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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20230310BHJP
   G02B 13/04 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021205936
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592163734
【氏名又は名称】京セラSOC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 貴大
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-356278(JP,A)
【文献】特開2007-212847(JP,A)
【文献】特開2003-161881(JP,A)
【文献】特開2004-118072(JP,A)
【文献】特表2005-537505(JP,A)
【文献】特開2010-134405(JP,A)
【文献】特開2000-155267(JP,A)
【文献】特開2008-122592(JP,A)
【文献】特開2019-003001(JP,A)
【文献】特開平08-179201(JP,A)
【文献】特開2002-202457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面を持たない単レンズからなる複数のレンズにより構成され、レトロ比が1.5以上の対物レンズであって、
複数の前記レンズは、拡大側から順に、略アフォーカルである第1レンズ群と、正のパワーを持つ第2レンズ群とが並んで構成され、
前記第1レンズ群は、前記拡大側から順に、負のパワーを持つ第1aレンズ群と、正のパワーを持つ第1bレンズ群とが並んで構成され、かつ前記第1レンズ群の焦点距離をf(Gr1)とし、当該対物レンズの全系の焦点距離をf(total)としたときに、|f(Gr1)÷f(total)|>10を満たしており、
前記第2レンズ群は、前記拡大側から順に、負のパワーを持つ第2aレンズ群と、正のパワーを持つ第2bレンズ群とが並んで構成され
前記第1aレンズ群が単レンズからなる第1aレンズからなり、前記第1bレンズ群が単レンズからなる第1bレンズからなり、
前記第1aレンズ群の焦点距離をf(L1a)とし、前記第1bレンズ群の焦点距離をf(L1b)としたときに、-2.2<f(L1b)÷f(L1a)<-1.4を満たす対物レンズ。
【請求項2】
すべての前記レンズが合成石英及び蛍石のいずれか一方又は両方を用いて構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記第2aレンズ群が2枚の負の焦点距離を持つ単レンズからなる請求項1又は2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
前記第2aレンズ群が1枚の単レンズからなる請求項1又は2に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記第2aレンズ群が2枚の単レンズからなり、前記拡大側から順に並ぶ、負のパワーを持つ単レンズ及び正のパワーを持つ単レンズである請求項1又は2に記載の対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズに関し、さらに詳細には、高開口数と長作動距離と短焦点距離とを満足する、半導体やFPDをはじめとする各種検査装置に適した対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やFPDをはじめとする各種検査装置に用いられる様々の対物レンズが公知である(例えば、特許文献1~8)。この種の対物レンズには高開口数・短波長対応に加えて作動距離が長いことが要求される。具体的には、各種検査装置の光源には、193nm、248nm、266nm、355nm、365nm又はそれらに近似したレーザー発振波長が用いられ、対物レンズは、開口数(NA)が0.75以上であり、作動距離は1mm以上、望ましくは5mm以上であることが望ましい(非特許文献1、2参照)。
【0003】
また、光学系全長をコンパクトに抑えつつ高倍率の観察を実現するため、対物レンズの焦点距離は極力短いことが望ましい。具体的な数値例でこのことを説明する。例えば、10μmのピクセルサイズで空間分解能0.2μmを実現しようとすると、観察倍率が10÷0.2=200倍となる。仮に対物レンズの焦点距離を8mmだとすると、結像レンズの焦点距離が8×200=1600mmとなり、像側テレセントリックの条件下で光学系の全長は焦点距離の約2倍、すなわち3.2mにも達する。もし、対物レンズの焦点距離が3mmだとすると、結像レンズの焦点距離は3×200=600mmであり、光学系の全長は約0.6m×2=1.2mで済む。この数値例からも対物レンズの焦点距離が短いことは有利であることが見て取れる。
【0004】
一方、使用波長が300nmを下回るいわゆる深紫外と呼ばれる波長領域において、屈折部材として用いられる硝材は事実上石英と蛍石とに限られている。また、当然ながらこの波長領域では接合レンズを使うことができない。さらに、この波長領域では、コート材料の吸収や硝材自体の吸収が顕著なものになるため、光源からの光を効率良く利用し、なおかつ光学系のダメージを減らすためには、対物レンズを構成するレンズ枚数を極力少なくすることが要求される。
【0005】
仮に近紫外(波長355nm以上)ないし可視(波長400nm以上)の領域にあっても、検査装置においては数Wクラスのレーザー光が用いられており、しばしば対物レンズを介した照明方法(同軸落射照明)が行われる。このような高パワーのレーザー光はレンズ同士を接合する接着剤にダメージを与える可能性があるため、検査装置に使われる対物レンズには、接合レンズを用いず、すべてのレンズを単レンズにより構成することが一般的である。また、光利用効率の向上、あるいはフレアのようなロスや迷光の抑制のため、極力少ない枚数で設計がなされることは深紫外領域の光学設計と同様である。
【0006】
したがって、検査装置に用いられる対物レンズでは、通常の対物レンズに比べて光学設計の自由度が著しく制限された条件下にあっても、高開口数と長作動距離と短焦点距離とを満足する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US6952256B2
【文献】特開2000-155267号公報
【文献】特開2004-212920号公報
【文献】特開2010-055006号公報
【文献】特公平4-026447号公報
【文献】特公平4-031097号公報
【文献】特公平5-067003号公報
【文献】特公平4-026448号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. Webb et al., "Optical Design Forms for DUV&VUV Microlithographic Processes", Optical Microlithography XIV, Proceedings of SPIE Vol. 4346 (2001)
【文献】Yueqian Zhang and Herbert Gross, "Systematic design of microscope objectives " Adv. Opt. Techn. 2019; aop, Adv. Opt. Techn. 2019; 8(5): 385-402, Part I System review and analysis, Part II Lens modules and design principles, Part III miscellaneous design principles and system synthesis
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
作動距離(すなわち、レンズから像面までの距離)を焦点距離よりも長くするためには、拡大側(すなわち、入射面側)から順に、負のレンズ群と正のレンズ群とが並ぶレトロフォーカスタイプが用いられる。レトロフォーカスタイプにおいては、焦点距離に対する作動距離の比(レトロ比)を大きくすると、正のレンズ群に入射する軸上光線高が高くなり、球面収差の補正が難しくなる。また、レンズのパワー配置の著しい非対称性により、コマ収差の補正が難しくなる。ここで、改めてレトロ比Rの定義を数式で示すと以下の様になる。
R=(作動距離)/(焦点距離)
【0010】
したがって、これまで知られている設計例では、レトロ比をそれほど大きく取ることができなかった。次に、検査装置での使用を前提とし(すなわち、接合レンズを含まない)、NAが0.75以上の先行例を示す。
【0011】
非特許文献1(図8及び図9)においては、いずれも焦点距離:8mm、作動距離:9mm、NA:0.75、使用波長:248nmの例が示されている。レトロ比は9÷8=1.125である。また、ここで挙げた2例のレンズはすべて石英又は蛍石により構成されており、接合レンズは含まれていない。
【0012】
特許文献1(表1A)においては、焦点距離:8.00mm、作動距離:7.789mm、NA:0.857、使用波長:257.25nmの例が示されている。本例のレトロ比は7.789÷8=0.973である。また、本例のレンズはすべて石英により構成されており、接合レンズは含まれていない。
【0013】
特許文献2の実施例1においては、焦点距離:2.00mm、作動距離:2.46mm、NA:0.9、使用波長:248nmの例が示されている。本例のレトロ比は2.46÷2=1.23である。本例のレンズは屈折率:1.5084の硝材から構成されており、屈折率から石英だと推定される。また接合レンズは含まれていない。
【0014】
特許文献3の実施例1においては、焦点距離:2.00mm、作動距離:0.48mm、NA:0.9、使用波長:248nmの例が示されている。本例のレトロ比は0.48÷2=0.24である。本例のレンズはすべて石英又は蛍石により構成されており、接合レンズは含まれていない。
【0015】
開口数が比較的小さい場合は、レトロ比を大きく取ることができる。
【0016】
特許文献4の実施例1においては、焦点距離:3.6mm、作動距離:12mm、NA:0.4、使用波長:248~549nmの例が示されている。本例のレトロ比は12÷3.6=3.33と他のどの先行例よりも大きいが、NAが0.4と小さいため、ここでいう検査装置の用途には適さない。また、本例のレンズはすべて石英及び蛍石の少なくとも一方により構成されているが、接合レンズを含む。
【0017】
一方、高屈折率硝材や接合レンズを用いる場合、光学設計の自由度を増すことができ、従来のレトロフォーカスタイプであっても、レトロ比を大きく取ることができる。
【0018】
特許文献5の実施例3においては、焦点距離:2.04mm、作動距離:2.91mm、NA:0.9、可視域で使用可能な例が示されている。本例のレトロ比は2.91÷2.04=1.426であり、非特許文献1、2、特許文献1、2、3と比較して大きい。しかし本例は高屈折率硝材及び接合レンズを用いており、可視域でのみ使用可能である。したがってここでいう検査装置の用途には適さない。また、特許文献6、7、8においても同様の実施例が見られるが、これらの実施例はすべて接合レンズを含んでおり、検査装置の用途には適さない。さらには、同様の構成により、レトロ比をさらに大きく、望ましくは3以上にする設計を行うことは困難である。
【0019】
このように、先行例では種々の検査装置で要求されるような、構成枚数が少なく、接合レンズを用いず、開口数が大きく、焦点距離に対する作動距離の比が大きい対物レンズの設計例は見受けられない。
【0020】
以上を鑑み、本発明は、構成枚数が少なく、接合レンズを用いず、開口数が大きく、焦点距離に対する作動距離の比が大きい対物レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、接合面を持たない単レンズからなる複数のレンズ(L)により構成され、レトロ比が1.5以上の対物レンズ(1)であって、複数の前記レンズは、拡大側から順に、略アフォーカルである第1レンズ群(Gr1)と、正のパワーを持つ第2レンズ群(Gr2)とが並んで構成され、前記第1レンズ群は、前記拡大側から順に、負のパワーを持つ第1aレンズ群(Gr1a)と、正のパワーを持つ第1bレンズ群(Gr1b)とが並んで構成され、かつ前記第1レンズ群の焦点距離をf(Gr1)とし、当該対物レンズの全系の焦点距離をf(total)としたときに、|f(Gr1)÷f(total)|>10を満たしており、前記第2レンズ群は、前記拡大側から順に、負のパワーを持つ第2aレンズ群(Gr2a)と、正のパワーを持つ第2bレンズ群(Gr2b)とが並んで構成される。
【0022】
ただし、前記作動距離とは、複数の前記レンズ(L)の屈折面のうち最も縮小側に位置する最終屈折面から像面までの空気換算長である。また、f(Gr1)は第1レンズ群Gr1の焦点距離、f(total)は全系の焦点距離である。
【0023】
上記の態様において、すべての前記レンズ(L)が合成石英及び蛍石(CaF2)のいずれか一方又は両方を用いて構成される。
【0024】
上記の態様において、前記第1aレンズ群(Gr1a)が単レンズからなる第1aレンズ(L1a)からなり、前記第1bレンズ群(Gr1b)が単レンズからなる第1bレンズ(L1b)からなり、前記第1aレンズの焦点距離をf(L1a)とし、前記第1bレンズの焦点距離をf(L1b)としたときに、-2.2<f(L1b)÷f(L1a)<-1.4である。
【0025】
上記の態様において、前記第2aレンズ群(Gr2a)が2枚の負の焦点距離を持つ単レンズ(L2a1、L2a2、図6図18)からなる。
【0026】
上記の態様において、前記第2aレンズ群(Gr2a)が1枚の単レンズ(図9図15)からなる。
【0027】
上記の態様において、前記第2aレンズ群(Gr2a)が2枚の単レンズ(図12)からなり、拡大側から順に並ぶ、負のパワーを持つ単レンズ(L2a)及び正のパワーを持つ単レンズ(L2b)である。
【発明の効果】
【0028】
以上の態様によれば、構成枚数が少なく、接合レンズを用いず、開口数が大きく、焦点距離に対する作動距離の比が大きい対物レンズの構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】レトロフォーカスタイプのパワー配置図
図2】ダブルガウスタイプの瞳位置の説明
図3】レトロフォーカスタイプの瞳位置の説明
図4】アフォーカルコンバータータイプのパワー配置図
図5】実施形態に係る対物レンズのパワー配置図
図6】実施例1の対物レンズの光路図
図7】実施例1の対物レンズの縦収差図
図8】実施例1の対物レンズの横収差図
図9】実施例2の対物レンズの光路図
図10】実施例2の対物レンズの縦収差図
図11】実施例2の対物レンズの横収差図
図12】実施例3の対物レンズの光路図
図13】実施例3の対物レンズの縦収差図
図14】実施例3の対物レンズの横収差図
図15】実施例4の対物レンズの光路図
図16】実施例4の対物レンズの縦収差図
図17】実施例4の対物レンズの横収差図
図18】実施例5の対物レンズの光路図
図19】実施例5の対物レンズの縦収差図
図20】実施例5の対物レンズの横収差図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図5は、実施形態に係る対物レンズ1のパワー配置図である。図5に示すように、対物レンズ1は、課題を解決するために、拡大側(すなわち、図の左側の入射面側)から順に並ぶ、群として略アフォーカルな第1レンズ群Gr1と、全体として正の焦点距離を持つ第2レンズ群Gr2とにより構成される。各レンズ群は複数のレンズLにより構成される。すべてのレンズLは接合面を持たない単レンズにより構成される。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、それぞれ単レンズからなる負の第1aレンズL1a及び正の第1bレンズL1bからなる。第2レンズ群Gr2は拡大側から順に、負のパワーを持つ第2aレンズ群Gr2aと、正のパワーを持つ第2bレンズ群Gr2bとが並ぶレンズ構成が有効である。ここで、パワーとは焦点距離の逆数のことである。
【0031】
従来、焦点距離に対して作動距離の長い所謂長作動距離対物レンズの設計において、長い作動距離の要求を満たすためには、レトロフォーカスタイプの構成を取ることが一般的であった。レトロフォーカスタイプの構成では、拡大側から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群Gr1と、第1レンズ群Gr1に対し大きな空気間隔を隔てて正のパワーを持つ第2レンズ群Gr2とが並んで配置される。なお、作動距離とは、対物レンズ1を構成する複数のレンズの屈折面のうち最も縮小側に位置する最終屈折面から像面までの空気換算長である。
【0032】
レトロフォーカスタイプにおいては、焦点距離に対する作動距離の比(レトロ比R)を大きくすると、正のレンズ群に入射する軸上光線高が高くなり、球面収差の補正が難しくなる。また、レンズのパワー配置の著しい非対称性により、コマ収差の補正が難しくなる。その結果、レトロ比Rをそれほど大きく取れないことはすでに見た通りである。
【0033】
図1に示すように、簡単のため、焦点距離がf1である第1群と、焦点距離がf2である第2群とを備え、両群の間隔がeである薄肉レンズにより構成される光学系を考える。第1群のパワーをφ1=1/f1、第2群のパワーをφ2=1/f2とし、系全体の焦点距離をf、系全体のパワーをφ=1/fとすると、φは式(1)により与えられる。
φ=φ+φ-eφφ ・・・(1)
【0034】
また、この光学系の作動距離をWDとすると、WDは式(2)で与えられる。
WD=(1-eφ)/(φ+φ-eφφ)=(1-eφ)f ・・・(2)
ここで、レトロ比Rを前述したように焦点距離に対する作動距離の比と定める。
R=WD/f=1-eφ ・・・(3)
式(3)をφ1について解くことにより、以下の式(4)が得られる。
φ=(1-R)/e ・・・(4)
レンズ間隔eは必ず正の値であるので、レトロ比Rを1よりも大きくするためにはφは負である必要があることが式(4)よりわかる。
【0035】
レトロフォーカスタイプを検査装置の対物レンズに適用した例が、特許文献2の実施例1、特許文献3の実施例1である。
【0036】
パワー配置の対称性を向上することで、コマ収差の補正を容易にしつつ、開口数を向上する方法として、ダブルガウスタイプの配置も考えられる。このタイプは、拡大側から順に並ぶ、正のパワーを持つ第1群、負のパワーを持つ第2群、及び、正のパワーを持つ第3群により構成される。さらに、負のパワーを持つ群が凹面を内側に向かい合わせたメニスカスレンズ群からなる。
【0037】
特許文献1の実施例1は、元来レトロフォーカスタイプでありながら、最も拡大側に凸レンズを配置し、途中の負のパワーを持つレンズ群をダブルガウスタイプの特徴を持つ形状に設定している。したがって、これはレトロフォーカスタイプにダブルガウスタイプを援用した例だと考えられる。この配置では、正レンズL11からなる正のパワーを持つ第1群、負メニスカスレンズL10、L9からなる負のパワーを持つ第2群、レンズL8~L1からなる正のパワーを持つ第3群の3つのレンズ群により、対物レンズが構成されている。
【0038】
ダブルガウスタイプ、ないしダブルガウスを援用したレトロフォーカスタイプにおいては、収差補正が容易である反面、レトロフォーカスタイプと比較して、瞳位置が最も拡大側の面より内側にあるという問題がある。これは、図2に示す通り、入射瞳(すなわち、絞りの虚像)が最も拡大側(図の左側)に配置された正のレンズ群の作用により、最も拡大側から遠ざかる方向に形成されるためである。一方、レトロフォーカスタイプでは、図3に示す通り、最も拡大側(図の左側)のレンズ群は負のパワーを持つため、絞りの虚像は拡大側に近づく方向に形成される。
【0039】
実際の装置において、瞳面が対物レンズのより内側に位置するということは、配置上不利である。理由は次の通りである。すなわち、瞳がより内側にあると、対物レンズを望む光束はより広がってしまう。すると、対物レンズと結像レンズとの間に位置する種々の光学素子(例えば、照明光を導入するためのビームスプリッタ)が大型化する、あるいは挿入するスペースが限られてしまうという問題が生じるためである。
【0040】
以上を要約すると、レトロフォーカスタイプは検査装置の対物レンズに適した形式ではあるが、拡大側に位置する強い負のパワーを持つレンズ群により、球面収差及びコマ収差の補正が難しい。この問題を解決するために、最も拡大側に正のパワーを持つレンズ群を配置し、ダブルガウスタイプを援用するという方法が考えられる。しかしながら、ダブルガウスタイプにおいて、最も拡大側に配置された正のパワーを持つレンズ群の作用により、瞳が最も拡大側から遠ざかるという問題がある。
【0041】
そこで、本明細書で記述するレトロフォーカスタイプの優位点である瞳位置の特徴をそのまま継承しつつ、球面収差及びコマ収差を良好に補正するという問題解決手段を説明する。
【0042】
具体的には、対物レンズ1は、拡大側から順に、群として略アフォーカルな第1レンズ群Gr1と、全体として正の焦点距離を持つ第2レンズ群Gr2とが並ぶレンズ構成とされる。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、負の第1aレンズL1aと、正の第1bレンズL1bとの各単レンズからなる。第2レンズ群Gr2は、拡大側から順に並ぶ、負のパワーを持つ第2aレンズ群Gr2aと、正のパワーを持つ第2bレンズ群Gr2bとからなる。
【0043】
まず、この配置を次のように簡略化したモデルで考える。図4に示すように、それぞれ単レンズからなる負の第1aレンズL1aと正の第1bレンズL1bからなり、群として略アフォーカルな第1レンズ群Gr1と、正のパワーを持つ第2レンズ群Gr2とからなる光学系を考える。これをアフォーカルコンバータータイプと呼ぶ。
【0044】
第1レンズ群Gr1はいわゆるアフォーカルコンバーターの役割を果たす。平行光が拡大側から入射するとき、平行光はまず第1aレンズL1aに入射し、発散光束として第1bレンズL1bに入射する。第1bレンズL1bに入射した光は、正のレンズの作用により略平行光となり、第2レンズ群Gr2に入射する。
【0045】
第1aレンズL1aの焦点距離をf1a、第1bレンズL1bの焦点距離をf1bとするとき、アフォーカル比mは次の式(5)で与えられる。なお、この式は第1レンズ群Gr1が完全にアフォーカルでなくともおおよそ成立する。
m=-f1b/f1a ・・・(5)
【0046】
L1bを出た光が第2レンズ群Gr2に入射するとする。第2レンズ群Gr2の焦点距離をf2とするとき、焦点距離(合成焦点距離)をfとすると、fは式(6)で与えられる。
f=f/m=-(f1a/f1b)f ・・・(6)
【0047】
この光学系のバックフォーカスは、第2レンズ群Gr2に平行光束が入射することからfとなる。したがってこの光学系のレトロ比Rは式(7)で与えられる。
=f/f=m=-f1b/f1a ・・・(7)
ゆえにφ1aの絶対値をφ1bの絶対値よりも大きく取ることにより、明らかにレトロ比R>1が実現できる。
【0048】
この光学配置に基づく先行例が特許文献5、6、7、8に示されている。これらの先行例では、拡大側の複数のレンズ群の合成が略アフォーカルであることは認識されておらず、単にレトロフォーカスタイプにより作動距離を長くすることが意図されている。また、これらの実施例では、レトロ比Rが高々2以下であり、要求されている長い作動距離と短焦点距離とを両立することはできない。さらに、これらの実施例は、すべて可視光での使用を前提にしており、高屈折硝材や接合レンズといった収差補正を容易にする手段を用いているため、検査装置用途には適さない。
【0049】
さらに、特許文献5、6、7、8の例は、アフォーカル系に続く全体として正のレンズ群を負のレンズ群との組み合わせとして構成していない。その理由は、アフォーカルの位置に移動群を配置することで、球面収差を変化させるために使ういわゆる補正環付き対物レンズの構成を意図しているためである。したがって、本明細書にて開示された発明のような長い作動距離と短い焦点距離が実現されるものではない。
【0050】
よって、上記の様に単純なアフォーカルコンバータータイプでは、検査装置用途として長い作動距離と短い焦点距離とを実現することはできない。そこで本発明では、この問題点を解決するため、第2レンズ群Gr2が負のパワーを持つ第2aレンズ群Gr2aと正のパワーを持つ第2bレンズ群Gr2bとに分割される。すなわち、第2レンズ群Gr2がレトロフォーカスタイプにより構成される。第2レンズ群Gr2のレトロ比RをRとすると、作動距離(WD)は次に示す式(8)で与えられる。
WD=f×R ・・・(8)
【0051】
式(7)を式(8)に代入することにより次式(9)が得られる。
WD=f×R×R ・・・(9)
したがって、全体のレトロ比Rは次式(10)のようになる。
R=WD/f=R×R=m×R ・・・(10)
【0052】
本発明による対物レンズ1のパワー配置は図5に示す通りである。
【0053】
全体のレトロ比Rは、アフォーカル比mとレトロフォーカスタイプの対物レンズ1のレトロ比Rとの積で表現される。そこで、全体のレトロ比Rをアフォーカルコンバーターとレトロフォーカスタイプの対物レンズ1とに分担させることにより、各レンズ群の収差補正上の負担を増すことなくレトロ比Rを大きく取ることができる。上記の先行例によると、レトロ比Rが1.5程度のレトロフォーカスタイプの実現は容易である。また、アフォーカル倍率が2倍程度のアフォーカル系の構成も容易である。したがって、構成の容易な部分系の組み合わせにより、容易にレトロ比Rを高く取ることができる。このタイプを改良アフォーカルコンバータータイプと呼ぶ。
【0054】
拡大側から順に負のレンズと正のレンズとが並ぶアフォーカルコンバーターの配置は、瞳位置の観点からレトロフォーカスタイプよりも有利である。その理由は次の通りである。すなわち、アフォーカルコンバーターの正のレンズ群により、一旦絞りの虚像が拡大側より遠い側に形成される。その虚像を最も拡大側の負のレンズ群により再び虚像として形成することにより、レトロフォーカスタイプよりも絞りの虚像がより拡大側(すなわち、入射面側)に形成されるためである。さらに、改良アフォーカルコンバータータイプでは、第2レンズ群Gr2が、負のパワーを持つ第2aレンズ群Gr2aと正のパワーを持つ第2bレンズ群Gr2bとに分割される。これにより、通常は第2bレンズ群Gr2b近辺に配置される開口絞りの像としての瞳を、第2aレンズ群Gr2aにより虚像に変換する際の自由度が増す。そのため、瞳位置と収差補正とが両立しやすくなるという利点がある。瞳位置についての利点は、これまで知られていた比較的小型の対物レンズの実施例においては意識されていなかった。
【0055】
本明細書で開示した構成は、従来収差補正が難しいとされていた、最も拡大側に負レンズを配置した構成である。全体として収差補正を行うため、アフォーカルコンバーター部により発生する過剰補正の収差を、その後に続く正のレンズ群の補正不足の収差により打ち消すことを発明者は考案した。そのことにより、個々の部分群の収差を補正するよりも、全系として高度に収差補正することができる。その結果、従来のレトロフォーカスタイプや、ダブルガウスタイプ、ないし、最も拡大側に凸レンズを配置するようなアフォーカルタイプにはない短い焦点距離と長い作動距離とを両立させることできた。さらに、収差補正が良好な対物レンズ1を極力少ない枚数で構成することが新たに達成できた。
【0056】
さらに、本明細書で開示された構成が新規であることの証左として、先行例(非特許文献1の図9及び特許文献1の表1)を例にとって説明する。
【0057】
非特許文献1の図9の構成は、最も拡大側から順に、正のレンズと負のレンズとからなる略アフォーカルなレンズ群と、負のレンズ群と正のレンズ群とが距離を隔てて配置された全体として正のレンズ群とが並ぶ。この構成は、作動距離を長く取るために焦点距離を長く設定したとき、収差を良好に補正するためにアフォーカルレンズ群が正のレンズと負のレンズとの並びで構成されている。仮に、この構成が本明細書で開示されたようにアフォーカル群を負のレンズと正のレンズとの並びで構成し、焦点距離と作動距離との比を予め要求されていた範囲内に収めようとした場合、パワー配置の非対称性により収差補正を行うことが困難である。このことは特許文献1(表1)についても同様である。さらに、これらの先行例では、アフォーカルタイプの収差補正効果(すなわち、アフォーカルレンズ群と正のレンズ群との収差を互いに打ち消すことで全体として収差をきわめて小さくする効果)について意識されていない。そのため、アフォーカルレンズ群のアフォーカル比mは小さく、全体として収差を良好に補正するのに役立ってはいない。
【0058】
したがって、本明細書の構成は、これら先行例の単なる改良ではない。
【0059】
以上に加えて、本明細書で取り扱った検査用対物レンズを含む顕微鏡対物レンズの分類を包括的に行った非特許文献2においても、本明細書で開示された改良アフォーカルコンバータータイプについて言及されていない。したがって、本明細書で開示された構成はこれまでに見られない新しいタイプであるといえる。
【0060】
なお、ここに記載の対物レンズ1は、例えばエキシマレーザー(ArF、KrF)やYAGレーザーの高調波(355nm、266nm)、アルゴンイオンレーザー(363.8nm)といった深紫外領域におけるレーザー発振波長での使用を想定している。一方、ここに記載の対物レンズ1を、例えばYAGの2倍波(532nm)やArレーザー(488nm)といった可視レーザー、あるいは近赤外レーザー発振波長に適用することも当然ながら可能である。また、その場合は、レンズを構成する材料が石英、蛍石に加えて通常の光学ガラスであってもよい。
【0061】
本発明によると、高い開口数とレトロ比Rが1.5~3倍程度の長い作動距離及び短い焦点距離とを両立可能な対物レンズ1を構成することができる。
【実施例1】
【0062】
図6図8は、実施例1の対物レンズ1の光路図、縦収差図及び横収差図を示す。実施例1は、波長193.4nm±0.001nm、焦点距離(f(total)):3mm、NA:0.85、作動距離:9.87mm、視野:φ0.18mmの対物レンズ1である。レトロ比Rは9.87÷3=3.29である。本実施例の対物レンズ1はすべて石英(合成石英を含む。以下同じ。)又は蛍石(CaF2)からなる接合面を持たない単レンズにより構成され、接合レンズを含まない。図6に示すように、本実施例の対物レンズ1は拡大側(図の左側)から順に並ぶ、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正の第2レンズ群Gr2との組み合わせである。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる第1aレンズL1aと、負の単レンズからなる第1bレンズL1bとからなる。第2レンズ群Gr2は、拡大側から順に並ぶ、2枚の負の単レンズからなる第2a1レンズL2a1及び第2a2レンズL2a2からなる全体として負の第2aレンズ群Gr2aと、全体として正の第2bレンズ群Gr2bとからなる。また、第1レンズ群Gr1の焦点距離(f(Gr1))が67mmであり、|f(Gr1)÷f(total)|=22.33となるため、本発明の条件(|f(Gr1)÷f(total)|>10)は満たされる。第1レンズ群Gr1のアフォーカル比mは、f(L1a)=-20.12、f(L1b)=34.16なので、m=f(L1b)÷f(L1a)=-1.70となる。
【0063】
本実施例のレンズデータは表1に示す通りである。
【表1】
【実施例2】
【0064】
図9図11は、実施例2の対物レンズ1の光路図、縦収差図及び横収差図を示す。実施例2では、波長193.4nm±0.001nm、焦点距離3mm、NA:0.9、作動距離:7.7mm、視野:φ0.18mmの対物レンズ1である。レトロ比Rは7÷3=2.33である。本実施例の対物レンズ1はすべて石英又は蛍石からなる接合面を持たない単レンズにより構成され、接合レンズを含まない。図9に示すように、本実施例の対物レンズ1は、拡大側(図の左側)から順に並ぶ、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正の第2レンズ群Gr2との組み合わせである。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、単レンズからなる負の第1aレンズL1aと、単レンズからなる正の第1bレンズL1bとからなる。第2レンズ群Gr2は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる負の第2aレンズ群Gr2aと、全体として正の第2bレンズ群Gr2bとからなる。また、第1レンズ群Gr1の焦点距離(f(Gr1)):48mmであり、|f(Gr1)÷f(total)|=16となるため、本発明の条件(|f(Gr1)÷f(total)|>10)は満たされる。第1レンズ群Gr1のアフォーカル比mは、f(L1a)=-25.14、f(L1b)=37.74なので、m=f(L1b)÷f(L1a)=-1.50となる。
【0065】
本実施例のレンズデータは表2に示す通りである。
【表2】
【実施例3】
【0066】
図12図14は、実施例3の対物レンズ1の光路図、縦収差図及び横収差図を示す。実施例3は、波長248nm±0.05nm、焦点距離:3mm、NA:0.85、作動距離:6.27mm、視野:φ0.24の対物レンズ1である。レトロ比Rは7÷3=2.09である。本実施例の対物レンズ1はすべて石英又は蛍石からなる接合面を持たない単レンズにより構成され、接合レンズを含まない。図12に示すように、本実施例の対物レンズ1は拡大側(図の左側)から順に並ぶ、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正の第2レンズ群Gr2との組み合わせである。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる第1aレンズL1aと、正の単レンズからなる第1bレンズL1bとからなる。第2レンズ群Gr2は、負の単レンズからなる第2a1レンズL2a1と正の単レンズからなる第2a2レンズL2a2とからなる負の第2aレンズ群Gr2aと、全体として正の第2bレンズ群Gr2bとからなる。また、第1レンズ群Gr1の焦点距離(f(Gr1))=-263mmであり、|f(Gr1)÷f(total)|=87.66となるため、本発明の条件(|f(Gr1)÷f(total)|>10)は満たされる。第1レンズ群Gr1のアフォーカル比mは、f(L1a)=-10.46、f(L1b)=22.46なので、m=f(L1b)÷f(L1a)=-2.15となる。
【0067】
本実施例のレンズデータは表3に示す通りである。
【表3】
【実施例4】
【0068】
図15図17は、実施例4の対物レンズ1の光路図、縦収差図及び横収差図を示す。実施例4は、波長266nm、焦点距離:3mm、NA:0.9、作動距離:5.455mm、視野:φ0.28mmの対物レンズ1である。レトロ比Rは5.455÷3=1.82である。本実施例の対物レンズ1はすべて石英からなる接合面を持たない単レンズにより構成され、接合レンズを含まない。図15に示すように、本実施例の対物レンズ1は拡大側(図の左側)から順に並ぶ、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正の第2レンズ群Gr2との組み合わせである。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる第1aレンズL1aと、正の単レンズからなる第1bレンズL1bとからなる。第2レンズ群Gr2は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる負の第2aレンズ群Gr2aと、全体として正の第2bレンズ群Gr2bとからなる。また、第1レンズ群Gr1の焦点距離(f(Gr1))=30mmであり、|f(Gr1)÷f(total)|=10となるため、本発明の条件(|f(Gr1)÷f(total)|>10)は満たされる。第1レンズ群Gr1のアフォーカル比mは、f(L1a)=-22.56、f(L1b)=33.48なので、m=f(L1b)÷f(L1a)=-1.48となる。
【0069】
本実施例のレンズデータは表4に示す通りである。
【表4】
【実施例5】
【0070】
図18図20は、実施例5の対物レンズ1の光路図、縦収差図及び横収差図を示す。実施例5は、波長193.4nm±0.001nm、焦点距離(f(total)):3mm、NA:0.85、作動距離:9.96mm、視野:φ0.18mmの対物レンズ1である。レトロ比Rは9.87÷3=3.32である。本実施例の対物レンズ1はすべて石英又は蛍石からなる接合面を持たない単レンズより構成され、接合レンズを含まない。図18に示すように、本実施例の対物レンズ1は拡大側(図の左側)から順に並ぶ、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正の第2レンズ群Gr2との組み合わせである。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に並ぶ、負の単レンズからなる第1aレンズL1aと、負の単レンズからなる第1bレンズL1bとからなる。第2レンズ群Gr2は、2枚の負の単レンズからなる第2a1レンズL2a1及び第2a2レンズL2a2からなり、全体として負の第2aレンズ群Gr2aと、全体として正の第2bレンズ群Gr2bとからなる。また、第1レンズ群Gr1の焦点距離(f(Gr1))=1000mmであり、|f(Gr1)÷f(total)|=333となるため、本発明の条件(|f(Gr1)÷f(total)|>10)は満たされる。第1レンズ群Gr1のアフォーカル比mは、f(L1a)=-22.58、f(L1b)=46.16なので、m=f(L1b)÷f(L1a)=-2.04となる。
【0071】
本実施例のレンズデータは表5に示す通りである。
【表5】
【0072】
表6及び表7に各実施例のパラメータをまとめる。ただし、f(**)は、**で示されるレンズ群あるいはレンズの焦点距離を示す。また、f(total)は全系の焦点距離である。
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【0076】
例えば、上記実施例では、第1レンズ群Gr1が、拡大側から順に並ぶ、第1aレンズL1aと第1bレンズL1bとにより構成されている。他の実施例では、第1レンズ群Gr1が、拡大側から順に並ぶ、負のパワーを持つ第1aレンズ群Gr1aと、正のパワーを持つ第1bレンズ群Gr1bとにより構成されてもよい。この場合、対物レンズ1が、|f(Gr1)÷f(total)|>10を満たしていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により半導体やFPDをはじめとする各種検査装置に好適な、高い開口数であり、作動距離が長く、焦点距離が短く、なおかつ構成枚数の少ない対物レンズ1を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 :対物レンズ
Gr1 :第1レンズ群
Gr1a :第1aレンズ群
Gr1b :第1bレンズ群
Gr2 :第2レンズ群
Gr2a :第2aレンズ群
Gr2b :第2bレンズ群
L :レンズ
L1a :第1aレンズ
L1b :第1bレンズ
L2a1 :第2a1レンズ
L2a2 :第2a2レンズ
f(Gr1):第1レンズ群の焦点距離
f(total):全系の焦点距離
f(L1a):第1aレンズの焦点距離
f(L1b):第1bレンズの焦点距離
【要約】
【課題】半導体やFPDをはじめとする各種検査装置に最適な、高開口数と長作動距離と短焦点距離とをすべて満足する対物レンズ1を提供する。
【解決手段】対物レンズ1は、拡大側から順に、略アフォーカルである第1レンズ群Gr1と、正のパワーを持つ第2レンズ群Gr2とが並んで構成される。第1レンズ群Gr1は、拡大側から順に、負のパワーを持つ第1aレンズ群Gr1aと、正のパワーを持つ第1bレンズ群Gr1bとが並んで構成される。第2レンズ群Gr2は、拡大側から順に、負のパワーを持つ第2aレンズ群Gr2aと、正のパワーを持つ第2bレンズ群Gr2bとが並んで構成される。第1レンズ群Gr1の焦点距離をf(Gr1)とし、対物レンズ1の全系の焦点距離をf(total)としたときに、|f(Gr1)÷f(total)|>10が満たされる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20