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特許7241743自己剥離トリアゾール-トリホルミルフロログルシノールベースの、高および可逆リチウムイオン貯蔵用共有結合性有機ナノシート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】自己剥離トリアゾール-トリホルミルフロログルシノールベースの、高および可逆リチウムイオン貯蔵用共有結合性有機ナノシート
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20230310BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20230310BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20230310BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C08G73/06
C07D487/22
H01M4/137
H01M4/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516978
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IN2018050351
(87)【国際公開番号】W WO2018220650
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201721019419
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519429923
【氏名又は名称】インディアン インスティチュート オブ サイエンス エデュケイション アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】INDIAN INSTITUTE OF SCIENCE EDUCATION AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー,サチック
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,キンシュック
(72)【発明者】
【氏名】ナンディ,シャマパダ
(72)【発明者】
【氏名】バイディアナサン,ラマナサン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/06
C07D 487/22
H01M 4/137
H01M 4/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張層共有結合性フレームワークに、複数の3,5-ジアミノトリアゾールユニット及び複数のトリホルミルフロログルシノールユニットを含んでなる、自己剥離共有結合性有機フレームワーク由来のナノシートであって、
前記3,5-ジアミノトリアゾールユニットが前記トリホルミルフロログルシノールユニットに、多孔性構造を生じるべくシッフ(Schiff)結合を介して結合していると共に、以下の化学式の構造:
【化1】
を有することを特徴とする、共有結合性有機ナノシート(CON)。
【請求項2】
前記共有結合性有機ナノシートが、約507m/gの範囲のBET表面積、約0.37cc/gの細孔容積、N2吸収77K(約220cc/g)、重量損失なしで300℃を超える熱安定性によって特徴付けられる、請求項1に記載の共有結合性有機ナノシート。
【請求項3】
前記共有結合性有機ナノシートは、様々な溶媒、電解質、及び酸性媒体に対して熱的及び化学的安定性を示す、請求項1に記載の共有結合性有機ナノシート。
【請求項4】
前記共有結合性有機ナノシートが、
a) ジメチルアセトアミドとメシチレンの存在下において、攪拌下、ジオキサン中のトリホルミルフロログルシノールと3,5-ジアミノトリアゾールを反応させること、
b) 6M酢酸水溶液を加えた後、液体窒素浴で反応マスを急速凍結すること、
c) 混合物を120℃で十分な時間加熱した後、冷却して共有結合性有機ナノシートを得ること、
によって調製される、請求項1に記載の共有結合性有機ナノシート。
【請求項5】
請求項1に記載の共有結合性有機フレームワーク由来のナノシート(CON)を備えたデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、電池及びコンデンサからなる群から選択される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスがリチウムイオン電池である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記共有結合性有機ナノシートが、Liイオン電池のアノードとして使用される場合、100mA/gの電流密度で約720mAh/gの比容量を示す、請求項1に記載の共有結合性有機ナノシート。
【請求項9】
前記共有結合性有機ナノシートは、比容量を失うことなく100サイクルを超えてアノードとして再利用可能である、請求項8に記載の共有結合性有機ナノシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共有結合性有機ナノシート(CON)、そのようなナノシートの製造方法及びそのようなナノシートを含むデバイスに関する。より詳細には、本発明は、トリアゾール系ジアミン及びトリホルミルフロログルシノールで製造された共有結合性有機ナノシート(CON)に関する。これらのナノシートの2D構造により、コイン形電池のアノード材料として容易な混汞化(amalgamation、アマルガム化)を可能にし、100mA/gの電流密度で約720mAh/gの非常に高い比容量を示す。
【背景技術】
【0002】
モジュール構造と秩序化された多孔性による共有結合性有機フレームワーク(COF)は、化学的に調整可能な支持体として機能する。通常、リチウムイオン電池(LIB)は、グラファイト及びLiCoO2から構築される。これらのアノード及びカソード材料の一般的な特徴は、2D構造である。最初の発見以来、同等の層状構造を持つ多くの2D材料がLi挿入/脱挿入基板として検討されてきた。
【0003】
優れた電極材料の非常に望ましい特性には、単位面積あたりの最大の電荷所蔵を確保するために中程度から高い表面積と、他に、好ましい反応速度のアクセスを容易にする階層的多孔性が含まれる。グラファイトを歴史的に最も活用されている所蔵材料にしたグラファイトの重要な属性の1つは、剥離する能力である。グラフェン、MoS2、CNT又はその他の炭素質構造体などの有機基板では、剥離支援の表面積/多孔性の強化及び吸着サイトの作成が容易であり、これにより、有機基板が電池用の最高性能のLi及びNa所蔵材料の構成要素になる。この点に関して、共有結合性有機フレームワークは、通常、事前に設計された架橋ユニットで構築され、拡張された/周期的な六角形又は正方形グリッド層の構築を支援するため、はるかに多くのものを提供できる。また、C/N又はC/Bあるいは一般に、原子1/原子2の比率は、調整できる化学量論的な正確さと化学基(例えば、窒素:ピリジルvs.トリアジンvs.シッフ(Schiff))で制御できる(後掲の文献リストの(1)(a)から(e)参照)。
【0004】
電極材料として開発するための適切さの別の特徴は、それらが持つ層間相互作用のタイプに由来する。通常、COF層は、中間層のπ-π相互作用によって、又は特別な場合には追加の水素結合を介して結合される(後掲の文献リストの(2)参照)。
最適化された構造では、層間剥離は通常3.2~4.5Aの範囲に収まる。さらに、グラファイトとは異なり、COFの層は縮合芳香族環から構築されていない。従って、相互作用力は、それらを一緒に保持するのに最適であるが、より重要なのは、全体的な構造を失うことなく、簡単な剥離を支援することである。特に、イミン結合によって形成されたCOFは、ナノシートに剥離しやすい(後掲の文献リストの(3)参照)。
この剥離は、イオン所蔵に著しい影響を与える可能性がある(S.Wang, Lijiang Wang, Kai Zhang, Zhiqiang Zhu, Zhanliang Tao, and Jun Chen, Nano Lett., 2013, 13, 4404-4409.(b) Oscar A.Vargas C., Alvaro Caballero and Julian Morales, Nanoscale, 2012, 4, 2083-2092 参照)。
【0005】
また、COFでは、構築ユニットが長くなり、柔軟な結合を含む。従って、COFの層は、イオン又はナノ粒子のいずれであっても、フレームワーク外の種の収容を容易にする需要による構造上の再編成を示している。この柔軟性及び調整可能性により、COFはガス貯蔵、水素発生、プロトン伝導、量子ふるい、光伝導性、触媒作用、さらには自己洗浄性の超疎水性表面及びセンシングに使用されるようになった。電子特性が豊富な構成要素(共役πクラウド、ドナー-アクセプタノード又は高極性部分)から構築された導電性及び半導電性COFは、電極又は電解質として使用されている(後掲の文献リストの(4)及び(5)参照)。
【0006】
いくつかの炭素に富む材料、ポリマー及び古典的な無機酸化物、硫化物を使用したリチウム貯蔵に関する研究は、数十年にわたって知られている。窒素ドープグラフェンへのリチウム挿入もまた知られている。それに比べて、リチウムイオン貯蔵のための共有結合性有機フレームワークの利用についてはあまり知られていない。効果的なアプローチとして、Yuliang Liらは、固有の電子伝導性が強化されたポルフィリン-チオフェン系の共役COFを設計し、最大666mAh/gの高い比容量を示したが、この比容量は電流密度の増加とともに大幅に低下することが分かった。また、COFのフレームワークにLiを含めることに焦点を当てた興味深い理論的研究(後掲の文献リストの(6)から(8)参照)がいくつかあり、これらはすべて、Liイオンが炭化水素バックボーン、より正確にはCOFを形成する芳香族環に結合していることを示し、これはLiとの化学的相互作用を促進できる(後掲の文献リストの(9)参照)。
【0007】
同様に、グラフェンのナノシートに支持されたFe2O3は、鉄の中心でのレドックス反応から生じる高いアノード活性(充電サイクルと放電サイクルでそれぞれ1355mAh/gと982mAh/g)を示す。しかし、これらのレドックス活性システムに伴う重大な問題の1つは、サイクル時に、Liと基板との間の不可逆反応のために性能が低下する傾向があることである。電流密度が高くなると、このような望ましくない不可逆反応がより頻繁に発生し、通常はクーロン効率が低いことが特徴である(後掲の文献リストの(10)参照)。他の炭素系支持体安定化鉄系アノードもまた同様の問題に悩まされている。そのため、比較的反応性の低い(ルイス塩基性/酸性)かつ中性のシステムは、サイクル寿命を延長する上で有利であり得る。
【0008】
共有結合性有機ナノシート(CON)は、調整可能なモジュール構造及び高い表面積を備えている。ハイドロ/ソルボサーマル条件下での共有結合性有機フレームワークは、自己剥離ナノシートに成長する可能性がある。マイクロテクスチャ/ナノ構造に似たそれらのグラフェン/グラファイトにより、電気化学用途に適している。共有結合性有機ナノシート(CON)は、COFの無秩序な誘導体であり、これにはいくつかの利点がある。COFの高度に秩序化された多孔質構造は、反応速度、閉じ込め、及びアクセス性に利点をもたらす可能性があり、それらを比較的無秩序なナノシートに変換することは、別の理由で利益をもたらす可能性がある。無秩序なカーボンナノ構造は、多くの場合、グラファイトの理論的な容量よりも高い実用的な容量を示す。部分的には、Liの挿入中に提供される電気化学的な力の下で、より高い酸化状態の炭素を生成する能力によるものである。重要なことに、そのような反応は可逆的である。これは、CONが電池の電気化学的ポテンシャル下でのLi挿入に適した化学的及び構造的特徴を提示できることを意味する。
【0009】
上記の背景の下で、本発明の目的は、並外れた安定性及び高い多孔性を有し、従ってLiイオン挿入に最も適した共有結合性有機ナノシート(CON)に自己剥離できる新規COFを提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(1)(a)から(e)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(2)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(3)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(4)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(5)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(6)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(7)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(8)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(9)
【文献】明細書末尾に掲載する文献リストの文献(10)
【発明の概要】
【0011】
上記の目的に沿って、本発明は、トリアゾールおよびフロログルシノールユニットが穏やかに結合することにより豊富に並んだナノポアを有する共有結合性有機ナノシート(CON)由来の新規な自己剥離共有結合性有機フレームワーク(COF)を提供する。正確には、本発明は、トリアゾール系ジアミンユニットがトリホルミルフロログルシノールユニットに穏やかに結合している拡張層共有結合性フレームワークにおいて、複数の3,5-ジアミノトリアゾールユニット及び複数のトリホルミルフロログルシノールユニットを含む良好な安定性及び高い多孔性を有する自己剥離共有結合性有機フレームワーク由来ナノシート(CON)を提供する。本発明による新規なCOFは、合成中に、ケト-エノール互変異性安定化フレームワークに起因する並外れた安定性及び高い多孔性を備えた自己剥離共有結合性有機ナノシート(CON)、以下「IISERP-CON1」と呼ぶ、に成長した。従って、本発明は、並外れた安定性及び高い多孔性を有する、3,5-ジアミノトリアゾール及びトリホルミルフロログルシノールに基づく新規CON(COF由来ナノシート)を提供する。
【0012】
説明(本明細書)において2,4-ジアミノトリアゾール又は3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールとも呼ばれる3,5-ジアミノトリアゾールは、互いに同義と見なすことができる。同様に、特に他に明記されていない限り、本発明の目的のために、説明に登場する「トリアゾール」は「3,5-ジアミノトリアゾール」として参照される必要があり、「トリアルデヒド」又は「フロログルシノール」は「トリホルミルフロログルシノール」として参照される必要がある。
【0013】
別の態様において、本発明の新規CONは、攪拌下でジメチルアセトアミド及びメシチレンの存在下で、ジオキサン中、トリアルデヒドを2,4-ジアミノトリアゾール(3,5-ジアミノトリアゾール)と反応させることにより調製される。本明細書で使用されるトリアルデヒドは、トリホルミルフロログルシノールである。CONにトリアゾール環が存在すると、フレームワークに十分な柔軟性がもたらされる。
【0014】
Liの挿入-脱挿入のためのこのようなCONの可能性を実現するさらに別の態様では、本発明者らは、デバイスで使用される場合にCONがアノード材料としてもたらす利点を調査した。本発明によるデバイスは、太陽電池、電池、コンデンサなどからなる群から選択される。
【0015】
従って、本発明は、新規な自己剥離共有結合性有機フレームワーク(COF)由来の共有結合性有機ナノシート(CON)を含むデバイスを提供する。例示的な実施形態では、デバイスはLi電池である。現在のCONのナノシートの2D構造は、コイン形電池アノードのアノードとして使用した場合、100mA/gの高電流密度で約720mAh/gの高い比容量を示し、本発明者らの知る限りではこれまでに報告されたすべての自立型非グラフェン有機材料の中で最も高い容量である。さらに、これらのナノシートは、2A/gの電流密度でも比容量の低下がわずか(約150mAh/g)しかない。重要なことに、電流密度を100mA/gから1A/gに増やすと、比容量は20%しか低下せず、これはすべての高性能アノード共有結合性有機フレームワークの中で最も低い。
【0016】
さらに、これらのナノシートがリチウム電池のアノード材料として使用される場合、セルは100サイクル後でもこの高い比容量を保持する。分析研究と組み合わせた分子動力学/DFTは、COFがLi種を有する最適な構造及び相互作用を示しており、これはその高性能を説明する。
【0017】
本発明のナノシートの繊維組織は、コイン形電池アノードとしての容易な混汞化を可能にし、100mA/gの電流密度で約720mAh/gの非常に高い比容量を示す。この容量は、100サイクル後も維持される。本発明者らは、コットレル式を用いたサイクリックボルタンメトリーから、Li挿入の大部分が超高速拡散制御インターカレーションプロセスによるものであることを確認した(拡散係数,DLi+,=5.48×10-11 cm-1)。CONでのLiのシミュレートされた構造に強力なLiフレームワーク結合がないため、この容易で可逆的なLiインターカレーションがさらに説明される。これは化学分析でも検証されている。興味深いことに、トリホルミルフロログルシノール+3-アミノトリアゾールから構築されたCONの個別のモノマー(図6)は、比容量が4倍低下(50mA/gで140mAh/g)し、Liインターカレーションの兆候がないことを示し、CONの拡張した拡張層共有フレームワークは、インターカレーションに支援された伝導性にとって重要である。さらに、DFT計算を使用してマップされた電子密度/静電ポテンシャルは、LiのCONへのインターカレーションの実質的な電子駆動力を示唆している。本発明により提供されるIISERP-CON1は、可逆的なLi挿入のための最適な構造、官能性、及び電子工学を有し、これらのデザイナー共有結合性有機ナノシートがリチウム電池のアノード材料の優れた選択肢になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は、トリアゾールユニットの5員環で架橋された異なる平面に配置されたフロログルシノールユニットを示すIISERP-CON1の単位セル。(B)は、寸法13(最短の非共有結合原子間距離)及び16Å(最長原子間)のC軸に沿う三角形の細孔を示すフレームワーク構造。(C)は、IISERP-CON1の座屈した層。(D)は、フロログルシノールユニットとトリアゾールユニットの均一な円柱πスタック。(E)は、実験的なPXRDへのPawley fit。(F)は、13C-SSNMRを割り当てられた原子。(G)は、77Kでの窒素吸着等温線。挿入図は、DFT fitからの細孔径分布を示している。
図2】(A)は、IISERP-CON1のFE-SEM画像であり、挿入図は、ふわふわした薄片状の形態を示す拡大図である。(B)は、浸水した又はしわのある表面をもつナノシートの典型的な薄層を示すHRTEM画像。(C)は、ナノシートの表面にある細孔を示すHRTEM画像。(D)及び(E)は、これらのドロップキャストされたサンプルのナノメートルの厚さを示すAFMからの画像及び3D構造である。高さ形状プロットは、それが3nm未満の範囲にあることを定量化する。
図3】(A)は、リチウムのCONへのインターカレーション(0.02V)及び結合(約1V)による2つのレドックスピークの存在を示すCV曲線。(B)は、高いサイクル性を示す充電-放電サイクル測定。PEの熱(青)及び圧縮(赤)成分が示されている。比較のために、Huckらによって計算された値が黒い線で示されている。(C)は、右Y及び(D)にクーロン効率をプロットする。
図4】(A)は、シミュレーションから得られたリチウム化CONの3D構造の斜視図。(B)及び(C)は、フロログルシノール及びトリアゾール部分との相互作用を介して形成されるリチウムの2つの異なるカラムを示している。(D)は、充電-放電後(100サイクル)電極のLi 1s XPSスペクトル。(E)は、CON及びCONでのLiの周期的DFTから計算されたCON及びCONでのLiのDOS。
図5】(A)は、アノード特性を持つ様々な有機フレームワーク材料で電流密度を100mA/gから1A/gに増加させた場合の比容量の低下を示す棒グラフ。(B)は、これらの有機フレームワークの構造の概略図であり、IISERP-CON1の官能基の高密度でコンパクトなパッキングにより、Li相互作用に非常に有利なポケットが生じている。
図6】(A)高官能化IISERP-CON1の合成、及び、(B)その対応するモノマーに使用される反応手順の概略図。挿入図は、製品の質感および色を示している。
図7】Pawley refinementを使用して取得したIISERP-CON1のモデル構造であり、層間剥離が3.796Aの完全な平面構造が示されている。これは、座屈した層を持つIISERP-CON1に提案されている実際の構造よりも8kcal高いエネルギーを有する。
図8】CONのAFM画像であり、THFで調製したドロップキャストされたサンプルの様々な領域からのその高さプロファイル及び3Dビューである。約1.5~2nmの範囲の平均厚さを示し、サンプルが均一な自己剥離ナノシートとして形成されることを示唆している。
図9】電気化学測定のためのコイン形電池の準備の概略図。
図10】異なる走査速度でのIISERP-CON1がロードされたコイン形電池のサイクリックボルタモグラムプロットであり、SEI層の形成完了後に実行された。走査速度の増加に伴う電流密度の増加は、静電容量型挙動を示す。1.5V(不可逆的)及び2.5V(可逆的)のピークは、それぞれリチウムイオン貯蔵中の導電性炭素へのリチウム種の挿入-脱挿入と、リチウムの空気酸化によるものである。
図11】CVプロットから抽出された様々な電位でのピーク電流強度(陽極)の対数vs走査速度の対数。電流密度の増加に伴うピーク電流の線形増加に注意されたい。
図12】(A)は、モノマーの定電流充電-放電曲線。(B)IISERP-CON1(青の曲線)及びモノマー(緑の曲線)の電流密度100mA/gでのサイクル性能の比較。
図13】1番目のサイクル、2番目のサイクル及び100サイクル後のIISERP-CON1モノマーがロードされたコイン形電池のサイクリックボルタモグラムプロット。π-π積層IISER-CON1のような低電位では、顕著なインターカレーションピークはない。しかし、0.6Vからは、可逆的な化学相互作用のピークのみが得られる。
図14】最初のサイクルでのSEI形成完了後のIISER-CON1電極のナイキストプロット(青の曲線)。挿入図:切片を示す拡大図。
図15】最初のサイクル及び100サイクル後のSEI形成の完了直後のIISERP-CON1がロードされたコイン形電池のサイクリックボルタモグラムプロット。(注:CVプロファイルのピーク位置の顕著な変化は得られなかった。これは、容量の損失がないことに対応する100サイクル後でも、電極の劣化が発生しなかったことを示している。)
図16】100サイクル後のSEI形成完了後のIISER-CON1電極のナイキストプロット(オレンジ色の曲線)。
図17】100サイクルの充電-放電後と比較する、充電-放電前のIISERP-CON1製電極のFT-IRスペクトル。1665cm-1でのカルボニル(-C=O)、-NHstr.及び-OHstr.(約3454cm-1)、-C=Nstr.(1604cm-1)、-C=N(triazolic)str.(約1401cm-1)及びC-Nstr.(約1256cm-1)帯域での特性ピークに顕著な変化は観察されなかった。
図18】100番目のサイクルの充電-放電の前後を使用する、導電性炭素なしのIISERP-CON1製電極のPXRDパターン。約2θ=12~14°での顕著なこぶはリチウム化によるもので、見られるように、放電すると消える。
図19】100番目のサイクル放電後の異なる倍率のFE-SEM画像。オストワルド熟成による粒子間の顕著な凝集や大きな粒子への成長はない。
図20】(A)は、表面活性(化学反応)及び拡散活性(インターカレーション)のCVの異なる電位領域。0.01~0.54Vは主にリチウムのインターカレーションに関与する、0.54~1.55Vは官能基との化学反応に関与する。(B)は、100番目のサイクルでの100mAg-1での電位と容量のプロット。CVから得られた同じ電位領域と、それらの各領域の容量の寄与が別々に示された。異なる電位領域での容量達成に対するリチウム挿入寄与の数は、以下の計算から計算された(計算方法の説明を次の段落0019に移動させている)。
図21】IISERP-CON1のTaucプロット。このプロットの接線は2.02eVのバンドギャップを与える。挿入図:460nmで最大波長を有する固体UV可視スペクトル。
図22】原始的なIISERP-CON1とCONのリチウム吸着相との間の電子密度分布及び静電ポテンシャルにおける差を示す比較電子密度プロット。CONは、リチウムイオンの静電的影響下で高度に活性化される。
図23】(上図)は、DMF及びエタノール中で沸騰させ、ベンゼンに24時間浸した後のIISERP-CON1のPXRDパターン。CONの安定性及び構造的完全性を確認するPXRDパターンの重要な変更はない。(下図)は、それぞれ作製時及び予熱したIISERP-CON1のTGAプロファイル。TGAは、N雰囲気下で5K/分で行われた。挿入図:作製時と予熱状態との間のPXRDパターンの比較。
図24】合成時のIISERP-CON1と、DMF煮沸したIISERP-CON1と、細孔構造に変化を示さない、真空下(10-4Torr)120℃で12時間浸漬及び乾燥したN-メチルピロリドン(NMP)の多孔性の比較。細孔サイズ分布(挿入図)は、すべての場合において細孔寸法の顕著な変化を示さない。注:電極製造の溶媒としてNMPを使用した。
【0019】
図20の説明の続き)
[比容量からCONでのLiのリチウム濃度の計算]
1mAh=3.6C=2.2×1019電子又はLiの数
ここで、IISERP-CON1ベースのコイン形電池の場合、0.01~0.5Vの電位領域で550mAhg-1の比容量を観察した(この電位窓はCVで観察されたインターカレーション領域を表す)。
これにより、Liイオンの数=2.2×1019×550=1210×1019が得られる。
従って、550mAhg-1の比容量は、1210×1019のLi数から実現される(それらが唯一の電荷キャリアであると仮定した場合)。
IISERP-CON1の計算された分子量は610 g/molである。
IISERP-CON1の単位セルの重量は610/(6.023×1023)gである。
CONが1gの場合、計算されるLi+イオンの数は1210×1019から単位セルあたりのLi+の数=1210×1019×610/(6.023×1023)=12。
同様に、CVの2番目の酸化ピークは0.5~1.54Vの電位窓で発生し、この領域の比容量は224mAhg-1であることが観察される。これは、単位セルあたり約4Liに起因する可能性がある。
そのため、合計で16個のLiイオン/単位セルのIISERP-CON1が挿入/脱挿入プロセスに関与し、全体の比容量が774mAhg-1になる。
【0020】
略語:
IISERP-CON1: 本発明に従って調製された、5員2,4-ジアミノトリアゾール(3,5-ジアミノトリアゾール)及びトリホルミルフロログルシノールに基づくCON
【0021】
(空白段落)
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の詳細な説明]
ここで、本発明を、特定の好ましい実施形態及び任意の実施形態に関連して詳細に説明することにより、その様々な態様をより完全に理解及び認識できるようにする。
【0023】
本発明は、トリアゾール系ジアミンユニットがトリホルミルフロログルシノールユニットに穏やかに結合している拡張層共有結合性フレームワークにおいて、複数の3,5-ジアミノトリアゾールユニット及び複数のトリホルミルフロログルシノールユニットを含む自己剥離共有結合性有機フレームワーク(COF)由来ナノシート(CON)を提供する。本発明による新規COFは、合成時においても、ケト-エノール互変異性安定化フレームワークに起因する並外れた安定性及び高い多孔性を備えた自己剥離共有結合性有機ナノシート(CON)に成長した。
【0024】
別の実施形態では、IISERP-CON1は、
a) ジメチルアセトアミドとメシチレンの存在下において、攪拌下でジオキサン中のトリホルミルフロログルシノールと3,5-ジアミノトリアゾールを反応させること、
b) 6M酢酸水溶液を加えた後、液体窒素浴で反応マスを急速凍結すること、及び、
c) 混合物を120℃で十分な時間加熱した後、冷却して共有結合性有機ナノシートを得る(図6)こと、
を含むプロセスにより調製される。
【0025】
従って、本発明は、並外れた安定性及び高い多孔性を有する、5員3,5-ジアミノトリアゾール及びトリホルミルフロログルシノールに基づく新規CON(COF由来ナノシート)を提供する。トリアゾール環の存在は、フレームワークに十分な柔軟性をもたらし、短い(∠NCN=120°リンカー)ため(後掲の文献リストの(11)参照)、異なる官能基を近接して組み立てる。本発明による共有結合性有機ナノシート(CON)は、次の構造で表すことができる。
【0026】
【化1】
【0027】
本発明による共有結合性有機ナノシートは、約507m/gのBET表面積、約0.37cc/gの細孔容積、N2吸収77K(約220cc/g)、大幅な重量損失なしで300℃を超える熱安定性を示す。別の実施形態によれば、本発明は、本発明の共有結合性有機ナノシートを含むデバイスを提供する。本明細書の上記で言及したデバイスは、太陽電池、電池、コンデンサなどからなる群から選択される。本発明の共有結合性有機ナノシート(CON)の使用は、本発明において、例えば、リチウムイオン電池(LIB)において実証される。
【0028】
このCON由来LIBのいくつかの重要な機能には、100mA/gで約720mAh/gの高い比容量が含まれ、これは、自立型非グラフェン有機材料で最も高く報告されている容量の1つである。重要なことは、セルは100サイクル後でもこの高い比容量を保持していることである。1A/gの電流密度でも比容量がわずかに低下するだけで(約150mAh/g)、2A/gでも460mAh/gの比容量を維持する。密度汎関数法(DFT)を使用したシミュレーションは、分析研究と相まって、最適なLiフレームワーク相互作用を持つ構造を持つCONでのLiの最低エネルギー構成を特定するのに役立つ。また、Li種の挿入/脱挿入の電子駆動力は、バンド構造及び電子密度/電位マップから確立される。
【0029】
一実施形態では、本発明は、本発明の共有結合性有機フレームワークの構造的評価を提供し、最初の拡張された有機フレームワークは、その構成に5員複素環を組み込む(図1)。指数付き粉末パターンのPawley refinementから、本発明者らは、P-6空間群で最も可能性の高い構造をモデル化した。このモデルは2D構造を有し、フロログルシノールとトリアゾール環を相互にπスタックすることにより、平面六角形層が食い違いの配置で保持される。最も低いエネルギー構成を得るために、2D六角形モデルの幾何学的形状は、周期的強束縛密度汎関数法を使用して最適化される。完全なセル及び運動群の緩和された最適化により、P3空間群で解決策が得られ、相対エネルギーが約8kcal/mol低くなった。この最低エネルギー構造では、層は5員のピボットの周りで曲がり、波状の2Dスタックを生じる(図1C及び1D)。トリアゾール環は平面外で座屈し、ab平面でフロログルシノールと架橋する。120°結合トリアゾールユニットからのこのような平面外の柔軟性は、ZIF構造(後掲の文献リストの(12)参照)に存在するイミダゾール環に見られるモードを連想させる。隣接する層のフロログルシノールは、3.47Aの距離でπスタックされていることが観察され、一方、トリアゾールユニットは3.26Aの距離でスタックされた。
【0030】
成長中、これらのCOF層は自己剥離するため、X線回折で強い強度のピークを生じさせる粒子の層数が十分ではなく、これは、(100)反射の強度の不足を説明する(図1E)。これは、Banerjeeらが行った観察とよく一致する(後掲の文献リストの(13)参照)。多孔性測定(図1G)、電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)、電界放出型透過電子顕微鏡(FETEM)、及び原子間力顕微鏡(AFM)研究(図2)からの他の実験的証拠は、この共有結合性有機ナノシート(CON)構造が最も可能性が高いことを確認している。この材料は、優れたN2吸収77K(0~0.8のP/P0範囲で約220cc/g及びより高いP/P0領域で特徴的な細孔凝縮)を示す。このような高い吸収により、COF由来のナノシートに似た挙動を確認し、これらが通常は著しく低い多孔性を示す単純な個別のケージである可能性をすべて無視する(サンプルは、未反応の材料や可溶性オリゴマー/ケージが後に残らないように厳密なソックスレー抽出にかけられた)。
【0031】
さらに、DFT fitを使用して77K N2等温線から推定される細孔径分布は、ミクロ細孔の大部分が13Å及び16Å付近に集中しており、メソポーラス領域に細孔径の階層が存在することを示している(図1G)。IISERP-CON1は約507m/gのBET表面積を示し、DFT fitにより約0.37cc/gの細孔容積が得られた。これは、このようなナノシートの特徴である。材料が完全に平面の六角形のシート構造を採用していれば、21A細孔の均一な1次元チャネルが存在するはずであった(図7)。また、この物質は、沸騰条件下でも一般的な有機溶媒のいずれにも実質的に不溶性であり、それが単なる有機ケージ又はオリゴマーであることを排除している。IISERP-CON1は、大幅な重量損失なしで300℃を超える良好な熱安定性、様々な溶媒、電解質、及び酸性媒体に対する化学的安定性(図23及び24)を示す。電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)の下でも、これらのナノシートは、非常に秩序だった六角形のCOF(後掲の文献リストの(15)参照)で観察されるプレート状の形態ではなく、市販の高表面積グラフェン(後掲の文献リストの(14)参照)を連想させるふわふわした綿のような形態(図2A)を示している。さらに、材料に記録されたFE-TEM画像は、典型的な剥離したCOF様形態で、薄層が巻き上げられ、グラフェンに似たより浸水した表面を示した(後掲の文献リストの(16)参照)。高解像度のFE-TEM画像(5nm)から、ナノシートの微細多孔質表面が観察できた(図2B)。
【0032】
さらに、材料に記録された高解像度透過電子顕微鏡(HRTEM)画像は、典型的なCOF由来又は剥離したCOF様形態を示し、薄層が巻き上げられてより浸水した表面が得られた。高解像度のHRTEM画像(5nm)から、ナノシートの微細多孔質表面が観察できた。数層の厚いナノシートが存在することを示す別の強力な証拠は、原子間力顕微鏡(AFM)から得られた。ドロップキャストされたサンプルのAFM画像からの高さプロファイルは、約2~5nmの厚さを示し、これは以前の観察(後掲の文献リストの(13)から(14)参照)と一致している。対照的に、一般によく成長したCOFには、数百ナノメートルの厚さのスタック層がより多く含まれる傾向がある。また、異なるサンプル及びサンプルの異なる領域からのAFM画像は、そのような数nmの厚さの層がサンプル全体に均一に分布していることを示した(図8)。
【0033】
別の実施形態では、これらの共有結合性有機ナノシートの、剥離した炭素質構造体との形態学的およびより重要には構造的類似性と、無機カチオンと相互作用できる複数の有機官能基(-OH、-C=N-、トリアゾール環および芳香族炭素)の存在を考慮し、リチウムイオン電池などのデバイスの電極材料としてのこの材料の可能性について、さらなる調査を行った。
【0034】
従って、例示的な実施形態では、コイン形電池アセンブリは、CON、導電性カーボン、及びPTFEバインダーをN-メチルピロリジンにおいて70:25:5の比率で混合することによって作られたスラリーを使用して、アルゴン充填グローブボックスで製造された(図9)。銅箔(集電体)にコーティングされたスラリーをアノードとして使用し、アノードは電解質、湿潤溶媒として(1:1)ジメチル及びエチルカーボネートの混合物を使用した1M LiPF6溶液で湿らせた紙で分離した。適切なリチウム金属をカウンター及び参照電極として使用した。MEA(膜電極アセンブリ)のリチウム挿入-脱挿入特性を調べるために、充電-放電ユニットに接続してコイン形電池(2032)アセンブリを使用した。サイクリックボルタモグラム(CV)は、0.01~3ボルトの電位窓で0.2V/秒の掃引速度を使用して測定された(図3A)。その1番目のサイクルでは、CVは固体電解質界面(SEI)層の形成に対応する0.48Vで顕著なピークを示し、対応する電流は-0.36ミリアンペア(mA)である(後掲の文献リストの(17)参照)。2番目のサイクル以降、SEI層の形成によるピークは減少し、安定したCVが残る。非常に低い電位(約0.02V)での鋭いピークは、ほとんど手間をかけずにLiがナノシートにインターカレーションされていることを示している。1.0Vの2番目の重要なピークは、広範な特徴として現れる。重要なことは、化学的相互作用から生じるこのピークは、Liと真の化学結合を形成する他のCOF及び有機材料について報告されているものと比較して著しく弱いことである(後掲の文献リストの(18),(19)(a),(19)(b),(20)参照)。
【0035】
検証するために、COF負荷に容量メカニズムが含まれている場合、1.0Vでの広いピークが単に高速走査速度の低解像度によるものではないことを確認するために、可変走査速度CVを実行した(0.1~1mV・s-1、電位窓:0.01~3.0V)(図10)。べき法則i=aνb(i=電流、ν=走査速度)に適合した結果、0.02Vでb=0.5となり、コットレル式に従い、CONへのLiのロードは主に拡散制御インターカレーションメカニズムを介して動作したことを示唆する(図11)(後掲の文献リストの(21)参照)。このb値は1Vで0.93、2.5Vで0.86であったが、表面制御された電荷蓄積挙動(容量性)からの寄与はわずかであることが分かった。また、アノードとカソードの両方のピーク電流は、走査速度の平方根に比例して変化し、これは、大部分の物質移動が制御されていることを示している。従って、高い比容量の実現は、CONのバルク内のLiイオンの移動度に大きく依存し、インピーダンス分光測定が利用された。Warburg係数は、ACインピーダンス測定から計算され、標準的なイオン拡散式に適合した。リチウム拡散係数は5.48×10-11cm・s-1のDLi+であると計算され、これは他のグラファイト及び2D無機材料でのLi拡散について報告されたものと非常に匹敵する(後掲の文献リストの(22)参照)。
【0036】
100mA/gの電流密度での定電流充電-放電掃引は、CV曲線のI-V特性でよく裏付けられる(図3B)。0.48ボルト付近を中心とするピーク(図3A)は、1番目の放電サイクルでのSEI層の形成を示し、2060mAh/g(図3B)の非常に高い1番目の放電容量をもたらす。2番目のサイクルでは、SEI層の形成がなくなると、容量は835mAh/gに低下する。これに続いて、100回を超える充電-放電サイクルが実行された。セルは、この長時間のサイクル中、720mAh/g(100mA/gで)の高くて安定した放電容量を維持し、本発明の新規CON材料が安定なリチウムイオン電池アノードとして機能する可能性を本質的に確認する。対応するサイクルの充電容量値は、放電容量と合理的に互換性があり、各サイクルでほぼ100%のクーロン効率が得られる(図3C)。この安定した電流出力は、これらのナノシートに固有の化学的及び熱的安定性に起因する可能性がある。さらに、1A/gの電流密度でも、比容量のわずかな低下(150mAh/g)しか観察されない(図3D)。比較すると、LIBの比容量が高い他のナノ構造材料は、電流密度の増加と長時間のサイクルの両方で、容量の大幅な低下を示す(後掲の文献リストの(23),(24),(17),(20),(25)参照)。これは、電池サイクル中にLiと不可逆的に結合する高エネルギーのレドックス種の形成によって説明されてきた(後掲の文献リストの(26)参照)。電流密度の増加に伴う比容量の急激な低下がないことは、Li拡散速度が速いことを示唆し、これはCVグラフに鋭いピークがないことを支援する。従って、数層の厚いCONには、超高速の放電/充電プロセスの能力がある。階層的な細孔を持つその剥離構造は、高度にスタックされたCOFと比較して、短縮された経路へのLiの拡散を促進する可能性が最も高く、反応速度が遅いと、活性部位との接触時間が長くなり、好ましくない不可逆的な化学結合につながる。ただし、観察されたインターカレーション支援Li充電-放電を実現するために、共有結合された拡張フレームワーク構造を持つことが不可欠である。例えば、充電-放電特性とIISERP-CON1の構築に関与するトリアルデヒドを3-アミノ-1,2,4-トリアゾールと反応させて形成されたモノマーのCVを実行した場合、観察された容量はわずかに140mAh/g(図12)であった。さらに重要なことは、CVは0.02Vで予想されるインターカレーションピークが欠落していることと、IISERP-CON1で観察された化学的相互作用による他のピークが見られることを示した(図13)。興味深いことに、モノマーへのLiの挿入は、100%のクーロン効率で完全に可逆的である。これは、フェノールトリホルミルユニット及びC6環と結合したトリアゾールユニットが、Li種と適切な化学的相互作用を提供できるモジュールを形成するように見えることを意味し、この能力はこれらのモジュールから構築されたCONに保持される。Liイオン電池の高活性への別の貢献は、CONの固有の低抵抗率によるものであり、インピーダンス測定により、セルには11.3オームという低い直列抵抗があり、7.5オームの電荷移動抵抗を示す(図14)。
【0037】
CONの電気化学的サイクル安定性は、100サイクルの充電-放電後でもそのレドックス活性が完全に保持されていることから確認された(図15)。インピーダンス測定により、これらのサイクルでコイン電池アセンブリからのオーム損失がないことも確認される(図16の挿入図を参照)(後掲の文献リストの(27)参照)。電気化学的ストレスが加えられた状態でCONの完全性をさらに実証するために、導電性炭素を一切使用せずにNMPに適切なCONを使用する電極を作製し、100サイクルの充電-放電を行った。PXRD及びIR及びFE-SEMの測定(図17~19)から、ポストサイクル材料が結晶性及び化学構造を保持していることが確認できる。IRでは、より低い波数で新しいピークはほとんど観察されず、これは共有Li-COF相互作用に対応しておらず(後掲の文献リストの(28)参照)、従って、これらの新しいピークは挿入されたLiとフレームワークの弱い相互作用によるものであると結論付けることができる。
【0038】
この高い可逆的なリチウム貯蔵容量に対するCONの構造的関与にいくらかの光を当てるために、シミュレーションに頼った(後掲の文献リストの(15),(29),(30),(31)参照)。観測された容量720mAh/gから、CONの式単位あたりに貯蔵されたリチウムの量は16と計算された。これを開始組成として使用して、IISERP-CON1の2×2×2セルを生成し、シミュレートされたアニーリング法(Materials Studio V6)を使用して、リチウム原子が最適な位置を見つけることができた。結果の出力は、CASTEPルーチンを使用して幾何学的形状に対してさらに最適化された。最終的な最適化された構造(相対エネルギー:-127eV)では、リチウム原子はフレームワークの壁に近い位置を占めており、層間空間に存在していた(図4A)。これは、グラフェン基板に見られるトップオン(top-on)位置決めとは大きく異なる(後掲の文献リストの(32)参照)。この最終構造のショートコンタクト分析により、トリアゾールの環窒素の周りのLi原子の位置とフロログルシノールのヒドロキシル酸素を考慮すると、いくつかの意味のある発見が明らかになる。2つの異なるリチウム原子を含む鎖が形成され、1つはLi原子とこれらの基の-OH及び-N原子との相互作用によるもので(図4B)、もう1つはトリアゾールのN原子のみとの相互作用によるものである(図4C)。これらの鎖では、Li-N/Li-Oの分離は2.69~2.8Åの範囲であり、共有結合したリチウムで見られるLi-N/Li-Oの距離(約1.8~2.0A)よりもはるかに長い。興味深いことに、これらの層の幾何学的形状により、より反応性の高いシッフ結合窒素(Schiff bond nitrogen)は、相互作用にはアクセスできない(図4A)。これはおそらく、不可逆的なLiロードにつながる可能性がある強い相互作用の欠如を説明している。これをさらに検証するために、機械的粉砕と溶液支援プロセスの両方を介してCONをLi(OH)2と反応させる実験を実施した。得られた生成物は、誘導結合プラズマ(ICP)を使用して分析した。分析の結果、両方のケースで約2%未満のLiのロードしかなく、測定された比容量から推定される量(16~18%)よりもかなり低いことが明らかになった。これは、CONが化学結合形成を介してLiイオンと反応する傾向がないことをさらに確認し、従って、印加電位下で観察される高い比容量の大部分がインターカレーションに起因することを示唆する。ただし、リチウムのロードは電気化学的な力なしで行われたため、CON表面での反応種の形成を完全に排除することはできない。芳香族環が融合した分子化合物では、Liは印加された電位下で、可逆的ではあるがより強い相互作用を形成することが知られている(後掲の文献リストの(11)参照)。
【0039】
これを確立するために、アルゴン雰囲気下で密封された放電後のサンプルを、X線光電子分光法(XPS)を使用して分析し、Li-N、Li-N及びLi-O/Li-OH相互作用ならびに電解質の寄与から生じるLiCOによるピーク(図4D)の存在を明らかにした。これは、表面基に対するLiの化学的親和性を示している。トリアゾールとフロログルシノールを結合基(CON式、C241515、M.Wt.610g/mol)として考慮すると、化学結合Li種からの理論容量は396mAhg-1と計算された。これは、実験から推定された値(224mAhg-1、0.54~1.55Vの電位窓内)よりも高いが、合計実験容量774mAhg-1よりもはるかに低くなっている(図20)。従って、理論容量と実験容量の比較から、インターカレーションプロセスは、0.01~0.54Vの電位窓で約550mAhg-1に寄与するようである。
【0040】
リチウム化の電子的駆動力の証拠を得るために、初期のCOFとそのリチウム化された形態の間のバンドギャップの変化を計算した。バンドギャップは、500eVの高い平面波基底カットオフとCASTEPルーチンに組み込まれた厳密なB3LYP機能を用いて、分散補正DFTを使用して計算された。初期のCOFのバンドギャップは2.2eVであり、これは実験的に決定された光学バンドギャップ(2.02eV、図21)とよく一致し、この大きなバンドギャップは、フレームワークが拡張共役を有さないためであると推測される(図4E)。これは、4プローブ測定では容易に判断できる電子伝導性がないこととよく一致する。ただし、リチウム化すると、バンドギャップは0.144eVに低下する。CONでのLiの最小化された構成でのバンドギャップのこのような低下は、強い電子駆動力の可能性を示唆している(後掲の文献リストの(29)参照)。これは、計算された電子密度と電位マップからの観察によって十分に補強される。Materials StudioのDMol3パッケージに実装されている総電子密度と静電ポテンシャルを計算した。初期のCONとLi吸着CONの静電ポテンシャルを比較すると、Li吸着時の電子分布に顕著な変化が見られる(図22)。注目すべきことに、Liイオンの静電的相互作用により、近くの炭素原子と窒素原子の電荷の差はそれほど顕著ではなくなり、CONは高度に活性化され、電子を使い果たす。明らかに、C6環は、かなりの電子密度をリチウムイオンに向かって移動させることで関与しているようである(後掲の文献リストの(11)参照)。本発明者らの意見では、計算は静電気を過大評価することで最良のシナリオを表示できるが、それでも正しい方向を指し示している。
【0041】
上記の観点から、広い電流密度窓にわたる安定した性能が、競合するアノード材料には不可欠であることが確認されている。これに関して、低(0.1A/g)及び高(1A/g)電流密度でのIISERP-CON1の比容量の、Li挿入-脱挿入のための他の有機材料との比較研究が行われた。図5Aの棒グラフから分かるように、電流密度を0.1A/gから1A/gに上げる際の比容量の低下は、IISERP-CON1において約20%であり、これはこれまでに報告されたすべての有機フレームワーク材料の中で最も低い。これは、CONとリチウム間の最適な相互作用に起因する可能性があり、さらに重要なことは、望ましくない不可逆的なレドックス活性がないためである。Li貯蔵の容量が大きいいくつかの最近の自立型有機フレームワークの構造を図5Bに示す(後掲の文献リストの(23),(19)(b),(20)参照)。それらの構造をIISERP-CON1の構造と比較すると、明らかに、IISERP-CON1にはいくつかの顕著な構造的特徴がある。電子が豊富な(電子を提供する-OH)フロログルシノールノードは、3,5-ジアミノトリアゾール由来の短い120°リンカーによって結合されている。これは、高密度の官能基を持つナノスペースを生成するだけでなく、Li種を組み立てる際の異なる官能基間の協働性を促進する(図5)。それに比べて、他のフレームワークは比較的長いリンカーを有し、活性部位として機能するヘテロ原子は遠く離れている。PDASAの場合、細孔は大きく、無水物の官能性はIISERP-CON1の官能基よりもさらに近く、これはより高い容量(0.05A/gで1050mAh/g)に反映される。ただし、この大容量はIISERP-CON1で観察された20%の低下と比較して73%低下する。これは、PDASAで形成される比較的強力で不可逆的なLi-COO結合が原因である可能性がある。さらに、短いリンカーであるにもかかわらず、トリアゾールは、フレームワーク内に十分に大きな細孔を生成することができ、これはスムーズな質量輸送と電荷輸送を実現するために重要である。一方、トリアゾールの柔軟性により、パッキング内で高度にπスタックする柱状モチーフを生成する層の座屈が可能になり、電解質溶液と印加電位の下で必要な安定性が確保される。
【0042】
従って、本発明の発見(知見)は、本発明のこれらの高度に設計可能なCOF由来のナノシート/構造がLIBにおいて効率的な電極材料として作用する優れた能力を明らかにし、フレキシブルディスプレイ、照明装置、RFIDタグ、センサ、光受容体、ガス貯蔵及びガス分離装置などの他の同様の分野におけるその応用のさらなる研究を促す。
【実施例
【0043】
好ましい実施形態を含む以下の実施例は、本発明の実施を例示するのに役立ち、示された詳細は例示によるものであり、本発明の好ましい実施形態の例示的議論の目的のためであることを理解されたい。
【0044】
材料及び方法:
3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、フロログルシノールはSigma Aldrichから入手し、ヘキサミン及びトリフルオロ酢酸(TFA)は、Sisco Research Laboratoriesから購入した。他のすべての試薬は分析グレードであった。すべての化学物質は、さらに精製することなく使用された。
【0045】
粉末X線回折:
粉末XRDは、本格的なBruker D8 Advance機器を使用して実行された。また、データ分析は、Materials Studio V6のReflexモジュールを使用して実行された。
【0046】
熱重量分析:
NETSZCH TGA-DSCシステムで熱重量分析を実施した。TGAはNガスフロー(20ml/分)(パージ+保護)で行われ、サンプルは5K/分でRTから550℃に加熱された。
【0047】
赤外分光法:
周囲温度で動作するNicolet ID5減衰全反射IR分光計を使用して、IRスペクトルを取得した。バックグラウンドとしてKBrペレットを使用して、固体IRスペクトルを記録した。
【0048】
電界放出走査:
積分電荷補償器とEsB及びAsB検出器が組み込まれた電子顕微鏡。Oxford X-max機器80mm2。(Carl Zeiss NTS、Gmbh)、撮像条件:2kV、WD=2mm、200kX、Inlens検出器。SEM画像の場合、最初の準備として、試料を完全に粉砕し、THFに30分間浸し、5分間超音波処理した。これらのよく分散した試料をシリコンウェーハにドロップキャストし、真空下で少なくとも12時間乾燥させた。
【0049】
電界放出-透過型電子顕微鏡:
200kVの加速電圧で動作するJEM 2200FS TEM顕微鏡を使用して、透過型電子顕微鏡(TEM)を実行した。ディフラクトグラムは20°~80°の間で1°min-1の走査速度で記録された。
【0050】
X線光電子分光法:
X線源:単色Al K-α(通常75W)。機器:AXIS Supra、Kratos Analytical、英国。Analysis Chamber Pr<2.0×10-7Pa。射出角:90度次の関係を使用して運動エネルギーを取得するために、KE(eV)=(1486.6-BE)を使用した。高解像度走査のPass Energyは20eV、解像度は約0.5eVである。調査走査の場合、Pass Energyは160eV、解像度は約2eVである。
【0051】
吸着試験:
Micromeritics 3-FLEX細孔及び表面積分析器を使用して、吸着試験を実施した。
【0052】
電気化学測定:
定電流充電-放電測定は、NEWAREソフトウェアを使用したMTI Batteryアナライザを使用して実行した。サイクリックボルタンメトリー及び定電位電気化学インピーダンスの研究は、ECLabソフトウェアを備えたBiologic VMP3 Multichannel Electrochemical Workstationで行った。
【0053】
13C固体NMR分光法:
4mm(外径)ジルコニアロータを備えた標準CP-TOSSパルスシーケンス(側波帯を完全に抑制した交差分極)プローブを使用して、Bruker AVANCE III 400 MHz分光計の周囲圧力で高分解度固体NMRスペクトルを記録した。TOSSとの交差偏波を使用して、100.37MHzで13Cデータを取得した。13Cの90度パルス幅は4μsであった。デカップリング周波数は72kHzに対応していた。TOSSの試料回転速度は5kHzであった。リサイクルの遅延は2秒であった。
【0054】
[実施例1](Example 1)
[1,3,5-トリホルミルフロログルシノールの合成]
1,3,5-トリホルミルフロログルシノールは、以前に報告された方法(後掲の文献リストの(1)参照)に従って合成した。
1H NMR(400MHz、CDCl)δ14.10(s、3H、OH)、10.14(s、3H、CHO)ppm;
13C NMR(100.6MHz、CDCl)δ192.1(CHO)、173.6(COH)、102.9(CCHO)ppm。
【0055】
[実施例2](Example 2)
[IISERP-CON1の合成]
1,3,5-トリホルミルフロログルシノール(90mg、0.42mmol)及び3,5-ジアミノトリアゾール(45mg、0.2mmol)をPyrex管に量り取り、ジオキサン(3.0mL)に溶解し、この溶液にジメチルアセトアミド(1.0mL)及びメシチレン(3.0mL)を加え、緑黄色が観察されるまで攪拌した。この後、1.0mLの酢酸水溶液(6M溶液)を加えた。次に、Pyrex管を液体窒素浴で急速凍結させ、密封した。Pyrex管とその内容物を120℃のオーブンに3日間入れた。これにより、約110mgの赤褐色固体が得られ、これを熱DMF、ジオキサン、MeOH、アセトン及びTHFで洗浄した(81%、単離収率)。この赤褐色の固体を、溶媒としてDMF/メタノールを使用してSoxhlet抽出にかけた。重要なことに、洗浄溶液には色が見られず、未反応の材料や小さなオリゴマーがないことを示唆しており、最終洗浄溶液の溶液NMRからさらに確認された(IISERP-CON1の式:C24N15O6H15、M.Wt.610g/mol、CHNO Obsd.C=48.9;H=3.20;N=36.45;O=16.90.Calc.82.36;H=4.84;N=12.81%)。観測されたCHNO値と計算されたCHNO値の間の有意な偏差に注意されたい。この矛盾は、CONに存在する末端アルデヒド及びアミン官能基のかなりの量の存在によって説明できる。これは13C-SSNMR及びIRによって確認される(図S1及びS8を参照)。このCHN分析の不一致から、そのような末端CHO及びNH2官能基の約8%が存在すると推定でき、CONで重縮合が高すぎないことを示す。
【0056】
[実施例3](Example 3)
[モノマーの合成]
3-アミノ-1,2,4-トリアゾール(1.42g、0.017モル)を、エタノール(40mL)の熱い混合物に溶解し、エタノール中の1,3,5-トリホルミルフロログルシノール(1.26g、0.006モル)の溶液をそれにゆっくりと追加した。得られた混合物を還流し、モノマーの不浄な白い沈殿物を収集した。モノマーの沈殿物を大量の熱エタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させた。最後に、ゆっくり蒸発させることにより、DMFの熱溶液からモノマーを結晶化させた。単結晶X線回折に適さない小さな結晶が形成された。結晶はDMSOに非常に溶けやすかった。そのため、モノマーは液体状態のNMR及び固体状態のIR研究によって特徴付けられた。
【0057】
[実施例4](Example 4)
[電気化学測定のためのコイン形電池の準備]
IISERP-CON1は、真空下、150℃で24時間加熱することにより活性化された。75%のCON、25%のSuper-P炭素、及び10%のPTFEバインダーを、乾燥した清潔な乳鉢-乳棒で完全に粉砕して混合した。NMPを1滴ずつ加えて、高粘度のスラリーを作成した。スラリーを銅箔にコーティングして、ナノシートを含む電極を作成した。それを120℃の真空オーブンに24時間置いた。銅箔(電極)のCONコーティングは、この乾燥手順に対して浸出不能のままであり、目に見える亀裂は現れなかった。従って、コーティングされた電極は、2032コイン形電池のサイズに応じて切断された。この適切に切断された電極は、グローブボックスに入れる前に、再び80℃の真空下で乾燥させた。次に、グローブボックス内にコイン形電池を準備した。1:1炭酸エチレンと炭酸ジメチルに溶解したLiPF6を電解質として使用し、約2%(v/v)のフルオロエチレングリコール溶媒を加えて、1回目の放電サイクル後の固体電解質界面の形成を防止した。
注:充電-放電のセットアップから、コイン型電池の開回路電圧は約3Vであると判断された。
注:すべての電気化学測定で、Li/Liハーフセルに関して電位を測定した。
【0058】
[実施例5](Example 5)
[計算の詳細]
すべての計算は、Materials Studio V6に実装された様々なモジュールを使用して実行した。
モンテカルロ法を使用して、COFの低エネルギー構成内でLi種の最も可能性の高い位置を取得した。これらは、Materials Studio V.6.0で利用可能なシミュレーテッドアニーリング技術を使用して実行した。デフォルトのパラメータを使用した。構造を最適化するために、自動温度制御と100,000サイクル/セルを採用した。QEq電荷平衡化法と組み合わせたUniversal Force Filed(UFF)を幾何学的形状最適化に使用したが、平衡化(QEq)を適用しても最終的な構成に大きな違いは見られなかった。最適化中に制約は設定しなかった。
【0059】
周期的COF構造の幾何学的形状最適化のために、密結合密度汎関数法を採用した。Slater-KosterライブラリのPBE交換相関関数及びパラメータを、340eVの平面波基底セットカットオフで使用した。すべての計算はスピン偏極であり、Γ点のみをサンプリングした。UFFベースのLennard-Jones分散補正は、エネルギー、力及び変位の計算に含まれ、セルが最適化された。0.005Haのスミアリングパラメータを適用した。
【0060】
リチウム化されたCONの室温安定性を確立するために、298KでNVEアンサンブルを使用したCASTEP動力学計算を実行した。MDシミュレーションには、Materials StudioのCASTEP Dynamicsモジュールを使用した。計算には、1×1×2セルを使用し、一般化勾配近似(GGA)及びPerdew-Burke-Ernzerhof(PBE)関数を使用して勾配補正交換相関を適用した。周期的な2D構造の最適化におけるその適合性を考慮して、アンサンブルを定義するために運動のニュートン方程式(NPT)を選択した。260eVの平面波基底カットオフを備えた超軟疑似電位を採用した。そして、DFT-Dベースの半経験的分散補正を最適化に適用した。密度混合機能を使用して、電子最小化を実行した。すべての電子レベルで優れた収束が達成され、エネルギーの顕著な体系的な変化はなかった。使用公差:1×e-006。
【0061】
バンド構造は、MSパッケージ内に構築されたCASTEPを使用して、幾何学的形状最適化構成(DFTBからの最低エネルギー構成)で計算した。これらの場合、500eVの平面波基底カットオフを持つノルム保存型擬ポテンシャルを採用し、B3LYP関数を使用した。電子最小化は、All Bands/EDFTアルゴリズムを使用して達成された。すべての計算は単位セルで実行され、2×2×2のスーパーセルで個別に実行された。
【0062】
電子密度と静電ポテンシャルの計算には、Materials Studioで実装されたDMol3を使用した。計算には2×2×2セルを使用し、一般化勾配近似(GGA)及びPerdew-Wang 91(PW91)関数を使用して勾配補正交換相関を適用した。DFT-D補正を適用し、1×e-006のSCF許容値を有する軌道カットオフ(5.1Ang.)にグローバルスキームを使用した。また、0.005Haのスミアリングパラメータを適用した。
【0063】
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(文献リスト以上)
【符号の説明】
【0066】
図1及び図22中の英文字に対応する和文字(和訳)を「英文字:和文字」の対比形式で以下に記述する。
図1
図1のA中、out-of-plane triazole: 平面外トリアゾール
図1のB中、c-axis view: c軸ビュー
図1のD中、π stacked columns: πスタックカラム
図22
Red:e- deficient: 赤色-電子欠乏
Blue:e- rich: 青色-電子リッチ(電子豊富)
Li@CON: CONでのリチウム(Li)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図18
図19
図20
図21
図22
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図24