IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7241733繊維強化プラスチック材料をコーティングするための二成分コーティング材料組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック材料をコーティングするための二成分コーティング材料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20230310BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20230310BHJP
   C08G 18/24 20060101ALI20230310BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230310BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230310BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20230310BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230310BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20230310BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20230310BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230310BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20230310BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C09D175/06
C08G18/67
C08G18/24
C08G18/66 037
C08J5/24 CFC
B29C39/10
B29C39/24
B29C70/06
B29C70/48
C09D7/63
B29K101:10
B29K105:08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020504207
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2018069797
(87)【国際公開番号】W WO2019020524
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】17183052.4
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストーフ,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヘナン
(72)【発明者】
【氏名】ゼトラー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ドップ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フェデラー,レア
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-359958(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133271(WO,A1)
【文献】特開2008-024896(JP,A)
【文献】特開2015-224321(JP,A)
【文献】特表2016-507000(JP,A)
【文献】特開平04-358829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/06
C08G 18/67
C08G 18/24
C08G 18/66
C08J 5/24
B29C 39/10
B29C 39/24
B29C 70/06
B29C 70/48
C09D 7/63
B29K 101/10
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料ベース成分A及び硬化成分Bを含む二成分コーティング材料組成物であって、
前記塗料ベース成分Aが、
i. エステル基を含有するポリオールの群から選択され、且つ300~500mgKOH/gのヒドロキシル価を有し2を超えるヒドロキシル基官能価を有する、1種以上のポリオールA1、
ii. エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは5~18個の炭素原子を有するp価の分岐、環式又は直鎖、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に1個以上の第三級アミノ基を含み、及びpは2~6である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2、
iii. 一般式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖又は二糖のラジカル又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールのラジカルであり、AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、sは0~30である)の1種以上の種A3、
iv. 有機スズ化合物の群から選択される1種以上の架橋触媒A4、
v. 少なくとも2個の第二級アミノ基、及び120~280mgKOH/gのアミン価を有する任意の1種以上のポリアミンA5、
vi. 任意の1種以上のポリエーテルジオールA6、
vii. 任意の1種以上のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7、
viii. 任意の1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8、及び
ix. 湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤からなる群から選択される任意の1種以上の添加剤A9、を含み、
及び、
前記硬化成分Bが、
i. 平均2.4~5個のNCO基を有する1種以上のポリイソシアネートB1を含み、
前記二成分コーティング材料組成物は、前記二成分コーティング材料組成物の総質量に対して、ASTM D2369(2015年)により、少なくとも96質量%の固形分を含み、及び
前記硬化成分B中のNCO基の、前記塗料ベース成分A中のヒドロキシル基、第一級アミノ基及び第二級アミノ基の酸性水素原子に対するモル比が、1:1.15~1:0.95であることを特徴とする、二成分コーティング材料組成物。
【請求項2】
1種又は複数種のポリオールA1が、エステル基を含有し、340~460mgKOH/gのヒドロキシル価及び3~4のヒドロキシル基官能価を有する分岐ポリオールである、請求項1に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項3】
エーテル基及びエステル基を含まない1種又は複数種の脂肪族ポリオールA2が、一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは6~16個の炭素原子を有するp価の分岐飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、前記ラジカルRは任意に1~3個の第三級アミノ基を含み、pは2~4であり、2~6個以下の炭素原子及び/又は窒素原子が、2個のすぐ隣接するヒドロキシル基の間に位置する)
を有する、請求項1又は2に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項4】
エーテル基及びエステル基を含まない1種又は複数種の脂肪族ポリオールA2が、500~1000mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項5】
一般式(II)の1種以上の種A3において、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖又は二糖のラジカル、又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールの、さらに具体的にはソルビトールのラジカルであり、
AOはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、及びsは0、又は1~25である、請求項1から4のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項6】
一般式(II)の1種以上の種A3において、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖のラジカル、又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールの、さらに具体的にはソルビトールのラジカルであり、
AOはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、及び前記ラジカルAO全体におけるエチレンオキシドの割合が少なくとも70mol%であり、rは0又は1であり、及びsは0又はsは6~20である、請求項1から5のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項7】
1種又は複数種の架橋触媒A4が、ジアルキルスズジカルボキシレート及びジアルキルスズジメルカプチドの群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項8】
ポリアミンA5が一般式(V)
【化1】
(式中、ラジカルRは、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する分岐又は非分岐のアルキルラジカルであり、
ラジカルRは、6~24個の炭素原子を有するw価の脂肪族及び/又は脂環式炭化水素ラジカルであり、及び
wは2~4である)
を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項9】
1種又は複数種のポリエーテルジオールA6が、一般式(VII)
HO-(AO)-H (VII)
(式中、ラジカルAOは、互いに独立して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群から選択されるアルキレンオキシドラジカルであり、tは5~30である)
を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項10】
1種又は複数種のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7が、ポリエーテル修飾メチルポリシロキサンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項11】
1種又は複数種の脂肪族ポリイソシアネートB1がジイソシアネートの三量体及び/又は四量体であり、前記三量体及び/又は四量体がイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネート及びビウレットの群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項12】
構成成分A1~A9及びB1の質量合計が、二成分コーティング材料組成物の総質量内において、好ましくは少なくとも90質量%であり、
構成成分A1、A2、及びA5の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、75~95質量%であり、
構成成分A1の質量合計が、構成成分A1及びA2の質量合計に対して、50質量%を超え、
構成成分A3の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、1~7質量%であり、
構成成分A4の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、0.15~1.5質量%であり、
構成成分A5の質量合計が、構成成分A1、A2、及びA5の質量合計に対して、50質量%未満~0質量%であり、
構成成分A6の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、0~10質量%であり、
構成成分A7の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、0~5質量%であり、
構成成分A8の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、0~20質量%であり、
構成成分A9の質量合計が、塗料ベース成分Aの総質量に対して、0~8質量%であり、及び
構成成分B1の質量合計が、硬化成分Bの総質量に対して、少なくとも90質量%である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物。
【請求項13】
(1) 繊維強化プラスチックを型に入れ、
(2) 繊維強化プラスチックと型との間の隙間を除いて前記型を閉じて、型と繊維強化プラスチックとの間に中空を形成し、
(3) 請求項1から12のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物で前記中空を満たし、
(4) 前記コーティング材料組成物を硬化させ、及び
(5) その後コーティングした繊維強化プラスチックを取り出す、
繊維強化プラスチックをコーティングする方法。
【請求項14】
(A) 製造する繊維強化プラスチックの繊維強化の役目を果たす繊維又は繊維集合体の予備成形体を前記型に入れ、
(B) 隙間を除いて前記型を閉じ、形成された前記中空を空にし、
(C) その後、製造する繊維強化プラスチックのマトリクスを形成する液体プラスチックを注入し、
(D) 液体プラスチックを前記予備成形体を通してプレスし、前記繊維又は繊維集合体を濡らして前記型を閉じ、
(E) 前記液体プラスチックを硬化させて、繊維強化プラスチックを形成し、
(F) 工程(E)の直後の前記型を、繊維強化プラスチックと型との間の隙間を除いて閉じ、型と繊維強化プラスチックとの間に中空を形成し、
(G) 前記中空を、請求項1から12のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物で満たし、
(H) 前記コーティング材料組成物を硬化させ、及び
(I) その後コーティングした繊維強化プラスチックを取り出す、
コーティングした繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項15】
前記繊維強化プラスチックが、構成要素、好ましくは自動車の車体部品から選択される構成要素の形態である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)又は工程(F)における前記隙間が、硬化したコーティング材料組成物の膜厚が100~250μmの範囲にあるような幅である、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティングした繊維強化プラスチックを、中間の研磨操作なしで、1種以上のベースコートフィルム及び1種以上のクリアコートフィルムでコーティングし、及び
前記ベースコートフィルム(単数又は複数)及びクリアコートフィルム(単数又は複数)を別個に又は一緒に硬化させる、
請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
繊維強化プラスチックをコーティングするための、請求項1から12のいずれか一項に記載の二成分コーティング材料組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料及びプラスチック材料をコーティングするための、さらに具体的にはオーバーモールディングプロセス(型内注入(injection in-mold)コーティングプロセス)に適した二成分コーティング材料組成物、そのような材料をコーティングする方法、及びコーティングした繊維強化複合材料及びプラスチック材料を製造するための、特にマルチコートコーティングプロセスにおける、二成分コーティング材料組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体及びその部品の質量を低減させる材料は、特に燃料消費を低減し、故に二酸化炭素排出量を低減する目的で、継続的な需要がある。材料は、容易に成形可能であり、故に構造を最大限に自由にできることが、さらに要求される。既にある程度質量を低減できる、従来技術の適した基材は、例えば、アルミニウム及び高性能鋼である。しかしながら、繊維強化複合材料及び繊維強化プラスチックなどの材料は、自動車製造業者にますます吟味されている。そのような材料は、特に車両の屋根、フード、車両ドア、及び尾部の領域に関連する。しかしながら、これらの材料を使用する際の課題は、仕上げラインでコーティングできないこと、及びそれにもかかわらず、1回のコーティング後に極めて優れた表面品質(クラスA表面)を示すことを要求されることである。
【0003】
しかし、繊維強化複合材料及び繊維強化プラスチックは通常、不規則な表面構造を有する。この表面構造は普通は粗く、場合により開放繊維も有し、コーティング後に、コーティング層を通じ、一般にプライマーサーフェサーコート、ベースコート、及びクリアコートを通じ、仕上げ表面まで伝播する不規則性を備える。基材表面の構造の、最上部のコーティング材料フィルムの表面までの伝播は、繊維強化材料の繊維とそれを囲むプラスチックマトリックスの熱膨張係数の違いにまでさかのぼることができる。特に、車体の領域で目に見える構成要素の場合、これは大きな問題を呈する。
【0004】
既に市場にある自動車は、その車体がクラスA表面を有する炭素繊維強化複合材料に基づく全複合材料シェル構造である。しかしながら、マルチコートコーティングは、各場合とも複数のサーフェーサーコート、ベースコート、及びクリアコートを有し、及び複数の中間研磨工程に加え最終研磨工程を含む、技術的に非常に複雑なコーティング構成で製造される。
【0005】
従って、特に繊維強化複合材料及び繊維強化プラスチックのための簡単なコーティング方法を提供する努力がされる。ここでは、多数の中間コートが、ベースコートフィルム及びクリアコートフィルムを用いた最終コーティングの前に、可能な限り1種のコーティング材料フィルムで置き換えられる。このフィルムは厚い膜厚で塗布することができ、膜厚により不規則な基材表面の伝播を効果的に防ぎ、プライマーサーフェーサーなしで基材に極めて優れた接着をし、費用がかかり不便な洗浄及び/又は研磨工程なしで、標準的な市販のベースコート及びクリアコート材料を用いてコーティングすることができる。
【0006】
クラスA表面品質が所望される場合、従来の噴霧塗布では100μmを超える厚い膜厚が製造できず、又はこの手段では150μmを超える厚い膜厚でさえ製造できない。一方で、繊維強化プラスチックの構成要素を用いることで獲得される軽量化が失われるので、不必要に厚いコーティング材料フィルムを製造することも所望されない。
【0007】
可変且つ厚い厚膜を製造し得る可能な方法は、オーバーモールディングプロセス(型内注入コーティングプロセス)又は従来の型内コーティングプロセスである。
【0008】
従来の型内コーティングプロセスでは、コーティング材料を噴霧又は注入することによって型表面をコーティングし、その後、繊維強化複合材料基材又は繊維強化プラスチック基材を、未硬化の又はまだ完全に硬化していないコーティング材料上にプレスする。
【0009】
オーバーモールディングプロセスの場合、コーティング材料組成物を基材と型表面との間の隙間に注入する。コーティング材料のフラッシュオフ又は予備乾燥がこの方法では不可能であるので、使用できるコーティング材料は、揮発性構成成分を含まないか、実質的に含まず、故に環境に優しいコーティング材料のみである。しかしながら、オーバーモールドプロセスでは、反応性希釈剤として知られるコーティング材料の他の構成成分と反応することができる溶媒も、使用することができる。このような場合に使用される用語は、無溶媒コーティング材料又は100%固体を有するコーティング材料系である。しかし実際には、この種の系でさえ、非常に少量の揮発性有機溶媒を含有する場合がある。これらの溶媒は一般に、溶媒中に事前に溶解した添加剤を介して配合物に入る。オーバーモールディングプロセスの場合、基材と型表面との間の隙間幅の結果として、コーティング材料フィルムの膜厚は、非常に正確に指定することができる。
【0010】
オーバーモールディングプロセスの1種の特定の変形は、表面樹脂トランスファー成形(表面RTMプロセス)として知られているものである(Kunststoffe3/2014、第86頁~第89頁のRenkl,Schmidhuber&Fries参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Kunststoffe3/2014、第86頁~第89頁のRenkl,Schmidhuber&Fries
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、コーティング材料が型表面と接触しているあらゆるプロセスでは、表面を損傷せずに型表面からコーティングを離型することも要求される。これは従来では、使用前に離型剤を型表面に提供することによって達成することができる。しかしながら、離型剤を使用する場合、この薬剤は、コーティング材料で基材をコーティングした後、型表面上だけでなくコーティング材料表面上にも一部が残留する。例えば、ベースコート材料を用いる後続のコーティングの前に、この薬剤の残留物は、費用がかかり不便な洗浄プロセスによって除去しなければならない。従って本発明の目的の1つは、この種の外部離型剤を使用せずに、普通は金属の型表面からの損傷のない離型を可能にし、且つ一方で基材への極めて優れた接着を確実にし、及び例えばベースコート及びクリアコートなどのさらなるコーティングフィルムで再コーティングでき、費用がかかり不便な洗浄及び/又は研磨工程なしでクラスA表面を形成する、コーティング材料を提供することであった。さらに、厚い膜厚のコーティング材料が、比較的低い硬化温度で迅速に硬化することが可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は驚くべきことに、塗料ベース成分A及び硬化成分Bを含む二成分コーティング材料組成物を提供することにより達成された。ここで、
塗料ベース成分Aは、
i. エステル基を含有するポリオールの群から選択され、且つ300~500mgKOH/gのヒドロキシル価を有し2を超えるヒドロキシル基官能価を有する、1種以上のポリオールA1、
ii. エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは5~18個の炭素原子を有するp価の分岐、環式又は直鎖、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に1個以上の第三級アミノ基を含み、及びpは2~6である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2、
iii. 一般式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖又は二糖のラジカル又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールのラジカルであり、AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、sは0~30である)の1種以上の種A3、
iv. 有機スズ化合物の群から選択される1種以上の架橋触媒A4、
v. 少なくとも2個の第二級アミノ基、及び120~280mgKOH/gのアミン価を有する任意の1種以上のポリアミンA5、
vi. 任意の1種以上のポリエーテルジオールA6、
vii. 任意の1種以上のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7、
viii. 任意の1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8、及び
ix. 湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤からなる群から選択される任意の1種以上の添加剤A9、を含み、
及び、
硬化成分Bは、
i. 平均2.4~5個のNCO基を有する1種以上のポリイソシアネートB1を含み、
その二成分コーティング材料組成物は、二成分コーティング材料組成物の総質量に対して、ASTM D2369(2015年)により、少なくとも96質量%、好ましくは少なくとも98質量%、さらに好ましくは少なくとも99質量%の固形分を含み、及び
硬化成分B中のNCO基の、塗料ベース成分A中のヒドロキシル基、第一級アミノ基及び第二級アミノ基の酸性水素原子に対するモル比が、1:1.15~1:0.95、好ましくは1:1.1~1:0.96、さらに好ましくは1:1.05~1:0.98である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「二成分コーティング材料組成物」という用語は、2種の成分(塗料ベース及び硬化剤)を指定の比率で混合することによって、硬化をもたらす反応が開始する、コーティング材料を指す。個々の成分は、フィルムを形成できない、又は安定したフィルムを生成しないので、コーティング材料ではない(Roempp Lacke und Druckfarben;項目見出し「two-component paint」)。
【0015】
本明細書における「脂肪族ラジカル」という用語は、芳香族構造を含有しないラジカルを表す。
【0016】
本明細書における「炭化水素ラジカル」という用語は、当該ラジカルが或る特定の他の基又は原子をさらに含み得ることが示されない限り、炭素原子及び水素原子のみを含有するラジカルを表す。
【0017】
ヒドロキシル基及び第一級及び第二級アミノ基に関する「酸性水素原子」という用語は、ヒドロキシル基の酸素原子に結合した水素原子、又は第一級アミノ基の窒素原子に結合した2個の水素原子、及び第二級アミノ基の窒素原子に結合した水素原子も指す。
【0018】
固形分は、ASTM D2369(2015年)により、110℃で60分間、約2グラムの二成分コーティング材料組成物の試料で決定した。
【0019】
二成分コーティング材料組成物
以下にさらに詳細に記載する構成成分、塗料ベース成分A及び硬化成分Bは、好ましさの程度が異なり得る構成成分も特に含め、一般に互いに独立して選択してよく、よって例えば、特に好ましい構成成分の選択は、他の好ましい、さらに好ましい又は特に好ましい構成成分とのみ組み合わせ可能であることを必ずしも意味するものではない。特定の好ましい構成成分を使用する際に、別の好ましい構成成分を選択することも、或る特定の場合に特に賢明で好ましいというわけではない。例えば、任意の顔料A8は、湿潤剤及び分散剤A9と組み合わせて慣例的に使用され、好ましくはポリアミンA5と、さらに好ましくは好ましいポリアミンA5とも組み合わされる。従って、好ましい組み合わせを以下で記載する場合、それらは必須の組み合わせとして必ずしも理解されるべきではなく、代わりに単なる特に好ましい実施形態として理解されるべきである。
【0020】
塗料ベース成分Aの構成成分
ポリオールA1
ポリオールA1は、エステル基を含有するポリオールの群から選択される。ポリオールA1は、好ましくは脂肪族ポリオールである。
【0021】
ポリオールA1は、好ましくはポリエステルポリオール又はポリエステル-ポリエーテルポリオール、又は前述のポリオールの混合物である。
【0022】
ポリオールA1又はポリオール混合物A1は、340~460mgKOH/g、好ましくは360~440mgKOH/g、さらに好ましくは380~420mgKOH/gのヒドロキシル価を有することが好ましい。本発明の目的におけるヒドロキシル価は、EN ISO4629-2:2016により決定し得る。
【0023】
ポリオールA1は、3~5のヒドロキシル基官能価、さらに好ましくは3~4のヒドロキシル基官能価を有することが好ましい。
【0024】
さらに好ましくは、ポリオールA1は分岐状である。
【0025】
非常に好ましくは、ポリオールA1は、300~500mgKOH/gのヒドロキシル価、なおよいのは340~460mgKOH/gのヒドロキシル価、及び3~4のヒドロキシル基官能価を有するエステル基を含有する分岐ポリオールである。
【0026】
エーテル基及びエステル基を含まない脂肪族ポリオールA2
本発明のコーティング材料組成物は、エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは5~18個の、好ましくは6~16個の、さらに好ましくは7~12個の、さらに具体的には8~11個の、例えば8、9、又は10個の炭素原子を有するp価の分岐、環式又は直鎖の、好ましくは分岐状の、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の、脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に1個以上の、好ましくは1~3個の、さらに好ましくは2個の第三級アミノ基を含み、及び
pは2~6、好ましくは2~5、さらに好ましくは2~4である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2を含む。
【0027】
2個のすぐ隣接するヒドロキシル基の間には、好ましくは2~6個以下の、さらに好ましくは3~5個の炭素及び/又は窒素原子がある。
【0028】
構成成分A2、換言すればエーテル及びエステル基を含まない脂肪族ポリオールA2、又はエーテル及びエステル基を含まない脂肪族ポリオールA2の混合物は、500~1000mgKOH/gの範囲の、さらに好ましくは600~900mgKOH/gの、非常に好ましくは650~850mgKOH/g、さらに具体的には700~800mgKOH/gのヒドロキシル価を有することが好ましい。
【0029】
さらに好ましくは、ラジカルRは、CHC(C)(C)CH、CHC(CHCHCH(CH、及び(HCCHCHNCHCHN(CHCHCHからなる群から選択される1種以上のラジカルである。
【0030】
特に好ましいエーテル基を含まない脂肪族ポリオールA2は、例えば、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(ここで、2個のヒドロキシル基が3個の炭素原子(C-C-C)により分離される)、又はN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(ここで、2個のすぐ隣接するヒドロキシル基の間で炭素及び/又は窒素原子の合計が5(C-C-N-C-C)である)である。
【0031】
構成成分A1及びA2の合計に対して、ヒドロキシル価は、好ましくは400~650mgKOH/g、さらに好ましくは450~600mgKOH/g、非常に好ましくは480~580mgKOH/gである。
【0032】
種A3
種A3は、以下の式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは6~30個の、好ましくは8~26個の、さらに好ましくは10~24個の、及び非常に好ましくは12~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、
はH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖又は二糖のラジカル、又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールの、さらに具体的にはソルビトールのラジカルであり、
AOはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、
rは0又は1であり、及び
sは0~30、好ましくは1~25又は2~25、さらに好ましくは4~22又は6~20、及び非常に好ましくは8~18である)によって再生することができる構造を有する。
【0033】
ラジカルRは、好ましくは非環式ラジカルである。
【0034】
ラジカルAOは同一又は異なってよく、s個のラジカル内でそれらはランダムに、ブロックで又は勾配状で配置し得る。2種以上の異なる種類のAOが存在する場合、エチレンオキシドの割合が、ラジカルAOの合計数に対して、50mol%を超える、さらに好ましくは少なくとも70mol%、及び非常に好ましくは少なくとも90mol%である場合が好ましい。上記の場合、エチレンオキシド以外のラジカルは、好ましくはプロピレンオキシドラジカルである。
【0035】
r=0及びs>0の場合、式(II)の種は、任意にリン酸化されるか(R=PO(OH))、又は単糖又は二糖で、又はアルジトールのラジカルでエーテル化される、アルコキシル化脂肪アルコール、好ましくはエトキシル化脂肪アルコールである。
【0036】
r=1及びs>0の場合、式(II)の種は、任意にリン酸化されるか(R=PO(OH))、又は単糖又は二糖で、又はアルジトールのラジカルでエーテル化される、アルコキシル化脂肪酸、好ましくはエトキシル化脂肪酸である。
【0037】
s=0で、Rが単糖又は二糖のラジカル、又はアルジトールのラジカルである場合、式(II)の種は、単糖又は二糖の、又はアルジトール(r=0)の脂肪アルコールエーテルであり、又は単糖又は二糖又はアルジトール(r=1)の脂肪酸エステルである。
【0038】
さらに好ましくは、式(II)の一部の又はすべての種について、sが2~25、なおよいのは6~20、及び最良なのは8~18であり、及び/又は、式(II)の一部の又はすべての種について、sが0であり、Rが、単糖又は二糖の任意に部分的にリン酸化されたラジカル又はアルジトールの任意に部分的にリン酸化されたラジカルである場合である。
【0039】
特に、種A3の混合物を使用することも可能であり、ここで、少なくとも1種の種についてsは0であり、少なくとも1種のさらなる種についてsは>0、好ましくは1~25又は2~25、さらに好ましくは4~22又は6~20、非常に好ましくは8~18である。
【0040】
s>0の上記アルコキシル化脂肪アルコール及び/又はs>0の上記アルコキシル化脂肪酸及び
r=s=0及びR=H、PO(OH)、単糖ラジカル、二糖ラジカル、又はアルジトールラジカルである、任意にリン酸化又はエーテル化された脂肪アルコール、及び
r=1、s=0、及びR=H、PO(OH)、単糖ラジカル、二糖ラジカル、又はアルジトールラジカルである、任意にリン酸化又はエステル化された脂肪酸、
を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる種
を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0041】
架橋触媒A4
架橋触媒は主に、ポリイソシアネートB1中の遊離イソシアネート基と、塗料ベース成分A中のヒドロキシル含有構成成分、及び/又は第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を含む構成成分との間の反応を触媒する役目を果たす。
【0042】
1種又は複数種の架橋触媒A4は、有機スズ化合物の群から、好ましくはジアルキルスズジカルボキシレート及びジアルキルスズジメルカプチドの群から選択される。
【0043】
ジアルキルスズジカルボキシレートは、好ましくは一般式(III)
[(C2m+1)]Sn[OCC(C2n+1)] (III)
(式中、m=1~10、好ましくはm=4~8、及びn=5~15、好ましくはn=7~13、及びさらに好ましくはn=9~11である)を有する。確立したジアルキルスズジカルボキシレートには、特にジブチルスズジラウレート及び特にジオクチルスズジラウレートが含まれる。
【0044】
ジアルキルスズジメルカプチドは、好ましくは一般式(IV)
[(C2m+1)]Sn[S(C2n+1)] (IV)
(式中、m=1~10、好ましくはm=4~8、及びn=6~16、好ましくはn=8~14、及びさらに好ましくはn=10~12である)を有する。ジアルキルスズジメルカプチドの中では、特にジメチルスズジラウリルメルカプチドが確立されている。
【0045】
特に好ましい種は、ジオクチルスズジラウレート及びジメチルスズジラウリルメルカプチドである。ジオクチルスズジラウレートを使用することが並外れて有利であることが判明した。意図される適用において、この化合物は触媒として作用するだけでなく、驚くべきことに、コーティングした基材の型からの離型を改善させるからである。
【0046】
ポリアミンA5
ポリアミンA5は、120~280mgKOH/gのアミン価、好ましくは150~250mgKOH/gのアミン価、及びさらに好ましくは170~220mgKOH/gのアミン価を有する。
【0047】
ポリアミンA5は、少なくとも2個の第二級アミノ基、好ましくは正確に2個の第二級アミノ基をさらに有する。ポリアミンA5は、好ましくはヒドロキシル基を含有せず、さらに好ましくは第二級アミノ基以外のさらなるアミノ基を含有しない。非常に好ましくは、A5は、第二級アミノ基とは別に、NCO基に対して反応性の基、さらに具体的にはヒドロキシル基、第一級アミノ基、及びカルボキシル基を含有しない。
【0048】
A5は、エステル基、さらに好ましくは第二級アミノ基の2倍のエステル基を含有することが好ましい。
【0049】
特に好ましいポリアミンA5は、一般式(V)
【化1】
(式中、
ラジカルRは、互いに独立して、1~6個、好ましくは1~4個の炭素原子を有する分岐又は非分岐のアルキルラジカルであり、非常に好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はブチルであり、
ラジカルRは、6~24個の、好ましくは8~20個の、さらに好ましくは10~18個の、及び非常に好ましくは12~16個の炭素原子を有するw価の脂肪族及び/又は脂環式炭化水素ラジカルであり、例えば13、14又は15個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、
及び
wは2~4、好ましくは2又は3、さらに好ましくは2である)
によって示し得る。
【0050】
非常に好ましくは、ポリアミンA5は、2個の第一級アミノ基を有するジアミン1モルの及びマレイン酸ジアルキルエステル2モルのマイケル付加物である。この種のマイケル付加物では、マレイン酸ジエステルの1個の炭素-炭素二重結合に、それぞれ1個の第一級アミノ基が付加される。
【0051】
最後に言及したこれらの特に好ましいポリアミンA5は、ジアミンA5であり、以下の構造式(Va)
【化2】
(式中、
ラジカルRは、互いに独立して、1~6個、好ましくは1~4個の炭素原子を有する分岐又は非分岐のアルキルラジカルであり、非常に好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はブチル、好ましくはエチルラジカルであり、
ラジカルRは、6~24個、好ましくは8~20個、さらに好ましくは10~18個、及び非常に好ましくは12~16個の炭素原子、例えば13、14、又は15個の炭素原子を有する、二価の脂肪族及び/又は脂環式炭化水素ラジカルである)
によって示し得る。
【0052】
特に好ましくは、上記式中の二価ラジカルRは、脂環式構造及び13~15個の炭素原子を含有する。特に適したラジカルRの例は、以下の式(VI)
【化3】
(式中、ラジカルRは、互いに独立して、水素又は1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカル、特にメチル、エチル、プロピル、又はブチルラジカル、好ましくはメチルラジカルである)
の二価ラジカルである。
【0053】
本発明のコーティング材料組成物におけるポリアミンA5の使用は、本発明のコーティング材料が顔料入りの及び/又は充填されたコーティング材料である場合に、非常に有利であることが明らかとなった。顔料入り塗料ベース成分Aの調製において、ポリアミンA5は、それらを使用して、1種又は複数種の顔料A8及び/又はフィラーA8を含み、及び添加剤A9も使用して、まず最初に粉砕ペーストを生成し、この粉砕ペーストを他の塗料ベース構成成分と均一に混合するように、用いることが好ましい。
【0054】
ポリエーテルジオールA6
本発明のコーティング材料組成物は、好ましくは、一般式(VII)
HO-(AO)-H (VII)
(式中、ラジカルAOは、互いに独立して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドからなる群から選択されるアルキレンオキシドラジカルであり、
tは5~30、好ましくは8~25、さらに好ましくは10~20、及び非常に好ましくは12~18である)
のポリエーテルジオールA6を含む。
【0055】
ラジカルAOは同一又は異なってよく、t個のラジカル内でそれらはランダムに、ブロックで又は勾配状で配置し得る。2種以上の異なる種類のAOが存在する場合、プロピレンオキシドラジカルの割合が、50mol%を超える、さらに好ましくは少なくとも70mol%、及び非常に好ましくは少なくとも90mol%、例えば、特に100mol%である場合が好ましい。
【0056】
非常に好ましくは、ポリエーテルジオールA6はポリプロピレンオキシド(AO=プロピレンオキシド)、さらに具体的にはtが8~25、好ましくは10~20、さらに好ましくは12~18であるポリプロピレンオキシドである。
【0057】
コーティング材料組成物中のポリエーテルジオールA6は、反応性希釈剤として機能する。長鎖ポリエーテルジオールA6、好ましくはt≧10のものは、この場合、硬化したコーティングにさらに可撓性をもたらす影響を有する。
【0058】
ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7
必ずしも必要ではないが好ましくは、本発明のコーティング材料組成物は、ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7、好ましくはポリエーテル修飾メチルポリシロキサンを、少量含む。塗料ベース成分Aの総質量に対して、好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~4質量%、及び非常に好ましくは1~3質量%のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン、さらに具体的には上記の量のポリエーテル修飾メチルポリシロキサンを添加することにより、硬化した、コーティングした繊維強化構成要素の型からの離型効果に対する種A3の効果が改善される。
【0059】
顔料A8及び/又はフィラーA8
本発明のコーティング材料組成物は、顔料入りの及び/又はフィラーで充填された形態で存在し得る。使用する顔料及びフィラーは、原則としてすべての有機及び無機顔料及びフィラーであり得る。
【0060】
本発明の目的のために、顔料とフィラーとの間に明確な区別をする必要はない。実際の区別では、しばしば屈折率が用いられる。この率が1.7を超える場合、通常「顔料」という用語を、この数値より低い場合、「フィラー」という用語を使用する。
【0061】
典型的な無機顔料としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及び酸化クロムのような酸化物顔料及びオキシド水酸化物顔料、例えばビスマス-モリブデン-バナジウム酸化物イエロー、クロム-チタンイエロー、スピネルブルー、鉄-マンガンブラウン、亜鉛-鉄ブラウン、鉄-マンガンブラック及びスピネルブラックのような混合相酸化物顔料、硫化亜鉛のような硫化物顔料及び硫化セレン顔料、例えばリトポン、カドミウムイエロー及びカドミウムレッド、例えばクロムイエロー、モリブデンオレンジ及びモリブデンレッドのような混合相クロム酸塩及びクロム酸塩-モリブデン顔料、例えばプルシアンブルーのような錯塩顔料、例えばケイ酸アルミニウム及びウルトラマリン(ブルー、バイオレット及びレッド)のようなケイ酸塩顔料、例えばアルミニウムのような化学元素からなる顔料、銅-亜鉛合金、及び特に顔料カーボンブラック、例えば硫酸バリウムのような他の顔料が挙げられる。
【0062】
典型的な有機顔料には、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及び例えばペリレン顔料及びフタロシアニン顔料などの多環式顔料がある。
【0063】
典型的な無機フィラーには、例えばタルク及びカオリンのようなケイ酸塩、例えば沈降シリカ又はヒュームドシリカのようなシリカ、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムのような酸化物、例えば沈降硫酸バリウム及び硫酸カルシウムのような硫酸塩、例えば、各種の炭酸塩がある。
【0064】
添加剤A9
本発明のコーティング材料組成物は、構成成分A1~A8とは異なる、湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤の群からの、添加剤を含み得る。本発明のコーティング材料組成物が1種以上の顔料A8及び/又はフィラーA8を含む場合特に、湿潤剤及び分散剤を使用する。
【0065】
硬化成分Bの構成成分
ポリイソシアネートB1
硬化成分Bは、2.4を超え5までの、好ましくは2.6~4、さらに好ましくは2.8~3.6のNCO基官能価を有するポリイソシアネートB1を含む。
【0066】
ポリイソシアネートB1は、好ましくはジイソシアネートのオリゴマー、好ましくは三量体又は四量体である。さらに好ましくは、それらはジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネート及び/又はビウレット、非常に好ましくはイミノオキサジアジンジオン及び/又はアロファネート基を含有する三量体である。
【0067】
さらに好ましくは、硬化成分BのポリイソシアネートB1は、脂肪族及び/又は脂環式、非常に好ましくは脂肪族のポリイソシアネートである。
【0068】
特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、非常に具体的にはヘキサメチレンジイソシアネートが、前述のオリゴマー、特に前述の三量体又は四量体のジイソシアネートのベースとしての役目を果たす。
【0069】
非常に好ましくは、硬化成分Bは、脂肪族ジイソシアネートの三量体及び/又は四量体、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのみからなる群から選択される脂肪族ジイソシアネートの三量体をベースとする脂肪族ポリイソシアネートB1を含み、ポリイソシアネートは、少なくとも1種のイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート及び/又はアロファネート構造を含有する。
【0070】
ポリイソシアネートB1又はポリイソシアネートB1の組み合わせを選択することにより、得られる硬化したコーティングの硬度に影響を与えることが可能である。
【0071】
特に、イミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートB1を使用すると、特定の硬度のコーティングが得られ、それにより、基材構造が硬化したコーティング表面に伝播して望ましくないうねりを表面に構成することを妨げる。この種のポリイソシアネートは、例えばCovestro社からDesmodur N3900という名称で入手可能である。
【0072】
同様の結果は、例えばCovestro社からDesmodur N3800の名称で得ることができる種類の、イソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネートB1で達成することができ、コーティングは依然として硬いが、より可撓性がある。
【0073】
アロファネート構造を含有するポリイソシアネートB1は、排他的ではないが、好ましくは、本発明の顔料入りコーティング材料組成物、特に構成成分A5も含むものに使用する。アロファネート構造を含有するポリイソシアネートB1は、同様に、例えばDesmodur N3500の名称でCovestro社から入手可能である。
【0074】
さらなるコーティング材料構成成分
さらなる添加剤A10及び/又はB2
塗料ベース構成成分A1~A9とは異なるさらなる添加剤A10は、もしそれらが使用される場合、一般に塗料ベース成分Aの構成成分である。
【0075】
しかしながら、これらのさらなる添加剤が硬化成分Bに対して反応性がない場合、それらは原則として、硬化成分Bの添加剤B2としても使用され得る。
【0076】
適した添加剤A10及び/又はB2の例には、UV吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、熱不安定ラジカル開始剤、架橋触媒A4以外の架橋触媒、他の構成成分のポリオールA10以外のポリオール、例えば単糖又は二糖又はアルジトール、例えば特に、ソルビトール、脱気剤(deaerating agent)、滑剤、重合防止剤、消泡剤、乳化剤、接着促進剤、フィルム形成補助剤又は難燃剤がある。その他の適したコーティング添加剤の例は、Johan Bieleman、Wiley-VCH、Weinheim、ニューヨーク、1998年のLackadditive教科書[Additives for Coatings]に記載されている。
【0077】
本発明のコーティング材料組成物の望ましくない構成成分は、固形分の決定(110℃、60分、ASTM D2369(2015年))で揮発性のものである。本発明によれば、このような構成成分の割合は、本発明のコーティング材料組成物の総質量に対して、最大で4質量%、好ましくは最大で3、なおよいのは最大で2、又は理想的には最大で1質量%である。この種の望ましくない構成成分の例は、コーティング材料組成物中の遊離イソシアネート基に対して非反応性の水及び揮発性有機溶媒である。しかしながら、例えば顔料やフィラーからの残留水分によって水がコーティング材料に入ること、又は揮発性有機溶媒の予備溶液としてのみ利用可能な或る特定の添加剤を介してそのような揮発性有機溶媒が入ることは、部分的に避けられないので、上記の制限内のこれらの種類の望ましくない構成成分は、一般に許容可能である。しかし好ましくは、そのような構成成分は、それらを含有する構成成分を使用する前に乾燥又は蒸留によって除去する、又は揮発性有機溶媒の場合、塗料ベース又は硬化剤で使用する前に反応性希釈剤に置き換える。
【0078】
本発明の二成分コーティング材料組成物の好ましい実施形態の例
塗料ベース成分Aは、好ましくは
i. エステル基を含有するポリオールの群から選択され、且つ360~440mgKOH/gのヒドロキシル価を有し3~4のヒドロキシル基官能価を有する、1種以上の分岐脂肪族ポリオールA1、
ii. エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは5~18個の炭素原子を有するp価の分岐飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に2個の第三級アミノ基を含み、及びpは2~4である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2、
iii. 一般式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖のラジカル又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールのラジカルであり、AOはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、sは0~30である)の1種以上の種A3、
iv. ジアルキルスズジカルボキシレート及びジアルキルスズジメルカプチドの群から選択される1種以上の架橋触媒A4、
v. 2個の第二級アミノ基、及び120~280mgKOH/gのアミン価を有する1種以上のポリアミンA5(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)、
vi. プロピレンオキシド単位及び任意にエチレンオキシド単位を含む任意の1種以上のポリエーテルジオールA6、
vii. 1種以上のポリエーテル修飾メチルポリシロキサンA7、
viii. 任意の1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8、及び
ix. 湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤からなる群から選択される1種以上の添加剤A9(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)、を含む。
【0079】
塗料ベース成分Aは、さらに好ましくは
i. エステル基を含有するポリオールの群から選択され、且つ340~460mgKOH/gのヒドロキシル価を有し3~4のヒドロキシル基官能価を有する、1種以上の分岐脂肪族ポリオールA1、
ii. エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは7~12個の炭素原子を有するp価の分岐飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に2個の第三級アミノ基を含み、及びpは2~4である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2、
iii. 一般式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖のラジカル又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールのラジカルであり、AOはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、sは0~30である)の1種以上の種A3、
iv. ジアルキルスズジカルボキシレート及びジアルキルスズジメルカプチドの群から選択される1種以上の架橋触媒A4、
v. 少なくとも2個の第二級アミノ基、及び150~250mgKOH/gのアミン価を有する1種以上のポリアミンA5(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)、
vi. プロピレンオキシド単位及び任意にエチレンオキシド単位を含む任意の1種以上のポリエーテルジオールA6、
vii. 1種以上のポリエーテル修飾メチルポリシロキサンA7、
viii. 任意の1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8、及び
ix. 湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤からなる群から選択される1種以上の添加剤A9(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)、を含む。
【0080】
塗料ベース成分Aは、特に好ましくは
i. エステル基を含有するポリオールの群から選択され、且つ340~460mgKOH/gのヒドロキシル価を有し3~4のヒドロキシル基官能価を有する、1種以上の分岐脂肪族ポリオールA1、
ii. エーテル基及びエステル基を含まない一般式(I)
-(OH) (I)
(式中、Rは、2個のすぐ隣接するヒドロキシル基の間に存在する炭素原子を7~12個、最大で2~6個有するp価の分岐飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、ラジカルRは任意に2個の第三級アミノ基を含み、及びpは2~4である)の1種以上の脂肪族ポリオールA2であって、650~850mgKOH/gのヒドロキシル価を有する1種又は複数種のポリオールA2、
iii. 一般式(II)
-(C=O)-O-(AO)-R (II)
(式中、Rは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素ラジカルであり、RはH、ラジカルPO(OH)、又は任意に部分的にリン酸化された単糖のラジカル又は任意に部分的にリン酸化されたアルジトールのラジカルであり、AOはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1種以上のアルキレンオキシドラジカルを表し、rは0又は1であり、及び少なくとも1種の種についてsは0であり、及び少なくとも1種のさらなる種についてsは2~25、好ましくは6~20である)の2種以上の種A3、
iv. ジアルキルスズジカルボキシレートの群から選択される架橋触媒A4、
v. 1種以上のポリアミンA5(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)であって、少なくとも2個の第二級アミノ基、及び150~250mgKOH/gのアミン価を有し、一般式(V)
【化4】
(式中、
ラジカルRは、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する分岐又は非分岐のアルキルラジカルであり、
ラジカルRは、6~24個の炭素原子を有するw価の脂肪族及び/又は脂環式炭化水素ラジカルであり、及び
wは2~4である)
の構造を有する1種又は複数種のポリアミンA5、
vi. 50mol%を超えるプロピレンオキシドラジカル及び任意にエチレンオキシドラジカルを含む任意の1種以上のポリエーテルジオールA6、
vii. 1種以上のポリエーテル修飾メチルポリシロキサンA7、
viii. 任意の1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8、及び
ix. 湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー助剤及び流れ制御剤からなる群から選択される1種以上の添加剤A9(塗料ベース成分A中に1種以上の顔料A8及び/又は1種以上のフィラーA8も存在する場合)、を含む。
【0081】
硬化成分Bは、好ましくは
i. 平均2.4~4個のNCO基を有する1種以上の脂肪族ポリイソシアネートB1
を含む。
【0082】
硬化成分Bは、さらに好ましくは
i. 平均2.6~4個のNCO基を有し、ジイソシアネートの三量体及び/又は四量体であり、三量体及び/又は四量体がイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネート及びビウレットの群から選択される、1種以上の脂肪族ポリイソシアネートB1
を含む。
【0083】
硬化成分Bは、特に好ましくは
i. 平均2.8~3.6個のNCO基を有し、ジイソシアネートの三量体及び/又は四量体であり、三量体及び/又は四量体がイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート及びアロファネートの群から選択され、ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される、1種以上の脂肪族ポリイソシアネートB1
を含む。
【0084】
使用する構成成分の量
以下に指定する、塗料ベース成分A中の構成成分A1~A10、及び硬化成分中のB1及びB2の百分率割合は、本発明の上記のすべての実施形態に有効である。従って、百分率割合は、当該構成成分の最も広い定義、及び当該構成成分の最も好ましい変形の両方に、等しく適用される。これは、当該構成成分が前記構成成分の1種又は複数種からなるかどうかに関係なく当てはまる。
【0085】
本発明の二成分コーティング材料組成物の総質量内の、構成成分A1~A9及びB1の質量合計は、好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、非常に好ましくは少なくとも97又は少なくとも98質量%である。特に好ましくは、本発明の二成分コーティング材料組成物は、構成成分A1~A9及びB1からなる。
【0086】
本発明の二成分コーティング材料組成物が構成成分A8を含有しないものである場合、構成成分A1、A2、A3、A4、A6、A7、及びB1の質量合計は、好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、非常に好ましくは少なくとも97又は98質量%である。そのような場合、本発明の二成分コーティング材料組成物は、非常に好ましくは、構成成分A1~A4、A6、A7、及びB1からなる。
【0087】
構成成分A1、A2、及び存在する場合、A5の量は、塗料ベース成分Aにおいて、広い範囲内で変化し得る。ここで、構成成分A1、A2、及びA5の質量合計は、塗料ベース成分Aの総質量に対して、75~95質量%、さらに好ましくは80~93質量%、非常に好ましくは82~90質量%であることが好ましい。
【0088】
構成成分A1及びA2の質量合計に対する構成成分A1の量は、同様に広い範囲内で変化し得る。好ましくは、構成成分A1及びA2の質量合計に対する構成成分A1の割合は、50質量%を超え、さらに好ましくは55質量%を超え、及び80質量%未満、非常に好ましくは58~75質量%又は60~70質量%である。
【0089】
種A3の全体は、塗料ベース成分の総質量に対して、好ましくは1~7質量%、さらに好ましくは2~6質量%、非常に好ましくは3~5質量%の量で存在する。
【0090】
1種又は複数種の架橋触媒A4は、塗料ベース成分Aの総質量に対して、好ましくは0.15~1.5質量%、さらに好ましくは0.2~1.0質量%、さらに具体的には0.25~0.8質量%の量で使用される。
【0091】
本発明の二成分コーティング材料組成物中に1種以上の構成成分A5がある場合、その割合は、構成成分A1、A2、及びA5の質量合計内で、好ましくは50質量%未満、さらに好ましくは45質量%未満、さらに好ましくは40質量%未満、しかし好ましくは10質量%を超え、さらに好ましくは20質量%を超え、非常に好ましくは30質量%を超える。
【0092】
本発明の二成分コーティング材料組成物中に1種以上のポリエーテルジオールA6がある場合、その量は、塗料ベース成分Aの総質量に対して、好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは2~8質量%、非常に好ましくは3~7質量%又は4~6質量%である。
【0093】
本発明の二成分コーティング材料組成物中に1種以上のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンA7がある場合、その量は、塗料ベース成分Aの総質量に対して、好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~4質量%、非常に好ましくは1~3質量%又は2~3質量%である。
【0094】
本発明の二成分コーティング材料組成物中の顔料A8及び/又はフィラーA8の量は、広い範囲内で変化し得る。顔料及び/又はフィラーの総量は、塗料ベース成分Aの総質量に対して、顔料の隠蔽力又は望ましい充填度に応じて、好ましくは0.1~20質量%、さらに好ましくは0.3~10質量%、及び非常に好ましくは0.5~5質量%である。
【0095】
本発明の二成分コーティング材料組成物中の添加剤A9の量は、同様に広い範囲内で変化し得る。本発明の二成分コーティング材料組成物中に流れ制御剤が存在する場合、塗料ベース成分Aの総質量に対する前記薬剤の量は、好ましくは0.1~2質量%、さらに好ましくは0.2~1.5質量%、及びさらに好ましくは0.3~1質量%である。同じ量の範囲が好ましくはレオロジー助剤にも有効である。湿潤剤及び分散剤の量は、特に顔料含有量及び/又はフィラー含有量、及び顔料及び/又はフィラーの性質に依存して、より広い範囲内で慣例的に変化する。塗料ベース成分Aの総質量に対する湿潤剤及び分散剤の量は、慣例的に、好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%である。塗料ベース成分の総質量に対する添加剤A9の総量は、好ましくは0~8質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%、非常に好ましくは0.5~4質量%である。
【0096】
硬化成分Bは、好ましくは少なくとも80質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%、及び非常に好ましくは少なくとも95質量%、なおよいのは100質量%のポリイソシアネートB1を含む。しかしながら、硬化成分が、ポリイソシアネートB1の定義の範囲内にない、さらなるジイソシアネート又はポリイソシアネートB3、さらに具体的には、2.4未満又は5を超えるNCO官能価を有するものであることも可能である。
【0097】
本発明の二成分コーティング材料組成物の総質量に対して、任意の添加剤A10及びB2は、0~最大8質量%、好ましくは最大5質量%、例えば0.5~8質量%又は1~5質量%の総量で存在し得る。
【0098】
繊維強化プラスチックをコーティングするための方法
本発明のさらなる主題は、繊維強化プラスチック及び/又はそのようなプラスチックを含む構成要素をコーティングするための方法である。本発明において、構成要素は、通常のように、他の構成要素と併せて、構造集合体を形成する個々の構成要素であると理解される。例えば、構成要素が車体の一部である場合、その構成要素は他の車体構成要素と一緒に組み立てて車体を形成し得る。繊維強化プラスチックをコーティングするための本発明の方法は、繊維強化プラスチックで作製された構成要素のコーティングの例を参照して記載する。しかしながら一般に、構成要素としての役目を果たすことができる繊維強化プラスチックの目的に関係なく、本発明は一般に繊維強化プラスチックのコーティングに関するものであり、従って、上記の意味の構成要素に限定されない。従って、以下で繊維強化プラスチックで作製された構成要素のコーティングに言及する場合、これは一般に、「構成要素機能」のない繊維強化プラスチックのコーティングも包含する。
【0099】
本発明の方法では、繊維強化プラスチックで作製された構成要素を好ましくは型に入れる。本発明の方法は、型を離型剤又は離型助剤でコーティングする必要がない。型は、繊維強化プラスチックで作製された構成要素と型との間の隙間を除いて閉じ、これにより型と繊維強化プラスチックで作製された構成要素との間に中空が形成される。その後中空を本発明のコーティング材料で満たし、本発明のコーティング材料を硬化させる。ここで、隙間の幅は、硬化したコーティング材料の膜厚が好ましくは100~250μm、さらに好ましくは125~225μm、非常に好ましくは150~200μmとなるように作製される。硬化後、繊維強化プラスチックで作製されたコーティングした構成要素を、型から取り出すか、又は離型する。繊維強化プラスチックで作製されたコーティングした構成要素は、研磨操作なしで、場合により簡単な洗浄後に、さらなるコーティング材料、例えば、1種以上のベースコート材料及び1種以上のクリアコート材料で直接コーティングし、1枚以上のベースコートフィルム及び1枚以上のクリアコートフィルムをそれぞれ形成してよい。好ましくは、プライマーサーフェーサーコートは、本発明のコーティングした繊維強化プラスチックではなく、代わりにベースコートフィルムに直接塗布する。
【0100】
使用することができるベースコート及びクリアコート材料はそれぞれ、原則として、OEM仕上げ又は再仕上げで従来用いられているあらゆるベースコート及びクリアコート材料である。そのようなベースコート及びクリアコート材料は、例えばBASF Coatings GmbH社から入手可能であり、特に、EverGloss製品ラインからのクリアコートは、特に良好に機能したクリアコート材料に含まれる。
【0101】
本発明の二成分コーティング材料組成物によるコーティングは、好ましくは、KraussMaffei Group GmbH社によって確立され、上記方法の一実施形態とみなされ得る、表面樹脂トランスファー成形プロセスで得られる。このプロセスの記載は、例えば、Kunststoffe3/2014、第86頁~第89頁のRenkl,Schmidhuber&Friesに記載されている。このプロセスに使用することができる機械又は単位は、同様にKraussMaffei Group GmbH社から(例えばMinidosの名称で)入手可能である。
【0102】
典型的には、本発明の二成分コーティング組成物の塗料ベース成分A及び硬化成分Bは、別個の供給ラインを介して単位の混合ヘッドに供給される。供給される塗料ベース成分A及び硬化成分Bは、40℃~80℃、さらに好ましくは50℃~75℃、例えば55℃~70℃の間の温度に予熱されていることが好ましい。これらは、160~200バール、さらに好ましくは170~190バールの範囲の圧力下で供給されることが好ましい。反応時間は、好ましくは100℃~140℃、さらに好ましくは110℃~130℃の型温度で、一般に1~6分、典型的には2~4分の範囲で変化する。
【0103】
繊維強化プラスチックから作製され、本発明の方法で使用される構成成分は、好ましくは予備成形繊維強化プラスチックであり、さらに好ましくは、炭素繊維強化プラスチック(CRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)、及びアラミド繊維強化プラスチック(ARP)からなる群から選択される繊維/プラスチック複合材料である。繊維は、好ましくは繊維集合体の形態で存在し、さらに具体的には織布、敷設スクリム、編布、テープ、不織布及び/又はマットの形態で存在する。
【0104】
繊維が埋め込まれたプラスチックマトリクスは、エポキシ樹脂及びポリウレタンの群から選択されることが好ましく、さらに好ましくはエポキシ樹脂である。
【0105】
特に好ましい繊維強化プラスチック及びそれから作製される構成要素は、エポキシ樹脂マトリクス中に炭素繊維を含む。
【0106】
繊維強化プラスチックで作製された典型的で好ましい構成要素は、自動車の車体部品である。しかしながら、本発明は、自動車の車体部品のコーティングに限定するものではない。その代わりに、あらゆる繊維強化プラスチック及び/又はそれから作製される構成要素は、特にそれらが非常に高級な仕上げ、特にクラスA表面を必要とする適用領域に意図される場合、本発明の方法におけるコーティングに使用し得る。
【0107】
コーティングした繊維強化プラスチックの製造方法
本発明によりコーティングする繊維強化プラスチック及び/又はその構成要素の製造及び予備成形は、好ましくは、その後に行われる、本発明の二成分コーティング材料組成物による、繊維強化プラスチックから作製された構成要素の本発明によるコーティングと同じ型で行い得る。圧縮RTM(圧縮樹脂トランスファー成形プロセス)として知られている方法の場合は、前述の繊維又は前述の繊維の繊維集合体の1つ以上のプライを含む予備成形体を型内に入れ、型キャリアを閉じ、中空を空にする。その後、型を所定の隙間寸法まで開放したまま、繊維を取り囲む液体のマトリクス形成プラスチックを注入する。その後、予備成形体を通して液体プラスチックをプレスし、繊維又は繊維集合体を濡らし、型を閉じる。続いて、液体プラスチックを硬化させて繊維強化プラスチックから作製された構成要素を形成する。硬化が完了した後、型の半分を再び隙間状に開き、型内に残っている繊維強化プラスチックで作製された構成要素は、上述したように、隙間を満たすことによって本発明の二成分コーティング材料で直接コーティングし得る。繊維強化プラスチックから作製された構成要素が型そのものの中で製造されるので、構成要素が型内に既に位置しており、コーティング前に繊維強化プラスチックから作製された構成要素の挿入は、このように省略することが可能である。繊維強化プラスチックから作製されたこのような構成要素の製造は、当業者にはよく知られているので、ここではこれ以上詳細な記載はしない。従って、本発明のさらなる課題は、繊維強化プラスチックから作製されたコーティングした構成要素の製造方法である。
【0108】
従って、本発明の好ましい主題は、繊維強化プラスチック、好ましくは予備成形された繊維強化プラスチックから作製されたコーティングした構成要素を製造する二つの段階の方法でもある。この方法は、第一の段階として、繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素の製造、及び第二の段階として、第一の段階で得られた繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素の、表面樹脂トランスファー成形プロセスによるコーティングを含み、ここで本発明の二成分コーティング材料組成物を第二の段階において繊維強化プラスチック又は構成要素のコーティングに使用する。
【0109】
第二の方法の段階は、好ましくは、方法の第一の段階の直後に、第一の段階で得られた繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素を型から取り出さずに、実行する。従ってこの場合、純粋な表面樹脂トランスファー成形プロセスの場合のように、コーティングした繊維強化構成要素を損傷することなく離型するために離型剤で型をコーティングする必要はない。
【0110】
本発明のコーティング材料の使用方法
本発明のさらなる主題は、本発明の二成分コーティング材料組成物を、繊維強化プラスチック及び/又はそれから作製される構成要素を、好ましくは表面樹脂トランスファー成形プロセスでコーティングするために使用する方法である。
【0111】
特に好ましいのは、本発明の二成分コーティング材料組成物を、二段階法におけるコーティング材料として使用する方法である。この方法は、第一の段階として、繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素の、圧縮樹脂トランスファー成形プロセスによる製造、及び第二の段階として、第一の段階で表面樹脂トランスファー成形プロセスにより得られた繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素のコーティングを含み、ここで本発明の二成分コーティング材料組成物を第二の段階において繊維強化プラスチック又は構成要素のコーティングに使用する。
【0112】
方法の第二の段階は、好ましくは、第一の方法の段階の直後に、第一の段階で得られた繊維強化プラスチック又はそれから作製される構成要素を型から取り出さずに、実行する。よってやはり、第二の段階を実行する前に、離型剤で型をコーティングする必要はない。
【実施例
【0113】
本発明を以下の実施例により説明する。
【0114】
2Kコーティング材料組成物:実施例1~4
表1の数値はすべて質量部の数値である。塗料ベース成分A及び硬化成分B中の構成成分は、各場合とも、合計が100質量部である。使用前に、塗料ベース成分A及び硬化成分Bを上記質量比で互いに均一に混合した。特に明記しない限り、使用したあらゆる構成要素は無溶媒である(100%固体)。
【0115】
実施例1~3の塗料ベース成分Aの調製においては、まず、構成成分A1及びA2を導入し、さらなる構成成分A3、A4、A6、及びA7を、攪拌しながら混合した(最高温度60℃で混合時間約30分)。その後、塗料ベース材料をろ過して排出した。
【0116】
顔料を含有する実施例4の塗料ベース成分Aの調製においては、まず、構成成分A5、A8、A9a、及びA9bからミルベースを調製した。A5を最初に導入し、構成成分A8、A9a、及びA9bを撹拌しながら混合した(混合時間10分、最高温度60℃)。これに続いて、ビーズミル(ミルベース:ビーズ比=1:1.5)中で30分間、2000rpmで最高温度60℃を準拠して、粉砕した(ヘグマン粒度<5μm)。ミルベースを低下させるために、さらなる構成成分を撹拌しながら添加し、最高温度で10分間混合した。その後、塗料ベース材料をろ過して排出した。
【0117】
塗料ベース成分A及び硬化成分Bは、以下に記載するように、単位の混合ヘッドにおいて、上記特定の質量比で、塗布直前まで均一に混合しなかった。
【0118】
【表1】
【0119】
A1:約400mgKOH/gのヒドロキシル価、及び2.2~3の間のヒドロキシル基官能価を有する分岐短鎖ポリエステルポリオール
A2:2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール及び2-ブチル-2-エチルプロパンジオールの混合物(53/47、w/w)
A3:式R-(C=O)O-(AO)-Rの化合物の混合物、(a)R=12~22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和炭化水素ラジカルの混合物、r=0、AO=主にエチレンオキシド単位及びいくつかのプロピレンオキシド単位の混合物、及びR=H(M≒650g/mol)、及び(b)R=21個の炭素原子を有する不飽和炭化水素ラジカル、s=0、及びR=H、を含む、
A4:ジオクチルスズジラウレート
A5:約190mgKOH/gのアミン価を有するポリアスパラギン酸エステルに基づく第二級ジアミン
A6:2個の末端ヒドロキシル基及び約900g/molの数平均分子量(末端基決定による)を有する直鎖プロピレングリコール
A7:ポリエーテル修飾メチルポリシロキサン
A8:高導電性カーボンブラック顔料
A9a:酸性基を有するコポリマーに基づく市販の湿潤剤及び分散剤(1:1メトキシプロピルアセテート/アルキルベンゼン中52%)
A9b:有機的に修飾されたベントナイト粘土に基づく市販の増粘剤
A9c:ポリアクリレートに基づく市販の流れ制御剤
B1a:NCO含有量が23.5質量%のイミノオキサジアジンジオン種のヘキサメチレンジイソシアネート三量体
B1b:NCO含有量が11質量%のイソシアヌレート種のヘキサメチレンジイソシアネート三量体
B1c:NCO含有量が19.5質量%のヘキサメチレンジイソシアネートアロファネート/三量体
【0120】
表面RTMプロセスにおけるコーティングした繊維強化成形品の製造
(A)繊維強化成形品の製造(Minidosエポキシ-RTM/SFT単位MX600、混合ヘッド5/8ULKP-2KVV)
型を開き、外部離型剤を塗布して広げ、炭素繊維予備成形体(Chomarat)を挿入し、型(型キャリアタイプ:CFT380、型閉じ力:250kN)を閉じた。エポキシマトリクス材料(樹脂:Baxxores ER2200(83℃に加熱);硬化剤:Baxxodur EC2120(30℃に加熱))を圧力下で型に導入し(樹脂:132バール、ノズル内のノズル:0.9mm;硬化剤130バール、ノズル:0.4mm)、115~130℃の間の型キャリア温度で5分間硬化させた。
【0121】
(B)繊維強化成形品のコーティング(オーバーモールディング)
工程(A)による繊維強化成形品の製造に続いて、金型を隙間まで開き、実施例1のコーティング材料組成物を圧力下で2個のスロットを通して導入し(塗料ベース成分A:温度65℃、0.5mmスロット、172バール、硬化成分B:温度60℃、0.6mmスロット、180バール)、厚さ200μm(硬化)を有するコーティングを得た。コーティング材料組成物の硬化は、約115~130℃(150秒)の型キャリア温度で行った。コーティングした成形品は問題なく離型可能であり、残留物はなかった。
【0122】
本発明によりコーティングした成形品は、必要であれば、研磨手順は言うまでもなく、費用がかかり不便な洗浄作業なしに再コーティングすることができる。しかしながら、輸送又は長期貯蔵後は、市販のプラスチッククリーナーを使用して、コーティングした成形品を簡単に拭くことが望ましい。他の前処理は必要ない。
【0123】
本発明によりコーティングした繊維強化成形品は、市販の標準の再仕上げベースコート材料(BC JW62-7A52;23℃で10分、次いで80℃で15分)及びクリアコート材料(CC JF71-0408、EverGloss、23℃で10分、次いで80℃で45分)で再コーティングし、硬化させた(製品は両方ともBASF Coatings GmbH社から入手可能)。
【0124】
その後、DIN EN ISO6270-2(2005-09)による一定条件試験を実行し(40℃で240時間)、その後、DIN EN ISO2409(2013-06;DE)によるクロスカット試験(暴露終了後1時間及び24時間)、及びDIN 55662(2009-12)による蒸気ジェット接着試験(暴露終了後1時間及び24時間)により、膨れ(目視)を評価した。膨れは観察されなかった。クロスカット試験及び蒸気ジェット試験でも、コーティング膜の剥離は見られなかった。