(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】複室容器及び複室容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20230313BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61J1/05 351A
A61J1/10 330Z
A61J1/10 333A
A61J1/10 333C
(21)【出願番号】P 2020101434
(22)【出願日】2020-06-11
(62)【分割の表示】P 2018218407の分割
【原出願日】2014-01-15
【審査請求日】2020-07-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐木川 尚彦
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】宮部 愛子
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-55549(JP,A)
【文献】特開2011-110169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J1/05
A61J1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向において並ぶ第1収納部及び第2収納部を有する容器本体と、
前記容器本体を前記第1収納部及び前記第2収納部に仕切る仕切り用弱シール部と、
前記第
1収納部に配置される小容器と、を備える複室容器であって、
前記小容器は、前記仕切り用弱シール部の開封に伴って開封される弱シール部を有し、
前記仕切り用弱シール部は、中央領域と、前記長軸方向に交差する交差方向において前記中央領域を挟む一対の領域とを有し、
前記中央領域と、前記弱シール部とは、前記長軸方向において並んでおり、
前記長軸方向において、前記一対の領域のそれぞれは、前記弱シール部よりも前記第
2収納部側に位置
し、
前記複室容器は、
前記一対の領域の一方に設けられ、前記交差方向に沿って延在する第1の引掛り部と、
前記一対の領域の他方に設けられ、前記交差方向に沿って延在する第2の引掛り部と、
前記第1収納部であって、前記仕切り用弱シール部及び/又は前記小容器の一部又は近傍に設けられる第1の補助引掛かり部と、
前記第1収納部であって、前記仕切り用弱シール部及び/又は前記小容器の一部又は近傍に設けられる第2の補助引掛かり部と、をさらに備え、
前記第1の引掛り部と前記第2の引掛り部とは、互いに離間しており、
前記第1の引掛り部及び前記第2の引掛り部が、前記第2収納部に設けられる、
複室容器。
【請求項2】
前記第1の引掛り部が、第1の引掛り本体部と、前記容器本体の中央側における前記第1の引掛り本体部の端部から前記小容器側に延在する第1の引掛り延在部とを有し、
前記第2の引掛り部が、第2の引掛り本体部と、前記容器本体の中央側における前記第2の引掛り本体部の端部から前記小容器側に延在する第2の引掛り延在部とを有する、請求項
1に記載の複室容器。
【請求項3】
前記第1の引掛り本体部と前記第1の引掛り延在部とのなす角度が90°以上180°未満、及び/又は、前記第2の引掛り本体部と前記第2の引掛り延在部とのなす角度が90°以上180°未満である、請求項
2に記載の複室容器。
【請求項4】
前記容器本体の中央側における前記第1の引掛り本体部の端部と前記第2の引掛り本体部の端部との間隔は、前記小容器の横幅よりも短く、かつ前記横幅の2分の1よりも長い、請求項
2又は3に記載の複室容器。
【請求項5】
前記第1の補助引掛かり部と前記第2の補助引掛かり部との少なくとも一方は、実線状に延在している、請求項
1~4のいずれか一項に記載の複室容器。
【請求項6】
前記複室容器が医療用又は食品用の複室容器である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の複室容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複室容器及び複室容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静脈注射により患者に投与される薬剤の中には、予め配合すると望ましくない経時的変化を起こすような不安定な薬剤がある。例えばアミノ酸輸液とブドウ糖輸液を配合して保存しておくと、いわゆるメイラード反応によって混合液が褐変する。また、脂肪乳剤と電解質溶液とを配合して保存しておくと、脂肪分が凝集を生じ、リン酸含有液とカルシウム含有液を配合しておくと、リン酸カルシウムの沈殿を生じ、望ましくない変化を起こす。
【0003】
このような薬剤には、混合前の成分を個別に収納する医療用の複室容器が用いられることが多い。この医療用の複室容器は、個別に薬剤を収納する複数の収納部と、この収納部を仕切り、外部から圧力を加えることにより剥離し得る仕切り用弱シール部とを備えたものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-136570号公報
【文献】国際公開公報03/092574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14~16はそのような従来の医療用の複室容器の一例を示す説明図で、
図14は平面図、
図15は
図14のX-X線矢視断面図、
図16は開封時の断面図である。
【0006】
図14に示すように、複室容器1は、周縁部3が接着され矩形状に形成された容器本体5の内部を、第1収納部9と第2収納部11とに仕切り部13で仕切ると共に、各収納部9、11には、予め混合或いは溶解しておくと望ましくない各種薬剤a、bをそれぞれ収納し、さらに各収納部9、11のいずれか(
図14では第1収納部9)に小容器15を設け、小容器15内に薬剤cを収納している。この小容器15は、
図15に断面を拡大して示すように容器本体5を構成するフィルム5a、5bの内側である小容器15のフィルム15a、15bの内面に接着部21を設けている。
図16に示すように、容器本体5の外部から力を加え、仕切り部13に圧力を与えて剥離力F、Fを与え、第1収納部9と第2収納部11とを開封させ、薬剤aとbとを混合させた時、同時に小容器15の接着部21も剥離し、小容器15内の薬剤cも各収納部9、11の薬剤a、bと混合する構造となっている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、例えば、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でないことなどにより、仕切り部13への圧力及び剥離力F、Fが不十分になると、小容器15の接着部21も剥離せず、小容器15内の内容物である薬剤cが各収納部9、11の内容物である薬剤a、bと混合されない場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、容器本体内に小容器を収納した複室容器において、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、複数の収納部や小容器が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器及び複室容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複室容器の構造について鋭意検討した結果、上記課題を解決できる複室容器を見出した。
すなわち、本発明は、複数の収納部を有する容器本体と、収納部に接続された排出口と、容器本体を複数の収納部に仕切るとともに収納部内の圧力を高めることにより複数の収納部を互いに開封連通させる仕切り用弱シール部と、複数の収納部のいずれかに配置され仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される小容器と、を備える複室容器であって、仕切り用弱シール部の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に形成された第1の引掛り部と、仕切り用弱シール部の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に形成された第2の引掛り部と、をさらに備え、第1の引掛り部と第2の引掛り部とが互いに接しない、複室容器を提供する。
【0010】
本発明の複室容器は、仕切り用弱シール部の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第1の引掛り部と、仕切り用弱シール部の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第2の引掛り部とを有する。これによって、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合であっても、仕切り用弱シール部における第1の引掛り部及び第2の引掛り部が形成されていない部分(仕切り用弱シール部の中央側)への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなり、小容器の接着部や弱シール部も剥離しやすくなり、小容器内の内容物が各収納部の内容物と混合しやすくなる。
【0011】
また、本発明は、第1の引掛り部及び第2の引掛り部が小容器の配置されていない収納部側に形成された複室容器であることが好ましい。これにより、仕切り用弱シール部の中央側及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0012】
本発明の複室容器は、第1の引掛り部が、第1の引掛り本体部と、容器本体の中央側における第1の引掛り本体部の端部から小容器側に延在する第1の引掛り延在部とを有し、第2の引掛り部が、第2の引掛り本体部と、容器本体の中央側における第2の引掛り本体部の端部から小容器側に延在する第2の引掛り延在部とを有することが好ましい。これにより、仕切り用弱シール部の中央側及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0013】
本発明において、第1の引掛り部及び/又は第2の引掛り部は実線状に形成されてもよい。第1の引掛り部や第2の引掛り部が実線状に形成されることによって、仕切り用弱シール部の中央側及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0014】
また、本発明の複室容器において、第1の引掛り本体部と第1の引掛り延在部とのなす角度が90°以上180°未満、及び/又は、第2の引掛り本体部と第2の引掛り延在部とのなす角度が90°以上180°未満であることが好ましい。これにより、仕切り用弱シール部の中央側及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0015】
本発明において、容器本体の中央側における第1の引掛り本体部の端部と第2の引掛り本体部の端部との間隔は、小容器の横幅よりも短く、かつ横幅の2分の1よりも長いことが好ましい。これにより、小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0016】
本発明の複室容器において、第1の引掛り部及び/又は第2の引掛り部が、エンボス加工により形成された凹凸を含むことが好ましい。エンボス加工により形成された凹凸を含む第1の引掛り部及び/又は第2の引掛り部が形成された領域は開封遅延となることから、仕切り用弱シール部の中央側及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0017】
また、本発明において、容器本体の中心を長手方向に通る中心軸を基準として、第1の引掛り部と第2の引掛り部とが互いに対称であることが好ましい。これにより、仕切り用弱シール部及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが均一に伝わりやすくなる。
【0018】
また、本発明の複室容器は、小容器が配置されている収納部側であって、仕切り用弱シール部及び/又は小容器の一部又は近傍に形成された、第1の補助引掛り部及び/又は第2の補助引掛り部をさらに備えることが好ましい。これにより、小容器の弱シール部などへの圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0019】
本発明の複室容器は、医療用又は食品用であってもよい。このような開封容易性と輸送時等における密封性とを兼ね備えた複室容器は、医療用複室容器として使用することができ、また食品用としても用いることができる。
【0020】
本発明は、上記複室容器の製造方法であって、容器本体を複数の収納部に仕切るように仕切り用弱シール部を形成する工程と、仕切り用弱シール部の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第1の引掛り部を形成する工程と、仕切り用弱シール部の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第2の引掛り部を形成する工程と、を備える、複室容器の製造方法を提供する。本製造方法によれば、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、複数の収納部や小容器が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器を製造することが可能となる。
【0021】
上記仕切り用弱シール部を形成する工程において、仕切り用弱シール部は熱融着により形成され、熱融着された仕切り用弱シール部を冷却する金型により、第1の引掛り部及び第2の引掛り部を上記仕切り用弱シール部の冷却時に形成することが好ましい。これにより、従来の製造方法と比べ製造工程を増やさなくとも、複数の収納部や小容器が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容器本体内に小容器を収納した複室容器において、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、複数の収納部や小容器が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器及び複室容器の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図3】
図1のA-A線矢視部分拡大断面図の変形例である。
【
図4】第1実施形態である医療用複室容器の剥離開封状態を示す拡大断面図である。
【
図5】第2実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図6】第3実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図7】第4実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図8】第5実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図9】第6実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図10】第7実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図11】第8実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図12】第9実施形態の医療用複室容器の平面図である。
【
図13】本実施形態の製造方法における第1の引掛り部及び第2の引掛り部を形成した時の要部拡大断面図である。
【
図16】
図14に示した複室容器の剥離開封状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る複室容器の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の複室容器は、複数の収納部を有する容器本体と、収納部に接続された排出口と、容器本体を複数の収納部に仕切るとともに収納部内の圧力を高めることにより複数の収納部を互いに開封連通させる仕切り用弱シール部と、複数の収納部のいずれかに配置され仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される小容器と、を備える複室容器であって、仕切り用弱シール部の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に形成された第1の引掛り部と、仕切り用弱シール部の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に形成された第2の引掛り部と、をさらに備え、第1の引掛り部と第2の引掛り部とが互いに接しない、複室容器である。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る複室容器における医療用複室容器を例とした平面図、
図2は
図1のA-A線部分拡大断面図である。
図3は
図2の変形例を示すA-A線矢視部分拡大断面図である。また、
図4は、本発明の一実施形態である医療用複室容器1の剥離開封状態を示す拡大断面図である。
【0026】
図1に示すように、医療用複室容器1は、周縁部3が接着され矩形状に形成された容器本体5と、この容器本体5に接続されるゴム栓を有し、薬剤を排出するための薬剤排出口7とを備えている。容器本体5は、長手方向に配置された第1収納部9及び第2収納部11を有しており、2つの収納部9、11は剥離可能な仕切り用弱シール部13で仕切られている。また、第1収納部9及び第2収納部11には内容物として、予め混合或いは溶解しておくと望ましくない各種薬剤a,bがそれぞれ収納されている。なお、軸αは、容器本体5の中心を長手方向に通る中心軸である。
【0027】
医療用複室容器1は、2枚の単層又は複層のフィルムの周縁部を熱接着又は接着することにより形成される袋状の容器であってもよい。医療用複室容器1の容器本体5を構成する素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂等、種々の樹脂よりなるフィルムを採用することができる。医療用複室容器1の周縁部3には吊掛孔17が設けられており、例えばスタンド等のフックを吊掛孔17に通すことによって医療用複室容器1をスタンド等に吊るすことができる。
【0028】
仕切り用弱シール部13を剥離するために必要な圧力を調整するためには、例えば、熱可塑性樹脂よりなるフィルムを溶融接着する際、仕切り用弱シール部13の加熱接着時間を、容器本体5の周縁部3の加熱接着時間より短くすればよい。或いは、仕切り用弱シール部13の接着圧力を、容器本体5の周縁部3の接着圧力より低い接着圧力で行ってもよい。これにより、仕切り用弱シール部13の接着強度が、周縁部3の接着強度よりも弱くなるように調整することが可能である。
図1に示すように、第1実施形態の医療用複室容器1において仕切り用弱シール部13は、周縁部3と接する両端から容器本体5の中央側にかけて縦方向(長手方向)の幅が厚く、後述する小容器15の一部と並行する中央領域13aでは縦方向(長手方向)の幅が薄い形状を有している。このように、仕切り用弱シール部13について、中央領域13aにおける縦方向の幅を薄くすることによっても、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合に、仕切り用弱シール部13の特定の領域(例えば中央領域13a)への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。さらに後述する小容器15の接着部や弱シール部も剥離しやすくなる。よって、小容器15内の内容物が各収納部9、11の内容物と混合しやすくなり、好ましい。
【0029】
上記医療用複室容器1の第1収納部9には、薬剤cを収納する小容器15が設けられていてもよい。小容器15の長手方向の中心軸は、容器本体5の軸αと重なってもよい。これにより、上述した仕切り用弱シール部13の特定の領域への圧力及び剥離力F、Fが小容器15に伝わりやすくなる。
【0030】
小容器15は、
図1及び
図2に示すように、例えば、重ね合わせた2枚のフィルム15a、15bの周囲を熱接着することにより形成された袋状の容器であることが好ましい。2枚のフィルム15a、15bは、例えば、内層がポリエチレン、中間層がポリ環状オレフィン、外層がポリエチレンより成る3層構造が好適に使用される。
【0031】
小容器15の仕切り用弱シール部13側には、仕切り用弱シール部13の開封と共に剥離開封し、小容器15と第1収納部9とが連通するための弱シール部21が設けられていてもよい。弱シール部21の横幅は、仕切り用弱シール部13の中央領域13aの横方向の幅と同程度であってよい。この小容器15の弱シール部21を剥離するために必要な圧力の調整は、容器本体5の仕切り用弱シール部13と周縁部3とのシールと同様、弱シール部21の加熱接着時間を小容器15の他の周縁部の加熱接着時間より短くすればよい。或いは、弱シール部21の接着圧力を、小容器15の周縁部の接着圧力より低い接着圧力で行うことにより調整すればよい。
【0032】
小容器15の容器本体5に対する接着部19は、
図2のように小容器15を構成するフィルム15a、15bの弱シール部21より外側部分の延出部23a、23bに形成されてもよい。そして延出部23a、23bで、その短手方向(横方向)のほぼ全長にわたり連続する線状に接着されてもよい。この接着手段は、例えば熱接着などの手段が好適に用いられる。
【0033】
なお、この延出部23a、23bの長手方法(縦方向)の幅B(
図2参照)は、小容器15が容器本体5を構成するフィルム5a、5bに接着する際に十分な幅とされていればよく、具体的には3mm~20mm、より好適には5mm~15mmである。また、
図1における延出部23a、23bの横方向の幅は、弱シール部21の横方向の幅と同じ程度であってもよい。
【0034】
上記医療用複室容器1において、仕切り用弱シール部13の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第1の引掛り部L
1が形成されている。また、仕切り用弱シール部13の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第2の引掛り部R
1が形成されている。第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1は、互いに接しないように離間して配置されており、仕切り用弱シール部13の所定の領域が開封(開通)しにくくなるように仕切り用弱シール部13の一部又は近傍に引掛り形状が施されていればよく、例えば
図2に示すように、傾きを有する凹凸31などで形成される凹凸形状であってもよい。また、第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1は、引っ掛かる部位が一つのみであってもよく、複数であってもよい。このように、第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1が上記位置に形成されることによって、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合であっても、第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1が形成されていない仕切り用弱シール部13の特定の領域(例えば中央領域13a)への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。さらに、小容器15の接着部19や弱シール部21も剥離しやすくなり、小容器15内の内容物が各収納部9、11の内容物と混合しやすくなる。
【0035】
図2に示すように、第1の引掛り部L
1又は第2の引掛り部R
1の引掛り形状である凹凸31の厚み方向の深さD1は、フィルム5a、5bを構成する材料や厚みに応じて適宜設定することができる。フィルム5a、5bが例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂であり、フィルム5a、5bの厚さの合計が例えば250~300μmである場合、深さD1は、50~200μmが好ましく、100~150μmがより好ましい。第1の引掛り部L
1又は第2の引掛り部R
1の厚み方向の深さによって剥離強度を調整することができる。深さD1が大きすぎると、小容器15開通後に仕切り用弱シール部13全体を剥離させ難くなる傾向にある。また、フィルム5a、5bを構成する材料として強度が弱いものを使用した場合、第1の引掛り部L
1又は第2の引掛り部R
1の強度も落ち、医療用複室容器1が破損するおそれがあることから好ましくない。一方、深さD1が小さすぎると、第1の引掛り部L
1又は第2の引掛り部R
1が形成された部分が開封遅延されず、仕切り用弱シール部13の中央側(13a)及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わり難くなり、小容器15の弱シール部21を剥離開封させるために多大な力が必要になってしまう傾向にある。
【0036】
また、
図3に示すように、第1の引掛り部L
1又は第2の引掛り部R
1の引掛り形状である凹凸31aの厚み方向の深さD2も、
図2の深さD1と同様に、フィルム5a、5bを構成する材料や厚みに応じて適宜設定することができる。凹凸はエンボス加工により形成されてもよい。
【0037】
第1の引掛り部L1及び第2の引掛り部R1は、小容器15の配置されていない収納部11側に形成されることが好ましい。これにより、例えば内容物である薬剤bを収納した収納部11の一部に圧力を加えた場合に、第1の引掛り部L1及び第2の引掛り部R1が形成された仕切り用弱シール部13の所定の領域は開封が遅延され、第1の引掛り部L1及び第2の引掛り部R1が形成されていない仕切り用弱シール部13の中央領域13a及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fがより伝わりやすくなる。
【0038】
第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1の形状は特に制限されないが、例えば実線状であってもよく、点線状や面状であってもよい。例えば、
図1に示すように、第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1の形状が実線状であることによって、仕切り用弱シール部13への圧力及び剥離力F、Fが、仕切り用弱シール部13の特定の領域(例えば中央領域13a)へスムーズに集中しやすくなり、これにより小容器15の接着部19や弱シール部21もより剥離しやすくなる。
【0039】
本実施形態において、容器本体5の中心を長手方向に通る中心軸(軸α)を基準として、第1の引掛り部L1と第2の引掛り部R1とが互いに対称であることが好ましい。これにより、仕切り用弱シール部13及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fが、均一に仕切り用弱シール部13の特定の領域(例えば中央領域13a)へ伝わりやすくなる。
【0040】
容器本体5の中央側における第1の引掛り部L1(第1の引掛り本体部)の端部E1と第2の引掛り部R1(第2の引掛り本体部)の端部E2との間隔は、小容器15の横幅よりも短く、かつ横幅の2分の1よりも長いことが好ましい。これにより、小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0041】
医療用複室容器1の使用に際しては、容器本体5(例えば第2収納部11の一部)に圧力を加え、
図2に示すように矢印方向の剥離力F、Fを発生させて仕切り用弱シール部13を剥離させ、第1収納部9と第2収納部11を開封させる。このとき、第1の引掛り部L
1と第2の引掛り部R
1に形成された引掛り形状である凹凸31において、フィルム5a及びフィルム5bが互いに引っ掛かる。これにより、第1の引掛り部L
1と第2の引掛り部R
1が形成された領域は開封遅延し、第1の引掛り部L
1及び第2の引掛り部R
1が形成されていない領域に圧力が集中し、仕切り用弱シール部13の所望の領域(例えば中央側)が開封しやすくなる。さらに、
図3及び
図4に示すように小容器15の弱シール部21は、上記剥離力F、Fが伝達されることにより剥離開封し、小容器15内部の薬剤cが複数の収容部9、11に流出する。なお、第1の引掛り部L
1と第2の引掛り部R
1が形成された仕切り用弱シール部13の一部又は近傍は、内容物(薬剤)の流出により後から開封される。これにより、医療用複室容器1内における内容物の混合がさらに促進されることから好ましい。
【0042】
図2においては、接着部19は弱シール部21以外の位置とされているので、例えば熱による溶融接着の場合は熱によって弱シール部21の易剥離性に影響が及ぶことがなく、
図4に示すように確実に開封することが可能となる。また、接着部19は小容器15の外部とされているので、溶融接着時の熱によって内部の薬剤cが影響されることもなく、内部の薬剤cの品質を良好に維持することができる。
【0043】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の医療用複室容器の平面図である。
図5に示すように、第1の引掛り部L
2は、仕切り用弱シール部13の一方の端側から容器本体5の中央側に形成された第1の引掛り本体部l
1と、容器本体5の中央側における第1の引掛り本体部l
1の端部から小容器15側に延在する、第1の引掛り延在部l
2とを有している。同様に、第2の引掛り部R
2は、仕切り用弱シール部13の他方の端側から容器本体5の中央側に形成された第2の引掛り本体部r
1と、容器本体5の中央側における第2の引掛り本体部r
1の端部から小容器15側に延在する、第2の引掛り延在部r
2とを有している。このように、第1の引掛り本体部l
1及び第2の引掛り本体部r
1の端部から小容器15側に延在する、第1の引掛り延在部l
2と第2の引掛り延在部r
2とを有することによって、仕切り用弱シール部13の中央側(中央領域13a)及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなることから、好ましい態様である。
【0044】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の医療用複室容器の平面図である。
図6に示すように、第1の引掛り部L
3の第1の引掛り延在部l
3は、
図5の第1の引掛り延在部l
2よりも、小容器15側へ延在している。同様に、第2の引掛り部R
3の第2の引掛り延在部r
3は、
図5における第2の引掛り延在部r
2よりも、小容器15側へ延在している。これにより、小容器15への圧力及び剥離力F、Fがより伝わりやすくなることから、好ましい態様である。
【0045】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態の医療用複室容器の平面図である。
図7に示すように、容器本体5の仕切り用弱シール部13には、例えば医療用複室容器1を出荷用の箱等に収納する際の折り目部であって、容器本体5の長手方向の中心を通過し軸αと直交する半折線25が設けられていてもよい。第4実施形態の医療用複室容器1においては、小容器15が配置されている収容部9側であって、仕切り用弱シール部13及び/又は小容器15の一部又は近傍に、第1の補助引掛り部L
11、第2の補助引掛り部R
11が形成されていてもよい。このように、第1の補助引掛り部L
11、第2の補助引掛り部R
11が半折線25を介して第1の引掛り部L
2、第2の引掛り部R
2と離間して配置されることによって、例えば医療用複室容器1の輸送時などで半折線25を境目に半折状態となっているときに積層された重さなどで圧力が加えられた場合であっても、圧力及び剥離力F、Fが伝わりにくい傾向にある。第1の補助引掛り部L
11、第2の補助引掛り部R
11の形状は特に制限されないが、開封時に小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくする観点から、実線状であることが好ましい。
【0046】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態の医療用複室容器の平面図である。
図8に示すように、仕切り用弱シール部13Aの形状は、例えば三角形又は台形と長方形とが組み合わされた形状であってもよい。また、第1の引掛り部L
3及び第2の引掛り部R
3は、仕切り用弱シール部13Aの形状に沿って設けられ、第1の引掛り部L
3における第1の引掛り本体部l
4と第1の引掛り延在部l
5とがなす角度θ
1は、90°~180°未満であることが好ましく、より好ましくは110°~150°、更に好ましくは120°~140°であってもよい。第2の引掛り部R
3における角度θ
2も同様であり、第1の引掛り部L
3における角度θ
1、第2の引掛り部R
3における角度θ
2が上記範囲にあることによって、仕切り用弱シール部13の中央側(中央領域13a)及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0047】
(第6~9実施形態)
図9~12は、第6~9実施形態の医療用複室容器の平面図である。
図9に示す第6実施形態の第1の引掛り部L
4及び第2の引掛り部R
4の形状のように、直線状でなく円弧状であってもよい。また、
図10に示す第7実施形態のように、第1の引掛り部L
5及び/又は第2の引掛り部R
5と仕切り用弱シール部13との間に空間やスペースが形成されていてもよい。第7実施形態によれば、仕切り用弱シール部の面積を減らせる点で好ましいが、滅菌処理の観点からは当該空間やスペースはなくてもよい場合がある。さらに、
図11に示す第8実施形態のように、第1の引掛り部L
6及び/又は第2の引掛り部R
6は端部(E
5、E
6)が容器本体5の周縁部3と接していなくてもよい。
図12に示す第9実施形態のように、第1の引掛り部L
7及び/又は第2の引掛り部R
7は、仕切り用弱シール部13の一部に重なるように形成されていてもよい。
【0048】
(製造方法)
本実施形態の複室容器の製造方法は、容器本体5を複数の収納部9、11に仕切るように仕切り用弱シール部13を形成する工程と、仕切り用弱シール部13の一方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第1の引掛り部L1を形成する工程と、仕切り用弱シール部13の他方の端側から中央側の少なくとも一部又は近傍に第2の引掛り部R1を形成する工程と、を備える。本製造方法によれば、複室容器1への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、複数の収納部9、11や小容器15が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器1を製造することが可能となる。
【0049】
上記仕切り用弱シール部13を形成する工程において、仕切り用弱シール部13は熱融着により形成されることが好ましく、熱融着された仕切り用弱シール部13を冷却する金型によって、第1の引掛り部及び第2の引掛り部を仕切り用弱シール部13の冷却時に形成することが好ましい。金型として、例えば
図13(a)に示すように、凹部41aを有する上部金型41と凸部43aを有する下部金型43とが用いられる。フィルム5a,5bが上部金型41及び下部金型43でプレスされることによって、引掛り形状である凹凸31を形成することができる。また、
図13(b)に示すように、平面を有する上部金型41Aと凸部43bを有する下部金型43Aとでプレスされることによって、引掛り形状である凹凸31aを形成してもよい。ここで、上部金型41、41A、下部金型43、43Aは、仕切り用弱シール部13を冷却する金型であることが好ましい。また、特に図示はしないが、上部金型41Aの平面には凹部が設けられてもよい。このように、熱融着された仕切り用弱シール部13を冷却する金型で第1の引掛り部及び第2の引掛り部を仕切り用弱シール部13の冷却時に形成することにより、従来の製造方法と比べ製造工程を増やさなくとも、複数の収納部や小容器が開封されやすく内容物が混合されやすい複室容器を製造することが可能となる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、一例として医療用複室容器の実施形態を記載しているが、本実施形態は医療用に限定されるものではなく、例えば食品用の複室容器であってもよい。食品用複室容器である場合には例えば内容物は流動状の食品であり、排出口は食品が容器外に排出されるための食品排出口となる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・医療用複室容器
3・・・周縁部
5・・・容器本体
5a、5b・・・容器本体を構成するフィルム
7・・・排出口
9・・・第1収納部
11・・・第2収納部
13・・・仕切り用弱シール部
13a・・・中央領域
13b・・・小容器側の長辺
15・・・小容器
15a、15b・・・小容器を構成するフィルム
17・・・吊掛孔
19・・・接着部
21・・・弱シール部
23a、23b…延出部
25・・・半折線
31,31a・・・凹凸
41・・・上部金型
41a・・・凹部
43・・・下部金型
43a、43b・・・凸部
L、L1~L7・・・第1の引掛り部
R、R1~R7・・・第2の引掛り部
E1~E8・・・第1の引掛り部又は第2の引掛り部の端部
α・・・軸