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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】プログラム、方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20230313BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230313BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021140697
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034447
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518123947
【氏名又は名称】株式会社HRBrain
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄介
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095678(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113327122(CN,A)
【文献】特開2006-023880(JP,A)
【文献】特開2009-230419(JP,A)
【文献】山口 真知,サービス生産性定量化に関する研究 A Study on Quantification of Service Productivity,日本経営工学会論文誌 ,日本,公益社団法人日本経営工学会,2013年04月15日,第64巻第1号,p.28-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリとを備えるシステムに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
従業員から従業員体験の各評価項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施するステップと、
取得した前記期待値および前記実感値を用いて、前記評価項目毎に、前記期待値と前記実感値との差分が少ない場合に高評価となる評価スコアを算出するステップと、
算出した前記評価スコアに基づいて、前記評価項目のうち、改善すべき項目を抽出するステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記アンケートには、前記各評価項目の前記期待値を問う質問、前記各項目の前記実感値を問う質問、および前記各評価項目を更に細分化した小項目であって、前記各評価項目を改善するために着目するべき観点を問う質問が設定されている、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記プロセッサに、さらに、
前記観点を問う質問への回答結果に基づいて設定された、前記観点を改善するための施策に関するタスクの進捗を管理するステップを実行させる、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記アンケートには、テキスト入力による回答を求める質問が含まれ、
前記プロセッサに、さらに、
前記テキスト入力による回答を求める前記質問への回答結果に基づいて設定された施策に関するタスクの進捗を管理するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記プロセッサに、
前記従業員からの前記評価項目への評価を定量的に示す評価指数を算出するステップを実行させ、
前記評価指数は、前記評価スコアと、前記評価スコアの偏差値と、を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記評価指数を算出するステップでは、
前記従業員の個人情報が記録される従業員データベースに含まれる各種の属性に基づいて設定された区分毎に、前記評価指数を算出する、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記従業員の属性には、前記従業員における現在又は過去の人事評価に基づいて設定されたクラスを含み、
前記評価指数を算出するステップでは、
人事評価の各クラスに属する前記従業員群に対して、前記評価指数を算出する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記従業員の属性には、前記従業員の企業に対するエンゲージメントの大きさに基づいて設定されたクラスを含み、
前記評価指数を算出するステップでは、
前記エンゲージメントの各クラスに属する前記従業員群に対して、前記評価指数を算出する、請求項5から7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記プロセッサに、
前記アンケート結果および評価結果について、同業他社との比較を行い、自社の前記従業員の体験値が、同業他社と比較してどのような傾向にあるのかを分析するステップを実行させる、請求項5から8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記評価指数を算出するステップでは、
前記従業員の個人情報が記録される従業員データベースに含まれる各種の前記属性のうち、選択された複数の属性を用いて設定された区分毎に、前記評価指数を算出する、請求項5に記載のプログラム。
【請求項11】
前記プロセッサに、
抽出された前記改善すべき項目に対して、改善を促すためのタスクの進捗を管理するステップを実行させる、請求項1から10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記従業員体験の各評価項目は、
採用、オンボーディング、業務遂行、人事評価、人材育成、人事配置、仕事環境、企業文化を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
プロセッサとメモリとを備えるシステムに実行させる方法であって、
前記方法は、前記プロセッサが、
従業員から従業員体験の各評価項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施するステップと、
取得した前記期待値および前記実感値を用いて、前記評価項目毎に、前記期待値と前記実感値との差分が少ない場合に高評価となる評価スコアを算出するステップと、
算出した前記評価スコアに基づいて、前記評価項目のうち、改善すべき項目を抽出するステップと、を実行する方法。
【請求項14】
プロセッサとメモリとを備えるシステムであって、
前記システムは、前記プロセッサが、
従業員から従業員体験の各評価項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施する手段と、
取得した前記期待値および前記実感値を用いて、前記評価項目毎に、前記期待値と前記実感値との差分が少ない場合に高評価となる評価スコアを算出する手段と、
算出した前記評価スコアに基づいて、前記評価項目のうち、改善すべき項目を抽出する手段と、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業活動において、顧客満足度の向上のみならず、従業員が仕事を通して獲得する従業員体験を向上することが、企業の成長、ひいては企業価値の向上に寄与するという考え方が採用され始めている。
従業員体験を向上するために、例えば、特許文献1に記載のアンケートシステムを採用し、従業員からの回答に基づいて、施策を講じるという方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-197941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばスタートアップ企業のような小規模な企業で働く従業員は、オフィス環境や福利厚生の充実度よりも、仕事のやりがいの有無、又は実績に対する公正な評価を重視していることがある。このような従業員にとっては、オフィス環境が充実しているかどうかは、それほど重要な問題ではないことになる。
すなわち、従業員の性別、年齢、職種等属性、および企業の大きさ、業界等の属性により、従業員が重視する従業員体験の各項目は異なることが一般的である。
【0005】
一方、上記特許文献1に記載のシステムを用いて、例えば従業員体験の各項目に対するアンケートを取得すると、評価項目への満足度の評価に留まる可能性がある。すなわち従業員それぞれが、従業員体験のうち、どの項目を重視しているかという観点を度外視した分析結果では、そこから検討した施策では、従業員の期待に応えられないおそれがある。
【0006】
本発明は、企業の従業員体験のうち、改善すべき項目を効率的に抽出するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、プロセッサとメモリとを備えるシステムに実行させるプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、従業員から従業員体験の各項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施するステップと、取得した期待値および実感値を用いて、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を抽出するステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の従業員端末の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の管理端末の構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の概要を説明する図である。
図6】本実施形態の従業員データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図7】本実施形態のアンケートデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
図8】本実施形態の回答結果データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図9】本実施形態の評価結果データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図10】情報処理システムによる処理の前半を説明する図である。
図11】情報処理システムによる処理の後半を説明する図である。
図12】情報処理システムにおける画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
(1)情報処理システム1の構成
情報処理システム1の構成について説明する。図1は、本実施形態の情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、情報処理システム1は、従業員端末10と、管理端末20と、サーバ30と、プロダクトDB40と、により構成される。
従業員端末10は、管理端末20、サーバ30、およびプロダクトDB40とネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。ここで、従業員端末10は、従業員の人数に合わせて複数設定される。
【0012】
従業員端末10および管理端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。
【0013】
サーバ30は、複数の従業員端末10から取得した情報、および管理端末20から入力された情報に基づいた演算処理を実行し、後述する各種の情報を出力する。サーバ30は、1以上の物理コンピュータによって構成され得る。
サーバ30は、管理端末20から送信されたリクエストに応じたレスポンスを管理端末20に提供する。
【0014】
(1-1)従業員端末10の構成
従業員端末10の構成について説明する。図2は、本実施形態の従業員端末10の構成を示すブロック図である。従業員端末10は、企業の従業員が使用する端末である。なお、この発明における従業員端末10は、使用者である役員が使用する端末を含む。
【0015】
図2に示すように、従業員端末10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。
【0016】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0017】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0018】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0019】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、従業員端末10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0020】
入出力インタフェース13は、従業員端末10に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、従業員端末10に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、物理ボタン、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ15、スピーカ、ランプ、又は、それらの組合せである。
【0021】
通信インタフェース14は、従業員端末10と外部装置(例えば、管理端末20、サーバ30、プロダクトDB40、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
ディスプレイ15は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ15は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0022】
(1-2)管理端末20の構成
管理端末20の構成について説明する。図4は、本実施形態の管理端末20の構成を示すブロック図である。管理端末20は、管理者が使用する端末である。管理者とは、従業員のうち、企業における従業員体験の構築・改善の役割を担うものであり、例えば人事部門の管理職者又は担当者が該当する。なお、従業員の従業員体験の構築・改善の役割を担うものであれば、その他の部門の従業員が管理者となってもよい。
【0023】
図4に示すように、管理端末20は、記憶装置21と、プロセッサ22と、入出力インタフェース23と、通信インタフェース24、ディスプレイ25と、を備える。
【0024】
記憶装置21は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置21は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0025】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0026】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0027】
プロセッサ22は、記憶装置21に記憶されたプログラムを起動することによって、管理端末20の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ22は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0028】
入出力インタフェース23は、管理端末20に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、管理端末20に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ25、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0029】
通信インタフェース24は、管理端末20と外部装置(例えばサーバ30、プロダクトDB40、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
【0030】
ディスプレイ25は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ25は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0031】
(1-3)サーバ30の構成
サーバ30の構成について説明する。図3は、本実施形態のサーバ30の構成を示すブロック図である。
【0032】
図3に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、入出力インタフェース33と、通信インタフェース34とを備える。
【0033】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0034】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0035】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0036】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ32は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0037】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、サーバ30に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0038】
通信インタフェース34は、サーバ30と外部装置(例えば、従業員端末10、管理端末20、プロダクトDB、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
【0039】
(1-4)プロダクトDB40の構成
図1に示すプロダクトDB40は、従業員体験の改善に資するシステム(プロダクト)に関する情報を記憶するデータベースである。従業員体験の改善に資するプロダクトに関する情報としては、例えば以下が挙げられる。
・企業の採用活動を支援するシステム
・企業の人事評価を支援するシステム
・企業の福利厚生の整備を支援するシステム
・企業の従業員情報を管理するシステム
・企業内の組織分析に基づく、最適な人事配置を支援するシステム
・企業内での人材育成を支援するシステム
・各従業員における業務の進捗管理を支援するシステム
・従業員の入社・定着業務(オンボーディング)を支援するシステム
・従業員の意見や状態を収集するシステム(アンケートシステム)
・企業の人的資源を可視化するシステム(従業員数や男女比の推移等をグラフで表示するシステム)
・従業員の離職傾向を察知しアラートを出すシステム
・企業の従業員間のコミュニケーションを支援するシステム
なお、プロダクトDBが記憶するプロダクトは、従業員体験の改善に資するプロダクトであれば、これら以外のシステムであってもよい。
【0040】
プロダクトDB40が記憶するプロダクトに関する情報とは、プロダクトそのものに関するデータであってもよいし、プロダクトの機能や操作方法を解説し、費用や導入方法を示したプロダクトの紹介情報であってもよい。プロダクトDB40にアクセスすることで、記憶されたプロダクトに関する情報を取得することができる。
【0041】
(2)実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。図5は、本実施形態の概要の説明図である。
図5Aは、アンケートの形式を説明する図である。図5Bは、アンケートの他の形式を説明する図である。図5Cはアンケート結果の分析方法を説明する図である。
【0042】
本実施形態の情報処理システム1は、従業員体験の各項目について、期待値と実感値に関するアンケートを実施し、その結果から改善すべき項目を抽出するシステムである。ここで、従業員体験とは、従業員が組織との関わりを通じて得られる全ての経験や体験を指す。
【0043】
従業員体験の各項目としては、例えば以下が挙げられる。なお、以下の各項目では、大項目毎にその内容を細分化した中項目を、それぞれ2つずつ括弧内に示している。
・採用(選考期、内定期)
・オンボーディング(業務理解、関係構築)
・業務遂行(業務内容、協働関係)
・人事評価(目標設定、評価・報酬)
・人材育成(キャリア設計、能力開発)
・人事配置(業務適性、職場適性)
・仕事環境(労働条件、制度)
・企業文化(企業理念、組織風土)
以下の説明において、従業員体験に関する各項目(単に、各項目と示す場合も含む)とは、上述した16個の中項目を指す。なお、各項目の区分については、従業員体験に関するものであれば、任意に変更することができる。
【0044】
情報処理システム1では、従業員に対して、図5Aに示す従業員体験の各項目に関するアンケートを実施する。アンケートの設問は、各項目に対する期待値を回答する設問と、各項目に対する実感値を回答する設問と、に大別される。
具体的には、アンケートでは、中項目に関する複数の設問(評価項目)が設定され、設問に対して、期待値又は実感値を従業員に回答させる。回答は、1から5の5段階評価により行われる。なお、評価する段階は任意に変更することができる。
【0045】
図示の例では、大項目「採用」に関する中項目「選考期」についてのアンケートとして、例えば以下の設問が挙げられる。
・Q1:就職活動を納得した状態で終えることをどの程度求めますか?
・Q2:弊社への就職活動における納得感をどの程度感じていますか?
・Q3:選考活動を通じて知りたい情報を充分に得ることができた。
・Q4:選考を通じて、自分自身の価値観やキャリアに関して興味を持ってヒアリングされた。
【0046】
これらの設問のうち、Q1は期待値を回答する質問となっており、Q2~Q4は、実感値を回答する質問となっている。より詳細には、Q2はQ1に対する実感値(満足度)を問う内容になっている。
すなわち、Q1に対しては、従業員は体験前(選考を受ける前)に抱いていた期待値を5段階評価で回答する。一方、Q2~Q4に対しては、従業員は、体験後(選考を受けた後)の実感値を5段階評価で回答する。
【0047】
具体的には、従業員はQ1に対して、特に期待していた場合には「5」と回答し、特に期待していなかった場合には、「1」と回答し、その中間の場合には、「3」と回答する。
また、従業員はQ2~Q4に対して、該当する場合には「5」と回答し、該当しない場合には、「1」と回答し、その中間の場合には「3」と回答する。
【0048】
なお、必ずしも回答者が数字を入力する必要はなく、予め準備された数値を選択する回答形式であってもよい。また、例えばビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)を用いて、従業員の主観を直感的に定量化できる回答形式を採用してもよい。
また、図5Bに示すように、設問の中に、テキスト入力にて回答を行う設問が設けられてもよい。テキスト入力による回答は、例えば中項目毎に設けられてもよい。
【0049】
アンケートにおいては、同じタイミングに期待値と実感値を取得してもよいし、設問によっては、期待値を事前に取得し、所定期間の経過後に実感値を取得するように経時的な集計を行ってもよい。
【0050】
情報処理システム1は、取得した設問の期待値と実感値の値に基づいて差分を算出する。差分を算出することで、評価した従業員体験の項目のうち、改善すべき項目が抽出される。情報処理システム1は、従業員体験に関する各項目に関する従業員体験の充実度を定量的に示す評価指数を算出する。評価指数は、期待値と実感値とを総合的に評価した値であり、従業員の従業員体験が理想的な状態になっているかどうかを示す値であり、数値が高い方が理想的な状態に近いと判断される。企業としては、従業員体験を向上して従業員が充実した状態で仕事を行う環境を整備するために、算出された差分および評価指数を確認して、従業員の従業員体験がどのように推移しているかを確認することで、従業員体験を向上するための施策の妥当性を検証する。
【0051】
本実施形態で説明する従業員体験を示す評価指数としては、以下が挙げられる。
・評価スコア
・評価スコアの偏差値
【0052】
評価スコアは、期待値と実感値との差分に基づいて算出されるスコア値である。図5Cは、設問への回答結果を、従業員体験の中項目ごとに、期待値をY軸、実感値をX軸としてプロットした図である。この図において、16個のプロットは、右側に示す従業員体験の中項目とそれぞれ対応している。なお、以下に後述する特徴的な値を除き、それぞれのプロットが、どの中項目に対応するかの説明は省略する。
【0053】
図5Cにおいて、ある中項目への回答が、図5Cに示すY=Xの直線(以下、基準直線という)よりも左側に位置する場合には、回答した従業員は、当該中項目について、期待していたほどに満足できなかったということになる。このような状態が継続すると、従業員の労働意欲の減退、ひいては従業員の離職につながるおそれがあるため、評価対象である項目は改善すべきであることが示唆される。例えば、プロットM6(協働関係)は基準曲線との乖離が大きく、実感値(満足度)も低いため、改善の余地が多くあることが確認できる。
【0054】
一方、図5Cにおいて、ある中項目への回答が、基準直線よりも右側に位置する場合には、回答した従業員は、当該中項目に対して、期待していた以上に満足できたということになる。このため、一義的には当該中項目には問題がないと判断することができる。
しかしながら、基準直線よりも大きく右側に乖離している場合には、当該評価項目は、人的、制度的、あるいは設備的に過剰に整備されており、コスト削減の余地があることが示唆される。例えば、プロットM10(能力開発)がそのような例として該当する。すなわち、企業側の能力開発領域へのツールや施策が過剰に整備されているが、従業員にとってはそこまで重要ではないため無駄が発生している状態等が想定される。
【0055】
これらに対して、ある設問への回答が、図5Cに示す基準直線上に位置する場合には、回答した従業員は、期待していた程度と比較して、適度に満足している状態であると判断でき、最適な状態であることが示唆される。このため、期待値および実感値のプロットは、基準直線に近い位置にプロットされることが望ましい。例えば、プロットM13(労働条件)は差分が少なく、実感値も高く基準直線との近接しているため、適切な状態であると判断できる。
【0056】
そして、評価スコアは、実感値と、従業員体験の各項目のうち、期待値と実感値との差分が小さい項目の数量と、に基づいて算出される。評価スコアの具体的な計算方法については後述する。
評価スコアの偏差値とは、評価対象となる集合における評価スコアについて、その分布を正規化したときの値である。偏差値の算出方法については後述する。
【0057】
情報処理システム1は、アンケートへの回答結果に基づいて、組織において改善するべき項目を抽出する。管理者は抽出された項目を確認し、従業員体験を改善するための施策を検討する。これらの具体的な手法については後述する。
【0058】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置31に記憶される。
【0059】
(3-1)従業員データベース
本実施形態の従業員データベースについて説明する。図6は、本実施形態の従業員データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0060】
従業員データベースには、従業員情報が格納される。従業員情報は、企業に属する従業員に関する情報である。なお、従業員データベースには、使用者である役員に関する情報を含んでもよく、情報処理システム1によるアンケートに回答するすべてのユーザの情報を含みえる。
【0061】
図6に示すように、従業員データベースは、「従業員ID」フィールドと、「氏名」フィールドと、「個人情報」フィールドと、「所属部署」フィールドと、「役職」フィールドと、「勤続年数」フィールドと、「人事評価」フィールドと、「eNPS値」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0062】
「従業員ID」フィールドには、従業員のIDが格納される。従業員IDは、従業員を識別するための符号であり、従業員ごとに設定されている。
【0063】
「氏名」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の氏名が格納される。
【0064】
「個人情報」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の個人情報が格納される。従業員の個人情報は、例えば以下の情報を含む。
・年齢、性別、生年月日等の出生に関する情報
・国籍、出身地、居住地等の従業員と関連の深い地理的な情報
・学歴、職歴(現職における過去の役職、業務内容を含む)等の経歴に関する情報
・兄弟構成、扶養家族の有無、配偶者および子供の有無等の家族に関する情報
・性格パターン、人材タイプ診断データ、SPI検査結果等の性格、気質に関する情報
・血液型、健康診断結果等の生体情報
・職種、雇用形態(正社員、短時間正社員、契約社員、業務委託、派遣社員、パートタイム、アルバイト、インターン等)に関する情報
・新卒採用、第二新卒採用、中途採用といった採用区分に関する情報
・勤務地(在宅ワークかオフィスワークかを含む)等の従業員の働く場所に関する情報
・労働時間、残業時間、深夜残業時間等の終業時間に関する情報
・有給取得数、残有給数、遅刻回数、欠勤日数、等の勤怠に関する情報
なお、これらの各情報は、項目毎に従業員データベースにカラムが設けられてもよい。
【0065】
「所属部署」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の現在の所属部署に関する情報が格納される。例えば、「所属部署」フィールドには、営業部、開発部、法務部、総務部、製造部等の部署名が格納される。
【0066】
「役職」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の現在の役職に関する情報が格納される。「役職」フィールドには、チームリーダ、課長、部長等の部署における役職に限られず、プロジェクトマネージャー等のような業務案件における役割に関する情報を格納してもよい。また、役職にかえて、あるいは役職とは別に、従業員の職位に関する情報を格納してもよい。
【0067】
「勤続年数」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の勤続年数に関する情報が格納される。
【0068】
「人事評価」フィールドには、従業員IDに対応する従業員の人事評価に関する情報が格納される。具体的には、人事評価フィールドには、従業員における現在又は過去の人事評価に基づいて設定されたクラスが格納される。すなわち、人事評価を例えば上位のクラスから下位のクラスまで、S、A、B、C、Dのように5段階に設定し、該当するクラスの情報が格納される。
【0069】
「eNPS値」フィールドには、従業員IDに対応する従業員のeNPS値が格納される。eNPS値(Employee Net Promoter Score)とは、従業員のエンゲージメントを示す値であり、従業員の所属する企業に対するロイヤリティ、すなわち、企業に対する愛着又は信頼の度合いを示す数値である。eNPS値は、従業員に対する定期的なアンケートにより取得される。「eNPS値」フィールドには、eNPS値の数値範囲により設定されてたクラスが格納されてもよい。
【0070】
なお、従業員データベースには、これらの属性に限定されず、従業員の属性に関するあらゆる情報を格納することができる。
なお、従業員データベースには、会社が保有する従業員に関する情報に基づいて、以下に例示するように、各種の情報を集計したうえで、集計結果を属性情報として記憶させてもよい。
・現部署在籍期間、累計異動回数、同じ部署の平均の在籍期間(=異動スパン)
・社内研修受講有無
・表彰データ
・資格
・入社日
・在籍年数
・給与・報酬・賞与
・採用経路
・ソーシャルスタイル
【0071】
(3-2)アンケートデータベース
本実施形態のアンケートデータベースについて説明する。図7は、本実施形態のアンケートデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
アンケートデータベースは、スコア算出用アンケートテーブルと、施策用アンケートテーブルと、を含む。
【0072】
スコア算出用アンケートテーブルには、評価スコアの算出のために用いられるアンケートに関する情報が格納される。
図7Aに示すように、スコア算出用アンケートテーブルは、「大項目」フィールドと、「中項目」フィールドと、「回答種別」フィールドと、「設問」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0073】
「大項目」フィールドは、「ID」サブフィールドと、「項目名」サブフィールドと、を含む。
「ID」サブフィールドには、大項目のIDが格納される。
「項目名」サブフィールドには、大項目IDに対応する大項目の項目名が格納される。
【0074】
「中項目」フィールドは、「ID」サブフィールドと、「項目名」サブフィールドと、を含む。
「ID」サブフィールドには、大項目IDをさらに細分化した中項目IDが格納される。
「項目名」サブフィールドには、中項目IDに対応する中項目の区分が格納される。
【0075】
「回答種別」フィールドには、該当する設問が期待値を問うものか、実感値を問うものかを識別する情報が格納される。
【0076】
「設問」フィールドは、「設問No」サブフィールドと、「設問ID」サブフィールドと、「設問内容」サブフィールドと、を含む。
「設問No」サブフィールドには、設問Noが格納される。
「設問ID」サブフィールドには、設問Noと対応する設問IDが格納される。設問IDは、中項目IDと回答種別を示す種別記号(e:期待、r:実感)により構成されている。例えば、設問ID「M1-e」は、中項目M1に関する期待値を問う設問であることが設問IDから識別できる。また。設問ID「M1-r」は、中項目M1に関する実感値を問う設問であることが設問IDから識別できる。
「設問文」サブフィールドには、設問文を示すテキストデータが格納される。
【0077】
このように、スコア算出用アンケートテーブルでは、各中項目に対して、期待と実感それぞれに関する質問が1つずつ格納されている。全ての設問は、属する中項目および大項目が定義されている。
【0078】
施策用アンケートテーブルには、従業員体験の各項目を改善するための施策の検討に用いられるアンケートに関する情報が格納される。
図7Bに示すように、施策用アンケートテーブルは、「中項目」フィールドと、「小項目」フィールドと、「設問」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0079】
「中項目」フィールドは、「ID」サブフィールドと、「項目名」サブフィールドと、を含む。
「ID」サブフィールドには、大項目IDをさらに細分化した中項目IDが格納される。
「項目名」サブフィールドには、中項目IDに対応する中項目の区分が格納される。
【0080】
「小項目」フィールドは、「小項目ID」サブフィールドと、「項目名」サブフィールドと、を含む。
「小項目ID」サブフィールドには、中項目をさらに細分化した小項目のIDが格納される。
「項目名」サブフィールドには、小項目IDに対応する小項目の区分が格納される。小項目の項目名は、小項目が属する中項目を改善するための施策として着目する観点を示す内容が設定されている。すなわち、中項目の従業員体験を向上するために、中項目と関連性の高い事項であって、従業員の実感値を確認すべき事項が小項目として設定される。
例えば、中項目「選考期」の小項目として、「情報提供」、「自己理解」が設定されている。
【0081】
管理者は、管理端末20を操作して、小項目の項目名を任意に変更することができる。すなわち、中項目の改善のために、どのような観点に着目すべきか、管理者の判断によって任意に決めることができる。小項目の変更に伴い、設問の内容も任意に変更することができる。また、小項目の数も任意に変更することができる。
【0082】
「設問」フィールドは、「設問No」サブフィールドと、「設問内容」サブフィールドと、を含む。
「設問No」サブフィールドには、設問Noが格納される。
「設問文」サブフィールドには、設問文を示すテキストデータが格納される。
【0083】
このように、スコア算出用アンケートテーブルでは、各中項目に対して、中項目を改善するために重要となる観点についての従業員の実感値を問う質問が2つずつ格納されている。全ての設問は、属する中項目が定義されている。
【0084】
そして、図5Aに示すように、アンケートでは、各中項目について、中項目の期待値を問う質問(Q1)、中項目の実感値を問う質問(Q2)、中項目を細分化した小項目を問う質問(Q3、Q4)が設定されている。すなわち、アンケートでは、スコア算出用アンケ―トテーブル、および施策用アンケートテーブルそれぞれから、中項目毎に設問を抽出し、中項目単位で問題を並べて出題する。このため、アンケートでは、期待値を問う質問Q1の後に、実感値を問う質問(Q2~Q4)が並んでいる。この組み合わせが全ての16個の中項目について作成される。項目毎の出題数は4題に限られず、任意に変更することができる。なお、スコア算出用のアンケートと、施策用アンケートは、図5Aの構成に限られず、別のアンケートとして構成してもよい。
【0085】
このように、アンケートの設問は、階層構造を有する大区分と中区分、又は大区分から小区分によりそれぞれ区分けされている。このため、設問IDが特定されると、該当する小区分、中区分、および大区分が全て特定される。
【0086】
また、施策用アンケートテーブルでは、図5Bに示すテキスト入力による回答を求める設問に関するテーブルを備えてもよい。この場合には、それぞれの中項目における実感値に関して、回答された実感を得られた理由に関する質問が、中項目IDと関連付けられて格納される。
【0087】
(3-3)回答結果データベース
本実施形態の回答結果データベースについて説明する。図8は、本実施形態の回答結果データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0088】
回答結果データベースには、アンケートへの回答結果に関する情報が格納される。
図8に示すように、回答結果データベースには、「従業員ID」フィールドと、「Q1期待値」フィールドと、「Q1実感値」フィールドと、「Q2-Q1差分」フィールドと、「Q3実感値」フィールドと、「Q4実感値」フィールドと、…を含む。図示と説明を省略するが、設問の数に対応して、それぞれの設問に対する回答結果が、それぞれカラムとして設けられている。各フィールドは、互いに関連付けられている。
また、中項目ごとに、スコア算出用アンケートテーブルに格納された設問における期待値と実感値との差分が計算されて格納されている。施策検討用アンケートテーブルに格納された設問に対しては、回答された実感値が格納されている。
また、仮にテキスト入力により回答を受け付けた場合には、回答されたテキストデータが格納される。
すなわち、回答結果データベースには、アンケートに回答した従業員ごとに、全ての設問への回答結果が格納されている。
【0089】
(3-4)評価結果データベース
本実施形態の評価結果データベースについて説明する。図9は、本実施形態の評価結果データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0090】
評価結果データベースには、アンケートへの回答結果に対して分析を行い、従業員体験の各項目について評価した結果が格納される。
図9に示すように、回答結果データベースには、「評価対象」フィールドと、「中項目ID」フィールドと、「平均期待値(Yi)」フィールドと、「平均実感値(Xi)」フィールドと、「平均差分(Xi-Yi)」フィールドと、「評価スコア」フィールドと、「偏差値」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0091】
「評価対象」フィールドには、従業員体験の各項目を評価するうえで、評価対象となる集合を定義するための区分が格納される。区分としての従業員の属性は、後述する評価集合の定義において指定された従業員の属性情報に基づいて設定される。例えば、評価集合として、全社が挙げられる。これは、会社全体における評価スコアの算出の際に設定されるデータである。
【0092】
また、所属部署ごとに従業員体験の各項目を評価する場合には、図6に示す従業員データベースにおける「所属部署」フィールドに格納された複数の部署名が参照される。これにより、図9に示すように、「評価対象」フィールドに、営業部、開発部、…、といった従業員の所属部署として設定されている各部署名が格納される。
【0093】
一方、役職ごとに従業員体験の各項目を評価する場合には、従業員データベースにおける「役職」フィールドに格納された複数の役職名が参照され、「属性」フィールドに、従業員の役職として設定されている各役職名が格納される。
すなわち、「評価対象」フィールドには、従業員データベースに格納された従業員の属性であって、評価対象となる集合を定義するために指定された属性のうちのいずれかが格納される。評価対象となる集合を定義する処理については後述する。
【0094】
「中項目ID」フィールドには、従業員体験の各項目に関するIDが格納される。具体的には、図7に示すアンケートデータベースに格納された中項目IDである。
【0095】
「平均期待値(Yi)」フィールドには、「評価対象」フィールドに該当する従業員からの回答結果であって、対応する中項目IDに属する設問への回答結果における期待値の平均値が格納される。「平均期待値(Yi)」フィールドの値は、図8に示す回答結果データベース、および図6に示す従業員データベースを参照して算出される。
【0096】
「平均実感値(Xi)」フィールドには、「評価対象」フィールドに該当する従業員からの回答結果であって、対応する中項目IDに属する設問への回答結果における実感値の平均値が格納される。「平均実感値(Xi)」フィールドの値は、図8に示す回答結果データベース、および図6に示す従業員データベースを参照して算出される。
【0097】
「平均差分(Xi-Yi)」フィールドには、「評価対象」フィールドに該当する従業員からの回答結果であって、対応する中項目IDに属する設問への回答結果における平均実感値と平均期待値との差分が格納される。具体的には、平均実感値(Xi)から平均期待値(Yi)を引いた値が格納される。
【0098】
「評価スコア」フィールドには、評価指数のうちの評価スコアが格納される。評価スコアは、従業員体験の各項目それぞれの平均期待値、平均実感値、および平均差分に基づいて算出され、以下の判断基準を考慮した計算式により算出される。
図5Cに示す基準曲線との距離が近い方がよい。
・実感値および期待値それぞれが高い方がよい。(特に実感値)
・差分が0の場合は、実感値が高い方がよい。
・実感値が期待値よりも高すぎるのもよくない。
【0099】
例えば、評価スコアは、以下の計算式により算出される。
評価スコア=(Xi/基準曲線との距離の正規化した値)の総和×(Xi-Yi>0となる項目数)×(Xi>中間値となる項目数)×(Yi>中間値となる項目数)
項目数とは、期待値と実感値が評価される中項目の区分の数を指す。
中間値とは、回答値の中間の値であり、例えば5段階評価では「3」となる。
【0100】
「偏差値」フィールドには、評価スコアについての偏差値が格納される。評価スコアの偏差値は、過去に得られた回答結果の統計的な分布に基づいて設定された平均値と標準偏差に基づいて算出される。具体的には以下の式により算出される。
偏差値=((評価スコア-平均値)/標準偏差)+50
なお、偏差値を算出するための平均値と標準偏差については、アンケートへの回答結果の蓄積に応じて、適宜補正することができる。
【0101】
(4)情報処理
本実施形態の情報処理について説明する。
図10は、本実施形態の情報処理システム1による処理の全体を説明する図である。
【0102】
図10に示すように、サーバ30は、アンケートを実施する(ステップS130)。
具体的には、サーバ30は、図7に示すアンケートデータベースに格納されたアンケートの設問文について、期待値と実感値との回答を求めるアンケートを作成し、従業員端末10に送信する。
【0103】
アンケートの作成では、管理者はまず、回答者およびアンケートの実施時期、アンケートの回答期限を設定する。設定された内容に従い、アンケートが配布される。ここで、管理者はアンケートの設問を選択する。アンケートの設問のうち、評価スコア用のアンケートについては、例えば中項目を選択することで、該当する中項目に属する設問が選択される。また、施策用アンケートについては、小項目を選択することで、該当する小項目に属する設問が選択される。選択する小項目の数量は任意に変更することができる。
【0104】
ステップS120の後に、従業員はアンケートへの回答を行う(ステップS110)。具体的には、従業員は、従業員端末10を操作して、サーバ30から受信したアンケートに回答する。従業員が回答した結果は、サーバ30に送信される。サーバ30は、従業員から受信した回答結果を、図8に示す回答結果データベースの新たなレコードとして記録する。アンケートの回答情報には、回答者の従業員IDが含まれるが、その後の後述する評価結果の表示において、回答者毎の回答結果を識別できる状態として表示するか、回答者毎の回答結果を識別できない状態として表示するか、については管理者が選択することができる。なお。回答者毎の回答結果を識別できる状態として評価結果を表示することが望ましい。期待値と実感値との乖離のある従業員を特定することで、将来的な離職のリスクを従業員単位で把握することができるからである。
【0105】
ステップS110の後に、サーバ30は、全社に対する評価指標の算出を行う(ステップS131)。具体的には、サーバ30は、全ての従業員からの回答結果に対して評価指標を算出する。具体的には、中項目ごとの平均期待値、平均実感値、平均差分を算出し、算出した結果に基づいて、評価スコアおよびその偏差値を算出する。偏差値の算出に際しては、予め設定されている標準偏差と平均値とを用いて偏差値を計算する。サーバ30は、算出した結果を、図9に示す評価結果データベースにおける新たなレコードとして記録する。
【0106】
ステップS131の後に、管理者は、評価集合の指定を行う(ステップS120)。具体的には、管理者が管理端末20を操作して、評価集合を指定する。管理者は、所定の入力フォームから評価集合を選択することで、従業員の属性のうち、評価集合を形成するための区分を指定する。例えば、従業員の所属部署ごとに評価したい場合は、所属部署を指定し、従業員の役職ごとに評価したい場合は、役職を指定する。管理者が指定した評価集合の区分は、サーバ30に送信される。指定する区分としては、従業員の従業員データベースに含まれる全ての属性から選択することができる。
【0107】
ステップS120の後に、サーバ30は、評価集合の定義を行う(ステップS132)。具体的には、管理端末20から送信された評価集合の区分を参照し、評価集合を定義する。例えば、管理者により評価集合の区分として所属部署が指定された場合には、サーバ30は、所属部署を評価集合の区分として定義する。
【0108】
ステップS132の後に、サーバ30は、評価集合に対する評価指数の算出を行う(ステップS133)。具体的には、サーバ30は、定義した評価集合の区分、および回答結果データベースの情報を参照して、評価集合ごとに平均期待値、平均実感値、および平均差分を集計し、その結果から評価指数を算出する。すなわち、サーバ30は、定義した評価集合の区分となる属性ごとに、評価指数における評価スコアを算出する。例えば、評価集合の区分が所属部署である場合には、サーバ30は、部署毎の評価スコアを算出する。サーバ30は、評価スコアの算出の後に、評価スコアに基づいて、部署毎の偏差値を算出する。サーバ30は、算出した結果を、図9に示す評価結果データベースにおける新たなレコードとして記録する。これにより、サーバ30による改善すべき項目の抽出が完了する。
【0109】
ステップS133の後に、サーバ30は、評価結果を提示する(ステップS134)。具体的には、サーバ30は、評価結果を管理端末20に送信することで、管理者に提示する。
【0110】
ステップS134の後に、管理端末20は、評価結果を表示する(ステップS121)。具体手時には、管理端末20は、評価結果をディスプレイ25に表示する。この際の画面例P10については後述する。管理者は、ディスプレイ25に表示された評価結果を参照して、全社の従業員体験の評価スコアおよび偏差値を確認するとともに、部署毎の評価スコアおよび偏差値を確認する。そして、管理者は、改善すべき従業員体験の各項目を確認する。このように、管理者が、評価集合ごとの評価スコアおよび偏差値を確認することで、評価集合ごとの評価結果の傾向を確認することができる。
【0111】
図11に示すように。ステップS121の後に、サーバ30は、プロダクトの提案を行う(ステップS135)。具体的には、サーバ30は、従業員体験の各項目のうち、最も改善すべき項目、あるいは所定の閾値よりも評価スコアが低い項目と関連し、かつプロダクトDB40に格納されたプロダクト、又はプロダクトについての紹介情報を、管理端末20に提供する。例えば、採用に関する項目が改善すべき項目と判断される場合には、サーバ30は、管理端末20に対して、採用支援を行うプロダクトを提案する。
【0112】
ステップS135の後に、管理端末20は、プロダクトの表示を行う(ステップS122)。具体的には、管理端末20は、サーバ30から提案されたプロダクト、又はプロダクトについての紹介情報を、ディスプレイ25に表示する。管理者は、ディスプレイ25に表示されたプロダクト、又はプロダクトについての紹介情報を確認して、当該プロダクトの採用を検討する。
【0113】
ステップS122の後に、サーバ30は、管理者による従業員体験の改善に向けた施策に関するタスクの管理を行う。タスク管理機能では、設定された改善項目の優先順位に基づいて、実行すべきタスクをそのスケジュールとともに設定する。
【0114】
施策に関するタスクは、小項目として設定された項目、および小項目に対応する設問への回答である実感値の大きさに基づいて管理者により行われてもよい。例えば、図7Bに示すアンケートにおいて、中項目「選考期」に改善の余地がある場合には、小項目として設定されたQ3およびQ4への回答結果を確認する。そして、仮にQ3の回答としての実感値が低い場合には、選考期における情報提供について、改善の余地があることが判断できるため、管理者は、採用担当者に対して、Q3と対応する小項目である「情報提供」という観点を改善するための施策を検討する。当該施策には複数のタスクが設定され、それらの内容と、担当すべき部署又は担当者、実行されるべきスケジュールを管理者が管理端末20から入力する。
【0115】
また、施策に関するタスクは、図5Bに示すテキスト入力による回答を求める設問に対する回答結果に基づいて設定されてよい。この場合には、テキスト入力により回答された内容に対してテキストマイニング処理を行い、回答文であるテキストデータを単語や文節で区切り、それらの出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析する。これにより、該当する中項目を改善するための有用な情報を取り出すことができる。この際、テキスト情報から感情分析を行い、否定的な回答と肯定的な回答とを分類してもよい。
【0116】
管理端末20は、タスクの進捗を確認する(ステップS123)。具体的には、管理者はタスクを実行すべき部署又は担当者に進捗を確認し、その旨を管理端末20から入力する。入力された進捗状況は、サーバ30に通知される。サーバ30によるタスク管理では、サーバ30は、設定されたスケジュールを参照し、期限までに設定されたタスクの実行が行われたかどうかを継続的に確認する。
【0117】
当該タスクが期限までに実行されてない場合、または期限の直前になっても当該タスクが実行されていないことが確認された場合には、サーバ30は、管理端末20に対して、タスクの実行を促すアラートを出す。これにより、確実に従業員体験の改善に向けたタスクを管理者に実行させることができる。
【0118】
タスク管理機能では、各部門で行われる改善施策に関するタスクの具体的な進捗について、部門横断的に表示するダッシュボードを備えてもよい。ダッシュボードでは、それぞれの部門において行われるべきタスクについての進捗状況を、一覧として管理端末20に表示する。このため、管理者は、各部門にまかせるのではなく、具体的な進捗について管理することができ、効果的に従業員体験の改善を促すことができる。
以上により、情報処理システム1による処理が終了する。
【0119】
(5)使用例
本実施形態の使用例について説明する。
まず、管理者が、評価集合の区分として、所属部署として指定する。所属部署として、例えば、営業部、開発部、法務部、総務部、製造部が設定されている場合には、それぞれの部署に属する従業員の集合に対して、従業員体験の中項目M1からM16の平均期待値、平均実感値、平均差分が算出される。次に、これらの値に基づいて、それぞれの部署毎に評価スコアと偏差値とが算出され、管理端末20に表示される。この時の表示画面P10を図12に示す。
このうち、図12Aは全体の評価結果を示す図、図12Bは部署毎(評価集合毎)の評価結果を示す図図である。
【0120】
図12Aには、全体の評価結果が示されている。この図では、全社および評価集合ごとの評価結果として、中項目毎の偏差値と、偏差値の算出に用いた平均差分、平均期待値、平均実感値が表示されている。なお、この図では評価スコアの表示を省略しているが、評価スコアを同時に表示してもよい。また、偏差値の過去からの推移を別途表示して、改善活動の進捗の程度を示してもよい。また、全社での偏差値について、サーバ30は、同業他社、又は同じ企業規模の他の企業と比較することもできる。サーバ30が他社と比較する情報は以下を含む。
・アンケート結果(各中項目に対する回答値(期待値、実感値)各小項目に対する回答値
・アンケート結果に基づく評価結果(算出した差分、評価スコア、評価スコアの偏差値)
この図では、中項目ごとに評価結果が表示されていることで、平均差分、平均期待値、平均実感値の値により、抽出された改善すべき項目が示唆されている。
【0121】
図12Bの上側には、部署毎の評価スコアおよび偏差値が表示されている。棒グラフは評価スコアの値に基づき作成されている。これらの評価スコアおよび偏差値を確認することで、どの部署の従業員体験が高く、どの部署の従業員体験が低いかを管理者は判別することができる。なお、この図において、偏差値のみの表示としてもよい。この場合には、棒グラフは偏差値を示すグラフとなる。
【0122】
図12Bの下側には、従業員の属性に基づいて設定された区分(この例の場合、所属部署)毎に、従業員体験の各項目の評価がされている。すなわち、評価集合ごとの各項目に対する評価結果が表示されている。この図では、従業員体験の中項目(M1~M16)に対して、平均実感値、差分、およびこれらに基づいて算出された優先順位が表示されている。サーバ30は、算出された差分および期待値に基づいて、改善すべき項目の優先順位を設定する。具体的には、サーバ30は、アンケートでの回答結果に基づいて、平均差分および平均期待値から優先順位を設定する。
【0123】
具体的には、平均差分が大きい順に優先順位が高いとされ、平均差分が同じ場合には、平均期待値が大きい方が、優先順位が高いとされる。また、優先順位の設定に際しては、各項目に対して、重み付けをしてもよい。すなわち、各項目に対して重み付けのための補正係数を設定し、平均差分に対して補正係数を乗じた値により、優先順位を評価してもよい。この場合、補正係数は、各項目と、従業員へのエンゲージメントへの関連性に基づいて設定することができる。
【0124】
すなわち、従業員体験の各項目は、従業員のエンゲージメントへの影響が高い項目と、低い項目と、に分けられる。例えば、中項目M8「評価、報酬」、M13「労働条件」、M6「協働関係」などは比較的、エンゲージメントとの相関が高いことが知られている。
一方、中項目M15「企業理念」、M3「業務理解」などは、エンゲージメントとの相関が低いことが知られている。このような経験的に確認された各項目とエンゲージメントとの相関の高低に基づいて、補正係数を設定しておくことで、従業員のエンゲージメントを効率的に向上するために、改善すべき項目を適切に抽出することができる。
【0125】
そして、画面例P10を確認した管理者は、営業部の従業員体験が低いことを確認する。そして、管理者は営業部において、従業員体験の中項目M1からM16のうち、優先順位の高い項目を確認する。図示の例では、中項目のうち、中項目IDが「M6」に該当する中項目「協働関係」の優先順位が「1」となっている。これは、中項目「協働関係」の実感値が低く、かつ平均差分が大きいことを意味し、従業員の抱いていた期待と乖離して、不満足の程度が高いことが示唆される。このため、管理者は、従業員体験のうち、「協働関係」に関する従業員体験について、改善するための施策を検討する必要があることを認識する。
【0126】
次に、この例において、サーバ30は、プロダクトとして、企業内の連携を支援するためのシステムを提案する。管理者は、提案されたプロダクトの内容を確認し、従業員体験のうちの「協働関係」に関する業務フローを改善するために、当該プロダクトが有効かどうかを判断する。管理者が有効であると判断した場合には、提案されたプロダクトを採用し、「協働関係」における従業員体験の改善に利用する。これにより、従業員体験のうちの改善すべき項目に対して、適切な改善のための施策をとることができる。
【0127】
なお、上記の説明では所属部署を評価集合の区分とした例を説明したが、この例に限られない。例えば、評価集合の区分として、役職を選択した場合には、役職ごとに、従業員体験の各項目に対する従業員体験を評価することができる。また、勤続年数、人事評価に基づくクラス、eNPS値に基づくクラス、等により評価集合を設定することができる。また、個人情報として従業員データベースに記録された各種の属性に関する情報を、評価集合を形成するうえでの区分として設定してもよい。
【0128】
また、評価集合の区分としては、複数の属性を選択してもよい。例えば所属部署と役職を選択した場合には、所属部署および役職の双方を区分とするより細分化された評価集合が形成される。このように、複数の属性を用いて細分化した集合により、従業員体験に関する従業員体験を評価してもよい。
【0129】
(6)小括
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理システム1では、従業員へのアンケートにより取得した期待値および実感値を用いて、前記従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を抽出する。このため、従業員体験のうち、従業員がどの項目に期待していたかを把握することができる。そして、従業員が期待していた項目が充分に整備できているかどうかについて評価することができる。このため、企業の従業員体験のうち、改善すべき項目を効率的に抽出することができる。
【0130】
また、情報処理システム1は、取得した期待値と実感値との差分を算出し、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を示唆する。このため、アンケート結果に基づいて、定量的に従業員体験における改善点を抽出することができる。
【0131】
また、情報処理システム1が、算出された差分に基づいて、改善すべき項目の優先順位を設定する。このため、管理者が検討すべき施策を整理しやすくすることができる。
【0132】
また、情報処理システム1が、設定された優先順位を、従業員体験の各項目毎に表示するので、管理者が容易に評価結果を把握することができる。
【0133】
また、評価指数が、評価スコアと、評価スコアの偏差値と、を含むので、評価集合ごとにおける従業員体験の分布を把握することができる。
【0134】
また、情報処理システム1が、従業員の属性に基づいて設定された区分毎に、評価指数を評価する。このため、例えば所属部署毎や役職毎といった従業員の属性の違いによる従業員体験の違いを確認することができ、様々な視点により、従業員体験を評価することができる。
【0135】
また、情報処理システム1は、人事評価のクラスに属する従業員群に対して、評価指数を算出することができるので、例えば高いパフォーマンスを出す従業員群が、どのような項目に対して満足していないかを把握することができる。これにより、優秀な人材の離職を未然に防ぐことができる。
【0136】
また、情報処理システム1は、指定したエンゲージメントの範囲に属する従業員群に対して、評価指数を算出することができるので、例えば企業に対する愛着の高い従業員が、どのような項目に対して満足していないかを把握することができる。これにより、企業に対して愛着の高い従業員を大事に扱うことができ、従業員のエンゲージメントを更に高めることができる。
【0137】
また、情報処理システム1は、アンケート結果および、アンケート結果に基づく評価結果について、同業他社との比較を行い、自社の従業員の体験値が、同業他社と比較してどのような傾向にあるのかを分析することができる。このため、自社の従業員体験の状況を、客観的な指標に照らして評価することができる。
【0138】
また、情報処理システム1は、抽出された改善すべき項目に対して、改善を促すためのプロダクトを提案する。このため、最優先で改善すべき項目はわかったが、改善方法や運用方法がわからない場合でも、管理者が当該プロダクトを利用することで、効率的かつ効果的に、従業員体験を改善していくことができる。
【0139】
また、情報処理システム1が、各項目を改善するためのタスク管理を行うので、確実に従業員の従業員体験を向上することができる。
【0140】
また、情報処理システム1が評価する従業員体験の各項目が、採用、オンボーディング、業務遂行、人事評価、人材育成、人事配置、仕事環境、企業文化を含んでいる。このため、従業員の従業員体験の多岐に渡る側面について、課題を抽出することができる。
【0141】
(7)変形例
記憶装置31は、サーバ30の外部に存在し、ネットワークNWを介して、サーバ30と接続されてもよい。
プロダクトDB40に記憶されるプロダクトに関する情報は、サーバ30の記憶装置31に記憶されてもよい。
【0142】
上記の情報処理の各ステップは、従業員端末10、サーバ30、及び管理端末20の何れでも実行可能である。
上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。すなわち、処理に矛盾が生じない範囲において、任意に変更することができる。
【0143】
上述した従業員体験の各項目は、任意に変更可能である。すなわち、管理者の設定により、大項目、中項目、小項目を任意に設定することができる。
【0144】
また、図12に示した画面例はあくまで一例であり、評価結果について任意に表示形態を変更することができる。例えば、全社および評価区分ごとの差分を、可視化して各項目毎に並べて配置してもよい。また、過去の評価結果からの推移を時系列にそって表示してもよい。
また、例えば小項目に関する回答結果のみを、中項目および小項目の少なくとも一方ごとに表示する処理を行ってもよい。
【0145】
情報処理システム1は、その他の機能を有していてもよい。例えば、アンケートにより取得したある従業員の従業員体験の期待値、実感値、および差分のうちのいずれかが、所定の閾値よりも低い場合に、当該従業員を離職が懸念される従業員である旨の通知を管理端末20に通知してもよい。また、情報処理システム1は、経時的な変化を確認し、時系列に沿って、一定以上、期待値、実感値、および差分のうちのいずれかが下がった従業員を、離職が懸念される従業員とみなしてもよい。
【0146】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【0147】
(7)付記
本発明の内容を以下に付記する。
【0148】
(付記1)
プロセッサとメモリとを備えるシステムに実行させるプログラムであって、
プログラムは、プロセッサに、
従業員から従業員体験の各項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施するステップと、
取得した期待値および実感値を用いて、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を抽出するステップと、を実行させるプログラム。
【0149】
(付記2)
改善すべき項目を抽出するステップでは、
取得した期待値と実感値との差分を算出するステップと、
算出された差分に基づいて、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を示唆するステップと、を実行する、付記1に記載のプログラム。
【0150】
(付記3)
改善すべき項目を示唆するステップでは、
算出された差分および期待値に基づいて、改善すべき項目の優先順位を設定する、付記2に記載のプログラム。
【0151】
(付記4)
プロセッサに、
設定された優先順位を、従業員体験の各項目毎に表示するステップを実行させる、付記3に記載のプログラム。
【0152】
(付記5)
プロセッサに、
従業員からの自身の従業員体験への評価を定量的に示す評価指数を算出するステップを実行させ、
評価指数は、
実感値と、従業員体験の各項目における差分が小さい項目の数量と、に基づいて算出される評価スコアと、
評価スコアの偏差値と、を含む、付記2から4のいずれかに記載のプログラム。
【0153】
(付記6)
評価指数を算出するステップでは、
従業員の属性に基づいて設定された区分毎に、評価指数を算出する、付記5に記載のプログラム。
【0154】
(付記7)
従業員の属性には、従業員における現在又は過去の人事評価に基づいて設定されたクラスを含み、
評価指数を算出するステップでは、
人事評価のクラスに属する従業員群に対して、評価指数を算出する、付記5又は6のいずれかに記載のプログラム。
【0155】
(付記8)
従業員の属性には、従業員の企業に対するエンゲージメントの大きさに基づいて設定されたクラスを含み、
評価指数を算出するステップでは、
エンゲージメントのクラスに属する従業員群に対して、評価指数を算出するステップ、付記5から7のいずれかに記載のプログラム。
【0156】
(付記9)
プロセッサに、
アンケート結果および評価結果について、同業他社との比較を行い、自社の従業員の体験値が、同業他社と比較してどのような傾向にあるのかを分析するステップを実行させる、付記5から8のいずれかに記載のプログラム。
【0157】
(付記10)
プロセッサに、
抽出された改善すべき項目に対して、改善を促すためのプロダクトを提案するステップを実行させる、付記1から9のいずれかに記載のプログラム。
【0158】
(付記11)
プロセッサに、
抽出された前記改善すべき項目に対して、改善を促すためのタスクの進捗を管理するステップを実行させる、付記1から10のいずれかに記載のプログラム。
【0159】
(付記12)
従業員体験の各項目は、
採用、オンボーディング、業務遂行、人事評価、人材育成、人事配置、仕事環境、企業文化を含む、付記1から11のいずれかに記載のプログラム。
【0160】
(付記13)
プロセッサとメモリとを備えるシステムに実行させる方法であって、
方法は、プロセッサが、
従業員から従業員体験の各項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施するステップと、
取得した期待値および実感値を用いて、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を抽出するステップと、を実行する方法。
【0161】
(付記13)
プロセッサとメモリとを備えるシステムであって、
システムは、プロセッサが、
従業員から従業員体験の各項目についての期待値と実感値とに関するアンケートを実施する手段と、
取得した期待値および実感値を用いて、従業員体験の各項目のうち、改善すべき項目を抽出する手段と、を備えるシステム。
【符号の説明】
【0162】
1 :情報処理システム
10 :端末
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
20 :管理端末
21 :記憶装置
22 :プロセッサ
23 :入出力インタフェース
24 :通信インタフェース
30 :サーバ
31 :記憶装置
32 :プロセッサ
33 :入出力インタフェース
34 :通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
図12