IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河南農業大学の特許一覧

特許7242102バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程
<>
  • 特許-バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程 図1
  • 特許-バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程 図2
  • 特許-バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程 図3
  • 特許-バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230313BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20230313BHJP
   C12P 3/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/42
C12P3/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022009311
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】202111534526.4
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520504404
【氏名又は名称】河南農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】蒋 丹萍
(72)【発明者】
【氏名】水 雪楠
(72)【発明者】
【氏名】楊 佳斌
(72)【発明者】
【氏名】陳 州
(72)【発明者】
【氏名】荊 艶艶
(72)【発明者】
【氏名】張 志萍
(72)【発明者】
【氏名】路 朝陽
(72)【発明者】
【氏名】張 寰
(72)【発明者】
【氏名】李 亜猛
(72)【発明者】
【氏名】張 洋
(72)【発明者】
【氏名】張 全国
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110157612(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110144293(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109609352(CN,A)
【文献】中国実用新案第205616857(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12P 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器であって、反応器本体と、上蓋と、底板とを備え;
前記反応器本体の左側壁に供給管が設けられ、前記反応器本体の右側壁に払出管が設けられ;
前記反応器本体の頂端及び底端が両方とも開放され、前記上蓋は前記反応器本体の前記頂端と着脱可能に連結し、前記底板は前記反応器本体の前記底端と着脱可能に連結し;
前記上蓋に排気管が設けられ;
前記上蓋及び前記底板は、両方とも透明な素材からできて、前記上蓋及び前記底板に両方とも光源が設けられ;
前記反応器本体の前側壁及び後側壁に凹溝が設けられ、前記前側壁及び前記後側壁の前記凹溝に磁石ブロックが設けられ、2つの前記磁石ブロックは、一定の安定した静磁場を形成でき、異なる厚さの前記磁石ブロックを設置することにより、静磁場強度を変更する、
ことを特徴とする、バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器。
【請求項2】
前記供給管の開放端に供給蓋板が設けられ、前記払出管の開放端に払出蓋板が設けられ;前記排気管の出口端に排気蓋板が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器。
【請求項3】
さらに前記反応器本体の内部に第1バッフル及び第2バッフルが設けられ、前記第1バッフル及び前記第2バッフルは、両方とも透明な素材からでき;
前記上蓋に第1係着部及び第2係着部が設けられ、前記第1係着部及び前記第2係着部は両方とも前後方向に沿って延びる細長状で、前記第1係着部のサイズが前記第1バッフルの横断面サイズと同じで、前記第2係着部のサイズが前記第2バッフルの横断面サイズと同じであり;前記第1バッフルは前記第1係着部から挿入されて前記反応器本体の底部に挿入され得、前記第2バッフルは前記第2係着部から挿入されて前記反応器本体の底部に挿入され得る、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器。
【請求項4】
前記上蓋上の第1係着部の位置は前記反応器本体の前記後側壁に近く、前記上蓋上の第2係着部の位置が前記反応器本体の前記前側壁に近く;
第1バッフルの前側に第1乱流バーが設けられ、第2バッフルの後側に第2乱流バーが設けられ、前記第1乱流バー、前記第2乱流バーが両方とも垂直方向に沿って上下に延び;前記第1乱流バー、前記第2乱流バーは、両方とも後方に傾斜している、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器。
【請求項5】
前記上蓋上の前記第1係着部の左右両側に第1係着具がさらに設けられ、前記上蓋上の第2係着部の左右両側に第2係着具がさらに設けられ、前記第1係着具は、第1バッフルの位置を規制でき、前記第2係着具は第2バッフルの位置を規制できることを特徴とする、請求項1に記載のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を使用し、次のステップ1)~3)を含むことを特徴とする、光発酵水素製造工程。
1)まず光合成細菌HAU-M1を生育用培地で発酵・培養させた後、前記光合成細菌HAU-M1の初期培養液を得て用意しておくステップ、
2)固液比1g:(20~30)mLで、水素製造バイオマス原料及びクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液を前記供給管から反応器本体内に添加してから水素生成培地を加えて初期発酵液を得るステップ、
3)前記初期発酵液のpHを7に調整し、10~30%の接種体積比で、前記初期発酵液内に前記光合成細菌HAU-M1の初期培養液を加えてから液体セルラーゼを加え;バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を温度30~32℃に置き、照度1000~3000Luxmの条件下で光発酵生物学的水素製造反応を行い、水素製造過程中に異なる厚さの磁石ブロックを設置することにより、中心静磁場強度を変更し、水素生成が完了した後、ガスを収集すると共に水素生成量を測定するステップ。
【請求項7】
前記ステップ1)内の水素製造時に用いられる前記光合成細菌HAU-M1は、主にロドスピリラム・ルブルム、ロドシュードモナスカプシュラータ、ロドシュードモナスパルストリス、ロドバクタースフェロイデス、ロドバクターカプスラータスで構成されることを特徴とする、請求項6に記載の工程。
【請求項8】
前記ステップ1)内の前記光合成細菌HAU-M1の発酵培養条件は、照度が2000~3000Lux、培養温度が30~32℃、培養時間が48~72時間であり;前記ステップ1)内の前記光合成細菌HAU-M1と前記生育用培地の体積比は、1:(1-1.5)であり;前記ステップ1)内の前記生育用培地は、NHCl 0.5g/L、NaHCO 1g/L、酵母エキス0.5g/L、KHPO 0.1g/L、CHCOONa 2g/L、MgSO 0.1g/L、NaCl 1g/Lであることを特徴とする、請求項6に記載の工程。
【請求項9】
前記ステップ2)内の前記水素生成培地は、NHCl 0.4g/L、MgCl 0.2g/L、酵母エキス0.1g/L、KHPO 0.5g/L、NaCl 2g/L、グルタミン酸ナトリウム3.56g/Lであることを特徴とする、請求項6に記載の工程。
【請求項10】
前記ステップ3)内の磁場強度範囲は、0~50mTに設定されることを特徴とする、請求項6に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光発酵生物学的水素製造技術分野に関し、特に、バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の大量の使用により地球温暖化などの環境問題が引き起こされ、潜在的なエネルギー危機も招いている。水素エネルギーは、高発熱量(単位発熱量が122kJ/kgに達することができる)、汚染ゼロのクリーンな燃料としてエネルギー分野及び工学分野から広く注目を集めている。生物学的水素製造は、大気圧下という穏やかな条件でも実施でき、かつ化石燃料を消費しない特徴があるため、さまざまな水素製造方法の中で最も有望な水素製造方法であると考えられている。光発酵水素製造は、生物学的水素製造技術として広いスペクトル範囲(400~950nm)の太陽光を利用し、短鎖有機酸を電子供与として分解することによりHの生成を実現し、高い水素製造効率、高い有機物分解率及び高いCOD還元効率等の利点を備え、再生可能エネルギー分野でも幅広く研究されている。
【0003】
光発酵水素製造技術において反応器設計の最適化は、バイオ水素の大規模生産にとって決定的な役割を果たしている。フォトバイオリアクターの構造設計において均一な照射、適切な混合方法及び高いバイオマス保持率を実現できるかどうかが、考慮すべき重要な要素である。一般的なフォトバイオリアクターとしてバッフル式フォトバイオリアクター、管状フォトバイオリアクター及び平板型フォトバイオリアクターが挙げられる。バッフル式フォトバイオリアクターは、細菌活性の破壊を避けることができ、反応器内の発酵媒体の混合を実現し、非常に幅広い応用の見通しがあるが、従来技術における関連の研究が比較的少なかった。
【0004】
磁場が生物の成長、発育、遺伝的、生理的及び生化学的特性等の面に影響を与える現象は、生体磁場効果と呼ばれ、研究によると生体内にさまざまな生体組織が存在するため、生体内に複雑で多様な電磁特性があることを示している。近年生体磁場効果が広く注目を集め、多くの研究で微弱又は中程度の磁場が微生物の生育や代謝を促進できることが実証され、生体に対する磁場の影響は閾値である臨界磁場強度範囲が存在する可能性があり、一定の磁場強度を超えると異なる生体効果が示され、同時に異なる種類の微生物及び異なる磁場強度も生体磁場効果の程度の違いが生じる。
【0005】
光発酵水素製造における水素生成微生物は、主に光合成細菌で、光エネルギーを利用して有機分子を細胞バイオマスに変換させる能力を持っている。しかし現在の光生物学的水素製造反応器では、一般的に使用される水素製造酵素(ニトロゲナーゼ)の触媒活性が低く、細菌密度が高い条件において光制限現象が発生しやすいため、水素生成速度及び累積水素生成量が低くなり、光発酵水素生産の経済的実行可能性が限られている。
【0006】
このため本発明者らは、光生物学的水素製造反応器を改良することにより水素生成遅延期間を短縮させ、生体磁場効果を利用し、微生物の光発酵水素生産過程における代謝の程度を高めることで、水素発生効率を向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】韓濱旭、光合水素生成菌叢の分離と同定及びこれらの水素生成特性の分析[D]、河南農業大学,2011
【文献】Insights into correlation between hydrogen yield improvement and glycerol addition in photo-fermentation of Arundo donax L.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光生物学的水素製造反応器を改良することにより反応器の採光面積を増し、生体磁場効果を利用して、微生物の光発酵水素生成過程における代謝の程度を高めることで、水素製造効率を最大化し、光発酵生物学的水素製造過程中の水素生成量を著しく増大し、水素生成遅延期間を短縮させることとから水素発生効率を向上するバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、次のような技術的手段を講じる。
【0010】
バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器であって、反応器本体と、上蓋と、底板とを備え;
反応器本体の左側壁に供給管が設けられ、反応器本体の右側壁に払出管が設けられ;
反応器本体の頂端及び底端が両方とも開放され、上蓋は反応器本体の頂端と着脱可能に連結し、底板は反応器本体の底端と着脱可能に連結し;
上蓋に排気管が設けられ;
上蓋及び底板は、両方とも透明な素材からできて、上蓋及び底板に両方とも光源が設けられ;
反応器本体の前側壁及び後側壁に凹溝が設けられ、前側壁及び後側壁の凹溝に磁石ブロックが設けられ、2つの磁石ブロックは、一定の安定した静磁場を形成でき、異なる厚さの磁石ブロックを設置することにより、静磁場強度を変更する。
【0011】
さらに前記反応器本体は、透明な素材からでき、直方体形を呈する。
【0012】
さらに供給管の開放端に供給蓋板が設けられ、払出管の開放端に払出蓋板が設けられる。
【0013】
さらに上蓋、底板及び反応器本体の側壁にねじ穴が穿設され、ねじ穴にボルトを挿入し、従来のねじ込み結合方法で、上蓋、底板及び反応器本体の着脱可能な連結を実現する。
【0014】
さらに排気管の出口端に排気蓋板が設けられる。
【0015】
具体的には、上蓋の底端及び底板の頂端に両方とも光源が設けられる。
【0016】
より好ましくは、照射効果を高めるため、反応器本体の左側壁及び反応器本体の右側壁内に両方とも光源が設けられる。
【0017】
具体的には、前記光源はLEDテープライトで、光源を調整することにより照度の調整を実現する。
【0018】
さらに反応器本体の内部に第1バッフル及び第2バッフルが設けられ、第1バッフル及び第2バッフルは、両方とも透明な素材からでき;
上蓋に第1係着部及び第2係着部が設けられ、第1係着部及び第2係着部は両方とも前後方向に沿って延びる細長状で、第1係着部のサイズが第1バッフルの横断面サイズと同じで、第2係着部のサイズが第2バッフルの横断面サイズと同じである。
【0019】
具体的には、第1バッフルは第1係着部から挿入されて反応器本体の底部に挿入され得、第2バッフルは第2係着部から挿入されて反応器本体の底部に挿入され得る。
【0020】
さらに光生物学的水素製造反応過程で、反応器本体内に反応液が格納され、光生物学的水素製造過程中に気体が発生するため、第1バッフル及び第2バッフルを設置することにより、反応器本体内の気体及び液体の流動に合わせて乱流を発生させることで、十分な攪拌混合を実現し、反応の程度を高め;反応液に対する第1バッフル及び第2バッフルの乱流効果を向上するため、上蓋上の第1係着部の位置は反応器本体の後側壁に近く、上蓋上の第2係着部の位置が反応器本体の前側壁に近い。
【0021】
さらに前記第1バッフルの前側に第1乱流バーが設けられ、第2バッフルの後側に第2乱流バーが設けられ、第1バッフルの前後の長さは、第2バッフルの前後の長さと同じで、第1乱流バー、第2乱流バーが両方とも垂直方向に沿って上下に延び、第1乱流バーの前後の長さが第1バッフルの前後の長さの1/5で、第2乱流バーの前後の長さが第2バッフルの前後の長さの1/5である。
【0022】
さらに第1乱流バー、第2乱流バーは、両方とも後方に傾斜している。
【0023】
具体的には、第1乱流バーと第1バッフルとの間の鋭角、及び第2乱流バーと第2バッフルとの間の鋭角は、両方とも45°である。
【0024】
また乱流効果をさらに高めるため、第1バッフルの左側と右側、及び第2バッフルの左側と右側に複数の半円形の突起が設けられ、前記複数の半円形の突起は上から下に順番に並べられる。
【0025】
さらに反応器本体内の反応液が反応する際に第1バッフル及び第2バッフルの揺動を防止するため、上蓋上の第1係着部の左右両側に第1係着具がさらに設けられ、上蓋上の第2係着部の左右両側に第2係着具がさらに設けられ、第1係着具は、第1バッフルの位置を規制でき、第2係着具は第2バッフルの位置を規制できる。
【0026】
さらに凹溝の開口部は、上向きで、凹溝の開口部に凹溝を密封できる蓋板がさらに設けられる。
【0027】
前記バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を使用した光発酵水素製造工程は、次のステップ1)~3)を含む。すなわち、
1)まず光合成細菌HAU-M1を生育用培地で発酵・培養させた後、光合成細菌HAU-M1の初期培養液を得て用意しておくステップ、
2)固液比1g:(20~30)mLで、水素製造バイオマス原料及びクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液を供給管から反応器本体内に添加してから水素生成培地を加えて初期発酵液を得るステップ、
3)初期発酵液のpHを7に調整し、10~30%(v/v)の接種体積比で、初期発酵液内に光合成細菌HAU-M1の初期培養液を加えてから液体セルラーゼを加え;前記バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を恒温インキュベーター内に入れ、温度を30~32℃に設定し、照度を1000~3000Luxmに設定し、異なる厚さの磁石ブロックを設置することにより、中心静磁場強度を変更し、光発酵生物学的水素製造反応を行い、水素生成が完了した後、排気管出口端の排気蓋板を開いてガスを収集すると共に水素生成量を測定するステップ。
【0028】
具体的には、ステップ1)内の水素製造時に用いられる菌種は、光合成細菌HAU-M1で、主にロドスピリラム・ルブルム(R.hodospirillum rubrum)、ロドシュードモナスカプシュラータ(R.capsulata)、ロドシュードモナスパルストリス(R.pulastris)、ロドバクタースフェロイデス(R.hodobacter sphaeroides)、ロドバクターカプスラータス(Rhodobacter capsulatus)で構成される。
【0029】
具体的には、ステップ1)内の光合成細菌HAU-M1の発酵培養条件は、照度が2000~3000Lux、培養温度が30~32℃、培養時間が48~72時間である。
【0030】
具体的には、ステップ1)内の光合成細菌HAU-M1と生育用培地の体積比は、1:(1-1.5)である。
【0031】
具体的には、ステップ2)内のバイオマス原料は、葦竹、とうもろこしの茎及び小麦の茎である。
【0032】
具体的には、ステップ2)内のバイオマス原料の全固形分(TS)の含有量は、5~8gで、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液の体積が80~100mLである。
【0033】
具体的には、ステップ2)内で添加する水素生成培地の体積は、5~10mLである。
【0034】
具体的には、ステップ3)内で添加する液体セルラーゼは、1~2mLである。
【0035】
具体的には、ステップ3)内の磁場強度範囲は、0~50mTに設定される。
【0036】
好ましくは、磁場強度は10mT、20mT、30mT、40mT、50mTに設定される。
【0037】
具体的には、水素製造過程で使用される培地及び試薬は、次の通りである。
【0038】
生育用培地:NHCl 0.5g/L、NaHCO 1g/L、酵母エキス0.5g/L、KHPO 0.1g/L、CHCOONa 2g/L、MgSO 0.1g/L、NaCl 1g/Lである。
【0039】
水素生成培地:NHCl 0.4g/L、MgCl 0.2g/L、酵母エキス0.1g/L、KHPO 0.5g/L、NaCl 2g/L、グルタミン酸ナトリウム3.56g/Lである。
【0040】
液体セルラーゼ:酵素活性51FPU/mL、仕様20mLである。
【0041】
クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液のpHは、4.8である。
【発明の効果】
【0042】
従来技術と比較して、本出願の利点は次の通りである。すなわち、
1、本発明のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程を利用すると、反応時間がより短く、原材料の流動がよりスムーズになることを実現できる。
【0043】
2、本発明のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程を利用して、水素生成過程で磁場を印加することにより、発酵液反応時の分子間の運動、及び微生物の活性を向上させ、水素生成速度を上げるだけでなく、磁場形成条件を設定することにより、静磁場形成時間を短縮し、水素生成過程中の磁場効果を向上させることもできる。本出願は、微生物からの水素発生効率を高めるため新しい強化された手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例1に係るバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器の内部構造を示す前面図である。
図2】実施例1に係るバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器の内部構造を示す上面図である。
図3】異なる磁場強度の光合成細菌によるバイオ水素製造の累積水素生成量に対する影響を示す図である。
図4】異なる磁場強度の光合成細菌によるバイオ水素製造の酸化還元電位に対する影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明白かつ理解可能にするために、以下に図面を参照しつつ、本発明の具体的実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、本発明を完全に理解するために具体的な詳細が示されている。ただし、本発明は、本明細書に記載されたものとは異なる他の多種多様な形態で実施することができ、当業者は本発明の趣旨から逸脱することなく、類似の改善が可能である。したがって、本発明は、以下に開示される具体的実施形態によって限定されない。
【0046】
(実施例1)
図1~2に示すように、バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器は、反応器本体1と、上蓋2と、底板3とを備え;
前記反応器本体1は、透明な素材からでき、直方体形を呈し;
反応器本体1の左側壁に供給管11が設けられ、反応器本体1の右側壁に払出管12が設けられ、供給管11の開放端に供給蓋板が設けられ、払出管12の開放端に払出蓋板が設けられ;
反応器本体1の頂端及び底端が両方とも開放され;
上蓋2は反応器本体1の頂端と着脱可能に連結し、底板3は反応器本体1の底端と着脱可能に連結し、具体的には上蓋2、底板3及び反応器本体1の側壁にねじ穴が穿設され、ねじ穴にボルトを挿入し、従来のねじ込み結合方法で、上蓋2、底板3及び反応器本体1の着脱可能な連結を実現し;
上蓋2に排気管21が設けられ、排気管21の出口端に排気蓋板が設けられ;
上蓋2及び底板3は、両方とも透明な素材からできて、上蓋2の底端及び底板3の頂端に両方とも光源7が設けられ;
さらに、照射効果を高めるため、反応器本体1の左側壁及び反応器本体1の右側壁内に両方とも光源7が設けられ、具体的には前記光源7はLEDテープライトで、光源7を調整することにより照度の調整を実現し、同時に反応器本体1内の左右両側、及び上下両側に両方ともLEDテープライトを設けることで、反応器本体1内の照度を3000Luxに安定させ;
反応器本体1の内部に第1バッフル4及び第2バッフル5が設けられ、第1バッフル4及び第2バッフル5は、両方とも透明な素材からでき;
上蓋2に第1係着部及び第2係着部が設けられ、第1係着部及び第2係着部は両方とも前後方向に沿って延びる細長状で、第1係着部のサイズが第1バッフル4の横断面サイズと同じで、第2係着部のサイズが第2バッフル5の横断面サイズと同じであり;具体的には、第1バッフル4は第1係着部から挿入されて反応器本体1の底部に挿入され得、第2バッフル5は第2係着部から挿入されて反応器本体1の底部に挿入され得;
光生物学的水素製造反応過程で、反応器本体1内に反応液が格納され、光生物学的水素製造過程中に気体が発生するため、第1バッフル4及び第2バッフル5を設置することにより、反応器本体1内の気体及び液体の流動に合わせて乱流を発生させることで、十分な攪拌混合を実現し、反応の程度を高める。
【0047】
さらに反応液に対する第1バッフル4及び第2バッフル5の乱流効果を向上するため、上蓋2上の第1係着部の位置は反応器本体1の後側壁に近く、上蓋2上の第2係着部の位置が反応器本体1の前側壁に近く;前記第1バッフル4の前側に第1乱流バー42が設けられ、第2バッフル5の後側に第2乱流バー52が設けられ、第1バッフル4の前後の長さは、第2バッフル5の前後の長さと同じで、第1乱流バー42、第2乱流バー52が両方とも垂直方向に沿って上下に延び、第1乱流バー42の前後の長さが第1バッフル4の前後の長さの1/5で、第2乱流バー52の前後の長さが第2バッフル5の前後の長さの1/5であり;
第1乱流バー42、第2乱流バー52は、両方とも後方に傾斜し、第1乱流バー42と第1バッフル4との間の鋭角、及び第2乱流バー52と第2バッフル5との間の鋭角は、両方とも45°であり;
乱流効果をさらに高めるため、第1バッフル4の左側と右側、及び第2バッフル5の左側と右側に複数の半円形の突起8が設けられ、前記複数の半円形の突起8は上から下に順番に並べられ;
反応器本体1内の反応液が反応する際に第1バッフル4及び第2バッフル5の揺動を防止するため、上蓋2上の第1係着部の左右両側に第1係着具41がさらに設けられ、上蓋2上の第2係着部の左右両側に第2係着具51がさらに設けられ、第1係着具41は、第1バッフル4の位置を規制でき、第2係着具51は第2バッフル5の位置を規制できる。
【0048】
反応器本体1の前側壁及び後側壁に両方とも凹溝が設けられ、凹溝の開口部は、上向きで、前側壁及び後側壁の凹溝内に両方とも磁石ブロック6が設けられ、2つの磁石ブロック6のN極とS極が対向する場合、一定の安定した静磁場を形成でき;
凹溝の開口部に凹溝を密封できる蓋板がさらに設けられ、使用する時、異なる厚さの磁石ブロック6を設置することにより、中心静磁場強度を変更する。
【0049】
使用する時、払出管12の開放端の払出蓋板を覆い、供給管11の供給蓋板を開き、バイオマス原料、緩衝液、酵素、菌液を供給管11から反応器本体1内に加え、供給蓋板及び排気蓋板を覆い、上蓋2と底板3上の光源7、及び前側壁と後側壁内の磁石ブロック6で光発酵水素製造を行うと共に磁場を印加する。
【0050】
(実施例2)
実施例1のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を使用した光発酵水素製造工程の具体的ステップは、次の通りである。すなわち、
1)先に光合成細菌HAU-M1を生育用培地内に置き、照度3000Lux、温度30℃にて72時間発酵・培養した後、光合成細菌HAU-M1の初期培養液を得て用意しておくステップ(ここで、光合成細菌HAU-M1と生育用培地の体積比が1:1)、
2)固液比1g:30mLで、水素製造バイオマス原料(葦竹)及びとpH4.8のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(ここで葦竹の全固形分(TS)含有量が5gで、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液の体積が100mLである)を供給管11から反応器本体1内に添加してから5mL水素生成培地を加えて初期発酵液を得るステップ、
3)供給管11からKOH溶液(又は塩酸溶液)を加え、KOH溶液(又は塩酸溶液)で初期発酵液のpHを7に調整し、30%(v/v)の接種体積比で、初期発酵液内に光合成細菌HAU-M1の初期培養液を加え、具体的に加える光合成細菌HAU-M1の初期培養液の体積が45mLで、次に1.96mLセルラーゼ(液体酵素調製物)を加え;前記バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を恒温インキュベーター内に入れ、温度を30℃に設定し、照度を3000Luxmに設定し、異なる厚さの磁石ブロック6を設置することにより、中心静磁場強度を変更し、中心磁場強度範囲を0~50mTに設定し、光発酵生物学的水素製造反応を行い、水素生成が完了した後、排気管21出口端の排気蓋板を開いてガスを収集すると共に水素生成量を測定するステップ。
【0051】
具体的には、磁場強度を0(対照群)は、10mT、20mT、30mT、40mT、50mTに設定した。
【0052】
具体的には、水素生成実験の合計時間は、96時間で、12時間ごとに水素生成のサンプリング・測定を実施した。
【0053】
水素製造時に用いられる菌種は、光合成細菌HAU-M1で、前記HAU-M1光合成菌叢が非特許文献1内の方法で得られ、照射条件下で有機物を分解して水素を生成でき、主にロドスピリラム・ルブルム(R.hodospirillum rubrum)、ロドシュードモナスカプシュラータ(R.capsulata)、ロドシュードモナスパルストリス(R.pulastris)、ロドバクタースフェロイデス(R.hodobacter sphaeroides)、ロドバクターカプスラータス(Rhodobacter capsulatus)で構成される。
【0054】
HAU-M1光合菌叢の菌液内において、ロドスピリラム・ルブルムの菌液とロドシュードモナスカプシュラータの菌液とロドシュードモナスパルストリスの菌液とロドバクタースフェロイデスの菌液とロドバクターカプスラータスの菌液との体積比は、各々27:25:28:9:11であり;ロドスピリラム・ルブルムの菌液内の活菌数は、12.0×10個/mL、ロドシュードモナスカプシュラータは11.0×10個/mL、ロドシュードモナスパルストリスは12.5×10個/mL、ロドバクタースフェロイデスは4.0×10個/mL、ロドバクターカプスラータスは5.0×10個/mLであった。
【0055】
前記光合成細菌HAU-M1は、河南農業大学農業農村部の再生可能エネルギーの新材料と設備の主要実験室から入手した。
【0056】
水素製造過程で使用される培地及び試薬は、次の通りである。
【0057】
生育用培地:NHCl 0.5g/L、NaHCO 1g/L、酵母エキス0.5g/L、KHPO 0.1g/L、CHCOONa 2g/L、MgSO 0.1g/L、NaCl 1g/L。
【0058】
水素生成培地:NHCl 0.4g/L、MgCl 0.2g/L、酵母エキス0.1g/L、KHPO 0.5g/L、NaCl 2g/L、グルタミン酸ナトリウム3.56g/L。
【0059】
セルラーゼ:デンマークノボザイムズ(Novozymes Biotechnology Co.,Ltd)社のセルラーゼCtec2で、前記セルラーゼは、液体酵素調製物で、酵素活性が51FPU/mLで、仕様が20mLである。
【0060】
反応試薬は、pH4.8クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、pH調整剤(5mol/LのKOH溶液、5mol/Lの塩酸溶液)を含む。
【0061】
クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液の調製方法は、次の通りであり、すなわち、
A液:C.HO 21.014gを500mLビーカーに正確に量り取り、少量の脱イオン水に溶かして1000mL に定容して0.1mol/Lクエン酸溶液を得た。B液:Na.2HO 29.412gを500mLビーカーに正確に量り取り、少量の脱イオン水に溶かして1000mL に定容して0.1mol/Lクエン酸ナトリウム溶液を得た。A液230mL、B液270mLを取り、よく混ぜ合わせた後1000mLメスフラスコに移し、脱イオン水で1000mLに定容し、よく混ぜ合わせ、4℃の冷蔵庫に保存する。
【0062】
具体的な水素生成のテスト方法:721分光光度計(上海菁華科技儀器有限公司製)で光合成細菌の菌液のOD660nm値を測定し、光合成細菌を50mL遠心分離管に入れ、6000r/minで遠心分離し、その後上澄み液を注ぎ出し、沈殿物を温度65℃で一定重量まで乾燥させた後秤量し、次に光合成細菌の乾燥重量対OD660nm値の標準曲線を描いた。光合成細菌の生育過程中のOD660nm値を測定することで、光合成細菌の乾燥重量の変化を計算した。
【0063】
ガスは、ガス収集バッグで収集し、水素濃度を7890B型ガスクロマトグラフで測定した。実験データは、12時間ごとに1回測定した。
【0064】
実験結果
1、本発明は、光合生物学的水素製造基質として葦竹を使用し、異なる磁場強度(10mT、20mT、30mT、40mT、50mT)を調整することにより、磁場印加バイオリアクターの水素生成性能を研究し、累積水素生成量を評価指標とし、実験過程中の酸化還元電位(ORP)をモニタリングし、上海三信儀表廠製の型番SX712のORP測定器で測定したところ、以下の結論を得た。
【0065】
図3図4から分かるように、磁場強度が20mTの最適な光発酵工程において、酸化還元電位が低レベルに保たれ、累積水素生成量は113mL/(g TS)(TSが全固形分含有量を意味する)で、静磁場を印加しない時の累積水素生成量89mL/(g TS)より27%上がり、最大水素気濃度が66%であった。
【0066】
2、修正されたGompertzモデル(参考文献:非特許文献2)で累積水素生成量について水素生成動力学のフィッティング分析を実施し、動力学フィッティング分析を通じて、実験過程全体の水素生成遅延期間、最高水素生成速度及び実験結果とフィッティング結果のマッチ程度Rを得、結果を表1に示す。表1では、Gompertzモデルを介して累積水素生成量をフィッティングして対応する水素生成遅延期間λを得た。結果は、20mTの静磁場を印加した場合の水素生成遅延期間が1.77時間で、磁場を印加しない場合(9.44時間)より7.67時間短縮した。
【0067】
【表1】
【0068】
本発明のバッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程を利用して、水素生成過程で磁場を印加することにより、発酵液反応時の分子間の運動、及び微生物の活性を向上させ、水素生成速度を上げるだけでなく、磁場形成条件を設定することにより、静磁場形成時間を短縮し、水素生成過程中の磁場効果を向上させることもできる。本出願は、微生物からの水素発生効率を高めるため新しい強化された手段を提供する
【0069】
本発明は、具体的な実施例で上記のとおりに開示したが、開示した具体的な実施例が本発明として限定的に用いることではなく、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく各種の変形及び改良を行うことができ、かかる変形及び改良も全て本発明の保護範囲に含めることを指摘しておかなければならない。従って本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0070】
1 反応器本体
2 上蓋
3 底板
4 第1バッフル
5 第2バッフル
6 磁石ブロック
7 光源
8 半円形の突起
11 供給管
12 払出管
21 排気管
41 第1係着具
42 第1乱流バー
51 第2係着具
52 第2乱流バー
【要約】
【課題】 バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、光発酵生物学的水素製造技術分野に関し、特に、バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器及び光発酵水素製造工程に関する。前記バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器は、反応器本体と、上蓋と、底板とを備え;反応器本体の左側壁に供給管が設けられ、反応器本体の右側壁に払出管が設けられ;反応器本体の頂端及び底端が両方とも開放され、上蓋は、反応器本体の頂端と着脱可能に連結し、底板は反応器本体の底端と着脱可能に連結する。本発明は、前記バッフル式磁場印加光生物学的水素製造反応器を使用した光発酵水素製造工程も提供する。本発明は、光生物学的水素製造反応器を改良することにより反応器の採光面積を増し、生体磁場効果を利用して、微生物の光発酵水素生成過程における代謝の程度を高めることで、水素製造効率を最大化し、光発酵生物学的水素製造過程中の水素発生効率を著しく向上する。
【選択図】 なし
図1
図2
図3
図4