(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】内燃機関の消音器及び吸音シート
(51)【国際特許分類】
F01N 1/24 20060101AFI20230313BHJP
F01N 1/04 20060101ALI20230313BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230313BHJP
D03D 15/242 20210101ALI20230313BHJP
D03D 15/513 20210101ALI20230313BHJP
【FI】
F01N1/24 A
F01N1/24 F
F01N1/04 E
D03D1/00 Z
D03D15/242
D03D15/513
(21)【出願番号】P 2019234069
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029735
【氏名又は名称】日本グラスファイバー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】新井 松男
(72)【発明者】
【氏名】服部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】小寺 和男
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-324641(JP,A)
【文献】特開2000-240426(JP,A)
【文献】特開2008-121460(JP,A)
【文献】特開平7-157944(JP,A)
【文献】特開2006-194345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/00
D03D 1/00、15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の消音器(10)に配設する吸音シート(1)であって、
シート幅方向に延びるバルキーのかかった無機繊維ロービングからなる緯糸(2)と、シート長方向に延びる経糸(3)とを含み、
緯糸(2)のシート幅方向の少なくとも両端部は、経糸(3)と織られて端織布部(4)を形成しており、各端織布部(4)の幅(w1)はシート幅(W)の1/4以下であり、
緯糸(2)のシート幅方向の一部は、経糸(3)と織られていない非織部(6)となっていることを特徴とする吸音シート。
【請求項2】
緯糸(2)のシート幅方向の両端は、切断されていない連続した折り返し端(7)である請求項1記載の吸音シート。
【請求項3】
緯糸(2)のシート幅方向の中間の一部は、経糸(3)と織られて中間織布部(5)を形成しており、中間織布部(5)の幅はシート幅の1/3以下である請求項1又は2記載の吸音シート。
【請求項4】
中間織布部(5)は、緯糸(2)のシート幅方向の中央にある請求項3記載の吸音シート。
【請求項5】
緯糸(2)のシート幅方向の中間の一部には、縫製糸で縦方向に縫われた中間縫製部(15)が形成されている請求項1又は2記載の吸音シート。
【請求項6】
中間縫製部(15)は、緯糸(2)のシート幅方向の中央にある請求項5記載の吸音シート。
【請求項7】
中間縫製部(15)は、伸張性のある縫製糸で縫われた請求項5又は6記載の吸音シート。
【請求項8】
中間縫製部(15)は、伸張性のある縫い目に縫われた請求項5、6又は7記載の吸音シート。
【請求項9】
緯糸(2)のシート幅方向の中間は、すべて非織部(6)である請求項1又は2記載の吸音シート。
【請求項10】
無機繊維ロービングは、付着した収束剤が1.5質量%以下であり、それ以外に有機分を含んでいない請求項1~9のいずれか一項に記載の吸音シート。
【請求項11】
インナーパイプ(11)と、アウターパイプ(12)と、インナーパイプ(11)とアウターパイプ(12)との間に巻回状に配設された請求項1~10のいずれか一項に記載の吸音シート(1)とを含み、アウターパイプ(12)の両端がインナーパイプ(11)に溶接されていることを特徴とする内燃機関の消音器。
【請求項12】
吸音シート(1)は、折り重ねることにより厚さを増したうえで巻回状に配設されている請求項11記載の内燃機関の消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の消音器及びそれに配設する吸音シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の消音器のインナーパイプとアウターパイプの間には、無機繊維からなる吸音材が配設される。従来の無機繊維からなる吸音材としては、グラスウールマットを巻回して形成したもの、グラスウールを筒状に成形したもの、ガラス長繊維を袋に詰め込んだもの(特許文献1)等、種々のものがあり、ガラス繊維ロービングを用いることも開示されている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-170315号公報
【文献】特開2007-182878号公報
【文献】特表2013-519037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の無機繊維からなる吸音材には、次の問題があった。
・排気ガス圧によって、消音器内における無機繊維に偏りが生じることがあった。偏りが発生すると、吸音性能が劣化しやすく、長時間による品質変動が大きくなる。
・インナーパイプとアウターパイプを溶接にて一体化する作業において、溶接部に吸音材の無機繊維がはみ出ていると、溶着不良の原因となっていた。また、溶着設備の故障原因にも繋がりかねない。
・無機繊維に有機分を混ぜることがあるが、有機分が多量に含まれていると、使用環境下で有機分が気化し、発煙や異臭の原因となっていた。ハイドロカーボンの付着等からも好ましくない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、消音器内における無機繊維の偏りを生じにくくし、長期にわたり優れた吸音性能を安定して得るとともに、無機繊維の溶接部へのはみ出しをなくして溶接不良を防止することにある。さらに好ましくは、有機分の気化を低減し、発煙や異臭を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、無機繊維ロービングを用いることを検討し、バルキーのかかった無機繊維ロービングが有望であることを見出したが、バルキーのかかった無機繊維ロービングのみでは、溶接部に繊維がはみ出しやすく、手作業にて修復が必要となり、連続生産に支障が生じやすいことが分かった。また、バルキーのかかった無機繊維ロービングを織って織布にすることも検討したが、繊維間の拘束によって、吸音性能が低下しやすいことが分かった。これらを基にさらに検討を重ねて、本発明に至った。
【0007】
[1]吸音シート
内燃機関の消音器に配設する吸音シートであって、
シート幅方向に延びるバルキーのかかった無機繊維ロービングからなる緯糸と、シート長方向に延びる経糸とを含み、
緯糸のシート幅方向の少なくとも両端部は、経糸と織られて端織布部を形成しており、各端織布部の幅はシート幅の1/4以下であり、
緯糸のシート幅方向の一部は、経糸と織られていない非織部となっていることを特徴とする吸音シート。
【0008】
<作用>
(ア)吸音シートは、バルキーのかかった無機繊維ロービングの両端部が端織布部の経糸で拘束されているため、これを巻設して消音器に偏り少なく配設できるとともに、耐排気ガス圧性に優れ、長時間使用でも無機繊維の偏りを防止できる。また、バルキーのかかった無機繊維ロービングは、特に非織部で拘束されずに嵩高に存在するため、吸音性が高い。これらによって、長期にわたり優れた吸音性能が安定して得られる。
(イ)また、無機繊維ロービングの両端部が端織布部の経糸で拘束されているため、吸音シートを消音器に配設するときに、無機繊維の溶接部へのはみ出しがなくなり溶接不良を防止することができる。
(ウ)端織布部はシート長方向に伸張性がないが、非織部はシート長方向に伸張性がある。よって、インナーパイプの外周面に起伏(径差や湾曲)があっても、それに追従して非織色部が伸張するため、吸音シートをインナーパイプに巻設しやすい。
【0009】
ここで、緯糸のシート幅方向の両端は、切断されていない連続した折り返し端であることが好ましい。無機繊維の毛羽が無くなり、溶接不良をより確実に防止することができるからである。
このような緯糸の両端が折り返し端である吸音シートは、杼(ひ:シャットル)の往復運動により緯糸を飛ばす有杼織機、または杼を使用しない細幅ニードル織機等の無杼織機にて経糸の取付位置を調整することで製作することができる。
細幅ニードル織機の場合、シート幅方向の両端にバインダー糸を絡ませることもできる。絡ませたバインダー糸を熱溶着することで、吸音シートの両端部を固定することもできる。バインダー糸を使用する場合は、ポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂からなる糸が、加熱時の有害ガスが少なく望ましい。バインダー糸の代わりに金属製の糸を絡ませることで、端部の強度を補強することもできる。その場合の金属製の糸は、ステンレスや鉄・クロム合金等の耐熱合金からなる糸が望ましい。
【0010】
緯糸のシート幅方向の中間について、次の態様(a)(b)(c)を含む。
(a)緯糸のシート幅方向の中間の一部は、経糸と織られて中間織布部を形成しており、中間織布部の幅はシート幅の1/3以下である態様。
消音器への配設時および使用時に、無機繊維の偏りをより確実に防止できる。
中間織布部は、緯糸のシート幅方向の中央にあることが好ましい。吸音シートを中間織布部で折って、折り重ねやすいからである。
なお、中間織布部はシート長方向に伸張性がなく、非織部の伸張性を低下させる。但し、インナーパイプの外周面に起伏が無い又は小さい場合には、問題なく適用できる。
【0011】
(b)緯糸のシート幅方向の中間の一部には、縫製糸でシート長方向に縫われた中間縫製部が形成されている態様。
縫製糸が溶融する場合には消音器への配設時に、縫製糸が溶融しない場合には消音器への配設時および使用時に、無機繊維の偏りをより確実に防止できる。
中間縫製部は、緯糸のシート幅方向の中央にあることが好ましい。吸音シートを中間縫製部で折って、折り重ねやすいからである。
なお、中間縫製部には、シート長方向に伸張性がない場合と、後述するように伸張性のある縫製糸及び/又は伸張性のある縫い目によって、シート長方向に伸張性がある場合とがある。
【0012】
(c)緯糸のシート幅方向の中間は、すべて非織部である態様。すなわち、中間には、中間織布部も中間織布部も形成されていない。
この態様でも、消音器への配設時および使用時に、無機繊維の偏りを一定以上は防止できる。
そして、インナーパイプの外周面に大きい起伏がある場合にも、適用できる。
【0013】
無機繊維ロービングは、付着した収束剤が1.5質量%以下であり、それ以外に有機分を含んでいないことが好ましい。加熱時に排ガスが極めて少ないからである。
【0014】
[2]内燃機関の消音器
インナーパイプと、アウターパイプと、インナーパイプとアウターパイプとの間に巻回状に配設された請求項1~8のいずれか一項に記載の吸音シートとを含み、アウターパイプの両端がインナーパイプに溶接されていることを特徴とする内燃機関の消音器。
【0015】
吸音シートは、折り重ねることにより厚さを増したうえで巻回状に配設されていてもよい。
【0016】
吸音シートとインナーパイプとの間に、別の機能部材が介装されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、消音器内における無機繊維の偏りが生じにくく、長期にわたり優れた吸音性能が安定して得られるとともに、無機繊維の溶接部へのはみ出しをなくして溶接不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は実施例1の吸音シートの正面図である。
【
図2】
図2(a)は同吸音シートをシート長方向に折り重ねたときの概略図、(b)は同吸音シートをシート幅方向に折り重ねたときの概略図である。
【
図3】
図3(a)は同吸音シートを配設した消音器の一部破断正面図、(b)は同吸音シートと金属繊維とを配設した消音器の一部破断正面図である。
【
図4】
図4は実施例2の吸音シートの正面図である。
【
図5】
図5は同吸音シートの中間縫製部の縫い目の別例を示す概略図である。
【
図6】
図6は実施例3の吸音シートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1]緯糸(無機繊維ロービング)
無機繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、バサルト繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルミナ繊維、セラミック繊維等を例示でき、安価で汎用性のあるガラス繊維が好ましい。
ロービングの番手は、特に限定されないが、200~9600TEXが好ましく、1200~7000TEXがより好ましい。
ロービングの繊維径は、特に限定されないが、9~30μmが好ましく、12~24μmがより好ましい。
バルキーのかかった無機繊維ロービングは、エアブロー等にて開繊させることで得られる。バルキーは、長さ方向に対する縮率が1~10%の嵩高性が望ましく、特に、縮率3~7%の嵩高性であることが、吸音性能と繊維飛散防止面から望ましい。縮率は空圧で調整できる。
【0020】
[2]経糸
経糸としては、特に限定されないが、繊維フィラメントからなるロービング、紡績糸、撚糸等を例示でき、ロービングが好ましく、無機繊維ロービングがより好ましい。
ロービングの場合の番手は、特に限定されないが、200~9600TEXが好ましく、1200~7000TEXがより好ましい。
ロービングの場合の繊維径は、特に限定されないが、9~30μmが好ましく、12~24μmがより好ましい。
経糸の繊維としては、特に限定されないが、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を例示でき、無機繊維が好ましい。
無機繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、バサルト繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルミナ繊維、セラミック繊維を例示でき、安価で汎用性のあるガラス繊維が好ましい。
有機繊維としては、特に限定されないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、アラミド、綿などの天然材料、合成ゴム、炭素からなる繊維を例示できる。
【0021】
[3]端織布部
端織布部の織り方としては、特に限定されないが、平織が加工性の点で好ましい。
各端織布部の幅は、経糸の太さ、本数、ピッチによって決めることができる。
各端織布部の幅は、シート幅の1/100~1/4が好ましく、1/6以下がより好ましく、1/8以下が最も好ましい。各端織布部の幅が小さすぎると、緯糸の両端の拘束性が減少し、各端織布部の幅が大きすぎると、非織部の幅が小さくなり吸音性が減少する。
各端織布部の幅は、数値でいうと、2~50mm、特に10~30mmが好ましい。
糸の密度は、特に限定されないが、経糸及び緯糸にかかわらず、25mm当たり1~24本が好ましく、2~14本がより好ましい。
各端布部の質量は、特に限定されないが、300~4000g/m2が好ましく、600~2400g/m2がより好ましい。
中央織布部がない場合の両端の端織布部どうしの中心間距離は、特に限定されないが、25~250mmが好ましく、50~150mmがより好ましい。
【0022】
[4]中間織布部
中間織布部は、前記のとおり、緯糸のシート幅方向の中央にあることが好ましいが、中央以外の箇所にあってもよいし、数は1つでも複数でもよい。
中間織布部の織り方としては、特に限定されないが、平織が加工性の点で好ましい。
中間織布部の幅は、経糸の太さ、本数、ピッチによって決めることができる。
中間織布部の幅は、シート幅の1/50~1/3が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下が最も好ましい。
中間織布部の幅は、数値でいうと、2~100mm、特に10~40mmが好ましい。
糸の密度は、特に限定されないが、経糸及び緯糸にかかわらず、25mm当たり1~24本が好ましく、2~14本がより好ましい。
中間端布部の質量は、特に限定されないが、300~4000g/m2が好ましく、600~2400g/m2がより好ましい。
中央織布部と各端織布部との中心間距離、また、中央織布部どうしの中心間距離は、特に限定されないが、25~250mmが好ましく、50~150mmがより好ましい。
【0023】
[5]縫製糸
縫製糸としては、特に限定されないが、紡績糸、撚糸等を例示できる。
紡績糸の繊維としては、特に限定されないが、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を例示できる。特に、無機繊維が好ましい。
無機繊維糸は、伸縮性はないが、後述するように伸縮性が不要な場合や、伸張性の高い縫い目を形成する場合には好適である。
伸張性の高い縫製糸としては、エースクラウン社製の商品名エースクラウンや商品名ハイパー、カナガワ社製の商品名エッフェルミシン糸(#30、#50)や商品名レオナ(#50)、フジックス社製の商品名ウーリー糸や商品名レジロン(245dTEX #50)、旭化成レオナ社製の商品名ユニロン(#50)等の有機繊維糸を例示できる。
【0024】
[6]中間縫製部
インナーパイプの外周面に起伏が無い又は小さい場合には、中間縫製部に伸縮性は不要なので、中間縫製部は一般的な縫製糸で一般的な直線縫いをすればよい。
しかし、インナーパイプの外周面に大きい起伏がある場合には、随従性を高めるため中間縫製部にも伸縮性が必要なので、中間縫製部は伸張性の高い縫製糸を用いたり伸張性の高い縫い目にしたりすることが好ましい。
伸張性の高い縫製糸については、上に例示した。
伸張性の高い縫い目としては、
図5に示す(a)伸縮縫い、(b)千鳥縫い、(c)半返し縫い、(d)点線ジグザグ縫い等を例示できる。
【0025】
[7]消音器
吸音シートは、1回巻きでもよいが、複数回巻きにして厚さを増してもよい。また、
図2(a)に示すようにシート長方向に折り重ねたり、
図2(b)に示すようにシート幅方向に折り重ねたりして、厚さを増したうえで巻回してもよい。シート幅方向に折り重ねる場合、中間織布部で織ることが好ましい。
吸音シートは、
図1及び
図2に矢印で示すように、シート幅方向(緯糸が延びる方向)を周状にするように巻回することを基本とする。但し、シート長方向(経糸が延びる方向)を周状にするように巻回することもできる。
【0026】
吸音シートとインナーパイプとの間に介装される別の機能部材としては、ステンレスウール等の金属ウール、金属箔、金属メッシュ、ガラス繊維からなるニット等をスリーブ状としたものを例示できる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す構造、形状、寸法、材料、数値等は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0028】
[実施例1]
【0029】
図1に実施例1の吸音シート1を示し、
図2に吸音シート1の折り重ね例を示し、
図3に吸音シート1を配設した消音器10を示す。
【0030】
吸音シート1は、シート幅方向に延びるバルキーのかかった無機繊維ロービングからなる緯糸2と、シート長方向に延びる無機繊維ロービングからなる経糸3とを含み構成されている。いずれの無機繊維ロービングも、付着した収束剤が1.5質量%以下であり、それ以外に有機分を含んでいない。
【0031】
緯糸2のシート幅方向の両端部は、経糸3と織られて端織布部4を形成しており、各端織布部4の幅w1は、例えばシート幅Wの1/50~1/10である。
緯糸2のシート幅方向の中間の一部(本例では中央部)は、経糸3と織られて中間織布部5を形成しており、中間織布部5の幅w2は、例えばシート幅Wの1/20~1/5である。
緯糸2のシート幅方向の一部(本例では各端織布部4と中間織布部5との間の部分)は、経糸3と織られていない非織部6となっている。
緯糸2のシート幅方向の両端は、切断されていない連続した折り返し端7である。
【0032】
図3(a)に示す消音器10は、インナーパイプ11と、アウターパイプ12と、インナーパイプ11とアウターパイプ12との間に巻回状に配設された吸音シート1とを含み構成されたものである。
図3(b)に示す消音器10は、インナーパイプ11と、アウターパイプ12と、インナーパイプ11とアウターパイプ12との間に巻回状に配設されたステンレスウール等の金属繊維14及び吸音シート1とを含み構成されたものである。
【0033】
インナーパイプ11には複数の貫通孔が形成されている。本例のインナーパイプ11は外周面に起伏がないものであり、吸音シートに伸縮性は不要である。
吸音シート1は、シート幅方向に折り重ねて厚さを増したうえで、シート幅方向(緯糸が延びる方向)を周状にするように巻回されている。
アウターパイプ12の両端は、インナーパイプ11に溶接部13で接合されている。
【0034】
[実施例2]
図4に示す実施例2の吸音シート1は、緯糸2のシート幅方向の中間の一部(本例では中央部)に、中間織布部に代えて、縫製糸15でシート長方向に縫われた中間縫製部16が形成されている点において実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
中間縫製部16は、伸張性の低い一般的な縫製糸15で直線縫いされたものであるが、伸張性の高い縫製糸を使用したり、伸張性の高い縫い目(
図5)としたりすることもできる。
本実施例2の吸音シート1も、実施例1と同様に消音器10に配設できる。
【0035】
[実施例3]
図6に示す実施例3の吸音シート1は、緯糸2のシート幅方向の中間が、すべて非織部6とされている点において実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
本実施例3の吸音シート1も、実施例1と同様に消音器10に配設できる。
【0036】
これらの実施例1,2,3によれば、消音器10内における無機繊維の偏りが生じにくく、長期にわたり優れた吸音性能が安定して得られるとともに、無機繊維の溶接部13へのはみ出しをなくして溶接不良を防止することができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 吸音シート
2 緯糸
3 経糸
4 端織布部
5 中間織布部
6 非織部
7 折り返し端
10 消音器
11 インナーパイプ
12 アウターパイプ
13 溶接部
14 金属繊維
15 縫製糸
16 中間縫製部