(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】接合部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230310BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20230310BHJP
B23K 11/16 20060101ALI20230310BHJP
B23K 11/24 20060101ALI20230310BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20230310BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20230310BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20230310BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20230310BHJP
C23F 13/06 20060101ALI20230310BHJP
C21D 1/18 20060101ALN20230310BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/00 301T
C22C38/00 302Z
B23K11/11 540
B23K11/16 311
B23K11/24 310
C21D9/00 A
C22C21/00 M
C22C38/60
C23F13/02 A
C23F13/06
C21D1/18 C
C21D9/46 H
(21)【出願番号】P 2021538212
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005292
(87)【国際公開番号】W WO2021162101
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020022754
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田畑 進一郎
(72)【発明者】
【氏名】楠見 和久
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506523号公報
【文献】特開2013-221202号公報
【文献】特開2001-192799号公報
【文献】国際公開第2011/025015号
【文献】特開2012-176434号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C22C 21/00-21/02
C21D 9/00- 9/50
B23K 11/00-11/36
C23C 2/00- 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鋼部材と、第2の鋼部材と、前記第1の鋼部材と前記第2の鋼部材とを接合しているスポット溶接部とを含む接合部品であって、
前記第1の鋼部材は、質量%で、
C:0.25~0.65%、
Si:0.10~1.00%、
Mn:0.30~1.50%、
P:0.050%以下、
S:0.0100%以下、
N:0.010%以下、
Ti:0.010~0.100%、
B:0.0005~0.0100%、
Mo:0~1.00%、
Cu:0~1.00%、
Ni:0~1.00%、
Cr:0~1.00%、
Nb:0~0.10%、
V:0~1.00%、
Ca:0~0.010%、
Al:0~1.00%、
Sn:0~1.00%、
W:0~1.00%、
Sb:0~1.00%、
Zr:0~1.00%、及び
REM:0~0.30%
を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成からなる鋼板基材と、
前記鋼板基材の表面に形成され、Al及びFeを含有する厚さ25μm以上の被覆と、
を含み、
前記スポット溶接部
の溶接点の中心位置を含む前記第1の鋼部材及び前記第2の鋼部材の厚さ方向の断面において、前記スポット溶接部の周囲の、前記第1の鋼部材と前記第2の鋼部材の間の隙間に、Al及びFeを含有する充填物が存在し、
前記充填物は、前記断面において、断面積が3.0×10
4μm
2以上、かつ、前記スポット溶接部の周囲に形成されたコロナボンドの端部から100μmの範囲の前記隙間における充填率が80%以上であり、
前記充填物は、質量%で、Al:15%以上35%未満、Fe:55%以上75%以下、Si:4%以上9%以下、を含む第1の領域と、質量%で、Al:35%以上55%以下、Fe:40%以上55%未満、Si:1%以上4%未満、を含む第2の領域と、からなる
ことを特徴とする接合部品。
【請求項2】
前記第1の鋼部材の前記鋼板基材の化学組成が、質量%で、
Mo:0.10~1.00%、Cu:0.10~1.00%、Ni:0.10~1.00%の1種以上を含有し、
前記第1の領域が、合計含有量で0.25%以上の、Mo、CuおよびNiの1種以上をさらに含み、
前記第2の領域が、合計含有量で0.15%以上の、Mo、CuおよびNiの1種以上をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の接合部品。
【請求項3】
前記第2の領域のフェレ径の平均が30μm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の接合部品。
【請求項4】
質量%で、C:0.25~0.65%、Si:0.10~1.00%、Mn:0.30~1.50%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.010%以下、Ti:0.010~0.100%、B:0.0005~0.0100%、Mo:0~1.00%、Cu:0~1.00%、Ni:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~0.10%、V:0~1.00%、Ca:0~0.010%、Al:0~1.00%、Sn:0~1.00%、W:0~1.00%、Sb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、及びREM:0~0.30%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成からなる鋼板と、前記鋼板の表面に形成されたAlを含有する付着量が50g/m
2以上の被覆と、からなる被覆鋼板を、1.0~1000℃/秒の昇温速度で、Ac3点~(Ac3点+300)℃まで加熱し、Ms点以下まで上部臨界冷却速度以上で冷却して鋼部材を得る熱処理工程と、
前記熱処理工程後の前記鋼部材と、相手材となる第2の鋼部材とをスポット溶接によって接合するスポット溶接工程を含み、
前記スポット溶接工程では、
少なくとも通電電極を押し当てる位置において、前記鋼部材と、前記第2の鋼部材とを50μm~500μmの間隔を空けて重なるように配置し、
前記鋼部材及び前記第2の鋼部材に対し、前記通電電極を、打角15度以下かつ、加圧力が300kgf以上となるように押し当て、50Hzまたは60Hzの交流電源にて、通電量を漸増させるアップスロープを5サイクル以上与え、その後に、溶接ナゲットを形成して接合する
ことを特徴とする、接合部品の製造方法。
【請求項5】
前記鋼板の化学組成が、質量%で、Mo:0.10~1.00%、Cu:0.10~1.00%、Ni:0.10~1.00%の1種以上を含有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の接合部品の製造方法。
【請求項6】
前記スポット溶接工程では、800~500℃の平均冷却速度を500℃/秒以上とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の接合部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部品及びその製造方法に関する。
本願は、2020年02月13日に、日本に出願された特願2020-022754号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野においては、昨今の環境規制および衝突安全基準の厳格化を背景に、燃費と衝突安全性との両方を向上させるため、高い引張強度を有する鋼板(高強度鋼板)の適用が拡大している。しかしながら、高強度化に伴い鋼板のプレス成形性が低下するので、複雑な形状の製品を製造することが困難になってきている。
【0003】
具体的には、高強度化に伴って鋼板の延性が低下し、複雑な形状に加工した場合に高加工部位で破断するという問題が生じている。また、鋼板の高強度化に伴って、加工後の残留応力によってスプリングバックおよび壁反りが発生し、寸法精度が劣化するという問題も生じている。したがって、高強度、特に780MPa以上の引張強度を有する鋼板を、プレス成形によって複雑な形状を有する製品に加工することは容易ではない。プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度の鋼板を加工しやすいが、その適用先は長手方向に一様な断面を有する部品に限定される。
【0004】
そこで近年、例えば、特許文献1~3に開示されるように、高強度鋼板のような成形が困難な材料をプレス成形する技術として、ホットスタンプ技術が採用されている。ホットスタンプ技術とは、成形に供する材料を加熱してから成形する熱間成形技術である。
【0005】
この技術では、材料を加熱してから成形する。そのため、成形時には、鋼材が軟質であり、良好な成形性を有する。これにより、高強度な鋼板であっても、複雑な形状に精度よく成形することができる。また、ホットスタンプ技術では、プレス金型によって成形と同時に焼入れを行うので、成形後の鋼部材は十分な強度を有する。
【0006】
例えば、特許文献1によれば、ホットスタンプ技術により、成形後に1400MPa以上の引張強度を有する鋼部材を得られることが開示されている。
【0007】
近年、世界各国がより高いCO2削減目標を設定し、各自動車会社は衝突安全に配慮した上で燃費削減を進めている。ガソリン車は勿論、急速に進む電動車においても、乗客だけでなくバッテリーを衝突から守り、またその重量増加分を相殺するため、その材料として、さらなる高強度材が求められている。例えば自動車等に用いられる鋼部材においては、現在ホットスタンプにより成形された鋼部材として一般的に使用されている強度1.5GPa(1500MPa)を超える、より高強度なホットスタンプ部材が必要とされている。
【0008】
しかしながら、金属材料の多くは、高強度化に伴い諸特性が劣化し、特に水素脆化の感受性が高まる。鋼部材においては、引張強度が1.2GPa以上になると水素脆化感受性が高まることが知られており、自動車分野に先んじて高強度化が進められてきたボルト鋼にて水素脆化割れの事例が存在する。そのため、1.5GPaを超える引張強度を有するホットスタンプ部材においては、水素脆化感受性がさらに高まると懸念されている。
【0009】
自動車に用いられる鋼部材は、自動車の使用時、鋼材の腐食により発生する水素によって水素脆化割れするリスクがある。上述したように特に1.5GPaを超える強度域では鋼材の水素脆化感受性が極めて高まるので、軽微な腐食による微量な水素によっても水素脆化し得ると考えられる。しかしながら、鋼材の腐食を完全に防ぐ自動車設計は難しい。そのため、さらなる車体軽量化のために1.5GPaを超えるホットスタンプ部材を車体へ適用するためには、水素脆化割れのリスクを十分に低減する必要がある。
【0010】
自動車の使用時、特に水素脆化が懸念される箇所はスポット溶接部である。スポット溶接部が特に水素脆化しやすい理由は主に3つある。具体的には、(i)スポット溶接部では腐食が進行しやすいこと、(ii)寸法精度が悪い部品を溶接した場合等、スポット溶接部に応力が発生すること、(iii)スポット溶接部のような、溶けて固まった部分の組織は粗大で脆化しやすいこと、によって、スポット溶接部は水素脆化しやすい。すなわち、スポット溶接部は、水素脆化の要因である水素の発生、応力の付加、材料の限界のすべてが母材定常部より厳しい条件下にある。
上記(i)について補足すると、鋼板(または部材)を重ね合わせて溶接した部位は、化成処理および塗装が行き届きにくく、また寸法不良により隙間が存在すると局所的に腐食が進行するので、水素が多量に発生する(隙間腐食反応)。
【0011】
引張強度が1.5GPaを超える高強度鋼材に関して、例えば特許文献2には、靱性に優れ、かつ引張強度が1.8GPa以上の、熱間プレス成形されたプレス成形品が開示されている。特許文献3には、2.0GPa以上という極めて高い引張強度を有し、さらに、良好な靱性と延性とを有する鋼材が開示されている。特許文献4には、1.8GPa以上という高い引張強度を有し、さらに、良好な靱性を有する鋼材が開示されている。特許文献5には、2.0GPa以上という極めて高い引張強度を有し、さらに、良好な靱性を有する鋼材が開示されている。
しかしながら特許文献2~5には耐水素脆性について、特に腐食環境において脆化が懸念されるスポット溶接部の水素脆化に対する対策が十分でない。そのため、特許文献2~5の鋼材は、引張強度が1.5GPaを超えるものの、自動車部材としての使用において、より安全な要求に対しては十分応えられない場合がある。
【0012】
スポット溶接部を有する高強度鋼材に関しては、例えば特許文献6~8には、アルミめっき鋼板の電極汚染や溶接チリ発生を抑制するスポット溶接方法が開示されている。
しかしながら、いずれの特許文献においても、高強度鋼材のスポット溶接部の水素脆化に対する対策は十分でなく、引張強度が1.5GPaを超える高強度鋼材の自動車部材への適用において、より高い安全性の要求に対しては十分応えられない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】日本国特開2002-102980号公報
【文献】日本国特開2012-180594号公報
【文献】日本国特開2012-1802号公報
【文献】国際公開第2015/182596号
【文献】国際公開第2015/182591号
【文献】日本国特開2006-212649号公報
【文献】日本国特開2011-167742号公報
【文献】日本国特開2004-2932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、腐食環境における耐水素脆性に優れた、スポット溶接部を有する接合部品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記の接合部品およびその製造方法を要旨とする。
(1)本発明の一態様に係る接合部品は、第1の鋼部材と、第2の鋼部材と、前記第1の鋼部材と前記第2の鋼部材とを接合しているスポット溶接部とを含む接合部品であって、前記第1の鋼部材は、質量%で、C:0.25~0.65%、Si:0.10~1.00%、Mn:0.30~1.50%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.010%以下、Ti:0.010~0.100%、B:0.0005~0.0100%、Mo:0~1.00%、Cu:0~1.00%、Ni:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~0.10%、V:0~1.00%、Ca:0~0.010%、Al:0~1.00%、Sn:0~1.00%、W:0~1.00%、Sb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、及びREM:0~0.30%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成からなる鋼板基材と、前記鋼板基材の表面に形成され、Al及びFeを含有する厚さ25μm以上の被覆と、を含み、前記スポット溶接部の溶接点の中心位置を含む前記第1の鋼部材及び前記第2の鋼部材の厚さ方向の断面において、前記スポット溶接部の周囲の、前記第1の鋼部材と前記第2の鋼部材の間の隙間に、Al及びFeを含有する充填物が存在し、前記充填物は、前記断面において、断面積が6.3×104μm2以上、かつ、前記スポット溶接部のナゲットの周囲に形成されたコロナボンドの端部から100μmの範囲の前記隙間における充填率が80%以上であり、前記充填物は、質量%で、Al:15%以上35%未満、Fe:55%以上75%以下、Si:4%以上9%以下、を含む第1の領域と、質量%で、Al:35%以上55%以下、Fe:40%以上55%未満、Si:1%以上4%未満、を含む第2の領域と、からなる。
(2)上記(1)に記載の接合部品では、前記第1の鋼部材の前記鋼板基材の化学組成が、質量%で、Mo:0.10~1.00%、Cu:0.10~1.00%、Ni:0.10~1.00%の1種以上を含有し、前記第1の領域が、合計含有量で0.25%以上の、Mo、CuおよびNiの1種以上をさらに含み、前記第2の領域が、合計含有量で0.15%以上の、Mo、CuおよびNiの1種以上をさらに含んでもよい。
(3)上記(2)に記載の接合部品では、前記第2の領域のフェレ径の平均が30μm以下としてもよい。
(4)本発明の別の態様に係る接合部品の製造方法は、(1)に記載の接合部品の製造方法であって、質量%で、C:0.25~0.65%、Si:0.10~1.00%、Mn:0.30~1.50%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.010%以下、Ti:0.010~0.100%、B:0.0005~0.0100%、Mo:0~1.00%、Cu:0~1.00%、Ni:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~0.10%、V:0~1.00%、Ca:0~0.010%、Al:0~1.00%、Sn:0~1.00%、W:0~1.00%、Sb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、及びREM:0~0.30%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成からなる鋼板と、前記鋼板の表面に形成されたAlを含有する付着量が50g/m2以上の被覆と、からなる被覆鋼板を1.0~500℃/秒の昇温速度で、Ac3点~(Ac3点+300)℃まで加熱し、Ms点以下まで上部臨界冷却速度以上で冷却して鋼部材を得る熱処理工程と、前記熱処理工程後の前記鋼部材と、相手材となる第2の鋼部材とをスポット溶接によって接合するスポット溶接工程を含み、前記スポット溶接工程では、少なくとも通電電極を押し当てる位置において、前記鋼部材と、前記第2の鋼部材とを50μm~500μmの間隔を空けて重なるように配置し、前記鋼部材及び前記第2の鋼部材に対し、前記通電電極を、打角15度以下かつ、加圧力が300kgf以上となるように押し当て、50Hzまたは60Hzの交流電源にて、通電量を漸増させるアップスロープを10サイクル以上与え、その後に、溶接ナゲットを形成して接合する。
(5)上記(4)の接合部品の製造方法は、前記鋼板の化学組成が、質量%で、Mo:0.10~1.00%、Cu:0.10~1.00%、Ni:0.10~1.00%の1種以上を含有してもよい。
(6)上記(5)に記載の接合部品の製造方法は、前記スポット溶接工程では、800~500℃の平均冷却速度を500℃/秒以上としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、腐食環境における耐水素脆性に優れるスポット溶接部を有する接合部品、およびその製造方法を提供することができる。
本発明の上記態様に係る接合部品は、高強度かつ耐水素脆性に優れるので、自動車部品に適用した場合、燃費及び衝突安全性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る接合部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、高い引張強度を有し、かつ腐食環境における耐水素脆性に優れたスポット溶接部を有する接合部品を得るべく、これら特性に及ぼす、溶接部の組織や、素材となる鋼材の影響について調査した。その結果、以下の知見を得た。
【0019】
一般に製造されているホットスタンプ部材に使用される素材の多くは、耐食性に優れたアルミめっきが鋼板の表面に施された被覆鋼板である。この被覆鋼板にホットスタンプを行うと、加熱時に表面のめっき層中のAlと鋼板のFeとの合金化反応が進みAl及びFeを含む被覆(以下Al-Fe系被覆という場合がある)を備える鋼部材(被覆鋼部材)が得られる。一般に使用されているホットスタンプ後に引張強度が1.5GPa程度を示す鋼板の多くは、0.20質量%程度のCを含有し、このCによってホットスタンプ後の強度を確保している。この鋼部材にスポット溶接を行って別の部材と接合することで、接合部品が得られる。
【0020】
(a)本発明者らは、さらなる車体軽量化のため、C含有量を高めることでホットスタンプ後に1.5GPa(1500MPa)を超える高強度部材を得るための詳細検討を行った。その結果、C含有量を0.25質量%以上とすることで、ホットスタンプのような焼入れを含む熱処理後に引張強度で1.5GPa超の超高強度が得られることが分かった。一方で、引張強度1.5GPa超への超高強度化に伴い、水素脆化感受性は増大し、自動車使用時の腐食環境において発生する水素によって水素脆化割れが発生するリスクが懸念された。特にこの被覆鋼部材を用いて接合部品とする場合、スポット溶接部は一度溶解するので、アルミめっきによる耐食性が保証できず、水素脆化のリスクが懸念された。
【0021】
(b)本発明者らは、1.5GPaを超える高強度な、Al-Fe系被覆を有する被覆鋼部材からなる接合部品において、脆化起点となるスポット溶接部の腐食を防止することにより水素脆化を抑制する方法について検討した。その結果、溶接部の周辺をAlおよびFeを含む合金で覆うことにより腐食を十分に防止できることを見出した。
【0022】
(c)本発明者らはさらに、1.5GPaを超える引張強度を有する被覆鋼部材の耐水素脆性を調査し、耐水素脆性に優れた成分設計や組織設計を見出した。
【0023】
本発明者らは、上記の知見に基づき、スポット溶接部の腐食を防止し、侵入水素量を低減すること、及び鋼材の耐水素脆性を向上させることにより、腐食環境における耐水素脆性を大きく改善し、引張強度が1.5GPaを超える高強度な被覆鋼部材からなる接合部品を開発した。このような接合部品は、高強度でありながら水素脆化リスクが低いので、より安全に車体へ適用できる。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る接合部品(本実施形態に係る接合部品)およびその製造方法の各要件について詳しく説明する。
【0025】
(A)接合部品
本実施形態に係る接合部品1は、
図1に示すように、第1の鋼部材11と、第2の鋼部材12と、前記第1の鋼部材11と前記第2の鋼部材12とを接合しているスポット溶接部21とを含む。この第1の鋼部材11は、所定の化学組成からなる鋼板基材111と、鋼板基材111の表面に形成され、Al及びFeを含有する被覆(Al-Fe系被覆)112とを有する被覆鋼部材である。
また、本実施形態に係る接合部品1は、スポット溶接部21を含む第1の鋼部材11及び第2の鋼部材12の厚さ方向の断面において、前記スポット溶接部21の周囲の、第1の鋼部材11と前記第2の鋼部材12との間に形成された隙間gに、Al及びFeを含有する充填物31が存在する。この充填物31は、質量%で、Al:15%以上35%未満、Fe:55%以上75%以下、Si:4%以上9%以下、を含む第1の領域と、質量%で、Al:35%以上55%以下、Fe:40%以上55%未満、Si:1%以上4%未満、を含む第2の領域とからなる。
また、前記充填物31は、前記断面において、断面積が3.0×10
4μm
2以上、かつ、前記スポット溶接部21の周囲に形成されたコロナボンドの端部から100μmの範囲の前記隙間gにおける充填率が80%以上である。
以下、それぞれについて説明する。
【0026】
(A1)第1の鋼部材
上述の通り、本実施形態に係る接合部品1が備える第1の鋼部材11は、鋼板基材111と、鋼板基材111の表面に形成され、Al及びFeを含有する被覆(Al-Fe系被覆)112とを有する。
後述するように、第1の鋼部材11は、鋼板基材とAl系被覆とを有する被覆鋼板に対して、ホットスタンプ等の焼入れを伴う熱処理を行うことで得られる。
【0027】
(A1-1)鋼板基材
本実施形態に係る接合部品1が備える第1の鋼部材11の鋼板基材111は所定の化学組成からなる。具体的には、質量%で、C:0.25~0.65%、Si:0.10~1.00%、Mn:0.30~1.50%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.010%以下、Ti:0.010~0.100%、B:0.0005~0.0100%、Mo:0~1.00%、Cu:0~1.00%、Ni:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~0.10%、V:0~1.00%、Ca:0~0.010%、Al:0~1.00%、Sn:0~1.00%、W:0~1.00%、Sb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、及びREM:0~0.30%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成からなる。
各元素の限定理由は下記の通りである。ここで、鋼板基材111の化学組成とは、第1の鋼部材11のうち、表面のAl-Fe系被覆112を除いた部分(例えば鋼板基材の表面から厚みの1/4の位置)の化学組成をいうものとする。以下、含有量に関する%は、断りがない限り質量%である。
【0028】
C:0.25~0.65%
Cは、鋼の焼入れ性を高め、ホットスタンプなどの焼入れ後に得られる鋼部材の強度を向上させる元素である。C含有量が0.25%未満では、焼入れ後の鋼部材において十分な強度(1.5GPa超)を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.25%以上とする。C含有量は0.28%以上が好ましい。
一方、C含有量が0.65%を超えると、焼入れ後の鋼部材の強度が高くなり過ぎて、耐水素脆性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は0.65%以下とする。C含有量は、0.60%以下が好ましい。
【0029】
Si:0.10~1.00%
Siは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために有効な元素である。この効果を得るためには、Si含有量を0.10%以上とする必要がある。Si含有量は0.35%以上が好ましい。
一方、鋼中のSi含有量が1.00%を超えると、熱処理(焼入れ)に際して、オーステナイト変態のために必要となる加熱温度が著しく高くなる。これにより、熱処理に要するコストが上昇したり、加熱時にフェライトが残留して鋼部材の強度が低下したりする場合がある。したがって、Si含有量は1.00%以下とする。Si含有量は0.60%以下が好ましい。
【0030】
Mn:0.30~1.50%
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。Mnはさらに、Ac3点を下げ、焼入れ処理温度の低温化を促進する元素である。しかしながら、Mn含有量が0.30%未満ではその効果が十分ではない。そのため、Mn含有量を0.30%以上とする。Mn含有量は0.40%以上であるのが好ましい。
一方、Mn含有量が1.50%を超えると焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が劣化する。そのためMn含有量は1.50%以下とする。Mn含有量は、1.30%以下であるのが好ましく、1.10%以下であるのがより好ましい。
【0031】
P:0.050%以下
Pは、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性を低下させる元素である。特に、P含有量が0.050%を超えると、耐水素脆性の低下が著しくなる。したがって、P含有量は0.050%以下に制限する。P含有量は、0.005%以下に制限することが好ましい。
P含有量は、少ない方が好ましいので0%でもよいが、コストの観点から0.001%以上としてもよい。
【0032】
S:0.0100%以下
Sは、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性を低下させる元素である。特に、S含有量が0.0100%を超えると、耐水素脆性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.0100%以下に制限する。S含有量は、0.0050%以下に制限することが好ましい。S含有量は、少ない方が好ましいので0%でもよいが、コストの観点から0.0001%以上としてもよい。
【0033】
N:0.010%以下
Nは、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性を低下させる元素である。特に、N含有量が0.010%を超えると、鋼中に粗大な窒化物が形成され、耐水素脆性が著しく低下する。したがって、N含有量は0.010%以下とする。N含有量の下限は特に限定する必要はなく0%でもよいが、N含有量を0.0002%未満とすることは製鋼コストの増大を招き、経済的に好ましくない。そのため、N含有量は0.0002%以上としてもよく、0.0008%以上としてもよい。
【0034】
Ti:0.010~0.100%
Tiは、鋼板をAc3点以上の温度に加熱して熱処理を施す際に、再結晶を抑制するとともに微細な炭化物を形成して粒成長を抑制することで、オーステナイト粒を細粒にする作用を有する元素である。このため、Tiを含有させることによって、鋼部材の耐水素脆性が向上する効果が得られる。また、Tiは、鋼中のNと優先的に結合することによってBNの析出によるBの消費を抑制し、後述するBによる焼入れ性向上の効果を促進する元素である。Ti含有量が0.010%未満では、上記の効果を十分に得られない。したがって、Ti含有量は0.010%以上とする。Ti含有量は0.015%以上が好ましい。
一方、Ti含有量が0.100%を超えると、TiCの析出量が増加してCが消費されるので、焼入れ後の鋼部材の強度が低下する。したがって、Ti含有量は0.100%以下とする。Ti含有量は0.080%以下が好ましい。
【0035】
B:0.0005~0.0100%
Bは、微量でも鋼の焼入れ性を劇的に高める作用を有する重要な元素である。また、Bは粒界に偏析することで、粒界を強化して耐水素脆性を向上させる元素であり、鋼板の加熱時にオーステナイトの粒成長を抑制する元素である。B含有量が0.0005%未満では、上記の効果を十分に得られない場合がある。したがって、B含有量は0.0005%以上とする。B含有量は0.0010%以上が好ましい。
一方、B含有量が0.0100%を超えると、粗大な化合物が多く析出し、鋼部材の耐水素脆性が低下する。したがってB含有量は0.0100%以下とする。B含有量は0.0080%以下が好ましい。
【0036】
本実施形態の接合部品が含む第1の鋼部材11が備える鋼板基材111の化学組成において、上述してきた元素以外、すなわち残部はFeおよび不純物であってもよいが、鋼部材及びこの鋼部材を含む接合部品の各種特性(焼入れ性、強度、耐水素脆性、脱酸性、耐食性等)を向上させるために、さらに、下記に示す範囲で、Mo、Cu、Ni、Cr、Nb、V、Ca、Al、Sn、W、Sb、ZrおよびREMからなる群から選択される1種以上の元素を含有させてもよい。これらの元素は任意元素であり、必ずしも含有する必要がないので、下限は0%である。
【0037】
Mo:0~1.00%
Moは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。特に上記Bと複合含有させることで焼入れ性向上の相乗効果が得られる。また、Moは、スポット溶接部の周辺に形成される充填物(Al-Fe系充填物)に含有させることで、耐食性をさらに向上させることが可能である。そのため、含有させることが好ましい。Mo含有量が0.10%未満ではこれらの効果が十分ではないので、Mo含有量を0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上とすることがより好ましい。
一方、Moは、鉄炭化物を安定化させる作用を有する。Mo含有量が1.00%を超えると鋼板の加熱時に粗大な鉄炭化物が溶け残り、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が低下する場合がある。また、コスト増加が著しい。したがって、含有させる場合のMo含有量は1.00%以下とする。Mo含有量は0.80%以下が好ましい。
【0038】
Cu:0~1.00%
Cuは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために有効な元素である。また、Cuは、後述するスポット溶接部の周辺に形成されるAl-Fe系充填物に含有させることで、耐食性をさらに向上させる元素である。そのため、含有させることが好ましい。Cu含有量が0.10%未満ではこれらの効果が十分ではないので、Cuを含有させる場合、Cu含有量を0.10%以上とすることが好ましい。Cu含有量は0.20%以上であるのがより好ましい。
一方、Cu含有量が1.00%を超えると上記の効果は飽和する上、コストが増加する。したがって、含有させる場合のCu含有量は1.00%以下とする。Cu含有量は0.80%以下が好ましい。
【0039】
Ni:0~1.00%
Niは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために有効な元素である。また、Niは、スポット溶接部の周辺に形成されるAl-Fe系充填物に含有させることで、耐食性をさらに向上させる元素である。そのため、含有させることが好ましい。Ni含有量が0.10%未満ではこれらの効果が十分ではないので、Niを含有させる場合、Ni含有量を0.10%以上とすることが好ましい。Ni含有量は0.20%以上であるのがより好ましい。
一方、Ni含有量が1.00%を超えると、鋼部材の限界水素量が低下する。また、コスト増加が著しい。したがって、Niを含有させる場合のNi含有量は1.00%以下とする。Ni含有量は0.25%以下が好ましく、0.20%以下がより好ましい。
【0040】
Cr:0~1.00%
Crは、鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために有効な元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、Cr含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.08%以上であることがさらに好ましい。
一方、Cr含有量が1.00%を超えると上記の効果は飽和する上、コストが増加する。また、Crは鉄炭化物を安定化させる作用を有するので、Cr含有量が1.00%を超えると鋼板の加熱時に粗大な鉄炭化物が溶け残り、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が低下する場合がある。したがって、含有させる場合のCr含有量は1.00%以下とする。Cr含有量は0.80%以下であるのが好ましい。
【0041】
Nb:0~0.10%
Nbは、微細な炭化物を形成し、その細粒化効果により鋼の耐水素脆性を向上させる作用を有する元素である。Nb含有量が0.02%未満では、上記の効果を十分に得られない場合がある。したがって、上記の効果を得るためには、Nb含有量は0.02%以上とすることが好ましい。Nb含有量は0.03%以上がより好ましい。
一方、Nb含有量が0.10%を超えると、炭化物が粗大化し、鋼部材の耐水素脆性が低下する。したがって含有させる場合のNb含有量は0.10%以下とする。Nb含有量は0.08%以下が好ましい。
【0042】
V:0~1.00%
Vは、微細な炭化物を形成し、その細粒化効果や水素トラップ効果により鋼部材の耐水素脆性を向上させる元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、V含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましい。
一方、V含有量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和して経済性が低下する。したがって、含有させる場合のV含有量は1.00%以下とする。
【0043】
Ca:0~0.010%
Caは、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性を高める効果を有する元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得る場合、Ca含有量を0.001%以上とすることが好ましく、0.002%以上とすることがより好ましい。
一方、Ca含有量が0.010%を超えるとその効果は飽和する上、コストが増加する。したがって、Caを含有させる場合には、Ca含有量は0.010%以下とする。Ca含有量は0.005%以下であることが好ましく、0.004%以下であるのがより好ましい。
【0044】
Al:0~1.00%
Alは、鋼の脱酸剤として一般的に用いられる元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、Al含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方、Al含有量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和して経済性が低下する。したがって、含有させる場合のAl含有量は1.00%以下とする。
【0045】
Sn:0~1.00%
Snは腐食環境において耐食性を向上させる元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、Sn含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方、Sn含有量が1.00%を超えると粒界強度が低下し、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が低下する。したがって、含有させる場合のSn含有量は1.00%以下とする。
【0046】
W:0~1.00%
Wは鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の鋼部材の強度を安定して確保するために有効な元素である。そのため、含有させてもよい。また、Wは、腐食環境において耐食性を向上させる元素である。上記の効果を得るためには、W含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方、W含有量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和して経済性が低下する。したがって、含有させる場合のW含有量は1.00%以下とする。
【0047】
Sb:0~1.00%
Sbは腐食環境において耐食性を向上させる元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、Sb含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方、Sb含有量が1.00%を超えると粒界強度が低下し、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が低下する。したがって、含有させる場合のSb含有量は1.00%以下とする。
【0048】
Zr:0~1.00%
Zrは腐食環境において耐食性を向上させる元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、Zr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
一方、Zr含有量が1.00%を超えると粒界強度が低下し、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性が低下する。したがって、含有させる場合のZr含有量は1.00%以下とする。
【0049】
REM:0~0.30%
REMは、Caと同様に鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後の鋼部材の耐水素脆性を向上させる効果を有する元素である。そのため、含有させてもよい。上記の効果を得るためには、REM含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.02%以上とすることがより好ましい。
一方、REM含有量が0.30%を超えるとその効果は飽和する上、コストが増加する。したがって、含有させる場合のREM含有量は0.30%以下とする。REM含有量は0.20%以下が好ましい。
【0050】
ここで、REMは、Sc、Y及びLa、Nd等のランタノイドの合計17元素を指し、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、例えばFe-Si-REM合金を使用して溶鋼に添加され、この合金には、例えば、La、Nd、Ce、Prが含まれる。
【0051】
本実施形態の接合部品が含む第1の鋼部材11が備える鋼板基材111の化学組成において、上述してきた元素以外、すなわち残部はFeおよび不純物である。
ここで、「不純物」とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係る接合部品の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0052】
鋼板基材111の化学組成は、以下の方法で求めることができる。
鋼板基材111の板厚方向に表面から板厚の1/4の位置から、ICPなどの一般的な方法で元素分析を行うことによって得られた含有量を平均することで得られる。
【0053】
鋼板基材111の内部組織
本実施形態に係る接合部品1が含む第1の鋼部材11が備える鋼板基材111の内部組織(金属組織)は高強度なマルテンサイトが主体となる組織である。好ましくは、面積分率で70%以上がマルテンサイトである。より好ましくは80%以上がマルテンサイトである。マルテンサイトが100%でもよい。
【0054】
鋼板基材111の内部組織は、マルテンサイト以外の残部として、残留オーステナイト、ベイナイト、フェライトやパーライトの1種以上が含有されてもよい。マルテンサイトには、フレッシュマルテンサイトだけでなく焼戻しマルテンサイトや自動焼戻しマルテンサイトも含む。自動焼戻しマルテンサイトとは、焼戻しのための熱処理を行うことなく、焼入れ時の冷却中に生成した焼戻しマルテンサイトのことであり、マルテンサイト変態に伴う自己発熱によって、発生したマルテンサイトがその場で焼き戻されて生成するものである。
【0055】
鋼板基材111の内部組織は、以下の方法で判断することができる。
マルテンサイト(焼戻しマルテンサイト、自動焼戻しマルテンサイトを含む)の面積分率は、透過型電子顕微鏡(TEM)及びTEMに付属する電子線回折装置によって測定する。鋼部材の板幅1/4部(幅方向端部から幅方向に板幅の1/4の位置)かつ鋼板基材111の板厚1/4部(表面から板厚方向に板厚の1/4の位置)から測定試料を切り出し、TEM観察用の薄膜試料とする。薄膜試料は、圧延方向と直交する方向の断面から切り出したものとする。また、TEM観察の範囲は面積で400μm2の範囲とする。薄膜試料の電子線の回折パターンにより、体心立方格子であるマルテンサイトやベイナイトと、面心立方格子の残留オーステナイトとを区別可能である。そして、マルテンサイトおよびベイナイト中の鉄炭化物(Fe3C)を回折パターンにより見出し、その析出形態を観察することで、マルテンサイト、ベイナイトの組織分率をそれぞれ測定する。具体的には、析出形態が3方向析出ならマルテンサイトと判断し、1方向の限定析出ならベイナイトと判断する。TEMによって測定されるマルテンサイト及びベイナイトのそれぞれの組織分率は面積%として測定されるが、本実施形態の鋼部材は、金属組織が等方性を有するので、面積分率の値をそのまま体積分率に置き換えることができる。マルテンサイトとベイナイトとの判別のため炭化物を観察するが、本実施形態では、炭化物は組織の体積分率に含めないものとする。
残部組織としてフェライトまたはパーライトが存在している場合は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で容易に確認できる。具体的には、鋼部材の板幅1/4部かつ鋼板基材の板厚1/4部から測定試料を切り出し、観察用の試料とする。試料は、圧延方向と直交する方向の断面から切り出したものとする。また、顕微鏡による観察範囲は面積で40000μm2の範囲とする。切り出した試料を機械研磨し、続いて鏡面仕上げする。次いで、ナイタール腐食液によりエッチングを行ってフェライト及びパーライトを現出させ、これを顕微鏡観察することで、フェライトまたはパーライトの存在を確認する。フェライトとセメンタイトとが交互に層状に並んだ組織をパーライトとし、セメンタイトが粒状に析出するベイナイトと判別する。
【0056】
(A1-2)被覆
本実施形態に係る接合部品が備える第1の鋼部材11は、上述した鋼板基材111の表面に、Al及びFeを含有する被覆(Al-Fe系被覆)112を有する。本実施形態において、Al-Fe系被覆はAlおよびFeを主体とした被覆であり、AlとFeとを合計で70質量%以上含むことが好ましい。また、Al-Fe系被覆は被膜、合金化めっき層、金属間化合物層ともいう。Al-Fe系被覆は、Al、Feの他に、更にSi、Mg、Ca、Sr、Ni、Cu、Mo、Mn、Cr、C、Nb、Ti、B、V、Sn、W、Sb、Zr、REM、Znを含有し、残部が不純物であってもよい。
Al-Fe系被覆の厚みは、25μm以上であることが好ましい。Al-Fe系被覆の厚みの上限は特に限定しないが、100μm以下としてもよい。
【0057】
Al-Fe系被覆の化学組成および厚みは、断面の走査型電子顕微鏡観察および電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて求めることができる。10視野観察を行い、その平均値を用いて被覆の化学組成及び厚みとする。
【0058】
(A2)第2の鋼部材
本実施形態に係る接合部品1において、スポット溶接部21を介して第1の鋼部材11と接合されている第2の鋼部材12は、スポット溶接部21の耐水素脆性の観点では、特に限定されない。しかしながら、接合部品1の耐食性等を考慮した場合、上述した第1の鋼部材11と同様の、Al-Fe系被覆を有する被覆鋼部材であることが好ましい。
【0059】
(A3)溶接部
本実施形態に係る接合部品1は、スポット溶接による接合部(スポット溶接部21)を有し、スポット溶接部21によって、第1の鋼部材11と第2の鋼部材12とが接合されている。スポット溶接部21はスポット溶接によって形成されたナゲットからなる。ナゲットの周囲には、コロナボンド(固相接合されたリング状の部分)が形成される場合がある。本実施形態に係る接合部品1のスポット溶接部21のナゲットのサイズは、特に限定しないが、板厚をt(mm)と定義した場合、板面に平行な方向に3×√t(mm)以上であることが好ましい。
【0060】
(A4)充填物
本実施形態に係る接合部品1は、上述したスポット溶接部21の周辺に、Al及びFeを含有する充填物31を有する。すなわち、スポット溶接部21を含む第1の鋼部材11及び第2の鋼部材12の厚さ方向の断面において、前記スポット溶接部21の周囲(例えばナゲットの端部、またはコロナボンドが形成されている場合にはコロナボンドの端部から100μm以下の範囲の位置)の、第1の鋼部材11と前記第2の鋼部材12との間に、Al及びFeを含有する充填物31が存在する。
本実施形態に係る接合部品1は、後述するように第1の鋼部材11と、第2の鋼部材12とを50μm~500μmの間隔を空けて重なるように配置し、前記第1の鋼部材11及び前記第2の鋼部材12に対し、通電電極を、打角15度以下かつ、加圧力が300kgf以上となるように押し当ててスポット溶接を行って接合する。そのため、本実施形態に係る接合部品1では、
図1に示すように、スポット溶接部21では第1の鋼部材11と第2の鋼部材12とが接しているものの、その周囲において、第1の鋼部材11と第2の鋼部材12との間には隙間gが存在する。充填物31が隙間を埋めることで、スポット溶接部21の腐食を抑制することができ、耐水素脆性が向上する。充填物31は、スポット溶接部21の腐食を抑制するため、第1の鋼部材11と第2の鋼部材12との隙間gを充填するように存在する必要がある。充填物31は、断面積が3.0×10
4μm
2以上であってかつ、スポット溶接部の
ナゲットの周囲に形成されたコロナボンドの端部から100μmの範囲の隙間における充填率が80%以上であることが必要である。充填率は90%以上が好ましく、100%でもよい。断面積が小さい、または充填率が小さい場合には、スポット溶接部の腐食を十分に抑制することが出来ない。充填物31は、スポット溶接部21を含む第1の鋼部材11及び第2の鋼部材12の厚さ方向の少なくとも1の断面において上記のように第1の鋼部材11と第2の鋼部材12との隙間gを充填していれば効果が得られるが、全ての断面において、上記のように隙間gを充填していれば、より効果が高くなるので好ましい。
【0061】
前記充填物31は2種類の化学組成を有する領域からなる。
第1の領域は、その化学組成が、質量%で、Al:15%以上35%未満、Fe:55%以上75%以下、Si:4%以上9%以下を含む。必要に応じて、Mo、Cu、Niをさらに含んでもよく、その場合、Mo、Cu、Niの合計含有量を0.25質量%以上とすることが好ましい。
第2の領域は、その化学組成が、質量%で、Al:35%以上55%以下、Fe:40%以上55%未満、Si:1%以上4%未満を含む。必要に応じて、Mo、Cu、Niをさらに含んでもよく、その場合、Mo、Cu、Niの合計含有量を0.15%質量以上とすることが好ましい。
このような充填物は、上述した鋼部材(第1の鋼部材11、第2の鋼部材12)に、後述する溶接を行うことで得られる。
第1の領域及び第2の領域の化学組成の残部として、鋼板基材及び被覆に含まれるその他の化学成分を含有してもよい。
【0062】
また、充填物31において、第2の領域が微細に分散していることが好ましい。この場合、より耐食性が向上する。その理由としては、以下のように考えられる。
第2の領域は第1の領域よりもAl含有量が多く、第1の領域よりも犠牲防食の作用効果が高い。このため充填物が腐食される際には、第2の領域が第1の領域よりも優先的に腐食されていく。第2の領域が微細な網目状の組織として充填物内に分散していることで、優先的に腐食される面積が広くなる。このため第2の領域が充填物内において微細に分散しているほど充填物の防食効果が高まる。
第2の領域は、具体的には、フェレ径(Feret diameter)の平均が30μm以下の微細なサイズで分散していることが好ましい。第2の領域は網目状に分散しているためその形状は多様である。このため第2の領域はフェレ径でその大きさを規定するものとする。第2の領域のサイズの測定方法については説明の便宜上、後述する。
【0063】
充填物31の断面積及び充填率については、以下の方法で求める。
接合部品1においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面とが観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、断面において、充填物の面積を求める。切出し方は例えばJIS Z 3139:2009に準じる。同溶接条件において5試料以上切出し断面積を求め、その平均値を充填物の断面積とする。
また、断面における圧接部(コロナボンド)の終端から隙間部に向かって100μmまでの範囲において、鋼部材を除いた領域に占める充填物の割合を求める。同溶接条件において5試料以上切出し割合を求め、その最小値を充填物の充填率とする。
【0064】
充填物31に含まれるAl、Fe、Si、Mo、Cu、Niの含有量は以下の方法により求める。
接合部品1においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面が観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出す。この試料に対し、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像を取得し、充填物を構成するコントラストの異なる2種類の組織に対し、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて、スポットの元素分析(ビーム径1μm以下)を行うことで充填物に含まれるAl、Fe、Si、Mo、Cu、Niの含有量を求めることができる。測定に際しては、重元素であるFeを比較的多く含むため明るく見える第1の領域とそれ以外の第2の領域との2種類の組織それぞれに10点の分析を行い、その平均値を充填物に含まれるAl、Fe、Si、Mo、Cu、Ni含有量とする。
【0065】
充填物31に含まれる第2の領域のサイズは以下の方法により求める。
接合部品1においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面とが観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出す。この試料に対し、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像を取得する。上述の通り、第2の領域は、コントラストによって判断できる。また、第2の領域のサイズは、水平方向の平行線で第2の領域を挟んだ平行線間の距離(水平フェレ径)と、垂直方向の平行線で第2の領域を挟んだ平行線間の距離(垂直フェレ径)との平均値と定義する。水平方向とは接合部品の長手方向、垂直方向とは長手方向に垂直な板厚方向とする。
本実施形態に係る接合部品では、第2の領域は、第1の領域に囲まれた島状の形態を有していることが多い。測定に際しては、15個の第1の領域に囲まれた島状の第2の領域のサイズを測定し、その平均値を充填物に含まれる第2の領域のサイズとする。
【0066】
(A5)接合部品の特性
本実施形態に係る接合部品1は、充填物31が上述のように制御されることで、スポット溶接部21への腐食因子の侵入が低減され、腐食が防止される。また、本実施形態に係る接合部品1は、引張強度が1.5GPaを超える高強度で、かつ、腐食環境における耐水素脆性に優れる。
【0067】
本実施形態において、腐食環境における耐水素脆性は、接合部品の実使用環境における暴露試験やCCT(複合サイクル試験)による腐食促進試験によって評価される。例えばJASO規格M609、M610の規定に準拠してCCTを行い、スポット溶接部が破断しないサイクル数によって評価される。
【0068】
接合部品1の形状については特に限定しない。すなわち、第1の鋼部材11及び/または第2の鋼部材12が平板であってもよく、成形体であってもよい。熱間成形された被覆鋼部材は、多くの場合は成形体であるが、本実施形態では、成形体である場合、平板である場合をともに含めて「被覆鋼部材」という。また被覆鋼部材は、箇所によって強度が異なるテーラードプロパティ材であってもよい。
【0069】
(B)素材となる被覆鋼板
次に、本実施形態に係る接合部品が含む第1の鋼部材(被覆鋼部材)の素材となる被覆鋼板(以下本実施形態に係る被覆鋼板という場合がある)について説明する。以下に説明する被覆鋼板を第1の鋼部材11の素材として用いて、熱処理を行うことで、第1の鋼部材を得ることができる。この被覆鋼板は、第2の鋼部材12の素材としても用いてもよい。
本実施形態に係る被覆鋼板は、所定の化学組成からなる鋼板と、鋼板の表面に形成され、Alを含有する被覆(Al系被覆)と、を有する。
【0070】
(B1)鋼板の化学組成
本実施形態に係る被覆鋼板を構成する鋼板の化学組成の範囲は、上述した第1の鋼部材11における鋼板基材111の化学組成と同一であり、その限定理由も同様である。ここで鋼板の化学組成とは、被覆鋼板のうち、表面のAl系被覆、およびAl系被覆と鋼板との境界領域を除いた部分の化学組成をいうものとする。例えば、鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/4の位置を代表位置として、この位置で、ICPなどの一般的な方法で元素分析を行うことによって得られる。
【0071】
(B2)被覆
本実施形態に係る被覆鋼板は、鋼板の表面にAlを含有する被覆(以下Al系被覆)を有する。Al系被覆とはAlを主体とした被覆であり、Alを40%以上含むことが好ましい。Al系被覆は被膜、めっき層ともいう。Al系被覆は、Alの他、更にSi、Mg、Ca、Sr、Ti、Zn、Sb、Sn、Ni、Cu、Co、In、Bi、REMを含有し、残部が不純物であってもよい。一般的にSiを10%程度含むことが多い。
Al系被覆の種類は限定されない。例えば溶融めっき、電気めっき、溶射等によって形成された被覆である。
Al系被覆の付着量は、50g/m2以上であることが好ましい。Al系被覆の付着量の上限は特に限定しないが、付着量を150g/m2以下としてもよい。
【0072】
被覆の化学組成及び厚みは、第1の鋼部材の被覆と同様に、断面の走査型電子顕微鏡観察および電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて求めることができる。
【0073】
(B3)鋼板の内部組織
本実施形態に係る被覆鋼板が備える鋼板の内部組織(金属組織)は限定されないが、フェライトやパーライトであることが多い。後述する製造方法の条件内において、ベイナイトやマルテンサイト、残留オーステナイトを含有することもある。上記マルテンサイトには、焼戻しや自動焼戻しマルテンサイトも含む。自動焼戻しマルテンサイトとは、焼戻しのための熱処理を行うことなく、焼入れ時の冷却中に生成した焼戻しマルテンサイトのことであり、マルテンサイト変態に伴う発熱によって、発生したマルテンサイトがその場で焼き戻されて生成するものである。鋼板の内部組織とは、上述した境界部を除いた鋼板の組織のことである。
鋼板の内部組織は、上述した鋼板基材の内部組織と同様の方法で判断することができる。
【0074】
(C)接合部品の製造方法
次に、本実施形態に係る接合部品1の製造方法について説明する。
【0075】
本実施形態に係る接合部品1は、上述したような本実施形態に係る被覆鋼板に後述する熱処理を行って鋼部材とした後、この鋼部材を含む複数の鋼部材をスポット溶接によって接合することで得られる。
以下、各工程について説明する。
【0076】
<熱処理工程>
熱処理は、例えば上述の方法で得られた被覆鋼板を、1.0~1000℃/秒の昇温速度で、Ac3点~(Ac3点+300)℃まで加熱し、Ms点以下まで上部臨界冷却速度以上で冷却する条件で行う。
昇温速度が1.0℃/秒未満であると熱処理の生産性が低下するので好ましくない。一方、昇温速度が1000℃/秒超であると混粒組織となり限界水素量が低下するので好ましくない。
また、熱処理温度がAc3点未満であると、冷却後にフェライトが残存し、強度が不足するので好ましくない。一方、熱処理温度がAc3点+300℃超であると、組織が粗粒化し限界水素量が低下するので好ましくない。
上部臨界冷却速度とは、組織にフェライトやパーライトを析出させず、オーステナイトを過冷してマルテンサイトを生成させる最小の冷却速度のことであり、上部臨界冷却速度未満で冷却するとフェライトやパーライトが生成し、強度が不足する。
加熱時には、加熱温度の±10℃以内の範囲で、1~300秒の保持を行ってもよい。
また、冷却後に、鋼部材の強度を調整するために100~600℃程度の温度範囲での焼戻し処理を行ってもよい。
【0077】
Ac3点、Ms点および上部臨界冷却速度は、次の方法にて測定する。
本実施形態に係る被覆鋼板が備える鋼板と同じ化学組成を有する鋼板から、幅30mm、長さ200mmの短冊試験片を切り出し、この試験片を窒素雰囲気中で1000℃まで10℃/秒の昇温速度で加熱し、その温度に5分間保持したのち、種々の冷却速度で室温まで冷却する。冷却速度の設定は、1℃/秒から100℃/秒まで、10℃/秒の間隔で設定する。そのときの加熱中の試験片の熱膨張変化を測定することにより、Ac3点を測定する。
また、上記の冷却速度で冷却したそれぞれの試験片のうち、フェライト相の析出が起きなかった最小の冷却速度を、上部臨界冷却速度とする。上部臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却中の熱膨張変化を測定し、その際の変態開始温度をMs点とする。
【0078】
ここで、上記一連の熱処理に際して、Ac3点~(Ac3点+300)℃の温度域に加熱後、Ms点まで冷却する間に、つまり上部臨界冷却速度以上で冷却する工程を施すと同時にホットスタンプのような熱間成形を施してもよい。熱間成形としては、曲げ加工、絞り成形、張出し成形、穴広げ成形、およびフランジ成形等が挙げられる。また、成形と同時またはその直後に鋼板を冷却する手段を備えていれば、プレス成形以外の成形法、例えばロール成形に本発明を適用してもよい。上述の熱履歴に従うなら、繰返し熱間成形を施してもよい。
【0079】
前述のとおり、本実施形態では、「接合部品1」の第1の鋼部材11、第2の鋼部材12には、熱間成形されて成形体となったもの、熱処理のみが施されて平板であるものをともに含む。
【0080】
また、第1の鋼部材11として、熱間成形または熱処理を素材となる被覆鋼板の一部に対して行い、強度の異なる領域を持つ被覆鋼部材を得てもよい。
【0081】
上記の一連の熱処理は任意の方法によって実施することができ、例えば、高周波加熱や通電加熱、赤外線加熱、炉加熱によって実施してもよい。冷却も、水冷、金型冷却などによって実施してもよい。
【0082】
<スポット溶接工程>
スポット溶接工程では、少なくとも通電電極を押し当てる位置において、上記熱処理を経た被覆鋼部材(第1の鋼部材)と溶接相手材となる鋼部材(第2の鋼部材)とを、間に50μm~500μmの隙間を設けて配置し、被覆鋼部材と溶接相手材となる鋼部材とに対し、通電電極を打角15度以下で、かつ加圧力が300kgf以上となるように押し当て、50Hzまたは60Hzの交流電源にて、通電量を漸増させるアップスロープを5サイクル以上与えた後に、溶接ナゲットを形成して、被覆鋼部材と溶接相手材とを接合する。スポット溶接方法やその装置、電極は限定されないが、例えばJIS Z 3001-6:2013、JIS C 9305:2011、JIS C 9304:1999に記載されたものを用いればよい。単相交流式であれば50Hzまたは60Hzであり、電極は先端径6mm以上を用いて、溶接時間は10サイクル以上が好ましい。
また、充填物における第2の領域の分布状態を制御する場合、スポット溶接の冷却条件を制御することが好ましい。
以下、各条件について説明する。
【0083】
被覆鋼部材と相手材となる鋼部材との間隔:50μm~500μm
接合部品のスポット溶接において、表層のAl-Fe被覆を溶解させ、溶接部の周辺へ吐き出させることで、充填物を形成する。少なくとも通電電極を押し当てる位置において、被覆鋼部材と溶接相手材との間に50μm以上の隙間を設けておかないと、溶解したAl-Fe合金の溶接部周辺への吐き出しが滞り、充填物の断面積が3.0×104μm2未満となる場合があるため好ましくない。
一方、間隔が500μm超では充填物の充填率が80%未満となる場合があるため好ましくない。
【0084】
打角15度以下
通電電極の打角とは、通電電極と被覆鋼板との接触角度であり、通電電極の軸方向と被覆鋼板の表面に平行な方向とが垂直となる角度を0として、そこからのずれを表す。打角が15度を超えると、溶解したAl-Fe合金の溶接部周辺への吐き出しが不均一となり、充填物が溶接部周辺に均等に形成されず、充填率が80%未満となる場合があるため好ましくない。この場合、腐食を十分に防止することができず、腐食環境における耐水素脆性が低下するので好ましくない。打角は10度以下が好ましい。
【0085】
加圧力300kgf以上
溶接電極間が加圧されることで、Al-Fe系被覆が溶接相手材と接触し、接触面積の分だけ被覆のAl-Fe系合金が溶接部の周辺へ吐き出される。加圧力が300kgf未満であると、被覆鋼板におけるAl-Fe系被覆と溶接相手材との接触面積が足りないため十分な量のAl-Fe系合金が溶接部周辺へ吐き出されず、スポット溶接部の周囲の充填物の断面積が3.0×104μm2未満となる場合があるため好ましくない。加圧力は400kgf以上が好ましい
【0086】
アップスロープ:5サイクル以上
アップスロープとは鋼板基材を溶解させナゲットを形成する電流までの到達サイクルであり、この間に被覆鋼板の表層のAl-Fe系被覆が溶解し、溶接部の周辺に吐き出される。アップスロープが5サイクル未満であると、表層Al-Fe合金が急激に溶解し、ナゲット内へ取り込まれるため、充填物の第1の領域または第2の領域に含まれるAl、Si、Mo、Cu、Niの量が不足する場合があるため好ましくない。
【0087】
スポット溶接の冷却速度:800~500℃の平均冷却速度を500℃/秒以上
スポット溶接の冷却時(ナゲットを形成した後の冷却時)に冷却速度を上げることで、充填物が第2の領域が微細に分散したものとなるので好ましい。これは、溶接時に溶接部の周辺に吐き出された充填物(となる溶融物)が冷却される際に、冷却速度が、500℃/秒以上であると、Feを比較的多く含み凝固点が高い第1の領域の優先的な凝固が促進され、第2の領域が分断されて凝集粗大化が抑制されるためであると考えられる。
例えば、電極の保持時間を5サイクル以上とし、鋼板同士の隙間に直接冷媒(圧縮空気または冷却水)を流し込むことで冷却を促進させ、上記の冷却速度を得ることができる。電極の保持サイクル数は上記の冷却速度を得るためには5サイクル以上が特に好ましい。保持サイクル数は多いほど良いが、製造効率を考慮すると10サイクル以下が好ましい。
冷却速度は、速すぎると溶接ナゲットや充填物の欠陥(引け巣)を生成する点で、5000℃/秒以下であることが好ましい。
スポット溶接の冷却速度は以下の方法で求めることができる。被覆鋼部材と溶接相手材との間にて、溶接中心から10mm以内の位置にR型熱電対を溶着して、溶接時の温度変化を測定する。本実施形態では、充填物の凝固が進み、温度が比較的安定する800~500℃の平均冷却速度をスポット溶接の冷却速度とする。
【0088】
(D)被覆鋼板の製造方法
本実施形態に係る接合部品が含む第1の鋼部材の素材として好適な被覆鋼板は、例えば以下に示す工程を含む製造方法を用いることにより製造することができる。
【0089】
製造方法
(i)上述の化学組成を有する鋼を溶製し、鋳造してスラブを製造する、スラブ準備工程
(ii)得られたスラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とする、熱間圧延工程
(iii)熱延鋼板を巻き取る、巻き取り工程
(iv)必要に応じて、巻き取り工程後の熱延鋼板に焼鈍を行う、熱延板焼鈍工程
(v)必要に応じて、巻き取り工程後または熱延板焼鈍工程後の熱延鋼板にデスケーリングを行い、冷間圧延を行って冷延鋼板とする、冷間圧延工程
(vi)必要に応じて、熱延鋼板又は冷延鋼板に対して焼鈍を行って焼鈍鋼板とする、焼鈍工程
(vii)熱延鋼板、冷延鋼板または焼鈍鋼板にAl系被覆を施して被覆鋼板とする、被覆工程
【0090】
以下、各工程について説明する。
【0091】
<スラブ準備工程>
スラブ準備工程では、上述の化学組成を有する鋼を溶製し、鋳造することで熱間圧延に供するスラブを製造する。例えば、転炉又は電気炉等を用いて上記化学組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法により製造したスラブを用いることができる。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等を採用してもよい。
【0092】
<熱間圧延>
熱間圧延工程においては、スラブを加熱し、粗圧延を行った後に、必要に応じてデスケーリングを行い、最後に仕上げ圧延を行う。熱間圧延条件については限定されない。
【0093】
<巻き取り工程>
巻き取り工程では、例えば熱間圧延後の熱延鋼板を800℃以下の温度域で巻き取る。巻き取り温度が800℃を超えると、変態がほとんど進まない内に巻き取られ、コイル内で変態が進行するため、コイル形状不良となる場合がある。
【0094】
<熱延板焼鈍工程>
熱延板焼鈍工程では、熱延鋼板に対し、例えば窒素80体積%以上の雰囲気や大気雰囲気で450~800℃で5時間以上の焼鈍を施す。熱延板焼鈍は必ずしも行う必要はないが、熱延板焼鈍によれば、熱延鋼板を軟質化し、次工程である冷延工程における荷重を低減できるので好ましい。
【0095】
<冷間圧延工程>
冷間圧延工程では熱延板焼鈍工程後の熱延鋼板(熱延板焼鈍工程を行わない場合には巻き取り工程後の熱延鋼板)にデスケーリングを行い、冷間圧延を行って冷延鋼板とする。デスケーリング及び冷間圧延は必ずしも行う必要がないが、冷間圧延を行う場合、良好な平坦性を確保する観点からは、冷間圧延における累積圧下率は30%以上とすることが好ましい。一方、圧延荷重が過大となることを避けるため、冷間圧延における累積圧下率は80%以下とすることが好ましい。
デスケーリングの方法は、特に限定されないが、酸洗とすることが好ましい。また、酸洗を行う場合、条件を塩酸または硫酸酸洗にて鉄スケールのみ除去することが好ましい。
【0096】
<焼鈍工程>
被覆前の焼鈍工程では、熱延鋼板または冷延鋼板に対し、700~950℃の温度域で焼鈍を施す。被覆前の焼鈍は、必ずしも行う必要はないが、焼鈍工程によれば、冷延鋼板を軟質化し、次工程であるめっき工程において通板が容易となるので好ましい。
【0097】
<被覆工程>
被覆工程では、Al系被覆を施して、鋼板(巻取り工程後の熱延鋼板、熱延板焼鈍工程後の熱延鋼板、冷延工程後の冷延鋼板または焼鈍工程後の焼鈍鋼板)の表面にAl系被覆を形成し、被覆鋼板とする。Al系被覆の方法については、特に限定するものではなく、溶融めっき法をはじめとして電気めっき法、真空蒸着法、クラッド法、溶射法等が可能である。工業的に最も普及しているのは溶融めっき法である。
【0098】
溶融めっきを行う場合、めっき浴にはAlの他に不純物としてFeが混入している場合が多い。また、Alを70%以上含有する限り、さらに上述した元素以外にめっき浴にSi、Ni、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Co、In、Bi、Ca、ミッシュメタル等を含有させてもよい。
溶融めっきを行う場合、焼鈍工程後の焼鈍鋼板を、室温まで冷却した後に再度昇温しめっきを行ってもよく、焼鈍後にめっき浴温近傍の650~750℃に冷却し、一旦室温まで冷却することなく溶融めっきを行ってもよい。
【0099】
Al系被覆の前処理や後処理については特に限定するものではなく、プレコートや溶剤塗布、合金化処理、調質圧延等が可能である。合金化処理として、例えば450~800℃で焼鈍することが可能である。また後熱処理として調質圧延は形状調整等に有用で、例えば0.1~0.5%の圧下が可能である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
まず、被覆鋼板、被覆鋼部材及び接合部品を製造するにあたり、表1に示す化学成分を有する鋼を溶製し、熱間圧延用のスラブを得た。
【0102】
【0103】
<実施例1>
得られたスラブに熱間圧延を施し、800℃以下の温度で巻き取り、厚さ2.7mmの熱延鋼板とした。熱間圧延後の熱延鋼板に対し、冷間圧延を施し、厚さ1.6mmの冷延鋼板とした。冷延鋼板に、Alめっきを施し、Al系被覆を有する被覆鋼板を得た。
被覆鋼板の、鋼板の板厚方向に表面から板厚の1/4の位置の化学組成は、スラブの化学組成と同様であった。
【0104】
被覆鋼板を、表2A、表2D、表2Gに示す昇温速度、加熱温度で加熱し、加熱温度の±10℃以内の範囲に60秒保持し、表2A、表2D、表2Gに示す平均冷却速度でMs点以下まで冷却する熱処理を施し、被覆鋼部材を得た。
被覆鋼部材の鋼板基材の板厚方向に表面から板厚の1/4の位置の化学組成は、スラブの化学組成と同様であった。
【0105】
得られた被覆鋼部材を切り出し、SEM観察、引張試験を以下の方法で行い、Al-Fe系被覆の厚み、引張強度を評価した。評価結果を表2A、表2D、表2Gに示す。
【0106】
<Al-Fe系被覆の厚み>
鋼部材の端部を避けて測定試料を切り出し、断面を走査型電子顕微鏡で10視野観察し、Al-Fe系被覆の厚みを測定し、その平均値をAl-Fe系被覆の厚みとした。
【0107】
<引張強度>
引張試験はASTM規格E8の規定に準拠して実施した。被覆鋼部材の均熱部位(端部から50mm以上離れた部位)を1.2mm厚まで研削した後、試験方向が圧延方向に平行になるように、ASTM規格E8のハーフサイズ板状試験片(平行部長さ:32mm、平行部板幅:6.25mm)を採取した。そして、3mm/minのひずみ速度で室温引張試験を行い、引張強度(最大強度)を測定した。本実施例においては、1500MPaを超える引張強度を有する場合を、高い強度を有すると評価した。
【0108】
鋼部材を、表2A、表2D、表2Gに示すスポット溶接条件:隙間、打角、加圧力、アップスロープ、冷却速度にて溶接し、接合部品を得た。本実施例では、相手材も同じ鋼部材とした。ナゲット径は5.1~6.3mmであった。溶接機は単相交流式(60Hz電源)であり、溶接時間20サイクルにて上記ナゲット径となる電流を与えた。電極は先端径8mmφ、ドームラジアス形、アルミナ分散銅製を用いた。
【0109】
得られた接合部品において、以下の方法で、充填物の断面積、充填率、Al、Fe、Si、Mo、Cu、Niの含有量、CCTにおける耐破断を評価した。評価結果を表2B、表2C、表2E、表2F、表2H、表2Iに示す。
【0110】
<充填物の断面積>
接合部品においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面が観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、断面において、充填物の面積を求めた。同溶接条件において5試料以上切出し断面積を求め、その平均値を充填物の断面積とした。
【0111】
<充填率>
接合部品においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面が観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、断面における圧接部(コロナボンド)の終端から隙間部に向かって100μmまでの範囲において、鋼部材を除いた領域に占める充填物の割合を求めた。同溶接条件において5試料以上切出し割合を求め、その最小値を充填物の充填率とした。
【0112】
<充填物におけるFe、Al、Si、Mo、Cu、Ni含有量>
接合部品においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面が観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、この試料に対し、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像を取得し、コントラストの異なる2種類の組織に対し、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて、スポットの元素分析(ビーム径1μm以下)を10点分析し、その平均値を充填物に含まれるAl、Fe、Si、Mo、Cu、Ni含有量とした。
【0113】
<充填物における第2の領域のサイズ>
接合部品においてスポット溶接部(ナゲット及びコロナボンド)と充填物の断面が観察できるように、溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、この試料に対し、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像を取得し、コントラストの異なる2種類の組織に対し、第1の領域に囲まれた島状の第2の領域のサイズを測定した。ここで第2の領域のサイズとは、水平方向の平行線で第2の領域を挟んだ平行線間の距離(水平フェレ径)と、垂直方向の平行線で第2の領域を挟んだ平行線間の距離(垂直フェレ径)との平均値と定義した。水平方向とは接合部品の長手方向、垂直方向とは長手方向に垂直な板厚方向とした。測定に際しては、15個の第1の領域に囲まれた島状の第2の領域のサイズを測定し、その平均値を充填物に含まれる第2の領域のサイズとした。
【0114】
<CCTによる破断サイクル>
腐食環境における耐水素脆性は、CCT(複合サイクル試験)による腐食促進試験によって評価した。具体的には、接合部品から、スポット溶接部を中心に長さ100mm、幅50mmのサンプルを採取し、JASO規格M609、M610の規定に準拠してCCTを行い、スポット溶接部が破断しないサイクル数によって評価した。CCTは360サイクルまで実施し、360サイクルまで破断しなかったサンプルは溶接点の中心位置を通る垂直断面を切り出し、充填物の断面積の減少が試験前後で10%以下の場合、特に腐食環境に対して優れるとした。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
表2A~表2Iに示すとおり、本発明範囲を満足する発明例B1~B67は、組織、特性ともに良好な結果であるが、本発明範囲を満足していない比較例b1~b26は、化学組成または、充填物の形成が不十分であり、強度(素材となる鋼部材の強度)、耐水素脆性の少なくとも1つが劣っていた。また、充填物がMo、Cu、Niを含む場合には、特に腐食環境に対して優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、腐食環境における耐水素脆性に優れたスポット溶接部を有する高強度な接合部品を得ることが可能となる。本発明に係る接合部品は、特に自動車の骨格部品として用いるのに好適である。本発明の鋼部材は、高強度かつ耐水素脆性に優れるので、自動車部品に適用した場合、燃費及び衝突安全性の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0126】
1:接合部品
11:第1の鋼部材
12:第2の鋼部材
21:スポット溶接部
31:充填物
111:鋼板基材
112:Al-Fe系被覆
g:隙間