(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230310BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230310BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230310BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230310BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230310BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H01L29/78 652D
H01L29/78 652T
H01L29/78 652B
H01L29/78 652M
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
H01L21/28 301B
H01L21/28 301S
H01L29/50 M
(21)【出願番号】P 2020512987
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2018015166
(87)【国際公開番号】W WO2019198168
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-06-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲平
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹人
(72)【発明者】
【氏名】菅井 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059720(JP,A)
【文献】特開2016-058657(JP,A)
【文献】特開2017-157851(JP,A)
【文献】特開2017-147471(JP,A)
【文献】特開2015-115569(JP,A)
【文献】特開2016-092038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/28
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面に設けられた第一導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第二導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い前記第二導電型の高濃度領域と、
前記高濃度領域に隣接して設けられた前記第一導電型のソース領域と、
前記ドリフト層に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられた第一開口部を介して前記ソース領域および前記高濃度領域と接触する第一コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成され、前記第一コンタクトメタル膜に設けられた第二開口部を介して前記高濃度領域と接触する第二コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に形成されたソース電極膜と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含み、
前記ソース電極膜は前記第二コンタクトメタル膜の表面に設けられ、
前記第二コンタクトメタル膜は単一層からなる、
半導体装置。
【請求項2】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面に設けられた第一導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第二導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い前記第二導電型の高濃度領域と、
前記高濃度領域に隣接して設けられた前記第一導電型のソース領域と、
前記ドリフト層に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられた第一開口部を介して前記ソース領域および前記高濃度領域と接触する第一コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成され、前記第一コンタクトメタル膜に設けられた第二開口部を介して前記高濃度領域と接触する第二コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に形成されたソース電極膜と、
前記第二コンタクトメタル膜に設けられた第三開口部を介して前記高濃度領域と接触するニッケルシリサイド層と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含む、
半導体装置。
【請求項3】
前記ソース電極膜は、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成される、
請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
炭化珪素からなる半導体基板の一方の主面に、第一導電型のドリフト層を形成する、ドリフト層形成工程と、
前記ドリフト層に、前記ドリフト層の表面に露出する、前記第一導電型とは反対の第二導電型のウェル領域を形成する、ウェル領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い、前記第二導電型の高濃度領域を形成する、高濃度領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記高濃度領域に隣接して、前記第一導電型のソース領域を形成する、ソース領域形成工程と、
前記半導体基板の前記一方の主面側から見た平面視において、前記高濃度領域と、前記ソース領域の少なくとも一部と、が露出する第一開口部を有する絶縁膜を、前記ドリフト層の表面に形成する、絶縁膜形成工程と、
前記高濃度領域の一部が露出する第二開口部を有する第一コンタクトメタル膜を、前記第一開口部において前記ソース領域の少なくとも一部に接触するように形成する、第一コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第二開口部において前記高濃度領域と接触するように、第二コンタクトメタル膜を前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成する、第二コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に、ソース電極膜を形成する、ソース電極膜形成工程と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含み、
前記ソース電極膜は前記第二コンタクトメタル膜の表面に設けられ、
前記第二コンタクトメタル膜は単一層からなる、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
炭化珪素からなる半導体基板の一方の主面に、第一導電型のドリフト層を形成する、ドリフト層形成工程と、
前記ドリフト層に、前記ドリフト層の表面に露出する、前記第一導電型とは反対の第二導電型のウェル領域を形成する、ウェル領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い、前記第二導電型の高濃度領域を形成する、高濃度領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記高濃度領域に隣接して、前記第一導電型のソース領域を形成する、ソース領域形成工程と、
前記半導体基板の前記一方の主面側から見た平面視において、前記高濃度領域と、前記ソース領域の少なくとも一部と、が露出する第一開口部を有する絶縁膜を、前記ドリフト層の表面に形成する、絶縁膜形成工程と、
前記高濃度領域の一部が露出する第二開口部を有する第一コンタクトメタル膜を、前記第一開口部において前記ソース領域の少なくとも一部に接触するように形成する、第一コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第二開口部において前記高濃度領域と接触するように、第二コンタクトメタル膜を前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成する、第二コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に、ソース電極膜を形成する、ソース電極膜形成工程と、
前記第二コンタクトメタル膜に設けられた第三開口部を介して前記高濃度領域と接触するニッケルシリサイド層を設けるニッケルシリサイド層形成工程と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ソース電極膜形成工程において、前記ソース電極膜を、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成する、
請求項
4または5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)はシリコン(Si)の約10倍の絶縁破壊電界強度を有するため、高耐圧半導体装置の材料として用いられている。
【0003】
半導体基板(例えばn型SiC)を用いた半導体装置(例えばMOSFET)では、コンタクトメタル膜によって、ドリフト層と電極膜(例えば、アルミニウムとシリコンとを含む合金(Al-Si)またはアルミニウム(Al))とが、電気的かつ機械的に接続される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンタクトメタル膜として窒化チタン(TiN)を半導体基板上に成膜し、その後に、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムの電極膜を成膜することで、オーミック接合を形成することが可能であることが、本発明者らにより明らかにされている。しかし、この構造は、MOSFETのn型のドリフト層に形成されたp型不純物の高濃度領域(SiC(p+))と、窒化チタンとの界面で、コンタクト抵抗が高くなるという問題がある。
【0006】
ドリフト層に形成されたp型不純物の高濃度領域と、コンタクトメタル膜との間のコンタクト抵抗は、可能な限り低減されることが望ましい。さもないと、MOSFETターンオフ時に高濃度領域の電位が上がることによって、寄生バイポーラトランジスタ動作等を引き起こす可能性が生じる。
【0007】
例えば、コンタクトメタル膜をニッケル(Ni)とすると、コンタクト抵抗の低減が期待できる。特許文献1では、炭化珪素の、p型不純物が高濃度に導入された領域と、ニッケルとを接合させる旨の記述がある。しかし、炭化珪素の、p型不純物が高濃度に導入された領域と、ニッケルとの界面をアニールすると、ニッケルシリサイドが形成されることで遊離炭素が発生し、炭化珪素とコンタクトメタル膜との密着性が低下するとの問題がある。また、n型領域と、p型領域とで、異なるコンタクトメタルを使用しようとすると、n型領域に形成されるコンタクトメタルと、p型領域に形成されるコンタクトメタルとを、互いに離間して設けなければならないので、公知のフォトリソグラフィ技術を用いる際のマージンが必要になるために、セルピッチが増大してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、高信頼性の半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様に係る半導体装置は、
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面に設けられた第一導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第二導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い前記第二導電型の高濃度領域と、
前記高濃度領域に隣接して設けられた前記第一導電型のソース領域と、
前記ドリフト層に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられた第一開口部を介して前記ソース領域および前記高濃度領域と接触する第一コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成され、前記第一コンタクトメタル膜に設けられた第二開口部を介して前記高濃度領域と接触する第二コンタクトメタル膜と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に形成されたソース電極膜と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含んでもよい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、
炭化珪素からなる半導体基板の一方の主面に、第一導電型のドリフト層を形成する、ドリフト層形成工程と、
前記ドリフト層に、前記ドリフト層の表面に露出する、前記第一導電型とは反対の第二導電型のウェル領域を形成する、ウェル領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記ウェル領域よりも不純物濃度が高い、前記第二導電型の高濃度領域を形成する、高濃度領域形成工程と、
前記ドリフト層の前記ウェル領域に、前記ドリフト層の表面に露出し、かつ、前記高濃度領域に隣接して、前記第一導電型のソース領域を形成する、ソース領域形成工程と、
前記半導体基板の前記一方の主面側から見た平面視において、前記高濃度領域と、前記ソース領域の少なくとも一部と、が露出する第一開口部を有する絶縁膜を、前記ドリフト層の表面に形成する、絶縁膜形成工程と、
前記高濃度領域の一部が露出する第二開口部を有する第一コンタクトメタル膜を、前記第一開口部において前記ソース領域の少なくとも一部に接触するように形成する、第一コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第二開口部において前記高濃度領域と接触するように、第二コンタクトメタル膜を前記第一コンタクトメタル膜の表面に形成する、第二コンタクトメタル膜形成工程と、
前記第一コンタクトメタル膜と、前記第二コンタクトメタル膜と、を含むコンタクトメタル層の表面に、ソース電極膜を形成する、ソース電極膜形成工程と、
を備え、
前記第一コンタクトメタル膜は、窒化チタンを含み、
前記第二コンタクトメタル膜は、チタンを含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、高濃度領域におけるコンタクトメタル層の密着性の向上と、コンタクト抵抗の低減とを実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【
図3A】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3B】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3C】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4A】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4B】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4C】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5A】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5B】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5C】第一の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図6】第二の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図7】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【
図8A】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図8B】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図9A】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図9B】第二の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図10】第三の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図11A】第三の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11B】第三の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図12A】第三の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図12B】第三の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0013】
[第一の実施形態]
以下、
図1から
図5を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0014】
(半導体装置の構成)
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。本実施形態に係る半導体装置は、プレーナ型のMOSFETである。なお、本実施形態に係る半導体装置では、複数の半導体素子が互いに隣接して配置されているが、
図1では、これら半導体素子のうち1つのみを示している。
【0015】
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体基板11と、ドリフト層12と、ウェル領域13と、高濃度領域14と、ソース領域15と、絶縁膜16と、コンタクトメタル層100と、ソース電極膜19と、を含む。半導体装置1は、ドレイン電極17と、ゲート電極18とを、さらに含む。
【0017】
半導体基板11は、炭化珪素(SiC)からなり、n型(第一導電型)の不純物が導入されている。半導体基板11は、n+型の炭化珪素単結晶基板である。半導体基板11は、例えば、(0001)面のn型4H-SiC基板である。
【0018】
ドリフト層12は、炭化珪素からなり、半導体基板11の一方の主面F1に形成されている。ドリフト層12には、半導体基板11よりも低濃度にn型不純物が導入されている。
【0019】
ドレイン電極17は、半導体基板11の他方の主面F2に形成されている。ドレイン電極17と半導体基板11とは、オーミック性接触をなしている。ドレイン電極17は、例えば窒化チタンで形成されてよい。
【0020】
ウェル領域13は、ドリフト層12のうち半導体基板11と反対側の表面の一部に形成されている。ウェル領域13には、p型(第二導電型)の不純物が導入されている。
【0021】
高濃度領域14は、ウェル領域13の表面の一部に形成されている。高濃度領域14には、p型の不純物が、ウェル領域13よりも高濃度に導入されている。これにより、半導体装置1における寄生バイポーラトランジスタ動作を抑制することができる。
【0022】
ソース領域15は、ウェル領域13の表面の一部に形成されている。ソース領域15には、n型の不純物が、ドリフト層12よりも高濃度に導入されている。ソース領域15は、半導体基板11の一方の主面F1側から見た平面視(以下、単に「平面視」ということがある。)において、ウェル領域13によって囲まれている。
【0023】
ソース領域15は、本実施形態においては、平面視において高濃度領域14を取り囲むように環状に形成されている。
図1に示すように、本実施形態では、ソース領域15は、n型不純物が比較的高濃度に導入された平面視環状の第一ソース領域15aと、第一ソース領域15aの外側においてn型不純物が比較的低濃度に導入された第二ソース領域15bと、からなるが、ソース領域15の構成はこれに限られない。
【0024】
絶縁膜16は、絶縁体からなり、ドリフト層12の表面に形成されている。絶縁膜16は、第一開口部H1を有する。第一開口部H1は、平面視においてソース領域15の少なくとも一部および高濃度第二導電型領域14の少なくとも一部が露出するように形成されている。本実施形態では、第一開口部H1は、第一ソース領域15aの一部が露出するように形成されている。
【0025】
ゲート電極18は、平面視において、ウェル領域13のうちソース領域15の形成されていない領域、および、これを挟んで対向するドリフト層12のうちウェル領域13の形成されていない領域ならびにソース領域15を跨ぐように形成される。さらにゲート電極18は、前記ドリフト層12を挟んでウェル領域13に対向する別のウェル領域(不図示)と、当該別のウェル領域を挟んで対向するソース領域(不図示)とを跨ぐように形成されていても良い。
【0026】
ゲート電極18に電圧を印加しない状態(または、負の電圧を印加した状態)で、ソース領域15とドレイン電極17との間に順バイアス電圧を印加しても、ソース領域15とドレイン電極17との間に電流は流れない。ソース領域15とドレイン電極17との間に順バイアス電圧を印加した状態で、ゲート電極18に正の電圧を印加すると、ウェル領域13のうちゲート電極18が対向する領域の表面に、ウェル領域13とは導電型が反転した反転チャネルが形成されるようになる。その結果、ソース領域15とドレイン電極17との間に電流が流れるようになる。すなわち、ゲート電極18への電圧の印加により、ソース領域15とドレイン電極17との間の電流を制御できる。
【0027】
コンタクトメタル層100は、第一コンタクトメタル膜101と、第二コンタクトメタル膜102と、を含む。
【0028】
第一コンタクトメタル膜101は、第一開口部H1において、ソース領域15と、高濃度領域14と、に接触するように形成されている。第一コンタクトメタル膜101は、高濃度領域14の一部が露出するように形成された第二開口部H2を有する。第一コンタクトメタル膜101は、窒化チタンで形成されている。コンタクトメタル膜101は、第一開口部H1において露出したソース領域15である、第一ソース領域15aの一部に接触するように形成されている。また、コンタクトメタル膜101は、平面視において環状に形成されたソース領域15の一部に位置する高濃度領域14の一部に接触するように形成されている。第二開口部H2は、高濃度領域14の中央部が露出するように形成されている。
【0029】
第二コンタクトメタル膜102は、第一コンタクトメタル膜101の表面に形成される。第二コンタクトメタル膜102は、第二開口部H2において高濃度領域14の中央部と接触するように形成されている。第二コンタクトメタル膜102は、チタンで形成されている。なお、第二コンタクトメタル膜102の表層部に、さらに窒化チタンが形成されていてもよい。
【0030】
ソース電極膜19は、コンタクトメタル膜100の表面に形成される。ソース電極膜19は、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成されている。ソース電極膜19により、複数の半導体素子のソース領域15が互いに接続される。本実施形態では、ソース電極膜19は、第二コンタクトメタル膜102の表面に形成されている。
【0031】
本実施形態に係る半導体装置1では、コンタクトメタル膜100(第一コンタクトメタル膜101,第二コンタクトメタル膜102)の形成に、ニッケルを用いていない。これにより、アニール時に遊離炭素が発生しなくなるため、コンタクトメタル膜100と炭化珪素(ソース領域15,高濃度領域14)との密着性を向上することができる。
【0032】
本実施形態に係る半導体装置1では、高濃度領域14の中央部と接触する第二コンタクトメタル膜102が、チタンで形成されている。これにより、コンタクトメタル膜100をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル膜100との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0033】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置1によれば、高濃度領域14におけるコンタクトメタル膜100の密着性の向上と、コンタクト抵抗の低減とを実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る半導体装置1では、コンタクトメタル膜100のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜101の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル膜100とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る半導体装置1では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜101と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜102とが、互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。その結果、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができるので、半導体素子のセルピッチを縮小することができる。
【0036】
(半導体装置の製造方法)
以下、
図2から
図5を参照して、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法は、ドリフト層形成工程S1と、ウェル領域形成工程S2と、高濃度領域形成工程S3と、ソース領域形成工程S4と、絶縁膜形成工程S5と、第一コンタクトメタル膜形成工程S6と、第二コンタクトメタル膜形成工程S7と、ソース電極膜形成工程S8と、を含む。
【0038】
以下、
図3から
図5を用いて、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法の各工程を説明する。なお、本実施形態に係る半導体装置1では、複数の半導体素子が互いに隣接して配置されているが、
図3から
図5では、これら半導体素子のうち1つのみを示している。
【0039】
(S1:ドリフト層形成工程)
まず、
図3Aに示すドリフト層形成工程S1を行う。ドリフト層形成工程S1では、n
+型炭化珪素単結晶基板の上面に、n
-型炭化珪素エピタキシャル層を、化学的気相成長法(CVD)により形成する。これにより、炭化珪素からなるn型の半導体基板11の一方の主面F1に、n
-型炭化珪素エピタキシャル層からなるドリフト層12が形成される。
【0040】
(S2:ウェル領域形成工程)
次に、
図3Bに示すように、ウェル領域形成工程S2と、高濃度領域形成工程S3とを順番に行う。ウェル領域形成工程S2では、まず、ドリフト層12の表面を清浄化する。次いで、ドリフト層12の表面に、二酸化珪素(SiO
2)からなる酸化膜(不図示)を形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、p型不純物を導入しない箇所のみにレジストパターン(不図示)を形成する。次いで、レジストパターンで保護されない部分の酸化膜を反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングして、ウェル領域13に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。その後、レジストパターンを除去する。この状態において、ドリフト層12に、p型不純物(例えば、アルミニウム)を、イオン注入を用いて導入する。p型不純物導入後、マスクを除去する。これにより、ドリフト層12の一部に露出する、p型のウェル領域13が形成される。
【0041】
(S3:高濃度領域形成工程)
高濃度領域形成工程S3では、ウェル領域形成工程S2と同様に、ウェル領域13のうち高濃度領域14に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。この状態において、ウェル領域13に、ウェル領域13よりも高濃度のp型不純物イオンを、イオン注入を用いて導入する。p型不純物導入後、マスクを除去する。これにより、ドリフト層12の表面に露出し、かつ、ウェル領域13よりも不純物濃度が高い、p型の高濃度領域14が形成される。高濃度領域14は、例えばソース領域形成工程S4と、絶縁膜形成工程S5との間に形成されても良い。
【0042】
(S4:ソース領域形成工程)
次に、
図3Cに示すソース領域形成工程S4を行う。ソース領域形成工程S4では、まず、ウェル領域形成工程S2と同様に、第一ソース領域15aに対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。この状態において、ドリフト層12のうちウェル領域13の一部に、n型不純物(例えば、リン(P)または窒素(N))を、イオン注入を用いて導入する。n型不純物導入後、マスクを除去する。これにより、ウェル領域13の表面の一部に露出する、第一ソース領域15aが形成される。また、第二ソース領域15bについても、同様の手順でウェル領域13の表面の一部に形成される。
【0043】
ウェル領域形成工程S2、高濃度領域形成工程S3、およびソース領域形成工程S4で、イオン注入による不純物を導入した後には、注入した不純物を活性化させるため、例えば1650℃~1800℃でアニールを行う。
【0044】
(S5:絶縁膜形成工程)
次に、
図4A~Cに示す絶縁膜形成工程S5を行う。絶縁膜形成工程S5では、まず、
図4Aに示すように、ドリフト層12の表面に、酸化膜16aを形成する。次いで、酸化膜16aの上に、ポリシリコン膜を化学的気相成長法により形成する。ポリシリコン膜形成後、ポリシリコン膜にn型不純物(例えばリン)を導入する。不純物導入後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極18に対応する部分を保護するレジストパターン(不図示)を形成する。その後、レジストパターンで保護されない部分を、ドライエッチングにより除去する。その後、レジストパターンを除去する。これにより、
図4Bに示すように、ゲート電極18が形成される。次いで、ゲート電極18を覆うように、二酸化珪素を化学的気相成長法により成膜し、酸化膜16b(
図4C参照)を形成する。その後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、開口部H1に対応する部分に開口を有するレジストパターン(不図示)を形成する。その後、酸化膜16a,16bのうち、レジストパターンで保護されない部分を、ドライエッチングにより除去する。その後、レジストパターンを除去する。これにより、
図4Cに示すように、酸化膜16a,16bからなり、平面視において、高濃度領域14と、ソース領域15の少なくとも一部と、が露出するように形成された第一開口部H1を有する絶縁膜16が、ドリフト層12の表面に形成される。
【0045】
(S6:第一コンタクトメタル膜形成工程)
次に、
図5Aに示す第一コンタクトメタル膜形成工程S6を行う。第一コンタクトメタル膜形成工程S6では、まず、窒素(N
2)とアルゴン(Ar)との混合雰囲気または窒素(N
2)雰囲気下、例えば基板温度150℃~350℃において、スパッタリングにより、絶縁膜16の表面に窒化チタンを成膜する。次いで、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、第二開口部H2に対応する開口部を有し、第一コンタクトメタル膜101に対応する部分を保護するレジストパターン(不図示)を形成する。その後、レジストパターンで保護されない部分を、ドライエッチングにより除去する。その後、レジストパターンを除去する。第一コンタクトメタル膜形成工程S6では、例えば半導体基板11の他方の主面F2にも窒化チタンを成膜してもよい。
次いで、アニールを行う。アニール温度は、たとえば800~1000℃が好ましく、950℃がより好ましい。1050℃以上になると、窒素原子が、コンタクトメタル101を形成する窒化チタンからp型炭化珪素へと拡散するとされていることから、p型炭化珪素部分の接触抵抗が増大するため、好ましくない。アニールの雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス、またはこれらの混合ガスが好ましい。これにより、高濃度領域14の一部が露出する第二開口部H2に対応するパターンを有する第一コンタクトメタル膜101が、第一開口部H1において、ソース領域15と、高濃度領域14と、に接触するように形成される。同時に、半導体基板11の他方の主面F2に、半導体基板11を介してドリフト層12とオーミックに接続されるドレイン電極17が形成される。
なお、本実施形態では、第一コンタクトメタル膜形成工程S6においてドレイン電極17を形成したが、別途工程を設けて形成してもよい。
【0046】
コンタクトメタルにニッケルを用いた場合には、アニール時に界面でニッケルシリサイドが形成されて遊離炭素が発生し、その結果、炭化珪素とコンタクトメタル膜との密着性が低下する。これに対し、本実施形態では、アニール時に遊離炭素が発生しないため、第一コンタクトメタル膜101の密着性を保つことができる。
【0047】
(S7:第二コンタクトメタル膜形成工程)
次に、
図5Bに示す第二コンタクトメタル膜形成工程S7を行う。第二コンタクトメタル膜形成工程S7では、まず、スパッタリングまたは電子ビーム蒸着により、第一コンタクトメタル膜101および第二開口部H2において露出する高濃度領域14の表面にチタンを成膜する。その後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、第二コンタクトメタル102に対応する部分を保護するレジストパターン(不図示)を形成する。その後、レジストパターンで保護されない部分を、ドライエッチングにより除去する。その後、レジストパターンを除去する。その後、マスクを除去する。次いで、第一コンタクトメタル膜形成工程S6と同様に、アニールを行う。これにより、第二開口部H2において高濃度領域14と接触するように、第二コンタクトメタル膜102が第一コンタクトメタル膜101の表面に形成される。
なお、アニール雰囲気が窒素を含んでいる場合、第二コンタクトメタル102の少なくとも表層部に窒化チタンが形成される。
【0048】
(S8:ソース電極膜形成工程)
最後に、
図5Cに示すソース電極膜形成工程S8を行う。ソース電極膜形成工程S8では、スパッタリングにより、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムを、コンタクトメタル層100の表面に成膜する。これにより、複数の半導体素子のソース領域15に接続されるソース電極膜19が、コンタクトメタル層100の表面に形成される。なお、ソース電極膜19のうち、ソース領域15の接続に不要な箇所は、適宜エッチングで除去する。このとき、ドライエッチを用いるようにすれば、コンタクトメタル膜100のうち、デバイスの周辺部と不要な箇所とを同時に除去することができる。以上により、半導体装置1の製造が完了する。
【0049】
本実施形態に係る半導体装置1の製造方法では、コンタクトメタル膜100(第一コンタクトメタル膜101,第二コンタクトメタル膜102)の形成に、ニッケルを用いていない。これにより、アニール時に遊離炭素が発生しなくなるため、コンタクトメタル層100と炭化珪素(ソース領域15,高濃度領域14)との密着性を向上することができる。
【0050】
本実施形態に係る半導体装置1の製造方法では、高濃度領域14の中央部と接触する第二コンタクトメタル膜102が、チタンで形成されている。これにより、コンタクトメタル層100をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル層100との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0051】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法によれば、高濃度領域14におけるコンタクトメタル層100の密着性の向上と、コンタクト抵抗の低減とを実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法では、コンタクトメタル層100のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜101の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル層100とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る半導体装置1では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜101と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜102とが互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。これにより、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができる。その結果、半導体素子のセルピッチを縮小することができるとともに、製造コストを低減することができる。また、コンタクトメタル100は、第一コンタクトメタル101がソース領域15の一部にのみ接触し、かつ第二コンタクトメタル102が、ソース領域15の一部と、高濃度領域14との両方に接触するように形成されていてもよい。
【0054】
[第二の実施形態]
以下、
図6から
図9を参照して、本発明の第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する部分は、説明を省略する。
【0055】
(半導体装置の構成)
図6に示すように、本実施形態の半導体装置2は、コンタクトメタル層100が、高濃度領域14との接触面に設けられた粒子状のニッケルシリサイド205を含有している。コンタクトメタル層100は炭化チタンを含有してもよい。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置2では、アニール時にニッケルと炭化珪素が反応して発生した遊離炭素が、第二コンタクトメタル膜202においてチタンとの反応により炭化チタンとして吸収されているため、コンタクトメタル層200と炭化珪素(ソース領域15,高濃度領域14)との密着性を向上することができる。
【0057】
本実施形態に係る半導体装置2では、高濃度領域14の中央部と接触する第二コンタクトメタル膜202が、その一部にニッケルシリサイド205を有している。これにより、コンタクトメタル層200をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル層200との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0058】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置2によれば、高濃度領域14におけるコンタクトメタル層200の密着性の向上と、コンタクト抵抗の低減とを実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る半導体装置2では、少なくとも高濃度領域14との接触部分の一部にニッケルシリサイド205を有する第二コンタクトメタル膜202を設けている。これにより、第一の実施形態と比べて、高濃度領域14とソース電極膜19との間の抵抗を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る半導体装置2では、コンタクトメタル層200のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜201の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル層200とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る半導体装置2では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜201と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜202とが互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。その結果、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができるので、半導体素子のセルピッチを縮小することができる。
【0062】
(半導体装置の製造方法)
以下、
図7から
図9を参照して、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法について説明する。
【0063】
図7に示すように、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法のフローは、第二コンタクトメタル膜形成工程S7に代えて、第二コンタクトメタル膜202の下層部を形成する第二コンタクトメタル膜下層部形成工程S7aを含み、第二コンタクトメタル膜下層部形成工程S7aとソース電極膜形成工程S8との間に、第二コンタクトメタル膜202の上層部を形成する第二コンタクトメタル膜上層部形成工程S7bを含む点を除き、第一の実施形態と同様に構成される。
【0064】
(S6:第一コンタクトメタル膜形成工程)
図8Aに示すように、第一コンタクトメタル膜形成工程S6では、第一の実施形態と同様に、第一コンタクトメタル膜201が窒化チタンで形成される。
【0065】
(S7a:第二コンタクトメタル膜下層部形成工程)
図8Bに示すように、第二コンタクトメタル膜下層部形成工程S7では、第一の実施形態と同様に、第二コンタクトメタル膜202の下層部がチタンで形成される。ただし、本実施形態では、ここでアニールは行わない。
【0066】
(S7b:第二コンタクトメタル膜上層部形成工程)
次に、第二コンタクトメタル膜上層部形成工程S7bを行う。第二コンタクトメタル膜形成上層部工程S7bでは、まず、スパッタリングまたは電子ビーム蒸着により、第二コンタクトメタル膜202の下層部であるチタンおよび第二開口部H2において露出する高濃度領域14の表面にニッケルを成膜する。その後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、第二コンタクトメタル202に対応する部分を保護するレジストパターン(不図示)を形成してもよい。その後、レジストパターンで保護されない部分を、ウェットエッチングにより除去し、その後、レジストパターンを除去してもよい。その後、マスクを除去してもよい。次いで、第一コンタクトメタル膜形成工程S6と同様に、アニールを行う。この際、窒化チタンはニッケルおよびチタンと実質的に反応しないが、ニッケルとチタンが混合するとともに、ニッケルはチタン層を突き抜け、高濃度領域14を構成する炭化珪素と反応してニッケルシリサイド205となり(
図9A参照)、遊離した炭素はチタンと反応して炭化チタンとなる。特に、少なくとも高濃度領域14と接触する部分の一部には、ニッケルシリサイド205が形成される。また、ニッケルシリサイド205に含まれることとなったシリコンは、チタンと混合した部分のニッケルにも拡散し、当該部分のニッケルもニッケルシリサイド205となる。これにより、第二開口部H2において高濃度領域14と接触するように、第二コンタクトメタル膜202が第一コンタクトメタル膜201の表面に形成される。
なお、アニール雰囲気が窒素を含んでいる場合、第一の実施形態と同様に、第二コンタクトメタル膜202の少なくとも表層部に窒化チタンが形成される。
【0067】
図9Bに示すように、ソース電極膜形成工程S8では、第一の実施形態と同様に、ソース電極膜19が、コンタクトメタル層200の表面に、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成される。以上により、半導体装置2の製造が完了する。
【0068】
本実施形態に係る半導体装置2では、アニール時にニッケルと炭化珪素が反応して発生した遊離炭素が、第二コンタクトメタル膜202においてチタンとの反応により炭化チタンとして吸収されているため、コンタクトメタル層200と炭化珪素(ソース領域15,高濃度領域14)との密着性を向上することができる。
【0069】
本実施形態に係る半導体装置2の製造方法では、高濃度領域14の中央部と接触する第二コンタクトメタル膜202を、少なくとも高濃度領域14との接触部分の一部にニッケルシリサイド205を有するように形成している。これにより、コンタクトメタル層200をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル層200との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0070】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法によれば、高濃度領域14におけるコンタクトメタル層200の密着性の向上と、コンタクト抵抗の低減とを実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法では、少なくとも高濃度領域14との接触部分の一部にニッケルシリサイド205を有する第二コンタクトメタル膜202を設けている。これにより、第一の実施形態と比べて、高濃度領域14とソース電極膜19との間の抵抗を低減することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る半導体装置2の製造方法では、コンタクトメタル層100のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜201の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル層200とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0073】
本実施形態に係る半導体装置2では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜201と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜202とが、互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。その結果、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができるので、半導体素子のセルピッチを縮小することができる。
【0074】
[第三の実施形態]
以下、
図10から
図12を参照して、本発明の第三の実施形態について説明する。第一および第二の実施形態と共通する部分は、説明を省略する。
【0075】
(半導体装置の構成)
図10に示すように、本実施形態の半導体装置3は、コンタクトメタル層100が、高濃度領域14との接触面に設けられたニッケルシリサイド層305を含有している。コンタクトメタル層100は炭化チタンを含有してもよい。
【0076】
本実施形態に係る半導体装置3では、第二開口部H2のうち第三開口部H3を除いた平面視環状領域では、ニッケルシリサイドと炭化チタンを含む第二コンタクトメタル膜302が、高濃度領域14と接触している。さらに、第一開口部H1のうち第二開口部H2を除いた平面視環状領域では、窒化チタンで形成された第一コンタクトメタル膜301が、高濃度領域14およびソース領域15と接触している。これらの領域では、アニール時に発生した遊離炭素が炭化チタンとして第二コンタクトメタル膜302に吸収されることで、炭化珪素とコンタクトメタル膜300との密着性が低下しない。
【0077】
他方、ニッケルシリサイド層305が、第三開口部H3において、炭化珪素で形成された高濃度領域14と接触している。このため、アニール時に、ニッケルシリサイド層305と高濃度領域14との界面で、遊離炭素が発生する。
【0078】
しかし、発生した遊離炭素が、前記のような、第一開口部H1のうち第二開口部H2を除いた平面視環状領域、に接触する第二コンタクトメタル膜302に吸収されることで、炭化珪素とコンタクトメタル膜300との密着性が低下を防ぐことができる。
【0079】
さらに、第二コンタクトメタル膜302と直接接触していない第三開口部H3の内側において、アニールを行った後、発生した遊離炭素が、第二コンタクトメタル膜302に、完全には吸収されなかったとしても、コンタクトメタル層300の密着性が低下する部分は、第三開口部H3の内側に限定される。他方、第一開口部H1の内側のうち、第三開口部H3を取り囲む平面視環状領域では、密着性が低下しない。その結果、コンタクトメタル層300全体としては、炭化珪素(高濃度領域14,ソース領域15)との密着性を良好に保つことができる。なお、第二の実施形態と同様に、第二コンタクトメタル膜302の少なくとも表層部に、さらに窒化チタンが形成されていてもよい。
【0080】
本実施形態に係る半導体装置3では、高濃度領域14の中央部と接触するニッケルシリサイド層305が設けられている。これにより、コンタクトメタル層300をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル層300との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0081】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置3によれば、高濃度領域14においてコンタクトメタル層300の密着性を良好に保つことができ、かつ、コンタクト抵抗の低減を実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る半導体装置3では、ニッケルシリサイド層305が、第三開口部H3において、炭化珪素で形成された高濃度領域14と接触している。これにより、第二の実施形態と比べて、高濃度領域14とソース電極膜19との間の抵抗を低減することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る半導体装置3では、コンタクトメタル層300のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜301の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル層300とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る半導体装置3では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜301と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜302が、互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。その結果、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができるので、半導体素子のセルピッチを縮小することができる。
【0085】
(半導体装置の製造方法)
以下、
図11および
図12を参照して、本実施形態に係る半導体装置3の製造方法について説明する。
【0086】
(S6:第一コンタクトメタル膜形成工程)
図11Aに示すように、第一コンタクトメタル膜形成工程S6では、第二の実施形態と同様に、第一コンタクトメタル膜301が窒化チタンで形成される。
【0087】
(S7:第二コンタクトメタル膜形成工程)
図11Bに示すように、第二コンタクトメタル膜形成工程S7では、第二コンタクトメタル膜302がチタンで形成される。第二コンタクトメタル膜302は、高濃度領域14の一部が露出するように形成された第三開口部H3を有するように形成される。
【0088】
図12Aに示すように、スパッタリングまたは電子ビーム蒸着により、第二コンタクトメタル膜302であるチタンおよび第三開口部H3において露出する高濃度領域14の表面にニッケルを成膜する。次いで、アニールを行う。この際、ニッケルは、チタン上ではチタンが混合するとともに、第三開口部H3において直接、また、第二開口部H2のうち第三開口部H3以外の部分においてチタンを突き抜けて、高濃度領域14を構成する炭化珪素と反応してニッケルシリサイドとなり(ニッケルシリサイド層形成工程)、遊離した炭素はチタンと反応して炭化チタンとなる。また、ニッケルシリサイドに含まれることとなったシリコンは、チタンと混合した部分のニッケルにも拡散し、当該部分のニッケルもニッケルシリサイドとなる。これにより、ニッケルシリサイドと炭化チタンを含む第二コンタクトメタル膜302が形成されるとともに、ニッケルシリサイド層305が、第三開口部H3において、高濃度領域14と接触するように形成される。なお、アニール雰囲気が窒素を含んでいる場合、第一および第二の実施形態と同様に、第二コンタクトメタル膜302の少なくとも表層部に窒化チタンが形成される。
【0089】
図12Bに示すように、ソース電極膜形成工程S8では、第一および第二の実施形態と同様に、ソース電極膜19が、コンタクトメタル層300の表面に、アルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成される。これにより、半導体装置3が形成される。
【0090】
本実施形態に係る半導体装置3の製造方法では、第二開口部H2のうち第三開口部H3を除いた平面視環状領域では、ニッケルシリサイドと炭化チタンを含む第二コンタクトメタル膜302が、高濃度領域14と接触している。さらに、第一開口部H1のうち第二開口部H2を除いた平面視環状領域では、窒化チタンで形成された第一コンタクトメタル膜301が、高濃度領域14およびソース領域15と接触している。これらの領域では、アニール時に発生した遊離炭素が炭化チタンとして第二コンタクトメタル膜302に吸収されることで、炭化珪素とコンタクトメタル膜300との密着性が低下しない。他方、ニッケルシリサイド層305が、第三開口部H3において、炭化珪素で形成された高濃度領域14と接触している。このため、アニール時に、ニッケルシリサイド層305と高濃度領域14との界面で、遊離炭素が発生する。
【0091】
しかし、発生した遊離炭素が、前記のような、第一開口部H1のうち第二開口部H2を除いた平面視環状領域、に接触する第二コンタクトメタル膜302に吸収されることで、炭化珪素とコンタクトメタル膜300との密着性が低下を防ぐことができる。
【0092】
さらに、第二コンタクトメタル膜302と直接接触していない第三開口部H3の内側において、アニールを行った後、発生した遊離炭素が、第二コンタクトメタル膜302に、完全には吸収されなかったとしても、コンタクトメタル層300の密着性が低下する部分は、第三開口部H3の内側に限定される。他方、第一開口部H1の内側のうち、第三開口部H3を取り囲む平面視環状領域では、密着性が低下しない。その結果、コンタクトメタル層300全体としては、炭化珪素(高濃度領域14,ソース領域15)との密着性を良好に保つことができる。
【0093】
本実施形態に係る半導体装置3の製造方法では、高濃度領域14の中央部と接触するニッケルシリサイド層305が設けられている。これにより、コンタクトメタル層300をすべて窒化チタンで形成した場合に比べて、p型不純物を含む高濃度領域14(SiC(p+))とコンタクトメタル層300との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0094】
以上述べたとおり、本実施形態に係る半導体装置3の製造方法によれば、高濃度領域14においてコンタクトメタル層300の密着性を良好に保つことができ、かつ、コンタクト抵抗の低減を実現することができる。これにより、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る半導体装置3の製造方法では、ニッケルシリサイド層305が、第三開口部H3において、炭化珪素で形成された高濃度領域14と接触している。これにより、第二の実施形態と比べて、高濃度領域14とソース電極膜19との間の抵抗を低減することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る半導体装置3の製造方法では、コンタクトメタル層300のうち、ソース領域15と接触する第一コンタクトメタル膜301の形成に、チタンを用いていない。これにより、コンタクトメタル層300とn型不純物を含むソース領域15との界面でショットキー接合が形成されることがなくなるため、ソース領域15とソース電極膜19との間でオーミックコンタクトを形成することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る半導体装置3では、主としてn型不純物を含むソース領域15に対するコンタクトメタル膜301と、p型不純物を含む高濃度領域14に対するコンタクトメタル膜302とが、互いに離間されるのではなく、ソース領域15の上に重なって形成される。これにより、フォトリソグラフィ工程のためのマージンを低減することができる。その結果、半導体素子のセルピッチを縮小することができるとともに、製造コストを低減することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。例えば、ソース電極膜19はアルミニウムとシリコンとを含む合金、アルミニウムと銅とを含む合金またはアルミニウムで形成されるとしたが、他の金属等導電性材料を用いることもできる。また、半導体装置1,2,3はプレーナ型のMOSFETとしたが、p
+型(第二の導電型)炭化珪素単結晶基板を半導体基板11として用いた、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であってもよい。また、上記実施形態では、第一導電型はn型、第二導電型はp型であったが、第一導電型がp型、第二導電型がn型であってもよい。
また、上記実施形態では、ソース領域15は平面視においてウェル領域13によって囲まれ、環状に形成されるとともに、高濃度領域14に隣接して形成され、平面視において高濃度領域14を囲んでいる「スクエアセル構造」としたが、この構成に限られない。本発明の半導体装置は、例えば
図1,6,または10で示される断面を有する「ストライプセル構造」であってもよい。この場合、ウェル領域13は、平面視において、該半導体装置の断面に実質的に垂直な方向に延在する領域である。高濃度領域14は、平面視においてウェル領域13に含まれ、ウェル領域13と同じ方向に延在する領域である。ソース領域15は、平面視においてウェル領域13に含まれ、高濃度領域14の両側に隣接して延在する、一対の領域である。
また、第一開口部H1は、平面視においてソース領域15の少なくとも一部および高濃度第二導電型領域14の少なくとも一部が露出するように形成されている構成としたが、この構成に限らず、第一開口部H1は、平面視においてソース領域15を露出することなく、高濃度第二導電型領域14の少なくとも一部が露出するように形成されている構成としてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で、種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3…半導体装置
11…半導体基板
12…ドリフト層
13…ウェル領域
14…高濃度領域
15…ソース領域
16…絶縁膜
19…ソース電極膜
100,200,300…コンタクトメタル層
101,201,301…第一コンタクトメタル膜
102,202,302…第二コンタクトメタル膜
305…ニッケルシリサイド層
F1…一方の主面
H1…第一開口部
H2…第二開口部
H3…第三開口部
S1…ドリフト層形成工程
S2…ウェル領域形成工程
S3…高濃度領域形成工程
S4…ソース領域形成工程
S5…絶縁膜形成工程
S6…第一コンタクトメタル膜形成工程
S7…第二コンタクトメタル膜形成工程
S7a…第二コンタクトメタル膜下層部形成工程
S7b…第二コンタクトメタル膜上層部形成工程
S8…ソース電極膜形成工程