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特許7242219血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/68 20060101AFI20230313BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230313BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230313BHJP
【FI】
A61K35/68
A61P3/10
A23L33/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018163672
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033328
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506141225
【氏名又は名称】株式会社ユーグレナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(72)【発明者】
【氏名】中島 綾香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】菅原 達也
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 祐樹
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062337(JP,A)
【文献】MIKAMI Nana et al.,Effects of sea squirt (Halocynthia roretzi) lipids on white adipose tissue weight and blood glucose,Molecular Medicine Reports,3(3),2010年,449-453,第449頁イントロダクション欄、図3-4
【文献】SHIMADA Ryoko et al.,Oral administration of green algae, Euglena gracilis, inhibits hyperglycemia in OLETF rats, a model,Food Funct.,2016年,7(11),4655-4659,図1, 第4655頁アブストラクト欄
【文献】KATO Shota et al.,Identification and functional analysis of the geranylgeranyl pyrophosphate synthase gene (crtE) and,BMC Plant Biology,2016年,16:4,アブストラクト欄
【文献】MATSUNO Takao et al.,Carotenoids of Sea Squirts. I. New Marine Carotenoids, Halocynthiaxanthin and Mytiloxanthinone from,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,1984年,32(11),4309-4315
【文献】KONISHI Izumi et al.,Suppressive effects of alloxanthin and diatoxanthin from Halocynthia roretzi on LPS-induced expressi,Journal of Oleo Science,2008年,57(3),181-189
【文献】大中 信輝 他,Euglena gracilis EOD-1株が産生するパラミロンの機能性,神鋼環境ソリューション技報,2018年03月,14(2),2-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/68
A61P 3/10
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、
前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、
前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする血糖値上昇抑制剤。
【請求項2】
前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを主成分とし、ゼアキサンチン及びアロキサンチンからなる群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする請求項に記載の血糖値上昇抑制剤。
【請求項3】
前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを10.0~80.0%、ゼアキサンチンを2.0~20.0%、アロキサンチンを0.1~6.0%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値上昇抑制剤。
【請求項4】
高GI食品とともに摂取することで、血糖値の上昇を抑制するために用いられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の血糖値上昇抑制剤。
【請求項5】
少なくとも6週間継続して経口摂取することで、血糖値の上昇を抑制するために用いられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の血糖値上昇抑制剤。
【請求項6】
ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、
前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、
前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする糖尿病抑制剤。
【請求項7】
ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、
前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、
前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用の食品組成物。
【請求項8】
ジアトキサンチンを主成分とし、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含む、血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用のカロテノイド濃縮物を製造する方法であって、
ロテノイド混合物を生産する能力を有するユーグレナを培養する培養工程と、
前記培養工程で得られたユーグレナからカロテノイド抽出物を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された前記カロテノイド抽出物を濃縮して分画し、前記カロテノイド濃縮物を取得する取得工程と、を含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用のカロテノイド濃縮物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物に係り、特に微細藻類由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有する血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、生体内において血液中のブドウ糖濃度は、インスリンの作用によって一定範囲内となるように調整されているところ、糖尿病は、当該ブドウ糖の調整機能が正常に働かなくなって、血液中のブドウ糖濃度が異常に上昇してしまう疾患である。
糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病が存在し、1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊されることで、膵臓からインスリンが分泌されなくなる疾病である。
2型糖尿病は、生活習慣病の一つであると言われており、肥満や過食、運動不足、ストレス等の環境因子によって免疫系の異常が起こることで、インスリンの機能阻害をもたらす、中年以降の比較的高齢な肥満者に対して発症、進行し易い疾病である。
より具体的には、血中や臓器に対しトリグリセリドが蓄積する異常が起こることで、インスリンの分泌異常やインスリン抵抗性をもたらす疾病と言われている。
【0003】
そのような中で、糖尿病、特に日本人の糖尿病患者の90%以上を占めると言われている2型糖尿病に対して多くの治療薬が開発されてはいるものの、臨床結果が十分に得られていないものや、精神症状や心臓に対する副作用を引き起こすもの等が多かった。
そのため、安全性と有効性を兼ね備えた天然由来物質を有効成分とする血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤の開発が求められていた。
【0004】
一方で、カロテノイドは、天然色素として有用であるとともに、抗酸化作用等の種々の有効な作用を有しているため、医薬品、食品、化粧品などの分野において利用価値が高まっているところである。
カロテノイドを用いた糖尿病抑制剤として、例えば特許文献1には、フコキサンチンを主成分とするカロテノイド混合物が開示されている。具体的には、フコキサンチンは、微細藻類由来の抽出物であって抗糖尿病特性を示すこと、また、栄養補助的価値のあるその他のカロテノイドと組み合わせると望ましいことが開示されている。
また、非特許文献1には、微細藻類由来のアスタキサンチンの摂取による生活習慣病の予防効果が開示されている。具体的には、高脂肪食を摂取させたマウスに対してアスタキサンチンを投与することで、当該マウスの内臓脂肪量、空腹時血糖値、及びインスリン値の改善が示唆されたことが報告されている。
【0005】
上記カロテノイドのうち、フコキサンチンやアスタキサンチン以外の特徴的なカロテノイドとして、植物プランクトンや褐藻類、珪藻類などの微細藻類に含まれているジアトキサンチン(Diathoxanthin、CAS登録番号:31063-73-7)が存在する。
ジアトキサンチンは、キサントフィル類の一種であって、高分子内に三重結合をもつユニークな構造を有するカロテノイドである。
ジアトキサンチンについては、他のカロテノイドと同様に、抗酸化作用を有することが想定されるものの、大量に得ることが比較的難しく、非常に高価であったことから、その機能性についてはあまり解明されていなかった。
そこで、フコキサンチンやアスタキサンチン以外のカロテノイドとして、ジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド混合物についての機能や、機能性発現のメカニズムの解明、ひいては、これら物質の利用法等の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2018-512432号公報
【0007】
【文献】Yinhua Ni et al.,“Astaxanthin prevents and reverses diet-induced insulin resistance andsteatohepatitis in mice: A comparison with vitamin E”, Scientific Reports, 5:17192 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、新規な血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、ジアトキサンチンを主成分とする微細藻類由来のカロテノイド混合物の新規な利用方法となる血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、キサントフィル、特にジアトキサンチンを主成分とする微細藻類由来のカロテノイド混合物が、血糖値の上昇を抑制させる作用を有することを見出した。
【0010】
従って、前記課題は、本発明によれば、ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする血糖値上昇抑制剤により解決される。
た、前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを主成分とし、ゼアキサンチン及びアロキサンチンからなる群から選択される1以上の化合物を含むと良い。
また、前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを10.0~80.0%、ゼアキサンチン2.0~20.0%、アロキサンチンを0.1~6.0%含むと良い。
【0011】
また、高GI食品とともに摂取することで、高GI食品摂取後の血糖値の上昇を抑制するために用いられると良い。また、少なくとも6週間継続して経口摂取することで、血糖値の上昇を抑制するために用いられると良い。
上記において、本カロテノイド混合物を高GI食品とともに摂取することによって、高GI食品を摂取した場合で効に血糖値上昇を抑制することができる。
ここで「高GI食品」とは、GI(Glycemic Index:血糖指数)が高い食品のことを意味し、「GI」とは、炭水化物摂取後の血糖値上昇速度の指標である。
GIが高い程、食品摂取後に急激に血糖値が上昇するところ、当該血糖値が急激に上昇すると、膵臓から多量のインスリンが急激に分泌されることとなる。当該インスリンは、血糖をエネルギーへと変換する一方で、過剰な糖質を脂肪組織に蓄える。そのため、高GI食品は、糖尿病を含む生活習慣病等の観点からも極力避けられるべきである。
【0012】
また、前記課題は、ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする糖尿病抑制剤によっても解決される。
また、前記課題は、ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、前記カロテノイド混合物がジアトキサンチンを主成分とするカロテノイド濃縮物であり、前記カロテノイド濃縮物は、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用の食品組成物によっても解決される。
また、前記課題は、ジアトキサンチンを主成分とし、ジアトキサンチンを5.0~80.0%含む、血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用のカロテノイド濃縮物を製造する方法であって、ロテノイド混合物を生産する能力を有するユーグレナを培養する培養工程と、前記培養工程で得られたユーグレナからカロテノイド抽出物を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された前記カロテノイド抽出物を濃縮して分画し、前記カロテノイド濃縮物を取得する取得工程と、を含むことを特徴とする血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用のカロテノイド濃縮物の製造方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物を提供することができる。
また、ジアトキサンチンを主成分とする微細藻類由来のカロテノイド混合物の新規な利用方法となる血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ユーグレナ由来のカロテノイド混合物におけるHPLC定量分析のクロマトグラムである(その1)。
図2】ユーグレナ由来のカロテノイド混合物におけるHPLC定量分析のクロマトグラムである(その2)。
図3】カロテノイド混合物における中性脂質のTLC分析結果である。
図4】カロテノイド混合物における極性脂質のTLC分析結果である。
図5】各群の飼料をマウスに6週間与えたときの体重変化を比較したグラフである。
図6】各群の飼料をマウスに6週間与えた後の肝臓重量を比較したグラフである。
図7】各群の飼料をマウスに6週間与えた後の、血中の総コレステロール値を比較したグラフである。
図8】各群の飼料をマウスに6週間与えた後の、血中のグルコース値を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図1図8を参照しながら説明する。
本実施形態は、微細藻類由来のカロテノイド混合物を有効成分として含有し、前記カロテノイド混合物がキサントフィル(フコキサンチン、アスタキサンチンを除く)を主成分とすることを特徴とする血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤、及び食品組成物に関するものである。
また、キサントフィルを主成分とするカロテノイド混合物を有効成分とする血糖値上昇抑制剤を製造する方法であって、カロテノイド混合物を生産する能力を有する微細藻類を培養する培養工程と、得られた微細藻類からカロテノイド混合物を取得するカロテノイド混合物取得工程と、を含むことを特徴とする製造方法の発明に関するものである。
【0016】
<微細藻類由来のカロテノイド混合物>
「微細藻類」とは、主に水中で光合成を行うことによって生活する数μmから数十μm程度の大きさの単細胞または多細胞体の植物である。
微細藻類としては、ラン藻、緑藻、ミドリムシ藻(ユーグレナ)、車軸藻、炎藻、黄藻、褐藻、紅藻、珪藻、円石藻、渦べん毛藻、真眼点藻、黄金色藻、シアノバクテリア、またはトレボキシアなどが挙げられる。
本実施形態においては、ミドリムシ藻(ユーグレナ)を用いることが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0017】
「ユーグレナ」とは、動物学や植物学の分類でユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)の微生物とは、動物学では原生動物門(Protozoa)の鞭毛虫綱(Mastigophorea)、植物鞭毛虫亜綱(Phytomastigophorea)に属するミドリムシ目(Euglenida)のユーグレノイディナ亜目(Euglenoidina)に属する微生物である。一方で、植物学ではミドリムシ植物門(Euglenophyta)のミドリムシ藻類綱(Euglenophyceae)に属するミドリムシ目(Euglenales)に属している。
【0018】
ユーグレナ属の微生物(ユーグレナ細胞)としては、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)、特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)NIES-49株などを用いることができる。そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM-ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株由来のβ-1,3-グルカナーゼを用いても良く、Euglena intermedia、Euglena piride、その他のユーグレナ類を用いても良い。
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
本実施形態において、ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)を用いることが好ましく、特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株、またはNIES-49株を用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0019】
「ユーグレナ細胞の培養」については、培養液を用いて行うことができる。培養液には栄養源として炭素源が添加されるが、炭素源には無機炭素源(CO、NaHCO、NaCO等)と有機炭素源(グルコース等)がある。本実施形態において用いられる培養液としては、栄養源としてグルコースなどの有機炭素源を含まない独立栄養培地を用いることが好ましいがこれに限定されるものではない。例えば、窒素源、リン源、ミネラルなどの栄養塩類を添加した培養液、例えば、Cramer-Myers培地や、改変Cramer-Myers培地((NHHPO 1.0g/L,KHPO 1.0g/L,MgSO・7HO 0.2g/l,CaCl・2HO 0.02g/l,Fe(SO・7HO 3mg/l,MnCl・4HO 1.8mg/l,CoSO・7HO 1.5mg/l,ZnSO・7HO 0.4mg/l,NaMoO・2HO 0.2mg/l,CuSO・5HO 0.02g/l,チアミン塩酸塩(ビタミンB1) 0.1mg/l,シアノコバラミン(ビタミンB12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NHHPOは、(NHSOやNHaqに変換することも可能である。
【0020】
培養液のpHについては、好ましくは2以上、また、その上限は、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下である。pHを酸性側にすることにより、光合成微生物は他の微生物よりも優勢に生育することができるため、コンタミネーションを抑制することができる。
ユーグレナ細胞の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行っても良い。
また、ユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行っても良い。
ユーグレナ細胞の分離は、例えば培養液の遠心分離又は単純な沈降によって行われる。
【0021】
「カロテノイド混合物」とは、キサントフィルの一種を主成分とし、また、キサントフィルにおけるその他の化合物からなる群から選択される1種類以上の化合物を副成分として含む混合物である。
「キサントフィル」とは、カロテノイドのうち水酸基、カルボニル基又はエポキシド基の形で酸素を含む色素の総称であって、具体的には、アンテラキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、β-クリプトキサンチン、ジアジノキサンチン、ジアトキサンチン、ジノキサンチン、フラボキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ネオキサンチン、ロドキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、及びゼアキサンチンがキサントフィルに含まれる。
【0022】
本実施形態のカロテノイド混合物は、具体的には、ジアトキサンチンを主成分とし、ゼアキサンチン及びアロキサンチンからなる群から選択される1以上の化合物を副成分として含む混合物であって、より好ましくは、ゼアキサンチン及びアロキサンチンの両方を副成分として含む混合物であると良い。
なお、カロテノイド混合物は、これら以外のカロテノイド(キサントフィル)をさらに含んでいても良い。
【0023】
「ジアトキサンチン」とは、下記式(化1)に示すように、高分子内に三重結合をもつ構造を有するカロテノイドである(Diathoxanthin、CAS登録番号:31063-73-7、化学式C4054、分子量:566.87)。
ジアトキサンチンは、植物プランクトンや褐藻類、珪藻類等の微細藻類に含まれており、本実施形態では、ユーグレナから取得されている。
【0024】
【化1】
【0025】
「ゼアキサンチン」とは、下記式(化2)に示す構造を有するカロテノイドであって(Zeaxanthin、CAS登録番号:144-68-3、化学式C4054、分子量:568.89)、食用とされる野菜のほか、細菌類やスピルリナ属などの藻類に含まれており、日常の食生活でも多量に摂取されている成分である。
ゼアキサンチンは、食品着色用として利用されているほか、抗肥満作用や抗癌作用、その誘導体の抗酸化作用があるとされている。
【0026】
【化2】
【0027】
「アロキサンチン」とは、下記式(化3)に示すように、高分子内に三重結合を2個もつ構造を有するカロテノイドであって(Alloxanthin、CAS登録番号:28380-31-6、化学式C4052、分子量:564.85)、クリプト藻類に含まれている。
【0028】
【化3】
【0029】
本実施形態のカロテノイド混合物は、450nmを検出波長とする検出器を用いた液体クロマトグラフィー定量分析でのクロマトグラムにおけるピーク面積の比率として、カロテノイド混合物の総重量100%に対して、ジアトキサンチンが5.0~80.0%、ゼアキサンチンが1.0~20.0%、アロキサンチンが0.1~10.0%含まれていると良い。
また、好ましくはジアトキサンチンが10.0~80.0%、ゼアキサンチンが2.0~20.0%、アロキサンチンが0.1~6.0%含まれていると良い。
【0030】
<カロテノイド混合物の製造方法>
本実施形態のカロテノイド混合物は、上記培養条件でユーグレナを培養する「培養工程」と、ユーグレナを分離する「分離工程」と、分離したユーグレナを粉砕する「粉砕工程」と、粉砕したユーグレナを抽出溶媒に分散させる「分散工程」と、分散したユーグレナからカロテノイド抽出物を抽出する「抽出工程」と、カロテノイド抽出物からジアトキサンチンを含むカロテノイド画分(カロテノイド混合物)を取得する「取得工程」と、を行う製造方法によって製造される。
【0031】
まず、培養工程(ステップS1)では、上記培養条件でユーグレナを培養する。具体的には、独立培養条件でユーグレナを培養する。
次に、分離工程(ステップS2)では、上記培養工程で培養したユーグレナを分離する。ユーグレナの分離は、具体的には、培養液の遠心分離または単純な沈降、膜濾過等の公知の分離方法によって行われるが、特に限定されるものではない。
分離されたユーグレナを洗浄後、公知の乾燥方法(真空凍結乾燥、噴霧乾燥、加熱真空乾燥等)で乾燥することで、ユーグレナの藻体乾燥物を調製してもよい。
【0032】
次に、粉砕工程(ステップS3)では、上記分離工程で分離したユーグレナを、公知の粉砕方法で粉砕する。具体的には、分離したユーグレナに抽出溶媒を加え、超音波破砕機等により粉砕する方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。
次に分散工程(ステップS4)では、上記粉砕工程で粉砕したユーグレナ細胞を抽出溶媒に分散させ、分散液を得る。
分散工程で用いる抽出溶媒としては、具体的には、アセトニトリル等の親油性の極性溶媒を用いることができる。
【0033】
次に、抽出工程(ステップS5)では、上記分散工程で抽出溶媒に分散させたユーグレナから、カロテノイド抽出物を抽出する。
抽出条件は、特に限定されないが、加熱をしたり、超音波等の外部刺激を加えたり、振盪したりしてカロテノイドの抽出を促進することも可能である。
【0034】
最後に、取得工程(ステップS6)では、上記抽出工程で得られたカロテノイド抽出物からジアトキサンチンを含むカロテノイド画分(カロテノイド混合物)を取得する。
分画の方法としては、具体的には、適当な分離手段(例えば、逆相又は順相の高速液体クロマトグラフィー分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマト法等)によって、ジアトキサンチン含有量の高い画分を分画して得る方法が挙げられる。あるいは、ジアトキサンチンを含むカロテノイド抽出物をろ過し、抽出液と残渣に分離し、抽出液を濃縮して液体クロマトググラフィーにより分画する方法が挙げられる。
【0035】
<用途、用法及び用量>
本実施形態のカロテノイド混合物は、糖尿病患者、糖尿病を発症したヒト以外の動物に投与されることで、糖尿病(特に2型糖尿病)の治療剤として用いることができる。
また、糖尿病を発症する前のヒト、糖尿病予備軍のヒト、空腹時高血糖のヒト、食後高血糖のヒト、これらヒト以外の動物を対象とした糖尿病予防剤(特に2型糖尿病予防剤)、糖尿病抑制剤(特に2型糖尿病抑制剤)として用いることもできる。
また、妊娠しているヒトを対象とした妊娠糖尿病予防剤、妊娠糖尿病抑制剤として用いることもできる。
また、糖尿病に伴う合併症予防剤、合併症抑制剤、合併症治療剤として用いることもできる。
【0036】
本実施形態のカロテノイド混合物は、血糖値上昇抑制剤として用いることができる。
好ましくは、食品(特にGI食品)と同時に摂取することで、血糖値の上昇を抑制する血糖値上昇抑制剤として用いることができる。
また、好ましくは、一定の期間継続して経口摂取することで、血糖値の上昇を抑制する血糖値上昇抑制剤として用いることができる。
【0037】
本実施形態のカロテノイド混合物は、血糖値上昇抑制用又は糖尿病抑制用の医薬組成物、食品組成物等の組成物等として利用することができる。
医薬の分野では、当該作用を有効に発揮できる量のカロテノイド混合物と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
当該医薬組成物は、内用的又は外用的に適用されても良く、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤又は散剤等の固形製剤のほか、液剤、軟膏剤やゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
【0038】
食品の分野では、血糖値上昇抑制作用又は糖尿病抑制作用を生体内で発揮できる有効な量のカロテノイド混合物を食品素材として各種食品に配合することで、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
すなわち、本発明は、食品分野において、血糖値上昇抑制作用等と表示された食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
【0039】
なお、「特定保健用食品」とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健用途に適する旨を表示可能なものである。
「栄養機能食品」とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。
「機能性表示食品」とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
【0040】
本実施形態の血糖値上昇抑制剤、糖尿病抑制剤の用量としては、例えば、ヒト又はヒト以外の動物に対して、食品(特にGI食品)と同時に所定の摂取量となるように経口摂取させると良い。
【実施例
【0041】
<実施例1>
ユーグレナ由来のカロテノイド混合物を、以下の手順によって調製した。
1)ユーグレナ・グラシリス粉末((株)ユーグレナ製)20kgにアセトニトリル20Lを加え、超音波破砕機にて破砕することで破砕抽出混合物を得た。
2)破砕抽出混合物をろ過し、抽出液と残渣に分離した。
3)ロータリーエバポレーターを用いて当該抽出液を濃縮し、中圧液体クロマトググラフィーにより分画した。分画は、液体クロマトグラフィー装置を用い、カラムにはODSカラム(ジーエルサイエンス社製、InertSustain C18)を用い、溶離液としてアセトニトリルを用い、検出波長270nmで行った。
4)HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて、分画された各々の画分からジアトキサンチンを含むカロテノイド画分を回収し、エバポレーターで濃縮した。
上記方法によって、ジアトキサンチンを含むカロテノイド画分となる赤褐色の粉末0.4gを得た。当該粉末をカロテノイド混合物として用いた。
【0042】
<試験1:カロテノイド混合物のHPLC定量分析>
HPLCを用いて、実施例1のカロテノイド混合物の定量分析を以下の条件で行った。
カロテノイド混合物0.1gをアセトニトリルに溶解させて、ろ過したものを測定試料溶液とした。
高速液体クロマトグラフィー装置を用い、ポンプはLC-6AD(島津製作所製)、検出器はPDA検出器(SPD-M20A)、カラムはODSカラム(東ソー社製、TSKgel ODS-80Ts)を用いた。
移動相として、A液はアセトニトリルとメタノールと水の混合溶媒(75:15:10の容積比で混合された混合溶媒)、B液は酢酸エチルとメタノールの混合溶媒(70:30の容積比で混合された混合溶媒)を用いた。
カラム温度40度、流速1.0ml/min、検出波長450nmで測定を行った。
【0043】
試験1の試験結果として、実施例1のクロマトグラムを図1図2に示す(n=2)。
紫外可視吸収スペクトル測定や質量分析法、クロマトグラムにおける保持時間から、ジアトキサンチンのほか、ゼアキサンチン及びアロキサンチンの存在を推定した。
上記定量分析でのクロマトグラムにおける、ジアトキサンチン、ゼアキサンチン及びアロキサンチンに対応する各ピーク面積の割合(%)を求めた。
各ピーク面積の割合(%)は、検出された全成分(全てカロテノイドと推定される)のピーク面積の合計100%に対する割合(%)を求めた。
図1のクロマトグラム(実施例1-1)では以下の通りであった。
ピーク番号1:アロキサンチン 0.4%
ピーク番号2:ジアトキサンチン 13.3%
ピーク番号3:ゼアキサンチン 2.1%
図2のクロマトグラム(実施例1-2)では、以下の通りであった。
ピーク番号1:アロキサンチン 5.6%
ピーク番号2:ジアトキサンチン 75.9%
ピーク番号3:ゼアキサンチン 18.4%
以下の試験では、実施例1-1のカロテノイド混合物を用いた。
【0044】
<試験2:カロテノイド混合物のTLC分析(中性脂質)>
TLC(薄層クロマトグラフィー)を用いて、実施例1のカロテノイド混合物における中性脂質のTLC分析を以下の手順で行った。
カロテノイド混合物(0.01mg/ml、0.1mg/ml、1mg/ml)及び標品(オレイン酸、トリオレイン、コレステロールパルミテート、コレステロール、ジアトキサンチン、ゼアキサンチン)を、それぞれシリカゲルプレートにスポットした。
ヘキサンとジエチルエーテルと酢酸の混合溶媒(65:35:1の容積比で混合された混合溶媒)を用いて展開した。
写真をデジタルカメラで撮影した後、シリカゲルプレートを硫酸銅発色液に浸し、ホットプレートを用いて180℃で5~10分加熱して発色させた。
なお、カロテノイド混合物の質量は、既知量のジアトキサンチン標準品と比較することで定量し、ジアトキサンチンの液体培地1Lあたりの質量(mg/ml)とした。
【0045】
試験2のTLC分析結果を図3に示す。各サンプルにおける硫酸銅発色前後のTLC分析結果から、カロテノイド混合物に対して中性脂質の混入がないことが分かった。
【0046】
<試験3:カロテノイド混合物のTLC分析(極性脂質)>
TLC(薄層クロマトグラフィー)を用いて、実施例1のカロテノイド混合物における極性脂質のTLC分析を以下の手順で行った。
カロテノイド混合物(0.01mg/ml)及び標品(ホスファチジルコリン、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、ジアトキサンチン、ゼアキサンチン)を、それぞれシリカゲルプレートにスポットした。
クロロホルムとメタノールと水の混合溶媒(64:16:2の容積比で混合された混合溶媒)を用いて展開した。
写真をデジタルカメラで撮影した後、シリカゲルプレートを硫酸銅発色液に浸し、ホットプレートを用いて180℃で5~10分加熱して発色させた。
【0047】
試験3のTLC分析結果を図4に示す。各サンプルにおける硫酸銅発色前後のTLC分析結果から、カロテノイド混合物に対して極性脂質の混入がないことが分かった。
実施例1のクロマトグラムを図1に示す。
【0048】
<試験4:高脂肪食マウスを用いたカロテノイド混合物の影響>
マウスに対して下記表1に示す飼料組成にてカロテノイド混合物を経口摂取させたときの「体重変化」、「肝臓重量」、「血中の総コレステロール量」、及び「血中のグルコース量」を測定する試験を行った。
本試験では、C57BL/6Jマウス(雄6週齢、体重20-23g)を18匹用いた(n=6)。飼育条件については、室温24±2度、明暗周期12時間に設定した。
マウスに対して、まず固形飼料と水を自由摂取させて、10日間の予備飼育によって飼育環境に順応させた。予備飼育終了後、下記表1に示す飼料組成にて、1)AIN93G基本食群(以下、「コントロール群」)、2)基本食に脂質を重量比30%配合した「高脂肪食群」、3)カロテノイド混合物を重量比0.04%配合した「高脂肪食+カロテノイド群」の計3群に分けて、群ごとに異なる飼料を与えて6週間自由摂食にて試験飼育を行った。
【0049】
【表1】
※合計の値は、四捨五入することで1000.00とした。
飼料中のカロテノイド混合物は、以下の手順で大豆油に溶解させて配合した。
カロテノイド混合物をナスフラスコにエタノールとともに入れて溶解させた。70度に加熱した精製大豆油に第3ブチルヒドロキノンを溶解させ、常温に戻した後、エタノールに溶解させたカロテノイド混合物とよく混合させた。ロータリーエバポレーターを用いてエタノールを留去し、ナスフラスコに付着したカロテノイドをエタノールで再融解し、カロテノイドが完全に精製大豆油に混ざるまで繰り返した。更に、精製大豆油を窒素ガスでバブリングしてエタノールを完全に除去し、飼料にカロテノイド混合物を混ぜ込んだ。
【0050】
飼育期間中は毎日体重の測定を行った。6週間の試験期間終了後、一晩絶食させたマウスをイソフルラン麻酔下で開腹し、肝臓を採取するとともに、下大静脈より採血した。
採取した肝臓を生理食塩水で洗浄した後、肝臓重量を測定した。
また採決した血液を遠心分離後(2000rpm、15分間、4度)、得られた血を採取して80度で保存した。そして、血中の総コレステロール値、グルコース値を定量キット(和光純薬工業社製)を用いて定量した。
【0051】
試験結果として、コントロール群と、高脂肪食群と、高脂肪食+カロテノイド群との、「体重変化」、「肝臓重量」、「血中総コレステロール値」及び「血中グルコース値」をそれぞれ比較したグラフを図5図6図7図8に示す。また、それぞれの数値を下記表2に示す。
なお、単位「mg/dL」とは、血液1dLあたりの総コレステロール値(mg)、グルコース値(mg)を意味している。
【表2】
【0052】
飼育期間中の体重については、概ね全期間、「高脂肪食群」、「高脂肪食+カロテノイド群」のマウスの体重が、「コントロール群」よりも増加している傾向が見られた。また、「高脂肪食+カロテノイド群」の体重が、「高脂肪食群」よりも低くなっている傾向が見られた。
また、飼育期間6週間後の体重については、「高脂肪食群」、「高脂肪食+カロテノイド群」のマウスの体重が、「コントロール群」よりも有意に増加していることが認められた(P<0.05)。また、「高脂肪食+カロテノイド群」の体重が、「高脂肪食群」よりも低くなっている傾向が見られた。
【0053】
飼育期間6週間後の肝臓重量については、「高脂肪食群」のマウスの肝臓重量が、「コントロール群」よりも増加している傾向が見られた。一方で、「高脂肪食+カロテノイド群」の肝臓重量が、「コントロール群」と比較して増加しておらず、同等である傾向が見られた。
【0054】
飼育期間6週間後の血中総コレステロール値については、「高脂肪食群」、「高脂肪食+カロテノイド群」のマウスの血中総コレステロール値が、「コントロール群」よりも増加している傾向が見られた。また、「高脂肪食+カロテノイド群」の血中総コレステロール値が、「高脂肪食群」よりも低くなっている傾向が見られた。
【0055】
飼育期間6週間後の血中グルコース値については、「高脂肪食群」のマウスの血中グルコース値が、「コントロール群」よりも有意に増加していることが認められた(P<0.05)。一方で、「高脂肪食+カロテノイド群」の血中グルコース値が、「コントロール群」と比較して増加しておらず、同等であることが認められた(P<0.05)。
【0056】
上記のことから、飼育期間中の体重変化、また飼育期間6週間後の体重、肝臓重量、及び血中総コレステロール値の試験結果より、マウスに対し高脂肪食(例えば、高GI食品)と一緒に実施例1のカロテノイド混合物を経口摂取させることで、高脂肪食摂取後の体重(特に体脂肪)、肝臓重量(特に肝臓脂肪)、及び血中コレステロール値の上昇を抑制する作用が示唆された。
【0057】
また、飼育期間6週間後の血中グルコース値の試験結果より、マウスに対し高脂肪食と一緒に実施例1のカロテノイド混合物を経口摂取させることで、高脂肪食摂取後の血糖値の上昇を抑制する作用があることが分かった。
なお「血糖値」とは、血液中のグルコース濃度を意味し、血液1dL中にグルコースが何mg含まれているかを表す値であり、本試験の血中グルコース値に相当するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8