(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】表皮材付き内装部品
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20230313BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B60R13/02 Z
(21)【出願番号】P 2018228643
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591028751
【氏名又は名称】株式会社豊和化成
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀和
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-220761(JP,A)
【文献】特開2018-144785(JP,A)
【文献】特開2016-087333(JP,A)
【文献】特開2011-143782(JP,A)
【文献】実開平04-007953(JP,U)
【文献】特開2007-145086(JP,A)
【文献】特開2004-129744(JP,A)
【文献】実開平06-079650(JP,U)
【文献】米国特許第6045173(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に外壁を備えた凹状のコア材と、コア材の表面を覆う一枚の表皮材と、コア材の裏面に取り付けられた内蓋とからなる内装部品であって、
表皮材の端縁部に樹脂製の芯材が縫い付けられており、コア材の外壁に隣接する位置に芯材を差し込むための差し込み溝が形成されており、表皮材の端縁部を折り返して芯材をこの差し込み溝に差し込み、
コア材のコーナー部
の表皮材には、表皮材の一部を突出させた突片が形成されており、この突片を引っ張りながらコア材の裏面に固定し、
表皮材の端縁部の全体を内蓋の端部で固定したことを特徴とする表皮材付き内装部品。
【請求項2】
芯材が、所定幅の樹脂バンドであることを特徴とする請求項1に記載の表皮材付き内装部品。
【請求項3】
表皮材の突片を半回転以上捻ってコア材の裏面に固定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の表皮材付き内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材の表面に表皮材を被せた自動車用の表皮材付き内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用コンソールボックスの蓋体などには、ほぼ四辺形のコア材の表面に表皮材を被せた表皮材付き内装部品が用いられている。このコア材は樹脂製であり、天板の周囲にコア材の裏面側に延びる外壁を備えたものである。表皮材は、表皮の裏面にウレタン層を形成してクッション性を持たせたものが一般的である。表皮材は袋状に縫製された状態でコア材の天板側から被せられ、表皮材の周縁部をコア材の外壁の裏面に折返し、固定されている。
【0003】
表皮材の周縁部をコア材の外壁の裏面に固定する手段としては、特許文献1に示されるように、金属製のタッカーが用いられることが多い。しかしタッカーを用い、コア材のコーナー部で表皮材にしわが発生しないように均一に固定するには、かなりの熟練を要するという問題があった。特にコーナー部の曲率半径が小さい部分では、表皮材に細かい切込みを入れる等の工夫を加えても、タッカーでうまく固定することができなかった。
【0004】
このほかに、表皮材の周縁部をコア材の外壁の裏面に固定する手段としては、接着剤も用いられている。しかし接着剤の乾燥には時間がかかるうえに、車内が高温になったときに接着強度が低下する可能性があり、耐久性に不安があった。
【0005】
そこで本発明者等は、表皮材の周縁部に一定幅の樹脂バンドを縫い付け、この樹脂バンドをコア材の外壁の内側に弾性的に折り返すことによって、タッカーや接着剤を用いることなく表皮材の周縁部をコア材の外壁の裏面に巻き込んで固定する技術を開発し、特許文献2として提案済みである。
【0006】
この技術は、表皮材が天面(メイン)と側面(マチ)のそれぞれを別の型紙でピース分けしたものを立体縫製したものであって、コア材のコーナー部の曲率半径が大きい場合には問題がなく、樹脂バンドを表皮材の外周端末に縫製することができる。しかし、表皮材がメインとマチとを縫製しない一枚の生地 による貼り込み仕様の場合には、コーナー部のコーナー部の型紙外周に屈曲させて樹脂バンドを縫製することができない。また仮にコア材のコーナー部の半径に平行した円弧状の型紙にて樹脂バンドを表皮材の外周端末に縫製したとしても、コーナー部の巻き込みで表皮材がしわになってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-087333号公報
【文献】特開2018-144785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、表皮材が天面と側面を縫製しない一枚の型形状であっても、しわを発生させずに表皮材が固定された表皮材付き内装部品を提供することである。また本発明の他の目的は、熟練した作業員でなくてもしわを発生させずに表皮材をコア材に取り付けることができるようにした技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するためになされた本発明は、周囲に外壁を備えた凹状のコア材と、コア材の表面を覆う表皮材と、コア材の裏面に取り付けられた内蓋とからなる内装部品であって、表皮材の端縁部に樹脂製の芯材が縫い付けられており、コア材の外壁に隣接する位置に芯材を差し込むための差し込み溝が形成されており、表皮材の端縁部を折り返して芯材をこの差し込み溝に差し込み、コア材のコーナー部の表皮材には、表皮材の一部を突出させた突片が形成されており、この突片を引っ張りながらコア材の裏面に固定し、表皮材の端縁部の全体を内蓋の端部で固定したことを特徴とするものである。
【0010】
なお請求項2のように、芯材を所定幅の樹脂バンドとすることができる。また請求項3のように、表皮材の突片を半回転以上捻ってコア材の裏面に固定した構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表皮材付き内装部品は、表皮材の端縁部をコア材の外壁に沿って折り返して樹脂製の芯材を差し込み溝に差し込んで固定するとともに、コア材のコーナー部では表皮材の端縁に形成された突片を内側に引張りながら、コア材の裏面に固定し、さらに表皮材の端縁部の全体を内蓋の端部で固定した構造である。このため、コーナー部の曲率半径が小さい場合にも、しわを発生させずに表皮材を固定することができる。
【0012】
また、熟練しない作業員であっても表皮材の端縁部の突片を内側に引っ張ることにより、確実に表皮材の取付作業を行うことができる。なお、コーナー部の曲率の程度や表皮材の肉厚などによっては、突片を半回転以上捩じってコア材の裏面に固定することで、表皮材のしわの発生を軽減できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の表皮材付き内装部品を示す斜視図である。
【
図2】表皮材を被せる前の樹脂製のコア材の底面図である。
【
図3】表皮材を被せる途中のコア材の裏面の斜視図である。
【
図4】直線部における表皮材端部の固定手順を示す断面図である。
【
図5】コーナー部における表皮材の突片の処理手順を示す斜視図である。
【
図6】コーナー部における突片の固定状態を示す断面図である。
【
図7】内蓋を取り付ける直前の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
この実施形態の表皮材付き内装部品はコンソールリッドであり、
図1に示すように樹脂製のコア材の表面を表皮材10により覆ったものである。コア材の材質としては比較的硬質のABS、PP等の樹脂が用いられ、表皮材10の材質としては比較的軟質の樹脂や皮革などが用いられる。
【0015】
図2は表皮材10を被せる前の樹脂製のコア材11の底面図、
図3は表皮材を被せる途中の状態におけるコア材の裏面の斜視図である。これらの図に示されるように、コア材11は天板12の周囲に外壁13を備えた凹状のものである。コア材11に対する表皮材10の固定はコア材11を上下反転させた
図2、
図3の状態で行われるので、
図2、
図3の状態に基づいて上下左右を説明する。
【0016】
図2に示すように、この実施形態のコア材11の外壁13は、上側の直線部13Aと、下側の直線部13Bと、左右の直線部13Cと、上側のコーナー部13Dと、下側のコーナー部13Eとからなる。
図1には表皮材10に覆われたコア材11の形状が示されているので、対応する部分に括弧を付けて符号を記入した。なお表皮材10は、
図1に示すように天面と側面とが一枚の生地で覆われていて、天面と側面は縫製をせずに単一1枚の生地をコア材11に貼り込みする仕様のものであり、また
図2に示されるように、上側のコーナー部13Dの曲率半径は大きいが、下側のコーナー部13Eの曲率半径は小さくなっている。
【0017】
図3に示すように、表皮材10の端縁部に樹脂製の芯材14が連続的に縫い付けられている。芯材14として、この実施形態では幅が5~10mmの一定幅で、厚さが0.5~2.0mm程度の樹脂バンドが用いられている。しかし表皮材10の端縁部に縫い付け可能であり、ある程度の剛性と可撓性を持つものであれば、芯材14は必ずしも樹脂バンドに限定されるものではない。
【0018】
図2、
図4に示すように、コア材11の外壁13に隣接する位置には、リブ15を突設形成し、外壁13との間に芯材14を差し込むための差し込み溝16が形成されている。具体的には、左右の直線部13Cでは差し込み溝16は外壁13のほぼ全長にわたり形成されているが、上側の直線部13Aと下側の直線部13Bでは差し込み溝16の長さは短く、上側のコーナー部13Dと下側のコーナー部13Eでは差し込み溝16が形成されていない部分がある。
【0019】
これらの直線部では、
図4(A)に示すように表皮材10の端縁部を芯材14とともにコア材11の外壁13に沿って弾性的に折り返し、樹脂製の芯材14を差し込み溝16に差し込む。また曲率半径の大きい上側のコーナー部13Dにおいても、同様に樹脂製の芯材14を差し込み溝16に差し込むことができる。差し込まれた芯材14は反発力により外側に拡がろうとするので、外壁13の内面に密着し、仮固定された状態となる。
【0020】
しかし下側のコーナー部13Eは外壁13がほぼ直角に折れ曲がり曲率半径が小さい上に、表皮材10が天面と側面とを縫製しない同一型紙の1枚生地で覆う仕様であるために、表皮材10の端縁部が直角形状であると、上側のコーナー部13Dのように芯材14を縫い付けることができない。仮にコーナー部の端縁部形状をコア材11のコーナー外周形状に平行な曲線形状にして芯材14を縫製しても、折返し時にしわになってしまう。そこで
図3、
図5に示すように、単一に1枚生地による貼り込み仕様で、曲率半径が小さいコーナー部では、表皮材10に突片17を形成し、この突片17を引っ張りながらコア材11の裏面に固定する構造を採用した。
【0021】
具体的には、
図5(A)に示すようにコーナー部の表皮材10に突片17を一体に形成しておくとともに、その両側から縦方向の切込み18と、表皮材10の左右の端縁に平行な横方向の切込み19とを入れる。そしてこれらに切込み18、19によって形成された表皮材10の左右の端部20、21を
図5(B)のように引張りながら重ね合わせて、縫い合わせれば、立体縫製された形状になり、端縁部外周に連続して芯材14を縫うことができるようになる。そしてこの表皮材10をコア材11に被せたうえ
図5(C)のようにコア材11のコーナー部の外壁13の内側に折り返す。その後、
図5(D)に示すように表皮材10の突片17を内側に引っ張るが、図示のようにコーナー部の曲率半径の程度や表皮材の肉厚などによっては、突片17を半回転以上捩じりながら引っ張ることによって、表皮材10のコーナー部に均等な張力を加え、表皮材10にしわが発生することを効果的に抑制することもできる。
【0022】
突片17の先端22は、コア材11の裏面に固定する。その様子を
図6(A)に示す。固定手段は、コア材11の材質がABS樹脂であればタッカーでもよいが、PP樹脂の場合には超音波溶着とすることが好ましい。突片17は張力を加えながら固定するため、接着剤はあまり好ましくない。この状態を
図7に示した。
【0023】
その後、コア材11の裏面に内蓋23を取り付け、外壁13の上面を内蓋23の端部で固定する。直線部は
図4(B)に示す通りであり、コーナー部は
図6(B)に示す通りである。
図6(B)では内蓋23の裏面に突片17を抑えるための固定用突起24を設けたが、これは省略することもできる。このように表皮材10の端縁部の全体を内蓋23の端部で押さえれば、芯材14が直線部用差し込み溝から抜け出すことはなく、表皮材10の端縁部は全周にわたり、コア材11の外壁13に確実に固定される。
【0024】
以上に説明した通り、本願発明によれば、表皮材10が天面と側面とを縫製しない一枚生地での貼り込み仕様で、コア材11の外壁13のコーナー部の曲率半径が小さい場合にも、しわを発生させずに表皮材10が固定された表皮材付き内装部品を提供することができる。また本発明によれば、熟練者でなくてもしわを発生させずに表皮材10をコア材11に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 表皮材
11 コア材
12 天板
13 外壁
14 芯材
15 リブ
16 差し込み溝
17 突片
18 縦方向の切込み
19 横方向の切込み
20 端部
21 端部
22 突片の先端
23 内蓋
24 固定用突起