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  • 特許-ピエゾステージ 図1
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  • 特許-ピエゾステージ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ピエゾステージ
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020043707
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145507
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】510246781
【氏名又は名称】翔栄システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】蟻生 斉
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206634(JP,A)
【文献】特開2019-213401(JP,A)
【文献】特開昭61-042284(JP,A)
【文献】特開2016-073006(JP,A)
【文献】特開2004-120894(JP,A)
【文献】実開昭63-178362(JP,U)
【文献】特開2005-261167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
H10N 30/20
H10N 30/88
G12B 5/00
F16F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮方向の両端に取り付けられている一対のホルダーと、
前記一対のホルダーに両端部が固定され、前記伸縮方向と交差する方向に前記圧電素子を挟む配置に対を成して設けられている板バネと、
前記板バネの長手方向中央部に固定されている駒部と、
を備え、
前記板バネの両端部が固定される前記ホルダーの面は、それぞれ前記圧電素子に向けて下る傾斜面に形成されており、
前記板バネは、その長手方向中央側が前記圧電素子寄りに撓んだ形状を呈するように、前記ホルダーの傾斜面に密接して固定されており、
前記圧電素子に電圧が印加された際に、前記対を成す板バネが前記圧電素子を挟んで対称的に弾性変形して、前記駒部を前記伸縮方向と交差する方向に移動させるように構成されていることを特徴とするピエゾステージ。
【請求項2】
前記ホルダーと前記駒部の間の前記板バネの一部に、前記板バネの弾性変形を規制する拘束部材が配設されていることを特徴とする請求項1記載のピエゾステージ。
【請求項3】
前記拘束部材は、前記駒部を挟む配置に対を成して設けられていることを特徴とする請求項に記載のピエゾステージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位を拡大して出力するピエゾステージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を利用して、顕微鏡のステージを所定方向に移動させて位置決めする微動機構が知られている(例えば、特許文献1の図1参照。)。
この微動機構は、弾性支点2重平行リンク機構と菱形拡大機構とで構成されており、オートフォーカス用のピエゾステージとして精度よく動作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-47931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の微動機構の場合、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して弾性支点2重平行リンク機構と菱形拡大機構を製作するため、製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、比較的安価に製造できるピエゾステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、ピエゾステージであって、
圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮方向の両端に取り付けられている一対のホルダーと、
前記一対のホルダーに両端部が固定され、前記伸縮方向と交差する方向に前記圧電素子を挟む配置に対を成して設けられている板バネと、
前記板バネの長手方向中央部に固定されている駒部と、
を備え、
前記板バネの両端部が固定される前記ホルダーの面は、それぞれ前記圧電素子に向けて下る傾斜面に形成されており、
前記板バネは、その長手方向中央側が前記圧電素子寄りに撓んだ形状を呈するように、前記ホルダーの傾斜面に密接して固定されており、
前記圧電素子に電圧が印加された際に、前記対を成す板バネが前記圧電素子を挟んで対称的に弾性変形して、前記駒部を前記伸縮方向と交差する方向に移動させるように構成されているようにした。
【0007】
かかる構成のピエゾステージにおいて、対を成す板バネにそれぞれ取り付けられている駒部のうち、一方の駒部を例えばステージに固定して、圧電素子に電圧を印加するようにすれば、その圧電素子の変位を対を成す板バネの弾性変形によって拡大して出力するように、他方の駒部を移動させることができる。
そして、このピエゾステージは、圧電素子に一対のホルダーと対を成す板バネを取り付けるようにして製造することができるので、上記従来技術のピエゾステージのように、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して製造するものに比べて安価に製造することができる。
また、このピエゾステージであれば、材質や厚みや幅などを設計変更してバネ定数を調節した板バネに付け替えたり、撓み量が異なるなど形状が異なる板バネに付け替えたりすることで、駒部を移動させる移動量や駆動力の調整を容易に行うことができる。つまり、対を成す板バネを付け替えるようにして、ピエゾステージの動作特性を容易に調整することができる。
【0009】
このピエゾステージの一方の駒部を例えばステージに固定した状態で、圧電素子に電圧を印加すると、一対のホルダーを離間させるように圧電素子が伸長し、その圧電素子の伸長に伴い、対を成す板バネが圧電素子を挟んで対称的に弾性変形する。ここでは、撓んでいる板バネが伸びるように弾性変形し、対を成す板バネが互いに離間する方向に弾性変形する。
つまり、このピエゾステージであれば、圧電素子の伸長が、対を成す板バネの伸びにより増幅されて、他方の駒部を好適に移動させることができる。
【0011】
板バネの両端部が密接して固定されるホルダーの面を角度のついた傾斜面にすることで、板バネの長手方向中央側を圧電素子寄りに撓ませた形状で、その板バネをホルダーに固定し易くなる。
【0012】
また、望ましくは、
前記ホルダーと前記駒部の間の前記板バネの一部に、前記板バネの弾性変形を規制する拘束部材が配設されているようにする。
【0013】
このピエゾステージは、圧電素子に一対のホルダーと対を成す板バネを取り付け、その板バネに拘束部材を取り付けるようにして製造することができるので、上記従来技術のピエゾステージのように、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して製造するものに比べて安価に製造することができる。
また、このピエゾステージであれば、板バネに取り付ける拘束部材の位置を調節したり、板バネに取り付ける拘束部材のサイズを調節したりすることで、その板バネが弾性変形する部分や範囲を調整できるので、駒部を移動させる移動量や駆動力の調整を容易に行うことができる。つまり、板バネに取り付ける拘束部材の位置やサイズを調整するようにして、ピエゾステージの動作特性を容易に調整することができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記拘束部材は、前記駒部を挟む配置に対を成して設けられているようにする。
【0015】
こうすることで、板バネの弾性変形をバランスよく調整でき、ピエゾステージを好適に動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比較的安価に製造できるピエゾステージが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1のピエゾステージを示す正面図(a)、上面図(b)、側面図(c)である。
図2】実施形態1のピエゾステージの動作原理の説明図である。
図3】実施形態2のピエゾステージを示す正面図(a)、上面図(b)、側面図(c)である。
図4】実施形態2のピエゾステージの動作原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るピエゾステージの実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態のピエゾステージ10は、例えば、図1(a)(b)(c)に示すように、圧電素子1と、圧電素子1の伸縮方向の両端に取り付けられている一対のホルダー2,2と、一対のホルダー2,2に両端部が固定され、圧電素子1を挟む配置に対を成して設けられている板バネ3,3と、板バネ3の長手方向中央部に固定されている駒部4等を備えている。
【0020】
圧電素子1は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛を主原料とする圧電セラミック層と内部電極層とが交互に積層されてなる素子である。
この圧電素子1には、電圧を印加するためのリード線(図示省略)が接続されており、圧電素子1に電圧を印加すると伸長するように変位する。
【0021】
ホルダー2は、例えば、圧電素子1の端面に接着されて取り付けられている。
圧電素子1の両端に取り付けられている一対のホルダー2,2は、圧電素子1の変位に応じて接離するように配置が切り替わるようになっている。
また、このホルダー2において、板バネ3の両端部が密接して固定されている面は、それぞれ圧電素子1に向けて下る傾斜面に形成されている。
【0022】
板バネ3は、その両端部がネジなどによってホルダー2の傾斜面に固定されている弾性部材である。
本実施形態では、金属製の板バネ3を用いている。
【0023】
板バネ3は、圧電素子1の伸縮方向と交差する方向(ここでは、圧電素子1の伸縮方向と直交する方向)に、その圧電素子1を挟む配置に対を成して設けられている。
この板バネ3は、その長手方向中央側が圧電素子1寄りに撓んだ形状を呈している。換言すれば、一対の板バネ3,3は、その長手方向中央側を互いに近接させるように撓んだ形状を呈している。
なお、この板バネ3の両端部が密接して固定されるホルダー2の面が、それぞれ圧電素子1に向けて下る傾斜面に形成されているので、板バネ3の長手方向中央側を圧電素子1寄りに撓ませた形状で、その板バネ3をホルダー2に固定し易くなっている。
【0024】
駒部4は、板バネ3の長手方向中央側の外面側にネジなどによって固設されている。
この駒部4は、板バネ3の弾性変形に応じて、圧電素子1の伸縮方向と交差する方向(ここでは、圧電素子1の伸縮方向と直交する方向)に移動するように構成されている。
そして、対を成す板バネ3にそれぞれ取り付けられている駒部4のうち、一方の駒部4が例えばステージSに固定され、他方の駒部4が圧電素子1の変位を拡大して出力するために移動するように構成されている。
【0025】
次に、本実施形態のピエゾステージ10の動作原理について説明する。
【0026】
例えば、図2に示すように、ピエゾステージ10を所定位置に設置するにあたり、そのピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSの上面に固定する。
ピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSに固定した状態で、圧電素子1に電圧を印加すると、一対のホルダー2,2を離間させるように圧電素子1が伸長し、その圧電素子1の伸長に伴い、対を成す板バネ3,3が圧電素子1を挟んで対称的に弾性変形する。ここでは、撓んでいる板バネ3が伸びるように弾性変形し、対を成す板バネ3,3が互いに離間する方向に弾性変形する。
そして、圧電素子1の伸長が、対を成す板バネ3,3の伸びにより増幅されて、他方の駒部4を上方へ移動させるようになる。
このように、圧電素子1の伸長が対を成す板バネ3,3の伸びにより増幅されるので、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、他方の駒部4を上方へ移動させることができる。
【0027】
このようなピエゾステージ10であれば、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、駒部4を上方へ移動させることができる。
特に、このピエゾステージ10は、圧電素子1に一対のホルダー2,2と対を成す板バネ3,3を取り付けるようにして製造することができるので、従来技術のピエゾステージのように、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して製造するものに比べて安価に製造することができる。
【0028】
また、このピエゾステージ10であれば、材質や厚みや幅などを設計変更してバネ定数を調節した板バネ3に付け替えたり、撓み量が異なるなど形状が異なる板バネ3に付け替えたりすることで、駒部4を上方へ移動させる移動量や駆動力の調整を容易に行うことができる。
つまり、一対の板バネ3,3を付け替えるようにして、ピエゾステージ10の動作特性を容易に調整することができる。
これに対し、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して製造する従来技術のピエゾステージの場合、移動量や駆動力の調整を行うには、そのピエゾステージ自体を製造し直さなければならず、容易に動作特性を変更することはできない。
【0029】
(実施形態2)
次に、本発明に係るピエゾステージの実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
実施形態2のピエゾステージ10には、例えば、図3(a)(b)(c)に示すように、ホルダー2と駒部4の間の板バネ3の一部に、板バネ3の弾性変形を規制する拘束部材5が配設されている。
この拘束部材5は、駒部4を挟む配置に対を成して板バネ3に設けられている。
【0031】
拘束部材5は、例えば、剛性を有する金属製の板状部材であり、2枚1組で使用される。
具体的には、2枚の拘束部材5で板バネ3を挟み込み、2枚の拘束部材5同士をボルトなどで締結して、その拘束部材5を板バネ3に固着している。
この拘束部材5によって板バネ3が挟み込まれた部分は、弾性変形しないように剛性が付与された態様になる。
特に、拘束部材5は、板バネ3のホルダー2側の部分と、板バネ3の駒部4側の部分の弾性変形を規制しないように配設されている。
つまり、拘束部材5が取り付けられた板バネ3は、板バネ3のホルダー2側の部分と、板バネ3の駒部4側の部分とが弾性変形可能とされている。
【0032】
このようなピエゾステージ10であっても、例えば、図4に示すように、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、駒部4を上方へ移動させることができる。
特に、このピエゾステージ10であれば、板バネ3に取り付ける拘束部材5の位置を調節したり、板バネ3に取り付ける拘束部材5のサイズを調節したりすることで、その板バネ3が弾性変形する部分や範囲を調整できるので、駒部4を上方へ移動させる移動量や駆動力の調整を容易に行うことができる。
つまり、一対の板バネ3,3に取り付ける拘束部材5を調整するようにして、ピエゾステージ10の動作特性を容易に調整することができる。
【0033】
そして、このピエゾステージ10は、圧電素子1に一対のホルダー2,2と対を成す板バネ3,3を取り付け、その板バネ3に拘束部材5を取り付けるようにして製造することができるので、従来技術のピエゾステージのように、厚板鋼板にワイヤカット放電加工を施して製造するものに比べて安価に製造することができる。
【0034】
なお、以上の実施の形態においては、圧電セラミック層の材料としてチタン酸ジルコン酸鉛を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化亜鉛など、他の材料を用いることもできる。
【0035】
また、以上の実施の形態のピエゾステージ10において、板バネ3は、その長手方向中央側が圧電素子1寄りに撓んだ形状(圧電素子1に近づくように撓んだ形状)を呈するようにホルダー2に固定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、板バネ3は、その長手方向中央側が圧電素子1から離れるように撓んだ形状を呈するようにホルダー2に固定されていてもよい。その場合、板バネ3の両端部が密接して固定されているホルダー2の面は、それぞれ圧電素子1に向けて上がる傾斜面に形成されているものとする。
このような構成のピエゾステージ10であれば、ピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSに固定した状態で、圧電素子1に電圧を印加すると、一対のホルダー2,2を離間させるように圧電素子1が伸長し、その圧電素子1の伸長に伴い、対を成す板バネ3,3が圧電素子1を挟んで対称的に弾性変形する。ここでは、撓んでいる板バネ3が伸びるように弾性変形し、対を成す板バネ3,3が互いに接近する方向に弾性変形する。
そして、圧電素子1の伸長が、対を成す板バネ3,3の伸びにより増幅されて、他方の駒部4を下方へ移動させるようになる。
【0036】
また、以上の実施の形態においては、ピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSの上面に固定し、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、他方の駒部4を上方(または下方)へ移動させる場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSなどの下面に固定し、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、他方の駒部4を下方(または上方へ)へ移動させるようにしてもよい。
また、ピエゾステージ10の一方の駒部4をステージSなどの側面に固定し、圧電素子1の変位を拡大して出力するように、他方の駒部4を前後方向や左右方向(側方)に移動させるようにしてもよい。
【0037】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 圧電素子
2 ホルダー
3 板バネ
4 駒部
5 拘束部材
10 ピエゾステージ
S ステージ
図1
図2
図3
図4