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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】銅インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20230310BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20230310BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230310BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230310BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C09D11/52
C09D11/104
H01B1/22 A
H01B13/00 503D
H05K1/09 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020505466
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 IB2018055727
(87)【国際公開番号】W WO2019025970
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】62/539,610
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500276482
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デオール、バーバナ
(72)【発明者】
【氏名】パケ、シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】マレンファン、パトリック
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051569(JP,A)
【文献】特開2010-242118(JP,A)
【文献】特開2004-277868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/52
H05K 1/09
C23C 18/08-18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化銅およびジエタノールアミンを含む銅系インクであって、
前記水酸化銅および前記ジエタノールアミンが、前記インク中で錯体を形成し、1:2.5~1:3.5のモル比で存在する、インク
【請求項2】
前記モル比が1:3である、請求項1に記載のインク
【請求項3】
前記水酸化銅が、前記インクの総重量に基づいて、5重量%~40重量%の銅を前記インク中に提供する量の水酸化銅一水和物を含む、請求項1又は2に記載のインク
【請求項4】
金属充填剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク
【請求項5】
前記金属充填剤が、前記水酸化銅からの銅の重量に基づいて、1重量%~40重量%の量で前記インク中に存在する、請求項4に記載のインク
【請求項6】
前記金属充填剤が、銅ナノ粒子、硝酸銀、またはそれらの混合物を含む、請求項4または5に記載のインク
【請求項7】
溶媒および結合剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク
【請求項8】
前記結合剤が、ヒドロキシル末端ポリエステルおよび/またはカルボキシル末端ポリエステルを含む、請求項7に記載のインク
【請求項9】
基板上に導電性銅コーティングを作成する方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の銅系インクで基板をコーティングすることと、
前記基板上の前記インクを分解して、前記基板上に導電性銅コーティングを形成することと
を含む方法
【請求項10】
前記基板上の前記インクが、100~150℃の温度で10~45分間乾燥される、請求項9に記載の方法
【請求項11】
前記分解が光焼結を含む、請求項9又は10に記載の方法
【請求項12】
前記基板上の前記インクのコーティングがスクリーン印刷を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の方法により作成された導電性銅コーティングを有する基板を電子デバイスの上に含む、前記電子デバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、印刷インク、特にプリンテッドエレクトロニクス用の印刷インクに関する。
【背景技術】
【0002】
低価格、高導電率および耐酸化性は、プリンテッドエレクトロニクスにおけるインクの、重要な目標である。金および銀は高価であるが、安定性、つまり、耐酸化性がある。金および銀と比較すると、銅はより安価で、同等の導電率を有する。しかしながら、印刷を経ると同等の導電率が得られない場合が多く、銅は酸化されやすく、それが経時的に導電率を低下させる。使用される銅インクの主な種類は、金属ナノ粒子ベースインク、有機金属分解(MOD)インク、銅フレークインク、および銀コート銅フレークインクである。
【0003】
ナノ粒子ベース銅インクは、一般に高価であるが、容易に酸化され、非常に高温での焼結、および/またはレーザー/フラッシュ光焼結を必要とする。廉価版(Novacentrix(商標)など)は、厚紙上に良好にスクリーン印刷するのみであり、光焼結(photo-sinter)させなければならない。酸化を防ぐために、2種の金属で構成されるAg-Cuナノ粒子インクが提案されているが、そのようなインクは、まだ比較的高価である。
【0004】
MODインクでは、より低温での熱焼結が可能であるが、典型的には、ギ酸銅などの高価な銅前駆体が使用される。さらにMODインクは、典型的に粘性がなく、それはスクリーン印刷を不可能にする。強酸蒸気、つまりギ酸による腐食、および金属含有量の少なさによる低導電率は、Cu MODインクに多く見られる、その他の制約である。従来のフレーク/ナノ粒子インクに対するMODインクの主な利点は、MOD化合物が低温焼結での滑らかな膜を可能にし、高い解像特性を生み出すことである。しかしながら、MODインクは、ギ酸銅など高価な金属塩と有機成分との混合物であり、インク配合物中の銅の荷重が低く、印刷されたトレースの電気伝導率の低下をもたらし得る。さらに、銅トレースと大気中の酸素との反応性(すなわち酸化)が遅いことが、時間の経過によるトレースの導電率低下をもたらす。
【0005】
したがって、低コスト、高導電率かつ耐酸化性であり、熱焼結および/または光焼結して導電性トレース(conducting trace)を作成できる、スクリーン印刷可能なインクが必要である。プラスチック上にスクリーン印刷可能で、光焼結または熱焼結できる低コストの銅インクには、当面の需要がある。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、水酸化銅およびジエタノールアミンを含む銅系インクを提供する。
【0007】
別の態様では、基板上に導電性銅コーティングを作成する方法であって、水酸化銅およびジエタノールアミンを含む銅系インクで基板をコーティングすることと、基板上のインクを分解して、基板上に導電性銅コーティングを形成することとを含む方法を提供する。
【0008】
有利なことに、このインクは低コストであり、スクリーン印刷用途向けに配合することができる。インクのミクロン厚のトレースをスクリーン印刷し、最大約500ppmの酸素の存在下で熱焼結するか、または空気中で光焼結して、導電性の高い銅特性を生み出すことができる。このインクから作成された焼結銅トレースは、他の銅インクから作成されたトレースと比較して、空気安定性が向上した。焼結銅トレースは、良好な接着強度を有する。焼結銅トレースの導電率および/もしくは耐酸化性をさらに高めるため、ならびに/またはインクのスクリーン印刷適性をさらに高めるために、銅ナノ粒子および/または銀塩を含めることができる。約20mΩ/□/mil以下のシート抵抗率を有する焼結銅トレースが、優れた解像力の5~20mil幅のスクリーン印刷線に対して得られる。
【0009】
さらなる特性は、以下の詳細な説明の過程で記載されるか、または明らかになるだろう。本明細書に記載される各特性は、他の説明される特性のいずれか1つまたは複数との、任意の組み合わせで利用できること、および各特性は、当業者に明らかな場合を除き、必ずしも別の特性の存在に依存しないことを理解されたい。
【0010】
より明確な理解のために、添付の図面を参照して、好ましい実施形態を例により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】水酸化銅一水和物(Cu(OH)・HO)およびジエタノールアミンを含む、種々のインクのサーモグラムを示す。
図2】水酸化銅一水和物(Cu(OH)・HO)およびジエタノールアミンを含むインクの、保存時間の関数としてのサーモグラムを示す。
図3】Kapton(商標)基板上の、水酸化銅一水和物(Cu(OH)・HO)およびジエタノールアミンを含む種々のインクから調製したテープキャストトレース(厚さ5μm、長さ10cm)の、500ppmのOを含むN下で、異なる温度で熱焼結した場合の基板温度(℃)に対する抵抗値(Ω)のグラフを示す。
図4】Kapton(商標)基板上の、Cu(OH)・HOおよびジエタノールアミン(1:3)を含む銅インクを使用して調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の、走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。
図5】Cu(OH)・HOおよびジエタノールアミン(1:3)および銅ナノ粒子(Cu(OH)・HOからのCuの10重量%)を含む銅インクを使用して、Kapton(商標)基板上に調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の、走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。
図6】Cu(OH)・HOおよびジエタノールアミン(1:3)および硝酸銀(Cu(OH)・HOからのCuの10重量%)を含む銅インクを使用して、Kapton(商標)基板上に調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の、走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。
図7】Cu(OH)・HOおよびジエタノールアミン(1:3)および銅ナノ粒子(Cu(OH)・HOからのCuの10重量%)および硝酸銀(Cu(OH)・HOからのCuの10重量%)を含む銅インクを使用して、Kapton(商標)基板上に調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の、走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
銅系インクは、水酸化銅およびジエタノールアミンを含む。ジエタノールアミン(HN(CHCHOH))は、容易に入手できる有機化合物である。水酸化銅(Cu(OH))は、容易に入手できる無機化合物であり、水和されてもされなくてもよい。水和水酸化銅は、一水和物(Cu(OH)・HO)を含むことができ、それは使いやすく、無水水酸化銅よりも安価である。インク中で、水酸化銅およびジエタノールアミンが錯体を形成する。水酸化銅は、インクの総重量に基づいて約5重量%~約40重量%の銅を提供する量で、インク中に存在することが好ましい。水酸化銅が提供する銅の量は、より好ましくは、インクの総重量に基づいて、約10重量%~約30重量%の範囲である。好ましくは、水酸化銅およびジエタノールアミンは、約1:2.5~約1:3.5のモル比でインク中に存在する。より好ましくは、水酸化銅とジエタノールアミンとのモル比は、約1:3である。このようなモル比は、インクから形成される導電性銅トレースの導電率を改善するのに、特に有利である。
【0013】
インクは、特定の目的用のインク配合のために、またはインクから形成される導電性トレース(conductive trace)の電気的、物理的、および/もしくは機械的特性を改善するために有用な、1つ以上の他の成分を含んでもよい。様々な実施形態において、インクは、充填剤、結合剤、表面張力調整剤、消泡剤、チキソトロピー調整剤、溶媒、または任意のそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0014】
充填剤、例えば別の金属含有化合物または他の金属含有化合物の混合物は、インク中に存在して、インクから形成された導電性トレースの導電率を改善できる。充填剤は、銅ナノ粒子(CuNP)または金属塩を含んでもよい。銅ナノ粒子(CuNP)は、約1~1000nm、好ましくは約1~500nm、より好ましくは約1~100nmの範囲の最大径による平均サイズを有する銅粒子である。銅ナノ粒子は、フレーク、ナノワイヤ、針、実質的な球形またはその他の形状であってもよい。金属塩は、好ましくは銀塩または金塩であり、より好ましくは銀塩である。金属塩は、1つ以上のアニオン、好ましくは鉱酸から誘導されたアニオンを含む。金属塩中のアニオンは、酸化物、塩化物、臭化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩または硝酸塩であることが好ましい。硝酸塩が特に好ましい。特に好ましい金属塩充填剤は、硝酸銀である。充填剤は、好ましくは、インク中の水酸化銅からの銅の重量に基づいて、最大約40重量%の量でインク中に存在する。好ましくは、充填剤の量は、インク中の水酸化銅からの銅の重量に基づいて、約1重量%~約40重量%、または約5重量%~約30重量%、または約10重量%~約30重量%の範囲である。
【0015】
結合剤、例えば有機ポリマー結合剤は、特定の堆積プロセスのための加工助剤としてインク中に存在してよい。有機ポリマー結合剤は、任意の好適なポリマー、好ましくは熱可塑性またはエラストマーポリマーであってもよい。結合剤の非限定的ないくつかの例は、セルロースポリマー、ポリアクリラート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリビニルピロリドン、ポリピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリオール、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレンアリルアルコール、ポリアルキレンカルボナート、フッ素樹脂、フッ素エラストマー、熱可塑性エラストマーおよびそれらの混合物である。有機ポリマー結合剤は、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。特に好ましい結合剤は、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミドまたはそれらの任意の混合物を含む。ポリマー結合剤は、好ましくはポリエステルを含む。好適なポリエステルは市販されており、またはポリアルコールと、ポリカルボン酸およびそれぞれの無水物との縮合により製造できる。好ましいポリエステルは、ヒドロキシル官能化および/またはカルボキシル官能化されている。ポリエステルは、直鎖または分枝であってもよい。固体または液体、および多様な溶液形態のポリエステルを利用できる。特に好ましい実施形態では、ポリマー結合剤は、ヒドロキシル末端ポリエステルおよび/またはカルボキシル末端ポリエステル、例えばRokrapol(商標)7075を含む。ポリマー結合剤は、任意の好適な量でインク中に存在できる。有機ポリマー結合剤は、任意の好適な量で、好ましくはインクの総重量に基づいて、約0.05重量%~約10重量%の範囲でインク中に存在できる。より好ましくは、その量は、約0.05重量%~約5重量%、または約0.2重量%から約2重量%、または約0.2重量%から約1重量%の範囲である。一実施形態では、ポリマー結合剤は、約0.02~0.8重量%、より好ましくは約0.05~0.6重量%の量でインク中に存在する。
【0016】
表面張力調整剤は、インクの流れおよびレベリング特性を改善する、任意の好適な添加剤であってもよい。いくつかの非限定的な例は、界面活性剤(例えば、カチオン性またはアニオン性界面活性剤)、アルコール(例えば、プロパノール)、グリコール酸、乳酸、およびそれらの混合物である。表面張力調整剤は、任意の好適な量で、好ましくはインクの総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の範囲でインク中に存在できる。より好ましくは、その量は、約0.5重量%~約4重量%、または約0.8重量%~約3重量%の範囲である。特に好ましい一実施形態では、その量は、約1重量%~約2.7重量%の範囲である。
【0017】
消泡剤は、任意の好適な消泡添加剤であってもよい。いくつかの非限定的な例は、フルオロシリコーン、鉱油、植物油、ポリシロキサン、エステルワックス、脂肪アルコール、グリセロール、ステアリン酸塩、シリコーン、ポリプロピレンベースのポリエーテルおよびそれらの混合物である。グリセロールおよびポリプロピレンベースのポリエーテルが、特に好ましい。消泡剤を使用しない場合、印刷されたトレースの一部は、印刷後に気泡が残る傾向があり、不均一なトレースにつながる。消泡剤は、任意の好適な量で、好ましくはインクの総重量に基づいて、約0.0001重量%~約3重量%の範囲でインク中に存在できる。より好ましくは、その量は、約0.005重量%~約2重量%の範囲である。
【0018】
チキソトロピー調整剤は、任意の好適なチキソトロピー調整添加剤であってもよい。いくつかの非限定的な例は、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、ポリウレタン、アクリルポリマー、ラテックス、ポリビニルアルコール、スチレン/ブタジエン、粘土、粘土誘導体、スルホナート、グアー、キサンタン、セルロース、ローカストガム、アカシアガム、糖類、糖類誘導体、カセイン、コラーゲン、変性ヒマシ油、有機シリコーンおよびそれらの混合物である。チキソトロピー調整剤は、任意の好適な量で、好ましくはインクの総重量に基づいて、約0.05重量%~約1重量%の範囲でインク中に存在できる。より好ましくは、その量は約0.1重量%~約0.8重量%の範囲である。特に好ましい一実施形態では、その量は約0.2重量%~約0.5重量%の範囲である。
【0019】
溶媒は、水性溶媒でも有機溶媒でもよい。場合によっては、1つ以上の有機溶媒と水性溶媒との混合物を利用できる。水性溶媒は、例えば、水および化合物の水溶液、水分散液または水懸濁液を含む。有機溶媒は、芳香族溶媒、非芳香族溶媒、または芳香族溶媒と非芳香族溶媒との混合物であってもよい。芳香族溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ベンジルエーテル、アニソール、ベンゾニトリル、ピリジン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、p-シメン、テトラリン、トリメチルベンゼン(メシチレンなど)、デュレン、p-クメンまたはそれらの任意の混合物を含む。非芳香族溶媒は、例えば、テルペン、グリコールエーテル(ジプロピレングリコールメチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールおよびその誘導体など)、アルコール(メチルシクロヘキサノール、オクタノール、ヘプタノールなど)またはそれらの任意の混合物を含む。ジプロピレングリコールメチルエーテルが、好ましい。溶媒は、任意の好適な量で、好ましくはインクの総重量に基づいて、約1重量%~約50重量%の範囲でインク中に存在できる。より好ましくは、その量は約2重量%~約35重量%、または約5重量%から約25重量%の範囲である。溶媒は、一般にインクのバランスを維持する。
【0020】
インクは、ミキサーで成分を一緒に混合することで配合できる。一般に、任意の混合方法が好適である。しかしながら、遊星遠心混合(例えば、Thinky(商標)ミキサーで)は、特に有用である。混合時間は、インクから形成された導電性トレースの電気的特性に影響を与え得る。インクの適切な混合により、導電性トレースの良好な電気的特性が確保される。混合時間は、好ましくは約25分以下、または約20分以下、または約15分以下である。混合時間は、好ましくは約1分以上、または約5分以上である。
【0021】
分解の前に、インクを基板上に堆積させて基板をコーティングする。好適な基板は、例えば、特にポリエチレンテレフタラート(PET)(Melinex(商標)など)、ポリオレフィン(シリカ充填ポリオレフィン(Teslin(商標))など)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、ポリカルボナート、ポリイミド(Kapton(商標)など)、ポリエーテルイミド(Ultem(商標)など)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーン膜、プリント基板(FR4など)、羊毛、絹、綿、亜麻、黄麻、モーダル、竹、ナイロン、ポリエステル、アクリル、アラミド、スパンデックス、ポリ乳酸、紙、ガラス、金属、誘電性コーティングを含むことができる。
【0022】
インクは、任意の好適な方法、例えば印刷により基板上にコーティングできる。印刷方法は、例えば、スクリーン印刷、ステンシル、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スタンプ印刷、エアブラシ、エアロゾル印刷、植字、またはその他の任意の方法を含むことができる。プロセスの利点は、スクリーン印刷またはステンシルなどの付加的な方法が特に有用であることである。プリンテッドエレクトロニクスデバイスの場合、インクをトレースとして基板上にコーティングしてもよい。
【0023】
基板をインクでコーティングした後、基板上のインクを乾燥および分解して、基板上に銅金属コーティングを形成することができる。乾燥および分解は、任意の好適な技術によって達成されてもよく、その技術および条件は、基板の種類およびインクの特定の組成物によって導かれる。例えば、インクの乾燥および分解は、加熱および/または光焼結(photonic sintering)により達成できる。
【0024】
ある技術では、基板の加熱によってインクコーティングを乾燥および焼結して、金属銅を形成する。加熱は、約100℃以上、約140℃以上、または約165℃以上、または約180℃以上の温度で実施でき、その間、良好な酸化安定性を有する導電性銅コーティングを作成する。温度は、約140℃~約300℃、または約150℃~約280℃、または約160℃~約270℃、または約180℃~約250℃の範囲であってもよい。加熱は、好ましくは約1~180分、例えば5~120分、または5~90分の範囲の時間実施する。加熱を段階的を実施して、最初にインクコーティングを乾燥し、次に乾燥したコーティングを焼結することができる。乾燥は、任意の好適な温度、例えば、約100℃~約150℃の範囲の温度で実施できる。乾燥は、任意の好適な時間、例えば約1~180分間、または5から90分間、または10~45分間実施できる。温度と時間との十分なバランスで焼結を行い、インクを焼結して導電性銅コーティングを形成する。乾燥および/または焼結は、不活性雰囲気(例えば、窒素および/またはアルゴンガス)下で、基板を用いて実施できる。しかしながら、インクの改善された空気安定性によって、酸素の存在下、例えば最大約500ppmの酸素を含む雰囲気中での焼結が可能である。加熱装置の種類も、乾燥および焼結に要する温度および時間に影響する。
【0025】
別の技術では、インクコーティングを熱で乾燥させてから、光焼結させることができる。乾燥は、任意の好適な温度、例えば、約100℃~約150℃の範囲の温度で実施できる。乾燥は、任意の好適な時間、例えば約1~180分間、または5から90分間、または10~45分間実施できる。光焼結システムは、広帯域スペクトル光を送達する高輝度ランプ(パルスキセノンランプなど)を特徴とする場合がある。ランプは、約5~30J/cmのエネルギーをトレースに送達できる。パルス幅は、好ましくは約0.58~1.5msの範囲である。光焼結は、空気中または不活性雰囲気中で実施できる。必要に応じて、レーザー焼結を利用できる。ポリエチレンテレフタラートまたはポリイミド基板を使用する場合、光焼結が特に好適である。
【0026】
インクから形成された焼結銅コーティングは、スクリーン印刷の線幅が5~20milの場合、約20mΩ/□/mil以下、さらには約15mΩ/□/mil以下のシート抵抗率を有し得る。さらに、線の解像力は優れており、5~20milのスクリーン印刷線幅の、焼結後の線幅の変化は、約17%未満、または約10%未満、または約5%未満、または約2.5%未満である。線幅が約5mil程に小さい場合でも、焼結後の線幅の変化は、約17%未満、さらには約5%未満、または約2.5%未満でさえあり得る。さらに、インクから形成された焼結銅コーティングは、柔軟性があり、開回路遮断なしで(つまり、オープン不良なしで)ASTM F1683-02による屈曲および折り曲げ試験に合格できる。20%以下の抵抗率(R)変化は、ASTM F1683-02による屈曲および折り曲げ試験で合格と見なされる。開回路遮断は、導電率の全損失(つまり、無限抵抗)として定義される。
【0027】
焼結銅コーティングが施された基板は、電子デバイス、例えば電気回路(プリント回路基板(PCB)など)、導電性バスバー(太陽電池用など)、センサー(タッチセンサー、装着型センサーなど)、アンテナ(RFIDアンテナなど)、薄膜トランジスター、ダイオード、スマートパッケージ(スマート薬物パッケージなど)、機器および/または車両の適合インサート、ならびにローパスフィルター、周波数選択性表面、高温に耐え得る適合表面上のトランジスターおよびアンテナを含む、多層回路およびMIMデバイス内に組み込むことができる。
【0028】

例1-インクの調製:
水酸化銅とジエタノールアミンとのモル比が1:3である、水酸化銅一水和物(Aldrich)およびジエタノールアミン(Aldrich)、およびCu金属の量に対して0重量%または0.5重量%のカルボキシル末端ポリエステル結合剤(KramerのRokrapol(商標)7075)、およびCu金属の量に対して0重量%または10重量%のCuNP(Advanced Material Inc.のTEKNA(商標))、およびインク総量中のCu金属の量に対して0重量%~10重量%のAgNO(Aldrich)を混合することで、分子インクを配合した。遊星遠心ミキサー(Thinky(商標)ミキサーなど)を使用して、室温で約15~30分間、インクを混合した。
【0029】
例2-インクの熱分析:
インクの熱重量分析は、BOCの高純度アルゴン(グレード5.3)ガス下で、Netzsch TG 209 F1で実施し、Supelco Big-Supelpure(商標)酸素/水分トラップで、残留酸素を捕捉した。
【0030】
表1および図1は、例1に記載のとおり調製された様々なインクの、アルゴン下での熱重量分析の結果を示す。調製したインクはすべて、水酸化銅一水和物(Cu(OH)・HO)およびジエタノールアミン(HN(CHCHOH))を含み、水酸化銅とジエタノールアミンとのモル比は、1:3である。(Cu(OH)・HO)およびジエタノールアミン(HN(CHCHOH))を含むインク(I1)は、I1および少量の他の金属充填剤を含むインク(I2、I3、I4およびI5)と一緒に分析した。他の金属充填剤は、銅ナノ粒子(CuNP)、硝酸銀(AgNO)またはそれらの混合物であった。以下にインク組成を示す。重量%は、Cu(OH)・HOからのCuの重量に基づく。
I1=Cu(OH)・HO+ジエタノールアミン(1:3)
I2=I1+CuNP(10重量%)
I3=I1+CuNP(20重量%)
I4=I1+AgNO(10重量%)
I5=I1+CuNP(10重量%)+AgNO(10重量%)
【0031】
表1は、各インクの熱分解温度、熱分解後に400℃で残った残留物の量(インクの総重量に基づく%)、インク中の金属の量(インクの総重量に基づくCuまたはCu/Agの重量%)、ならびにインクが熱および光による方法で焼結され得るか否か(Y=可、N=不可)を示す。
【表1】
【0032】
結果は、水酸化銅およびジエタノールアミンをベースにしたすべてのインクが、熱焼結および光焼結できたことを示す。さらに、I1の分解は約180℃で、少量のCuNPおよび/または銀(Ag)塩の添加によって、分解温度をさらに下げることができる。
【0033】
図2は、アルゴン下でのインクI1の熱重量分析の結果を、保存時間の関数として示す。室温で1日間保存した後、インクI1の分解温度は179.1℃であったが、5日間保存した後、I1の分解温度は172.8℃であった。さらに、5日間の保存後、I1の熱分解が、1日間保存後の熱分解(17.96%)よりも低い、約400℃で残留質量(16.75%)になった。
【0034】
例3-テープキャストトレース(tape cast trace)の電気的特性:
Kapton(商標)基板上にテープキャストトレース(厚さ5μm、長さ10cm)を、インクI1、I2、I3、I4およびI5から調製し、500ppmの酸素(O)を含む窒素(N)下で、異なる温度で熱焼結した。トレースの抵抗値を測定し、表2および図3に結果を示す。CuNPおよびAg塩の一方または両方を添加すると、熱焼結温度が低下し、より良好な導電性トレース(つまり、抵抗値のより低いトレース)が得られることは明らかである。約200℃以上の温度での焼結後、約100Ω以下の抵抗値が可能である。
【表2】
【0035】
例4-テープキャストトレースの形態的特性評価およびエネルギー分散分光法(EDS):
図4は、Kapton(商標)基板上にインクI1使用して調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。SEM画像は、膜が多孔質形態を有することを示し、EDSは、膜が純銅で形成されていることを示す。
【0036】
図5は、Kapton(商標)基板上にインクI2使用して調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。SEMおよびEDSは、銅ナノ粒子の添加により、非多孔質で高密度な、純銅製の膜が生じることを示す。
【0037】
図6は、Kapton(商標)基板上にインクI4使用して調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。SEMおよびEDSは、Ag塩の少量の添加により、純銅/Ag複合膜を形成する相互接続として機能する、銀ナノ粒子(輝点)が形成されることを示す。
【0038】
図7は、Kapton(商標)基板上にインクI5使用して調製した銅膜(厚さ5μm、面積1cm)の走査電子顕微鏡(SEM)(上)、およびエネルギー分散分光法(EDS)(下)による分析を示す。SEMおよびEDSは、CuNPの添加により、高密度の幕が形成され、Ag塩の少量の添加により、純銅/Ag複合膜を形成する相互接続として機能する、銀-Cu複合ナノ粒子(輝点)が形成されることを示す。
【0039】
例5-スクリーン印刷したCuトレースの焼結:
インクI6~I14は、例1に記載のとおり配合され、表3に記載されている他の成分と共に、Cu(OH)・HOおよびジエタノールアミン(1:3)を含む。
【表3】
【0040】
各インクを基板上にスクリーン印刷してトレースを形成し、焼結した。インクは、Kapton(商標)およびまたはMelinex(商標)膜の8.5インチ×11インチのシート上に、平台型ATMAスクリーン印刷機またはAmerican M&M S-912M小型スクリーン印刷機を使用して、SS403ステンレス鋼メッシュ(Dynamesh、IL)上に支持されたKiwocol乳剤(10~14μm)上に光像形成されたパターンを通して、スクリーン印刷した。熱処理するサンプルでは、印刷したトレースを110℃で30分間、次に250℃(基板温度)で15分間焼結して、水酸化Cu/ジエタノールアミンMODインクを金属銅に変換した。光焼結で処理するサンプルでは、印刷したトレースを140℃で15~45分間乾燥して溶媒を除去し、続いてPulseForge(商標)1300 Novacentrix光焼結システム(photonic curing system)を使用して、周囲条件下で処理した。
【0041】
例5-1-結合剤または充填剤を含まないインク(I6):
インクI6をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で15分間乾燥させ、290V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅トレースを形成した。表4に銅トレースの物理的および電気的特性を示し、表5に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験(flex & crease test)による柔軟性)を示す。表4および表5に示すように、結合剤または充填剤を含まないインクI6は、適度な屈曲特性を備えた光焼結導電性銅トレースをもたらす。インクI6の熱焼結により、非導電性の焼結銅トレースが作成されることが分かった。
【表4】

【表5】
【0042】
例5-2-CuNP充填剤を含むが、結合剤を含まないインク(I7):
インクI7はKapton(商標)基板上にスクリーン印刷され、最初に110℃で30分間、次に250℃で15分間、500ppmの酸素を含むNの雰囲気下で熱焼結された。表6および表7に、作成された銅トレースの物理的および電気的特性を示す。表6および表7に示すように、インクへのCuNPの添加により、スクリーン印刷された熱焼結導電性銅トレースの作成が可能になった。
【表6】

【表7】
【0043】
インクI7をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で45分間乾燥させ、290V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅トレースを形成した。表8に銅トレースの物理的および電気的特性を示し、表9に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表8と表4との比較から分かるように、インクにCuNPを添加すると、光焼結銅トレースの導電率がさらに向上する。表9に示すように、インクI7から作成された光焼結銅トレースは、すべての機械的試験に合格した。いずれの試験でも、オープン不良はなかった。
【表8】

【表9】
【0044】
例5-3-結合剤およびCuNP充填剤を含むインク(I8):
インクI8をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で45分間乾燥させ、290V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅トレースを形成した。表10に銅トレースの物理的および電気的特性を示し、表11に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表10に示すように、インクへの結合剤の添加は、やはり良好な導電率を有する焼結銅トレースをもたらす。表11に示すように、インクI8から作成された光焼結銅トレースは、すべての機械的試験に合格した。いずれの試験でも、オープン不良はなかった。
【表10】

【表11】
【0045】
インクI8をMelinex(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で60分間乾燥させ、230V/6000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅トレースを形成した。表12に、銅トレースの物理的および電気的特性を示す。表12に示すように、スクリーン印刷されたインクのトレースを光焼結することにより、Melinex(商標)などの低温基板上に導電性銅トレースを形成できる。
【表12】
【0046】
光焼結銅トレースの導電率に対する乾燥時間の影響を説明するために、インクI8をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で様々な時間(10~45分)乾燥させ、290V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅トレースを形成した。表13に、様々な時間乾燥させた線の抵抗値(Ω)を示す。表13に示すように、乾燥時間が長くなると、優れた解像力の光焼結銅トレースの導電率が上がる傾向がある。
【表13】
【0047】
例5-4-結合剤およびAgNO充填剤を含まないインク(I9):
インクI9をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、最初に110℃で30分間、次に250℃で15分間、500ppmの酸素を含むNの雰囲気下で熱焼結させた。表14および15に作成した銅-銀複合トレースの物理的および電気的特性を示し、表16に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表14、表15および表16に示すように、銀塩をインクに添加すると、インク中の結合剤の存在なしで、スクリーン印刷された熱焼結導電性銅-銀複合トレースの作成が可能になり、すべての機械的試験に、オープン不良なく合格した。
【表14】

【表15】

【表16】
【0048】
インクI9をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で15分間乾燥させ、300V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅-銀複合トレースを形成した。表17に銅-銀複合トレースの物理的および電気的特性を示し、表18に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表17と表4との比較から分かるように、インクに銀塩を添加すると、光焼結トレースの導電率がさらに向上する。表18に示すように、インクI9から作成された光焼結銅-銀複合トレースは、すべての機械的試験に合格した。非常に狭い線幅でのみ、オープン不良が発生した。
【表17】

【表18】
【0049】
例5-5-結合剤およびAgNO充填剤を含むインク(I10):
インクI10をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で15分間乾燥させ、300V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅-銀複合トレースを形成した。表19に銅-銀複合トレースの物理的および電気的特性を示し、表20に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表19に示すように、インクへの結合剤の添加は、やはり良好な導電率を有する焼結銅-銀複合トレースをもたらす。表20に示すように、インクI10から作成された光焼結銅-銀複合トレースは、すべての機械的試験に合格し、抵抗率の変化は、すべてのケースで10%未満であり、オープン不良はなかった。
【表19】

【表20】
【0050】
インクI10をMelinex(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で60分間乾燥させ、300V/1500μs/1μs/3オーバーラップ_2Xで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させ、基板上に焼結銅-銀複合トレースを形成した。表21に、銅-銀複合トレースの物理的および電気的特性を示す。表21に示すように、導電性銅-銀複合トレースは、スクリーン印刷されたインクのトレースを光焼結することにより、Melinex(商標)など低温の基板上に形成できる。
【表21】
【0051】
光焼結銅-銀複合トレースの導電率に対する乾燥時間の影響を説明するために、インクI10をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で様々な時間(10~60分)乾燥させ、300V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させて、基板上に焼結銅-銀複合トレースを形成した。表22に、様々な時間乾燥させた配線の抵抗値(Ω)を示す。表22に示すように、約15分~20分の乾燥時間は、優れた解像力の光焼結銅-銀複合トレースの導電率を向上させる傾向がある。
【表22】
【0052】
光焼結-銀複合銅トレースの導電率に対するAgNO充填剤の量の影響を説明するために、インクI10、I11、I12およびI13をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、140℃のリフロー炉で15分間乾燥させ、300V/3000μs/1μs/3オーバーラップで焼結するPulseForge(商標)により光焼結させて、基板上に焼結銅-銀複合トレースを形成した。表23に、銅-銀複合トレースの抵抗値(Ω)を示す。表23に示すように、銀塩を添加すると、銅-銀複合トレースの導電率が序列的に上昇する。
【表23】
【0053】
例5-6-結合剤、CuNP充填剤およびAgNO充填剤を含むインク(I14):
インクI14をKapton(商標)基板上にスクリーン印刷し、最初に110℃で30分間、次に250℃で15分間、500ppmの酸素を含むNの雰囲気下で熱焼結させた。表24および表25に作成した銅-銀複合トレースの物理的および電気的特性を示し、表26に機械的特性(ASTM F1683-02の屈曲および折り曲げ試験による柔軟性)を示す。表24、表25および表26に示すように、銅ナノ粒子および銀塩の両方をインクに添加すると、インク中の結合剤の存在なしで、スクリーン印刷された熱焼結導電性銅-銀複合トレースの作成が可能になり、すべての機械的試験に、オープン不良なく合格した。
【表24】

【表25】

【表26】
【0054】
例6-異なる銅前駆体およびアルカノールアミンを配合したインクとの比較:
水酸化銅およびジエタノールアミンを他の銅前駆体分子および他のアルカノールアミンに置き換えた影響を評価するために、水酸化銅およびジエタノールアミンの一方または両方を表27に示すように置き換えたこと以外、インクI1と同じ方法で様々なインクを配合した。インクをKapton(商標)基板上に堆積させ、サンプルを熱焼結させた。表27に結果を示す。表27に示すように、熱焼結すると、インクI1のみが導電性銅トレースをもたらした。他のすべてのインクは、酸化された、非導電性の黒いトレースをもたらした。インクI1は、上記のように、光焼結した場合も導電性トレースをもたらす。
【表27】
【0055】
例7-インクのコスト比較
銅インクのコスト効率を説明するために、本発明の水酸化銅/ジエタノールアミンインクのコストを、水酸化銅を他の一般的なMOD化合物、すなわちギ酸銅四水和物およびネオデカン酸銀で置き換えた場合のインクのコストと比較した。表28は、インクが銅ナノ粒子(CuNP)充填剤を含む場合のコスト比較(カナダドル)を示し、表29は、インクが硝酸銀(AgNO)充填剤を含む場合のコスト比較(カナダドル)を示す。銅塩の最低カタログ価格はAlfaのものであり、ネオデカン酸銀の最低カタログ価格はGelest Inc.のものであった。さらに、1gの水酸化銅には65.12%のCu、1gのギ酸銅には28%のCu、1gのネオデカン酸銀には38.64%のAgが含まれており、したがって、グラムあたりの金属前駆体の価格は、65%の金属含有量を基準とした。
【0056】
表28に示すように、水酸化銅ベースで、銅ナノ粒子が充填されたインクのコストは、ギ酸銅ベースの同様のインクのコストの約1/8未満であり、ネオデカン酸銀ベースの同様のインクのコストの約1/42未満である。表29に示すように、銀塩を充填剤として使用する場合でも、水酸化銅ベースのインクのコストは、ギ酸銅ベースのインクのコストの1/4未満であり、ネオデカン酸銀ベースのインクのコストの1/21未満である。
【表28】

【表29】
【0057】
新規の特性は、説明を考察することにより、当業者に明らかになるであろう。しかしながら、特許請求の範囲は実施形態によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲の文言および明細書全体と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7