(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/14 20060101AFI20230310BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C08L33/14
C08L71/00 Z
(21)【出願番号】P 2021530610
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025453
(87)【国際公開番号】W WO2021006088
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2019128595
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】清水 政一
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/110107(WO,A1)
【文献】特開2005-054174(JP,A)
【文献】特開2008-266521(JP,A)
【文献】特開2014-208795(JP,A)
【文献】国際公開第2004/096875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を20質量%以上含む重合性単量体と、前記重合性単量体100質量部に対して、式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(a10)0.1~5質量部とを含む原料成分の重合体である(メタ)アクリル重合体(A)、および
前記(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、式(2)で表される基を有し、かつ主鎖にポリエーテル骨格を有する重合体(B)を
40~250質量部含有する硬化性組成物。
式(1):-SiR
1
3
[式(1)中、R
1は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R
1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基である。]
式(2):-W-R
B-SiR
2
3
[式(2)中、R
2は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R
2のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;R
Bは、炭素数1~4のアルカンジイル基であり;Wは、-O-CO-NH-または-N(R
3)-CO-N(R
4)-で表される2価の基であり;R
3およびR
4は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R
3およびR
4は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(メタ)アクリル重合体(A)における前記重合性単量体が、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を20~99質量%、および前記式(1)で表される基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)を0.01~10質量%含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル重合体(A)の数平均分子量(Mn)が10,000~50,000であり、かつガラス転移温度(Tg)が-20℃以下である請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中または被着体中に存在する水分により硬化する組成物として、アルコキシシリル基等の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を含有する硬化性組成物が従来から知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-194204号公報
【文献】特開2014-101499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体からなる硬化性組成物から得られる硬化物は、破断伸びや破断強度などの機械的物性に優れているが、耐候性に問題があることがわかった。
【0005】
耐候性の問題を改善するためには、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル重合体とを混合した硬化性組成物を用いる手法が有効である。しかし、この手法は耐候性の問題を改善できる一方で、破断伸びや破断強度などの物性値低下が免れず、また、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル重合体との相溶性が悪く、経過時間とともに相分離するため貯蔵安定性が悪い。
【0006】
本発明の課題は、破断伸びや破断強度などの機械的物性と耐候性とのバランスが良い硬化物を形成することができ、貯蔵安定性に優れる硬化性組成物、および前記硬化性組成物から得られる硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は例えば以下の[1]~[5]に関する。
[1]アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を20質量%以上含む重合性単量体と、前記重合性単量体100質量部に対して、式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(a10)0.1~5質量部とを含む原料成分の重合体である(メタ)アクリル重合体(A)、および式(2)で表される基を有し、かつ主鎖にポリエーテル骨格を有する重合体(B)を含有する硬化性組成物。
式(1):-SiR1
3
[式(1)中、R1は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基である。]
式(2):-W-RB-SiR2
3
[式(2)中、R2は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R2のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;RBは、炭素数1~4のアルカンジイル基であり;Wは、-O-CO-NH-または-N(R3)-CO-N(R4)-で表される2価の基であり;R3およびR4は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよい。]
[2]前記(メタ)アクリル重合体(A)における前記重合性単量体が、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を20~99質量%、および前記式(1)で表される基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)を0.01~10質量%含む前記[1]に記載の硬化性組成物。
[3]前記(メタ)アクリル重合体(A)の数平均分子量(Mn)が10,000~50,000であり、かつガラス転移温度(Tg)が-20℃以下である前記[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[4]前記(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、前記重合体(B)を40~250質量部含有する前記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性組成物から得られる硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、破断伸びや破断強度などの機械的物性と耐候性とのバランスが良い硬化物を形成することができ、貯蔵安定性に優れる硬化性組成物、および前記硬化性組成物から得られる硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の硬化性組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、以下にそれぞれ説明する、(メタ)アクリル重合体(A)と、主鎖にポリエーテル骨格を有する重合体(B)とを含有する。
【0010】
本明細書において(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの総称で用い、アクリルでもメタクリルでもよく、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートの総称で用い、アクリレートでもメタクリレートでもよい。
【0011】
[(メタ)アクリル重合体(A)]
(メタ)アクリル重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう)は、アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を20質量%以上含む重合性単量体と、前記重合性単量体100質量部に対して、後述する式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(a10)0.1~5質量部とを含む原料成分の重合体である。
【0012】
<原料成分>
重合体(A)の原料成分は、重合性二重結合を有する単量体である前記重合性単量体と、後述する式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(a10)とを含む。前記原料成分は、通常、重合開始剤をさらに含む。
【0013】
≪(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)≫
前記重合性単量体は、アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)(以下「モノマー(a1)」ともいう)を含む。すなわち重合体(A)は、モノマー(a1)由来の構造単位を有する。
前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
モノマー(a1)は、通常、CH2=C(Ra)-COO-Rbで表される化合物である。ここでRaは水素原子またはメチル基であり、Rbは炭素数8~12のアルキル基である。
【0014】
モノマー(a1)としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
モノマー(a1)は1種または2種以上用いることができる。
前記重合性単量体中のモノマー(a1)の割合は、20質量%以上であり、好ましくは20~99質量%、より好ましくは22~90質量%、さらに好ましくは22~78質量%である。重合体(A)は、全構造単位中、モノマー(a1)由来の構造単位を同様の範囲で有することができる。アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)を前記範囲で用いると、重合体(B)との相溶性に優れ、また粘度が高すぎずハンドリング性に優れる(メタ)アクリル重合体を得ることができる。
【0016】
≪(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)≫
前記重合性単量体は、湿気硬化性の観点から、式(1)で表される基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)(以下「モノマー(a2)」ともいう)をさらに含むことが好ましい。すなわち重合体(A)は、モノマー(a2)由来の構造単位をさらに有することが好ましい。
式(1):-SiR1
3
式(1)中、R1は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R1のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基である。
【0017】
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0018】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられ、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基である。前記アルコキシ基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0019】
式(1)で表される基としては、例えば、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が挙げられる。
モノマー(a2)としては、式(a2-1)で表される化合物が好ましい。
【0020】
【化1】
式(a2-1)中、R
aは水素原子またはメチル基であり、R
1は式(1)中のR
1と同義であり、R
11は、アルカンジイル基、-R
12-OCONH-R
12-で表される2価の基、または-R
12-N(R
c)-CONH-R
12-で表される2価の基である。ここでR
12はそれぞれ独立にアルカンジイル基であり、R
cは、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基である。
【0021】
前記アルカンジイル基は、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5のアルカンジイル基であり、例えば、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基が挙げられる。
【0022】
Rcにおける炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基等の、炭素数1~18、好ましくは炭素数1~3のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素数3~18、好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基等の、炭素数2~18、好ましくは炭素数2~5のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の、炭素数6~18、好ましくは炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0023】
Rcにおけるハロゲン化炭化水素基は、前述した炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子によって置換された基である。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
Rcとしては水素原子または炭化水素基が好ましく、炭化水素基がより好ましい。
式(a2-1)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリロリキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロリキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロリキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロリキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロリキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロリキシメチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0025】
式(a2-1)で表される化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの水酸基に、または2-アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレートのアミノ基に、OCN-R12-SiR1
3で表される化合物(R12およびR1は、それぞれ式(a2-1)中で説明した同一記号と同義である)のイソシアネート基が付加してなる化合物も挙げることができる。OCN-R12-SiR1
3で表される化合物の具体例としては、後述するOCN-RB-SiR2
3で表される化合物として例示した化合物が挙げられる。
【0026】
モノマー(a2)は1種または2種以上用いることができる。
前記重合性単量体中のモノマー(a2)の割合は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%である。重合体(A)は、全構造単位中、モノマー(a2)由来の構造単位を同様の範囲で有することができる。モノマー(a2)を前記範囲で用いると、重合体(A)中に式(1)で表される基を導入することができ、したがって得られる重合体(A)は適度な架橋性を有し、架橋体を形成する用途に好適である。
【0027】
≪その他のモノマー(a3)≫
前記重合性単量体は、本発明の目的を損なわない範囲で、モノマー(a1)および/またはモノマー(a2)と共重合可能なその他のモノマー(a3)をさらに含むことができる。すなわち重合体(A)は、その他のモノマー(a3)由来の構造単位をさらに有することができる。
【0028】
その他のモノマー(a3)としては、例えば、
モノマー(a1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;
メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸;(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレートなどのカルボキシ基含有モノマー;
無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;
2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等の窒素系複素環含有モノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン、インデン等のスチレン誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;
n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;が挙げられる。
【0029】
アルキル基の炭素数が8~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)(モノマー(a1))以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1~7または13~30、好ましくは2~7または13~25、より好ましくは3~7または13~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0030】
その他のモノマー(a3)の中でも、モノマー(a1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、モノマー(a1)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0031】
その他のモノマー(a3)は1種または2種以上用いることができる。
前記重合性単量体中のその他のモノマー(a3)の割合は、好ましくは1~75質量%であり、より好ましくは20~70質量%である。重合体(A)は、全構造単位中、その他のモノマー(a3)由来の構造単位を同様の範囲で有することができる。
【0032】
≪メルカプト基含有化合物(a10)≫
重合体(A)の原料成分は、前述した式(1)で表される基を有するメルカプト基含有化合物(a10)を含む。メルカプト基含有化合物(a10)は、前述した式(1)で表される基と、メルカプト基とを含有する化合物であって、重合性二重結合を有さない。メルカプト基含有化合物(a10)は、ラジカル重合において連鎖移動性の高い官能基(-SH)を有することから連鎖移動剤として作用し、メルカプト基含有化合物(a10)の存在下で重合性単量体の重合を行った場合に、メルカプト基含有化合物(a10)由来の構造単位、特に式(1)で表される基を分子鎖末端に導入することができる。分子鎖末端に式(1)で表される基を有する重合体(A)が使用された硬化性組成物は、硬化速度と機械的物性に優れる。
【0033】
なお、(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)を用いる場合は、(メタ)アクリロイル基含有化合物(a2)における式(1)で表される基と、メルカプト基含有化合物(a10)における式(1)で表される基とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
メルカプト基含有化合物(a10)としては、式(a10-1)で表される化合物が好ましい。
式(a10-1):HS-R13-SiR1
3
式(a10-1)中、R1は式(1)中のR1と同義であり、R13は通常は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のアルカンジイル基であり、例えば、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基が挙げられる。
【0035】
メルカプト基含有化合物(a10)としては、例えば、メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、メルカプトメチルジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、4-メルカプトブチルメチルジメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0036】
メルカプト基含有化合物(a10)は1種または2種以上用いることができる。
重合体(A)の前記原料成分において、メルカプト基含有化合物(a10)は、前記重合性単量体100質量部に対して、0.1~5質量部用いられ、好ましくは0.5~2質量部用いられる。このような態様であると、重合体(A)の数平均分子量を適切な範囲に調整することができる。
【0037】
≪重合開始剤≫
重合体(A)の原料成分は、通常、重合開始剤を含む。
重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられ、アゾ化合物系重合開始剤が好ましい。なお、金属触媒を用いないことが好ましい。このような重合開始剤を用いて製造された重合体(A)は、適度な流動性を有し、シーリング材などに適用した場合の施工性に優れるとともに、重合体(A)中に触媒に由来する金属成分が含まれないため、架橋反応の阻害や着色などを改善することができる。
【0038】
アゾ化合物系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0039】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0040】
重合開始剤は1種または2種以上用いることができる。
重合開始剤は、複数回にわたって逐次添加して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、前記重合性単量体100質量部に対して、通常は0.001~2質量部、好ましくは0.002~1質量部である。重合開始剤を前記範囲内で使用することにより、重合体(A)の数平均分子量を適切な範囲内に調整することができる。
【0041】
<重合体(A)の物性>
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、通常は10,000~50,000であり、好ましくは20,000~40,000である。前記Mnは、一実施態様において、20,000以上であり、好ましくは21,000以上、より好ましくは22,000以上である。数平均分子量がこのような条件を満たすと、重合体(A)が適度な粘度を有しハンドリング性に優れ、また重合体(B)との相溶性、得られる硬化物の機械的特性に優れる点から好ましい。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
【0042】
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、通常は-20℃以下であり、好ましくは-80~-25℃、より好ましくは-75~-30℃である。このような態様であると、可とう性付与の観点から好ましい。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により決定する。
【0043】
GPCおよびDSCの測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
重合体(A)の、液温25℃条件下、E型粘度計を用いて測定される回転数1rpmでの粘度は、通常は400Pa・s以下、好ましくは300Pa・s以下である。前記粘度の下限値は特に限定されないが、一実施態様では5Pa・sである。
【0044】
重合体(A)は、式(1)で表される基を1分子中に数平均で0.1~10個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。式(1)で表される基の個数は、例えば、1H-NMRに基づく解析により算出することができる。式(1)で表される基は、例えば、メルカプト基含有化合物(a10)由来、モノマー(a2)由来である。
【0045】
<重合体(A)の製造>
重合体(A)を製造する方法としては、上述した重合性単量体を重合し得る方法をいずれも採用することができるが、塊状重合または溶液重合により製造することが好ましい。例えば、反応容器内に重合性単量体およびメルカプト基含有化合物(a10)を仕込み、重合開始剤を添加し、反応温度50~90℃程度で2~20時間反応させる。前記反応においては、必要に応じて重合溶媒が仕込まれていてもよい。例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合を行う。また、重合反応中に、重合性単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0046】
重合溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
重合溶媒は1種または2種以上用いることができる。
【0047】
<重合体(A)の含有量>
本発明の組成物は1種または2種以上の重合体(A)を含有することができる。
本発明の組成物は、重合体(A)および重合体(B)を合計で、10質量%以上含有することが好ましく、15~80質量%含有することがより好ましく、20~60質量%含有することがさらに好ましい。
【0048】
[重合体(B)]
重合体(B)は、式(2)で表される基を有する。
式(2):-W-RB-SiR2
3
式(2)中、R2は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または水酸基であり、R2のうち少なくとも一つは前記アルコキシ基または水酸基であり;RBは、炭素数1~4のアルカンジイル基であり;Wは、-O-CO-NH-または-N(R3)-CO-N(R4)-で表される2価の基であり;R3およびR4は、水素原子、炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
R2における炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。前記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0050】
R2における炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられ、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシ基である。前記アルコキシ基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0051】
式(2)中の-SiR2
3で表される基としては、例えば、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が挙げられる。
【0052】
RBにおける炭素数1~4のアルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、イソプロピルメタンジイル基(-CH(CH(CH3)2)-)が挙げられる。
【0053】
R3およびR4における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基等の、炭素数1~18、好ましくは炭素数1~3のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素数3~18、好ましくは炭素数5~8のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基等の、炭素数2~18、好ましくは炭素数2~5のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の、炭素数6~18、好ましくは炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0054】
R3およびR4におけるハロゲン化炭化水素基は、前述した炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子によって置換された基である。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0055】
R3およびR4としては、水素原子または炭化水素基が好ましい。
Wは、好ましくは-O-CO-NH-で表される2価の基である。
重合体(B)は、式(2)で表される基を1分子中に数平均で1~10個有することが好ましく、1~5個有することがより好ましい。
【0056】
重合体(B)は、主鎖にポリエーテル骨格を有する。すなわち、重合体(B)は主鎖骨格としてポリエーテル骨格を有する。ポリエーテル骨格は、好ましくは、ポリオキシアルキレン骨格であり、例えば、ポリオキシエチレン骨格、ポリオキシプロピレン骨格、ポリオキシブチレン骨格、ポリオキシテトラメチレン骨格、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン骨格、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン骨格が挙げられ、ポリオキシプロピレン骨格が好ましい。ポリオキシアルキレン骨格は、1種のみの繰返し単位からなっていてもよいし、2種以上の繰返し単位からなっていてもよい。ここでの繰返し単位は、オキシアルキレン単位である。重合体(B)は、ポリエーテル骨格間に、ウレタン骨格を有していてもよい。
【0057】
重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、通常は2,000~100,000であり、好ましくは5,000~60,000である。数平均分子量がこのような条件を満たすと、重合体(A)との相溶性や硬化性組成物のハンドリング性、機械的特性に優れる点から好ましい。数平均分子量(Mn)は、GPC法により測定される。
【0058】
重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、通常は-20℃以下であり、好ましくは-30~-90℃、より好ましくは-40~-85℃である。このような態様であると、低温時の機械的物性が優れる観点から好ましい。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により決定する。
【0059】
GPCおよびDSCの測定条件の詳細は、後述する実施例欄に記載する。
重合体(B)の、液温25℃条件下、E型粘度計を用いて測定される回転数1rpmでの粘度は、通常は150Pa・s以下、好ましくは100Pa・s以下である。前記粘度の下限値は特に限定されないが、一実施態様では0.5Pa・sである。
【0060】
重合体(A)とともに重合体(B)を用いることにより、塗工性に優れた硬化性組成物が得られ、かつ機械的物性および耐候性に優れた硬化物を得ることができる。
重合体(B)は、一実施態様において、重合体の分子末端に式(2)で表される基を有することが好ましく、ポリエーテル重合体の分子末端に式(2)で表される基を有することがより好ましい。
【0061】
重合体(B)は、例えば、ポリエーテル重合体の末端水酸基と、OCN-RB-SiR2
3で表される化合物(R2およびRBは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義である)のイソシアネート基とを反応させることで得ることができる。
【0062】
重合体(B)は、また、ポリエーテル重合体から末端イソシアネート基を有するポリエーテル重合体を得て、当該重合体の末端イソシアネート基と、R4NH-RB-SiR2
3で表される化合物(R2、R4およびRBは、それぞれ式(2)中で説明した同一記号と同義である)のアミノ基とを反応させることで得ることもできる。末端イソシアネート基を有するポリエーテル重合体は、例えば、末端水酸基を有するポリエーテル重合体と、ジイソシアネート化合物とのウレタン反応により得ることができる。このようなポリエーテル重合体は、ポリエーテル骨格間にウレタン骨格を有する。
【0063】
重合体(B)は、また、ポリエーテル重合体から末端アミノ基を有するポリエーテル重合体を得て、当該重合体の末端アミノ基と、OCN-RB-SiR2
3で表される化合物(R2およびRBは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義である)のイソシアネート基とを反応させることで得ることもできる。
【0064】
OCN-RB-SiR2
3で表される化合物としては、例えば、1-イソシアネートメチルジメチルメトキシシラン、1-イソシアネートメチルジメチルエトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジエトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0065】
R4NH-RB-SiR2
3で表される化合物としては、例えば、N-エチルアミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルジメチルエトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0066】
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネート;
フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネート;が挙げられる。
【0067】
本発明の組成物は1種または2種以上の重合体(B)を含有することができる。
本発明の組成物中における重合体(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは40~250質量部、より好ましくは50~200質量部、さらに好ましくは60~150質量部である。このような態様であると、相溶性および粘度の観点から好ましい。
【0068】
[他の成分]
本発明の組成物は、重合体(A)および重合体(B)の他に、必要に応じて、可塑剤、充填剤、シリカ、顔料、老化防止剤、脱水剤、アミノシランカップリング剤、硬化触媒、粘性付与剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、密着性付与剤、などの他の成分を1種または2種以上含有することができる。
【0069】
<可塑剤>
本発明の組成物は、可塑剤をさらに含有することができる。可塑剤を用いることにより、硬化性組成物から形成された硬化物の柔軟性および伸び性を向上させることができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、4,5-エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン;ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の炭化水素;ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリプロピレングリコールやその誘導体、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールの水酸基をアルキルエーテルで封止したようなポリエーテル類、ポリ-α-メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等のオリゴマー類、重合体(A)以外の(メタ)アクリル重合体などの高分子可塑剤が挙げられる。
【0070】
可塑剤は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中における可塑剤の含有量は、硬化性組成物の塗工性、硬化物の耐候性の観点から、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは10~200質量部、より好ましくは50~150質量部である。
【0071】
<充填剤>
本発明の組成物は、充填剤をさらに含有することができる。
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、半膠質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、およびこれらの炭酸カルシウムの表面を脂肪酸や樹脂酸系有機物で表面処理したもの等の炭酸カルシウム;カーボンブラック;炭酸マグネシウム;ケイソウ土;焼成クレー;クレー;タルク;酸化チタン;ベントナイト;酸化第二鉄;酸化亜鉛;活性亜鉛華;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、カーボンバルーン等の無機質の中空体;フェノール樹脂バルーン、エポキシ樹脂バルーン、尿素樹脂バルーン、ポリ塩化ビニリデン樹脂バルーン、ポリ塩化ビニリデン-(メタ)アクリル樹脂バルーン、ポリスチレンバルーン、ポリメタクリレートバルーン、ポリビニルアルコールバルーン、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂バルーン、ポリアクリロニトリルバルーン等の有機樹脂中空体;樹脂ビーズ、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤;ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましい。
【0072】
充填剤は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中における充填剤の含有量は、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは10~800質量部、より好ましくは50~400質量部である。本発明では、充填剤の分散性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
【0073】
<シリカ>
本発明の組成物は、シリカをさらに含有することができる。シリカを用いることによって、硬化性組成物の塗工性が向上し、優れた耐候性および伸び性を有する硬化物を得ることができる。
シリカとしては、例えば、フュームドシリカが挙げられる。また、シリカとしては、疎水性シリカおよび親水性シリカが挙げられ、疎水性シリカが好ましい。
シリカは1種または2種以上用いることができる。
【0074】
一実施態様において、本発明の組成物中におけるシリカの含有量は、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、より好ましくは3~50質量部である。
【0075】
<顔料>
本発明の組成物は、顔料をさらに含有することができる。
顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、アルミン酸コバルト等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。顔料の使用は、調色および耐候性の向上という観点から好ましい。
顔料は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中における顔料の含有量は、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは1~400質量部、より好ましくは3~200質量部である。
【0076】
<老化防止剤>
本発明の組成物は、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤などの老化防止剤をさらに含有することができる。
【0077】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾールが挙げられる。
【0078】
光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0080】
老化防止剤は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中における老化防止剤の含有量は、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0081】
<脱水剤>
本発明の組成物は、貯蔵安定性をさらに改良するために、硬化性や柔軟性に悪影響を及ぼさない範囲で少量の脱水剤を含有することができる。
脱水剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;イソシアン酸p-トルエンスルホニル等のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0082】
一実施態様において、本発明の組成物中における脱水剤の含有量は、硬化性組成物の貯蔵安定性および硬化性の観点から、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0083】
<アミノシランカップリング剤>
本発明の組成物は、アミノシランカップリング剤をさらに含有することができる。
アミノシランカップリング剤は、一分子中に、アルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを有する化合物を意味する。アミノシランカップリング剤は、湿気硬化を促進させる助触媒として機能し、さらに得られる硬化物の接着力を向上させることができる。
【0084】
アミノシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-アミノメチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-アミノメチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-
[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0085】
アミノシランカップリング剤は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の接着性、貯蔵安定性およびハンドリング性の観点から、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0086】
<硬化触媒>
本発明の組成物は、硬化速度向上のために硬化触媒を含有することができる。
硬化触媒としては、例えば、ジオクタン酸スズ、ネオデカン酸スズ、ステアリン酸スズ、ジブチルスズジオレイルマレート、ジブチルスズブチルマレート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズネオデカネート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビス(トリエトキシシリケート)、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート、ジオクルスズジステアレート、ジオクルスズオキサイド、ジオクルスズジラウレート、ジオクルスズジアセテート、ジオクルスズジネオデカノエート、ジオクルスズビス(エチルマレート)、ジオクルスズビス(オクチルマレート)、ジオクルスズビスイソオクチルチオグリコレート等のスズ化合物;ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)等のビスマス化合物;アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩等のチタン化合物が挙げられる。
【0087】
硬化触媒は1種または2種以上用いることができる。
一実施態様において、本発明の組成物中における硬化触媒の含有量は、硬化性組成物の接着性、貯蔵安定性およびハンドリング性の観点から、重合体(A)および重合体(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。
【0088】
[硬化性組成物の用途、硬化物]
本発明の組成物は、重合体(A)と重合体(B)との相溶性が良いことから貯蔵安定性に優れ、かつチキソトロピー性が高いため塗工性にも優れる。また、前記組成物から得られる硬化物は、破断伸びや破断強度などの機械的物性に優れ、かつ耐候性にも優れる。
【0089】
本発明の組成物は、良好な架橋性を有することから、架橋により硬化させて用いる用途、または、硬化体の弾性を利用した用途等に使用することができる。前記組成物において、大気中または硬化性組成物が適用される被着体中に存在する水分により、例えば重合体(A)が有する式(1)で表される基、および重合体(B)が有する式(2)で表される基が加水分解してシラノール基を形成した後、シラノール基同士が脱水縮合してシロキサン結合を形成することによって硬化し、硬化物が形成されると考えられる。
【0090】
本発明の組成物は、例えば、建築・建材用途、自動車用途などにおける、シーリング材、接着剤、または塗料等として好適に用いられる。その他、本発明の組成物の用途としては、無機材料(例:セメントやモルタル、金属、ガラス)表面を被覆するコーティング剤、シート形成用組成物(シートの例:通気性シート、保護シート、遮水シート、制振シート、転写シート、調光シート、帯電防止シート、導電シート、養生シート、遮音シート、遮光シート、化粧シート、マーキングシート、難燃シート)、フィルム形成用組成物(フィルムの例:マーキングフィルム、保護フィルム、インキ定着フィルム、ラミネートフィルム)、発泡体形成用組成物(発泡体の例:硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、難燃発泡体)、制振材、遮音材、防音材、吸音材、人工皮革、人工皮膚、合成皮革、各種工業用部品、日用品、トイレタリー用成型品等の形成用組成物、塗料用ビヒクル、プライマー用樹脂、各種バインダー(例:インキ用バインダー、磁気記録媒体用バインダー、鋳造用バインダー、焼成体用バインダー、グラスファイバーサイジング材用バインダー)が挙げられる。
【0091】
本発明の組成物は、良好な架橋性を有することから、シーリング材形成用組成物として特に好適に用いられる。また、シーリング材形成用組成物には、作業効率を上げるために、良好なポットライフを有し、粘度が低く、硬化後には、外気温変化により伸縮する目地に追随する柔軟性および伸び物性が求められるところ、本発明の組成物はこのような特性を有することができる。また、本発明の組成物からなるシーリング材は、機械強度にも優れる。
【0092】
本発明の硬化物は、本発明の組成物から得られる。硬化条件は特に限定されないが、本発明の組成物を支持体上に塗布し、例えば10~80℃、20~90%RHの環境下に、好ましくは20~70℃、30~80%RHの環境下に所定の時間おくことで、硬化を良好に進めることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0094】
[重合体の評価方法]
重合体の各物性の評価方法を以下に記載する。
<数平均分子量>
各重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分析を行い、下記条件でポリスチレン換算により算出した。
・装置:GPC-8220(東ソー製)
・カラム:G7000HXL/7.8mmID×1本 +
GMHXL/7.8mmID×2本 +
G2500HXL/7.8mmID×1本
・媒体:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・濃度:1.5mg/mL
・注入量:300μL
・カラム温度:40℃
<ガラス転移温度(Tg)>
各重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した。
・装置:DSC7000X(日立ハイテクサイエンス製)
・温度条件:-80℃から30℃まで10℃/minで昇温
・試料容器:アルミ製オープンセル
・試料量:5mg
<粘度>
液温25℃条件下、E型粘度計VISCONIC EHD型(東京計器製)を用いて、各重合体の回転数1rpmでの粘度を測定した。
【0095】
[製造例A1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ラウリルアクリレート49.6部、n-ブチルアクリレート49.6部、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502、信越化学工業製)0.8部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分攪拌して窒素置換を行った後、フラスコの内容物を90℃まで昇温した。次いで、フラスコ内の内容物を90℃に維持しながら、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802、信越化学工業製)0.7部を添加し30分攪拌後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を添加した。1回目のAIBN添加から30分後、さらにAIBN0.05部を添加した。2回目のAIBN添加から30分後、さらにAIBN0.05部を添加し、90℃で2時間維持した。その後、反応物中の揮発成分を減圧留去し、(メタ)アクリル重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)のMnは25,000、粘度は155Pa・s、Tgは-54℃であった。
【0096】
[製造例A2~A7、cA1~cA3]
使用した原料成分を、表1に示した通りに変更したこと以外は製造例A1と同様に行い、(メタ)アクリル重合体(A-2)~(A-7)、(cA-1)~(cA-3)を得た。
【0097】
【0098】
[製造例B1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレンオキシド2部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分攪拌して窒素置換を行った。120℃に昇温し、フラスコ内の内容物を120℃に維持しながら、ポリプロピレングリコール(サンニックスPP-4000、三洋化成工業製)20部、複合金属シアン化錯体触媒0.006部を投入し反応を開始した。反応開始5分後から、ポリプロピレングリコール98部を、フラスコ内の内容物を120℃に維持しながら4時間かけて等速滴下し、その後、120℃で2時間反応させた。反応物中の揮発成分を減圧留去することで、両末端に水酸基を有するポリプロピレングリコール(B’-1)を得た。ポリプロピレングリコール(B’-1)のMnは27,000であった。
【0099】
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ポリプロピレングリコール(B’-1)100部を投入し、フラスコ内容物を110℃に保持しながら減圧脱水した。次いで、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内温を50℃に保持し、ウレタン化触媒として、ナーセム亜鉛(日本化学産業製)を0.005部添加し撹拌した後、ポリプロピレングリコール(B’-1)の水酸基の総数に対してイソシアネート基の総数の比が0.97となるように、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシランを投入した。次いで、フラスコ内温を80℃で8時間保持して、FT-IRにてイソシアネート基のピークが消失していることを確認した。その後、25℃になるまで冷却し、揮発成分を減圧留去することで、末端にメチルジメトキシシリル基を有する重合体(B-1)を得た。重合体(B-1)のMnは28,000、粘度は31Pa・s、Tgは-68℃であった。
【0100】
[製造例B2]
ポリプロピレングリコール(B’-1)の水酸基と反応させるイソシアネート化合物として、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランを使用したこと以外は製造例B1と同様にして、末端にメチルジメトキシシリル基を有する重合体(B-2)を得た。重合体(B-2)のMnは27,000、粘度は30Pa・s、Tgは-67℃であった。
【0101】
[製造例B3]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ポリプロピレングリコール(B’-1)100部を投入し、フラスコ内容物を110℃に保持しながら減圧脱水した。次いで、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1135、BASFジャパン製)0.5部、テトライソプロピルチタネート(オルガチックスTA-8、マツモトファインケミカル製)0.05部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内温を80℃に保持した。次いで、イソホロンジイソシアネート2.1部を添加し、6時間反応を行った。その後、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン2.1部を添加し、フラスコ内温を80℃で8時間保持して、FT-IRにてイソシアネート基のピークが消失していることを確認した。その後、25℃になるまで冷却し、揮発成分を減圧留去することで、末端にトリメトキシシリル基を有する重合体(B-3)を得た。重合体(B-3)のMnは31,000、粘度は49Pa・s、Tgは-63℃であった。
【0102】
[実施例1]
(メタ)アクリル重合体(A-1)50部と、重合体(B-1)50部と、可塑剤(アルフォンUP-1000、東亞合成製)100部とを、自転・公転ミキサー(ARE-310、シンキー製)で2,000rpmの回転速度で1分間混合した。次いで、軽質炭酸カルシウム(白艶華CCR、白石工業製;充填剤)87.2部と、重質炭酸カルシウム(ホワイトン305、白石工業製;充填剤)87.2部と、シリカ(HDK H18、旭化成ワッカーシリコーン製)8部と、白色顔料(タイペークPFC105、石原産業製)8部と、紫外線吸収剤(Tinuvin 1130、BASF製)0.7部と、光安定化剤(Tinuvin 292、BASF製)0.7部と、脱水剤(Silquest A-171、モメンティブ製)8部と、助触媒(Silquest A-1122、モメンティブ製)4部と、触媒(ネオスタンU-220H、日東化成製)0.3部とをARE-310にて、2,000rpmの回転速度で2分間混合することにより硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物について、各種評価を行った。
【0103】
[実施例2~12、比較例1~5]
配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得て、各種評価を行った。
【0104】
[硬化性組成物の評価方法]
硬化性組成物の各物性の評価方法を以下に記載する。
<相溶性>
下記表2に記載の量比で得られた主剤を容器に入れ、ARE-310で2,000rpmの回転速度で1分間混合した後、-20℃の環境下に2,000時間静置し以下の基準により目視で評価した。
AA:静置後、2,000時間を超えても2相分離が確認されなかった。
BB:静置後、1,000時間を超えて2,000時間以内に2相分離が確認された。
CC:静置後、1,000時間以内に2相分離が確認された。
【0105】
<粘度>
実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、E型粘度計VISCONIC EHD型(東京計器製)を使用し、JIS K1557に準拠して25℃、1rpmまたは10rpmでの粘度を測定した。また、1rpmの粘度を10rpmの粘度で除して、TI Valueを得た。
【0106】
<分散性>
実施例および比較例で得られた硬化性組成物について、溝深さ0~25μmの粒度ゲージ(第一測範製作所製)にスクレバーで塗工し、以下の基準により目視で評価した。
AA:充填剤の密集が5μm未満で確認される。
BB:充填剤の密集が5~10μmで確認される。
CC:充填剤の密集が10μmを超えて確認される。
【0107】
<タックフリータイム>
実施例および比較例で得られた硬化性組成物を、硬化物層の厚さが2mmとなるようにテフロン(登録商標)シート上にドクターブレードにて塗工し、23℃/50%RHの条件下で養生を開始してから、組成物(硬化物)のSUS製ヘラへの付着が確認されなくなるまでの時間を測定した。
【0108】
<引張物性>
実施例および比較例で得られた硬化性組成物を、硬化物層の厚さが2mmとなるようにテフロン(登録商標)シート上にドクターブレードにて塗工し、23℃/50%RHの条件下で7日間養生した。その後、得られた硬化物をJIS3号ダンベル状に打ち抜きサンプルを作製した。得られたサンプルについてJIS K6251:2010(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に準じて、引張り速度200mm/分、23℃の条件下で引張り試験を行い、50%モジュラス、破断点応力、および伸び率を測定した。
【0109】
<プローブタック>
引張物性と同様の方法にて得られたサンプルについて、プローブタックテスターTE6001(テスター産業製)を用いて、以下の条件にてプローブタック値を測定した。
・測定環境:23℃/50%RH環境下
・接触面積:0.2cm2
・測定圧力:100g/cm2
・接触時間:1.0秒
・剥離速度:1.0cm/s
【0110】
<耐候性>
引張物性と同様の方法で得られたサンプルを用いて、スーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験機製)により以下の条件による試験を2,000時間行った。耐候性試験後の評価は、JIS A1439に記載の亀裂の量(Q)と亀裂の幅(W)を測定した。
・試験環境:63±3℃、50±5%RH
・照射強度180W/cm2
・2時間中18分間散水の繰り返し。
【0111】