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▶ メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】医療用包帯
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/16 20060101AFI20230313BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61L15/16 100
A61F13/02 310H
A61F13/02 390
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017513548
(86)(22)【出願日】2015-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2015070648
(87)【国際公開番号】W WO2016038109
(87)【国際公開日】2016-03-17
【審査請求日】2018-09-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】14184431.6
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス フラク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ ハンバリ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ヨハンニソン
(72)【発明者】
【氏名】ベングト セーデシュトレーム
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】藤原 浩子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0141015(US,A1)
【文献】特表2008-509741(JP,A)
【文献】特表2009-518124(JP,A)
【文献】国際公開第2010/122665(WO,A1)
【文献】特表2007-517557(JP,A)
【文献】特表2017-528230(JP,A)
【文献】特開2010-281026(JP,A)
【文献】形成外科, 2012, Vol.55 増刊号, p.S268-S274
【文献】Adv Funct Mater., 2014 Feb, Vol.24 No.8, p.1047-1053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
A61K 9/00
A61K47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、接着層、及びコーティングを備える医療用包帯であって、
基材は、基材の内部に分布している第1の抗菌性化合物を含み、ポリマー発泡体である吸収性材料であり、
接着層は、前記基材の一表面と接着する基材対向面と、前記基材対向面とは反対の方向で前記医療用包帯を皮膚表面に接着させるための皮膚対向面とを有し、
前記コーティングは銀塩である第2の抗菌性化合物を含み、かつ、前記皮膚対向面の少なくとも一部に存在する、前記医療用包帯。
【請求項2】
前記接着層は、前記基材の前記一表面の少なくとも一部を覆っている、請求項に記載の医療用包帯。
【請求項3】
前記医療用包帯は、前記基材の前記一表面と前記接着層の間に挟まれた有孔フィルム層を更に備え、前記接着層は、前記有孔フィルム層の無孔部分に存在する、請求項に記載の医療用包帯。
【請求項4】
前記基材の前記一表面は、前記第1の抗菌性化合物を含むコーティングを更に含み、前記接着層は、前記第1の抗菌性化合物を含む前記コーティングの少なくとも一部を覆っている、請求項1又は3に記載の医療用包帯。
【請求項5】
前記医療用包帯は、蒸気透過性の透過層を更に備え、該蒸気透過性の透過層は、前記基材の接着層に面する前記一表面とは反対の表面を覆っている、請求項1~のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項6】
前記接着層はシリコーン系接着剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項7】
前記第1の抗菌性化合物、銀塩および金属銀などの銀化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)またはその任意の塩などのビグアニド塩、ポリヘキサメチルグアニド(PHMG)またはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩、ヨウ素、サリチル酸またはその任意の塩、アセチルサリチル酸またはその任意の塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩、ポビドンヨード(ベタジン)、ラクトフェリン、キシリトール、ヒトカチオン性抗菌タンパク質18(hCAP18又はLL37)ペプチドなどの抗菌ペプチド、ボルネオール、ビスマスサブガレート、抗真菌薬、ならびにゲンタマイシン、ストレプトマイシンなどの抗生物質からなる群から独立して選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項8】
前記第1の抗菌性化合物は前記医療用包帯の面積による第1の濃度で存在し、前記第2の抗菌性化合物は前記医療用包帯の面積による第2の濃度で存在し、ここで前記第1の濃度と前記第2の濃度は異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項9】
前記第1の抗菌性化合物の濃度は約5~3000μg/cm2であり、前記第2の抗菌性化合物の濃度は約1~2500μg/cm2である、請求項1~のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項10】
前記ポリマー発泡体は、親水性ポリウレタン発泡体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項11】
前記接着層は該接着層内に分布した第3の化合物を含み、該第3の化合物は、前記第1の抗菌性化合物および/または前記第2の抗菌性化合物と同一である、請求項1~10のいずれか1項に記載の医療用包帯。
【請求項12】
請求項1に記載の医療用包帯を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
材を設けること、ここで基材は、基材の内部に分布している第1の抗菌性化合物を含み、ポリマー発泡体である吸収性材料である
前記基材の一表面に面するように接着層を設けること;および、
前記接着層における、前記基材の前記一表面とは反対の方向に面している皮膚対向面に、銀塩である第2の抗菌性化合物を含むコーティングを設けること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用包帯(medical dressing)に関する。
【背景技術】
【0002】
傷害または疾患により生じる創傷はバンデージまたは創傷用包帯の使用により処置され、感染および創傷からの漏出を防止することにより治癒を促進することができる。多くの既知の創傷用包帯には感圧接着剤(PSA)としても知られる自己付着性接着剤が含まれるが、その目的は創傷および/または創傷周囲の皮膚に付着し、それにより、所望の位置に包帯を固定することである。様々な接着剤が皮膚に対し医療用製品を固定するために使用されており、最も一般的なもののいくつかに、とりわけ、用語アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤およびホットメルト接着剤が含まれる。
【0003】
創傷用包帯などの医療用デバイスが使用の特定の時間後に同一の位置に維持されることを確保するために、強い接着性を有する接着剤、例えば、アクリル系接着剤が使用されることがある。しかしながら、医療用デバイスを皮膚に対して直接的に取り付けようとする場合、アクリル系接着剤は、かかる医療用デバイスを皮膚から除去しようとするときに、皮膚の引き剥がしなどによる痛みおよび皮膚に対する損傷の危険性を増大する。
【0004】
アクリル系接着剤とは対照的に、シリコーン系接着剤は皮膚に対して非常に優しいことが当該技術分野で知られている。これは、シリコーン系接着剤が、典型的に、比較的に柔軟で、それゆえ、皮膚の形状にうまく追従することができ、接着剤と皮膚との間に大きな接触表面積をもたらすからである。このため、シリコーン系接着剤の各接触点での実接着力はアクリル系接着剤よりも低いが、シリコーン系接着剤で達成される大きい接触表面積により皮膚に対する全体としての高い接着性が付与され、一方で、同時に、皮膚に優しく、すなわち、シリコーン系接着剤を皮膚から除去するときに、各接触点での低い接着力のために非常に数少ない皮膚細胞しか除去されず、それにより、皮膚の引き剥がしの上記の問題は回避されうる。
【0005】
いくつかのタイプの創傷、例えば、重度の火傷および慢性創傷では、抗菌剤を含む創傷用包帯を使用し、それにより、創傷の感染の危険性を無くすまたは低減することが特に必要である。そのために、様々なタイプの抗菌性包帯が開発されてきている。創傷用包帯における使用のために探求されてきた抗菌剤の例としては、従来の消毒薬、抗生物質、抗菌性ペプチド、または、抗菌特性を有する金属剤が挙げられる。例えば、銀塩などの銀含有化合物は抗菌性創傷用包帯において一般に使用されている。
【0006】
WO2008/057155は医療用デバイスを皮膚などの生物学的基材に一時的に付着させるためのシリコーンゲル形成性組成物を開示している。前記開示は活性剤を含むシリコーンゲル組成物を教示しており、該活性剤は、例えば、抗生物質、消毒薬、抗真菌剤、抗炎症剤、ホルモン、抗癌剤ヒスタミンブロッカー、ベータブロッカー、ビタミン、鎮静剤、鎮痛剤、タンパク質分解酵素およびペプチドであり、それらは組成物中で結合されていてよい。しかしながら、疎水性接着性マトリックス、すなわち、シリコーンゲル形成性組成物からの活性剤の放出が、典型的に、活性剤が組成物中で結合されているときに制限される。
【0007】
WO2011/129759は抗菌性シリコーンゲル接着剤(およびかかるシリコーンゲル接着剤の層を含む創傷用包帯)を開示しており、それは少なくとも1種の銀塩および少なくとも1種の親水性成分を含み、ここで、該親水性成分は接着層中の湿分の吸収性を促進し、それにより、接着性マトリックスからの銀の放出性を改善する。
【0008】
しかしながら、改善された接着性の医療用包帯を提供することが当該技術分野でなおも必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の上記欠点及びその他の欠点に鑑みて、本発明の一般的な目的は、接着性のある医療用包帯、特に、包帯内に抗菌性化合物等の化合物を維持しながら即時放出および持続放出を達成することができる接着性のある医療用包帯を提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、上記目的その他の目的は、第1の化合物を含む基材を備える医療用包帯(1;20)であって、前記基材は第1の表面を有し、前記医療用包帯は、前記医療用包帯を皮膚表面に接着させるための皮膚対向面を有する接着層を更に備え、前記皮膚対向面の少なくとも一部は第2の化合物を含むコーティングを含む、前記医療用包帯により達成される。
【0011】
本発明は、第1の化合物を含む内部基材と、第2の化合物を含むコーティングを含む皮膚対向面を有する接着層とを組み合わせたことにより、接着性のある医療用包帯からの活性化合物の放出の改善および/または生物学的活性(例えば、抗菌性および/または創傷治癒活性)の改善の達成を実現したことに基づく。前記コーティングは、使用の際、創傷および/または周囲の皮膚表面と直接接触する意図である。これにより、接着層におけるコーティング(coating on the adhesive layer)が第2の化合物の即時初期放出をもたらしつつ、内部基材が第1の化合物の遅延放出をもたらし、確実に、その放出が所望の期間維持されるようになる、および/またはそこからの生物学的活性(例えば、抗菌性)が内部基材内で維持されるようになる。
【0012】
本発明の実施態様では、前記基材の第1の表面は前記接着層に面し、前記接着層の前記皮膚対向面は、前記基材の第1の表面から反対の方向に面している(face away from the first surface)。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層はシリコーン系接着剤を含んでもよい。本発明者らは、接着層の接着剤の性質に実質的な影響を与えることなく化合物をコーティング内に含ませることを可能にしつつその化合物がそこから容易に放出可能になるので、シリコーン系接着剤が特に適切であることを実現した。
【0014】
用語「コーティング」は、本願の関係で、表面上の少なくとも1層の連続層、または、表面上の複数のドットもしくは複数の層、または、不連続な被覆、例えば、表面のある領域上に分布している複数の粒子と理解されるべきである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、前記接着層の皮膚対向面の少なくとも一部における前記第2の化合物を含むコーティングは、該皮膚対向面の少なくとも一部に分布した第2の化合物の複数の粒子を含んでもよく、ここで各粒子の第1の部分は該接着層の内側に入りこみ、該粒子の第2の部分は該接着層から外側へ突出していてもよい。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、前記接着層にある前記第2の化合物を含むコーティングは、例えば、第2の化合物およびフィルム形成化合物又はキャリア化合物(例えば、ポリマー化合物)の組成を含むフィルムコーティングであってもよい。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、基材は吸収性材料を含んでもよい。例えば、吸収性材料は、親水性ポリウレタン発泡体などのポリマー発泡体、不織材料、繊維状親水性ポリマー材料といった繊維状材料、ゲル形成繊維、ハイドロゲル、ハイドロコロイドを含有するマトリックス、織り繊維および編み繊維、またはそれらの組み合わせであってもよい。それにより、医療用包帯は、創傷からの滲出物を吸収および保持することができる。
【0018】
本明細書中に使用されるときに、用語「親水性」は材料の透水性を指し、または、分子の水吸引性を指す。細孔を有する材料(例えば、連続気泡発泡体)または貫通孔を有する材料に関し、この材料が水を吸収するならばかかる材料は「親水性」である。孔または細孔を有しない材料に関し、この材料の内部またはそれを通過するような水流に対して抵抗性がないならばかかる材料は「親水性」と考えられる。例えば、材料の親水性は、少なくとも60分間、少なくとも90分間または少なくとも24時間、1インチ高さまでの水カラムが材料に対して掛ける圧力を用いて試験されうる。「抵抗性」とは、このような試験において内部またはそれを通過するような水流が試験の検出限界未満であることを意味する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、基材は、親水性ポリウレタン発泡体材料の層を含んでもよい。例えば、親水性発泡体は、親水性ポリウレタン発泡体などの連続気泡の多孔性発泡体であってもよい。発泡体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)をベースとするプレポリマーを含む組成物から製造した親水性ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層は、基材の第1の表面の少なくとも一部におけるコーティング(coating on at least a portion of)であってもよく、これにより、皮膚表面、例えば、創傷部位への包帯の適用および所望の位置への医療用包帯の基材の固定を容易にして、例えば、基材が創傷に接着して覆うようにしてもよい。第2の化合物、例えば抗菌性化合物または創傷治癒用化合物を含むコーティングを、接着層の皮膚対向面に設けることにより、第2の化合物の放出が所望の適用箇所で制御および制限できる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医療用包帯は、前記基材の第1の表面と前記接着層の間に挟まれた有孔フィルム層を更に備え、前記接着層は、前記有孔フィルム層の無孔部分におけるコーティングであってもよい。例えば、有孔フィルム層の上面が基材の第1の表面に取り付けられ、接着層は有孔フィルムの一部の底面を覆い、有孔フィルム層の上面はその底面の反対側にある、又は、反対の方向に向いていてもよい。
【0022】
従って、基材の第1の表面を、有孔フィルム層の開口部を通じて露出させ、これにより創傷からの滲出液や創傷流体を吸収しやすくする、および/または第1の化合物が基材から開口部を通って創傷へ放出しやすくしてもよい。
【0023】
用語「取り付けられた(attached)」は、本明細書中に使用されるときに、1つの物理要素が別の物理要素に接触している、例えば、第1の層が隣接している第2の層と接触していることと理解されるべきである。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、用語「取り付けられた(attached)」は、1つの層が別の層に対し、これらの接着された層の間で接着剤により接着またはラミネートされること、あるいは、2つの層がその間の直接的な接着手段なしに「取り付けられる」こと、例えば、1つの層が別の層の上に配置され、ここで、これらの層が「取り付けられた」層を囲い込む追加の周囲層により保持されることを意味する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は、基材内に分布していても組み込まれていてもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は、基材内の固体分散体であってもよい。第1の化合物は、基材内で実質的に均一な固体分散体であってもよい。例えば、第1の化合物は、基材内の分子分散体または部分的な分子分散体であってもよい。「分子分散体」とは化合物の分子が分離していることを指し、「部分的な分子分散体」とは分子が複数の単位に分離していること、ならびに分子が複数のクラスター、例えば、結晶や粒子、に分離していることであることを理解されたい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、基材に第1の化合物を含浸させてもよい。例えば、基材は、連続気泡構造を有する発泡体であってもよく、ここで、第1の化合物は発泡体の気泡壁におけるコーティングとして存在してもよい。例えば、第1の化合物を含む溶液または分散液で基材を浸してもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、基材の第1の表面に、第1の化合物を含むコーティングを含んでもよい。コーティングが多孔性材料(例えば、発泡体)に存在する場合、コーティングは、該材料の表面の大部分において少なくともある程度入りこんでもよく、例えば、コーティングは発泡体構造における開口部または細孔内の壁の少なくとも一部を被覆してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は、基材の第1の表面におけるコーティングとしてのみ存在してもよく、あるいは、第1の化合物は、基材の第1の表面におけるコーティングとして存在するとともに基材内に分布してもよく、これにより、第1の化合物の濃度勾配が達成できるようにし、第1の化合物が基材の第1の表面上で高濃度であることより放出が促進され、基材のバルク内では低濃度のため第1の化合物が創傷へゆっくりと放出され、および/または基材内部の活性、例えば、抗菌性が発揮できるようにしてもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、基材は、同じまたは異なる材料の複数の層を備えてもよい。例えば、基材は、吸収性発泡体材料の創傷対向層、中間の繊維状ゲル形成層、および上面の不織層を備えてもよく、ここで、中間層は創傷対向層と上面層の間に挟まれてもよい。これにより、医療用包帯の液体吸収性は、所望に応じて調整できる。更に、第1の化合物は、所望の放出および/または基材内部の活性を達成するように基材の選択した層の全部または一部に組み込まれてもよい。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物および/または前記第2の化合物は抗菌性化合物であってもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医療用包帯は抗菌性包帯である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物および前記第2の化合物は、銀塩および金属銀などの銀化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)またはその任意の塩などのビグアニド塩、ポリヘキサメチルグアニド(PHMG)またはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩、ヨウ素、サリチル酸またはその任意の塩、アセチルサリチル酸またはその任意の塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩、ポビドンヨード(ベタジン)、ラクトフェリン、キシリトール、ヒトカチオン性抗菌タンパク質18(hCAP18又はLL37)ペプチドなどの抗菌ペプチド、ボルネオール、ビスマスサブガレート、抗真菌薬、ならびにゲンタマイシン、ストレプトマイシンなどの抗生物質からなる群から独立して選択されてもよい。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物および前記第2の化合物は、銀塩および金属銀などの銀化合物、PHMBまたはその任意の塩などのビグアニド塩、またはPHMGまたはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩、およびヨウ素からなる群から独立して選択されてもよい。
【0033】
例えば、前記第1の化合物および/または前記第2の化合物は、硫酸銀(Ag2SO4)、亜硫酸銀(Ag2SO3)、硝酸銀(AgNO3)、炭酸銀(AgCO3)、リン酸銀(Ag3PO4)、塩化銀(AgCl)、リン酸水素ジルコニウム水素銀(Milliken ChemicalのAlphaSan(登録商標)、Spartanburg、USA)、またはPHMB塩酸塩または他の任意の塩等のPHMB、またはクロルヘキシジンまたはその塩等の銀塩であってもよい。
【0034】
例えば、前記第1の化合物および/または前記第2の化合物は、銀化合物、例えば銀塩および金属銀、であってもよい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物は前記医療用包帯の面積による第1の濃度(first concentration by area)で存在し、前記第2の化合物は前記医療用包帯の面積による第2の濃度(second concentration by area)で存在し、ここで前記第1の濃度と前記第2の濃度は異なってもよい。例えば、第1の化合物の濃度は約5~3000μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約1~2500μg/cm2であってもよい。第1の化合物と第2の化合物の濃度を変えることにより、包帯の放出プロファイルは、異なる用途に合わせて調整することができる。すなわち異なる種類の創傷を治療する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物は前記医療用包帯の面積による第1の濃度で存在し、前記第2の化合物は前記医療用包帯の面積による第2の濃度で存在し、ここで前記第1の濃度は前記第2の濃度より高くてもよい。
【0037】
本明細書中に使用されるときに、用語「約」または「およそ」は、例えば、特段の断りがない限りまたは文脈から明らかでない限り、ある数の上下(プラスまたはマイナス)で5%、10%または20%の範囲内に入る数値を一般に含む数または百分率を指す(このような数値が物理的に不可能である場合、例えば、可能な数値の100%を超える、または、可能な数値の0%未満に当たる場合を除く)。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、前記接着層は該接着層内に組み込まれた第3の化合物を含み、前記第3の化合物は、前記第1の化合物および/または前記第2の化合物と同一であってもよい。例えば、第3の化合物は前記接着層内の固体分散体であってもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医療用包帯は、基材の第2の表面に取り付けられた蒸気透過性の透過層を備え、該第2の表面が前記基材の第1の表面に対し反対側にあってもよい。透過層は、典型的に水不透過性であってもよい。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、上記目的その他の目的は、第1の化合物を含む基材を設けること;接着層を設けること;および、前記接着層に第2の化合物を含むコーティングを設けること;を含む、医療用包帯を製造する方法により達成される。本発明のいくつかの実施形態では、接着層はシリコーン系接着剤を含んでもよい。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、上述の方法により製造された医療用包帯により、上記目的その他の目的が達成される。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、本発明にかかる医療用包帯を創傷の治療および/または予防に使用することにより、上記目的その他の目的が達成される。例えば、本発明にかかる医療用包帯は、熱傷、瘢痕、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染の治療、および/または創傷の治癒に使用できる。
【0043】
本発明の第5の態様によれば、本発明にかかる医療用包帯を創傷および/または周囲の皮膚表面に設ける工程を含む、創傷を治療する方法により、上記目的その他の目的が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明のこれらおよび他の態様を、ここで、より詳細に示し、本発明の例示の実施形態を示す添付の図面を参照する。
【0045】
図1a図1aは本発明に係る医療用包帯の実施形態の模式斜視図である。
【0046】
図1b図1b図1a中の線A-Aに沿った断面図である。
【0047】
図1c図1c図1bでの切り出し部Yの拡大断面図である。
【0048】
図2a図2aは本発明に係る医療用包帯の実施形態の模式斜視図である。
【0049】
図2b図2b図2a中の線A’-A’に沿った断面図である。
【0050】
図2c図2c図2bでの切り出し部Y’の拡大断面図である。
【0051】
図3図3a-bは本発明に係る医療用包帯の実施形態を用いた抗菌活性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の例示的な実施形態を添付の模式図を参照しながら説明する。
【0053】
図1a-cは本発明に係る医療用包帯1の例示の実施形態を示す。医療用包帯1は第1の化合物を含む基材2を含み、医療用包帯1は医療用包帯1を(医療用包帯の使用時に)皮膚表面に接着させるための皮膚対向面6を有する接着層3を更に含み、そして皮膚対向面6の少なくとも一部は第2の化合物を含むコーティング9を含む。図1a-cに示す実施形態において、接着層3は基材2の第1の表面4におけるコーティングであり、接着層3の皮膚対向面6は基材2の第1の表面4から反対の方向に面している。図1a-cの医療用包帯は蒸気透過性の透過層10を更に含み、蒸気透過性の透過層10は基材2の第2の表面7に重なり、第2の表面7は基材2の第1の表面4に対して反対側にある。蒸気透過性の透過層10は、例えば、連続または不連続結合層(例えば、アクリル系接着剤)によりまたはヒートラミネーションにより第2の表面7に取り付けられてよい。
【0054】
図2a-cは本発明に係る医療用包帯20の例示の実施形態を示す。医療用包帯20は第1の化合物を含む基材2を含み、医療用包帯20は基材2の第1の表面4と接着層3との間の挟まれた有孔フィルム層11を更に含み、該接着層3は有孔フィルム層11の無孔部分12におけるコーティングである。図2bに示すように、有孔フィルム層11の上面17は基材2の第1の表面4に取り付けられてよく、接着層3は有孔フィルム層11の無孔部分12の底面18上にコーティングされており、上面17および底面18は互いに対して反対側にある。したがって、基材2の第1の表面4は有孔フィルム層11の開口部14を通して露出されることができ、それにより、創傷からの滲出物または創傷流体の吸収を促進し、および/または、基材2から創傷への開口部14を通した第1の化合物の放出を促進することができる。
【0055】
さらに、接着層3の皮膚対面層6の少なくとも一部は第2の化合物を含むコーティング9を含み、該コーティング9は医療用包帯の使用時に創傷および/または周囲皮膚表面に直接的に接触する意図である。それにより、第2の化合物の皮膚表面への急速な放出が(包帯の使用時に)促進され、一方、同時に、接着層3の接着特性を維持している。
【0056】
医療用包帯20は、図2a-cに例示されるように、蒸気透過性の透過層10を更に備えてもよく、該透過層10は基材2の第2の表面7を覆う。透過性の透過層10はプラスチックフィルムであってよく、例えば、ポリウレタン、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むまたはからなる。蒸気透過性の透過層10は厚さが10~100 μm、例えば、10~80 μm、例えば10~50 μmである、ポリウレタンフィルムであってもよい。
【0057】
図2a-bに示される実施形態において、有孔層11および蒸気透過性の透過層10の両方は基材2の周縁の外側に延在しており、そして基材の外側に延在している有孔層11および蒸気透過性の透過層10のそれぞれの部分は互いに取り付けられており、それにより、基材2を包囲している境界部分15を形成している。有孔層11は基材2の第1の表面4に取り付けられてよく、および/または、連続または不連続結合層(図2a-bに図示せず)により蒸気透過性の透過層10に取り付けられてよい。
【0058】
例えば、本発明の1つの実施形態において、基材2の周縁の外側にある有孔層11は、蒸気透過性の透過層10に (例えば、アクリル系接着剤を使用して)取り付けられ、一方、基材2の第1の表面4に対面する有孔層11は(例えば、グルーまたは熱により)第1の表面4にラミネートされず、このため、基材2は有孔層11に対して移動可能であり、そのことは、例えば、基材が使用時に膨張する場合に望ましい。同様に、本発明の実施形態において、基材2の第2の表面7は蒸気透過性の透過層10に対し移動可能に取り付けてもよい、すなわち、層はグルーまたは熱によりラミネートされず、むしろ、周囲のラミネートされた境界部分15により一緒に保持されてもよい。
【0059】
さらに、有孔層11は任意の所望のサイズおよび形状の複数の開口部14(または貫通孔)を含んでもよい。形状およびサイズは基材2からの第1の化合物の所望の吸収および/または放出を達成するように調節されうる。例えば、開口部14は、とりわけ、円形、直線スリット、矩形または正方形形状であることができる。本発明のいくつかの実施形態では、有孔層11の開口部14のサイズおよび/または形状は異なる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、基材2の周縁の外側に延在している有孔層11の部分は、包帯20の境界部分15において、より少数の開口部またはより小さい開口部(図示せず)を含んでもよく、または、開口部を有しない連続フィルム(図示せず)であってもよく、それにより、境界部分15において有孔層11の無孔部分12の表面積を増加させ、したがって、無孔部分12での接着層3の合計面積が増加することにより、医療用包帯20の固定性能力を増加させてもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、有孔層は基材の第1の表面の面積に実質的に対応する開口部を含んでもよく、該有孔層は、基材の第1の表面が有孔層における開口部と一致しており、それにより、基材の第1の表面の実質的に全体が医療用包帯の使用時に創傷に接触するようにしてもよい(実施形態は図示せず)。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、有孔層11は、厚さが10~150μmの範囲内のプラスチックフィルムであってもよい。例えば、有孔フィルム11は、ポリウレタン、ポリプロピレン、またはポリエチレン製であってもよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、有孔層11は、厚さが10~150μmの範囲内、例えば、10~100μm または10~80μm、例えば、10~50μm、例えば25μmのポリウレタンフィルムであってもよい。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層は基材の周辺部に隣接して配置してもよく、接着層が基材の周辺部から反対の方向に延在するようにしてもよい。例えば、医療用包帯は、接着層が基材の周辺部を取り囲む島状の包帯(island dressing)であってもよい。
【0064】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、医療用包帯は、基材の第2の表面に重なり更に基材の周辺部の外部に延在する蒸気透過性の透過層を備え、蒸気透過性の透過層の境界部を形成してもよい。本発明のこれらの実施形態では、接着層は、皮膚に面する蒸気透過性の透過層の境界部におけるコーティングであってもよい(この実施形態は図示せず)。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、基材2は典型的に吸収性材料を含んでもよい。例えば、かかる吸収性材料は、親水性ポリウレタン発泡体などのポリマー発泡体、不織材料、繊維状親水性ポリマー材料といった繊維状材料、ゲル形成繊維、ハイドロゲル、ハイドロコロイドを含有するマトリックス、織り繊維および編み繊維からなる群から選択されてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、基材2は、親水性ポリウレタン発泡体材料の層を備えてもよい。例えば、親水性発泡体は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)をベースとするプレポリマーを含む組成物から製造した親水性ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0067】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、基材2は親水性ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は基材2内に分布させしてもよい。例えば、第1の化合物は基材2内に実質的に均一に、つまり、基材2内で均質な材料組成となるように分布させしてもよい。例えば、第1の化合物は、基材2内の実質的に均一な固体分散体、例えば分子分散体または部分的な分子分散体であってもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は基材2の構造または内側表面(例えば、細孔) に化学的に結合されてもよい。例えば、第1の化合物がイオン塩である場合、第1の化合物は、基材2の帯電した内側表面に結合されてもよい。例えば、基材は、帯電した側基を有する気泡ロース繊維、例えばカルボキシメチル気泡ロース(CMC)を含んでもよく、ここで、第1の化合物はイオン結合によって気泡ロース繊維に結合されてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物を基板の製造に含めることによって、第1の化合物を基板に組み込んでもよい。例えば、基材は発泡体であってもよく、ここで、発泡工程前のプレポリマーに第1の化合物を添加する(例えばEP1964580に開示された方法に従う)ことにより、第1の化合物が基材の構造内に組み込まれる、例えば、発泡体基材の気泡壁内部に化学的に結合されてもよい。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は基材2内に含浸されてもよく、例えば、第1の化合物は基材2の内側表面にコーティングされてもよい。例えば、基材が発泡体基材である場合、第1の化合物は発泡体の内部細孔表面にコーティングされてもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、基材2の第1の表面4は、第1の化合物を含むコーティングを含んでもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、基材2の第1の表面4は、第1の化合物を含むコーティングを含んでもよく、ここで、前記コーティングはキャリアまたはフィルム形成化合物を含んでもよい。例えば、キャリアまたはフィルム形成化合物は、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチル気泡ロース(CMC)、ヒドロキシエチル気泡ロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはヒドロキシプロピル気泡ロース(HPC)といったポリマー材料であってもよい。キャリアまたはフィルム形成化合物は、第1の化合物の放出を更に調整および制御するために用いてもよい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は、基材2のコア内で実質的に均質な固体分散体であってもよく、基板2の第1の表面4は、第1の化合物を含むコーティングを含んでもよい。したがって、基材内の第1の化合物の濃度差をもたらすことができ、これにより、第1の化合物の放出および/または活性が必要に応じて調整できる。例えば、第1の化合物が既に分布している基材内で第1の化合物のコーティングを基板2の第1の表面4に添加することにより、第1の化学化合物の第1の濃度が第1の表面4で達成され、基板2のコア内で第1の化学化合物の第2の濃度を達成することができ、それにより、基材における第1の化合物の第1の濃度および活性(例えば、抗菌活性)を調整し、第2の濃度を調製することによって、基材2から第1の化合物の放出を確実に制御することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の化合物を含むコーティングは、粒子(例えば、結晶または沈殿物)の形態であってもよく、ここで、各粒子9の少なくとも一部が接着剤層3の内側に入りこみ、該粒子の第2の部分は皮膚対向面6にある接着層3から外側へ突出していてもよい。従って、第2の化合物を含むコーティングが接着層3におよび/または接着層3から外側へ突出しているので、接着層3の皮膚対向面6から第2の化合物の放出が容易になる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、図1cに示されるように、接着層3は、皮膚対向面6に対し近位である接着層3の接着材料を含む皮膚部22と、皮膚対向面4の反対側にある接着層3の非皮膚対向面5に対し近位である接着材料を含む非皮膚部23とを備えていてもよく、ここで基材部分23は、第2の化合物を実質的に含まない。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3の皮膚対向面6に第2の化合物を含むコーティング9は、例えばPVP、CMC、HEC、PVA,および/またはHPCなどのフィルム形成化合物またはキャリア化合物をさらに含むフィルムコーティングであってもよい。例えば、かかるフィルムコーティングでは、第2の化合物は、フィルム形成化合物またはキャリア化合物のマトリックスに封入されてもよい。これにより、所望の特性を有するフィルム形成化合物またはキャリア化合物を選択することによって、すなわち、例えば、水溶液(例えば、創傷流体)中である程度の溶解性を有するフィルム形成化合物またはキャリア化合物を選択することによって、第2の化学物質の放出が所望に応じて制御できる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3は、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、または感圧接着剤(PSA)ホットメルトを含んでもよい。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3は、20~300g/m2、例えば50~200g/m2、例えば80~150g/m2のコーティング重量を有するコーティングであってもよい。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3はシリコーン系接着剤であってもよい。例えば、シリコーン系接着剤は軟質シリコーンゲル接着剤であってもよく、とりわけ、軟質シリコーンゲル接着剤は、接着層を皮膚表面から取り除く際に、皮膚が全く剥がれないまたはほとんど剥がれないという皮膚にやさしい性質を有するという点で有利であることが知られている。用語「シリコーンゲル」は、低分子量のシリコーンを含む架橋ネットワークを含むシリコーンゲルを指す。例えば、適切な軟質シリコーンゲル接着剤は、付加硬化されたRTV(室温加硫)シリコーン系からなることがあり、これは混合後に架橋して自己接着性エラストマーを形成する。市販されているRTV付加硬化シリコーン系の一例は、二成分系であるWacker SilGel 612であり、形成されるエラストマーの柔軟性および密着度は、2つの成分A:Bの割合を1.0:0.7~1.0:1.3の間で変えることによって可変である。シリコーン系接着剤の他の例として、とりわけ、米国ジョージア州カーピンテリアのNuSil TechnologyのNuSil MED-6340、NuSil MED3-6300およびNuSil MED 12-6300、並びに米国MidlandのDow Corning CorporationのDow Corning 7-9800が挙げられる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物および前記第2の化合物は、銀塩および金属銀などの銀化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)またはその任意の塩などのビグアニド塩、ポリヘキサメチルグアニド(PHMG)またはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩、ヨウ素、サリチル酸またはその任意の塩、アセチルサリチル酸またはその任意の塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩、ポビドンヨード(ベタジン)、ラクトフェリン、キシリトール、ヒトカチオン性抗菌タンパク質18(hCAP18又はLL37)ペプチドなどの抗菌ペプチド、ボルネオール、ビスマスサブガレート、抗真菌薬、ならびにゲンタマイシン、ストレプトマイシンなどの抗生物質からなる群から独立して選択されてもよい。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物および前記第2の化合物は、銀塩および金属銀などの銀化合物、PHMBまたはその任意の塩などのビグアニド塩、またはPHMGまたはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩、およびヨウ素からなる群から独立して選択されてもよい。
【0083】
例えば、前記第1の化合物および/または前記第2の化合物は、硫酸銀(Ag2SO4)、亜硫酸銀(Ag2SO3)、硝酸銀(AgNO3)、炭酸銀(AgCO3)、リン酸銀(Ag3PO4)、塩化銀(AgCl)、リン酸水素ジルコニウム水素銀(Milliken ChemicalのAlphaSan(登録商標)、Spartanburg、USA)、またはPHMB塩酸塩または他の任意の塩等のPHMB、またはクロルヘキシジンまたはその塩等の銀塩であってもよい。
【0084】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物が、例えば、銀塩および金属銀などの銀化合物であり、第2の化合物がPHMBまたはその任意の塩であってもよい。あるいは、第1の化合物がPHMBまたはその任意の塩であり第2の化合物が銀化合物であってもよく、あるいは第1および第2の化合物のいずれもがPHMBまたはその任意の塩であってもよく、あるいは第1および第2の化合物のいずれもが銀化合物であってもよい。あるいは、クロルヘキシジンまたはその任意の塩を銀化合物と組み合わせてもよい。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1の化合物は前記医療用包帯の面積による第1の濃度で存在し、前記第2の化合物は前記医療用包帯の面積による第2の濃度で存在し、ここで前記第1の濃度と前記第2の濃度は異なってもよい。例えば、前記第1の濃度は典型的に前記第2の濃度より高くてもよい。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物の濃度は約5~3000μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約1~2500μg/cm2であってもよい。例えば、第1の化合物の濃度は約5~2000μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約1~150μg/cm2であってもよい。例えば、第1の化合物の濃度は約1000~2500μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約1~300μg/cm2であってもよい。例えば、第1の化合物の濃度は約1500~2000μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約1~100μg/cm2であってもよい。例えば、第1の化合物の濃度は約50~200μg/cm2例えば95μg/cm2であり、第2の化合物の濃度は約5~49μg/cm2例えば20μg/cm2であってもよい。
【0087】
ほとんどの創傷ケア用途では、基材に第1の化合物を大量に組み込み、表面コーティングに第2の化合物を少量組み込むことが望ましい。
【0088】
例えば、第2の濃度と第1の濃度との間の比は、1:5~1:100、例えば、1:10~1:50の範囲内であってもよい。
【0089】
これにより、第1および第2の化合物の強力な初期効果および持続効果の両方が可能になる。第1および第2の化合物の放出は所望の期間にわたって維持することができ、化合物の生物学的活性は所望の期間にわたって維持することができる。
【0090】
創傷の種類が異なると、包帯に対する要求も異なる。例えば外科手術に起因する深い創傷に適用するには、早期治癒を容易にし創傷部位の腫れを回避するために、第2の化合物の初期放出を顕著に行うことが有利であり得る。感染の予防または瘢痕の修復の目的のためには、より緩徐な放出が望まれ得る。
【0091】
第1および第2の化合物の濃度を変化させることにより、包帯の放出プロファイルを異なる用途に合わせて調整することができる。これにより、第1および第2化合物のより制御された放出が可能になる。
【0092】
本発明による包帯は、第2の化合物の迅速な初期放出をもたらしつつ、第1の化合物の基材からの放出をより緩徐にすることによる相乗効果を可能にする。これにより、より制御された放出プロファイルが可能となり、それによって強力な初期効果ならびに持続効果が得られる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物および/または第2の化合物は創傷治癒用化合物であってもよく、ここで第1の化合物および/または第2の化合物は、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン);アメロゲニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲンの完全タンパク質またはペプチド;アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチド;ベータグルカン(BG)(例えば、可溶性BGまたはオートムギBG)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)などの増殖因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)ベータ1、TGFベータ3、インターロイキン(IL)-10などのサイトカイン;脱細胞化動物組織;羊水組織からなる群から独立して選択されてもよい。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物は、銀塩および金属銀などの銀化合物;PHMBまたはその任意の塩; PHMGまたはその任意の塩、クロルヘキシジンまたはその任意の塩;およびヨウ素からなる群から選択される抗菌性化合物であってもよく、第2の化合物は、エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン);アメロゲニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲンの完全タンパク質またはペプチド;アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチド;ベータグルカン(BG)(例えば、可溶性BGまたはオートムギBG)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)などの増殖因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)ベータ1、TGFベータ3、インターロイキン(IL)-10などのサイトカイン;脱細胞化動物組織;羊水組織からなる群から選択される創傷治癒用化合物であってもよい。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3は、例えば、図1a~cおよび図2a~cを参照して上述したように、接着剤層3内に分布された第3の化合物を含んでもよく、ここで、第3の化合物は、第1および/または第2の化合物と同じであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、第3の化合物は、接着層3内の固体分散体であってもよい。
【0096】
したがって、化合物は、包帯1,20の層または材料内部または上部に更に分布させてもよく、それにより、例えば放出特性および/または生物学的な(例えば、抗菌または創傷治癒)活性といった特性が所望に応じて更に調製可能になる。
【0097】
本発明はまた、医療用包帯を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
第1の化合物を含む基板2を設けること;
接着層3を設けること;および、
接着層3に第2の化合物を含むコーティング9を設けること;を含む方法にも関する。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の化合物を含む基材2を設ける工程は、溶媒中の第1の化合物の溶液または分散液で基材2を含浸すること、次いで、含浸された基材2を乾燥することを含んでもよい。代わりにまたは追加的に、第1の化合物を含む基材2を設ける工程は第1の化合物を基材の製造の工程に添加することを含んでもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、接着層3を設ける工程は基材の第1の表面4の上または有孔フィルム層11(例えば、ポリウレタンフィルム)の無孔部分12に接着組成物をコーティングする工程を含んでもよい。例えば、接着層がシリコーン系接着剤である場合に、コーティングの工程の次に、典型的に、シリコーン組成物を硬化させる工程を行い、硬化したシリコーン系接着層を得る。例えば、接着層を設ける工程は、まず、有孔ポリウレタンフィルムの無孔部分の第2の表面18の上にシリコーン組成物を添加し、その後、それを硬化させ、次いで、有孔ポリウレタンフィルムの第1の表面17が基材の第1の表面4に対面するようにして、有孔ポリウレタンフィルムを基材に取り付けることを含んでもよく、有孔ポリウレタンフィルムの第1の表面17はその第2の表面18の反対側にある。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の化合物を含むコーティング9を有する接着層3を設ける工程は、接着層3の皮膚対向面6に第2の化合物を粉末などの固体の形態で添加することを含んでもよく、あるいは、第2の化合物は水もしくはアルコールなどの有機溶媒などの適切な溶媒中に溶解または分散することにより、第2の化合物の溶液または懸濁液を接着層3に塗布してよく、この場合、該方法は、典型的に、乾燥する工程、例えば、液体を蒸発させる工程を更に含む。本発明の実施形態において、第2の化合物の液体混合物(例えば、溶液または懸濁液)がフィルム形成化合物またはキャリア化合物(上記のとおり)を更に含むことにより、第2の化合物およびフィルム形成化合物を含むフィルムコーティングを得てもよい。第2の化合物の液体混合物(例えば、溶液または懸濁液)はスポンジアプリケータ、ブラシまたはスティックまたはローラなど、または、スパチュラによる延展、または、リリースシートによる放出により塗布してもよく、または、液体混合物は噴霧、ムース、エアロゾルまたは発泡体の形態であって表面に直接的に塗布してもよい。例えば、第2の化合物の液体混合物(例えば、溶液または懸濁液)は、典型的に、接着層3の皮膚対向面6上に液体混合物を噴霧することにより接着層3に塗布してよい。本発明の実施形態において、第2の化合物が溶媒中に溶解されまたは分散される場合に、溶媒の粘度は第2の化合物の接着層3の皮膚対向面6への浸入のレベルを制御するように構成されうる。例えば、第2の化合物の液体混合物(例えば、溶液または懸濁液)の粘度は、典型的に、比較的に低い粘度であることができ、例えば、0.65~500 mPasの範囲にある。
【0101】
本発明の特徴、実施形態または態様がマーカッシュ群で記載されている場合には、当業者は本発明がマーカッシュ群の任意の個々の構成員または構成員の副次群でも記載されているものと認識するであろう。当業者は本発明がマーカッシュ群の個々の構成員または構成員の副次群の任意の組み合わせでも記載されていると更に認識するであろう。
【0102】
さらに、本発明の1つの態様および/または実施形態の関係で記載される実施形態および特徴は本発明のすべての他の態様および/または実施形態にも必要な変更を加えて応用されることに注意されるべきである。
【0103】
さらに、開示の実施形態への変更は、請求された発明を実施する際に、図面、開示および添付の特許請求の範囲の研究から当業者に理解されそして実施されることができる。特許請求の範囲において、用語「含む」は他の要素または工程を排除せず、そして不定冠詞は「a」または「an」は複数を排除しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に引用されるという単なる事実はこれらの手段の組み合わせが利するために使用され得ないことを示すものではない。
【0104】
本発明の利点は実験において実証された。
【実施例
【0105】
本発明の例示的な実施例の調製
使用材料:
親水性ポリウレタン発泡体製品であるLyofoamTM Max (バッチ603092)はMolnlycke Health Care AB から市販されている。LyofoamTM Maxは発泡体層の片面上に存在するポリウレタンバッキングフィルムを備える。Mepore (登録商標) Film (20 x 30 cm)はMolnlycke Health Care ABから市販されている。Mepore Filmは、透明ポリウレタン(PU)フィルム(25 μm)の片側でポリアクリル系接着剤(その上にクレイコートされた紙の剥離層を有する)によりコーティングされ、PUフィルムの反対側でシリコーンコート紙の紙フレームによりコーティングされた透明ポリウレタン(PU)フィルム(25 μm)からなる。Wacker SilGel (登録商標) 612 (バッチSR 020539)シリコーン系接着剤(室温加硫シリコーン;2成分系)はWackerから市販されている。硫酸銀(Ag2SO4)はAlfa Aesarから市販されている。ポリエチレン(PE)フィルム(100 μm);ポリエチレン(PE)コート紙)はAkerlund & Rausing Groupから市販されている。
【0106】
発泡体サンプル上のシリコーン接着剤のコーティング方法はWO 97/ 42985 (第9頁を参照されたい)に開示されている方法をベースとする。ポリウレタンフィルムに穿孔を開ける方法はEP 1 960 164に開示されている方法をベースとする。下記に開示の調製方法のすべての工程は特に指示がない限り室温(25℃)で行う。
【0107】
実施例1
硫酸銀の水溶液(4.1 g/L)を調製した。溶液を、次いで、LyofoamTM Max (20 x 15 cm)の発泡体表面上で実質的に均一に噴霧した(任意の適切な被覆装置または、例えば、噴霧缶を使用)。噴霧された合計量は28.3 μL/cm2であった。次いで、ポリウレタン(PE)フィルム(20 x 15 cm)を、全発泡体表面がPEフィルムにより覆われるように発泡体の銀コート化表面に適用し、そしてスチールローラをPEフィルム上に適用し、下層の発泡体を圧縮し、それにより、硫酸銀の水溶液で発泡体のボディを含浸した。その後、PEフィルムを除去し、LyofoamTM Max製品を室温にて少なくとも24時間乾燥し、約116 μg/ cm2 の硫酸銀を含む、銀で含浸したLyofoamTM Maxサンプルを得た。
【0108】
未硬化シリコーン混合物(Wacker Silgel 612、比A:B = 1.2:1)の層(厚さ0.125 mm)をPEコート紙(25 x 25 cm)に適用した。次に、銀で含浸した(約116 μg/ cm2) LyofoamTM Maxサンプル (20 x 15 cm)を、LyofoamTM Maxの発泡体側が未硬化シリコーン混合物と接触するようにして、未硬化シリコーン混合物の層に適用し、そして層 (すなわち、PEコート紙、シリコーン、発泡体層)を、その後、オーブン(90℃)を通して移動した。シリコーン混合物はオーブンを通した通過時に硬化し(合計硬化時間約2分)、発泡体材料の下側に硬化したシリコーンゲル層を得た。PEコート紙を除去し、そしてPEフィルム(20 x 15 cm)を追加して、硬化したシリコーン接着剤層を覆った。
【0109】
実施例2
LyofoamTM Max 製品 (20 x 15 cm、銀含浸せず)を、実施例1に記載されるように、硬化したシリコーンゲル接着剤の層によりコーティングした。硫酸銀の水溶液(7.70 g/L)を調製し、次いで、硬化したシリコーン層の上に実質的に均一に噴霧し(任意の適切な被覆装置または例えば、噴霧缶を使用)、そしてサンプルを室温にて少なくとも24時間乾燥した。噴霧された合計量は15.0 μL/cm2 であり、シリコーン層上で合計で硫酸銀約116 μg/ cm2をもたらした。
【0110】
実施例3
硬化したシリコーンゲルの層を含む発泡体サンプルを実施例1に記載されるように調製したが、3.50 g/Lの濃度の硫酸銀の水溶液を発泡体表面上に噴霧し(合計量27.3 μL/cm2)、それにより、銀含浸したLyofoamTM Max サンプルを得た。ここで、発泡体ボディ中に含まれる硫酸銀の合計量は約96 μg/ cm2であった。
【0111】
硬化したシリコーンゲル層を、次に、実施例2に記載されるように硫酸銀でコーティングしたが、3.0 g/Lの濃度の硫酸銀の水溶液を用い、そして噴霧された合計量は7.5 μL/cm2であり、シリコーン層上に硫酸銀の合計量約22 μg/ cm2をもたらし、これにより最終製品中の硫酸銀の合計量約118 μg/ cm2をもたらした。
【0112】
実施例4
LyofoamTM Max (20 x 15 cm)のサンプルを実施例1に記載されるように含浸し、約116 μg/ cm2 の硫酸銀を含む銀含浸LyofoamTM Maxサンプルを得た。
【0113】
Mepore (登録商標) Film (20 x 30 cm) 製品上の紙フレームを除去し、そして未硬化シリコーン混合物(Wacker Silgel 612、比A:B = 112:100)の層(厚さ0.200 mm)をMepore (登録商標) Film (20 x 30 cm)のポリウレタンフィルム(PU)フィルムのトップ(非接着性)表面に適用し、次いで、オーブン内で硬化させた(約2 分、90℃)。PEフィルム(20 x 30 cm)を追加して、硬化したシリコーン接着層を覆った。
【0114】
今や、片側にアクリル系接着剤(剥離層なし)および反対側にシリコーン系接着剤(PEフィルム剥離層あり)を有するPUフィルムを、その後、EP 1 960 164 ([0008]を参照されたい)に記載される超音波デバイスを用いて穿孔し、ここで、PUフィルムおよび剥離層のラミネートを超音波デバイスのニップを通過させた。該デバイスは超音波ホーンおよび突起パターンを備えた対向ローラを含む(EP 1 960 164中の図1を参照されたい)。PEフィルムが対向ローラに対面するようにしてラミネートを超音波デバイスを通して挿入した。超音波デバイスから放出されるエネルギーはPUフィルムの局所融解が各突起物の領域において起こるように調節され、それにより、約1.5mmの直径の複数の貫通孔が形成されるように、ラミネートのポリウレタンフィルムを穿孔させた。剥離層(アクリル系接着層上)を、次いで、除去し、そして有孔フィルムラミネート(20 x 15 cmに切断)を、調製されたLyofoamTM Max (約116 μg/ cm2 の硫酸銀を含む)の発泡体表面に取り付けた。最終製品中の硫酸銀の合計量は、このように、約116 μg/ cm2であった。
【0115】
実施例5
Mepore (登録商標) Film (20 x 30 cm)製品上の紙フレームを除去し、そして未硬化のシリコーン混合物(Wacker Silgel 612、比A:B = 112:100)の層(厚さ0.200 mm)を、Mepore (登録商標) Film (20 x 30 cm)のポリウレタン(PU)フィルムのトップ(非接着性)表面に適用し、次いで、オーブン中で硬化した(約2 分、90℃)。硫酸銀の水溶液 (7.70 g/L)を調製し、次いで、硬化したシリコーン層の上で実質的に均一に噴霧し(任意の適切な被覆装置または例えば、噴霧缶を使用)、そしてサンプルを乾燥した(90℃で約2分間)。噴霧された合計量は15.0 μL/cm2 であり、シリコーン層上で硫酸銀の合計量約116 μg/ cm2をもたらした。PE フィルム(20 x 30 cm)を追加して、硬化したシリコーン接着層を覆い、そして上記実施例4に記載されるようにフィルムラミネートを穿孔した。次いで、剥離層(アクリル系接着層上)を除去し、そして有孔フィルムラミネート(20 x 15 cmに切断)をLyofoamTM Max 製品(20 x 15 cm、銀含浸されていない)の発泡体表面に取り付けた。最終製品中の硫酸銀の合計量は、このように、約116 μg/ cm2であった。
【0116】
実施例6
LyofoamTM Max (20 x 15 cm)のサンプルを、実施例1に記載されるように含浸したが、3.50 g/Lの濃度の硫酸銀の水溶液を発泡体表面上に噴霧し(合計量27.3 μL/cm2)、それにより、銀含浸したLyofoamTM Maxサンプルを得て、発泡体ボディ中に含まれる硫酸銀の合計量は約96 μg/ cm2であった。有孔フィルムラミネートを実施例5に記載されるように調製したが、3.0 g/Lの濃度の硫酸銀の水溶液を使用し、そして噴霧された合計量は7.5 μL/cm2であり、シリコーン層上の硫酸銀の合計量約22 μg/ cm2をもたらし、これにより最終製品中の硫酸銀の合計量約118 μg/ cm2をもたらした。
【0117】
実施例7
製品を実施例4により調製したが、銀含浸されていないLyofoamTM Max (20 x 15 cm)を使用した。実施例7の製品における硫酸銀の合計量は、このように、0 μg/ cm2であった。
【0118】
抗菌活性試験
抗菌効果を、直接接触法、変更ISO 20743:2007 (E) テキスタイル-抗菌性最終製品の抗菌活性の決定(Determination of antibacterial activity of antibacterial finished products)により決定した。このISO法は試験媒体および試験生物に関して変更されており、それにより、創傷様条件をシミュレートする。原則的に、接種された試験媒体を材料または製品片に添加し、試験媒体を吸収する。接種した片を特定の時間インキュベートし、その後に、中和バッファーを用いて残存試験生物を洗い流すことにより生存試験生物の数を決定する。段階希釈および寒天平板上へのプレーティングにより生存計数を中和バッファー中で決定する。
【0119】
方法の説明
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa) ATCC 15442 (P. aeruginosa)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) ATCC 6538 (S. aureus)に対する抗菌効果を実施例1~3および実施例4~6で決定した。LyofoamTM Max (Molnlycke Health Care、バッチ603092)および実施例7をネガティブコントロールサンプルとして含んだ。実施例の接着層上に存在するすべての剥離層を試験前に除去した。
【0120】
トリプチケースソイブロス(Trypticase Soy Broth) (TSB; Acumedia)中の試験生物の一晩培養物(約109 CFU/ml)を、ペプトン水(PW; 0.85 % NaClで0.1 % ペプトンを含む、ペプトン細菌中和(Peptone Bacteriological Neutralised) (Oxoid))を用いて、約107 CFU/mlに希釈し、その後、模擬創傷流体(SWF; ウシ胎仔血清(Hyclone)およびPW 混合比1:1)を用いて更に約5 × 106 CFU/mlに希釈し、試験サンプルのための接種材料を形成した。
【0121】
実施例1~3および4~6ならびにネガティブコントロールサンプル(LyoFoamTM Maxおよび実施例7)を含む試験サンプルを各生物に対して3回試験した。実施例1~3および4~6ならびにネガティブコントロールサンプルの円形ピース(φ 31 mm)を無菌条件下に打ち抜き、そして接着性シリコーン層(またはLyoFoamTM Maxの発泡体側)を上に向けた別個のペトリ皿中に入れた。接種材料の0.5 mlのアリコートを、各試験サンプルで、接着性シリコーン層(または発泡体表面)上に数か所で添加した。試験サンプルを含むペトリ皿を35℃±2℃で24時間インキュベートした。
【0122】
出発接種材料レベルを決定するために、ネガティブコントロールサンプル、すなわち、LyofoamTM Maxおよび実施例7の追加の3つの複製物を接種し、そして100 mlの室温D/Eを含む別の250 mlスナップキャップに直接的に移した。生存計数の数をPW中10倍段階希釈によりD/E中で決定し、PetrifilmTM Aerobic Count Plates (3M)上にプレーティングし、そして48時間インキュベートし、その後、コロニーを計数した。結果をネガティブコントロールサンプル当たりの生存計数(log cfu/サンプル)の平均として表現した。
【0123】
インキュベーション(35℃±2℃で24時間)の後に、100 ml室温Dey-Engley中和バッファー(D/E, Becton Dickinson)を含む別の250 mlスナップキャップに試験サンプルを移した。容器を少なくとも60秒間激しく振とうし、生存している試験生物を確実に洗い落とした。生存計数の数はPW中10倍段階希釈によりD/E中で決定し、PetrifilmTM Aerobic Count Plates (3M)上にプレーティングし、そして48時間インキュベートし、その後、コロニーを計数した。結果をネガティブコントロールサンプル当たりの生存計数(log cfu/サンプル)の平均として表現した。
【0124】
結果と考察
調製しそして抗菌効率に関して試験した実施例における銀含有分を下記の表1に示す。実施例1~3 (上記のとおり)は親水性発泡体(LyoFoamTM Max)の第1の表面上に直接的にコーティングされたシリコーン接着剤を含み、一方、実施例5~8(上記のとおり)は親水性発泡体の第1の表面に取り付けられた有孔プラスチックフィルム上にコーティングされたシリコーン接着剤を含む。
【0125】
【表1】
【0126】
図3aおよび図3bは、それぞれP. aeruginosaおよびS. aureusに対する抗菌活性試験からの結果を表す。下記の両方の図面から理解されるように、本発明に係る例示の実施形態、すなわち、両方とも、シリコーンゲル系接着剤上に銀塩(Ag2SO4)コーティングを含み、また、発泡体基材中に銀塩を含む、実施例3および実施例6は、24時間後の生存計数の有意な低減、約3 Log CFU/サンプルを示し、一方、各々発泡体基材中のみに、または、シリコーンゲル系接着剤におけるコーティングとしてのみ銀塩を有する、実施例1, 2, 4および5では、0時間で測定した出発接種材料レベルと比較して、24時間後の生存計数の低減を示さずまたはさらには増加を示す。実際、これらの試験サンプル実施例1, 2, 4および5はコントロールサンプルLyofoamTM Max および実施例7 (銀塩を含まない)と同様の結果を示す。すべての実施例1, 2, 3および4, 5および6における銀塩の合計濃度はほぼ同一の合計レベル(すなわち、116~118 μg/cm2)に維持されることに留意すべきである。このように、これらの結果は実際、非常に驚くべきことであり、そして本発明により達成される技術効果を明らかに示す。理論に拘束されないが、本発明の実施例3および6と、実施例1, 2, 4, 5との間の抗菌活性の有意な差異は試験生物が試験の間に十分な量の銀塩と接触しているという事実によるものであると信じられ、試験生物が最終的に接着性シリコーンゲル上にあるかまたは発泡体基材中にあるかに関係ない。これは臨床状態に代表的なものであり、ここで、包帯の表面上ならびにその近傍の微生物は接着性シリコーンゲル上の銀塩により影響を受け、一方、発泡体基材により吸収された創傷滲出物中の微生物はその中に存在する銀塩により低減されるであろう。方法の検出限界は約2.0 Log CFU/試験サンプルであることに更に留意すべきである。出発接種材料レベル(ネガティブコントロールサンプルのみに対して0時間で測定、ISO 20743による)はS. aureus に対する微生物試験(図3a)において5.9 Log CFU/試験サンプルであり、そしてP. aeruginosa に対する微生物試験(図3b)において6.2 Log CFU/試験サンプルであった。
【0127】
接着試験
接着実験の目的は接着性シリコーン層の接着特性が塩コーティングにより影響を受けるかどうかを決定することであった。そのために、2つの試験を用いた:接着試験A (スチール表面上)及び接着試験B (人工皮膚表面上)。両方の試験はASTM D3330/D3330M-04、方法をベースとし、以下の条件変更を行った: (i)上記標準では最大1分間を使用するのに反して、カレンダ加工後の静置時間は30 ±5 minである、(ii) 上記標準では25及び75 mmであるのと比較して、20~120 mmで測定される平均荷重を比較する、及び(iii) 上記標準ではローラ重が2040 gであるのに反して、試験Bでは、ローラ重は445 gである。
【0128】
試験A:一般試験手順
スチールプレート(ASTM A 666-94A; PSTC Appendage B 2.6; スライドに適する)を 糸くずのない吸収性材料およびアセトンを使用してクリーニングし、そして室温で10分間乾燥した。クリーニングを3回繰り返した。接着試験製品(25 x 220 mm)を、クリーニングされたスチールプレートに対して、それをプレートにプレスすることなく適用した。試験ピースを、一回、前後にカレンダ加工した(メカニックカレンダ; ローラ重2040±45 g)。試験前にサンプルを30±5 分間静置した。コードをスライドからクロスヘッドに取り付けた。コードはクロスヘッドが垂直に移動するのと同一の速度でスライドを垂直に移動させる。このことは、試験ピースが基材から剥離される角度を90°で維持するのを確保する。スチールプレートをスライドに配置し、そして試験製品の1つの末端をスチールプレートから注意深く剥離し、その後、上部クランプで紙と一緒にクランプして、滑りを回避した。この引張試験機を開始し、そして基材から試験ピースを剥離するのに要求される平均力を測定した。
【0129】
試験B:一般試験手順
両面コート化接着テープをスチールプレート上に、気泡がテープの下にトラップされないように適用した(ASTM A 666-94A; PSTC Appendage B 2.6)。皮膚基材(Millipore のMitex Membrane 5 μm)を、皮膚基材とテープとの間の気泡を回避するように注意深くテープに適用した(コットングローブを装着すべきである)。皮膚基材をテープにプレスするときに皮膚基材を覆って、汚染を回避した。接着試験製品(25 x 220 mm;グリップの汚染を回避するために末端に紙ストリップを含む)を基材に適用し、そして試料を、1回前後に機械的にカレンダ加工した(ローラ重445g;またはゴム表面重185 gを有するマニュアルカレンダ加工を用いる)。サンプルを30 ± 5分間静置し、次いで、スチールプレートをスライドに配置し、そして試験製品を上部グリップに締結した。コードをスライドからクロスヘッドに取り付けた。引張試験機を開始し、そして基材からシリコーンストリップを剥離するのに要求される平均力を測定した。
【0130】
結果と考察
市販製品Avance (登録商標) FilmおよびMepilex (登録商標) (Molnlycke Health Careから)のシリコーン接着層に様々な量の塩化ナトリウム(NaCl)を噴霧することにより幾つかの製品を調製した。実施例2または5について上記で示したシリコーン接着表面を噴霧する工程を用いた。また、実施例5および7を接着試験に含ませた。接着試験の結果(下記の表2に示す)は、接着層の接着特性を完全に喪失させることなく多くの量(例えば、2500 μg/cm2)が添加可能であり、少量の塩の場合(例えば、1000 μg/cm2以下)、接着特性は実質的に維持可能であることを示す。このように、本発明に係る医療用包帯は実際に接着性であることが可能である。
【0131】
【表2】
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b