(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】電力変換装置及び分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230313BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/46
(21)【出願番号】P 2018190412
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-230455(JP,A)
【文献】特開2018-117508(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038219(WO,A1)
【文献】特開2000-224769(JP,A)
【文献】特開2018-113839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定価格での電力買取が認定された少なくとも1つの認定電源と、所定価格での電力買取が認定されていない少なくとも1つの非認定電源とを含む複数の分散型電源を商用電源系統に連系させるための電力変換装置であって、
前記複数の分散型電源のそれぞれに対応するように設けられた複数の入力ユニットであって、それぞれ、入力端子と、該入力端子への入力を変換してDCリンク線に出力するコンバータとを含む複数の入力ユニットと、
前記DCリンク線に供給された直流を交流に変換するインバータと、
前記非認定電源の中から逆潮流させる電源である逆潮流可電源を示す逆潮流指示信号を外部から受けた場合に、商用電源系統に逆潮流される電力が前記逆潮流可電源からの供給電力以下になるように、前記複数の入力ユニット及び前記インバータのうちの少なくとも1つを制御する制御部とを備えている
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記複数の入力ユニットのうち、前記逆潮流可電源からの入力を受ける第1入力ユニットに前記逆潮流指示信号に基づく出力をさせる一方で、前記第1入力ユニット以外の入力ユニットの出力を停止させる制御を行う
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記電力変換装置に接続された負荷での消費電力がある場合に、前記複数の入力ユニットのうち、前記逆潮流可電源からの入力を受ける第1入力ユニットに前記逆潮流指示信号に基づく出力をさせ、前記第1入力ユニット以外の入力ユニットからの供給電力の総和が前記消費電力以下になるように制御を行う
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記逆潮流指示信号に基づいた逆潮流の実行結果情報を外部に通知することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記制御部は、前記逆潮流指示信号を受けた場合において、前記逆潮流可電源が商用電源系統に逆潮流するための電力を供給できない状態にあるときに、逆潮流不可信号を外部に通知する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
所定価格での電力買取が認定された少なくとも1つの認定電源と、所定価格での電力買取が認定されていない少なくとも1つの非認定電源とを含む複数の分散型電源と、
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の電力変換装置とを備える
ことを特徴とする分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分散型電源を備えた分散型電源システム、及び分散型電源システムへの適用が可能に構成された電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、逆潮流することが許可されたFIT(Feed-in Tariff)認定設備(例えば、太陽光発電手段)と、逆潮流が許可されていない非FIT認定設備(例えば、蓄電池)とが併存するハイブリッド型の分散型電源システムにおいて、非FIT認定設備からの逆潮流が禁止されている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のパワーコンディショナでは、逆潮流不可電源(非FIT認定設備に相当)からの出力電力が商用電源系統に逆潮流しないように負荷追従型の制御をすることにより、上記の禁止要件を満たすようにしている。
【0004】
特許文献2には、各分散電源(逆潮流許可電源及び逆潮流不可電源)から入力されるDC電圧を適切なDC電圧に昇圧して単一ノードに統合し、その電力をインバータでAC/DC変換する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-120452号
【文献】特開2015-133870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、FIT認定設備と非FIT認定設備とが混在するハイブリッド型の分散型電源システムにおいて、逆潮流が禁止されている非FIT認定設備からの売電を可能とする仕組みづくりが進んでいる。ここで、非FIT認定設備からの売電を可能とするためには、非FIT認定設備の逆潮流量を個別に把握する必要がある。ところが、特許文献2のような構成にしてFIT認定設備からの出力と非FIT認定設備からの出力をDCリンク線で接続した場合、それぞれの逆潮流電力を正確に測定することができないという問題がある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、DCリンク線の利便性を維持しつつ、分散型電源の供給電力を区分できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る電力変換装置は、所定価格での電力買取が認定された少なくとも1つの認定電源と、所定価格での電力買取が認定されていない少なくとも1つの非認定電源とを含む複数の分散型電源を商用電源系統に連系させるためのものであって、前記複数の分散型電源のそれぞれに対応するように設けられた複数の入力ユニットであって、それぞれ、入力端子と、該入力端子への入力を変換してDCリンク線に出力するコンバータとを含む複数の入力ユニットと、前記DCリンク線に供給された直流を交流に変換するインバータと、前記非認定電源の中から逆潮流させる電源である逆潮流可電源を示す逆潮流指示信号を外部から受けた場合に、商用電源系統に逆潮流される電力が前記逆潮流可電源からの供給電力以下になるように、前記複数の入力ユニット及び前記インバータのうちの少なくとも1つを制御する制御部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この態様によると、制御部は、非認定電源の中から逆潮流させる電源である逆潮流可電源を示す逆潮流指示信号を外部から受けた場合に、商用電源系統に逆潮流される電力が逆潮流可電源からの供給電力以下になるように制御している。これにより、逆潮流可電源以外の電源からの電力供給がされないので、逆潮流可電源から逆潮流される電力を区分することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、DCリンク線の利便性を維持しつつ、分散型電源の供給電力を区分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】分散型電源システムの全体構成を示すブロック図
【
図2】分散型電源システムの動作を示すフローチャート
【
図3A】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図3B】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図3C】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図5】分散型電源システムの動作の他の例を示すフローチャート
【
図6A】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図6B】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図6C】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図7A】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図7B】分散型電源システムの動作を説明するための図
【
図7C】分散型電源システムの動作を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
図1は実施形態に係る分散型電源システムの構成例を示した図である。
【0014】
-分散型電源システムの構成-
分散型電源システム1は、複数の分散型電源2と、複数の分散型電源2から供給された直流電力を交流電力に変換して出力するパワーコンディショナ3(電力変換装置に相当)とを備えている。
【0015】
図1では、複数の分散型電源2として、太陽光発電手段21と、蓄電池22~24とを備えた例を示している。なお、本実施形態では、太陽光発電手段21は、所定の固定価格での電力買取が認定されているFIT認定設備(認定電源に相当:以下、認定電源という)であるものとして説明する。また、蓄電池22~24は、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池等の充放電可能な二次電池であり、所定の固定価格での電力買取が認定されていない非FIT認定設備(非認定電源に相当:以下、非認定電源という)であるものとして説明する。なお、現在、認定電源と非認定電源は逆潮流に関する規定が互いに異なり、認定電源は商用電源系統5への逆潮流が認められ、非認定電源では逆潮流が禁止されている。一方で、非認定電源からの売電を可能とする仕組みづくりが進んでおり、非認定電源からの売電ができるようになった場合に、認定電源の発電電力の売電先と、非認定電源の売電先とが異なる可能性がある。そうすると、認定電源からの逆潮流電力と、非認定電源からの逆潮流電力とを区分することが求められる。
【0016】
パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2を、送電線6を介して商用電源系統5に連系させることができるように構成されている。また、送電線6に接続された家庭用機器や産業用機器等の負荷9(以下、単に負荷9ともいう)に電力が供給できるように構成されている。すなわち、パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2から供給された電源電力を、商用電源系統5に逆潮流したり、負荷9に供給したりすることができるようになっている。
【0017】
パワーコンディショナ3には、複数の入力端子Tiと、出力端子Toが設けられている。複数の入力端子Tiは、それぞれに分散型電源2が接続できるように構成されている。
【0018】
パワーコンディショナ3の各入力端子Tiには、それぞれ、入力端子Tiから受けた直流を昇圧または降圧して出力するDC/DCコンバータ31が接続されている。換言すると、パワーコンディショナ3は、複数の分散型電源2のそれぞれに対応するように設けられた複数の入力ユニット32を含み、各入力ユニット32が、入力端子TiとDC/DCコンバータ31とを含んでいる。そして、複数の入力ユニット32(DC/DCコンバータ31)の出力が、共通のDCリンク線DCLに接続されることで、統合されている。
図1では、複数の入力ユニット32として、4つの入力ユニット32が設けられている例を示している。なお、複数の入力ユニット32(入力端子Ti、DC/DCコンバータ31)には、同じ構成のものを適用することができるので、特に区別する必要がない場合、同一の符号を付して説明する場合がある。
【0019】
図1では、複数の入力ユニット32のうちの、入力ユニット32aに太陽光発電手段21が接続され、入力ユニット32b~32dにそれぞれ蓄電池22~24が接続されている例を示している。
【0020】
具体的に、入力ユニット32aは、入力端子Tiaに接続された太陽光発電手段21からの出力を受け、DC/DCコンバータ31aでDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。入力ユニット32bは、入力端子Tibに接続された蓄電池22からの出力を受け、DC/DCコンバータ31bでDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。入力ユニット32cは、入力端子Ticに接続された蓄電池23からの出力を受け、DC/DCコンバータ31cでDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。入力ユニット32dは、入力端子Tidに接続された蓄電池24からの出力を受け、DC/DCコンバータ31dでDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する。このような構成にすることにより、分散型電源2間の電力のやり取りができるようになる。例えば、太陽光発電手段21での発電電力を、DCリンク線DCLを介して蓄電池22~24に蓄電することができる。また、蓄電池22~24間での電力のやりとり(充放電)が可能となる。なお、本実施形態では、「接続」とは、直接接続に限定されるのもではなく、電気的な接続全般を指すものとする。例えば、抵抗やリレー等の受動素子等を介して相互間が電気的に接続されているものを含む概念である。
【0021】
さらに、パワーコンディショナ3は、インバータ34と、制御部35とを備えている。インバータ34は、DCリンク線DCLから供給される直流を交流に変換し、出力端子Toに出力する。なお、DC/DCコンバータ31及びインバータ34の具体的な回路構成は、従来技術を適用することができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0022】
制御部35は、パワーコンディショナ3の全体動作を制御する機能を有し、例えば、マイクロコンピュータで実現することができる。制御部35は、複数の入力ユニット32や、インバータ34を制御することで逆潮流電力を制御することができるように構成されている。具体的に、制御部35は、DC/DCコンバータ31a~31dを制御することで、太陽光発電手段21や蓄電池22~24からDCリンク線DCLに出力される電力量を制御することができる。同様に、制御部35は、PWM(Pulse Width Modulation)制御等により、インバータ34の出力を制御する。
【0023】
また、パワーコンディショナ3には、外部と通信するための通信端子Tcが設けられている。パワーコンディショナ3は、通信端子Tcを介してインターネット等のネットワークNWに接続され、そのネットワークNWを経由して外部の電力事業者8等のアグリゲータに接続されている。なお、本実施形態のパワーコンディショナ3は、外部(例えば、電力事業者8)から受けた信号に基づく動作に特徴があり、その具体的な動作については、後述する「分散型電源システムの動作」において説明する。
【0024】
出力端子Toは、送電線6を介して商用電源系統5に接続されている。また、送電線6には負荷9が接続されている。すなわち、パワーコンディショナ3は、送電線6を介して商用電源系統5に連系される。そして、分散型電源システム1では、商用電源系統5及び/またはパワーコンディショナ3から送電線6を介して負荷9に電力が供給されるようになっている。さらに、送電線6には、インバータ34から商用電源系統5に流れる電流を測定するための電流測定手段7が設けられている。電流測定手段7は、例えば、CT(Current Transformer)センサで実現される。
【0025】
-分散型電源システムの動作(1)-
以下において、分散型電源システム1の動作について、
図2に示すフローチャートにしたがって説明する。ここでは、逆潮流電力を供給する所定の電源からの電力供給に、他電源からの電源供給を加えることで、負荷の消費電力をまかなったり、逆潮流する電力量(以下、逆潮流量ともいう)を増やしたりする、いわゆる「押し上げ動作」をしない場合の例を示している。
【0026】
以下の説明では、太陽光発電手段21(図面ではPSと記載)からの供給電力がP1、蓄電池22~24からの放電電力がそれぞれP2~P4であるものとして説明する。また、ここでは、負荷9での消費電力PLが太陽光発電手段21からの供給電力P1、蓄電池22,23からの供給電力P2,P3のそれぞれよりも小さいものとする。また、説明の便宜上、送電線6や各ブロック(DC/DCコンバータ31やインバータ34等)での電力のロスがないものとして説明する。
【0027】
まず、制御部35が、認定電源である太陽光発電手段21から逆潮流させる制御を行っているものとする(ステップS20)。前述のとおり、認定電源から商用電源系統5への逆潮流をする場合には、非認定電源からの逆潮流が禁止されている。ここでは、制御部35は、太陽光発電手段21に接続されたDC/DCコンバータ31aに、太陽光発電手段21からの入力電力をDCリンク線DCLに出力するように指示する出力指示信号を出力する。DC/DCコンバータ31aでは、出力指示信号に基づいて、太陽光発電手段21からの供給電力P1をDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS30)。
【0028】
一方で、制御部35は、蓄電池22~24に接続されたDC/DCコンバータ31b~31dに対して蓄電池22~24からの放電を停止させる出力停止信号を出力する。DC/DCコンバータ31b~31dでは、蓄電池22~24からDCリンク線DCLに出力される放電電力P2~P4を「ゼロ」にする制御が実行される(ステップS40,S50,S60)。
【0029】
これにより、
図3Aに示すように、太陽光発電手段21からの供給電力P1がインバータ34を介して送電線6に出力され、一部の電力が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(ここで、Pr=P1-PL)が商用電源系統5に逆潮流される。
図4では、時刻t10までの時間が上記の動作に対応している。
【0030】
次に、電力事業者8からパワーコンディショナ3に対して、蓄電池22の逆潮流を指示する逆潮流指示信号が与えられたとする(ステップS10)。逆潮流指示信号を受けた制御部35は、太陽光発電手段21の出力を停止させる出力停止信号をDC/DCコンバータ31aに、蓄電池22の出力を開始させる出力指示信号をDC/DCコンバータ31bに、それぞれ出力する(ステップS21)。これにより、DC/DCコンバータ31a,31c,31dに制御部35からの出力停止信号が与えられた状態となる。したがって、DC/DCコンバータ31a,31c,31dでは、DCリンク線DCLに出力される放電電力P1,P3,P4の総和が「ゼロ」になるように制御される(ステップS31)。
【0031】
一方で、DC/DCコンバータ31bでは、出力指示信号を受けて、逆潮流指示信号に基づく放電電力P2をDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS41)。これにより、DCリンク線DCLには、蓄電池22からの放電電力P2が供給されることになる。
【0032】
図3Bに示すように、DCリンク線DCLの電力は、インバータ34を介して送電線6に出力されるので、蓄電池22からの供給電力P2が送電線6に出力される。そして、供給電力P2のうちの一部の電力が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(ここで、Pr=P2-PL)が商用電源系統5に逆潮流される。
【0033】
ここで、逆潮流指示信号には、逆潮流させる電源を示す電源識別情報が含まれる。電源識別情報は、電源が識別できる情報であればよく、特に限定されるものではない。例えば、各電源の型番情報であったり、電源の種別情報等が含まれ得る。また、電源識別情報は、例えば、予め電力事業者8のサーバー(図示省略)等に登録されていてもよいし、各分散型電源2の設置後に制御部35が電力事業者8に送るようにしてもよい。また、逆潮流指示信号に、電源識別情報に加えて逆潮流の具体的な指示内容に関する情報が含まれていてもよい。例えば、逆潮流の開始時刻や終了時刻等の時刻情報、商用電源系統への逆潮流量の電力量情報等が含まれ得る。なお、後述する「分散型電源システムの動作(2)」の「逆潮流指示信号」についても同様である。
【0034】
制御部35は、ステップS21で受けた逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了すると、蓄電池22の出力を停止させる出力停止信号をDC/DCコンバータ31bに出力する(ステップS22)。DC/DCコンバータ31bでは、出力停止信号を受けて、蓄電池22の出力がDCリンク線DCLに出力されないようにする制御が実行される(ステップS42)。これにより、蓄電池22からDCリンク線DCLに放電される放電電力P2が「ゼロ」になり、他の電源21,23,24からの出力も停止しているので、逆潮流される電力Prが「ゼロ」になる。
【0035】
さらに、制御部35は、ステップS22において、電力事業者8に逆潮流指示信号に基づいた逆潮流の実行結果情報を送信する。逆潮流の実行結果情報は、逆潮流指示信号に基づいた逆潮流の実行結果に関する情報であり、その具体的な内容は特に限定されない。例えば、逆潮流の実行情報には、逆潮流指示信号で示された電源(以下、逆潮流可電源という)である蓄電池22の放電量、蓄電池22の放電開始時刻や放電終了時刻等の時刻情報、商用電源系統5への逆潮流量、蓄電池22の電源識別情報等が含まれ得る。ここで、逆潮流量の情報は、逆潮流の終了時点での総量をまとめて送信するようにしてもよいし、所定の時間毎(例えば、
図4の時間ΔT毎)に取得した結果を順次送るようにしてもよい。なお、後述するステップS24、
図5のステップS27,S29での処理における「逆潮流の実行情報」についても同様である。
【0036】
図4では、時刻t21~t23までの時間が上記の逆潮流指示信号が与えられてから逆潮流指示信号に基づく蓄電池22からの逆潮流が終了するまで、すなわち、ステップS10からステップS22までの動作に対応している。
【0037】
次に、電力事業者8からパワーコンディショナ3に対して、蓄電池23の逆潮流を指示する逆潮流指示信号が与えられたとする(ステップS11)。逆潮流指示信号を受けた制御部35は、蓄電池23の出力を開始させる出力指示信号をDC/DCコンバータ31cに出力する(ステップS23)。
【0038】
DC/DCコンバータ31cでは、出力指示信号を受けて、逆潮流指示信号に基づく放電電力P3をDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS51)。これにより、蓄電池23からDCリンク線DCLに放電電力P3が供給される。ここで、太陽光発電手段21及び蓄電池22,24からDCリンク線DCLへの出力は停止されているので、そのままの状態を維持する。これにより、
図3Cに示すように、蓄電池23からの供給電力P3がインバータ34を介して送電線6に出力される。そして、供給電力P3のうちの一部の電力が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(ここで、Pr=P3-PL)が商用電源系統5に逆潮流される。
【0039】
制御部35は、ステップS23で受けた逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了すると、蓄電池23の出力を停止させる出力停止信号をDC/DCコンバータ31cに出力する(ステップS24)。DC/DCコンバータ31cでは、出力停止信号を受けて、蓄電池23の出力がDCリンク線DCLに出力されないようにする制御が実行される。これにより、蓄電池23からDCリンク線DCLに放電される放電電力P3が「ゼロ」になり(ステップS51)、他の電源21,22,24からの出力も停止しているので、逆潮流される電力Prが「ゼロ」になる。さらに、制御部35は、ステップS24において、電力事業者8に逆潮流指示信号に基づいた逆潮流の実行情報を送信する。
【0040】
図4では、時刻t31~t33までの時間が上記の逆潮流指示信号が与えられてから逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了するまで、すなわち、ステップS11からステップS24までの動作に対応している。
【0041】
その後、次の逆潮流指示信号を受けるまでの間、パワーコンディショナ3は、通常の動作を行う。例えば、認定電源である太陽光発電手段21から逆潮流させる制御として、DC/DCコンバータ31aに出力指示信号を出力する(ステップS25)。そうすると、C/DCコンバータ31aでは、太陽光発電手段21からの供給電力P1をDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS32)。そして、
図3Aに示すように、太陽光発電手段21からの供給電力P1がインバータ34を介して送電線6に出力され、一部の電力が負荷9に供給される一方で、残りの電力Pr(ここで、Pr=P1-PL)が商用電源系統5に逆潮流される。
図4では、時刻t41以降の時間が上記の動作に対応している。
【0042】
-分散型電源システムの動作(2)-
次に、分散型電源システムの動作の他の例について、
図5に示すフローチャートにしたがって説明する。ここでは、いわゆる「押し上げ動作」をする場合の例を示している。なお、「分散型電源システムの動作(1)」との相違点を中心に説明するものとし、共通の動作について説明を省略する場合がある。
【0043】
図2の場合と同様に、まず、制御部35が、認定電源である太陽光発電手段21から逆潮流させる制御を行っているものとする(ステップS20)。制御部35は、DC/DCコンバータ31aを制御して、太陽光発電手段21からの供給電力P1をDCリンク線DCLに出力させる。一方で、制御部35は、蓄電池22~24に接続されたDC/DCコンバータ31b~31dに対して蓄電池22~24からの放電量(放電電力)を制限する出力制限信号を出力する。出力制限信号は、蓄電池22~24からの放電電力(供給電力に相当)の総和が負荷9での消費電力PL以下の電力になるように制限する制御信号である。
【0044】
ここで、制御部35は、出力制限信号により、蓄電池22~24からの放電電力の総和が消費電力PL以下となるように制御すればよいので、出力制限信号により蓄電池22~24のすべてを放電させてもよいし、蓄電池22~24の一部を放電させてもよい。例えば、
図6Aに示すように、制御部35は、蓄電池22からの放電電力P2として、負荷での消費電力PLに相当する電力P1を出力させ、他の蓄電池23,24の出力を停止させるような出力制限信号を用いて、DC/DCコンバータ31b~31dを制御してもよい。換言すると、放電制限信号とは、電源からの出力を所定値に規定する(制限する)ための制御信号に加えて、電源からの出力を停止させる制御信号を含む概念である。
【0045】
これにより、DC/DCコンバータ31aでは、出力指示信号に基づいて、太陽光発電手段21からの供給電力P1をDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS30)。
図6Aの例では、DC/DCコンバータ31bにおいて、蓄電池22からの供給電力P2をDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS44)。また、蓄電池23,24からDCリンク線DCLに出力される放電電力P3,P4を「ゼロ」にする制御が実行される(ステップS54,S64)。
図4では、時刻t10までの時間が上記の動作に対応している。
【0046】
次に、電力事業者8からパワーコンディショナ3に対して、蓄電池22の逆潮流を指示する逆潮流指示信号が与えられたとする(ステップS10)。逆潮流指示信号を受けた制御部35は、太陽光発電手段21の出力を制限する出力制限信号をDC/DCコンバータ31aに、蓄電池22の出力を開始させる出力指示信号をDC/DCコンバータ31bにそれぞれ出力する(ステップS26)。これにより、DC/DCコンバータ31a,31c,32dに前述の出力制限信号が与えられる。
【0047】
DC/DCコンバータ31a,31c,32dでは、出力制限信号に基づいて、太陽光発電手段21及び蓄電池23,24からの出力電力の総和が消費電力PL以下となるようにする制御が実行される(ステップS35)。
図6Bの例では、DC/DCコンバータ31aが放電電力P1として消費電力PLと等しい電力をDCリンク線DCLに出力する一方で、DC/DCコンバータ31c,32dが出力を停止している例を示している。
【0048】
一方で、DC/DCコンバータ31bでは、出力指示信号を受けて、逆潮流指示信号に基づく放電電力P2をDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS45)。これにより、蓄電池22からDCリンク線DCLに放電電力P2が供給される。
【0049】
DCリンク線DCLの電力は、インバータ34を介して送電線6に出力されるので、太陽光発電手段21からの供給電力P1(消費電力PL)と、蓄電池22からの供給電力P2が送電線6に出力される。そして、供給電力P1(消費電力PL)が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(Pr=P2)が商用電源系統5に逆潮流される。
【0050】
制御部35は、ステップS26で受けた逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了すると、蓄電池22の出力を制限する出力制限信号をDC/DCコンバータ31bに出力する(ステップS27)。ここでの出力制限信号は、DC/DCコンバータ31a~31dの出力電力の総和が負荷9での消費電力PL以下の電力になるように制限する制御信号である。すなわち、DC/DCコンバータ31a~31dでは、この出力制限信号に基づいた出力制限制御が実行される。これにより、逆潮流される電力Prは、「ゼロ」になる。
【0051】
次に、電力事業者8からパワーコンディショナ3に対して、蓄電池23の逆潮流を指示する逆潮流指示信号が与えられたとする(ステップS11)。逆潮流指示信号を受けた制御部35は、蓄電池23の出力を開始させる出力指示信号をDC/DCコンバータ31cに出力する(ステップS28)。
【0052】
DC/DCコンバータ31cでは、出力指示信号を受けて、逆潮流指示信号に基づく放電電力P3をDCリンク線DCLに出力する制御が実行される(ステップS55)。これにより、蓄電池23からDCリンク線DCLに放電電力P3が供給される。ここで、太陽光発電手段21及び蓄電池22,24には、出力制限信号が与えられているので、DC/DCコンバータ31a,31b,31dにおいて、DCリンク線DCLへの出力電力の総和を消費電力PL以下にする制御が実行される。これにより、例えば、
図6Cに示すように、太陽光発電手段21からの供給電力P1(消費電力PL)と、蓄電池23からの供給電力P3が送電線6に出力される。そして、供給電力P1(消費電力PL)が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(Pr=P3)が商用電源系統5に逆潮流される。
【0053】
制御部35は、ステップS28で受けた逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了すると、蓄電池23の出力を制限する出力制限信号をDC/DCコンバータ31cに出力する(ステップS29)。ここでの出力制限信号は、DC/DCコンバータ31a~31dの出力電力の総和が負荷9での消費電力PL以下の電力になるように制限する制御信号である。すなわち、DC/DCコンバータ31a~31dでは、この出力制限信号に基づいた出力制限制御が実行され、逆潮流される電力Prは「ゼロ」になる(ステップS56)。さらに、制御部35は、ステップS29において、電力事業者8に逆潮流指示信号に基づいた逆潮流の実行情報を送信する。
【0054】
図4では、時刻t31~t33までの時間が上記の逆潮流指示信号が与えられてから逆潮流指示信号に基づく逆潮流が終了するまで、すなわち、ステップS11からステップS29までの動作に対応している。
【0055】
その後、次の逆潮流指示信号を受けるまでの間、パワーコンディショナ3は、通常の動作を行う。例えば、制御部35は、認定電源である太陽光発電手段21から逆潮流させる制御として、DC/DCコンバータ31aに出力指示信号を出力する(ステップS25)。一方で、制御部35は、DC/DCコンバータ31b~31dに対して、出力制限信号を継続して出力する。ここでの出力制限信号は、DC/DCコンバータ31b~31dの出力電力の総和が負荷9での消費電力PL以下の電力になるように制限する制御信号である。すなわち、DC/DCコンバータ31b~31dでは、この出力制限信号に基づいた出力制限制御が実行される。そうすると、
図6Aに示すように、太陽光発電手段21からの供給電力P1及び蓄電池22~24からの供給電力(蓄電池22からの供給電力P2)がインバータ34を介して送電線6に出力され、蓄電池22からの供給電力P2が負荷9に供給され、その残りの電力Pr(ここで、Pr=P1)が商用電源系統5に逆潮流される。
図4では、時刻t41以降の時間が上記の動作に対応している。
【0056】
以上のように、本実施形態によると、制御部35は、蓄電池22~24(非認定電源に相当)の中から逆潮流させる電源である逆潮流可電源(例えば、上記の説明では蓄電池22,23)を示す逆潮流指示信号を外部から受けた場合に、商用電源系統5に逆潮流される電力が逆潮流可電源からの供給電力以下になるように制御している。
【0057】
より具体的には、上記実施形態において、制御部35は、複数の入力ユニット32のうち、逆潮流可電源(例えば、蓄電池22)からの入力を受ける入力ユニット32b(第1入力ユニットに相当)のDC/DCコンバータ31bに逆潮流指示信号に基づく出力をさせる一方で、第1入力ユニット以外の入力ユニット32a,32c,32dの出力を停止させる制御を行う。これにより、逆潮流可電源以外の電源からの電力供給がされないので、逆潮流可電源から逆潮流される電力を区分することができる。
【0058】
また、上記実施形態において、制御部35は、パワーコンディショナ3に接続された負荷9での消費電力PLがある場合に、複数の入力ユニット32a~32dのうち、逆潮流可電源(例えば、蓄電池22)からの入力を受ける入力ユニット32b(第1入力ユニットに相当)に逆潮流指示信号に基づく出力をさせ、第1入力ユニット以外の入力ユニット32a,32c,32dからの供給電力の総和が消費電力PL以下になるように制御を行う。これにより、逆潮流可電源以外の電源からの電力供給は負荷で消費されるので、逆潮流可電源から逆潮流される電力を区分することができる。
【0059】
(分散型電源システムの他の動作例)
上記実施形態に記載した分散型電源システム1は、
図7A~
図7Cのように動作してもよい。
【0060】
図7Aの例では、負荷での消費電力が
図6A~
図6Cの場合と比較して増加し、PL>P1+P2となった例を示している。この場合、太陽光発電手段21からの供給電力P1及び蓄電池22~24からの供給電力(ここでは、蓄電池22からの供給電力P2)がインバータ34を介して送電線6に出力され、負荷で全て消費される。したがって、逆潮流される電力Prは「ゼロ」となる。
【0061】
また、上記実施形態では、逆潮流指示信号を外部から受けた場合に、逆潮流可電源(逆潮流指示信号で示された電源)の出力を逆潮流させるものとしたが、これに限定されない。例えば、逆潮流指示信号を受けた場合において、逆潮流可電源が商用電源系統に逆潮流するための電力を供給できない状態にあるときに、逆潮流ができないことを示す逆潮流不可信号を外部(例えば、電力事業者8)に通知するようにしてもよい。この場合に、パワーコンディショナ3は、通常の動作を行ったり、逆潮流可電源の充電を行う処理を実行したりしてもよい。
【0062】
例えば、
図7Bでは、通常の動作を行う場合の例を示している。
図7Bにおいて、太陽光発電手段21からの供給電力P1をDC/DC変換してDCリンク線DCLに出力する制御が実行されている。そして、DCリンク線DCLされた電力の一部が、逆潮流可電源(例えば、蓄電池22)に充電され、その残りの電力Prが商用電源系統5に逆潮流されている。例えば、日照がある昼間にこのような動作が行われる場合がある。
【0063】
また、
図7Bでは、商用電源系統5からの電力を逆潮流可電源(例えば、蓄電池22)に充電する場合の例を示している。具体的に、
図7Bでは、商用電源系統5から受けた電力の一部が、負荷9で消費され、その残りが逆潮流可電源(例えば、蓄電池22)に充電されている。例えば、夜間にこのような動作が行われる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によると、DC/DCコンバータの出力同士を互いに接続するDCリンク線を採用した場合においても、分散型電源の供給電力を区分することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 分散型電源システム
2 分散型電源
21 太陽光発電手段(認定電源)
22,23,24 蓄電池(非認定電源)
3 パワーコンディショナ(電力変換装置)
5 商用電源系統
31a 第1DC/DCコンバータ(第1コンバータ)
31b 第2DC/DCコンバータ(第2コンバータ)
33 第1インバータ
34 第2インバータ
35 制御部
7 CTセンサ(電流検出手段)
9 負荷