カップリングされたイソチオシアネートとイソブチロニトリルが使用されている。この方法の主な欠点としては、最終工程において所望の生成物の収率が11%しかないことがある。そして、この経路では、商業的に購入可能な原料の段階から考えると、総収率は3.5%しかない。しかも、各中間化合物の精製において、時間と手間のかかるカラムクロマトグラフィーを行う必要があるため、トータルの生産時間が長くなり、工業的な大規模生産には不利である。
【0008】
従って、生産効率を向上させ、生産コストを低下させるためには、合成方法を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法を提供する。
【式2】
【0010】
【0011】
式中、R、Rが単独でC~Cのアルキル基から選択されるか、またはRとRとが結合して共同で環を形成し、R、R、Rが、水素または重水素から選択され、且つこれらのうちの少なくとも1つが重水素から選択されており、式(I)の化合物と式(II)の化合物を原料とし、置換反応により式(III)の化合物を得るステップ(1)と、式(III)の化合物のカルボキシ基をエステル化して、式(IV)の化合物を調製し、RがC~Cのアルキル基から選択されるステップ(2)と、式(IV)の化合物と式(V)の化合物とが環化結合することにより、式(VI)の化合物を得るステップ(3)と、式(VI)の化合物のエステル基を除去し、反応により式(VII)の化合物を得るステップ(4)と、式(VII)の化合物および式(VIII)の化合物を原料とし、アミド縮合反応により式(IX)が示す重水素化イミダゾリジンジオン化合物を得るステップ(5)と、を含む。
【0012】
さらには、RおよびRはいずれもメチル基である。
【0013】
さらには、R、R、Rはいずれも重水素である。
【0014】
さらには、Rはメチル基である。さらには、上記ステップ(3)の環化結合において、溶媒はジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルによる混合溶媒である。
【0015】
さらには、上記ジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルとの体積比は1:2である。
【0016】
さらには、ステップ(4)において、上記反応は、アルカリ金属水酸化物から選択される塩基の存在下で行われる。
【0017】
さらには、上記塩基の水酸化物は、LiOH、KOH、またはNaOHから選択され、好ましくはLiOHである。
【0018】
さらには、ステップ(5)において、上記アミド縮合反応は、イソプロピルクロロホルメート、N,N'-カルボニルジイミダゾール、またはHATUから選択される縮合剤の存在下で行われる。
【0019】
さらには、ステップ(1)において、上記置換反応は、塩基性環境下で、Cu、CuIおよびN,N-ジメチルグリシンの存在下で行われる。
【0020】
さらには、ステップ(2)において、上記カルボキシ基をエステル化した試薬は、ヨウ化メチルである。
【0021】
上記C~Cのアルキル基とは、C、C、C、Cのアルキル基、すなわち、1~4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基などが挙げられる。
【0022】
従来の方法に比べて、本発明は、以下のような明らかな利点を有する。
(1)本発明の方法は、総収率が40%に達し、従来の方法の総収率3.5%よりも大幅に優れている。
(2)本発明の方法は、操作が簡便で、カラムクロマトグラフィーを必要とせず、簡単な沈殿または結晶によって生成物の精製を可能にする。
(3)本発明の方法は、毒性が極めて高い試薬であるアセトンシアノヒドリンの使用を避けており、よりクリーンで安全である。
【0023】
発明者は、研究開発の過程において、別の合成経路を見つけ、初期に重水素源を導入することによって、トリデューテロメチルベンズアミドを得て、銅の触媒下で、2-メチルアラニンと縮合させて、2-(3-フルオロ-4-(トリデューテロメチルカルバモイル)フェニルアミノ)-2-メチルプロピオン酸を得て、プロピオン酸をメチル化し、最後に、-イソチオシアン酸-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルとが環化結合することにより、標的化合物を得た。
【0024】
すなわち、本発明は、重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を調製する方法をさらに開示する。
【式3】
【0025】
【0026】
式中、R、R、Rが、水素または重水素から選択され、且つこれらのうちの少なくとも1つが重水素であり、R、R10が単独でC~Cのアルキル基から選択されるか、または、RとR10とが結合して共同で環を形成し、式(A)の化合物および式(B)の化合物を原料とし、アミド縮合反応により式(C)が示す化合物を得るステップ(1)と、式(C)の化合物および式(D)の化合物を原料とし、置換反応により式(E)の化合物を得るステップ(2)と、式(E)の化合物のカルボキシ基をエステル化して、式(F)の化合物を調製し、R'がC~Cのアルキル基から選択されるステップ(3)と、式(F)の化合物と式(G)の化合物とが環化結合することにより、式(IX)が示す重水素化イミダゾリジンジオン系化合物を得るステップ(4)と、を含む。
【0027】
さらには、RおよびR10はいずれもメチル基である。
【0028】
さらには、R、R、Rはいずれも重水素である。
【0029】
さらには、R'はメチル基である。
【0030】
本経路は、前出の経路よりも合成ステップが1つ少ない。但し、重水素化試薬は高価であるため、重水素源の導入が早すぎて、数ステップを経るうちに合成収率が損なわれると、最終ステップで重水素源を導入する場合に比べて、全体のコストが高くなってしまう。
【0031】
本発明における英語の略語に対応する正式名称を以下の表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換または変更を行うことができる。
【0034】
以下、実施例という形の「発明を実施する形態」によって、本発明の上記内容をさらに詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施例1 4-(1-カルボキシ-1-メチル-エチルアミノ)-2-フルオロ-安息香酸の調製
【式4】
【0036】
【0037】
反応釜に窒素ガスを充填し、N,N-ジメチルホルムアミド(20L)、水(2L)、4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸(2.0kg)、2-メチルアラニン(2.82kg)、N,N-ジメチルグリシン(474g)、炭酸カリウム(6.31kg)、銅粉(116g)、及びヨウ化第一銅(348g)を添加した。窒素ガスによる保護のもと、110℃で16時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷まし、氷水(30L)を加え、6N冷塩酸を滴下してpH=4~5に調節し、酢酸エチルで2回(20L*2)抽出して、有機相を合わせ、水(5L)で1回洗浄した。有機相を乾燥するまで濃縮し、ジクロロメタン(15L)を加えてスラリー化し、濾過し、40℃で真空乾燥させて、標的化合物を1.797kg得た。収率は81.7%であった。
【0038】
実施例2 2-フルオロ-4-[(1-メトキシ-2-メチル-1-オキソ-2-プロピル)アミノ]安息香酸メチルの調製
【式5】
【0039】
【0040】
反応釜に、N,N-ジメチルホルムアミド(7L)、4-(1-カルボキシ-1-メチル-エチルアミノ)-2-フルオロ-安息香酸(750g)及び炭酸カリウム(973g)を添加した。その後、ヨウ化メチル(945g)を加え、40℃で一晩撹拌した。反応液に水(20L)を滴下し、撹拌・晶析を行って、濾過し、50℃で16時間真空乾燥させ、標的化合物を787g得た。収率は93.9%であった。
【0041】
HNMR(DMSO,400MHz):1.49(6H,s),3.64(3H,s),3.75(3H,s),6.16(1H,dd,J2.1,14.5),6.31(1H,dd,J2.1,8.8),7.16(1H,s),7.63(1H,t,J8.8)
実施例3 4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ安息香酸メチルの調製
【式6】
【0042】
【0043】
反応釜に窒素ガスを充填し、2-フルオロ-4-[(1-メトキシ-2-メチル-1-オキソ-2-プロピル)アミノ]安息香酸メチル(1.70kg)、4-イソチオシアニル-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(2.88kg)、ジメチルスルホキシド(1.7L)及び酢酸イソプロピル(3.4L)を添加した。窒素ガスによる保護のもと、83℃で40時間撹拌し、反応させた。反応液を、溶媒が蒸発しなくなるまで減圧濃縮し、メタノール(8.5L)を滴下して、0~5℃で撹拌・晶析を行い、濾過し、フィルタケーキをメタノールですすぎ、50℃で真空乾燥させ、標的化合物を2.3kg得た。収率は78.2%であった。
【0044】
HNMR(DMSO,400MHz):1.57(6H,s),3.91(3H,s),7.43(1H,dd,J1.8,8.3),7.53(1H,dd,J1.8,11.2),8.08-8.12(2H,m),8.30(1H,d,J1.5),8.42(1H,d,J8.2)。.
上記方法に従って、発明者が反応溶媒についてスクリーニングした結果を、以下の表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
溶媒がジメチルスルホキシドと酢酸イソプロピルとの混合溶媒であるとき、収率が高いことがわかる。
【0047】
実施例4 4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ安息香酸の調製
【式7】
【0048】
【0049】
反応釜に窒素ガスを充填し、4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ安息香酸メチル(1.70kg)及びテトラヒドロフラン(3.4L)を添加し、溶解して清澄化するまで撹拌した。水酸化リチウム水溶液(水酸化リチウム一水和物0.46kg+水3.4L)を滴下し、40℃で1h保温した。室温まで冷まし、水(3.4L)を加え、塩水でpH=1~2に調節した。酢酸エチル13.6Lを添加して抽出した。有機相を水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、約3.4Lの溶媒になるまで減圧濃縮して、n-ヘプタン(10.2L)を滴下し、1h撹拌・晶析を行って、濾過し、真空乾燥させて、標的化合物を1.31kg得た。収率は79.4%であった。
【0050】
HNMR(DMSO,400MHz):1.57(6H,s), 7.39(1H,dd,J1.6,8.3),7.48(1H,dd,J1.6,11.0),8.06-8.12(2H,m),8.32(1H,d,J1.2),8.42(1H,d,J8.2),13.58(1H,brd)。
【0051】
上記方法に従って、発明者が塩基についてスクリーニングした結果を、以下の表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムは、実質的に反応しておらず、塩基がアルカリ金属水酸化物から選択された場合に、収率が高いことがわかる。そのうち、LiOHは、収率が高いだけでなく、高い純度を維持しており、LiOHが好ましい。
【0054】
実施例5 4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ-N-トリデューテロメチルベンズアミドの調製
【式8】
【0055】
【0056】
反応釜に、4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ安息香酸(1.30kg)及びジクロロメタン(13L)を添加し、撹拌して溶解させた。N,N-カルボニルジイミダゾール(0.7kg)を、回数を分けて添加し、2h撹拌した。トリエチルアミン(1.2L)と重水素化メチルアミン塩酸塩(302g)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液を、1N水酸化ナトリウム水溶液(13L)、1N塩酸(13L)、水(6.5L)を順に用いて抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ちょうど固体が析出するまで減圧濃縮し、メチルtert-ブチルエーテル(3.9L)とn-ヘプタン(3.9L)を順に滴下し、1h撹拌・晶析を行い、濾過して、粗生成物を得た。粗生成物を無水エタノール(13L)で加熱して、清澄化するまで溶解させ、0~5℃で2h撹拌・晶析を行って、濾過した。50℃で8時間真空乾燥させ、白色固体の標的化合物を1.09kg得た。収率は80.7%、HPLC純度は99.8%であった。
【0057】
HNMR(DMSO,400MHz):1.57(6H,s), 7.36(1H,dd,J1.2,8.2),7.46(1H,dd,J1.2,10.7),7.82(1H,t,J8.2),8.11(1H,d,J8.2),8.32(1H,s),8.42(1H,d,J8.2),8.46(1H,s)。
【0058】
上記方法に従って、発明者が縮合剤についてスクリーニングした結果を、以下の表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
イソプロピルクロロホルメートまたはCDIを縮合剤とした場合に、反応して収率が高くなることがわかる。そのうち、イソプロピルクロロホルメートは冷まして混合無水物とする必要があり、操作にあたっては装置に対する要求が高いため、総合的に考えると、縮合剤はCDIが好ましい。
【0061】
実施例6
【式9】
【0062】
【0063】
(1) 4-イソチオシアニル-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルの調製
【式10】
【0064】
【0065】
反応釜に窒素ガスを充填し、4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)アニリン(200g)、n-ヘプタン(450mL)、水(500mL)を添加した。そして、撹拌して懸濁液を生成し、硫黄ホスゲン(148g)を滴下した。40℃で16時間撹拌した。静置して分液し、水相をn-ヘプタン(500mL)で1回抽出して、有機相を合わせ、減圧濃縮して溶媒を除去し、減圧蒸留して、標的化合物を220g得た。収率は89.8%であった。
【0066】
HNMR(DMSO,400MHz):7.52(1H,dd,J1.7,8.3),7.60(1H,d,J1.7),7.87(1H,d,J8.3)
(2) 4-ブロモ-2-フルオロ-N-トリデューテロメチルベンズアミドの調製
【式11】
【0067】
【0068】
反応釜に、4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸(50g)及びジクロロメタン(500mL)を添加し、撹拌を開始した。N,N-カルボニルジイミダゾール(73.9g)を、回数を分けて添加し、2h撹拌した。トリエチルアミン(95.5mL)と重水素化メチルアミン塩酸塩(30.8g)を添加し、4時間撹拌した。反応液を、1N水酸化ナトリウム水溶液(500mL)、1N塩酸(500mL)、水(250mL)を順に用いて抽出した。有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して類白色の固体を得て、8時間真空乾燥させ、白色の固体の標的化合物を44.0g得た。収率は82.2%であった。
【0069】
(3) 2-(3-フルオロ-4-(トリデューテロメチルカルバモイル)フェニルアミノ)-2-メチルプロピオン酸の調製
【式12】
【0070】
【0071】
反応釜に窒素ガスを充填し、N,N-ジメチルホルムアミド(680mL)、水(70mL)、4-ブロモ-2-フルオロ-N-トリデューテロメチルベンズアミド(150g)、2-メチルアラニン(199.8g)、N,N-ジメチルグリシン(33.3g)、炭酸カリウム(446.1g)、銅粉(8.3g)及びヨウ化第一銅(24.6g)を添加した。窒素ガスによる保護のもと、110℃で16時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷まし、水(1.8L)を加え、酢酸エチルで不純物を抽出した。クエン酸でpH=3~4に調節し、5℃で1時間晶析させ、濾過し、真空乾燥させて、標的化合物を100g得た。収率は60.9%であった。
【0072】
(4) 2-(3-フルオロ-4-(トリデューテロメチルカルバモイル)フェニルアミノ)-2-メタクリル酸メチル
【式13】
【0073】
【0074】
反応釜に、N,N-ジメチルホルムアミド(630mL)、2-(3-フルオロ-4-(トリデューテロメチルカルバモイル)フェニルアミノ)-2-メチルプロピオン酸(90g)、水(2.2mL)、及び炭酸カリウム(58.7g)を添加した。その後、ヨウ化メチル(26.5mL)を添加し、40℃で3時間撹拌した。反応液に酢酸(6.4mL)を添加し、60℃で1時間撹拌して、水(1.35L)を滴下し、室温まで冷まし、撹拌して晶析させ、濾過し、真空乾燥させて、標的化合物を91g得た。収率は95.2%であった。
【0075】
(5) 4-{3-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオ-1-イミダゾリジニル}-2-フルオロ-N-トリデューテロメチルベンズアミド
【式14】
【0076】
【0077】
反応釜に窒素ガスを充填し、2-(3-フルオロ-4-(トリデューテロメチルカルバモイル)フェニルアミノ)-2-メタクリル酸メチル(27.1g)、4-イソチオシアニル-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(45.6g)、ジメチルスルホキシド(27.1mL)及び酢酸イソプロピル(54.2mL)を添加した。窒素ガスによる保護のもと、83℃で24時間撹拌して反応させた。反応液を、溶媒が蒸発しなくなるまで減圧濃縮して、メタノール(135.5mL)を滴下し、0~5℃で1時間撹拌・晶析を行って、濾過し、粗生成物を得た。粗生成物を無水エタノール(250mL)で加熱溶解させ、0~5℃で1時間撹拌・晶析を行って、濾過し、フィルタケーキを50℃で真空乾燥させ、標的化合物を34.5g得た。収率は73.9%であった。
【0078】
以上のように、本発明の方法は、従来の方法に比べて、より安全で、溶媒の消費量がより少なく、廃棄物と環境への影響を最小限に抑え、生産サイクルを短縮して、処理量、及び方法による総収率を高めるものであり、市場での将来性が見込まれる。