(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】補修材料及び補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20230313BHJP
E01C 7/10 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
E01C23/00 Z
E01C7/10
(21)【出願番号】P 2019185784
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519364288
【氏名又は名称】株式会社コニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100114672
【氏名又は名称】宮本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】網野 茂浩
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-152561(JP,A)
【文献】特開2008-050753(JP,A)
【文献】特開2005-054416(JP,A)
【文献】特開2018-162597(JP,A)
【文献】特開平03-244701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 21/00-23/24
E01C 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料であって、
前記補修材料は、バーナーで溶かし、前記損傷箇所に滴下し充填して使用するものであり、
砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後
、冷却し型枠に入れて
、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの棒状に固め、前記固めた材料を前記型枠から取り出して形成する、
ことを特徴とする棒状の補修材料。
【請求項2】
競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料であって、
前記補修材料は、前記損傷箇所に充填し、バーナーで溶かして使用するものであり、
砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、前記固めた材料を前記容器から取り出した後、
粒径が略0.5mm~2.5mmの粒状に粉砕して形成
し、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの容器に収容する、
ことを特徴とする粒状の補修材料。
【請求項3】
競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修方法であって、
砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後
、冷却し型枠に入れて
、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの棒状に固め、前記固めた材料を前記型枠から取り出して形成した棒状の補修材料を前記損傷箇所に持ち込む工程と、
前記棒状の補修材料の先端部をバーナーで加熱して熔解する工程と、
前記熔解した補修材料を前記損傷箇所に
滴下して充填する工程と、
前記充填した補修材料の表面を平坦にする工程と、を有する、
ことを特徴とする補修方法。
【請求項4】
競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修方法であって、
砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、前記固めた材料を前記容器から取り出した後、
粒径が略0.5mm~2.5mmの粒状に粉砕して形成した粒状の補修材料を
、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの容器に収容して前記損傷箇所に持ち込む工程と、
前記容器に収容した前記粒状の補修材料を前記損傷箇所に充填する工程と、
前記充填した補修材料をバーナーで加熱して熔解する工程と、
前記熔解した補修材料の表面を平坦にする工程と、を有する、
ことを特徴とする補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修材料及び補修方法に関し、特に、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料及び当該補修材料を用いたバンクの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バンクは、競輪場で選手がレースを行うアスファルト等で舗装された競争路であり、カーブでもスピードを落とさずに走れるように、カントと呼ばれる傾斜がつけられている。このバンクは、自転車やバイクの転倒などによって部分的に損傷する場合があり、損傷箇所を放置すると、その後のレースで自転車やバイクのタイヤが損傷箇所にはまってハンドルがとられてしまうなどの問題が生じる。
【0003】
このように、バンクは頻繁に損傷するため、損傷箇所を補修する必要があるが、上述したようにバンクには傾斜が付けられていることから、一般の道路の補修とは異なる特殊な装置を用いて行われる。例えば、下記特許文献1には、前部と後部夫々の下面の左右にタンデム式車輪を夫々装備した車体下面の略中央部に、斜面を切削部材で切削する切削盤を支持させ、各タンデム式車輪は、前後に並列されたキャスターを、車体前後方向に延びる揺動支持部材の両端部に取り付け、該揺動支持部材の両端部間中央部を回動軸部材により車体側に回動自由に支持して構成した斜面用切削機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンクの形状やカントに応じた大型の装置を用い、「アスファルト・プラント」と呼ばれる加熱装置内でアスファルト混合物を加熱・混合して流動化した補修材料を使用して補修する場合、装置を搬入して損傷箇所を補修し、その後、装置を撤去するのに時間がかかる。また、この方法では、流動化した補修材料が冷えて固まるまでに時間がかかる。
【0006】
そのため、従来の方法では、レース間の30分程度のわずかな時間に損傷箇所を補修することができず、バンクが損傷した状態でレースを続行しなければならないという問題があった。また、大型の装置では、広い面積を補修するため、部分的な損傷であっても補修コストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、バンクの部分的な損傷箇所を短時間かつ簡便に補修することができる補修材料及び補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料であって、前記補修材料は、バーナーで溶かし、前記損傷箇所に滴下し充填して使用するものであり、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却し型枠に入れて、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの棒状に固め、前記固めた材料を前記型枠から取り出して形成することを特徴とする。
【0009】
本発明の一側面は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料であって、前記補修材料は、前記損傷箇所に充填し、バーナーで溶かして使用するものであり、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、前記固めた材料を前記容器から取り出した後、粒径が略0.5mm~2.5mmの粒状に粉砕して形成し、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの容器に収容することを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修方法であって、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却し型枠に入れて、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの棒状に固め、前記固めた材料を前記型枠から取り出して形成した棒状の補修材料を前記損傷箇所に持ち込む工程と、前記棒状の補修材料の先端部をバーナーで加熱して熔解する工程と、前記熔解した補修材料を前記損傷箇所に滴下して充填する工程と、前記充填した補修材料の表面を平坦にする工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一側面は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修方法であって、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、前記容器を加熱して前記ブローンアスファルトを溶かし、前記材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、前記固めた材料を前記容器から取り出した後、粒径が略0.5mm~2.5mmの粒状に粉砕して形成した粒状の補修材料を、補修作業者が手で持ち運び可能なサイズの容器に収容して前記損傷箇所に持ち込む工程と、前記容器に収容した前記粒状の補修材料を前記損傷箇所に充填する工程と、前記充填した補修材料をバーナーで加熱して熔解する工程と、前記熔解した補修材料の表面を平坦にする工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の補修材料及び補修方法によれば、バンクの部分的な損傷箇所を短時間かつ簡便に補修することができる。
【0013】
その理由は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料として、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、容器を加熱してブローンアスファルトを溶かし、材料を攪拌して均一にした後、略40℃に冷却し型枠に入れて所定のサイズの棒状に固め、固めた材料を型枠から取り出して形成した棒状の補修材料を用い、その棒状の補修材料を損傷箇所に持ち込み、棒状の補修材料の先端部をバーナーで加熱して熔解し、熔解した補修材料を損傷箇所に充填し、充填した補修材料の表面を平坦にすることによって、損傷箇所を補修するからである。
【0014】
又、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料として、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、容器を加熱してブローンアスファルトを溶かし、材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、固めた材料を容器から取り出した後、所定の粒径の粒状に粉砕して形成した粒状の補修材料を用い、その粒状の補修材料を損傷箇所に持ち込み、粒状の補修材料を損傷箇所に充填し、充填した補修材料をバーナーで加熱して熔解し、熔解した補修材料の表面を平坦にすることによって、損傷箇所を補修するからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る棒状の補修材料を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る棒状の補修材料の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係る棒状の補修材料を用いたバンクの補修方法を示すフローチャート図である。
【
図4】本発明の第2の実施例に係る粒状の補修材料を示す模式図である。
【
図5】本発明の第2の実施例に係る粒状の補修材料の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図6】本発明の第2の実施例に係る粒状の補修材料を用いたバンクの補修方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
競輪場には、選手がレースを行うアスファルト等で舗装されたバンクが設けられている。
図7(a)は、競輪場のバンクを示す模式図であり、競輪場のバンクでは、レース中の最高速度が時速70km程度に達することもあり、そのスピードで曲がろうとすると大きな遠心力が働くため落車してしまう。そこで、高速で走りながら遠心力に対して自転車をまっすぐに立てることで高速に曲がることができるように、
図7(b)に示すように、バンクにはカントと呼ばれる傾斜がつけられている。
【0017】
競輪場のバンクは、長さに応じて、333mバンク、400mバンク、500mバンクなどがあり、カントは、基本的に直線部分では2~4度、コーナー部分では25~35度程度であり、競輪場によって形や形状が異なっている。
【0018】
ここで、バンクは、自転車やバイクの転倒などによって部分的に損傷する場合があり、損傷箇所を放置すると、その後のレースで自転車やバイクのタイヤが損傷箇所にはまってハンドルがとられてしまうなどの問題が生じる。そこで、通常は、バンクの形状やカントに応じた大型の装置を用い、加熱装置内でアスファルト混合物を加熱・混合して流動化した補修材料を使用して補修を行っている。
【0019】
しかしながら、大型の装置では、装置を搬入して損傷箇所を補修し、その後、装置を撤去するまでに時間がかかり、また、流動化した補修材料が固化するまでに時間がかかるため、レース間の30分程度のわずかな時間に損傷箇所を補修することができないという問題があった。また、大型の装置では、広い面積を補修するため、部分的な損傷であっても補修コストが高くなってしまうという問題があった。
【0020】
そこで、本発明の一実施の形態では、大型の装置を用いてバンク全体を補修するのではなく、損傷箇所のみに適切に補修材料を塗設して効率的に補修できるように、補修材料を棒状又は粒状に加工する。そして、棒状の補修材料をバーナー等で加熱して損傷箇所に充填したり、粒状の補修材料を損傷箇所に充填してバーナー等で加熱したりして、損傷箇所を補修する。
【0021】
具体的には、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、容器を加熱してブローンアスファルトを溶かし、材料を攪拌して均一にした後、略40℃に冷却し型枠に入れて所定のサイズの棒状に固め、固めた材料を型枠から取り出して形成した棒状の補修材料を用い、その棒状の補修材料を損傷箇所に持ち込み、棒状の補修材料の先端部をバーナーで加熱して熔解し、熔解した補修材料を損傷箇所に充填し、充填した補修材料の表面を平坦にすることによって、損傷箇所を補修する。
【0022】
又、砂とブローンアスファルトと石灰とを混合した材料を容器に収容し、容器を加熱してブローンアスファルトを溶かし、材料を攪拌して均一にした後、冷却して固め、固めた材料を容器から取り出した後、所定の粒径の粒状に粉砕して形成した粒状の補修材料を用い、その粒状の補修材料を損傷箇所に持ち込み、粒状の補修材料を損傷箇所に充填し、充填した補修材料をバーナーで加熱して熔解し、熔解した補修材料の表面を平坦にすることによって、損傷箇所を補修する。
【0023】
このように、棒状又は粒状の補修材料を損傷箇所に持ち運んだ後、その場で加熱して塗設することにより、レース間の短い時間であっても損傷箇所を確実に補修することができる。また、大型の装置を使用しないため、補修にかかる費用を安価にすることができる。
【0024】
なお、アスファルト道路の補修に一般的に使用される補修材料を用いて、損傷箇所を部分的に補修する方法が考えられる。例えば、圧力をかけることによって固化する補修材料や、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の乳化剤を用いて乳化した補修材料、溶剤を混合した補修材料(カットバック・アスファルト)などを用いる方法が考えられるが、競輪場のバンクは通常の道路とは異なり、硬度や平坦性が均一であることが求められ、補修した部分で硬度や平坦性が変化するとレースに影響を与える。また、上述したように、損傷箇所は短時間で補修しなければならない。
【0025】
このような競輪場の特徴を考慮すると、上記の補修材料は、硬度や平坦性が変化する可能性があるため、バンクの補修材料として好ましくない。また、乳化剤を用いて乳化した補修材料は、アスファルトが水と分離して材料が固化するまでに時間がかかり、また、溶剤を混合した補修材料は、溶剤が気化して材料が固化するまでに時間がかかるため、バンクの補修材料として好ましくない。
【実施例1】
【0026】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る補修材料及び補修方法について、
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は、本実施例の棒状の補修材料の一例を示す模式図である。また、
図2は、本実施例の棒状の補修材料の製造方法を示すフローチャート図であり、
図3は、本実施例の棒状の補修材料を用いたバンクの補修方法を示すフローチャート図である。
【0027】
図1に示すように、本実施例の棒状の補修材料(商品名:バンクパッチ)は、競輪場のバンクの損傷箇所の補修に使用されるものである。具体的には、断面が4cm×4.5cm、長さが16cm~17cm程度の角柱状などの棒状のアスファルト混合物からなり、補修作業者が手で持ち運んで使用される。この補修材料は、砂とアスファルトと石灰とを含む。
【0028】
ここで、アスファルトは、一般的に、ストレート・アスファルト(straight asphalt)とブローンアスファルト(blown asphalt)と舗装用改質アスファルトなどに分類される。
【0029】
ストレート・アスファルトは、減圧蒸留装置からの分留された減圧残油をそのまま使用したものである。
【0030】
ブローンアスファルトは、石油精製時にできる減圧残油(ストレート・アスファルト)に重質油を混ぜたものを加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって固さを増したものである。通常のアスファルトは、常温では粘性の高い液状をしているが、ブローンアスファルトの場合、常温では固体を保っている。
【0031】
舗装用改質アスファルトは、ストレート・アスファルトを改質して特性を高めたものであり、添加物を加えるものとブローイングを行なうものとがある。添加物としては、ゴム(スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム)、熱可塑性エラストマー(スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブテン共重合体)、熱可塑性樹脂(エチレン、酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン)などが挙げられる。また、ブローイングを行なうものとして、ストレート・アスファルトより軽めの油にブローンアスファルトよりは軽度に高温の空気を吹き込み製造されるセミブローン・アスファルトなどがある。
【0032】
本実施例の補修材料に使用するアスファルトは、常温で固体とすることから、ブローンアスファルトが好ましく、特に、石油アスファルトを加熱して空気を吹き込み、酸化、脱水素、縮重合させることによって固さを増したブローンアスファルト10/20が好ましい。
【0033】
以下、本実施例の棒状の補修材料の製造方法について、
図2のフローチャート図を参照して説明する。
【0034】
まず、振るいにかけて乾燥させた砂(10kg)と、ブローンアスファルト(例えば、エネオス社製の甲ブローンアスファルト10/20:1.5~2kg)と、石灰(例えば、秩父石灰社製の生石灰(酸化カルシウム、CaO)または消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2):30g)と、からなるアスファルト混合物を用意し、このアスファルト混合物を、内部に所定のサイズの角柱状又は円柱状の空間を有する耐火容器(例えば、鉄箱)に入れる(S101)。
【0035】
次に、鉄箱をバーナーなどで145℃~175℃程度に加熱し、甲ブローンアスファルトを溶かして攪拌し(S102)、アスファルト混合物が均一になったら加熱を止め、略40℃(甲ブローンアスファルトがある程度の柔らかさを保つ温度)まで自然冷却し、粒状材料を型枠に入れてアスファルト混合物を所定のサイズの棒状に固め(S103)、常温に戻ったら、固まったアスファルト混合物を型枠から取り出し(S104)、本実施例の棒状の補修材料が完成する。
【0036】
なお、砂とアスファルトと石灰の混合比は適宜変更可能であるが、アスファルトが多いと、アスファルト混合物が完全に固まらずに補修材料が柔らかくなってしまい、アスファルトが少ないと、補修材料が脆くなってしまうことから、上述した混合比程度にすることが好ましい。
【0037】
また、本実施例では、砂とアスファルトと石灰とを混合しているが、バンクの補修に支障がない限りにおいて、他の物質を混合してもよい。
【0038】
また、棒状の補修材料のサイズや形状は一例であり、補修作業者が手で持って作業できるサイズや形状であればよい。例えば、断面の周長が徐々に変化する(徐々に細く/又は太くなる)形状や、長手方向の一部で断面の周長が変化する(部分的に細く/又は太くなる)形状などとすることができる。
【0039】
以下、上記方法で製造した棒状の補修材料を用いた損傷箇所の補修方法について、
図3のフローチャート図を参照して説明する。
【0040】
まず、補修作業者は、棒状の補修材料を損傷箇所に持ち込む(S111)。ここで、ミキサーなどの加熱装置で加熱・混合して流動化した補修材料を使用する場合、その補修材料を損傷箇所に運搬するためには大がかりな装置が必要であったが、本実施例の補修材料は常温かつ片手で持ち運び可能なサイズに加工されているため、簡便に補修材料を損傷箇所に持ち込むことができる。
【0041】
次に、棒状の補修材料の先端をバーナーなどで炙って溶かす(S112)。その際、本実施例の棒状の補修材料は片手で保持することができるため、他方の手でバーナーを操作することができ、補修材料を溶かす作業を容易に行うことができる。
【0042】
次に、溶かした補修材料を損傷箇所に滴下して充填する(S113)。ここで、高温かつ流動化した補修材料を使用する場合、損傷箇所に適切な量の補修材料を充填することが難しく、量が少ないと損傷箇所を完全に埋めることができず、量が多いと補修後に余分な補修材料を除去する必要があったが、本実施例では、バーナーで炙って溶けた補修材料を滴下するため、損傷箇所に適切な量の補修材料を充填することができる。
【0043】
次に、充填した補修材料を左官コテなどでならし、損傷箇所を平らにする(S114)。その際、本実施例の補修材料は容易に継ぎ足すことができるため、損傷箇所の平坦状態を確認しながら補修を行うことができ、損傷箇所を十分に平らに補修することができる。
【0044】
このように、本実施例では、棒状の補修材料の先端をバーナーで炙って溶かしながら損傷箇所に充填するだけであり、補修材料が固まったら補修作業が完了するため、レース間の30分程度の短い時間であっても損傷箇所を確実に補修することができる。
【0045】
また、補修材料に水が混入すると補修した部分の硬度が変化するため、バンク全体を補修する従来の方法では、バンクが濡れているときは補修を行うことができなかったが、本実施例の方法では、損傷箇所のみを乾燥させればよいため、バンクが濡れている場合であっても補修を行うことができる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の第2の実施例に係る補修材料及び補修方法について、
図4乃至
図6を参照して説明する。
図4は、本実施例の粒状の補修材料の一例を示す模式図である。また、
図5は、本実施例の粒状の補修材料の製造方法を示すフローチャート図であり、
図6は、本実施例の粒状の補修材料を用いたバンクの補修方法を示すフローチャート図である。
【0047】
図4に示すように、本実施例の粒状の補修材料(商品名:バンクパッチ)は、競輪場のバンクの損傷箇所の補修に使用されるものである。具体的には、粒径が0.5mm~2.5mm程度の粒状のアスファルト混合物からなり、補修作業者が運搬用の容器に入れて手で持ち運んで使用される。
【0048】
このアスファルト混合物は、第1の実施例と同様に、砂とアスファルトと石灰とを含む。なお、本実施例のアスファルト混合物に使用するアスファルトは、常温で固体とすることから、ブローンアスファルトが好ましく、特に、石油アスファルトを加熱して空気を吹き込み、酸化、脱水素、縮重合させることによって固さを増したブローンアスファルト10/20が好ましい。
【0049】
以下、本実施例の粒状の補修材料の製造方法について、
図5のフローチャート図を参照して説明する。
【0050】
まず、振るいにかけて乾燥させた砂(10kg)と、ブローンアスファルト(例えば、エネオス社製の甲ブローンアスファルト10/20:1.5~2kg)と、石灰(例えば、秩父石灰社製の生石灰(酸化カルシウム、CaO)または消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2):30g)と、からなるアスファルト混合物を用意し、このアスファルト混合物を所定のサイズの耐火容器(例えば、鉄箱)に入れる(S201)。
【0051】
次に、鉄箱をバーナーなどで145℃~175℃程度に加熱し、甲ブローンアスファルトを溶かして攪拌し(S202)、アスファルト混合物が均一になったら加熱を止めて自然冷却し、常温に戻ったら鉄箱から固形状のアスファルト混合物を取り出す(S203)。
【0052】
次に、固形状のアスファルト混合物をハンマーなどで粉砕して、粒径が0.5mm~2.5mm程度の粒状にし(S204)、所定の粒径に粉砕したアスファルト混合物を運搬用の容器に収容して(S205)、本実施例の粒状の補修材料が完成する。
【0053】
なお、第1の実施例と同様に、砂とアスファルトと石灰の混合比は適宜変更可能であるが、アスファルトが多いと、アスファルト混合物が完全に固まらずに補修材料が柔らかくなってしまい、アスファルトが少ないと、補修材料が脆くなってしまうことから、上述した混合比程度にすることが好ましい。
【0054】
また、本実施例では、砂とアスファルトと石灰とを混合しているが、第1の実施例と同様に、バンクの補修に支障がない限りにおいて、他の物質を混合してもよい。
【0055】
また、粒状の補修材料の粒径は適宜変更可能であるが、粒径が大きいと、損傷箇所に充填しにくくなったり、バーナーで溶かしにくくなったり、補修した部分の表面に凹凸が残ったりする。また、粒径が小さいと、粉砕に手間がかかったり、バーナーで炙る際に飛ばされやすくなったりすることから、上述した粒径程度にすることが好ましい。
【0056】
また、補修材料の粒径は必ずしも均一である必要はなく、粒状の補修材料の大部分が上述した粒径程度であればよい。すなわち、一部の粒の粒径が上述した粒径から外れていても問題はない。
【0057】
次に、上記方法で製造した粒状の補修材料を用いた損傷箇所の補修方法について、
図6のフローチャート図を参照して説明する。
【0058】
まず、補修作業者は、運搬用の容器に収容した粒状の補修材料を損傷箇所に持ち込む(S211)。ここで、ミキサーなどの加熱装置で加熱・混合して流動化した補修材料を使用する場合、その補修材料を損傷箇所に運搬するためには大がかりな装置が必要であったが、本実施例の補修材料は手で持ち運び可能なサイズの運搬用の容器に収容されているため、簡便に補修材料を損傷箇所に持ち込むことができる。
【0059】
次に、粒状の補修材料を損傷箇所に充填する(S212)。ここで、高温かつ流動化した補修材料を使用する場合、損傷箇所に適切な量の補修材料を充填することが難しく、量が少ないと損傷箇所を完全に埋めることができず、量が多いと補修後に余分な補修材料を除去する必要があったが、本実施例の補修材料は常温かつ粒状であるため、損傷箇所に適切な量の補修材料を充填することができる。
【0060】
次に、損傷箇所に充填した補修材料をバーナーで溶かす(S213)。その際、本実施例の補修材料は粒状であり、バーナーで容易に溶かすことができる。
【0061】
次に、溶かした補修材料を左官コテなどでならし、損傷箇所を平らにする(S214)。その際、本実施例の補修材料は容易に継ぎ足すことができるため、損傷箇所の平坦状態を確認しながら補修を行うことができ、損傷箇所を十分に平らに補修することができる。
【0062】
このように、本実施例では、粒状の補修材料を損傷箇所に充填しバーナーで炙って溶かすだけであり、補修材料が固まったら補修作業が完了するため、レース間の30分程度の短い時間であっても損傷箇所を確実に補修することができる。
【0063】
また、本実施例の方法では、損傷箇所のみを乾燥させればよいため、バンクが濡れている場合であっても補修を行うことができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、補修材料の構成や補修方法は適宜変更可能である。
【0065】
例えば、第1の実施例では棒状の補修材料を用い、第2の実施例では粒状の補修材料を用いたが、常温かつ補修作業者が手で取り扱うことが可能な形状であればよい。例えば、棒状の補修材料は、断面が六角柱や八角柱、円柱などの形状とすることが可能である。
【0066】
また、上記各実施例では、競輪場のバンクの補修に関して説明したが、アスファルトで形成された任意のバンクに対して、本発明の補修材料及び補修方法を同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、競輪場のバンクの損傷箇所を補修する補修材料及び当該補修材料を用いたバンクの補修方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 棒状の補修材料
20 粒状の補修材料