(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】複数の層に白金族金属を有するASC
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20230310BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230310BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230310BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230310BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230310BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J29/76 ZAB
B01J35/04 301L
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2019553555
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 US2018024784
(87)【国際公開番号】W WO2018183457
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-09
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ジン
(72)【発明者】
【氏名】グリーナム, ニール
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, アンドリュー
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0367937(US,A1)
【文献】特開平11-138005(JP,A)
【文献】特開平11-300211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0367973(US,A1)
【文献】特表2017-505226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子状物質、炭化水素、CO、およびアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品であって、
a.軸長を規定する入口端および出口端を有する基材、
b.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、
c.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティング
を含み、
a.第1の触媒コーティングが、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、
b.第2の触媒コーティングが、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する、触媒物品。
【請求項2】
微小粒子状物質、炭化水素、CO、およびアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品であって、
a.軸長を規定する入口端および出口端を有する基材、
b.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、
c.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティング
を含み、
a.第1の触媒コーティングが、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、
b.第2の触媒コーティングが、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する、触媒物品。
【請求項3】
微小粒子状物質、炭化水素、CO、およびアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品であって、
a.軸長を規定する入口端および出口端を有する基材、
b.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、
c.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティング
を含み、
a.第1の触媒コーティングが、基材の軸長全体を覆っており、
b.第2の触媒コーティングが、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する、触媒物品。
【請求項4】
微小粒子状物質、炭化水素、CO、およびアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品であって、
a.軸長を規定する入口端および出口端を有する基材、
b.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、
c.1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティング
を含み、
a.第1の触媒コーティングが、基材の軸長全体を覆っており、
b.第2の触媒コーティングが、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する、触媒物品。
【請求項5】
第1および/または第2のコーティング中の白金族金属が、白金、パラジウム、またはその組合せを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
第1および/または第2のコーティング中のモレキュラーシーブがゼオライトを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
第1および/または第2のコーティング中の卑金属が、銅、鉄、またはその組合せを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
第1のコーティングおよび第2のコーティングがそれぞれ、ゼオライト上に分散させた白金およびゼオライト上に分散させた銅を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
第1のコーティングが、第2のコーティングよりも高い白金族金属ローディングを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
第1のコーティングおよび第2のコーティングが、等価の白金族金属ローディングを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
第1のコーティングが、
0g/m
3
(0g/ft
3
)より大きく
353.1g/m
3
(10g/ft
3
)以下、または
35.3g/m
3
(1g/ft
3
)から
176.6g/m
3
(5g/ft
3
)の白金族金属ローディングを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
第2のコーティングが、
0g/m
3
(0g/ft
3
)より大きく
176.6g/m
3
(5g/ft
3
)以下、または
35.3g/m
3
(1g/ft
3
)から
105.9g/m
3
(3g/ft
3
)の白金族金属を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
第1のコーティング中の白金族金属と第2のコーティング中の白金族金属との重量比が、20:1から1:3、20:1から1:1、10:1から1:2、10:1から1:1、6:1から1:1、3:1から1:1、または3:0.5から1:1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
第1の触媒コーティングおよび第2の触媒コーティングが重複して、3つの区域、すなわち、主にNOxを除去するための第2の触媒コーティングからなる第1区域、主にアンモニアをN
2に酸化するための第1の触媒コーティングおよび第2の触媒コーティングからなる第2区域、並びに主に一酸化炭素および炭化水素を酸化するための第1の触媒コーティングからなる第3区域を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
基材が、押出成形されたSCRを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
第1のコーティングおよび第2のコーティングが、基材の出口端に位置する、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
a.微小粒子状物質、NOx、および一酸化炭素を含む排気流を放出するディーゼルエンジン、
b.請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒物品(「ASC」)
を含む、放出処理システム。
【請求項18】
ASCの上流にSCR触媒をさらに含む、請求項17に記載の放出処理システム。
【請求項19】
SCR触媒がASCと近位結合している、請求項18に記載の放出処理システム。
【請求項20】
SCR触媒およびASC触媒が単一の基材上に位置し、SCR触媒が基材の入口側に位置し、ASC触媒が基材の出口側に位置する、請求項18に記載の放出処理システム。
【請求項21】
微小粒子状物質、NOx、および一酸化炭素を含む排気流を請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、微小粒子状物質、NOx、および一酸化炭素の放出を低減させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
ディーゼルエンジン、定置ガスタービン、および他のシステムにおける炭化水素の燃焼は、NO(一酸化窒素)およびNO2(二酸化窒素)を含む窒素酸化物(NOx)を除去するために処理しなければならない排気ガスを生じ、形成されるNOxの大部分はNOである。NOxは、人におけるいくつかの健康問題を引き起こし、スモッグの形成や酸性雨を含めたいくつかの有害な環境影響も引き起こすことが知られている。排気ガス中のNOxからの人々や環境の影響をどちらも軽減させるために、これらの望ましくない成分を、好ましくは他の侵害性または毒性の物質を生じない方法によって排除することが望ましい。
【0002】
希薄燃焼エンジンおよびディーゼルエンジンで生じる排気ガスは一般に酸化的である。NOxは、NOxを窒素元素(N2)および水へと変換する選択的触媒還元(SCR)として知られる方法において、触媒および還元剤を用いて選択的に還元する必要がある。SCR方法では、ガス状の還元剤、典型的には無水アンモニア、アンモニア水、または尿素を、排気ガスが触媒と接触する前に排気ガス流に加える。還元剤が触媒上に吸収され、ガスが触媒添加基材を通過または通り越す際にNOxが還元される。NOxの変換を最大限にするために、多くの場合、理論量より多くのアンモニアをガス流に加える必要がある。しかし、過剰なアンモニアの大気への放出は人々の健康や環境に有害となるであろう。さらに、アンモニアは、特にその水性形態では腐食性である。排気触媒の下流となる排気流領域におけるアンモニアと水の凝縮は、排気システムを損傷させる可能性がある腐食性の混合物をもたらす場合がある。したがって、排気ガス中のアンモニアの放出は排除するべきである。多くの慣用の排気システムでは、アンモニアを窒素に変換することによってそれを排気ガスから除去するために、アンモニア酸化触媒(アンモニアスリップ触媒または「ASC」としても知られる)をSCR触媒の下流に設置する。アンモニアスリップ触媒の使用は、典型的なディーゼル走行サイクルと比較して90%を超えるNOx変換を可能にすることができる。
【0003】
車両の走行サイクルにおいてアンモニア変換が広範囲の温度で起こり、最小限の窒素酸化物および亜酸化窒素副産物が形成される、SCRによるNOx除去および窒素への選択的アンモニア変換をどちらも提供する触媒が望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一部の実施形態によると、微小粒子状物質、炭化水素、CO、およびアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品は、(a)軸長を規定する入口端および出口端を有する基材、(b)1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、ならびに(c)1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティングを含む。
【0005】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第2の触媒コーティングは、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する。
【0006】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第2の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する。
【0007】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆っており、第2の触媒コーティングは、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する。
【0008】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆っており、第2の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する。
【0009】
一部の実施形態では、第1および/または第2のコーティング中の白金族金属は、白金、パラジウム、またはその組合せを含む。第1および/または第2のコーティング中のモレキュラーシーブは、ゼオライトを含み得る。第1および/または第2のコーティング中の卑金属は、たとえば、銅、鉄、またはその組合せを含み得る。
【0010】
一部の実施形態では、第1のコーティングおよび第2のコーティングはそれぞれ、ゼオライト上に分散させた白金およびゼオライト上に分散させた銅を含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、第2のコーティングよりも高い白金族金属ローディングを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングおよび第2のコーティングは、等価の白金族金属ローディングを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングは、約0g/ft3から約10g/ft3、または約1g/ft3から約5g/ft3の白金族金属ローディングを含み得る。一部の実施形態では、第2のコーティングは、約0g/ft3から約5g/ft3、または約1g/ft3から約3g/ft3の白金族金属を含み得る。一部の実施形態では、第1のコーティング中の白金族金属と第2のコーティング中の白金族金属との重量比は、約20:1から約1:3、約20:1から約1:1、約10:1から約1:2、約10:1から約1:1、約6:1から約1:1、約3:1から約1:1、または約3:0.5から約1:1である。
【0011】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングおよび第2の触媒コーティングは重複して、3つの区域、すなわち、主にNOxを除去するための第1区域、主にアンモニアをN2に酸化するための第2区域、および主に一酸化炭素および炭化水素を酸化するための第3区域を形成する。
【0012】
一部の実施形態では、基材は、押出成形されたSCRを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングおよび第2のコーティングは、基材の出口端に位置する。
【0013】
放出処理システムは、微小粒子状物質、NOx、および一酸化炭素を含む排気流を放出するディーゼルエンジン、ならびに本明細書において記載される触媒物品(「ASC」)を含み得る。一部の実施形態では、システムは、ASCの上流にあるSCR触媒を含み得る。一部の実施形態では、SCR触媒は、ASCと近位結合している。一部の実施形態では、SCR触媒およびASC触媒は単一の基材上に位置し、SCR触媒は基材の入口側に位置し、ASC触媒は基材の出口側に位置する。
【0014】
排気流からの放出を低減させる方法は、排気流を本明細書において記載される触媒物品と接触させることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のSCR触媒を有する、先行技術の触媒の立体配置を示す図である。
【
図2】底層が出口端から入口端に広がり、基材の全長未満を覆っており、上層が入口端から出口端に広がり、基材の全長未満を覆っている、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図3】底層が出口端から入口端に広がり、基材の全長未満を覆っており、上層が入口端から出口端に広がり、基材の全長未満を覆っている、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図4】底層および上層がそれぞれ基材の全長に広がる、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図5】底層が基材の長さに広がり、また、上層が入口端から出口端に広がり、基材の全長未満を覆っている、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図6】底層が出口端から入口端に広がり、基材の長さ未満を覆っており、上層が基材の長さに広がる、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図7】SCR触媒の下流に位置する、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図8】押出成形されたSCR触媒上に位置する、底層のASCおよびSCR触媒ならびに上層のASCおよびSCR触媒を有する、触媒の立体配置を示す図である。
【
図9】参照用触媒および本発明の実施形態の触媒についてのNH
3変換を示す図である。
【
図10】参照用触媒および本発明の実施形態の触媒についてのNOxの再形成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の触媒は、SCRおよびASCの機能性を有する触媒物品に関する。触媒物品は、1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第1の触媒コーティング、ならびに、1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属を含む、第2の触媒コーティングを有し得る。従来、このような触媒物品は、上層または前方層においてSCRの機能性を、および底層または後方層においてASCの機能性を含んでいる。驚くべきことに、モレキュラーシーブ上の白金族金属を上層および底層の両方に含めることが、NH3変換に対する様々な利点および利益、ならびに所望の選択性および触媒活性を有する区域化されたASC立体配置を提供することが見出された。
【0017】
本発明の触媒物品は、軸長を有する基材上に様々な立体配置を有し得る。一部の実施形態では、触媒物品は、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っている、第1の触媒コーティング、および、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する、第2の触媒コーティングを有する。
【0018】
一部の実施形態では、触媒物品は、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っている、第1の触媒コーティング、および、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する、第2の触媒コーティングを有する。
【0019】
一部の実施形態では、触媒物品は、基材の軸長全体を覆っている第1の触媒コーティング、および、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する、第2の触媒コーティングを有する。
【0020】
一部の実施形態では、触媒物品は、基材の軸長全体を覆っている第1の触媒コーティング、および、基材の軸長全体を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する、第2の触媒コーティングを有する。
【0021】
一部の実施形態では、基材は、押出成形されたSCRである。押出成形されたSCR基材では、第1および第2のコーティングは、基材の出口端上に位置し得る。
【0022】
アンモニア酸化触媒
本発明の触媒物品は、アンモニアスリップ触媒(「ASC」)とも呼ばれる1つまたは複数のアンモニア酸化触媒を含んでいてもよい。過剰なアンモニアを酸化し、それが大気へと放出されることを防止するために、1つまたは複数のASCが、SCR触媒と共に、またはその下流に含まれていてもよい。一部の実施形態では、ASCは、SCR触媒と同じ基材に含まれていてもよい、またはSCR触媒とブレンドし得る。ある特定の実施形態では、アンモニア酸化触媒材料は、NOxまたはN2Oの形成の代わりに窒素へのアンモニアの酸化を助けるように選択され得る。好ましい触媒材料としては、白金、パラジウム、またはその組合せが含まれる。アンモニア酸化触媒は、金属酸化物上に担持される白金および/またはパラジウムを含み得る。アンモニア酸化触媒は、ゼオライトなどのモレキュラーシーブ上に支持された白金および/またはパラジウムを含み得る。一部の実施形態では、触媒は、それだけには限定されないがアルミナを含めた高表面積担体上に配置する。
【0023】
一部の実施形態では、ASC組成物は、モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属を含む。ASC組成物は、モレキュラーシーブに基づくASC調製物を含み得るか、またはそれから本質的になり得る。
【0024】
一般に、モレキュラーシーブに基づくASC調製物は、アルミノシリケート骨格(たとえば、ゼオライト)、アルミノホスフェート骨格(たとえば、AlPO)、シリコアルミノホスフェート骨格(たとえば、SAPO)、ヘテロ原子含有アルミノシリケート骨格、ヘテロ原子含有アルミノホスフェート骨格(たとえばMeAlPO、式中Meは金属である)、またはヘテロ原子含有シリコアルミノホスフェート骨格(たとえばMeAPSO、式中Meは金属である)を有するモレキュラーシーブを含み得る。ヘテロ原子(すなわち、ヘテロ原子含有骨格中のもの)は、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、およびその任意の2つ以上の組合せからなる群から選択され得る。ヘテロ原子は金属であることが好ましい(たとえば、上記のヘテロ原子含有骨格のそれぞれが、金属含有骨格であり得る)。
【0025】
モレキュラーシーブに基づくASC調製物が、アルミノシリケート骨格(たとえば、ゼオライト)またはシリコアルミノホスフェート骨格(たとえば、SAPO)を有するモレキュラーシーブを含むかまたはそれから本質的になることが好ましい。
【0026】
モレキュラーシーブがアルミノシリケート骨格を有する(たとえば、モレキュラーシーブがゼオライトである)場合、典型的には、モレキュラーシーブは、5から200(たとえば、10から200)、10から100(たとえば、10から30または20から80)、たとえば、12から40または15から30の、シリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。一部の実施形態では、適切なモレキュラーシーブは、>200、>600、または>1200のSARを有する。一部の実施形態では、モレキュラーシーブは、約1500から約2100のSARを有する。
【0027】
典型的には、モレキュラーシーブは、微孔質である。微孔質のモレキュラーシーブは、直径が2nm未満の孔を有する(たとえば、「微孔質」のIUPACの定義に従う[Pure & Appl.Chem.、66(8)、(1994年)、1739~1758頁)を参照])。
【0028】
モレキュラーシーブに基づくASC調製物は、小孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが8個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、中孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが10個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、もしくは大孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが12個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、またはその2つ以上の組合せを含み得る。
【0029】
モレキュラーシーブが、小孔のモレキュラーシーブである場合、小孔のモレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、LTA、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZON、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR、およびITEからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。さらに好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHAおよびAEIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。小孔のモレキュラーシーブは、FTC CHAによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブは、FTC AEIによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC CHAによって表される骨格を有する場合、ゼオライトは菱沸石であり得る。
【0030】
モレキュラーシーブが、中孔のモレキュラーシーブである場合、中孔のモレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEIおよびWEN、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI、およびSTTからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。さらに好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FERおよびMFIからなる群から選択されるFTC、特にMFIによって表される骨格構造を有する。中孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC FERまたはMFIによって表される骨格を有する場合、ゼオライトは、フェリエ沸石、シリカライト、またはZSM-5であり得る。
【0031】
モレキュラーシーブが、大孔のモレキュラーシーブである場合、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、-RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、およびVET、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR、およびOFFからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。さらに好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、BEA、MOR、およびMFIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。大孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC BEA、FAU、またはMORによって表される骨格を有する場合、ゼオライトは、ベータゼオライト、フォージャス沸石、ゼオライトY、ゼオライトX、またはモルデン沸石であり得る。
【0032】
一般に、モレキュラーシーブは、小孔のモレキュラーシーブであることが好ましい。
【0033】
一部の実施形態では、白金族金属は、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%から約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%から約6重量%、白金族金属および担体の全重量の約1.5重量%から約4重量%、白金族金属および担体の全重量の約10重量%、白金族金属および担体の全重量の約0.5重量%、白金族金属および担体の全重量の約1重量%、白金族金属および担体の全重量の約2重量%、白金族金属および担体の全重量の約3重量%、白金族金属および担体の全重量の約4重量%、白金族金属および担体の全重量の約5重量%、白金族金属および担体の全重量の約6重量%、白金族金属および担体の全重量の約7重量%、白金族金属および担体の全重量の約8重量%、白金族金属および担体の全重量の約9重量%、または白金族金属および担体の全重量の約10重量%の量で担体上に存在する。
【0034】
一部の実施形態では、触媒物品は、第1の触媒コーティング中のASC組成物および第2の触媒コーティング中のASC組成物を含み得る。一部の実施形態では、第1および第2の触媒コーティング中のASC組成物は、互いに同一の調製物を含み得る。一部の実施形態では、第1および第2の触媒コーティング中のASC組成物は、互いに異なる調製物を含み得る。
【0035】
SCR触媒
本発明のシステムは、1つまたは複数のSCR触媒を含んでいてもよい。
【0036】
一部の実施形態では、触媒物品は、第1の触媒コーティング中のSCR触媒組成物および第2の触媒コーティング中のSCR触媒組成物を含み得る。一部の実施形態では、第1および第2の触媒コーティング中のSCR触媒組成物は、互いに同一の調製物を含み得る。一部の実施形態では、第1および第2の触媒コーティング中のSCR触媒組成物は、互いに異なる調製物を含み得る。
【0037】
本発明の排気システムは、アンモニアまたはアンモニアへと分解可能な化合物を排気ガス中に導入するための注入器の下流に配置されているSCR触媒を含んでいてもよい。SCR触媒は、アンモニアまたはアンモニアへと分解可能な化合物を注入するための注入器の直接下流に配置し得る(たとえば、注入器とSCR触媒との間に介在する触媒が存在しない)。
【0038】
一部の実施形態では、SCR触媒は、基材および触媒組成物を含む。基材はフロースルー基材またはフィルター基材であり得る。SCR触媒がフロースルー基材を有する場合、基材はSCR触媒組成物を含み得る(すなわち、SCR触媒は押し出しによって得られる)、またはSCR触媒組成物は基材上に配置もしくは担持され得る(すなわち、SCR触媒組成物は薄め塗膜方法によって基材上に塗布される)。
【0039】
SCR触媒がフィルター基材を有する場合、これは、本明細書中「SCRF」の略記で言及する選択的触媒還元フィルター触媒である。SCRFはフィルター基材および選択的触媒還元(SCR)組成物を含む。本出願全体にわたって、SCR触媒の使用への言及は、必要に応じてSCRF触媒の使用も含むと理解される。
【0040】
選択的触媒還元組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒調製物、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物、またはその混合物を含み得る、またはそれから本質的になり得る。そのようなSCR触媒調製物は当該技術分野で周知である。
【0041】
選択的触媒還元組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒調製物を含み得る、またはそれから本質的になり得る。金属酸化物に基づくSCR触媒調製物は、耐火性酸化物上に担持されるバナジウムもしくはタングステンまたはその混合物を含む。耐火性酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、およびその組合せからなる群から選択され得る。
【0042】
金属酸化物に基づくSCR触媒調製物は、チタニア(たとえばTiO2)、セリア(たとえばCeO2)、およびセリウムとジルコニウムの混合酸化物または複合酸化物(たとえばCexZr(1-x)O2、式中、x=0.1から0.9、好ましくはx=0.2から0.5である)からなる群から選択される耐火性酸化物上に担持される、バナジウム酸化物(たとえばV2O5)および/またはタングステン酸化物(たとえばWO3)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。
【0043】
耐火性酸化物がチタニア(たとえばTiO2)である場合、好ましくは、バナジウム酸化物の濃度は(たとえば金属酸化物に基づくSCR調製物の)0.5から6重量%である、および/またはタングステン酸化物(たとえばWO3)の濃度は5から20重量%である。より好ましくは、バナジウム酸化物(たとえばV2O5)およびタングステン酸化物(たとえばWO3)は、チタニア(たとえばTiO2)上に担持される。
【0044】
耐火性酸化物がセリア(たとえばCeO2)である場合、好ましくは、バナジウム酸化物の濃度は(たとえば金属酸化物に基づくSCR調製物の)0.1から9重量%である、および/またはタングステン酸化物(たとえばWO3)の濃度は0.1から9重量%である。
【0045】
金属酸化物に基づくSCR触媒調製物は、チタニア(たとえばTiO2)上に担持されるバナジウム酸化物(たとえばV2O5)および任意選択でタングステン酸化物(たとえばWO3)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。
【0046】
選択的触媒還元組成物は、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物を含み得る、またはそれから本質的になり得る。モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物はモレキュラーシーブを含み、これは任意選択で遷移金属交換したモレキュラーシーブである。好ましくは、SCR触媒調製物は遷移金属交換したモレキュラーシーブを含む。
【0047】
一般に、モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物は、アルミノシリケート骨格(たとえばゼオライト)、アルミノホスフェート骨格(たとえばAlPO)、シリコアルミノホスフェート骨格(たとえばSAPO)、ヘテロ原子含有アルミノシリケート骨格、ヘテロ原子含有アルミノホスフェート骨格(たとえばMeAlPO、式中Meは金属である)、またはヘテロ原子含有シリコアルミノホスフェート骨格(たとえばMeAPSO、式中Meは金属である)を有するモレキュラーシーブを含み得る。ヘテロ原子(すなわち、ヘテロ原子含有骨格中のもの)は、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、およびその任意の2つ以上の組合せからなる群から選択され得る。ヘテロ原子は金属であることが好ましい(たとえば、上記ヘテロ原子含有骨格のそれぞれが金属含有骨格であり得る)。
【0048】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物は、アルミノシリケート骨格(たとえばゼオライト)またはシリコアルミノホスフェート骨格(たとえばSAPO)を有するモレキュラーシーブを含む、またはそれから本質的になることが好ましい。
【0049】
モレキュラーシーブがアルミノシリケート骨格を有する(たとえばモレキュラーシーブがゼオライトである)場合、典型的には、モレキュラーシーブは、5から200(たとえば10から200)、好ましくは10から100(たとえば10から30もしくは20から80)、たとえば12から40、より好ましくは15から30のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。
【0050】
典型的には、モレキュラーシーブは微孔質である。微孔質のモレキュラーシーブは直径2nm未満の孔を有する(たとえば、「微孔質」のIUPACの定義に従う[Pure & Appl.Chem.、66(8)、(1994年)、1739~1758頁)を参照])。
【0051】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物は、小孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが8個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、中孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが10個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、もしくは大孔のモレキュラーシーブ(たとえば、最大環サイズが12個の四面体原子であるモレキュラーシーブ)、またはその2つ以上の組合せを含み得る。
【0052】
モレキュラーシーブが小孔のモレキュラーシーブである場合、小孔のモレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、LTA、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZON、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR、およびITEからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、小孔のモレキュラーシーブは、CHAおよびAEIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。小孔のモレキュラーシーブは、FTC CHAによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブは、FTC AEIによって表される骨格構造を有し得る。小孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC CHAによって表される骨格を有する場合、ゼオライトは菱沸石であり得る。
【0053】
モレキュラーシーブが中孔のモレキュラーシーブである場合、中孔のモレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、-SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEIおよびWEN、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI、およびSTTからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、中孔のモレキュラーシーブは、FERおよびMFIからなる群から選択されるFTC、特にMFIによって表される骨格構造を有する。中孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC FERまたはMFIによって表される骨格を有する場合、ゼオライトはフェリエ沸石、シリカライト、またはZSM-5であり得る。
【0054】
モレキュラーシーブが大孔のモレキュラーシーブである場合、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、-RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、およびVET、またはその2つ以上の混合物および/もしくは連晶からなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有し得る。好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR、およびOFFからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。より好ましくは、大孔のモレキュラーシーブは、BEA、MOR、およびMFIからなる群から選択されるFTCによって表される骨格構造を有する。大孔のモレキュラーシーブがゼオライトであり、FTC BEA、FAU、またはMORによって表される骨格を有する場合、ゼオライトはベータゼオライト、フォージャス沸石、ゼオライトY、ゼオライトX、またはモルデン沸石であり得る。
【0055】
一般に、モレキュラーシーブは小孔のモレキュラーシーブであることが好ましい。
【0056】
モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物は、好ましくは遷移金属交換したモレキュラーシーブを含む。遷移金属は、コバルト、銅、鉄、マンガン、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、およびレニウムからなる群から選択され得る。
【0057】
遷移金属は銅であり得る。銅交換したモレキュラーシーブを含有するSCR触媒調製物の一利点は、そのような調製物が優れた低温NOx還元活性を有することである(たとえば、これは鉄交換したモレキュラーシーブの低温NOx還元活性よりも優位であり得る)。本発明のシステムおよび方法には任意の種類のSCR触媒を含め得るが、銅を含むSCR触媒(「Cu-SCR触媒」)は、硫酸化の効果に対して特に脆弱であるため、本発明のシステムからより素晴らしい利点を経験し得る。Cu-SCR触媒調製物は、たとえば、Cu交換したSAPO-34、Cu交換したCHAゼオライト、Cu交換したAEIゼオライト、またはその組合せを含んでいてもよい。
【0058】
遷移金属は、モレキュラーシーブの外部表面上のエキストラ骨格部位上、またはモレキュラーシーブのチャネル、空洞、もしくはケージ内に存在し得る。
【0059】
典型的には、遷移金属交換したモレキュラーシーブは、遷移金属交換した分子の0.10から10重量%の量、好ましくは0.2から5重量%の量を含む。
【0060】
一般に、選択的触媒還元触媒は、選択的触媒還元組成物を0.5から4.0g/in3、好ましくは1.0から3.0g/in3の合計濃度で含む。
【0061】
SCR触媒組成物は、金属酸化物に基づくSCR触媒調製物およびモレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物の混合物を含み得る。(a)金属酸化物に基づくSCR触媒調製物は、チタニア(たとえばTiO2)上に担持されるバナジウム酸化物(たとえばV2O5)および任意選択でタングステン酸化物(たとえばWO3)を含み得る、またはそれから本質的になり得る。(b)モレキュラーシーブに基づくSCR触媒調製物は遷移金属交換したモレキュラーシーブを含み得る。
【0062】
SCR触媒がSCRFである場合、フィルター基材は好ましくはウォールフローフィルター基材モノリスであり得る。ウォールフローフィルター基材モノリス(たとえばSCR-DPFのもの)は、典型的には1平方インチあたり60から400個の細胞(cpsi)の細胞密度を有する。ウォールフローフィルター基材モノリスは100から350cpsi、より好ましくは200から300cpsiの細胞密度を有することが好ましい。
【0063】
ウォールフローフィルター基材モノリスは、0.20から0.50mm、好ましくは0.25から0.35mm(たとえば約0.30mm)の壁厚(たとえば平均内部壁厚)を有し得る。
【0064】
一般に、未コーティングのウォールフローフィルター基材モノリスは、50から80%、好ましくは55から75%、より好ましくは60から70%の空隙率を有する。
【0065】
未コーティングのウォールフローフィルター基材モノリスは、典型的には少なくとも5μmの平均孔径を有する。平均孔径は10から40μm、たとえば15から35μm、より好ましくは20から30μmであることが好ましい。
【0066】
ウォールフローフィルター基材は対称的な細胞設計または非対称的な細胞設計を有し得る。
【0067】
一般に、SCRFでは、選択的触媒還元組成物はウォールフローフィルター基材モノリスの壁内に配置される。さらに、選択的触媒還元組成物は、入口チャネルの壁上および/または出口チャネルの壁上に配置され得る。
【0068】
第1および第2の触媒コーティングおよび立体配置
本発明の実施形態は、1)モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属、および2)モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属の組合せを含み得る。一部の実施形態では、組合せは、ブレンドまたは混合物を含み得る。一部の実施形態では、モレキュラーシーブ上に分散させた白金族金属は、ASCの機能性などの酸化的機能性を提供し得、上記のアンモニア酸化触媒の節において記載したように調製物され得る。一部の実施形態では、モレキュラーシーブ上に分散させた卑金属は、SCR触媒の機能性を提供し得、上記のSCR触媒の節において記載したように調製物され得る。
【0069】
一部の実施形態では、第1の触媒コーティングおよび第2の触媒コーティングは、重複して、3つの区域、すなわち、主にNOxを除去するための第1区域、主にアンモニアをN2に酸化するための第2区域、ならびに主に一酸化炭素および炭化水素を酸化するための第3区域を形成する。
【0070】
一部の実施形態では、第1および/または第2のコーティング中の白金族金属は、白金、パラジウム、またはその組合せを含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のコーティング中のモレキュラーシーブは、ゼオライトを含み得る。一部の実施形態では、第1および/または第2のコーティング中の卑金属は、銅、鉄、またはその組合せを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングおよび第2のコーティングはそれぞれ、ゼオライト上に分散させた白金およびゼオライト上に分散させた銅を含む。
【0071】
一部の実施形態では、第1のコーティングは、第2のコーティングよりも高い白金族金属ローディングを含む。一部の実施形態では、第1のコーティングおよび第2のコーティングは、等価の白金族金属ローディングを含む。第1のコーティングは、約0g/ft3から約10g/ft3、約0.5g/ft3から約10g/ft3、約1g/ft3から約10g/ft3、約1g/ft3から約9g/ft3、約1g/ft3から約8g/ft3、約1g/ft3から約7g/ft3、約1g/ft3から約6g/ft3、約1g/ft3から約5g/ft3、約2g/ft3から約4g/ft3、約0.5g/ft3、約1g/ft3、約2g/ft3、約3g/ft3、約4g/ft3、約5g/ft3、約6g/ft3、約7g/ft3、約8g/ft3、約9g/ft3、または約10g/ft3の白金族金属ローディングを含み得る。第2のコーティングは、約0g/ft3から約5g/ft3、約0.5g/ft3から約5g/ft3、約1g/ft3から約5g/ft3、約1g/ft3から約4g/ft3、約1g/ft3から約3g/ft3、約0.5g/ft3、約1g/ft3、約2g/ft3、約3g/ft3、約4g/ft3、または約5g/ft3の白金族金属ローディングを含む。
【0072】
第1のコーティング中の白金族金属と第2のコーティング中の白金族金属との重量比は、約20:1から約1:3、約20:1から約1:1、約10:1から約1:2、約10:1から約1:1、約6:1から約1:1、約3:1から約1:1、約3:0.5から約1:1、約20:1、約15:1、約10:1、約8:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約3:0.5、約1:0.5、約1:1、約1:2、または約1:3である。
【0073】
図1を参照すると、先行技術触媒は、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を含む第1の触媒コーティング、ならびに、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分を含む第2の触媒コーティングを有することが知られている。
図1aに示すように、第1のコーティングは、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆い得、第2の触媒コーティングは、入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複し得る。
図1bに示すように、第1の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆い得、第2の触媒コーティングは、基材の軸長全体を覆い得、また第1の触媒コーティングと重複し得る。
【0074】
図2を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティング、ならびに、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を含む第2の触媒コーティングを含み得、ここで、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも小さい。触媒物品は、第1の触媒コーティングが出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第2の触媒コーティングが入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複するように、構成することができる。
【0075】
図3を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティング、ならびに、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を含む第2の触媒コーティングを含み得、ここで、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一である。触媒物品は、第1の触媒コーティングが出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第2の触媒コーティングが入口端から出口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複するように、構成することができる。
【0076】
図4を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、基材の全長に広がる、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティング、ならびに、第1の触媒コーティングを覆っており、基材の全長にも広がり、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第2の触媒コーティングを含み得る。
図4aに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも低くてよい。
図4bに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一であり得る。
【0077】
図5を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、基材の全長に広がる、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティング、ならびに、入口端から出口端に広がり、基材の全長未満を覆っており、第1の触媒コーティングの一部と重複する、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第2の触媒コーティングを含み得る。
図5aに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも低くてよい。
図5bに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一であり得る。
【0078】
図6を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、出口端から入口端に広がり、基材の全長未満を覆っている、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティング、ならびに、基材の全長を覆っており、第1の触媒コーティングと重複する、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第2の触媒コーティングを含み得る。
図6aに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも低くてよい。
図6bに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一であり得る。
【0079】
図7を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、SCR触媒の下流に位置し得る。一部の実施形態では、SCR触媒および触媒物品は、同一の基材上に位置する。一部の実施形態では、SCR触媒および触媒物品は、個別の近位結合している基材上に位置する。
図7aに示すように、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり得、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第2の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり、第1の触媒コーティングの全てまたは一部を覆い得る。第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも低くてよい。
図7bに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一であり得る。
【0080】
図8を参照すると、本発明の実施形態の触媒物品は、押出成形されたSCR触媒上にコーティングすることができる。モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第1の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆い得、モレキュラーシーブ上の卑金属などのSCR触媒成分およびモレキュラーシーブ上の白金族金属などのASC成分を有する第2の触媒コーティングは、出口端から入口端に広がり、基材の軸長全体未満を覆っており、第1の触媒コーティングの全てまたは一部を覆い得る。
図8aに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングよりも低くてよい。
図8bに示すように、第2の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングは、第1の触媒コーティングにおける白金族金属ローディングと同一であり得る。
【0081】
DOC
本発明の触媒物品およびシステムは、1つまたは複数のディーゼル酸化触媒を含んでいてもよい。酸化触媒、特にディーゼル酸化触媒(DOC)は当該技術分野で周知である。酸化触媒は、COをCO2および気相炭化水素(HC)へ、およびディーゼル粒子の有機画分(可溶型有機画分)をCO2およびH2Oへと酸化するように設計されている。典型的な酸化触媒は、白金を含み、任意選択でアルミナ、シリカ-アルミナ、およびゼオライトなどの高表面積無機酸化物担体上のパラジウムも含む。
【0082】
基材
本発明の触媒は、それぞれフロースルー基材またはフィルター基材をさらに含み得る。一実施形態では、触媒はフロースルー基材またはフィルター基材上にコーティングされていてよく、好ましくは薄め塗膜手順を使用してフロースルー基材またはフィルター基材上に配置されている。
【0083】
SCR触媒およびフィルターの組合せは選択的触媒還元フィルター(SCRF触媒)として知られている。SCRF触媒とは、SCRおよび粒子状フィルターの機能性を合わせた単一の基材装置であり、所望に応じて本発明の実施形態に適している。本出願全体にわたって、SCR触媒の説明およびそれへの言及は、必要に応じてSCRF触媒も含むことが理解されよう。
【0084】
フロースルー基材またはフィルター基材は、触媒/吸着剤成分を含有することができる基材である。基材は、好ましくはセラミック基材または金属基材である。セラミック基材は、任意の適切な耐火性材料、たとえば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、メタロアルミノシリケート(菫青石および黝輝石(spudomene)など)、またはその任意の2つ以上の混合物もしくは混合酸化物から作製され得る。菫青石、マグネシウムアルミノシリケート、および炭化ケイ素が特に好ましい。
【0085】
金属基材は、任意の適切な金属、特に、耐熱金属およびチタンやステンレス鋼などの金属合金、ならびに鉄、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムに加えて他の微量金属を含有するフェライト合金から作られていてよい。
【0086】
フロースルー基材は、好ましくは、基材を通って軸方向に走っており、基材の入口または出口から至るところに広がる、多数の小さな平行した薄壁チャネルを有する蜂巣構造を有するフロースルーモノリスである。基材のチャネル横断面は任意の形状であってよいが、好ましくは、正方形、正弦曲線、三角形、長方形、六角形、台形、円形、または楕円形である。また、フロースルー基材は、触媒が基材壁内へ透過することを可能にする高空隙率のものであってもよい。
【0087】
フィルター基材は好ましくはウォールフローモノリスフィルターである。ウォールフローフィルターのチャネルは交互にブロックされており、これにより、排気ガス流が入口からチャネルに入り、その後、チャネル壁を通って流し、出口に通じる異なるチャネルからフィルターを出ることが可能となる。したがって、排気ガス流中の粒子はフィルターに捕捉される。
【0088】
触媒/吸着剤は、薄め塗膜手順などの任意の知られている手段によってフロースルー基材またはフィルター基材に加え得る。
【0089】
還元剤/尿素注入器
システムは、窒素性還元剤を排気システム内のSCRおよび/またはSCRF触媒の上流に導入するための手段を含んでいてもよい。窒素性還元剤を排気システム内に導入するための手段は、SCRまたはSCRF触媒の直接上流にあることが好ましい場合がある(たとえば、窒素性還元剤を導入するための手段とSCRまたはSCRF触媒との間に介在する触媒が存在しない)。
【0090】
還元剤を排気ガスへと導入するための任意の適切な手段によって、還元剤を流動排気ガスに加える。適切な手段としては、注入器、噴霧器、またはフィーダーが挙げられる。そのような手段は当該技術分野で周知である。
【0091】
システムにおいて使用するための窒素性還元剤は、アンモニア自体、ヒドラジン、または尿素、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、およびギ酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニア前駆体であることができる。尿素が特に好ましい。
【0092】
また、排気システムは、それ内のNOxを還元するための、還元剤の排気ガス内への導入をコントロールするための手段も含み得る。好ましいコントロール手段としては、電子コントロールユニット、任意選択でエンジンコントロールユニットを挙げることができ、NO還元触媒の下流に位置するNOxセンサーをさらに含んでいてもよい。
【0093】
システムおよび方法
本発明の放出処理システムは、微小粒子状物質、NOx、および一酸化炭素を含む排気流を放出するディーゼルエンジン、ならびに本明細書において記載される触媒物品を含み得る。システムは、触媒物品の上流にあるSCR触媒を含み得る。一部の実施形態では、SCR触媒は、触媒物品と近位結合している。一部の実施形態では、SCR触媒および触媒物品は単一の基材上に位置し、SCR触媒は基材の入口側に位置し、触媒物品は基材の出口側に位置する。
【0094】
本発明の方法は、排気流を本明細書において記載される触媒物品と接触させることを含み得る。
【0095】
利点
本発明の触媒物品は、所望の触媒活性および選択性を提供し得る。従来、触媒物品は、上層または前方層においてSCRの機能性を、また底層または後方層においてASCの機能性を含んでいる。驚くべきことに、モレキュラーシーブ上の白金族金属を上層および底層の両方に含めることが、NH3変換に対する様々な利点および利益、ならびに所望の選択性および触媒活性を有する区域化されたASC立体配置を提供することが見出された。
【0096】
たとえば、第2のコーティングにおける白金族金属の存在は、NH
3変換の増進をもたらし得る。このような増進は、上層へのアクセス性に基づくような、改善された拡散に起因し得る。さらに、第2のコーティング中に白金族金属を含めることで、非常に選択的な領域(区域1)ならびに非常に活性な領域(区域2および3)を組み合わせる、区域化されたASC立体配置をもたらすことができる。たとえば、一部の実施形態では、また
図2および3に示すように、第1の触媒コーティングおよび第2の触媒コーティングは、重複して、3つの区域、すなわち、主にNOxを除去するための第1区域、主にアンモニアをN
2に酸化するための第2区域、ならびに主に一酸化炭素および炭化水素を酸化するための第3区域を形成する。
【0097】
さらに、第2のコーティングにおける白金族金属の存在は、第1のコーティングおよび第2のコーティングの両方が同量の白金族金属を含有する立体配置をもたらす。このような立体配置は、1つの薄め塗膜で調製され得る簡素化された製品を提供し得、これは、いずれかが逆でも使用することができ得る。
【0098】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」には、内容により明らかにそうでないと示されない限りは、複数形の指示対象を含む。したがって、たとえば、「触媒(a catalyst)」への言及は、2つ以上の触媒の混合物などを含む。
【0099】
用語「アンモニアスリップ」とは、SCR触媒を通過する未反応のアンモニアの量を意味する。
【0100】
用語「担体」とは、触媒が固定されている材料を意味する。
【0101】
用語「か焼する」または「か焼」とは、材料を空気または酸素中で加熱することを意味する。この定義はか焼のIUPAC定義と一貫している。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)。A.D.McNaughtおよびA.Wilkinson編集。Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)。XMLオンライン補正バージョン:http://goldbook.iupac.org(2006年~)、M.Nic、J.Jirat、B.Kosata作成、A.Jenkins更新編集。ISBN0-9678550-9-8.doi:10.1351/goldbook)。か焼は、金属塩を分解させて触媒内の金属イオンの交換を促進するため、また、触媒を基材へと接着させるために行う。か焼で使用する温度はか焼する材料中の成分に依存し、一般に、約400℃から約900℃で約1から8時間である。一部の事例では、か焼は約1200℃までの温度で行うことができる。本明細書中に記載の方法に関与する応用では、か焼は一般に約400℃から約700℃の温度で約1から8時間、好ましくは約400℃から約650℃の温度で約1から4時間行う。
【0102】
様々な数値的要素の範囲または複数の範囲を提供した場合、その範囲または複数の範囲には、別段に指定しない限りは値を含めることができる。
【0103】
用語「N2選択性」とは、アンモニアから窒素へのパーセント変換を意味する。
【0104】
用語「ディーゼル酸化触媒」(DOC)、「ディーゼル発熱触媒」(DEC)、「NOx吸収材」、「SCR/PNA」(選択的触媒還元/受動的NOx吸着剤)、「コールドスタート触媒」(CSC)、および「三方向触媒」(TWC)は、排気ガスを燃焼方法から処理するために使用する様々な種類の触媒を説明するために使用される、当該技術分野で周知の用語である。
【0105】
用語「白金族金属」または「PGM」とは、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、およびイリジウムをいう。白金族金属は、好ましくは白金、パラジウム、ルテニウム、またはロジウムである。
【0106】
用語「下流」および「上流」は、触媒または基材の配向を説明しており、排気ガスの流れは基材または物品の入口端から出口端である。
【実施例】
【0107】
参照用調製物および本発明の実施形態の調製物を含む、以下に記載する調製物を有する触媒を調製した。
【0108】
参照用触媒:
アルミナ底層およびSCR上層上にPtを有する二重層調製物を、参照例として使用した。
【0109】
底層を、アルミナおよび裸のゼオライトのブレンドに対して0.17重量%のPtを含む薄め塗膜を使用して、セラミック基材に塗布した。薄め塗膜をセラミック基材に塗布し、次いで、減圧を使用して薄め塗膜を基材内に引き込んだ。物品を約500℃で約1時間、乾燥し、か焼した。物品に対するPtのローディングは、3g/ft3であった。
【0110】
上層を、Cu-CHAを含む第2の薄め塗膜を使用して、底層でコーティングした基材に塗布し、次いで、減圧を使用して薄め塗膜を基材内に引き込んだ。物品を約500℃で約1時間、乾燥し、か焼した。上層におけるCu-CHAのローディングは、2.0g/in3であった。
【0111】
Pt-ゼオライトブレンド触媒:
底層を、ZSM-5(SAR=2000のMFI骨格)に対して3重量%のPtおよびCu-AEIのブレンドを含む薄め塗膜を使用して、セラミック基材に塗布した。薄め塗膜をセラミック基材に塗布し、次いで、減圧を使用して薄め塗膜を基材内に引き込んだ。物品を約500℃で約1時間、乾燥し、か焼した。物品上へのPtおよびCu-AEIのローディングは、それぞれ0~3g/ft3および0~0.9g/in3で変化した。
【0112】
上層を、ZSM-5(SAR=2000のMFI骨格)に対して3重量%のPtおよびCu-AEIのブレンドを含む薄め塗膜を使用して、セラミック基材に塗布した。薄め塗膜をセラミック基材に塗布し、次いで、減圧を使用して薄め塗膜を基材内に引き込んだ。物品を約500℃で約1時間、乾燥し、か焼した。物品上へのPtおよびCu-AEIのローディングは、それぞれ0~3g/ft3および0~0.9g/in3で変化した。
【0113】
調製された触媒を次いで、以下の条件にかけた:
エージング条件:空気中の10%H2O下で580℃を100時間
試験条件:500ppmのNH3、10%O2、4.5%H2O、4.5%CO2、バランスN2;SV=150000h-1
使用した命名法:底層のPtローディングxg/ft3/上層のPtローディングyg/ft3=x/y
【0114】
結果および結論:
底層および上層において様々なPt分布を有するPt-ゼオライトブレンド触媒に対して参照用触媒を比較した、NH
3変換、N
2O選択性、およびNOxの再形成を、
図9および
図10に示す。明らかな利益が、参照用触媒と比較して、全てのPt-ゼオライトブレンド触媒で見られる。Pt-ゼオライトブレンド触媒上でのPtローディングの分布を変化させることによって、NH
3変換およびN
2選択性を調整することができる。たとえば、Pt(3/0)からPt(2.5/0.5)では、NH
3変換は、選択性を大きく変化させることなく改善する。Pt分布が(2/1)および(1.5/1.5)に変化する場合、N
2O選択性に対する影響は最小で、NH
3変換のさらなる改善が見られる。しかし、NOxの再形成は、参照用触媒およびPt(3/0)のPt-ゼオライトブレンド触媒と比較して実質的に増大し、このことは、NH
3変換およびN
2O選択性がNOx選択性よりもはるかに重要である酸化触媒および下流の第2のSCR/ASCの適用にとって理想的であり得る。Ptを上層に含めること、および2つの層の間でPt分布を変化させることの柔軟性は、従来の2層化されたアンモニアスリップ触媒においては達成不可能な、個々のシステムの標的および要件に基づいて最良のシステムの性能を達成するためにNH
3変換および選択性を調整するための別の設計パラメータを提供する。