(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】測定治具、測定装置、バイポーラ型電池及びバイポーラ型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/08 20060101AFI20230310BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230310BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230310BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230310BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G01R19/08
H01M10/052
H01M10/0585
G01R19/00 B
G01R27/02 R
(21)【出願番号】P 2022030954
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/100819(WO,A1)
【文献】特開2013-182788(JP,A)
【文献】特開2020-113497(JP,A)
【文献】特開2020-071101(JP,A)
【文献】特開2020-120555(JP,A)
【文献】特開2020-034326(JP,A)
【文献】特開2019-160775(JP,A)
【文献】特開2017-211231(JP,A)
【文献】特開2009-048971(JP,A)
【文献】特開2019-106233(JP,A)
【文献】特開2010-276520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/08
G01R 19/00
G01R 27/02
H01M 10/0585
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の測定対象物の厚み方向の電流、電圧及び抵抗のいずれかを測定するための測定治具であって、
前記測定対象物の厚み方向の一方の面と接触する複数の接触点を有する接触部と、
前記接触部と連結されて外部に配置された測定装置と接続する接続部を有するタブ部と、
複数の前記接触点と前記接続部とを接続する複数の測定配線と、を有し、
前記接触部は、面内方向に延びる境界線によって分割される複数の測定領域を有し、
各前記測定領域内には、複数の前記接触点が配置されており、
前記測定配線は、前記タブ部から遠ざかる方向に延びる前記境界線の近傍に配置されるとともに、全ての前記測定配線の長さが等しくなるように、
接続する前記接触点が配置される前記測定領域内で、複数の前記接触点を頂点とする図形の外側であって前記図形に沿って配線される部分を含み、
複数の前記測定配線の電気抵抗が等しい測定治具。
【請求項2】
前記接触点は、周期的に配列される請求項1に記載の測定治具。
【請求項3】
前記接触点は、第1方向に等間隔で配列されるとともに、前記第1方向と交差する第2方向にも等間隔で配列される請求項2に記載の測定治具。
【請求項4】
近接して配置される複数の前記接触点と電気的に接続される基準点を有し、
前記測定配線は、前記基準点を介して前記接続部と前記接触点とを接続する請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定治具。
【請求項5】
前記接触部は複数の補助タブ部と連結されており、
前記補助タブ部には前記測定配線の一部が配置され、
複数の前記補助タブ部は、前記タブ部に連結されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定治具。
【請求項6】
前記測定配線が配置される部分がプリント基板である請求項1から請求項5のいずれかに記載の測定治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定治具を用いて前記測定対象物の厚み方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定する測定装置であって、
前記測定対象物の厚み方向の一方側に正極として接触する正極端子と、
前記測定対象物の厚み方向の他方側に負極として接触する負極端子と、を有し、
少なくとも前記正極端子に前記測定治具を用いる測定装置。
【請求項8】
前記負極端子にも前記測定治具を用い、
前記正極端子の前記測定治具の各前記接触点と、前記負極端子の前記測定治具の各前記接触点と、が厚み方向に重なる請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の測定装置を用いて単電池の厚み方向の抵抗の面内方向の分布を測定し、
前記抵抗の面内方向の分布が予め決められた基準を満たす前記単電池のみを積層するバイポーラ型電池の製造方法。
【請求項10】
前記単電池の厚み方向の抵抗の面内方向の分布の測定を行う前に、前記測定治具の前記接触部の前記単電池に接触している接触面の複数個所の接触圧力を測定し、必要に応じて測定した接触圧力が一定の範囲に入るように接触圧力の調整を行う工程をさらに有する請求項9に記載のバイポーラ型電池の製造方法。
【請求項11】
請求項7又は請求項8に記載の測定装置を用いて単電池の厚み方向の抵抗の面内方向の分布を測定し、前記抵抗の面内方向の分布が予め決められた基準を満たす前記単電池のみを積層したバイポーラ型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の電圧、電流及び抵抗のいずれかを測定するための測定治具、この測定治具を用いて測定対象物の面内方向における電圧、電流及び抵抗のいずれかを測定する測定装置及びこの測定装置を用いて測定した単電池を積層したバイポーラ型電池及びバイポーラ型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の単電池を積層した積層型電池が多く生産されている。この積層型電池において、厚み方向の電流が面内方向の一部に集中すると、電流が集中した部分で過充電及び過放電されて、劣化が進みやすくなる。特許文献1には、このような電流集中を検出するため、二次電池の面内方向における電流分布の測定方法が開示されている。
【0003】
特許文献1の二次電池の面内方向における電流分布の測定方法では、二次電池の集電体層の面内方向の複数の箇所と他方の集電体層との過電圧を測定することで、面内方向の電流分布を測定する方向を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、正極集電体層に接続する複数のセンサータブの長さが異なる。そのため、センサータブは長さの差による抵抗の差があり、測定電圧のばらつきの原因となる。このような場合において、センサータブの抵抗差に基づいて補正を行うことが考えられるが、センサータブの長さの差による抵抗以外のばらつきの要因が含まれる場合もあり、補正後のデータの信頼性を高めることが難しい。
【0006】
そこで本発明は、測定対象物の面内方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定して測定対象物の不具合を正確に検出することができる測定治具及び測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、厚み方向に流れる電流の面内方向のばらつきが少ないバイポーラ型電池及びバイポーラ型電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な測定治具は、板状の測定対象物の厚み方向の電流、電圧及び抵抗のいずれかを測定する。上記測定治具は、厚み方向一方の面と接触する複数の接触点を有する接触部と、上記接触部と連結されて外部に配置された測定装置と接続する接続部を有するタブ部と、複数の上記接触点と上記接続部とを接続する複数の測定配線と、を有する。上記測定治具において、複数の上記測定配線の長さが等しい。
【0009】
本発明の例示的な測定装置は、上記測定治具を用いて上記測定対象物の厚み方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定する。上記測定装置は、少なくとも正極側に前記測定治具を用いる。
【0010】
本発明の例示的なバイポーラ型電池の製造方法は、上記測定装置を用いて単電池の面内方向の抵抗分布を測定し、上記抵抗分布が予め決められた基準を満たす前記単電池のみを積層する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の例示的な測定治具及び測定装置によれば、測定対象物の面内方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定して測定対象物の不具合を正確に検出できる。
【0012】
本発明の例示的なバイポーラ型電池によれば、電力集中が発生しにくく、劣化を抑制できる。
【0013】
本発明の例示的なバイポーラ型電池の製造方法によれば、電力集中が発生しにくいバイポーラ型電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかる例示的な測定装置の概略図である。
【
図2】測定装置の電気的な接続を示すブロック図である。
【
図3】測定対象物である単電池の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図6】測定治具の基準点及び接触点の近傍を切断した概略断面図である。
【
図7】バッテリーモジュールの一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図8】バッテリーモジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】バッテリーモジュールの製造方法の他の例の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
<測定装置100>
図1は、本実施形態にかかる例示的な測定装置100の概略図である。
図2は、測定装置100の電気的な接続を示すブロック図である。
図1、
図2に示すように測定装置100は、制御部1と、一対の測定治具2と、を有する。測定装置100は、測定治具2を用いて測定対象物3の厚み方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定する。なお、本実施形態の測定装置100は、測定対象物3の厚み方向の抵抗を測定できる。
【0017】
測定対象物3としては、例えば、バイポーラ型の二次電池が挙げられる。なお、
図1に示すように、本実施形態の測定装置100で抵抗を測定する測定対象物3は、いわゆる、単電池30とする。例えば、順に積層された一組の正極樹脂集電体34(
図3参照)、正極活物質層35(
図3参照)、セパレータ33(
図3参照)、負極活物質層37(
図3参照)及び負極樹脂集電体36(
図3参照)を有する。しかしながら、これに限定されず、単電池30を厚み方向に積層した積層型の二次電池であってもよい。
【0018】
さらには、測定装置100の測定対象物3は、電池本体に限定されない。測定対象物3としては、例えば、樹脂集電体、樹脂集電体に活物質層が積層された電極シート、及び、電極シートにセパレータが組み合わされたセパレータ付き電極シート等を挙げることができる。
【0019】
測定装置100は、本体部101と、一対の端子保持部102と、移動機構103とを有する。本体部101は、測定装置100の筐体である。
図1では、直方体形状で示しているが、この形状に限定されるものではない。端子保持部102を移動可能に支持することができる構成を広く採用することができる。
【0020】
一対の端子保持部102は、上下に対向するように配置される。そして、一対の端子保持部102は、互いに接近及び離間可能なように、本体部101に支持されている。
図1に示す測定装置100において、下側に配置された端子保持部102には、正極端子201が保持される。また、上側に配置された端子保持部102には、負極端子202が保持される。すなわち、測定装置100は、測定対象物3の厚み方向の一方側に正極として接触する正極端子201と、測定対象物3の厚み方向の他方側に負極として接触する負極端子202と、を有する。なお、詳細は後述するが、正極端子201及び負極端子202として、測定治具2が用いられる。
【0021】
一対の端子保持部102が接近することで、正極端子201及び負極端子202が、単電池30のそれぞれ正極31及び負極32と接触する。なお、測定装置100において、端子保持部102の一方は本体部101に固定され、他方の端子保持部102が移動するようにしてもよい。
【0022】
移動機構103は、例えば、不図示のモータ等の動力源を有する。そして、動力源によって、端子保持部102を上下に移動させる。移動機構103は、制御部1に接続されて、制御部1によって制御される。
【0023】
制御部1は、定電圧回路11と、電流測定回路12と、処理回路13と、記憶回路14と、を有する。処理回路13は、例えば、測定装置100の各部の制御を行う制御処理、演算処理等の処理を実行可能な回路である。処理回路13には、CPU、MPU等の演算回路が含まれる。処理回路13は、例えば、移動機構103の制御処理、単電池30の抵抗値の演算処理等を実行可能な回路構成を有する。
【0024】
記憶回路14は、例えば、ROM、RAM等の半導体メモリー、フラッシュメモリー等の可搬性を有するメモリー及びハードディスク等の記憶媒体等を含む又はこれらが接続された回路である。記憶回路14は、測定装置100の制御に必要な各種数値、測定値等が記憶される。なお、記憶回路14に制御プログラム、演算プログラム等の各種プログラムを記憶しておき、必要に応じて記憶回路14からプログラムを呼び出して、処理回路13で実行して、各種制御、演算処理等を行うようにしてもよい。
【0025】
正極端子201及び負極端子202は、制御部1に接続される。さらに詳しく説明すると、正極端子201は、定電圧回路11に接続され、負極端子202は、電流測定回路12に接続される。定電圧回路11は、正極端子201に一定の電圧を供給する回路である。本実施形態にかかる測定装置100において、定電圧回路11としては、公知の回路構成を採用している。電流測定回路12は、負極端子202に流れる電流を測定する。本実施形態の測定装置100において、電流測定回路12としては、公知の回路構成を採用している。
【0026】
図2に示すように、定電圧回路11、正極端子201、負極端子202及び単電池30は、電気回路を構成する。定電圧回路11から正極端子201に電圧が供給されると、正極端子201と負極端子202との間に一定の電圧が印加される。つまり、正極端子201及び負極端子202が接続された単電池30に一定の電圧が印加される。これにより、単電池30に電流が流れる。この電流は、負極端子202に流れ、電流測定回路12によって測定される。
【0027】
処理回路13は、定電圧回路11が印加した電圧値と、電流測定回路12が測定した電流値とに基づいて、抵抗値を算出する。そして、処理回路13は、印加された電圧値、測定された電流値及び抵抗値をそれぞれ関連付けて、記憶回路14に記憶する。記憶回路14には、例えば、データベースが備えられており、電圧値、電流値及び抵抗値は、データベースに格納される。
【0028】
なお、制御部1は、定電圧回路11から測定対象物3に電圧を印加できる。そのため、制御部1の定電圧回路11を用いて、測定対象物3の充電ができるようになっていてもよい。この場合、一旦充電した単電池30の正極31と負極32とに負荷を繋ぎ、負荷を流れる電流を測定して単電池30の内部抵抗を算出するようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態の測定装置は、バイポーラ型電池の厚み方向の抵抗を測定する測定装置100であるが、これに限定されない。例えば、一定の電圧を印加したときの電流を測定する電流測定装置であってもよいし、充電時の電圧を測定する電圧測定装置であってもよい。
【0030】
<単電池30>
以下に、単電池30について図面を参照して説明する。
図3は、測定対象物3である単電池30の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図4は、単電池30の分解斜視図である。
図3、
図4に示すように、単電池30は、平面視において略正方形の平板状であり、厚み方向の下面が正極31、上面が負極32である。
【0031】
図3、
図4に示すように、単電池30は、正極31と、負極32と、セパレータ33と、を有する。正極31と負極32とがセパレータ33を介して積層される。つまり、単電池30は、下から、正極31、セパレータ33、負極32の順に積層して形成される。正極31と負極32とを積層することで、単電池30が形成される。なお、本実施形態において、単電池30は、リチウムイオン電池とする。正極31、負極32及びセパレータ33は、公知のリチウムイオン電池に用いられる構成と同様の構成を有する。
【0032】
図3、
図4に示すように、正極31は、正極樹脂集電体34と、正極活物質層35と、を有する。正極樹脂集電体34は、導電性を有する樹脂であり、単電池30の厚み方向から見て略正方形状である。また、正極活物質層35は、正極樹脂集電体34の表面(ここでは、上面)に積層される。正極活物質層35は、正極活物質と、導電助剤と、被覆用樹脂とを含む。正極活物質、導電助剤及び被覆用樹脂には、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる物質が使用される。
【0033】
また、負極32は、負極樹脂集電体36と、負極活物質層37とを有する。負極樹脂集電体36は、導電性を有する樹脂であり、単電池30の厚み方向から見て略正方形状である。なお、正極樹脂集電体34と負極樹脂集電体36とは、同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。負極活物質層37は、負極樹脂集電体36の表面(ここでは、下面)に積層される。負極活物質層37は、負極活物質と、導電助剤と、被覆用樹脂と、を含む。負極活物質、導電助剤及び被覆用樹脂には、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる物質が使用される。
【0034】
また、正極活物質層35及び負極活物質層37には電解液が含まれる。電解液としては、例えば、公知のリチウムイオン電池に用いられる電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用している。
【0035】
正極31、負極32及びセパレータ33は、環状の枠部材38に取付られる。さらに説明すると、正極活物質層35が枠部材38の内部に配置されて、正極樹脂集電体34の周縁部が枠部材38の下面に固定される。また、負極活物質層37が枠部材38の内部に配置されて、負極樹脂集電体36の周縁部が枠部材38の上面に固定される。そして、セパレータ33は、正極活物質層35及び負極活物質層37を分離するように配置されて、枠部材38に固定される。つまり、単電池30において、正極活物質層35、セパレータ33及び負極活物質層37は、正極樹脂集電体34、負極樹脂集電体36及び枠部材38にて封止される。
【0036】
正極樹脂集電体34とセパレータ33との間の間隔、及び、負極樹脂集電体36とセパレータ33との間の間隔は単電池30の容量に応じて調整される。つまり、正極樹脂集電体34、負極樹脂集電体36及びセパレータ33の位置は、単電池30が予め決められた容量を有するように定められる。
【0037】
単電池30において、枠部材38は、正極樹脂集電体34とセパレータ33との間隔、負極樹脂集電体36とセパレータ33との間隔を適切に維持するために用いられる。
【0038】
正極樹脂集電体34及び負極樹脂集電体36は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体である。樹脂集電体の形状は、特に限定されず、導電性高分子材料からなるシート状の集電体、及び、導電性高分子材料で構成された微粒子からなる堆積層等であってもよい。
【0039】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては、例えば、導電性高分子樹脂に必要に応じて導電剤を添加したもの等を挙げることができる。また、導電性高分子材料を構成する導電剤としては、正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを採用することができる。
【0040】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0042】
単電池30は、以上示した構成を有する。なお、本実施形態の単電池30は、厚み方向から見て略正方形状であるが、これに限定されない。例えば、長方形状であってもよい。さらには、円形、楕円形、多角形状(三角形状、四角形状等)であってもよい。単電池30の平面視の形状は、特に限定されないが、後述の組電池42の運搬及び設置等の汎用性を考慮して、略正方形状又は略長方形状であることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態の測定装置100の測定対象物3は、単電池30に限定されない。例えば、正極樹脂集電体34、負極樹脂集電体36、正極樹脂集電体34に正極活物質層35が積層された正極31、負極樹脂集電体36に負極活物質層37が積層された負極32、正極31にセパレータ33が組み合わされたセパレータ付き正極31、又は、負極32にセパレータ33が組み合わされたセパレータ付き負極32であってもよい。
【0044】
<測定治具2>
上述した構成の平板状の樹脂集電体は、厚み方向の抵抗に対して、厚み方向と直交する方向(平面に沿う方向、以下、面内方向と称する)の抵抗が大きい。例えば、厚み方向の抵抗が数Ω~数十Ωであるのに対し、面内方向の抵抗が数kΩ以上である。
【0045】
そのため、単電池30の正極31及び負極32それぞれの一点に回路を接続して電圧を印加した場合、接続点から離れるほど、電圧が低下する。測定装置において、面内方向の電圧が変化すると、厚み方向の正確な抵抗を測定することが困難である。そのため、本発明にかかる正極端子201及び負極端子202として測定治具2が用いられる。このことにより、測定装置100では、単電池30に対して面方向に略均一な電圧が印加可能になる。
【0046】
正極端子201及び負極端子202として用いられる測定治具2の詳細な構成について図面を参照して説明する。
図5は、測定治具2の概略平面図である。
図6は、測定治具2の基準点及び接触点の近傍を切断した概略断面図である。
【0047】
図1に示すように、測定装置100において、正極端子201と負極端子202には、いずれも測定治具2が用いられる。つまり、測定装置100において、正極側に測定治具2を用いている。また、負極端子202にも測定治具2が用いられる。つまり、正極端子201及び負極端子202には、同じ構成及び形状の測定治具2が用いられる。
【0048】
一対の測定治具2は、測定対象物3(ここでは、単電池30)の厚み方向の電流、電圧及び抵抗のいずれかを測定する。
図5に示すように、測定治具2は、接触部21と、タブ部22と、測定配線23とを有する。
【0049】
本実施形態にかかる測定治具2では、接触部21及びタブ部22は、例えば、ポリイミド等の可撓性を有する樹脂で形成される。すなわち、測定治具2の測定配線23が配置される部分が、プリント基板で形成されている。なお、プリント基板としては、リジット基板、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)及びこれらを組み合わせた基板等を挙げることができる。リジット基板を用いることで、耐久性を高めることが可能である。また、フレキシブル基板を用いることで、測定対象物3の表面に凹凸がある場合にも確実に接触させることができる。
【0050】
本実施形態において、測定治具2は、多層基板であり、測定配線23は、接触部21及びタブ部22の厚み方向の中間部に形成される。このように構成することで測定配線23が外部に露出することを抑制し、漏電、放電等を抑制することが出きる。また、測定配線23同士の短絡を抑制することも可能である。
【0051】
接触部21は、正極樹脂集電体34又は負極樹脂集電体36の一方と接触する。
図5に示すように、本実施形態にかかる測定治具2の接触部21は、平面視、略正方形状である。
【0052】
平面視において、接触部21は、樹脂集電体34、36と接触する複数の接触点211を有する。複数の接触点211は、周期的に配列される。
図5に示すように、接触点211は、第1方向D1に等間隔で配列されるとともに、第1方向D1と交差する第2方向D2にも等間隔で配列される。
【0053】
さらに詳しく説明すると、本実施形態の測定治具2において、第1方向D1は、略正方形状の接触部21の1辺と平行に延びる方向であり、第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向である。
図5に示すように、接触点211は、第1方向D1に間隔Wで配列され、第2方向D2にも間隔Wで配列される。なお、接触点211の配列は、第1方向D1の間隔と、第2方向D2の間隔とが、異なっていてもよい。さらに、周期的に配列されていればよく、交差する2方向に沿って配列されるものに限定されない。例えば、平面を埋める正三角形の頂点に位置するように配置されてもよい。
【0054】
図6に示すように、接触点211は、スルーホール212と、ランド213とを有する。スルーホール212は、接触部21を厚み方向に貫通する。スルーホール212は、測定配線23の後述する分岐配線232とランド213と、を電気的に接続する。
【0055】
接触点211の厚み方向の両端は、接触部21の外面に配置されたランド213を有する。ランド213は、接触部21の厚み方向の両端面に形成されている。すなわち、ランド213は、スルーホール212と電気的に接続され、測定治具2の外部に露出している。
【0056】
測定治具2を正極31及び負極32に取り付けたとき、ランド213が正極樹脂集電体34及び負極樹脂集電体36と接触する。これにより、一対の測定治具2が、正極31及び負極32に電気的接続される。すなわち、測定治具2を測定対象物3に取り付けたとき、ランド213が測定対象物3と接触する。
【0057】
なお、測定治具2において、ランド213が接触部21の厚み方向の両面に形成されていることで、測定治具2の両面を測定に利用できる。なお、測定治具2の接触面が決められている場合、接触部21の一方の面にランド213を形成し、スルーホール212に替えて、ランド213と分岐配線232とを接続するビアホールを採用してもよい。
【0058】
そして、接触部21には、複数の個別領域Arが設定されている。個別領域Arは、平面視、正方形状であり、個別領域Arは接触部21に隙間なく敷き詰められて設定されている。各個別領域Arの中心に接触点211が配置されている。つまり、個別領域Arの境界線は、隣り合う接触点211を繋いだ線分の中心を通り、この線分に対して垂直な線である。
【0059】
接触部21には、近接して配置される複数(ここでは、4個)の接触点211と電気的に接続される基準点210が配置される。詳しくは、平面視において、基準点210は、第1方向D1及び第2方向D2に隣り合う4個の接触点211を頂点とする正方形状の領域の中心に配置される。つまり、基準点210と、基準点210と近接する4個の接触点211のそれぞれとの距離は、同じである。また、接触点211の周囲に配置される4個の個別領域Arは、測定領域Brを構成する。すなわち、測定領域Brは、正方形状であり、各頂点を含むように個別領域Arが敷き詰められているともいえる。
【0060】
なお、本実施形態の測定治具2では、接触部21に16個の測定領域Brが設定されているが、これに限定されない。測定領域Brは、接触部21に敷き詰めることができるとともに、複数の個別領域Arに分割可能な形状を広く採用することができる。また、個別領域Arと測定領域Brは、相似形でなくてもよい。例えば、個別領域Arを正三角形状とし、個別領域Arを6個並べて形成された正六角形状の測定領域Brをとしてもよい。個別領域Arに設けられる接触点211のすべてと同じ距離に基準点210を配置できる形状の個別領域Ar及び測定領域Brを広く採用することができる。
【0061】
タブ部22は、接触部21と連結される。本実施形態の測定治具2では、略正方形状の接触部21の一辺(
図4に示す接触部21の底辺)の中央に連結される。接触部21とタブ部22とは、一体的に形成される。なお、接触部21とタブ部22とは、異なる部材として形成した後、接続するようにしてもよい。
【0062】
そして、タブ部22は、平面視矩形の平板状であり、複数の接続部221を有する。接続部221は、制御部1に接続される。さらに詳しく説明すると、正極端子201として用いられる測定治具2の接続部221は、定電圧回路11に接続し、負極端子202として用いられる測定治具2の接続部221は、電流測定回路12に接続する(
図2参照)。接続部221の個数は、基準点210の個数と同数である。なお、複数の接続部221は、タブ部22の接触部21と反対側と接続する部分と反対側の端部に配置される。
【0063】
測定配線23は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金等の導電性材料で形成された導電性の箔である。測定配線23は、主配線231と、分岐配線232とを有する。主配線231は、基準点210と、複数の接続部221とをそれぞれ、個別に電気的に接続する。測定治具2において、複数の測定配線23の電気抵抗が等しい。このように構成することで、配線の電気抵抗が異なることによる測定される電流値のばらつきを抑制できる。
【0064】
以下、主配線231の詳細について説明する。主配線231は、接触部21及びタブ部22に配置される。主配線231のタブ部22に配置される部分は、タブ部22の短手方向に並列に配置される。また、接触部21に配置される主配線231は、測定領域Brの境界近傍を通って、接続される基準点210が配置される測定領域Brまで引きまわされる。詳しく説明すると、
図4に示すように、測定領域Brは、接触部21の第1方向D1及び第2方向D2に4個ずつ並んで配置される。
【0065】
左の2列の測定領域Brのそれぞれに配置される基準点210に接続する主配線231は、2列の測定領域Brの中央の境界線に沿って上方に向かって配線される。対応する測定領域Brの位置に到達した各主配線231は、それぞれ、測定領域Brに向かって延びる。
【0066】
接触部21の測定領域Brは、第1方向D1及び第2方向D2に並んで配置されている。そのため、接触部21のタブ部22の連結部分から各測定領域Brまでの距離は、それぞれ異なる。そこで、接触部21では、測定領域Br内部を折り返しつつ配線して、全ての主配線231の長さが一定になるようにしている。このようにすることで、全ての主配線231の電気抵抗が等しくなる。
【0067】
また、分岐配線232は、基準点210と、基準点210の近傍に配置された4個の接触点211それぞれと、を接続する。つまり、4本の分岐配線232が1つの基準点210に接続されている。1つの基準点210に接続された分岐配線232は、等長であり、さらには、分岐配線232は、配置される測定領域Brにかかわらず同じ長さである。
【0068】
すなわち、主配線231と分岐配線232を有する測定配線23は、複数の接触点211と接続部221とをそれぞれ電気的に接続する。上述のとおり、主配線231は等長である。また、基準点210に接続された分岐配線232も等長である。
【0069】
つまり、本実施形態の測定治具2では、複数の測定配線23の長さが等しい。このようにすることで、複数の測定配線23の電気抵抗を等しくすることができる。また、複数の測定配線23の電気抵抗が等しければよく、上述した構成に限定されない。
【0070】
なお、本実施形態の測定治具2は、接続部221と基準点210とを主配線231で接続し、基準点210と接触点211とを分岐配線232で接続している。しかしながら、これに限定されない。測定配線23を配置することができる構成であれば、測定配線23を1つの配線として、接続部221と接触点211を直接接続するようにしてもよい。このときも、全ての測定配線23は同じ長さである。
【0071】
そして、
図1に示すように、測定装置100において、一対の端子保持部102に保持された、正極端子201の測定治具2の各接触点211と、負極端子202の測定治具2の各接触点211とが、厚み方向に重なる。
【0072】
測定装置100は、以上示した構成を有する。次に、測定装置100を使用して単電池30の抵抗を測定する手順について説明する。
【0073】
図1に示すように、測定装置100の一対の端子保持部102の間に単電池30が配置される。このとき、測定装置100は、図示を省略した固定具にて固定されている。この状態で、移動機構103を動作させて、一対の端子保持部102を接近するように移動させる。
【0074】
これにより、正極端子201及び負極端子202は、各測定領域Brが単電池30の厚み方向に正確に重なるように、単電池30の正極31及び負極32にそれぞれ接触する。つまり、測定装置100では、単電池30の正極31の正極樹脂集電体34に正極端子201が位置決めして固定され、負極32の負極樹脂集電体36に負極端子202が位置決めして固定される。これにより、単電池30は、正極端子201及び負極端子202を保持した一対の端子保持部102によって均一に加圧される。
【0075】
このとき、正極端子201として用いられる測定治具2の接触部21の単電池30に対する接触圧力及び負極端子202として用いられる測定治具2の接触部21の複数個所における単電池30との接触圧力を測定してもよい。そして、その測定結果に基づいて、接触部21の各接触圧力が一定の範囲内に収まるように、一対の端子保持部102の位置を調整するようにしてもよい。なお、端子保持部102には、接触部21に対して付与する力を部分的に調整できる構成となっていてもよい。また、端子保持部102を測定対象物3に対して角度調整可能とし、角度調整を行うことで、接触部21の応力を調整してもよい。
【0076】
正極端子201及び負極端子202の測定領域Brと厚み方向に重なる単電池30の領域をkとする。正極端子201と負極端子202との間に電圧を印加し、負極端子202に流れる電流を測定する。そして、印加電圧と測定電流とから、単電池30の抵抗を算出する。
【0077】
正極端子201及び負極端子202の測定領域Brには、規則的に配列された4個の接触点211が設けられている。正極端子201の接続部221に電圧を印加することで、4個の接触点211の全てに等しい電圧が印加される。測定領域Brは、正極に対して狭いため、正極樹脂集電体34の面内方向の抵抗が少ない。そのため、正極端子201の測定領域Brと接触している単位領域Cr内の正極樹脂集電体34には、面内方向で略均一な電圧が印加される。
【0078】
そして、正極端子201において、全ての測定配線23の長さが略同じであるため、正極端子201の全ての接触点211に等しい電圧が印加される。全ての測定領域Brの形状及び大きさが同じであるとともに、測定領域Br内の接触点211の数及び配置規則が同じである。そのため、単電池30において、全ての単位領域Crの正極樹脂集電体34には、面内方向に略均一な電圧が印加される。つまり、単電池30の正極31に面内方向に略均一な電圧が印加される。
【0079】
そして、負極端子202は正極端子201と同じ形状である。単電池30の単位領域Crには、負極端子202の測定領域Brが接触している。そのため、正極端子201から電圧が印加されると、単電池30に厚み方向の電圧が付与されて電流が流れる。この電流は、負極端子202の接触点211に流れる。負極端子202の接触点211に流れた電流は、測定配線23を介して電流測定回路12に流れる。負極端子202の測定配線23も、全て同じ長さであるため、各接触点211に流れる電流が流れる測定配線23の抵抗値も同じになる。つまり、各接触点211に流れる電流を略等しい条件で検出することができる。
【0080】
以上示したとおり、本実施形態の測定装置100を用いることで、測定対象物3である単電池30に対して、面内方向に略均一の電圧を印加する。そして、面内方向に略均一な電圧を印加したときの面内方向の各部における電流を略等しい条件で測定することができる。これにより、単電池30の厚み方向の抵抗の面内方向におけるばらつきを精度よく測定することができる。
【0081】
上述したとおり、測定装置100では、正極端子201から単電池30に定電圧を供給する。このとき、負極端子202との間で一定の電圧が印加されればよい。そのため、少なくとも正極端子201に測定治具2を用いてもよい。詳しく説明すると、測定装置100において、少なくとも正極端子201に測定治具2を用いればよい。この場合、電流測定回路12は正極端子201の各測定配線23を流れる電流を測定する。このようにすることで、負極端子202の構成を簡略化できる。
【0082】
<バッテリーモジュール40>
バイポーラ型の単電池30を積層したバッテリーモジュール40について説明する。
図7は、バッテリーモジュール40の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。バッテリーモジュール40は、外装体41と、複数個の単電池30を積層した組電池42と、正極導電シート43と、負極導電シート44と、を有する。
【0083】
組電池42は、外装体41の内部に収容される。
図7に示すように、外装体41は、ベース部411と、カバー部412とを有する。ベース部411は、厚み方向から見て略長方形の板状である。カバー部412は、上部に蓋状部分を有するとともに下部が開口した箱状である。カバー部412の凹部に組電池42等のバイポーラ型電池を構成する部材が収容された後、カバー部412の下面の開口をベース部411が覆う。このとき、カバー部412とベース部411とが、密着される。これにより、外装体41の内部には、水、埃、塵等の異物の混入が抑制され、これらの異物によるバイポーラ型電池の不具合が抑制される。
【0084】
外装体41において、カバー部412の下端部が、ベース部411の外縁部と接触するように配置される。そして、カバー部412とベース部411の少なくとも1辺は、上下方向に加熱加圧することで接着(以下、熱溶着と称する)される熱接着部413である。
【0085】
図7に示すように、組電池42では4つの単電池30が積層されている。組電池42では、隣り合う単電池30の正極樹脂集電体34の下面と負極樹脂集電体36の上面とが接触して積層されている。このように積層することで、4個の単電池30は、直列接続される。すなわち、単電池30の積層数で組電池42の出力電圧、すなわち、バッテリーモジュール40の出力電圧が決定される。換言すると、バッテリーモジュール40に要求される出力電圧に基づいて、積層される単電池30の数が決定される。
【0086】
図7に示すバッテリーモジュール40において、組電池42の最下部に積層された単電池30の下面の正極樹脂集電体34には、正極導電シート43が接触して配置される。そして、正極導電シート43の一部が外装体41から引き出されて、正極引出端子431が形成される。また、組電池42の最上部に積層された単電池30の上面の負極樹脂集電体36には、負極導電シート44が接触して配置される。負極導電シート44の一部が外装体41から引き出されて、負極引出端子441が形成される。
【0087】
正極導電シート43及び負極導電シート44として、
図5等に示す測定治具2と同様の構成を有している。このとき、測定治具2の接続部221は、全て同電位になるように、互いに電気的に接続されている。このような正極導電シート43及び負極導電シート44を用いることで、組電池20の各単電池30の全ての単位領域Crに略均等に電流を流すことができる。これにより、電流集中を抑制することができる。
【0088】
なお、負極は接地電位等の基準電位であればよく、負極導電シート44としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等の材料を適宜選択して用いることができる。また、負極導電シート44としては、これらに限定されず、導電性を有する材料を広く採用することができる。
【0089】
次に、このようなバッテリーモジュール40の製造工程について図面を参照して説明する。
図8は、バッテリーモジュール40の製造方法を示すフローチャートである。
【0090】
図8に示すように、新たな単電池30の抵抗の測定を行う(ステップS101)。単電池30の抵抗の測定は、上述した測定装置100によって実行される。これにより、単電池30の単位領域Crごとの厚み方向の抵抗値が取得される。単電池30では、その製造誤差等によって単位領域Crの抵抗値がばらつくことがあり、抵抗のばらつきにより流れる電流がばらつく。ここで、電流値が他の部分よりも高くなることを電流集中と称する。
【0091】
例えば、抵抗が低すぎる単位領域Crがあると、その単位領域Crに電流集中が発生する。電流集中が発生する単位領域Crは、優先的に充放電が行われるため、充放電を繰り返すことによる劣化が他の単位領域Crに比べて早くなる。また、充放電時に流れる電流が大きくなるため、発熱量が多くなり、発熱による劣化も他の単位領域Crに比べて早くなる。結果として、単電池30の面内方向の劣化にばらつきが発生し、単電池30の充放電の効率が低下する。
【0092】
そこで、本実施形態にかかるバッテリーモジュールの製造方法では、単電池30の各単電池30の抵抗値が所定の範囲に入っているか否か確認する(ステップS102)。抵抗値が所定の範囲から外れている単位領域Crがある場合(ステップS102でNoの場合)、その単電池30は、不良品に分類する(ステップS103)。その後、不良品に分類された単電池30は、使用されないように管理する。そして、新たな単電池30の抵抗を測定する(ステップS101に戻る)。
【0093】
一方、全ての単位領域Crの抵抗値が所定の範囲内に収まっている場合(ステップS102でYesの場合)、その単電池30は良品に分類する(ステップS104)。このようにして分類された良品の単電池30のみを積層する(ステップS105)。単電池30が、決められた数(ここでは、4個)積層されたか確認する(ステップS106)。積層数が決められた数に到達していない場合(ステップS106でNoの場合)、新たな単電池30の抵抗の測定を行う(ステップS101に戻る)。
【0094】
単電池30が決められた数積層された場合(ステップS106でYesの場合)、単電池30を積層した組電池42に正極導電シート43及び負極導電シート44を取り付ける(ステップS107)。その後、正極導電シート43及び負極導電シート44が取り付けられた組電池42を外装体41の内部に収容し、外装体41を封止する(ステップS108)。
【0095】
以上示すように、バッテリーモジュール40を構成する組電池42を製造するときに、抵抗の面内方向のばらつきの少ない単電池30を用いることで、抵抗の面内方向のばらつきが少ない組電池42を製造することができる。
【0096】
このように、本実施形態にかかる測定装置100を用いることで単電池30の面内方向の抵抗分布を精度よく測定することができる。そして、面内方向の抵抗のばらつきが少ない単電池30を精度よく選別することができる。そして、面内方向の抵抗のばらつきが少ない単電池30を積層することで、電流集中が発生しにくい組電池42を製造することができる。
【0097】
<変形例等>
上述のバッテリーモジュール40の製造方法では、面内方向における抵抗のばらつきが少ない単電池30を積層して組電池42を製造していた。一方で、単電池30において、他の単位領域Crよりも抵抗が小さい(又は大きい)単位領域Crが積層方向に重なる場合がある。この場合、抵抗のばらつきが少ない単電池30を積層して組電池42を製造しても、電流集中が発生する虞がある。
【0098】
このような場合に備えて、積層する単電池30を厚み方向に延びる中心軸周りに所定角度回転させて、抵抗が高い又は低い単位領域Crが軸方向に重ならないようにする。このようにすることで、抵抗のばらつきが抑えられ、電流集中が抑制される。なお、回転角度は、単電池30の形状によって変わる。例えば、正方形状の場合、90°又は180°とすることができる。また、長方形状の場合180°とすることができる。回転角度は、単電池30の形状によって決まり、さらに詳しくは、回転させて積層される単電池30が厚み方向に完全に重なる角度を採用することができる。
【0099】
さらに、良品の単電池30のうち抵抗が高い又は低い単位領域Crがある単電池30を、その抵抗が高い又は低い単位領域Crごとにさらに細かく分類し、ある単位領域Crの抵抗値が高い単電池30が用いられた場合、積層したときに厚み方向に重なる単位領域Crの抵抗が低い単電池30を組み合わせるようにしてもよい。このように、単電池30を組み合わせて製造された組電池42は、抵抗のばらつきが抑えられ、電流集中が抑制される。
【0100】
また、バッテリーモジュール40の正極導電シート43及び負極導電シート44の少なくとも一方を、測定治具2と同様の形状とする場合もある。この場合において、測定装置100で、組電池42の面内方向の抵抗分布を測定し、抵抗値が低い部分に接続する測定配線23にチップ抵抗を取り付けて、抵抗のばらつきを抑制するようにしてもよい。このようにすることで、面内方向の抵抗のばらつきがより正確に抑制され、電流集中が発生しにくい。
【0101】
さらに他の例の測定治具2aについて図面を参照して説明する。
図9は、変形例の測定治具2aの平面図である。
図9に示すように、測定治具2aは補助タブ部24を有する。それ以外の点については
図2等に示す測定治具2と同じ構成を有する。そのため、測定治具2aの測定治具2と同じ部分については、同じ符号を付すとともに、同じ部分に詳細な説明は省略する。
【0102】
図9に示すように、測定治具2aは、補助タブ部24を有する。
図9に示すように、接触部21は、複数(ここでは、2つ)の補助タブ部24を有する。複数の補助タブ部24は、タブ部22に接続されている。
【0103】
そして、補助タブ部24には測定配線23の一部が配置される。測定配線23の主配線231の一部が補助タブ部24に配置される。さらに詳しく説明すると、測定領域Brの基準点210に接続する主配線231は、その測定領域Brに近い補助タブ部24に配線される。このように、測定配線23をこのように構成することで、測定配線23の長さ調整のための配線部分を短くできる。これにより、測定治具2aの製造が容易になるとともに、折り返して配置される配線を設けることによる、ノイズ等の影響を減らすことができる。結果として、測定精度を高めることが可能である。
【0104】
単電池30の抵抗分布を測定するとき、正極端子201及び負極端子202の接触圧力によって、抵抗分布がばらつくことがある。そこで、バッテリーモジュール40を製造する製造方向において、正極端子201及び負極端子202の単電池30に対する接触圧力が略一定になるように調整してもよい。この調整を行う製造工程について図面を参照して説明する。
図10は、バッテリーモジュール40の製造方法の他の例の一部を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、
図8に示すフローチャートのスタートとステップS101との間、さらに説明すると、ステップS103からの戻り又はステップS106でNoのときの戻りの後に実行される。
【0105】
単電池30に正極端子201及び負極端子202が接触されている状態で、正極端子201の測定治具2の接触部21の複数個所及び負極端子202の測定治具2の接触部21の複数箇所の接触圧力を測定する(ステップS201)。
【0106】
測定された全ての箇所の接触圧力が所定の範囲内に収まっているか否か確認する(ステップS202)。全ての箇所の接触圧力が所定の範囲内である場合(ステップS202でYesの場合)、ステップS101に進む。接触圧力が所定の範囲から外れている箇所がある場合(ステップS202でNoの場合)、端子保持部102の位置、角度等を調整する(ステップS203)。これにより、正極端子201の測定治具2の接触部21及び負極端子202の測定治具2の接触部21の接触圧力が調整される。
【0107】
なお、ステップS203において、端子保持部102を調整する場合、一対の端子保持部102の位置、角度をそれぞれ調整してもよいし、いずれか一方のみを調整してもよい。また、端子保持部102を部分的に接触圧力を調整できるように構成し、端子保持部102を調整して部分的に接触圧力を調整するようにしてもよい。
【0108】
そして、端子保持部102の調整を行った後(ステップS203の後)、再度、接触圧力を測定する(ステップS201に戻る)。
【0109】
このように、正極端子201及び負極端子202の測定治具2の接触部21の単電池30との接触圧力を一定の範囲内に収まるように調整することで。単電池30の電気抵抗をより正確に測定することができる。これにより、面内方向の抵抗のばらつきが少ない単電池30を積層することができ、電流集中が発生しにくい組電池42を製造することができる。
【0110】
なお、バッテリーモジュール40は、組電池42をカバー部412のみで覆う構成であってもよい。換言すると、バッテリーモジュール40において、外装体41は、ベース部411を省略した構成であってもよい。
【0111】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明にかかる測定治具は、例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池の製造時の治具として有用である。
【符号の説明】
【0113】
100 測定装置
1 制御部
11 定電圧回路
12 電流測定回路
13 処理回路
14 記憶回路
2、2a 測定治具
201 正極端子
202 負極端子
21 接触部
210 基準点
211 接触点
212 スルーホール
213 ランド
22 タブ部
221 接続部
23 測定配線
231 主配線
232 分岐配線
24 補助タブ部
3 測定対象物
30 単電池
31 正極
32 負極
33 セパレータ
34 正極樹脂集電体
35 正極活物質層
36 負極樹脂集電体
37 負極活物質層
38 枠部材
40 バッテリーモジュール
41 外装体
42 組電池
43 正極導電シート
431 正極引出端子
44 負極導電シート
441 負極引出端子
Ar 個別領域
Br 測定領域
Cr 単位領域
【要約】
【課題】測定対象物の面内方向の電圧、電流及び抵抗の少なくとも一つを測定して測定対象物の不具合を正確に検出することができる測定治具及び測定装置を提供すること。
【解決手段】板状の測定対象物の厚み方向の電流、電圧及び抵抗のいずれかを測定するための測定治具である。上記測定治具は、一方の上記集電体と接触する複数の接触点を有する接触部と、上記接触部と連結されて外部に配置された測定装置と接続する接続部を有するタブ部と、複数の上記接触点と上記接続部とを接続する複数の測定配線と、を有し、複数の上記測定配線の電気抵抗が等しい。
【選択図】
図5