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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】水溶性アニオン交換体材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230313BHJP
   B01J 41/05 20170101ALI20230313BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20230313BHJP
   C08F 26/02 20060101ALI20230313BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20230313BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20230313BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C08F290/06
B01J41/05
B01J41/14
C08F26/02
C08F26/06
C08G65/48
C08J5/22 104
C08J5/22 CER
C08J5/22 CEZ
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017087117
(22)【出願日】2017-04-26
(65)【公開番号】P2017222839
(43)【公開日】2017-12-21
【審査請求日】2018-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】10 2016 207 128.9
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500525405
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz-Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Hohe Strasse 6,D-01069 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン マイアー-ハーク
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
【審判官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/055889(WO,A1)
【文献】特開2010-150692(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190075(WO,A1)
【文献】三神武文ら、アニオン交換型燃料電池用電解質膜の研究開発、山梨県総合理工学研究機構研究報告書、2014発行、第9号、p93-99
【文献】Joel S.Olssonら、Poly(N,N-diallylazacycloalkane)s for Anion-Exchange Membranes Functionalized with N-Spirocyclic Quaternary、Macromolecles、2017発行、50、p2784-2793
【文献】財団法人 国際科学振興財団、科学大辞典、2005発行、第2版、p1450
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/01
C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、相互に直鎖状に重合したアニオン交換基Cからなる非水溶性アニオン交換体材料であって、前記アニオン交換基Cは、以下の一般式I~IV
【化1】
(式中、
・Rは窒素及び/又はリンであり、
・R~Rは置換基であり、
及びRは水素であるか、又は少なくとも1つの基R及びRが水素でない場合、R及び/又はRはアルキル基又はアリール基であり、かつ
及びRはそれぞれ、アルキル基及び/又はアリール基であり、かつ
~Rは水素であるか、又は少なくとも1つの基R~Rが水素でない場合、これらの基R~Rはアルキル基又はアリール基であり、かつ
・Zは末端基であり、かつ
・Xは結合部であり、か
・Dは存在しないか、又は少なくとも1つのメチレン基若しくは酸素若しくは硫黄であり、Dが存在しない場合には、上記のアニオン交換基Cの環状構造要素は五員環であり、かつ
・Bは温度安定性及びアルカリ安定性を示す非水溶性ポリマーであり、かつ
・Aは、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカルバゾール、メタクリルエステル、N-ビニルピロリドン、N,N-ジアリルアクリルアミド、N,N-ジアリルアクリルスルホンアミド、ジアリルエーテル、1,2-ジアリルベンゼン、ジアリルスルフィド、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび1,2-ジビニルベンゼンからなる群から選択されるコモノマーに由来する構成要素であり、かつ
・2≦n≦100であり、かつ
・m=0又は1であり、かつ
・1≦o≦100であり、かつ
・50モル%≦x≦99モル%であり、かつy=(100モル%-x)であ

の少なくとも1つによる構造単位の構成要素であり、
ここで
・アニオン交換基Cが、一般式I~IVによる構造単位の構成要素として、1つ以上若しくは全ての結合部Xを介して非水溶性ポリマーBと結合しており、かつ実質的に全ての末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物に由来する構成要素であり
前記結合部Xが、N,N-ジアリルピペリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルピロリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルアミノエチルエーテル、又はメタクリルアミドエチルエーテル、又はメタクリル酸エステル、又はメタクリル酸ヒドロキシプロピルエーテル、又はキシリレンエーテル、又はフェニレンエーテルスルホンに由来する構造要素であり、かつ一方ではエーテル結合またはエステル結合を介して非水溶性ポリマーBとの間で共有結合が形成されており、他方ではラジカル重合可能な少なくとも1つの二重結合の反応によりアニオン交換基Cとの化学的な結合が形成されており、
前記末端基Zが、アルキルチオエーテル、又はアリールチオエーテル、又はベンジルチオエーテルであり、
前記温度安定性及びアルカリ安定性を示す非水溶性ポリマーBが、ポリエーテルスルホン、又はポリスルホン、又はポリチオエーテルスルホン、又はポリフェニレン、又はポリフェニレンエーテル、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)、又はペルフルオロアルコキシポリマー、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又はポリプロピレンであるか、又はポリエーテルスルホン、又はポリスルホン、又はポリフェニレン、又はポリフェニレンエーテル、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)、又はペルフルオロアルコキシポリマー、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又はポリプロピレンの部類のスルホン化及び/若しくはカルボキシル化及び/若しくはホスホン化ポリマーである
前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項2】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、式I~IVによる少なくとも2つのアニオン交換基Cが、非水溶性ポリマーBと結合部Xを介して化学的な共有結合によって相互に結合しており、かつ/又はアニオン交換基Cが、イオン結合によって非水溶性ポリマーBと接続しており、かつ末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物に由来する構成要素である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項3】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、コモノマーAが、スチレン、及び/又はα-メチルスチレン、及び/又はN-ビニルカルバゾール、及び/又はメタクリルエステル、及び/又はN-ビニルピロリドン、及び/又はN,N-ジアリルアクリルアミド、及び/又はN,N-ジアリルアクリルスルホンアミド、及び/又はジアリルエーテル、及び/又は1,2-ジアリルベンゼン、及び/又はジアリルスルフィド、及び/又はクロロトリフルオロエチレン、及び/又はテトラフルオロエチレン、及び/又はヘキサフルオロプロピレン、及び/又は1,2-ジビニルベンゼンである前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項4】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、アニオン交換基Cを製造するためのモノマーとして、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級アミンのN,N-ジアリル化合物、及び/又はN,N-ジアルキルアリル化合物、及び/又はN-アリル-N-アルキルアリル化合物、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級ホスフィンのP,P-ジアリル化合物、及び/又はP,P-ジアルキルアリル化合物、及び/又はP-アリル-P-アルキルアリル化合物、及び/又はこれらの化合物の塩化物及び/又は臭化物及び/若しくはヨウ化物が使用されている前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項5】
請求項に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、アニオン交換基Cを製造するためのモノマーとして、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルピペリジニウムクロリド、ジアリルピロリジニウムクロリド、アリル-メタリルジメチルアンモニウムクロリド、アリル-メタリルピペリジニウムクロリド、アリル-メタリルピロリジニウムクロリド、ジメタリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメタリルピペリジニウムクロリド、ジメチルアリルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,4-ジメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,4,4-テトラメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,5-ジメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,5,5-テトラメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-ジフェニルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルホスホニウムクロリド、ジアリルジフェニルホスホニウムクロリドが使用されている前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項6】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、Rが窒素である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項7】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、R及び/又はRがメチル基及び/又は水素である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項8】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、R及びRがアルキル基であり、有利にはメチル基又はエチル基である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項9】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、R~Rが水素である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項10】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、10≦n≦50である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【請求項11】
請求項1に記載の非水溶性アニオン交換体材料であって、2≦o≦10である前記非水溶性アニオン交換体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー化学の分野に関連するものであり、また、例えばアニオン交換膜のために、又は(触媒中での)水処理用アニオン交換樹脂として、電気化学的処理(電気透析又は電気脱イオン)のために、又はエネルギー変換器系(例えば、燃料電池及び逆電気透析)において、又はエネルギー貯蔵系(例えば、レドックス・フロー電池)において使用することができる非水溶性アニオン交換体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くのアニオン交換体材料が公知である。
【0003】
公知のアニオン交換樹脂は例えば、ベンジルトリメチルアンモニウム基を官能基として有する架橋ポリスチレンからなる。このようなOH型のアニオン交換樹脂を使用するために、35℃~最大60℃の稼動温度が記載されている(データシート Amberjet 9000 OH;データシート DOWEX Marathon A;データシート DOWEC Marathon 2;Dow Chemical Company)。
【0004】
6NのNaOH中、160℃における様々な低分子量の第四級アンモニウム塩の温度安定性が、Marino及びKreuer(ChemSusChem8、2015、513~523)によって調査された。ここで、スピロ環状化合物であるアゾニアスピロ[5.5]ウンデカンがその試験条件下で最も高い安定性を示すことが判明した。
【0005】
N-スピロ環状アンモニウム基を有するポリエーテルスルホンに基づく芳香族アニオン交換膜は、Pham及びJannasch著のACS Macro Letters 4(2015)1370~1375から知られている。ここでスピロ環状アニオン交換基は、フェニル環に縮合し、またベンジル系メチレン基を有する。
【0006】
1Mの水酸化ナトリウム溶液におけるこれらのアニオン交換膜の安定性を調査すると、40℃で168時間後、すでに部分的な分解が示された。
【0007】
Hellwinkel及びSeifertによると、ビス-2,2’-ビフェニレンアンモニウムヨージドは、アルカリ性媒体(例えば、20%の水酸化ナトリウム溶液)中、沸点で高い熱安定性を示す。しかしながら、この化合物の合成は非常にコストが高く、よってそれをアニオン交換膜の材料として使用することは経済的に意義があるものではない(Liebigs Ann.Chem.762(1972)29~54)。
【0008】
クロロトリフルオロエチレン及びジアリルジメチルアンモニウムクロリドからのコポリマーは、Valadeらによってアルカリ燃料電池用のバインダー材料として説明されている(J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem.47、2009、2043~2205)。
【0009】
この化合物における欠点は、イオン交換容量が低いために、それを膜材料として使用することができないことである。
【0010】
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリビニルアルコールからのブレンドに基づくアニオン交換膜は、Qiaoらにより知られている(J.Power Sources 237、2013、1~4)。吸水率を減少させるために、材料をグルタルアルデヒドで架橋する。この膜のイオン交換容量は、始めに55%の容量を損失した後375時間は、8Nの水酸化カリウム溶液中で安定していた。
【0011】
N,N-ジアリルピロリジニウムブロミドの重合及び構造は、Vynckらにより知られている(Macromol.Rapid Commun.18、1997、149~156)。
【0012】
アニオン交換体材料について公知の解決策の欠点は、殊にアルカリ性の環境において温度が50℃超である場合に、これらの材料がその非水溶性に関して依然として十分に安定していないことである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Marino及びKreuer、ChemSusChem8、2015、513~523)
【文献】Pham及びJannasch、ACS Macro Letters 4(2015)1370~1375
【文献】Hellwinkel及びSeifert、Liebigs Ann.Chem.762(1972)29~54
【文献】Valadeら、J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem.47、2009、2043~2205
【文献】J.Power Sources 237、2013、1~4
【文献】Vynckら、Macromol.Rapid Commun.18、1997、149~156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、アルカリ安定性及び温度安定性の改善と同時に、殊に温度が50℃超である場合に、改善された非水溶性を示す非水溶性アニオン交換体材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、特許請求の範囲に記載されている本発明によって解決される。有利な実施形態は、独立請求項の対象である。
【0016】
非水溶性アニオン交換体材料は少なくとも、相互に直鎖状に重合した、及び/又は分枝した、及び/又は架橋したアニオン交換基Cからなり、前記アニオン交換基Cは、以下の一般式I~VIII:
【化1-1】
【化1-2】
(ただし、
・Rは窒素及び/又はリンであり、
・R~Rは置換基であり、ここで
及びRは水素であるか、又は少なくとも1つの基R及びRが水素でない場合、R及び/又はRはアルキル基又はアリール基であり、
及びRはそれぞれ、アルキル基及び/又はアリール基であり、
~Rは水素であるか、又は少なくとも1つの基R~Rが水素でない場合、これらの基R~Rはアルキル基又はアリール基であり、
・Zは末端基であり、
・Xは結合部であり、
・Vは架橋部であり、
・Kは末端基Z又は結合部Xであり、
・Dは存在しないか、又は少なくとも1つのメチレン基若しくは酸素若しくは硫黄であり、
・Bは温度安定性及びアルカリ安定性を示す非水溶性ポリマーであり、
・Aは官能基を有さないコモノマーであり、
・2≦n≦100であり、
・m=0又は1であり、
・1≦o≦100であり、
・50モル%≦x≦99モル%であり、かつy=(100モル%-x)であり、
・10モル%≦w≦100モル%であり、かつ(n+w)=100モル%である)
のうち少なくとも1つによる構造単位の構成要素であり、
ここで、
・Kの場合、少なくとも1つの末端基Z及び少なくとも1つの結合部Xが存在しており、
・アニオン交換基Cが、一般式I~IVによる構造単位の構成要素として、1つ以上若しくは全ての結合部Xを介して非水溶性ポリマーBと繋がっており、実質的に全ての末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物であり、
かつ/又は
・アニオン交換基Cが、一般式V~VIIIによる構造単位の構成要素として、架橋部Vを介して相互に架橋しており、実質的に全ての末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物であり、結合部Xである全てのKが化学的な共有結合によって非水溶性ポリマーBと繋がっており、
かつ/又は
・アニオン交換基C及び非水溶性ポリマーBが一つ以上のイオン結合によって接続している。
【0017】
有利には、式I~IVによる少なくとも2つのアニオン交換基Cが、結合部Xを介して化学的な共有結合によって非水溶性ポリマーBと相互に繋がっており、かつ/又はアニオン交換基Cが、イオン結合によって非水溶性ポリマーBと接続しており、かつ末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物である。
【0018】
さらに有利には、結合部Xが、N,N-ジアリルピペリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルピロリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルアミノエチルエーテル、又はメタクリルアミドエチルエーテル、又はメタクリル酸エステル、又はメタクリル酸ヒドロキシプロピルエーテル、又はキシリレンエーテル、又はフェニレンエーテルスルホンである。
【0019】
同様に有利には、式V~VIIIによるアニオン交換基Cが架橋部Vを介して架橋しており、Kが結合部Xであり、これに非水溶性ポリマーBが化学的な共有結合によって繋がっている。
【0020】
さらなる好ましい実施形態は、非水溶性ポリマーBが、イオン結合によって一般式I~VIIIによるアニオン交換基Cと接続していることである。
【0021】
同じく有利には、末端基Zが、アルキルチオエーテル、又はアリールチオエーテル、又はベンジルチオエーテルである。
【0022】
温度安定性及びアルカリ安定性を示す非水溶性ポリマーBが、ポリエーテルスルホン、又はポリチオエーテルスルホン、又はポリスルホン、又はポリフェニレン、又はポリフェニレンエーテル、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)、又はペルフルオロアルコキシポリマー、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又はポリプロピレンであるか、又はポリエーテルスルホン、又はポリスルホン、又はポリフェニレン、又はポリフェニレンエーテル、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)、又はペルフルオロアルコキシポリマー、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又はポリプロピレンの部類をスルホン化及び/若しくはカルボキシル化及び/若しくはホスホン化したポリマーである場合も有利である。
【0023】
コモノマーAが、スチレン、及び/又はα-メチルスチレン、及び/又はN-ビニルカルバゾール、及び/又はメタクリルエステル、及び/又はN-ビニルピロリドン、及び/又はN,N-ジアリルアクリルアミド、及び/又はN,N-ジアリルアクリルスルホンアミド、及び/又はジアリルエーテル、及び/又は1,2-ジアリルベンゼン、及び/又はジアリルスルフィド、及び/又はクロロトリフルオロエチレン、及び/又はテトラフルオロエチレン、及び/又はヘキサフルオロプロピレン、及び/又は1,2-ジビニルベンゼンである場合も有利である。
【0024】
架橋部Vが、テトラアリルアンモニウムクロリド、又はテトラアルキルアリルアンモニウムクロリド、又はジアリル-ジアルキルアリルアンモニウムクロリド、又は1,4-ジビニルベンゼン、又はジビニルスルホン、又はジビニルスルフィド、又はジビニルスルホキシド、又はジビニルエーテル、又はジアクリルアミド、又はジメタクリルアミド、又はN,N,N’,N’-テトラアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N-ジアリル-,N’,N’-ジアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN-アリル-N,N’,N’-トリアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’-トリアリル-N’-アルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N-ジアリル-N’,N’-ジアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN-アリル-N,N’,N’-トリアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N,N’-トリアリル-N’-アルキルアリルピペラジニウムクロリド、及び/又はこれらの化合物の臭化物及び/若しくはヨウ化物である場合も同様に有利である。
【0025】
アニオン交換基Cを製造するためのモノマーとして、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級アミンのN,N-ジアリル化合物、及び/又はN,N-ジアルキルアリル化合物、及び/又はN-アリル-N-アルキルアリル化合物、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルピペリジニウムクロリド、ジアリルピロリジニウムクロリド、アリル-メタリルジメチルアンモニウムクロリド、アリル-メタリルピペリジニウムクロリド、アリル-メタリルピロリジニウムクロリド、ジメタリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメタリルピペリジニウムクロリド、ジメチルアリルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,4-ジメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,4,4-テトラメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,5-ジメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,5,5-テトラメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-ジフェニルアンモニウムクロリド、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級ホスフィンのP,P-ジアリル化合物、及び/又はP,P-ジアルキルアリル化合物、及び/又はP-アリル-P-アルキルアリル化合物、例えば、ジアリルジメチルホスホニウムクロリド、ジアリルジフェニルホスホニウムクロリド、及び/又はこれらの化合物の臭化物及び/若しくはヨウ化物が使用されている場合さらに有利である。
【0026】
が窒素である場合も有利である。
【0027】
及び/又はRがメチル基及び/又は水素である場合も有利である。
【0028】
及びRがアルキル基であり、有利にはメチル基又はエチル基である場合も同様に有利である。
【0029】
~Rが水素である場合、さらに有利である。
【0030】
10≦n≦50である場合も有利である。
【0031】
2≦o≦10である場合も有利である。
【0032】
本発明によって初めて、殊に温度が50℃超である場合に改善されたアルカリ安定性及び温度安定性を有する、アニオン交換膜用の非水溶性材料を記載することが可能となる。
【0033】
これは、少なくとも、相互に直鎖状に重合した、及び/又は分枝した、及び/又は架橋したアニオン交換基Cからなる非水溶性アニオン交換体材料によって達成され、前記アニオン交換基Cは、以下の一般式I~VIII:
【化2-1】
【化2-2】
(ただし、
・Rは窒素及び/又はリンであり、
・R~Rは置換基であり、ここで
及びRは水素であるか、又は少なくとも1つの基R及びRが水素でない場合、R及び/又はRはアルキル基又はアリール基であり、
及びRはそれぞれ、アルキル基及び/又はアリール基であり、
~Rは水素であるか、又は少なくとも1つの基R~Rが水素でない場合、これらの基R~Rはアルキル基又はアリール基であり、
・Zは末端基であり、
・Xは結合部であり、
・Vは架橋部であり、
・Kは末端基Z又は結合部Xであり、
・Dは存在しないか、又は少なくとも1つのメチレン基若しくは酸素若しくは硫黄であり、
・Bは非水溶性ポリマーであり、
・Aは官能基を有さないコモノマーであり、
・2≦n≦100であり、
・m=0又は1であり、
・1≦o≦100であり、
・50モル%≦x≦99モル%であり、かつy=(100モル%-x)であり、
・10モル%≦w≦100モル%であり、かつ(n+w)=100モル%である)
のうち少なくとも1つによる構造単位の構成要素である。
【0034】
本発明によると、
・Kの場合、少なくとも1つの末端基Z及び少なくとも1つの結合部Xが存在しており、
・アニオン交換基Cが、一般式I~IVによる構造単位の構成要素として、1つ以上若しくは全ての結合部Xを介して非水溶性ポリマーBと繋がっており、実質的に全ての末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物であり、
かつ/又は
・アニオン交換基Cが、一般式V~VIIIによる構造単位の構成要素として、架橋部Vを介して相互に架橋しており、実質的に全ての末端基Zが、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物であり、結合部Xである全てのKが化学的な共有結合によって非水溶性ポリマーBと繋がっており、
かつ/又は
・アニオン交換基C及び非水溶性ポリマーBが一つ以上のイオン結合によって接続している。
【0035】
つまり本発明による非水溶性アニオン交換体材料は、直鎖状に重合した、及び/又は分枝した、及び/又は架橋した構造を有する。
【0036】
ここでアニオン交換基Cは、相互に及び/若しくは化合物とただ直鎖状に重合した状態で、及び/又は分岐した状態で、及び/又は三次元に架橋した状態でも存在することが可能である。これは、一般式I~IVによる構造単位だけが存在する場合、これらの構造単位が直鎖状で化学的に及び/又は分枝鎖状で繋がった形態でしか存在できないことを意味する。アニオン交換基の分枝した化合物は、実質的には互いが化学的に繋がっていない状態で存在する側鎖を有する、直鎖状に重合した化合物であることが望ましい。
【0037】
一般式V~VIIIによる構造単位が存在する場合、使用される構造単位の長さに応じて、分枝鎖状であってもよい構造単位中に直鎖状の部分も存在するものの、架橋点において一般式V~VIIIによる構造単位は、常に三次元で化学的に繋がっており、ひいては架橋している。
【0038】
一般式I~VIIIによる構造単位は、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である非水溶性ポリマーBと必ず繋がっており、ここでアニオン交換基Cは、少なくともポリマーBの末端部において結合部X及び/又はK(KがXである場合)を介して繋がっている。ポリマー鎖の別の末端部は、末端基Z又はKを形成し、これは、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である低分子化合物である。
【0039】
一般式V~VIIIによる構造単位の場合、アニオン交換基Cは、架橋部Vを介して、相互に三次元で化学的に繋がっており(つまり、架橋している)、ここで実質的にポリマー鎖の各末端部において、また可能性としては側基においても、末端基ZとしてのKが繋がった状態で存在し、これは、温度安定性及びアルカリ安定性を示す化合物、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である低分子化合物である。
【0040】
本発明によると、一般式V~VIIIによる構造単位の場合、少なくとも1つのKが結合部Xであり、これは、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である非水溶性ポリマーBと繋がっており、ここで同時に、少なくとも1つのKが、末端基Zを表し、これは、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である非水溶性ポリマーBと繋がっていない状態で存在する。
【0041】
有利にはより多くのKが、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である非水溶性ポリマーBと繋がっている結合箇所Xであり、有利には芳香族若しくは脂肪族の、使用条件下で不活性である非水溶性ポリマーBと繋がっていない結合箇所Xより多い。しかしながら、Kが末端基Zである場合、これはポリマーBと繋がっていない。
【0042】
末端基Zとして有利には、アルキルチオエーテル、又はアリールチオエーテル、又はベンジルチオエーテルが存在することができる。
【0043】
結合部Xは有利には、N,N-ジアリルピペリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルピロリジニウムエーテル、又はN,N-ジアリルアミノエチルエーテル、又はメタクリルアミドエチルエーテル、又はメタクリル酸エステル、又はメタクリル酸ヒドロキシプロピルエーテル、又はキシリレンエーテル、又はフェニレンスルホンエーテルであってよい。
【0044】
結合部Xの場合、1つ以上若しくは全ての結合部Xが、その各相手と化学的な共有結合によって繋がっている。有利には、大部分の量の結合部Xが、その相手と化学的な共有結合によって繋がっている。
【0045】
本発明によるアニオン交換体材料において、一般式I~VIIIによるアニオン交換基Cと非水溶性ポリマーBとの結合は、アニオン交換基CとポリマーBの酸性基とのイオン結合によっても行うことができる。
【0046】
架橋部Vは有利には、テトラアリルアンモニウムクロリド、又はテトラアルキルアリルアンモニウムクロリド、又はジアリル-ジアルキルアリルアンモニウムクロリド、又は1,4-ジビニルベンゼン、又はジビニルスルホン、又はジビニルスルフィド、又はジビニルスルホキシド、又はジビニルエーテル、又はジアクリルアミド、又はジメタクリルアミド、又はN,N,N’,N’-テトラアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N-ジアリル-N’,N’-ジアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN-アリル-N,N’,N’-トリアルキルアリル-4,4’-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’-トリアリル-N’-アルキルアリル-トリメチレンジピペリジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N,N’,N’-テトラアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N-ジアリル-N’,N’-ジアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN-アリル-N,N’,N’-トリアルキルアリルピペラジニウムクロリド、又はN,N,N’-トリアリル-N’-アルキルアリルピペラジニウムクロリドである。上記の塩化アンモニウムの代わりに、その臭化物又はヨウ化物を使用することもできる。
【0047】
Dが存在しない場合、及び/又はm=0である場合、これは、本発明の範囲においてアニオン交換基Cの環状構造要素が五員環であることを意味する。
【0048】
有利に温度安定性及び/又はアルカリ安定性も示す非水溶性ポリマーBは、有利にはポリエーテルスルホン、又はポリスルホン、又はポリフェニレン、又はポリフェニレンエーテル、又はポリフェニレンスルフィド、又はポリ(ペルフルオロエチレンプロピレン)、又はポリテトラフルオロエチレン、又はポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)、又はペルフルオロアルコキシポリマー、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又はポリプロピレンである。
【0049】
同様に有利には、コモノマーAは、スチレン、及び/又はα-メチルスチレン、及び/又はN-ビニルカルバゾール、及び/又はメタクリルエステル、及び/又はN-ビニルピロリドン、及び/又はN,N-ジアリルアクリルアミド、及び/又はN,N-ジアリルアクリルスルホンアミド、及び/又はジアリルエーテル、及び/又は1,2-ジアリルベンゼン、及び/又はジアリルスルフィド、及び/又はクロロトリフルオロエチレン、及び/又はテトラフルオロエチレン、及び/又はヘキサフルオロプロピレン、及び/又は1,2-ジビニルベンゼンである。
【0050】
ここでコモノマーAは、有利には荷電基を空間的に分離するために存在している。
【0051】
有利には、Rは窒素、R~Rは水素、R及び/又はRは水素若しくはメチル基、R及び/又はRはメチル基若しくはエチル基である。
【0052】
本発明による非水溶性アニオン交換体材料は、本発明による非水溶性アニオン交換体材料における窒素若しくはリン含有アニオン交換基Cが、一般式I~VIIIのうち少なくとも1つによる構造単位の環式(複素環式)若しくはスピロ環式化合物に組み込まれていることによって達成される。
【0053】
さらに、一般式I~VIIIのうち少なくとも1つによる構造単位中のアニオン交換基Cにおける正電荷を帯びた原子に対してβ位にある水素原子は、アルキル基又はアリール基で置換されていてよい。
【0054】
アニオン交換基Cを、直鎖状のブロックコポリマー(これはまた、側鎖が重合されることでブラシ状(brushlike)の形態を有する)におけるセグメントとして一般式I~VIIIのうち少なくとも1つによる構造単位へと組み込むことによって、又はアニオン交換体Cから三次元的に架橋したポリマーを製造し、かつ末端基Z(式V~VIIIにおいては、K=Z)を作製し、かつ結合部X(式V~VIIIにおいては、K=X)を介して非水溶性ポリマーBと繋げることによって、本発明の非水溶性アニオン交換体材料が生成する。
【0055】
本発明による非水溶性材料のアルカリ安定性及び温度安定性を改善することによって、新たな適用分野の開拓、又は公知の適用における効率の改善が可能となる。
【0056】
本発明による非水溶性アニオン交換体材料は、アニオン交換膜又はいわゆるアニオン交換樹脂のために使用することができる。ここでアニオン交換膜は実質的に、また少なくとも大部分が、一般式I~IVのうち少なくとも1つによる構造単位の構成要素である直鎖状のアニオン交換基Cから成っている。アニオン交換樹脂は実質的に、また少なくとも大部分が、一般式V~VIIIのうち少なくとも1つによる構造単位の構成要素である架橋したアニオン交換基Cから成っている。
【0057】
本発明による非水溶性アニオン交換体材料のさらなる有利な特性は、その無臭性である。
【0058】
本発明による非水溶性アニオン交換体材料は、環化重合によって製造される。
【0059】
有利には、アニオン交換基Cを製造するためのモノマーとして、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級アミンのN,N-ジアリル化合物、及び/又はN,N-ジアルキルアリル化合物、及び/又はN-アリル-N-アルキルアリル化合物、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルピペリジニウムクロリド、ジアリルピロリジニウムクロリド、アリル-メタリルジメチルアンモニウムクロリド、アリル-メタリルピペリジニウムクロリド、アリル-メタリルピロリジニウムクロリド、ジメタリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメタリルピペリジニウムクロリド、ジメチルアリルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,4-ジメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,4,4-テトラメチルピロリジニウムクロリド、ジアリル-3,5-ジメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-3,3,5,5-テトラメチルピペリジニウムクロリド、ジアリル-ジフェニルアンモニウムクロリドを使用する。同様に有利には、上記のようなモノマーとして、脂肪族若しくは芳香族若しくは脂環式の第二級ホスフィンのP,P-ジアリル化合物、及び/又はP,P-ジアルキルアリル化合物、及び/又はP-アリル-P-アルキルアリル化合物、例えば、ジアリルジメチルホスホニウムクロリド、ジアリルジフェニルホスホニウムクロリドを使用することができる。塩化アンモニウム又は塩化ホスホニウムの代わりに、相応する臭化物又はヨウ化物を使用することもできる。
【0060】
本発明による非水溶性アニオン交換体材料は、殊にアルカリ条件下で、従来技術による比較可能な膜材料に比べて著しくより高い温度安定性を有する。つまり、本発明によるアニオン交換体材料は、既存の適用範囲で上記のような材料のために問題なく使用することができ、そうすることでこの方法の効率改善がもたらされる。また、特性が改善されることによって、本発明による材料のための新たな適用領域を開くことも可能である。
【0061】
以下で、本発明を2つの実施例によってより詳細に説明する。
【実施例
【0062】
実施例1
一般式IIによる構造単位における複数のアニオン交換基C(非水溶性ポリマーBを介する結合部を有する)からアニオン交換膜を製造。
【0063】
アニオン交換膜を製造するために、まず非水溶性ポリマーBを製造する。そのために、52mmolの4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン及び50mmolの4,4’-ビス-トリメチルシロキシジフェニルスルホンを50mlのN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、その後、75mmolの炭酸カリウムを加える。この混合物をアルゴン雰囲気下で16時間にわたり175℃で攪拌する。引き続き、温度を2時間にわたり190℃に上げ、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンをさらに100mg添加する。冷却後、37%の塩酸5mlを添加しながら、反応生成物を1000mlのエタノール中で沈殿させる。この生成物を吸引し、250mlのエタノールにより5時間にわたり50℃で洗浄し、吸引し、100℃で真空において乾燥させる。目的生成物は、11,000g/molの分子量Mn(H-NMRスペクトルで特定)を有するフッ素末端ポリエーテルスルホン(ポリマーB)であり、OH末端基を有していない。
【化3】
【0064】
以下で示される反応によるポリマーBにおいて結合部Xを作製するために、2mmolのポリエーテルスルホン及び4mmolの4-ヒドロキシピペリジンを50mlのNMPに溶解させ、6mmolの炭酸カリウムを加える。この出発液を16時間にわたり175℃で攪拌し、引き続き、中間生成物を500mlのエタノールによって沈殿させる。ここで得られるポリマーをエタノール中で5時間にわたり50℃で攪拌し、濾別し、真空中、100℃で乾燥させる。
【化4】
【0065】
目的生成物は、ピペリジン末端ポリエーテルスルホンである。収率は90%である。フッ素末端基と4-ヒドロキシピペリジンとの完全な反応が、H-NMRスペクトルで検出された。
【0066】
この0.5mmolのピペリジン末端ポリエーテルスルホンを25mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、4mmolの炭酸カリウムを加え、75℃に加熱する。30分の時間にわたって、4mmolのアリルクロリド(10mlのDMSOに溶解したもの)を反応混合物に滴下する。DMSOに溶解したアリルクロリドを完全に添加した後に、混合物を24時間にわたり90℃で攪拌する。冷却後、結合部Xによってジアリルピペリジニウム末端化されたポリエーテルスルホンをエタノール中で沈殿させ、50℃の新たなエタノール中で攪拌し、引き続き濾別する。生成物を真空において50℃で乾燥させる。収率は85%である。末端の第四級アンモニウム塩の完全な形成は、H-NMRスペクトルで特定した。
【化5】
【0067】
その後、一般式IIの構造単位による複数のアニオン交換基Cを有する化合物を製造するために、0.1mmolのジアリルピペリジニウム末端ポリエーテルスルホン(結合部Xを有するポリマーB)及び4mmolのN,N-ジアリルピロリジニウムクロリド(式IIによるアニオン交換基Cであり、Vynckら著のMacromol.Rapid Commun.18、1997、149~156に従った規定に沿って製造したもの)を50mlのDMSOに溶解させ、凍結・融解を4回繰り返すことで、溶解した酸素を除去する。この反応溶液を90℃に加熱し、4モル%のAIBNを加え、アルゴン雰囲気下で24時間にわたり90℃で攪拌する。冷却後、末端の二重結合を飽和させるために、発生したポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックポリマーを銅(I)塩の存在下でチオフェノールにより処理し、引き続き、水中で沈殿させる。反応時におそらく発生したホモポリマーは、ソックスレー抽出器において水で抽出することによって除去する。H-NMRスペクトルで特定された組成は、式IIによるモノマー組成に相応する。収率は95%である。
【化6】
【0068】
引き続き、そのようにして製造されたポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックポリマーから膜を製造する。そのために、0.5gのポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックポリマーを10mLのN-メチルピロリドンに溶解させ、濾過し、直径7cmのペトリ皿に移す。溶媒であるN-メチルピロリドンは、真空において、室温で2時間、引き続き40℃で2時間、さらに60℃で2時間、その後100℃で24時間にわたり除去する。出来上がる膜を水でペトリ皿から剥がし、70℃の水中で4時間にわたり洗浄し、引き続き、質量が一定になるまで真空中、50℃で乾燥させる。
【0069】
ポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックコポリマーからの膜は、70μmの厚さ(乾燥)、1.30mmol/gのイオン交換容量、65%の吸水率(80℃の場合)、及び70mS/cmの水酸化物イオン伝導性(80℃、95%の相対湿度)を有する。
【0070】
膜材料であるポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックコポリマーは、その温度安定性に関して特徴的である。そのために、ポリエーテルスルホン・ポリ(アゾニアスピロ[4,4]ノナン)ブロックコポリマーからの膜0.5gを、まず24時間にわたり2Mの水酸化ナトリウム溶液中で保管して、アニオン交換体材料をOH型に移行させる。引き続き、この膜を2Nの水酸化ナトリウム溶液5ml中に入れ、容器中で溶融試験にかけ、内容物を168時間にわたり120℃の温度で維持する。冷却後、容器を開け、アニオン交換体材料を水で洗浄し、引き続き24時間にわたり1Mの塩化ナトリウム溶液中で保管する。試料を再び水で洗浄し、質量が一定になるまで真空において50℃で乾燥させる。
【0071】
その際、膜材料は以下の結果を示し、ここでこれらの値は、温度安定性を特定する前後にそれぞれ算出した:
質量
試験前=0.5g、試験後=0.49g
イオン交換容量
試験前=1.30mmol/g、試験後=1.29mmol/g
水酸化物イオン伝導性(80℃、95%の相対湿度)
試験前=70mS/cm、試験後=69mS/cm。
【0072】
結果の差違は、各測定法における誤差の範囲内にある。
【0073】
実施例2
一般式VIによる構造単位の構成要素である複数のアニオン交換基C(非水溶性ポリマーBを介する結合部を有する)を有する架橋化合物からアニオン交換膜を製造。
【0074】
アニオン交換膜を製造するために、まずK(結合部Xを表す)を有する非水溶性ポリマーBを実施例1に従って製造する。0.1mmolのポリマーB、10mmolのN,N-ジアリルピペリジニウムクロリド、及び2mmolのN,N,N,N-テトラアリルアンモニウムクロリドの溶液を架橋部Vとして、0,1mmolの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(DPO)を紫外線開始剤として10mLのジメチルスルホキシドに溶解させ、入念に脱気する。この溶液を石英ガラス板で覆われた直径7cmのペトリ皿に移し、10分にわたり室温で254nmの波長を有する紫外光(出力8W)を照射する。引き続き、溶媒を真空において100~120℃の温度で除去する。アニオン交換体材料を水で洗浄し、末端の二重結合を飽和させるために、銅(I)塩の存在下でチオフェノールにより処理する。アニオン交換膜を再び水で念入りに洗浄し、質量が一定になるまで真空において乾燥させる。この膜は、100μmの厚さ(乾燥)、3.35mmol/gのイオン交換容量、100%の吸水率(80℃の場合)、及び90mS/cmの水酸化物イオン伝導性(80℃、95%の相対湿度)を有する。
【化7】
【0075】
この膜材料は、その温度安定性に関して特徴的である。そのために、膜0.5gを、まず24時間にわたり2Mの水酸化ナトリウム溶液中で保管して、アニオン交換体材料をOH型に移行させる。引き続き、この膜を2Nの水酸化ナトリウム溶液5ml中に入れ、容器中で溶融試験にかけ、内容物を168時間にわたり120℃の温度で維持する。冷却後、容器を開け、アニオン交換体材料を水で洗浄し、引き続き24時間にわたり1Mの塩化ナトリウム溶液中で保管する。試料を再び水で洗浄し、質量が一定になるまで真空において50℃で乾燥させる。
【0076】
その際、膜材料は以下の結果を示し、ここでこれらの値は、それぞれ温度安定性を特定する前後に算出した:
質量
試験前=0.5g、試験後=0.49g
イオン交換容量
試験前=3.35mmol/g、試験後=3.32mmol/g
水酸化物イオン伝導性(80℃、95%の相対湿度)
試験前=90mS/cm、試験後=88mS/cm。
【0077】
結果の差違は、各測定法における誤差の範囲内にある。