(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】縦型製袋充填機
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20230313BHJP
B65B 9/213 20120101ALI20230313BHJP
【FI】
B65B57/00 D
B65B57/00 H
B65B9/213
(21)【出願番号】P 2018098174
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-05-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151461
【氏名又は名称】株式会社東京自働機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一生
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 譲
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227288(JP,A)
【文献】特開2016-084176(JP,A)
【文献】特開平05-099732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 57/00
B65B 9/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品供給装置の製品供給部から供給された複数の製品を落下させて、その下方に配置した包装フィルム内に当該製品を充填し、さらに横シール部にて横シーラにより前記包装フィルムを横シールする構成を備えた縦型製袋充填機において、
前記製品供給部と前記横シール部との間に設けられ、前記製品供給部から落下してきた各製品を検知する製品検知部と、
前記製品供給部より前記各製品が供給されてから当該各製品が前記製品検知部を通過するまでの時間(検知部通過時間)を求める検知部通過時間算出手段と、
複数回の前記各製品の供給動作に対して前記検知部通過時間算出手段により求めた前記検知部通過時間のばらつきを統計処理して、当該検知部通過時間の統計量を求める統計量算出手段と、
前記統計量算出手段により求めた前記検知部通過時間の統計量に基づき、前記製品供給部から供給された各製品が前記横シール部に到達するまでの予測時間幅(横シール部到達予測時間幅)を求める到達予測時間幅算出手段と、
前記到達予測時間幅算出手段により求めた前記横シール部到達予測時間幅が、あらかじめ設定してある前記横シーラの噛み込みタイミングに掛からないように、前記横シーラの動作タイミング又は前記製品供給装置からの各製品の供給タイミングのいずれかを制御する運転制御手段と、
を備え、
前記統計量は、平均値と標準偏差であり、
前記到達予測時間幅算出手段は、次式(1)により前記横シール部到達予測時間幅Tdを算出することを特徴とする縦型製袋充填機。
Ttu+μ-k
1
σ < Td < Ttu+(μ+k
2
σ) ・・・(1)
Ttu:製品が前記製品検知部を通過してから前記横シール部へ到達するまでの落下時間
μ:複数回の各製品の供給動作に対して求めた前記検知部通過時間の平均値
σ:複数回の各製品の供給動作に対して求めた前記検知部通過時間のばらつき(標準偏差)
k
1
、k
2
:標準偏差に掛かる係数で、任意に設定
【請求項2】
前記運転制御手段は、前記製品供給装置が複数の製品を供給した時点から、前記μの値に基づいて算出される落下タイマの時間経過後に、前記横シーラの動作を含む運転サイクルを開始することを特徴とする
請求項1に記載した縦型製袋充填機。
【請求項3】
前記運転制御手段は、前記製品供給装置へ所定の時間間隔(要求サイクルTr)ごとに製品供給の要否を通知する構成を含み、前記要求サイクルTrは、複数回の各製品の供給動作に対して求めた前記検知部通過時間のばらつき(標準偏差)に基づいて算出することを特徴とする
請求項1又は2に記載した縦型製袋充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品供給部から供給された複数の製品を落下させて、その下方に配置した包装フィルム内に当該製品を充填した後、横シール部にて横シーラにより包装フィルムを横シールして包装袋を形成する縦型製袋充填機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の縦型製袋充填機においては、特許文献1にも記載されているとおり、落下してきた製品を横シーラが噛み込んでしまう事象が、生産効率を悪化させる原因となるために問題となっている。
特許文献1に開示された縦型製袋充填機では、横シーラによる製品(塊状物品)の噛み込みを回避するために、落下してくる塊状物品の落下の終端と、それに続く塊状物品の落下の先端との隙間距離を求め、この隙間距離が所定の下限値よりも小さい場合は前工程の処理速度を遅くし、一方、この隙間距離が所定の上限値よりも大きい場合は前工程の処理速度を早めるとともに、縦型製袋充填機の処理速度も速めるような制御が組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の縦型製袋充填機では、噛み込みを回避するための判定しきい値(上限値と下限値)をどのような基準で設定するのか具体的な手法は開示されてなく、さらにこれらの判定しきい値は前もって設定されるため、画一的な値となる(特許文献1の段落「0035」参照)。
【0005】
しかし、製品によっては隙間距離が、供給サイクル毎に大きく不規則に変動するものがある。例えば、表面に細かな凹凸がある製品では製品相互に引っ掛かりが生じ易く、また表面に砂糖などがまぶしてある製品では砂糖に湿り気が生じて相互に貼り付き易い。一方、少しの振動や衝突で製品相互がばらけ易くもあるため、同じ周囲環境下であっても、落下する際の製品の塊の大きさが不規則に変化する。そのために、隙間距離が不規則に大きく変動して、画一的に設定した判定しきい値では対応できず噛み込みを生じさせてしまったり、また、隙間距離を検出する毎に判定しきい値を超えてしまい、頻繁に処理速度が変更されて、運転に安定性を欠き装置構造に負担をかけてしまうおそれもあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、装置構造に負担の少ない滑らかな運転を実現しつつ、横シーラによる製品の噛み込みを回避して生産性の向上を図ることのできる縦型製袋充填機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、製品供給装置の製品供給部から供給された複数の製品を落下させて、その下方に配置した包装フィルム内に当該製品を充填し、さらに横シール部にて横シーラにより包装フィルムを横シールする構成を備えた縦型製袋充填機において、
製品供給部と横シール部との間に設けられ、製品供給部から落下してきた各製品を検知する製品検知部と、
製品供給部より各製品が供給されてから当該各製品が製品検知部を通過するまでの時間(検知部通過時間)を求める検知部通過時間算出手段と、
複数回の各製品の供給動作に対して検知部通過時間算出手段により求めた検知部通過時間に基づき、当該検知部通過時間のばらつきを求める統計量算出手段と、
統計量算出手段により求めた検知部通過時間に基づき、製品供給部から供給された各製品が横シール部に到達するまでの予測時間幅(横シール部到達予測時間幅)を求める到達予測時間幅算出手段と、
到達予測時間幅算出手段により求めた横シール部到達予測時間幅が、あらかじめ設定してある横シーラの噛み込みタイミングに掛らないように、横シーラの動作タイミング又は製品供給装置からの各製品の供給タイミングのいずれかを制御する運転制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
製品供給装置の製品供給部より各製品が供給されてから当該各製品が製品検知部を通過するまでの時間(検知部通過時間)のばらつきを統計処理して、横シール部到達予測時間幅を求めるので、製品の落下速度が供給サイクル毎に大きく不規則に変動しても、その変動に的確に対応して滑らかに運転を調整し、横シーラによる製品の噛み込みを回避することができる。
【0009】
例えば、到達予測時間幅算出手段は、次式(1)により横シール部到達予測時間幅Tdを算出する構成とすることができる。
Ttu+μ-k1σ < Td < Ttu+μ+k2σ ・・・(1)
【0010】
Ttu:製品が製品検知部を通過してから横シール部へ到達するまでの落下時間
μ:複数回の各製品の供給動作に対して求めた検知部通過時間の平均値
σ:複数回の各製品の供給動作に対して求めた検知部通過時間のばらつき(標準偏差)
k1、k2:標準偏差に掛かる係数で、任意に設定
【0011】
ここで、例えば、落下が正規分布する場合、検知部通過時間のばらつきを、標準偏差の±2倍の範囲(±2σ)で設定(k1=k2=2とする)すれば、95.45%の変動幅を包含することができる。さらに、標準偏差の±3倍の範囲(±3σ)で設定(k1=k2=3とする)すれば、99.73%の変動幅を包含することができ、横シーラが製品を噛み込むおそれを顕著に低減することができる。
【0012】
また、運転制御手段は、製品供給装置が複数の製品を供給した時点から、「μ」の値に基づいて算出される落下タイマの時間経過後に、横シーラの動作を含む運転サイクルを開始する構成とすることができる。
【0013】
「μ」は検知部通過時間の平均値なので、製品が供給され、製袋充填される際に刻々と変動していく。そして、落下タイマTを、この刻々と変動していく検知部通過時間の平均値μにより算出することで、横シーラによる製品の噛み込みを回避しながら、無駄のない高速運転を実現することができる。
【0014】
さらに、前記運転制御手段は、複数回の各製品の供給動作に対して求めた前記検知部通過時間のばらつき(標準偏差)に基づいて算出される要求サイクルTrごとに製品供給装置へ製品供給の要否を通知する構成を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、製品供給部より各製品が供給されてから当該各製品が製品検知部を通過するまでの時間(検知部通過時間)のばらつきを統計処理して、横シール部到達予測時間幅を求めるので、製品の落下速度が供給サイクル毎に大きく不規則に変動しても、その変動に的確に対応して滑らかに運転が調整される。よって、装置構造に負担の少ない滑らかな運転を実現しつつ、横シーラによる製品の噛み込みする確率を減少させて、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る縦型製袋充填機の概要を示す斜視図である。
【
図3】横シーラの開閉タイミングに対する噛み込みタイミングの設定例を示すタイミングチャートである。
【
図4】制御装置による噛み込み回避制御を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】制御装置による運転サイクル開始タイミングの調整を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】制御装置による落下タイマの演算処理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】制御装置による要求サイクルの演算処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1はこの発明の実施形態に係る縦型製袋充填機の概要を示す斜視図である。
まず、同図を参照して本実施形態に係る縦型製袋充填機の全体構成について説明する。
帯状の包装フィルム1は、供給ロール2から繰り出され、筒状のファネルチューブ3の外周面に巻き付いて下方に搬送されていく。
【0018】
ファネルチューブ3の側方には、縦シーラ4が設けてあり、ファネルチューブ3の周面に巻き付けられた包装フィルム1は、その重合側端部が縦シーラ4により熱シールされて、円筒状に成形される。
【0019】
ファネルチューブ3の下方に設定した横シール部P3には、一対の横シーラ7が、包装フィルム1の搬送経路を挟んで対向して設けてあり、繰出しベルト5により下方向に送り出されてきた包装フィルム1を、これら横シーラ7で挟み込み、幅方向に熱シールして袋状に成形する。続いて、袋状に形成された包装フィルム1が一定長さ下方へ繰り出される。
【0020】
縦型製袋充填機には、製品供給装置10が連結してある。製品供給装置10は、あらかじめ設定された重量に計量した複数の製品(製品群)を製品供給部P1から供給する。ファネルチューブ3の上方にはホッパ6と称する製品受部が設けてあり、製品供給装置10の製品供給部P1から供給された複数の製品は、このホッパ6内からファネルチューブ3の中空部を通って落下していく。そして、これら複数の製品は、ファネルチューブ3の下方位置で袋状に成形された包装フィルム1の中へ充填される。
【0021】
袋状の包装フィルム1に製品が充填されると、再び横シーラ7によって包装フィルム1が幅方向に熱シールされて、密封された包装袋が完成すると同時に、横シーラ7に内蔵したカッタ(図示せず)によって熱シール部の中間部分が切断される。
この切断部の上方は、袋状に形成された包装フィルム1となって、次の運転サイクルでその中に製品が充填される。
【0022】
図2は制御装置の概要を示すブロック図である。
縦型製袋充填機と製品供給装置10は、汎用コンピュータなどで構成された制御装置20によって運転を自動制御されている。
なお、
図2では、縦型製袋充填機と製品供給装置10の運転を制御するための各種機能のうち、特に横シーラ7による製品の噛み込みを回避するための制御機能(噛み込み回避制御)を担う構成要素のみを示している。
【0023】
すなわち、制御装置20は、噛み込み回避制御を担う構成要素として、製品検知信号入力部21、中央演算処理部(CPU)22、内部時計23、記憶部24、運転制御部25、製品供給指令部26、横シーラ駆動指令部27の各構成要素を含んでいる。
【0024】
縦型製袋充填機には、製品供給部P1と横シール部P3の間に製品検知部P2が設定してあり(
図1参照)、この製品検知部P2に製品検知センサ28が設置してある。
図1では、ファネルチューブ3の側方に製品検知センサ28が設置してあり、ファネルチューブ3の中空部を落下していく製品を、その製品検知センサ28によって検知する。
製品検知センサ28は、製品検知部P2で製品を検知したとき、製品検知信号を出力する。この製品検知信号は、
図2に示す制御装置20の製品検知信号入力部21へ入力される。
【0025】
中央演算処理部22は、横シーラ7による製品の噛み込みを回避する制御に必要な諸々の演算処理を実行する。
具体的には、中央演算処理部22は、内部時計23から出力される時間情報を参照し、製品が供給された時点(すなわち、製品供給指令部26が製品供給信号を出力した時点)から、製品検知信号入力部21が各製品検知信号を入力するまでの時間(検知部通過時間)を算出する(「検知部通過時間算出手段」としての機能)。
この検知部通過時間は、製品検知部P2を通過する製品ごとに求められ、その値は記憶部24に記憶される。
【0026】
さらに、中央演算処理部22は、複数回の各製品の供給動作に対して算出した検知部通過時間を統計処理によって、当該検知部通過時間のばらつきを求める(「統計量算出手段」としての機能)。
そして、算出した検知部通過時間のばらつきに基づき、製品供給部P1から供給された各製品が横シール部P3に到達するまでの予測時間幅(横シール部到達予測時間幅)を算出する(「到達予測時間幅算出手段」としての機能)。
中央演算処理部22による演算結果は、記憶部24に記憶される。
【0027】
運転制御部25は、中央演算処理部22が算出した横シール部到達予測時間幅を参照し、この横シール部到達予測時間幅が、あらかじめ設定してある横シーラ7の噛み込みタイミングに掛からないように、横シーラ7の動作タイミングか、あるいは製品供給部P1からの各製品の供給タイミングのいずれかを制御する(「運転制御手段」としての機能)。
すなわち、横シーラ7の動作タイミングを制御する場合は、横シーラ駆動指令部27から横シーラ駆動信号を出力させて、横シール部到達予測時間幅が横シーラ7の噛み込みタイミングに掛からないようなタイミングで、横シーラ駆動機構を作動し、横シーラ7を閉じていく。
また、製品供給部P1からの各製品の供給タイミングを制御する場合は、製品供給指令部26から製品供給信号を出力させ、横シール部到達予測時間幅が横シーラ7の噛み込みタイミングに掛からないようなタイミングで、製品供給装置10を制御し、製品供給部P1から製品を供給させる。
【0028】
図3は横シーラの開閉タイミングに対する噛み込みタイミングの設定例を示すタイミングチャートである。
横シーラ7は開いた位置L1で待機しており、横シーラ駆動指令部27からの横シーラ駆動信号によって横シーラ駆動機構が作動して、T1のタイミングで閉じ動作を開始し、T2のタイミングで閉じ動作が終了する。その後、T3のタイミングで開き動作を開始し、T4のタイミングで開き動作が終了する。
【0029】
噛み込みタイミングTcnは、横シーラ7が閉じ動作を行っている間(T1~T2)で、この期間中に製品が横シーラ7の位置にきた際には噛み込みが生じるおそれのあるタイミングとして任意に設定されるが、その終端は横シーラ7の閉じ動作終了時T2に合わせることが好ましい。
供給される製品が小さければ、一対の横シーラ7の間の隙間が小さくなっても通過できるため、噛み込みタイミングTcnは短い期間に設定することができる。一方、大きい製品が供給される場合は、一対の横シーラ7の間の隙間が大きくなければ製品が通過できないため、噛み込みタイミングTcnは長めの期間に設定する必要がある。
【0030】
図4は制御装置による噛み込み回避制御を説明するためのタイミングチャートである。
同図の縦軸は製品供給部P1から落下していく製品の位置を示し、横軸は、製品が供給されてからの時間を示している。
【0031】
製品供給部P1から供給された複数の製品は、製品検知部P2を通過して横シール部P3へ到達し、さらに落下して袋状の包装フィルム1へと充填される。
【0032】
製品供給部P1より製品が供給されてから、その製品が製品検知部P2を通過するまでの時間(検知部通過時間)は、同一製品でもばらつきがある。中央演算処理部22は、この検知部通過時間のばらつきを統計処理してその標準偏差σを求め、さらに、次式(1)により横シール部到達予測時間幅Tdを算出する。
Ttu+μ-k1σ < Td < Ttu+(μ+k2σ) ・・・(1)
【0033】
ここで、「Ttu」は、製品が製品検知部P2を通過してから横シール部P3へ到達するまでの落下時間である。この製品検知部P2から横シール部P3までの製品の落下時間は、同一製品では一定であると想定する。
また、「μ」は、複数回の各製品の供給動作に対して求めた検知部通過時間の平均値である。
【0034】
「k1」、「k2」は標準偏差σに掛かる係数で、製品が落下する時間のばらつきが正規分布する場合、k1=k2=1としたときは、横シール部到達予測時間幅Tdは68.27%の変動幅を包含することができる。また、k1=k2=2としたときは、横シール部到達予測時間幅Tdは95.45%の変動幅を包含することができる。さらに、k1=k2=3としたきは、横シール部到達予測時間幅Tdは99.73%の変動幅を包含することができ、横シーラ7が製品を噛み込むおそれを顕著に低減することができる。「k1」、「k2」が大きな数値になるほど噛み込まない確率が高くなり、良品率が上がるが、機械の運転時間に対しては制限する方向に働く。「k1」、「k2」をどのような数値にするかは製品が落下する時間のばらつき具合や良品率と運転時間を考慮して任意に設定し、必ずしも「k1」と「k2」を同じ値に設定する必要はなく、整数値である必要もない。
【0035】
製品が落下する時間のばらつきが正規分布しない場合でも、ばらつきの分布から製品が落下する時間と確率の関係を求め、任意の確率を設定してk1、k2を算出することもできる。
【0036】
図4に示すように、横シール部到達予測時間幅Tdは、検知部通過時間のばらつき範囲に対応して設定される。この横シール部到達予測時間幅Tdに噛み込みタイミングTcnが掛からないように、横シーラ7の動作タイミング(T1~T2)か、あるいは製品供給部P1からの各製品の供給タイミングのいずれかを制御する。
【0037】
このように、製品供給部P1より各製品が供給されてから当該各製品が製品検知部P2を通過するまでの時間(検知部通過時間)のばらつきを統計処理して、横シール部到達予測時間幅を求めることで、製品の落下速度が供給サイクル毎に大きく不規則に変動しても、その変動に的確に対応して滑らかに運転を調整し、横シーラ7による製品の噛み込みを回避することができる。
【0038】
図5は制御装置による運転サイクル開始タイミングの調整を説明するためのタイミングチャートである。
制御装置20は、運転サイクル開始タイミングを、検知部通過時間のばらつきを踏まえて自動的に変更していく。すなわち、縦型製袋充填機が空袋を製造しないようにするために、製品供給装置10からの製品供給信号を受けてから、所定の時間を経過した後に運転サイクルを開始する。この製品供給信号を受けてから運転サイクルを開始するまでの時間を「落下タイマ」と称している。
【0039】
落下タイマTは、複数回の各製品の供給動作に対して求めた検知部通過時間の平均値「μ」に基づいて算出される。例えば、
図5に示すように、噛み込みタイミングTcnの中央値を基準にして、次式(2)により算出することができ、その演算処理は中央演算処理部22で実行される。
T=(μ+Ttu+Tr/2)-{B+(Ts-Tcn/2)}-T0 ・・・(2)
【0040】
上述したとおり、「Ttu」は、製品が製品検知部P2を通過してから横シール部P3へ到達するまでの落下時間である。
【0041】
縦型製袋充填機は、包装フィルム1に製品を充填可能な状態か否かを製品供給装置10へ知らせるための信号(製品要求信号)を、所定の時間間隔で製品供給装置10へ出力する。この製品要求信号を出力する時間間隔を要求サイクル「Tr」といい、製品供給装置から包装装置に製品を落下させて包装するのに適した所定の値に設定してある。換言すれば、要求サイクルTrは、製品供給の要否を供給装置へ通知する時間間隔である。なお、要求サイクルTrと縦型製袋充填機の運転サイクルとは必ずしも一致しない
【0042】
「B」は、運転サイクルを開始してから横シーラ7の閉じ動作を開始するまでの時間であり、「Ts」は、横シーラ7の閉じ動作時間(T1~T2)である。「Tcn」は、横シーラ7の噛み込みタイミングである。 「T0」は、任意のオフセット時間であり、正負を問わず、0であってもよい。
【0043】
このような時間要素から、
図5に示すとおり、落下タイマTが上式(2)で求めることができる。
「μ」は検知部通過時間の平均値なので、製品が供給され、製袋充填される際に刻々と変動していく。そして、落下タイマTは、この刻々と変動していく検知部通過時間の平均値μにより演算されるので、横シーラ7による製品の噛み込みを回避しながら、無駄のない高速運転を実現することができる。すなわち、検知部通過時間の平均値μが短くなれば、落下タイマTも短くなり、縦型製袋充填機の運転サイクルも早く開始される。
【0044】
上式(2)では落下タイマTは包装サイクルの中央で製品が落下するように要求サイクルTrの中央(1/2)を基準にしているが、製品の落下のばらつきの右端(時間長)を横シーラ7の噛み込みタイミングを基準に算出することもできる。
【0045】
図6に示すように、落下タイマTは、横シーラが噛み込むタイミングを基準にして、検知部通過時間の変動幅kσを含む次式(3)によって求めることもできる。
T=(μ+kσ+Ttu+β)-{B+(Ts-Tcn)} ・・・(3)
【0046】
ここで、「β」は製品が横シール部P3に到達するタイミングの変動幅と横シーラ7が閉じ動作を開始するタイミングT1との間で任意に設定されるゆとり時間である。このゆとり時間を無くし、β=0に設定することもできる。
【0047】
μ+kσ+Ttuにより、検知部通過時間の変動幅を考慮した内容で、製品供給部P1に製品が供給されてから(すなわち、製品供給信号が出力されてから)、当該製品が横シーラ7に到達するまでの時間を求めることができる。
上式(3)によれば、製品が横シーラ7に到達するまでの時間(ゆとり時間βを含む)に対し、運転サイクル開始から横シーラ7の閉じ動作開始までの時間Bを引くことで、落下タイマTが算出される。
この上式(3)により、検知部通過時間の変動に対応して、落下タイマTを自動的に更新することができるので、製品の供給落下にばらつきがあっても、横シーラによる製品の噛み込みを高精度に回避しながら、無駄のない高速運転を実現することができる。
【0048】
さらに前述要求サイクルTrの値は任意に設定することができるが、次式(4)示すように複数回の各製品の供給動作に対して求めた前記検知部通過時間の標準偏差σに係数を掛け、横シーラ7の噛み込みタイミングTcnを追加した次式(4)の時間に設定することもできる。
Tr=2γσ+Tcn ・・・(4)
【0049】
ここで、「γ」は、横シーラの噛み込みタイミングにゆとり等を踏まえて任意に設定される。
【0050】
要求サイクルTrを上式(4)で算出することで、刻々と変動する検知部通過時間の標準偏差σを踏まえた要求サイクルTrになる。検知部通過時間の標準偏差σが小さくなると、要求サイクルタイムTrが小さくなり、製品の供給間隔が短くなるので、運転を高速化することができる。一方、検知部通過時間の標準偏差σが長くなると、要求サイクルTrが長くなり、製品の供給間隔が長くなるので、横シーラ7による製品の噛み込みが生じにくくなる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の構成の範囲で種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。例えば、落下タイマを固定値にし、要求サイクルタイムTrのみを変動させて、縦型製袋充填機から製品供給装置へ製品供給の要否を通知することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1:包装フィルム
2:供給ロール、
3:ファネルチューブ、
4:縦シーラ、
5:繰出しベルト、
6:ホッパ、
7:横シーラ、
10:製品供給装置、
20:制御装置、
21:製品検知信号入力部、
22:中央演算処理部、
23:内部時計、
24:記憶部、
25:運転制御部、
26:製品供給指令部、
27:横シーラ駆動指令部、
28:製品検知センサ