(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】移植片を伸張するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
A61B17/88
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017127203
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-05-12
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル・エイチ・ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ジェイ・マホニー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・エイ・マークス
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジョン・ジルカ
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06547778(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0049598(US,A1)
【文献】米国特許第05997545(US,A)
【文献】特表2009-541012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/88
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸に取り付けられた移植片を伸張するための装置であって、
ユーザーに保持されるように構成された把持部であって、前記把持部が前記ユーザーに保持されている状態で、外科用器具が通過できるように構成された通路を前記把持部の中に含む、把持部と、
対向する第1及び第2のセグメントで形成された枠であって、前記第1及び第2のセグメントが弯曲部によって一方の端部で互いに及び前記把持部に結合され、対向する端部で可変角の分だけ離間している、枠と、
前記第1及び第2のセグメントのそれぞれに形成された少なくとも1つの縫合糸保持機構と、を含み、
前記第1及び第2のセグメントが、前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り付けられた前記縫合糸に付加される張力に反応して、互いに向かって移動して前記可変角を減少させるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記縫合糸に付加される前記張力の表示を提供するように構成された表示器を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記表示器が第1及び第2の表示器を含み、前記第1の表示器と前記第2の表示器との相対的な位置付けが、前記縫合糸に付加される前記張力の前記表示を提供する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の表示器が、前記第1及び第2のセグメントの一方にマークを含み、前記第2の表示器が前記第1及び第2のセグメントの他方に窓を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記弯曲部がリビングヒンジを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記通路が、少なくとも1つの囲まれた孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記通路が、前記把持部の側壁に少なくとも1つの切り欠きを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
縫合糸に取り付けられた移植片を伸張するためのシステムであって、
第1の部分及び第2の部分を有する枠と、
外科用器具を通過させるように構成された開口部を有する把持部と、を含み、
前記第1の部分及び前記第2の部分のそれぞれが、前記把持部から遠位に延在し、それぞれが近位端及び遠位端を有し、前記第1の部分及び前記第2の部分の前記近位端が、複数のヒンジによって前記把持部に連結されており、前記第1の部分及び前記第2の部分の前記遠位端が互いに移動可能に離間しており、前記第1の部分及び前記第2の部分のそれぞれが、前記遠位端側に連結された、前記縫合糸が取り付けられる少なくとも1つの縫合糸保持機構を有しており、前記複数のヒンジが前記第1及び第2の部分の前記遠位端を互いから離れる方向に付勢し、前記第1及び第2の部分の前記遠位端が、第1の位置と、前記第1の位置よりも相互に近づいた第2の位置との間で移動可能であり、
複数の前記縫合糸を更に含み、前記縫合糸のそれぞれが前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されるように構成され、
複数の
前記縫合糸が、前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されている状態で、複数の
前記縫合糸は、前記枠が前記第1の位置にあるときに第1の張力下にあり、前記枠が前記第2の位置にあるときに前記第1の張力より大きい第2の張力下にあるように構成されている、システム。
【請求項9】
前記枠は、前記第1の位置から前記第2の位置への前記枠の運動に反応して、複数の
前記縫合糸が前記第2の張力を得ていることを示すように構成されている表示器を更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
外科用器具を更に含み、
前記外科用器具が前記開口部を通っている際に、前記開口部を介して前記表示器が見える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のヒンジのそれぞれがリビングヒンジを含む、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、移植片を伸張するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
靭帯に対して実施される様々な処置時に、例えば、前十字靭帯(ACL)の再建において、多数のストランドを含み得る移植片の使用がしばしば必要になる。例えば、ACLの再建時には、2本(二重)の細長いストランド及び2本(二重)の半腱様筋ストランドなど、4本の複合ストランドがしばしば使用される。ACL又は他の靭帯に対して実施されるその他の処置時では、膝蓋腱、4頭筋腱、脛骨など、その他の移植片が代わりに又は追加的に使用される場合がある。2本以上のストランドが使用される場合の処置時には、典型的に複数の移植片ストランドが均等に伸張されるが、これは、最適な生体力学的特性を提供するためにストランドが均等な張力下にあることを意味する。それぞれの移植片ストランドに対する張力は、1本ずつ手で付加させてもよいが、この方式では、様々なストランドに対する均等な負荷を得ることが困難になる場合があり、時間がかかる場合があり、かつ/又は実施が難しい場合がある。均等な張力を付加するために、例えば、それぞれのストランドに重みを掛ける、又は様々な手持ち式装置を使用するなど、その他の様々な方式が取られているが、これらの方式は時間がかかる、不便である、かつ/又は手間がかかる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、移植片を伸張するための改良された方法及び装置の必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概して、移植片を伸張するための方法及び装置が提供される。
【0005】
一態様では、一実施形態において、ユーザーに保持されるように構成された把持部、対向する第1及び第2のセグメントから形成される枠、並びに第1及び第2の枠セグメントそれぞれに形成される少なくとも1つの縫合糸保持機構を含む、外科用装置が提供される。把持部は、把持部をユーザーに保持された状態で外科用器具を通過させられるように構成された通路を含む。第1及び第2のセグメントは、弯曲部によって一方の端部で互いに及び把持部に結合され、対向する端部で可変角の分だけ離間している。第1及び第2の枠セグメントは、少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り付けられた縫合糸に付加される張力に反応して、互いに向かって移動して可変角を減少させるように構成される。
【0006】
この外科手術用装置は様々な形で異なり得る。例えば、装置は、縫合糸に付加される張力の表示を提供するように構成された表示器を含み得る。表示器は、第1及び第2の表示器を含み得、第1の表示器と第2の表示器との相対的な位置付けが、縫合糸に付加される張力の表示を提供し得る。第1の表示器は、第1及び第2のセグメントのうちの一方にマークを含み得、第2の表示器は第1及び第2のセグメントの他方に窓を含み得る。少なくともいくつかの実施形態では、表示器は、通路を介して見えることができる。
【0007】
別の例については、弯曲部はリビングヒンジを含み得る。
【0008】
更に別の例については、通路は少なくとも1つの囲まれた孔を含み得る。
【0009】
なお別の例については、通路は、把持部の側壁に少なくとも1つの切り欠きを含み得る。
【0010】
別の態様では、一実施形態において、第1の部分及び第2の部分を有する枠と、外科用器具を通過させられるように設定された開口部を有する把持部と、を含む外科用システムが提供される。第1の部分及び第2の部分は、それぞれ把持部から遠位に延在し、それぞれ近位端及び遠位端を有する。第1の部分及び第2の部分の近位端は、複数のヒンジによって把持部に連結される。第1の部分及び第2の部分の遠位端は、互いに移動可能に離間している。第1の部分及び第2の部分はそれぞれ、そこに連結された少なくとも1つの縫合糸保持機構を有する。枠は、第1の位置(複数のヒンジが、第1及び第2の部分の遠位端を互いから離れる方向に付勢する)と、第2の位置(付勢に打ち勝つためにフレームに付加された力に反応して、第1及び第2の部分の遠位端が互いに向かって移動している)と、の間で移動可能である。
【0011】
システムは、数多くのバリエーションを有し得る。例えば、システムは、枠に付加される張力の表示を提供するように構成された表示器を含み得る。また、システムは、開口部を通過させられる外科用器具を含み得、表示器は、外科用器具が通過して延びるときに見ることができる。代替的又は追加的に、表示器は、第1及び第2の表示器を含み得、第1の表示器及び第2の表示器の互いに相対的な位置が、枠に付加される力の表示を提供し得る。
【0012】
別の例について、複数のヒンジのそれぞれはリビングヒンジを含む。
【0013】
更に別の例について、システムは複数の縫合糸を含み得る。縫合糸のそれぞれは、少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されるように構成され得る。複数の縫合糸が、少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されている状態で、複数の縫合糸は、枠が第1の位置にある場合に第1の張力下にあり、枠が第2の位置にある場合に第2のより大きい張力下にあるように構成され得る。枠は、複数の縫合糸が、第1の位置から第2の位置への枠の移動に反応して、第2の張力を得ていることを示すように構成された表示器を含み得る。
【0014】
別の態様では、一実施形態において、複数の移植片ストランドを移植片伸張装置の複数の縫合糸保持機構部材に連結することを含む、外科的方法が提供される(is provides)。複数の移植片ストランドは、移植片伸張装置に連結されたときに第1の伸張下にある。また、方法は、伸張装置を介して移植片ストランドに張力を付加することを含む。張力によって、複数の移植片ストランドは第1の張力下から第2の張力下に変化する。移植片伸張装置は、複数の移植片ストランドが第2の張力化にあることを示す表示器を含む。
【0015】
この方法は数多くのバリエーションを有し得る。例えば、張力を付加することにより、伸張装置の第1及び第2のセグメントは、第1及び第2のセグメントを共に連結する弯曲部で動的に弯曲され得る。別の例について、表示器は、複数の既定の張力のうちのいずれか1つを示すように構成され得、第2の張力は、既定の張力のうちの1つであり得る。更に別の例では、方法は、移植片伸張装置の通路を通して外科用器具を前進させることを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図5】有益な一実施形態における
図1の装置の斜視図である。
【
図7】
図6の伸張装置を上から見下ろした図である。
【
図8】伸張装置の一実施形態の一部分の端面図である。
【
図11】伸張装置の把持部の更に別の実施形態の斜視図である。
【
図12】外科用装置のなお別の実施形態の一部分の斜視図である。
【
図15】伸張装置の更に別の実施形態の斜視図である。
【
図18】伸張装置のなお別の実施形態の斜視図である。
【
図20】伸張装置の更に別の実施形態の斜視図である。
【
図21A】4つの移植片ストランドの一実施形態の、伸張前の平面図である。
【
図21B】
図21Aの4つの移植片ストランド(stands)の、伸張後の平面図である。
【
図21C】2つの移植片ストランドの一実施形態の、伸張前の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような修正及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0018】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴について必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、装置、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される場合、かかる寸法は、かかるシステム、装置、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置並びにその要素のサイズ及び形状は、少なくともシステム及び装置が用いられる被験者の解剖学的構造、システム及び装置がそれらとともに用いられる要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び処置によって決まり得る。
【0019】
移植片を伸張するための様々な例示の方法及び装置が提供される。概して、外科用装置は、把持部及び枠を含む。枠は、対向する2つのセグメントを有し、それらは互いに離間し、それぞれがそこに取り付けられた少なくとも1つの縫合糸を有するように構成される。2つのセグメントは、枠に取り付けられた縫合糸に付加される張力に反応して、互いに向かう方向及び互いから離れる方向に動的に移動するように構成される。付加される張力の増加に反応して、セグメントは、把持部に対して互いに向かう方向に移動するように構成され、付加される張力の減少に反応して、セグメントは、把持部に対して互いから離れる方向に移動するように構成され得る。枠は、所望により、縫合糸に付加された張力の表示を提供するように構成された表示器を含む。この方法では、縫合糸に付加された張力が変化すると、表示器はその付加張力を示す。表示される付加張力によって、装置のユーザーは、付加張力が所望のレベルであることを表示器が示すまで、付加張力を調節することができる。枠に取り付けられた縫合糸は、典型的に移植片に取り付けられることから、縫合糸に付加された張力は、移植片に付加された張力を示す。したがって、表示器は、移植片に付加された張力を示すように構成され、移植片を所望の張力まで伸張させることを可能にする。例えば、軟組織の修復を伴う外科用処置の実施時に、移植片は、治癒を容易にするために所望の張力まで伸張され、所望の張力で固定され得るが、これは、当業者に認識されるように、移植片張力が組織の治癒の程度及び迅速さに影響を及ぼすためである(例えば、過度に伸張された移植片は、手術後の患者の運動時に引裂かれる可能性が高くなり得る、十分に伸張されていない移植片は、迅速かつ/又は強力な方法で骨に再び取り付けるために固定されるとき、骨に十分に近接して接触できない、など)。
【0020】
装置は、ユーザーが直接的(例えば、ユーザーの片方の手で保持)又は間接的(例えば、ユーザーに制御されるロボット外科用システムによって保持)に装置の把持部を保持し、枠に取り付けられた縫合糸に均等でバランスの取れたレベルの張力を付加できるように構成される。したがって、ユーザーは少なくとも片方の手が空いている状態で、ユーザーが片方の手で装置を、もう片方の手で外科用器具を同時に操作できるように装置を使用することができる。ユーザーは、ユーザーが装置を制御する一方で外科用器具を制御する別のユーザーと動きを合わせる必要がなくなるため、このことは、ユーザーに、外科的処置の全体的な実施に対するより良い制御をもたらす。
【0021】
把持部は、少なくとも1つの開口部を有し、少なくとも1つの開口部は、把持部をユーザーに保持されながら、外科用器具を通過させられるように構成される。装置の表示器は、外科用器具が開口部内に位置付けられているかどうかに関係なく、少なくとも1つの開口部を介して目視観察可能になるように位置付けられ、それによって、装置に取り付けられた縫合糸の伸張時に(したがって、縫合糸に取り付けられた移植片の伸張時に)外科用器具を使用することが可能になる。把持部を保持するユーザーの手は、開口部内に位置付けられた外科用器具を保持する手と同じであってよい。したがって、ユーザーはなお片方の手が空いている状態で、外科用装置と、開口部を通って前進させる外科用器具と、を使用することができる。したがって、ユーザーは、不便なツールに妨げられたり、スピードダウンされたりすることなく、外科用処置の実施中に縫合糸を固定することが可能になり得、かつ/又はユーザーは、装置及び器具を保持していない空いている手でマレットを操作し、マレットを使用して器具を打ち付けて骨に移植組織を固定し、それによって骨に対して所定の位置に伸張した移植片を保持することができる。
【0022】
図1及び
図2は、移植片を伸張するための外科用装置10の一実施形態を示す。外科用装置10は、把持部12及び枠20を含む。把持部12は、ユーザーによって保持されるように構成され、外科用器具(図示なし)を受容するようにサイズ及び径が設定された開口部14を把持部の中に有する。枠20は、対向する第1及び第2のセグメント22、24を含み、これらは、弯曲部26によってその近位端22p、24pで互いに及び把持部12に移動可能に結合される。第1及び第2のセグメント22、24のそれぞれの遠位端22d、24dは、装置によって張力が付加されていないとき、互いに離間している。第1及び第2の枠セグメント22、24はそれぞれ、縫合糸に取り外し可能に及び交換可能に取り付けられるように構成された、少なくとも1つの縫合糸保持機構28を含んでおり、それにより、複数の縫合糸が縫合糸保持機構28を介して装置10に取り付けられ得る。装置10はまた、縫合糸保持機構28を介して枠20に取り付けられるなど、装置10に取り付けられた縫合糸に付加される張力を示すように構成された表示器30を含む。把持部12は、人の手に収まるように構成される。把持部12は、多様なサイズ及び形状、例えば、約8.9~14センチメートル(3.5~5.5インチ)の範囲内の長さを有し得る。したがって、把持部12内の開口部14は、約14センチメートル(5.5インチ)未満の長さ、例えば、約8.9センチメートル(3.5インチ)未満の長さを有し得る。開口部12は、多様なサイズ及び形状、例えば、約1.3~2.54センチメートル(0.5~1インチ)の範囲内の幅を有し得る。概して、開口部12のサイズは、外科用器具の細長いシャフトの通過に適応するように構成される。第1及び第2のセグメント22、24はまた、約10~15センチメートル(4~6インチ)の範囲内の長さ、及び約8.9~13センチメートル(3.5~5インチ)の範囲内の幅(例えば、第1のセグメント22の近位端22pと遠位端22dとの間の近位-遠位長さ、及び第2のセグメント24の近位端24pと遠位端24dとの間の近位-遠位長さ)など、多様なサイズ及び形状を有し得る。
【0023】
把持部12は、多様なサイズ、形状、及び構成を有し得る。概して、把持部12は、外科的処置での装置10の使用時に、ユーザーに保持されるように構成される。例示の実施形態では、把持部12は、外科的処置での装置10の使用時に、ユーザーの片手で保持されるように構成される。この図示した実施形態の場合、把持部12は、ユーザーに片手で握られるように構成された細長い形状を有する。他の実施形態では、把持部12は、球形状、楕円形状、円錐形状、三角柱形状など、別の形状を有し得る。
【0024】
上記のように、把持部12は、多様なサイズ、形状、及び構成を有し得る開口部14を有する。概して、開口部14は、外科用器具を通過させられるように構成され、それによって、外科的処置の実施時に使用可能な、典型的に制限された外科用空間量の使用を最大限にし、かつ/又はユーザーの手による装置10及び器具の同時保持を容易にする。開口部14は、開口部を介したユーザー可視化を可能にするように構成され、別の方法では装置10によって不明瞭になる外科用空間及び/又は外科用器具のユーザー可視化を容易にする。開口部14は、把持部12を介して装置10を保持することと、把持部12の開口部14を通過させる器具を操作することと、開口部14を通して器具を見ることと、表示器30を観察することと、をユーザーが同時に行えるように構成される。
【0025】
開口部14は、図示した実施形態では楕円形状を有しているが、円、正方形、長方形など、多様な異なる形状のいずれかを有してよい。図示した実施形態では、開口部14は細長い形状を有し、細長い開口部の長さに沿った複数の位置のいずれかで、開口部14を介して器具を前進させることを可能にし得、それにより、使用時にユーザーが器具をより快適に保持することが可能になり、かつ/又は開口部14内での器具の角度調節が容易になる。細長い形状はまた、開口部14内の器具の横方向の摺動を可能にし、患者に対する器具の位置付けを容易にし得る。
【0026】
図示した実施形態では、開口部14は、立体外周を有する囲まれた孔の形状である。他の実施形態では、開口部14は、切り欠きとして把持部12の側壁に形成されるため、開口部14は囲まれた孔にならない。開口部14が切り欠きの形状である場合、開口部14は、外科用器具が開口部を通って摺動自在に前進することを可能にすると同時に、器具を囲まれた孔の中へ前進させ、開口部から除去し得る方法と同様に、開口部の中へ若しくは開口部から外へ器具を横に動かすか(例えば、開口部の長手方向軸に対して横方向に)、又は開口部の中へ若しくは開口部から外へ器具の端部を縦に動かす(例えば、開口部の長手方向軸に沿って)かのいずれか1つによって、器具を開口部内に挿入し、開口部から除去することを可能にするように構成される。
【0027】
開口部14は、図示した実施形態では単一の開口部として示されているが、他の実施形態では、開口部は複数の開口部を含み得る。単一の開口部を有することは、把持部12を介して可能となる可視化の量を最大限にするのに役立ち得、開口部14内での器具の横方向の位置及び角度位置においてより多くのユーザー選択を提供し得、かつ/又は把持部12の製造を容易にし得る。複数の開口部の使用は、複数の器具が把持部12を介して同時に延在することを可能にし、隣接する器具を有する複数の開口部のうち別々の開口部によって、隣接する器具が延在するときに通る開口部間の距離によって画定される最小限の量の距離だけ離間している。かかる構成は、器具の干渉を防止するのに役立ち得る。また、複数の開口部の使用により、少なくとも1つの開口部は、開口部を通って延びる器具を有し、少なくとも1つの他の開口部は器具を有せずに把持部12を介した可視化を容易にする(例えば、表示器30の妨害のない表示を容易にする)ことが可能になる。また、複数の開口部の使用は、少なくとも1つの開口部が、特定の器具のサイズ及び形状に対応するサイズ及び形状を有することを可能にし(例えば、直径7mmの円形シャフトを有する器具を収容するように設定された直径を有する、丸形開口部など)、装置10での器具の使用の効果を最大限にするため、把持部12を介して特定の器具をどこまで前進させるかをユーザーが識別するのに役立ち得る。
【0028】
図示したように、開口部14は空の空間をその中に有し、例えば、その外周は空の内側を画定する。他の実施形態では、開口部14は、その中に配設された透明の材料を有し、開口部を介した可視化を可能にする。材料は、いかなる器具も通過させられないように開口部全体を被覆することができ、妨害のない可視化の領域を維持し、それによって表示器30が視覚的に妨害されることを防止するのに役立ち得る。1つ又は2つ以上の開口部14は、開口部を通した器具の通過を可能にするように、その中に空の空間を有することができると同時に、1つ又は2つ以上の他の開口部14は、開口部を通した器具の通過を防止するため、及び開口部を介した可視化を可能にするために、その中に透明な材料を有することができるため、開口部14の全体的な被覆は、把持部12に複数の開口部を有する装置10の実施形態において有益であり得る。あるいは、材料は開口部の一部のみを被覆してもよく、その場合、材料が開口部の一部を通した器具の通過を防止するため、器具が開口部14を通過すべき場所をユーザーに示すのに役立ち得、かつ/又は流体のような意図しない材料が開口部14を通過することを防止するのに役立ち得る。
【0029】
図3及び4にも示されている枠20は、多様なサイズ、形状、及び構成を有し得る。
図2に示すように、枠20は、A形の断面形状を有し、それぞれ多様なサイズ、形状、及び構成を有し得る第1及び第2のセグメント22、24を含む。図示した実施形態では、第1及び第2のセグメント22、24は互いのミラー像である。したがって、枠20は対称であり、セグメント22、24上の縫合糸保持機構28に取り付けられた縫合糸の均等な伸張を容易にし、故に、縫合糸に取り付けられた移植片の均等な伸張を容易にする。
【0030】
図1及び3に示すように、第1及び第2のセグメント22、24のそれぞれはU形状を有し、「U」形状の内側を介した、枠20によって画定される全体的な「A」形状の内側への可視化が可能になり、それによって、外科用空間及び/又は使用中の外科用器具のユーザー可視化が容易になる。
図4に示すように、枠20の第1及び第2のセグメント22、24はそれぞれ、例えばネジ36などで、枠20の上部及び下部弯曲部材に取り付けられた横げた32を含み得る。他の実施形態では、第1及び第2のセグメント22、24は、異なる要素で形成され得、並びに/あるいは一体成型から形成される、又は共に溶接、クリッピング、若しくはボルト締めによるなどの様々な他の方法で組み立てられ得る。
【0031】
上述のように、第1及び第2のセグメント22、24の近位端22p、24pは、枠20の弯曲部26によって(例えば、上部及び下部の弯曲部材34によって)互いに取り付けられており、第1及び第2のセグメント22、24の遠位端22d、24dは互いに離間している。弯曲部26は、以下に更に述べるように、第1及び第2のセグメント22、24の遠位端22d、24dが互いに向かう方向に及び互いから離れる方向に移動できるよう、弯曲するように構成されている。換言すれば、弯曲部26を弯曲することにより、枠20が把持部12に対して移動し、例えば、第1及び第2のセグメント22、24の遠位端22d、24dが互いに向かう方向に又は互いから離れる方向に移動する。
【0032】
把持部26は、多様なサイズ、形状、及び構成を有し得る。概して、弯曲部26は、そこに付加される力に反応して動的に弯曲するように構成される。図示した実施形態の場合、弯曲部26は、装置の製造しやすさ及び/又は装置の耐久性を促進する、リビングヒンジの形状であり得る。他の実施形態では、弯曲部26は、バネ(例えば、コイルバネ、竹の子バネなど)、弾性バンド、又は他の弾性部材などの別の構成を有してもよい。弯曲部26は、機械加工、打抜加工、成形、ワイヤリングなど、多様な方法のいずれかで製造され得る。
【0033】
弯曲部26はまた、第1の部分22及び第2の部分24を互いから離れた方向に付勢する、例えば、第1の部分22及び第2の部分24の遠位端22d、24dを互いから離れた方向に付勢するため、第1の部分22及び第2の部分24に付勢力を提供するように構成される。枠20に取り付けられた縫合糸に付加される張力が付勢力を超えると、弯曲部26が弯曲し、それにより、以下に更に述べるように、セグメント22、24は互いに向かって移動する。
【0034】
図2に示すように、枠20は、弯曲部26に隣接して形成される窓31をその中に有する。したがって、2つの弯曲部26(上部弯曲部26及び下部弯曲部26)を含む、図示した実施形態では、枠20は2つの窓を有する。他の実施形態では、枠20は別の数の窓をその中に含み得る。概して、窓31は、上述の開口部14と同様に、窓を介した視覚アクセスを可能にするように構成されており、また、開口部14に関して上で述べた内容と同様に、空の空間であってもよく、その中に配設された透明な材料を有してもよい。
図1及び2に示すように、弯曲部26に隣接した窓31の位置付けによって、把持部12に隣接した窓31の位置付けが可能になり、それによって開口部14内に位置付けられた器具の可視化が可能になる。
【0035】
また、
図2に示すように、セグメント22、24の遠位端22d、24dは、可変角度αを画定する。
図2は、張力が付加されておらず、角度αが最大である状態の装置を示す。セグメント22、24に取り付けられた縫合糸/移植片を伸張するなどの方法で張力が付加されたとき、セグメント22、24が互いに向かって移動するにつれて角度αは減少する。
図2に更に示すように、第1のセグメント22は、第2のセグメント24に向かってそこから内側へ半径方向に延在する第1の伸張部30aを含む。同様に、第2の部分24は、第1の部分22に向かってそこから内側へ半径方向に延在する第2の伸張部30bを含む。したがって、第1及び第2の伸張部30a、30bは、枠の「A」形状のクロスバーを画定する。弯曲部26の弯曲及び角度αの変化に反応して、第1及び第2の伸張部30a、30bが互いに対して移動するように、第1及び第2の伸張部30a、30bは互いに移動可能に連結される。以下に更に述べるように、第1及び第2の伸張部30a、30bのこのような運動は、枠20に取り付けられた縫合糸に付加される張力の量を示すための表示器30の使用を容易にし得る。図示した実施形態では、
図1に示すように、第1のセグメント22は2つの第1の伸張部30aを含み、第2のセグメント24は、それぞれ第1の伸張部30aの1つに関連づけられた、2つの第2の伸張部30bを含む。上部の伸張部30a、30bは、上部弯曲部26に関連づけられ、下部の伸張部30a、30bは、下部弯曲部26に関連づけられる。
【0036】
表示器30は、装置10に取り付けられた縫合糸に付加される張力、故に、縫合糸に取り付けられた移植片に付加される張力の量の表示を提供できる限り、多様なサイズ、形状、及び構成を有してよい。本明細書に記載するように、表示器30を枠20に連結することにより、縫合糸に付加される張力に反応した枠20の運動によって、表示器30は、伸張部30a、30bの相対位置に応じて異なる大きさの張力を示すことになる。したがって、装置10のユーザーは、表示器30を観察して、縫合糸、故にそこに取り付けられた移植片に付加される張力の大きさを迅速に評価し得る。かかる構成は、外科的処置時に移植片に所望の量の張力を付加するための正確かつ効率的な技術を有効にする。
【0037】
図示した実施形態では、表示器30は、セグメント22、24の一方にマークと、セグメント22、24の他方に、そこを介してマークを観察できる窓35を含む。窓内のマークの位置は、付加されている張力を示す。
図2に示すように、第1のセグメント22はマーク33を含み、第2のセグメント24は、そこを介してマーク33を可視化し得る窓35を含む。マーク33及び窓35は、第2及び第1のセグメント24、22の第2及び第1の伸張部30b、30aにそれぞれ含まれるため、マーク33及び窓35は、弯曲部26の弯曲に反応して互いに対して移動するように構成される。図示したように、マーク33は、第1のセグメント22上に印刷された直線を含み、窓35は、第2のセグメント24に形成された一対の対向するスリットを含む。ノッチ37は、ノッチ37の対応する端部が窓35の対向するスリット上で互いに対向するように、窓35を横切って形成される。マーク33及びノッチ37は、枠20に取り付けられた縫合糸に付加されている既定の力に反応して、互いに整列するように構成され、既定の力は、セグメント22、24を互いから離れる方向に付勢する付勢力よりも大きいものとなる。したがって、セグメント22、24が、既定の力に反応して既定の距離を移動した場合、窓35から見えるマーク33は、縫合糸(及びそこに取り付けられた移植片)が既定の力にあることを示すように、ノッチ37に整列されることになる。当業者は、表示器30が他の構成を有し得ることを認識するであろう。例えば、表示器30のマークは、セグメント22、24の一方などに形成され、他方のセグメントの窓に整列するように構成された、小点、線状溝、数字などを含み得る。別の例では、表示器30は、第1のセグメント22上のマークに整列するように構成された、第2のセグメント24上のマークを含み得る。更に別の例では、表示器30は、枠20の運動に反応して移動するダイアルを含み得る。
【0038】
図示した実施形態の場合、表示器30は、単一の既定の張力を示すように構成され得る。換言すれば、マーク33及びノッチ37の整列は、既定の張力が付加されていることを示す。ないしは、マーク33及びノッチ37が整列されていない場合、付加されている張力が既定の張力未満である又はそれを超えていることが明らかになる。
【0039】
他の実施形態では、表示器30は、複数の既定の張力のいずれか1つを示すように構成され得る。したがって、装置10は、異なる張力を示すように構成され得るため、多様な用途を有し得、異なる張力はそれぞれ異なる外科医によって好まれ得、かつ/又は異なる患者及び/若しくは異なるタイプの外科的処置に適切であり得る。例えば、それぞれがマークを含むセグメントに沿った異なる軸位置、例えば、マークを含む伸張部に沿った異なる軸位置にある、複数のマークが使用され得る。マークの1つが他方のセグメント上の窓に整列されたときに、縫合糸(及びそこに取り付けられた移植片)が、そこに付加されたそのマークの既定の張力を有することが認識されるように、それぞれのマークは異なる既定の張力に対応し得る。別の例では、単一の窓の代わりに、それぞれが、窓を含むセグメントに沿った異なる位置、例えば、窓を含む伸張部に沿った異なる軸位置にある、複数の窓が使用され得る。窓の1つが他方のセグメント上のマークに整列されたときに、縫合糸(及びそこに取り付けられた移植片)が、そこに適用されたその窓の既定の張力を有することが認識されるように、それぞれの窓は異なる既定の張力に対応し得る。
【0040】
表示器30によって示される既定の張力(複数の場合あり)は、多様な張力レベルのいずれかであってよい。例示の実施形態では、既定の張力(複数の場合あり)は、それぞれ、約10~30ポンドの範囲内、例えば、約12ポンド、約15ポンドなどであってよい。当業者は、表示器が、張力の正確な大きさを判別されるようにする必要がないことを認識するであろう。むしろ、表示器の目的は、付加される張力のおおよその表示を提供することである。
【0041】
本明細書に記載するように、表示器30は、上部弯曲部26に関連づけられた上部表示器30と、下部弯曲部30に関連づけられた下部表示器30と、の2つの表示器を含む。2つの表示器のいずれかは常に「上向き」になるため、把持部12がユーザーの左手で保持されているか、右手で保持されているかに関係なく、かつ/又は表示器の少なくとも1つが表示可能なはずであるため、ユーザーが装置を保持している配向角度に関係なく、上部及び下部の表示器を使用することで表示器30の可視化が容易になる。図示の実施形態では、上部及び下部の表示器は同一であり、製造業者及び/又はユーザーが表示器の機能性を理解することを容易にする。しかしながら、当業者は、2つ以上の表示器が含まれる場合、表示器のいずれか1つが他の表示器のいずれかと異なる場合があることを理解するであろう。例えば、上部表示器は、第1の既定の張力を示すように設定されてよく、下部表示器は、第2の異なる既定の張力を示すように設定されてよい。別の例では、1つの表示器は第1の色を使用してよく、別の表示器は、特定の照明条件下で第1の色より(that)十分なコントラストを有し得る第2の色を使用してよい。
【0042】
図示した実施形態では、表示器30は、装置10の外側で表示可能であるが、装置の内側では表示不可能である。例えば、
図1に示すように、上部表示器30は表示可能であるが、図中では装置の下部外面が見えないため、下部表示器30は表示不可能である。他の実施形態では、表示器30は、装置10の内側及び外側の両方で表示可能であり得、例えば、4つの表示器30(上部外側、上部内側、下部外側、下部内側)が存在し得る。装置の内側及び外側の両方に表示器が存在することにより、開口部14を介した内側表示器の可視化が可能になり、開口部14を介して表示器が見えるようにできる。
【0043】
縫合糸保持機構28は、多様なサイズ、形状、及び構成を有することができる。概して、それぞれの縫合糸保持機構は、縫合糸を枠20に取り付けるために、そこに取り外し可能に及び置き換え可能に取り付けられた縫合糸を有するように構成され得る。それぞれの縫合糸保持機構28は、任意の数の縫合糸、例えば1本、2本、3本などを取り付けるように構成され得る。第1及び第2のセグメント22、24はそれぞれ、等しい数の縫合糸保持機構28を含み得、バランスの取れた張力を、縫合糸を介して枠20に付加することを可能にし得る。上部弯曲部26に最も近い枠22、24上の上部2つの縫合糸保持機構28がミラーリング位置にあり、下部弯曲部26に最も近い枠22、24上の下部2つの縫合糸維持機構28がミラーリング位置にある、図示した実施形態のように、縫合糸保持機構28は、互いに関してミラー像関係にある第1及び第2のセグメント22、24に位置付けられ得る。このように、対応する縫合糸保持機構28の対が、対向する第1及び第2のセグメント22、24上で互いに対向して位置付けられ得るように、縫合糸保持機構28は、枠20上に配置され得る。
【0044】
縫合糸保持機構28は、周りに巻きつけられた及び/又は結びつけられた縫合糸を有するように構成された糸巻きの形状で表示されているが、縫合糸保持機構は、フック、クリップ、バネ仕掛けのピンなど、他の様々な構成を有し得る。図示した実施形態の縫合糸保持機構28は、そこに連結された任意の縫合糸を能動的にロックするために移動不可能である点で受動的である。代わりに、縫合糸保持機構28は、その周囲に巻きつけられた又は結びつけられた縫合糸を保持する。他の実施形態では、縫合糸保持機構28は、そこに取り付けられた縫合糸をロック及びロック解除するために移動可能である点で能動的であってよい。
【0045】
図示した実施形態では、把持部12及び枠20は、例えば、溶接、装着などによって、取り外し不能に互いに取り付けられている。他の実施形態では、枠は、例えば、スナップ嵌め又は把持部への他の結合によって、取り外し可能に把持部に取り付けられるように構成され得る。かかる構成は、枠を把持部から取り外して、使用後に処分することを可能にし、一方、把持部は、新規の枠がそこに取り付けられた状態で(適切な洗浄後などに)再使用可能になる。
【0046】
金属、プラスチック、又はそれらの組み合わせを含む様々な材料を使用して、把持部12及び枠20を形成することができる。把持部12は金属などのある材料から製造され得、枠20はプラスチックなどの別の材料から製造され得る。例示の金属としては、ステンレス鋼及びニチノール、アルミニウム、並びに例えば炭素繊維複合体を含む複合体が挙げられ、例示のプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート、並びにアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ナイロンが挙げられる。
【0047】
上述のように、移植片を伸張するための外科用装置は、ユーザーが把持部を手で保持するか、又はユーザーが制御するロボット式外科用システムに把持部を連結させるかのいずれかによって、ユーザーに保持されるように構成され得る。本明細書に開示する外科用装置のいずれかと併用可能である、ロボット式外科用システムの例示の実施形態は、それらの全体が参照により本明細書に援用されている、2012年6月21日に出願された「Surgical System and Methods for Mimicked Motion」と題する米国特許出願公開第2012/0158013号、及び2015年8月17日に出願された「Gathering and Analyzing Data for Robotic Surgical Systems」と題する米国特許出願第14/827,601号に、より詳細に記載されている。
【0048】
上述のように、移植片を伸張するための外科用装置は、多様な外科的処置のいずれかで使用され得る。例示の処置としては、前十字靭帯(ACL)の修復において及び回旋腱板の修復においてなど、軟組織が骨に固定される軟組織修復処置が挙げられる。本明細書に開示する移植片伸張装置が使用され得る、移植片伸張を伴う外科的処置の例示の実施形態は、それらの全体が参照により本明細書に援用されている、2013年5月7日に交付された「Flexible Tibial Sheath」と題する米国特許第8,435,293号、2012年7月24日に交付された「Femoral Fixation」と題する米国特許第8,226,714号、及び2003年4月29日に交付された「Graft Ligament Anchor And Method For Attaching A Graft Ligament To A Bone」と題する米国特許第6,554,862号に記載されている。
【0049】
図5は、
図1の移植片伸張装置10を外科的処置時に使用する一実施形態を示す。
図5は、
図1の装置10を使用した処置を描写しているが、その処置は、移植片を伸張するための、本明細書に記載の異なる外科用装置を使用して実施され得ることが理解されよう。
【0050】
骨100に軟組織を取り付けるため、患者の骨内に穴、骨孔、又は骨トンネルが形成されることができる。当業者に理解されるように、ドリル、錐、せん孔装置などを用いることによって骨孔は、予備形成されることができる。代替的に、骨孔は、例えば自己錐突き性若しくは自己タッピング性のドライバー及び/又は自己錐突き性又は自己タッピング性のアンカーなどを用いることにより、縫合糸アンカーの骨内への前進と同時に、及びアンカーの骨との係合と同時に形成されることができる。
【0051】
図5は、骨孔が骨100内に形成される前又は後にアンカー102に連結される、4本の縫合糸104を示す。縫合糸104は、縫合糸104がアンカー102に連結される前に、軟組織(例えば、移植片ストランド)106に連結される。複数の移植片ストランド106のうちの1つが、縫合糸104のそれぞれに連結され、それにより、4本の移植片ストランド106が縫合糸104を介して装置10に連結され、縫合糸104は、軟組織106がそこに取り付けられる前又は後のいずれかに縫合糸保持機構28に取り付けられる(これらのうち2本は、
図5中では不明瞭である)。
【0052】
ドライバーツール108を装置10の開口部14を通して前進させ、アンカー102(縫合糸104が連結されている)を骨100に打ち込む。図を分かりやすくするため、ドライバーツール108の遠位端は
図5に示されていない。ただし、アンカー102を骨100に打ち込む前に、アンカー102に連結された縫合糸104及び移植片ストランド106は、アンカー102及び骨100から離れる方向に縫合糸104を引っ張り、故にそこに取り付けられた移植片ストランド106を引っ張ることにより、移植片ストランド106が骨に対して最適な位置になるように伸張される。アンカー102が骨100に打ち込まれているとき、張力は、装置10により、表示器30に示される所望の張力を持続させることによって維持される。マレット(図示なし)又は他のツールは、ドライバーツール108を更に遠位に前進させて、アンカー102を骨100に打ち込むために使用される。ユーザーの手の一方で、装置10の把持部12と、開口部14内に位置付けられた器具108と、を保持しながら、ユーザーのもう一方の手でマレット又は他のツールを操作することができる。あるいは、一人のユーザーが装置10を保持することができ、別のユーザーがマレット又は他のツールを操作することができる。
【0053】
アンカー102が骨100に打ち込まれた状態では、縫合糸104及び軟組織106は、骨100に対する所定の位置に保持され、治療が容易になる。
【0054】
様々な実施形態では、縫合糸104はそれぞれ、単一のストランドであってよく、又はマルチストランドであってよく、折り畳まれていても広げられていてもよい。移植片ストランド106は、縫合糸104がアンカー102に連結される前又は後に、縫合糸104を移植片ストランド106に通過させることによって、縫合糸104に連結され得る。また、ドライバーツール108は、当業者に認識されるように、多様なドライバーツールのいずれかを含み得る。
【0055】
図6~22は、上述の実施形態のいずれかに組み込まれ得る枠及び把持部の様々な実施形態を示す。
図6~7は、把持部及び枠を含む外科用装置200の別の実施形態を示す。
図6は、手掌で快適に支えられるように構成された、外側に曲がった輪郭を有する把持部を示す。
図7は、外科用器具を通過させられるように構成された、把持部内の開口部を示す。この例示の実施形態の開口部は、細長い楕円形状を有する。
【0056】
図8~10は、把持部及び枠を含む外科用装置210の別の実施形態を示す。
図8及び9に示すように、枠の第1及び第2のセグメントのそれぞれの遠位端は、縫合糸保持機構として構成されたフックを画定する曲線状の輪郭を有する。
図9及び10に示すように、把持部は、患者の手の指で握られるように構成された、内側に曲がった輪郭を有する。
【0057】
図11は、把持部230の別の実施形態を示す。この図示した実施形態の把持部230は、囲まれた孔の形状ではない開口部を把持部の中に有する。代わりに上述のように、開口部は、外科用器具が開口部を通って摺動自在に前進することを可能にし、同時に器具を開口部の中又は外へ横に(例えば、開口部の長手方向軸に対して横に)移動させることによって、器具が開口部に挿入される及び開口部から取り外されることを可能にするように構成される。開口部は、その下端に器具の入口部/出口部を有する。
【0058】
図12は、把持部及び枠を含む外科用装置240の別の実施形態を示す。この図示した実施形態の把持部は、把持部の中に形成されている開口部が囲まれた孔の形状ではなく、外科用器具が開口部を通って摺動自在に前進することを可能にし、同時に器具を開口部の中又は外へ横に移動させることによって、器具が開口部に挿入される及び開口部から取り外されることを可能にするように構成されている点で、
図11の把持部230に類似している。開口部は、開口部の長さに沿って実質的に中点であるその中間部分に、器具の入口部/出口部を有する。
【0059】
図13~14は、把持部及び枠を含む外科用装置250の別の実施形態を示す。枠は、開放された底側を有し、例えば、上部にのみセグメントを有する。把持部は、囲まれた孔の形状の開口部を有する。
【0060】
図15は、把持部及び枠を含む外科用装置260の別の実施形態を示す。枠は、
図13及び14の枠と同様に開放された底側を有する。把持部は、
図11及び12の開口部と同様に、囲まれた孔の形状ではない開口部が把持部の中に形成されている。この図示した実施形態では、開口部は、外科用器具が開口部を通って摺動自在に前進することを可能にし、同時に器具の端部を開口部の中又は外へ縦に(例えば、開口部の長手方向軸に沿って)移動させることによって、器具が開口部に挿入される及び開口部から取り外されることを可能にするように構成される。
【0061】
図16~17は、把持部及び枠を含む外科用装置270の別の実施形態を示す。把持部は、
図10の把持部と同様に曲線状の内表面を有する。
【0062】
図18~19は、把持部及び枠を含む外科用装置280の別の実施形態を示す。把持部は、間に開放空間がある2つのボールを含む。ボールのいずれか1つが、装置の操作用に手持ち式であってよく、装置の右手及び左手での使用を容易にし得る。あるいは、両方のボールが、装置の操作用に手持ち式であってもよい。
【0063】
図20は、把持部及び枠を含む外科用装置290の別の実施形態を示す。枠は、そのセグメントそれぞれの遠位端に縫合糸保持装置を含み、合計4つの縫合糸保持機構に対応する。縫合糸保持機構はそれぞれ、半径方向に外側を向いている。
【0064】
上述のように、移植片を伸張するための外科用装置は、多様な外科的処置のいずれかで使用され得る。
図21Aは、伸張前の骨孔内の4本の移植片ストランド、すなわち2本の半腱様筋ストランド(骨孔内の上部2つの円)と、2本の細長いストランド(骨孔内の下部2つの円)と、の一実施形態を示す。本明細書に記載されているように、移植片ストランドはそれぞれ伸張装置に取り付けられ得、移植片ストランドは装置を使用して伸張され得る。
図21Bは、伸張後の4本の移植片ストランドを示す。
【0065】
図21Cは、伸張前の骨孔内の2本の移植片ストランド、すなわち2本の半腱様筋ストランドの一実施形態を示す。本明細書に記載されているように、移植片ストランドはそれぞれ伸張装置に取り付けられ得、移植片ストランドは装置を使用して伸張され得る。
図21Dは、伸張後の2本の移植片ストランドを示す。
【0066】
様々な実施形態では、単一の移植片ストランド、例えばアキレス腱移植片は、複数の縫合糸に連結され得、次いで、上述の内容と同様に、移植片伸張装置に連結され、伸張される。
【0067】
当業者であれば、本開示の実行には、従来の低侵襲性手術器具、及び切開手術器具、並びにロボット支援手術における用途があることを認識するであろう。
【0068】
本明細書に開示される装置は、1回の使用後に廃棄されるように設計されてもよいし、又は複数回使用されるように設計されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、本装置は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整することができる。こうした再調整には、装置の分解工程、それに続く洗浄工程又は特定の部品の交換工程、及びその後の再組み立て工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解可能であり、装置の任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り除くことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換したら、装置を後の使用のために、再調整施設で、又は外科処置の直前に外科チームによって再組み立てすることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用できることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
【0069】
好ましくは、本明細書に記載する発明の構成要素は、使用前に処理されるであろう。最初に、新しい又は使用済みの器具を入手し、必要であれば洗浄する。次いで器具を滅菌することができる。1つの滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなど、閉鎖され封止された容器に入れられる。次に、容器及び器具は、γ線、X線、及び高エネルギー電子など、容器を透過することができる放射線照射野に入れられる。放射線は、器具上又は容器内の細菌を死滅させる。次に、滅菌された器具を滅菌容器に格納することができる。封止された容器は、医療設備において開封されるまで器具を滅菌状態に保つ。
【0070】
典型的に、装置は滅菌される。これは、ベータ線又はガンマ線放射、酸化エチレン、蒸気、及び液浴(例えば、低温浸漬)などの当業者には周知の様々な方法によって行うことができる。内部回路機構を含む装置の滅菌の例示の実施形態は、その全体が参照により本明細書に援用される、2008年2月8日に出願された「System And Method Of Sterilizing An Implantable Medical Device」と題する米国特許出願公開第2009/0202387号により詳細に記載されている。装置は、インプラントされる場合、完全に密封されることが好ましい。これは、当業者に既知の様々な方法によって行うことができる。
【0071】
当業者には、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び参照文献はそれらの全容を参照によって本明細書に明示的に援用するものである。
【0072】
〔実施の態様〕
(1) 外科用装置であって、
ユーザーに保持されるように構成された把持部であって、前記把持部が前記ユーザーに保持されている状態で、外科用器具が通過できるように構成された通路を前記把持部の中に含む、把持部と、
対向する第1及び第2のセグメントで形成された枠であって、前記第1及び第2のセグメントが弯曲部によって一方の端部で互いに及び前記把持部に結合され、対向する端部で可変角の分だけ離間している、枠と、
前記第1及び第2の枠セグメントのそれぞれに形成された少なくとも1つの縫合糸保持機構と、を含み、
前記第1及び第2の枠セグメントが、前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り付けられた縫合糸に付加される張力に反応して、互いに向かって移動して前記可変角を減少させるように構成されている、外科用装置。
(2) 前記縫合糸に付加される前記張力の表示を提供するように構成された表示器を更に含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記表示器が第1及び第2の表示器を含み、前記第1の表示器と前記第2の表示器との相対的な位置付けが、前記縫合糸に付加される前記張力の前記表示を提供する、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記第1の表示器が、前記第1及び第2のセグメントの一方にマークを含み、前記第2の表示器が前記第1及び第2のセグメントの他方に窓を含む、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記弯曲部がリビングヒンジを含む、実施態様1に記載の装置。
【0073】
(6) 前記通路が、少なくとも1つの囲まれた孔を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記通路が、前記把持部の側壁に少なくとも1つの切り欠きを含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 外科用システムであって、
第1の部分及び第2の部分を有する枠と、
外科用器具を通過させるように構成された開口部を有する把持部と、を含み、
前記第1の部分及び前記第2の部分のそれぞれが、前記把持部から遠位に延在し、それぞれが近位端及び遠位端を有し、前記第1の部分及び前記第2の部分の前記近位端が、複数のヒンジによって前記把持部に連結されており、前記第1の部分及び前記第2の部分の前記遠位端が互いに移動可能に離間しており、前記第1の部分及び前記第2の部分のそれぞれが、そこに連結された少なくとも1つの縫合糸保持機構を有しており、前記枠は、前記複数のヒンジが前記第1及び第2の部分の前記遠位端を互いから離れる方向に付勢する第1の位置と、前記第1及び第2の部分の前記遠位端が、前記付勢を克服するため、前記枠に付加される力に反応して互いに向かって移動している第2の位置との間で移動可能である、外科用システム。
(9) 前記枠に付加される前記力の表示を提供するように構成された表示器を更に含む、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記開口部を通過させた外科用器具を更に含み、
前記外科用器具が前記開口部を通って延びるとき、前記表示器が見える、実施態様9に記載のシステム。
【0074】
(11) 前記表示器が、第1及び第2の表示器を含み、前記第1の表示器及び前記第2の表示器の互いに対する位置が、前記枠に付加される前記力の前記表示を提供する、実施態様9に記載のシステム。
(12) 前記複数のヒンジのそれぞれがリビングヒンジを含む、実施態様8に記載のシステム。
(13) 複数の縫合糸を更に含み、前記縫合糸のそれぞれが前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されるように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(14) 前記複数の縫合糸が、前記少なくとも1つの縫合糸保持機構に取り外し可能に固定されている状態で、前記複数の縫合糸は、前記枠が前記第1の位置にあるときに第1の張力下にあり、前記枠が前記第2の位置にあるときに第2のより大きい張力下にあるように構成されている、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記枠は、前記第1の位置から前記第2の位置への前記枠の運動に反応して、前記複数の縫合糸が前記第2の張力を得ていることを示すように構成されている表示器を含む、実施態様14に記載のシステム。
【0075】
(16) 外科的方法であって、
移植片伸張装置の複数の縫合糸保持部材に複数の移植片ストランドを連結することであって、前記複数の移植片ストランドが、前記移植片伸張装置に連結されたときに第1の張力下にある、ことと、
前記伸張装置を介して前記移植片ストランドに張力を付加することであって、前記張力によって前記複数の移植片ストランドが、前記第1の張力下から第2の張力下に変更され、前記移植片伸張装置は、前記複数の移植片ストランドが前記第2の張力下にあることを示す表示器を含む、ことと、を含む、外科的方法。
(17) 前記張力を付加することにより、前記伸張装置の第1及び第2のセグメントが、前記第1及び第2のセグメントを一緒に連結する弯曲部で動的に弯曲される、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記表示器が、複数の既定の張力のいずれか1つを示すように構成され、前記第2の張力が、前記既定の張力のうちの1つである、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記移植片伸張装置の通路を通して外科用器具を前進させることを更に含む、実施態様16に記載の方法。