(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】毛髪処理方法、毛髪用第1組成物及び毛髪用第2組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/898 20060101AFI20230313BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230313BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230313BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230313BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230313BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230313BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61K8/898
A61Q5/00
A61Q5/12
A61Q5/06
A61K8/02
A61K8/36
A61K8/891
(21)【出願番号】P 2018198059
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 喜日出
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258007(US,A1)
【文献】特表2016-530306(JP,A)
【文献】特開2006-028112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノカルボン酸又はその塩、ジカルボン酸又はその塩、及びトリカルボン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩が配合された
pHが6.0未満の毛髪用第1組成物を毛髪に塗布する酸処理と、
前記毛髪を洗浄する洗浄処理と、
前記毛髪に
、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、及びポリシリコーン-29から選ばれる1種又は2種以上のシリコーンが配合された
pHが9.0未満で液状の毛髪用第2組成物を塗布するシリコーン処理と、
前記毛髪を乾燥させる乾燥処理と、
設定温度100℃以上の発熱体と前記毛髪とを接触させる加熱処理と、
を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項2】
前記酸処理における毛髪用第1組成物が
、グリオキシル酸又はその塩、レブリン酸又はその塩、グリコール酸又はその塩、乳酸又はその塩、サリチル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、フマル酸又はその塩、コハク酸又はその塩、酒石酸又はその塩、リンゴ酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上の有機酸及び/又はその塩を配合したものである請求項1に記載の毛髪処理方法。
【請求項3】
前記
酸処理における第
1剤のpHが
1.5以上6.0未満である請求項1又は2に記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
前記加熱処理における発熱体の設定温度が120℃以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項5】
前記加熱処理における発熱体が毛髪を挟むための一対の発熱体である請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項6】
前記加熱処理において、発熱体に接触している間の毛髪を略直線状に変形させる請求項5に記載の毛髪処理方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項の毛髪処理方法における酸処理で使用される毛髪用第1組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項の毛髪処理方法におけるシリコーン処理で使用される毛髪用第2組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の組成物で処理した毛髪に発熱体を接触させる処理を有する毛髪処理方法、並びに、当該毛髪処理で使用する毛髪用第1組成物及び毛髪用第2組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美容室で毛髪に対して行うトリートメントは、自宅で行うトリートメントよりも、毛髪の感触を実感できるとの声が多い。そのようなトリートメントは、複数の組成物を組み合わせる多剤式トリートメントが知られている。また、近年、その多剤式トリートメントとは施術工程が異なる「酸・熱トリートメント」が知られるようになってきている。
【0003】
非特許文献1には、ツヤ、質感、手触りの向上及び持続が酸・熱トリートメントの特徴であり、酸の塗布、塗布した酸の洗浄除去、乾燥、アイロン処理の手順を有することが説明されている。特許文献1には、酸・熱トリートメントに関する開示があり、当該文献では、半永久的毛髪矯正方法として、グリオキシル酸などのα-ケト酸類由来の緩衝酸剤を含む溶液を毛髪に塗布する段階と、毛髪を乾燥させる段階と、毛髪矯正アイロンを用いて毛髪を矯正する段階とを有する方法が開示されている。
【0004】
ところで、上記非特許文献1で説明されている通り、ツヤ、質感、手触りの向上及び持続が酸・熱トリートメントの特徴であり、柔らかさ、滑らかさといった手触りについて十分な感触が得られ、当該感触の更なる向上は、困難性が伴うことが予想される。しかし、その感触を更に向上できる技術の実現は、望ましいことである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「経営とサイエンス8月号」、新美容出版株式会社、2018年8月1日、p.12―17
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、柔らかさ、滑らかさといった手触りに優れる毛髪処理方法、並びに、この方法で使用される毛髪用第1組成物及び毛髪用第2組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意検討を行った結果、酸及び/又はその塩を配合した酸性組成物を毛髪に塗布し、洗浄、乾燥後、アイロンなどの発熱体と毛髪とを接触させる毛髪処理方法において、洗浄と乾燥との間にシリコーンが配合された液状組成物を毛髪に塗布すれば、柔らかさ、滑らかさといった毛髪の手触りに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る毛髪処理方法は、酸が配合された酸性の毛髪用第1組成物を毛髪に塗布する酸処理と、前記毛髪を洗浄する洗浄処理と、前記毛髪にシリコーンが配合された液状の毛髪用第2組成物を塗布するシリコーン処理と、前記毛髪を乾燥させる乾燥処理と、設定温度100℃以上の発熱体と前記毛髪とを接触させる加熱処理と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記酸処理における毛髪用第1組成物が有機酸及び/又はその塩を配合したものであると良い。
【0011】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記シリコーン処理における第2剤のpHが9.0未満であると良い。9.0未満であると、髪の柔らかさ、滑らかさといった手触りがより良好となる。
【0012】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記加熱処理における発熱体の設定温度が120℃以上であると良い。120℃以上の設定温度であると、意図する毛髪形状に整えやすい。
【0013】
本発明に係る毛髪処理方法は、前記加熱処理における発熱体が毛髪を挟むための一対の発熱体であると良い。このような発熱体を使用すれば、当該発熱体に接触している間の毛髪を略直線状に変形させることが容易である。
【0014】
本発明に係る毛髪用第1組成物は、本発明に係る毛髪処理方法における酸処理で使用されるものである。また、本発明に係る毛髪用第2組成物は、本発明に係る毛髪処理方法におけるシリコーン処理で使用されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る毛髪処理方法によれば、所定の酸処理、洗浄処理、乾燥処理、及び加熱処理を有する処理過程における洗浄処理と乾燥処理との間に、シリコーンが配合された液状組成物を塗布するシリコーン処理を設けるから、毛髪の柔らかさ、滑らかさといった手触りを良好にできる。
【0016】
本発明に係る酸及び/又はその塩が配合された酸性の毛髪用第1組成物によれば、所定の酸処理、洗浄処理、シリコーン処理、乾燥処理、及び加熱処理を有する毛髪処理方法の酸処理において用いられるから、髪の柔らかさ、滑らかさといった手触りを良好にできる。
【0017】
また、本発明に係るシリコーンが配合された液状の毛髪用第2組成物によれば、所定の酸処理、洗浄処理、シリコーン処理、乾燥処理、及び加熱処理を有する毛髪処理方法のシリコーン処理において用いられるから、髪の柔らかさ、滑らかさといった手触りを良好にできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の毛髪処理方法は、所定の酸処理、洗浄処理、シリコーン処理、乾燥処理、及び加熱処理を備える。本実施形態の毛髪処理方法によれば、髪の柔らかさ及び滑らかさの感触を良好にできると共に、毛髪のまとまった感触も良好にできる。
【0019】
なお、本実施形態の毛髪処理方法による処理前後には、アニオン界面活性剤などの界面活性剤が配合されたシャンプー用組成物を使用するシャンプー処理、毛髪のメラニン色素を脱色するためのブリーチ用組成物を使用するブリーチ処理、毛髪を染色するための染毛用組成物を使用する染毛処理などの公知の毛髪処理を適宜行っても良い。
【0020】
酸処理
本実施形態における酸処理では、濡れた毛髪又は乾燥した毛髪に対して、毛髪用第1組成物が塗布される。
【0021】
上記毛髪用第1組成物は、酸及び/又はその塩が水に配合されたものである(水の配合量は、例えば70質量%以上)。配合される酸及びその塩は、有機酸、有機酸の塩、無機酸、及び無機酸の塩である(塩の態様としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などである。)。酸及びその塩の総配合量は、特に限定されないが、例えば3質量%以上30質量%以下である。
【0022】
配合される上記の酸として有機酸又はその塩を配合する場合、当該有機酸(有機酸の塩の場合は、その構成有機酸)としては、例えば、グリオキシル酸、レブリン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸などのジカルボン酸;クエン酸などのトリカルボン酸;が挙げられ、好ましい有機酸としては、例えば、グリオキシル酸、乳酸である。有機酸及びその塩から選ばれた一種又は二種以上が本実施形態の毛髪用第1組成物に配合され、毛髪用第1組成物における有機酸及びその塩の総配合量は、例えば3質量%以上30質量%以下である。
【0023】
本実施形態の毛髪用第1組成物には、公知の酸・熱トリートメントで使用される組成物において使用される成分を、任意成分として配合できる。この任意成分としては、高級アルコール、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、シリコーン、香料、防腐剤などである。
【0024】
上記毛髪用第1組成物の剤型をクリーム状とする場合、例えば高級アルコール及びカチオン界面活性剤を配合すると良い。
【0025】
毛髪用第1組成物の剤型をクリーム状とする場合の上記高級アルコールは、炭素数6以上の一価アルコールであり、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールが良い。当該高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、ドデシルヘキサデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールなどの分岐状飽和アルコールが挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを本実施形態の毛髪用第1組成物に配合すると良く、毛髪用第1組成物における高級アルコールの配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば2質量%以上8質量%以下である。
【0026】
また、毛髪用第1組成物の剤型をクリーム状とする場合の上記カチオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチル4級アンモニウム塩が挙げられる。長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムとしては、ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられ、ジ長鎖アルキルジメチル4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムとしては、ジラウリルジメチルアンモニウム、ジミリスチルジメチルアンモニウム、ジセチルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、ジベヘニルジメチルアンモニウムが挙げられる。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を本実施形態の毛髪用第1組成物に配合すると良く、毛髪用第1組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0027】
上記毛髪用第1組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状が挙げられる。例えばB型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の粘度が10,000mPa.s以上60,000mPa.s以下のクリーム状であれば、ハンドリング上好ましい。
【0028】
上記毛髪用第1組成物は、酸性であれば、pHが特に限定されるものではない。当該pHは、1.5以上6.0未満が良く、1.5以上4.0未満が好ましい。1.5以上であれば、頭皮に付着した場合の刺激を抑制でき、6.0未満であれば、酸及びその塩の総配合量を多くできる。
【0029】
本実施形態の酸処理において、毛髪用第1組成物を毛髪に塗布してから一定時間放置すると良い。この放置時間は、例えば1分以上30分以下である。放置中は、公知の方法により、毛髪用第1組成物が塗布された毛髪を加温すると良い。
【0030】
洗浄処理
本実施形態の洗浄処理では、上記酸処理において塗布された毛髪用第1組成物を毛髪から水洗除去する。この水洗除去前に、アニオン界面活性剤が配合された公知のシャンプー用組成物を塗布しても良い。
【0031】
シリコーン処理
本実施形態のシリコーン処理では、洗浄処理後の濡れた毛髪に対して、毛髪用第2組成物が塗布される。本実施形態の毛髪用第2組成物は、水系の組成物、すなわち水溶液又は外相が水であるエマルションである。
【0032】
上記毛髪用第2組成物は、シリコーンが水に配合されたものである(水の配合量は、例えば85質量%以上)。配合されるシリコーンは、例えば、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーンが挙げられ、好適なシリコーンとしては、例えばアミノ変性シリコーンである。毛髪用第2組成物におけるシリコーンの配合量は、例えば0.05質量%以上3質量%未満である。
【0033】
配合される上記アミノ変性シリコーンは、シリコーン骨格に直接あるいは置換基を介して末端にアミノ基を有するシリコーンである。このアミノ変性シリコーンとしては、例えば一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
上記一般式(1)中、x及びyは1~5の整数を示し、m及びnは分子量に依存する整数を示す。
【0035】
一般式(1)に示す化合物としては、例えば、x=3及びy=2であるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体((アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー)が挙げられる。
【0036】
【化2】
上記一般式(2)中、v及びwは1~5の整数を示し、p及びqは分子量に依存する整数を示す。
【0037】
一般式(2)に示す化合物としては、例えば、v=3及びw=2であるアミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)が挙げられる。
【0038】
一種又は二種以上のアミノ変性シリコーンが本実施形態の毛髪用第2組成物に配合され、毛髪用第2組成物におけるアミノ変性シリコーンの配合量は、例えば0.05質量%以上1.5質量%以下である。
【0039】
本実施形態の毛髪用第2組成物には、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、有機酸、香料、防腐剤などの毛髪用組成物としての公知成分を適宜配合できる。
【0040】
上記毛髪用第2組成物の剤型は、液状である。液状であれば、クリーム状と異なり、乾燥処理での毛髪乾燥が容易となる。本実施形態の毛髪用第2組成物の剤型が液状であれば、粘度は特に限定されないが、例えば200mPa・s以下である(当該粘度は、B型粘度計を使用し、適宜なローターを用いて、25℃でローター回転数12rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値を意味している。)。
【0041】
上記毛髪用第2組成物のpHは、例えば5.0以上10.0未満である。好ましい毛髪用第2組成物のpHは、9.0未満であり、8.0未満が好ましく、7.5未満がより好ましい。9.0未満であると、髪の柔らかさ、滑らかさ、まとまりといった手触りがより良好となる。
【0042】
本実施形態のシリコーン処理において、毛髪用第2組成物を毛髪に塗布してから一定時間の放置有無は、いずれであっても良い。放置する場合の放置時間は、例えば1分以上5分以下である。
【0043】
乾燥処理
本実施形態における酸処理では、毛髪用第2組成物が塗布された状態の毛髪を乾燥させる。この乾燥処理を行わずに高温の発熱体に毛髪を接触させる次の加熱処理を行った場合、毛髪内の水分が急激に蒸発して、毛髪を損傷させる場合がある。本実施形態の乾燥処理によれば、その急激な水分蒸発による損傷を防止できる。乾燥処理では、例えば、ドライヤーによる温風で毛髪を乾燥させる。また、濡れた毛髪をロッドに巻き取った後に乾燥させることも例示できる。
【0044】
加熱処理
本実施形態における加熱処理では、乾燥処理で乾燥させた毛髪に発熱体を接触させる。この接触により、公知の酸・熱トリートメントと同様の効果を期待できる。また、本実施形態のシリコーン処理を行っているから、髪の柔らかさ、滑らかさ、まとまりといった手触りがより良好となる。
【0045】
毛髪と接触させる上記発熱体の設定温度は、100℃以上である。その接触は、毛髪を伸ばして毛髪形状を略直線状に変形させるための公知のヘアアイロン、毛髪形状をウェーブ状にするためのロッド、毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンを使用して行うと良い。
【0046】
毛髪形状を略直線状に変形させるためのヘアアイロンは、ハッコー社製「ADST Premium DS」、小泉成器社製「VSI-1009/PJ」などとして公知である。このヘアアイロンにおいて、対向する一対の金属製板状体が発熱体として備わっている。そして、ヘアアイロンを使用する際には、毛髪を対向する発熱体間に挟み、その後に、毛髪を挟んだ状態を維持しながらヘアアイロンを移動させ、挟まっている毛髪を滑らせる。上記ヘアアイロンの発熱体の設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるために、100℃以上であり、120℃以上が良く、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、170℃以上が更に好ましい。一方、上記発熱体の設定温度は、毛髪の損傷を抑えるためには、230℃以下が良く、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、190℃以下が更に好ましい。
【0047】
毛髪形状をウェーブ状にするためのロッドは、公知の装置に備わっており、その装置は、大広製作所社製「ODIS EX」などである。上記ロッドの設定温度は、毛髪の形状を効率良く変形させるために、100℃以上である。
【0048】
毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロンは、ハッコー社製「Digital Perming」などとして公知である。このカーリングアイロンは、発熱体の温度を例えば140℃以上190℃以下に設定して使用される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0050】
下記の通り、処方例1a~1dの毛髪用第1組成物及び処方例2a~2hの毛髪用第2組成物を製造し、実施例1~9及び比較例1~5の毛髪処理を行った。詳細は、次の通りである。
【0051】
(処方例1a~1d)
処方例1a~1dの毛髪用第1組成物として、水と原料を配合し、O/W型のクリーム状組成物を製造した。配合した原料は、セタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ステアリル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、カチオンNH(クオタニウム-33、1,3-ブチレングリコールを含有する日本精化社製商品)、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、プロピレングリコール、イソプロパノール、アセチルグルコサミン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン(1)、グリオキシル酸、乳酸、フェノキシエタノール、及び香料から選定したものとし、その配合量は、下記表1の通りとした。また、各毛髪用第1組成物のpHについては、10%水酸化ナトリウム水溶液を使用して、表1の通りに調整した。
【0052】
(処方例2a~1h)
処方例2a~2hの毛髪用第2組成物として、水と原料を配合し、水系の液状組成物を製造した。配合した原料は、SM8904(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体を含有する東レ・ダウコーニング社商品)、BELSIL DM3101E(高重合メチルポリシロキサン(1)、メチルポリシロキサンを含油する旭化成ワッカーシリコーン社商品)、silsoft CLX-E(ポリシリコーン-29、ジプロピレングリコールを含有するモメンティブ社商品)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(10E.O.)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)、1,3-ブチレングリコール、グリオキシル酸、フェノキシエタノール、及び香料から選定したものとし、その配合量は、下記表2の通りとした。また、各毛髪用第2組成物のpHについては、10%水酸化ナトリウム水溶液又はL-アルギニンを使用して、表2の通りに調整した。
【0053】
(実施例1~実施例9、比較例2、比較例4~5)
酸処理、洗浄処理、シリコーン処理、乾燥処理、及び加熱処理を下記の通り行い、実施例1~実施例9、比較例2、比較例4~5の毛髪処理方法による毛髪処理を行った。なお、各実施例及び各比較例で使用した毛髪用第1組成物及び毛髪用第2組成物は、下記表3~6の通りとした。
【0054】
事前に市販のシャンプー組成物を使用して洗浄した濡れた毛束(日本人女性から採取した酸化染毛処理履歴がある長さ20cm程度、質量2gの毛髪)に、毛髪用第1組成物4g程度を塗布して20分間放置することで酸処理を行った。酸処理後の毛束を温水で十分に水洗して洗浄処理を行ってから、毛髪用第2組成物0.5g程度を毛髪に噴霧塗布してシリコーン処理を行い、その塗布から間もなく、ドライヤーからの温風による毛髪の乾燥処理を行った。そして、ヘアアイロン(株式会社ハッコー製「ADST Premium DS プロ用ストレートヘアアイロン ADST Premium DS(FDS-25)」)における一対の発熱体の温度を180℃に設定し、その発熱体の間に毛束を挟んでから、毛束を伸ばしつつ滑らせることを3回行うことで、加熱処理を行った。
【0055】
(比較例1)
シリコーン処理を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例1の毛髪処理を行った。
【0056】
(比較例3)
酸処理を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例3の毛髪処理を行った。
【0057】
(評価)
上記実施例及び比較例による毛髪処理を行った後の毛束について、柔らかさ(触ったときに感じる柔らかな感触)、滑らかさ(触ったときに感じる表面の滑らかさ)、まとまり(触ったときの毛先まで納まっている感触)の手触りの評価を行った。ここでの評価は、5名の評価者により行った。また、評価は、「実施例1、実施例2、比較例1、比較例2」の比較、「実施例3、比較例3」の比較、「実施例4、比較例4、比較例5、実施例5」の比較、「実施例6、実施例7、実施例8、実施例9」の比較を行い、各比較の中で、最も良かった評価点を「4」、2番目に良かった評価点を「3」、3番目に良かった評価点を「2」、4番目に良かった評価点を「1」とした。
【0058】
下記表1に、処方例1a~1dの毛髪用第1組成物に配合した原料及びその配合量、並びにpH、下記表2に、処方例2a~2hの毛髪用第2組成物に配合した原料及びその配合量、並びにpHを示す。
【0059】
【0060】
【0061】
下記表3に、実施例1~2及び比較例1~2の評価結果を示す。表3に示す通り、実施例1~2は、毛髪用第2組成物を使用しなかった(シリコーン処理を行わなかった)比較例1及び毛髪用第2組成物にシリコーンを配合しなかった比較例2よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であったことから、シリコーンを配合した毛髪用第2組成物によるシリコーン処理の有無が柔らかさ等に影響することが分かる。また、毛髪用第2組成物に配合するシリコーンとしてアミノ変性シリコーンを配合した実施例1は、ジメチルシリコーン(高重合メチルポリシロキサン(1)及びメチルポリシロキサン)を配合した実施例2よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であった。
【0062】
【0063】
下記表4に、実施例3及び比較例3の評価結果を示す。表4に示す通り、実施例3は、毛髪用第1組成物を使用しなかった(酸処理を行わなかった)比較例3よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であったことから、酸を配合した酸性の毛髪用第1組成物による酸処理の有無が柔らかさ等に影響することが分かる。また、比較例3の毛髪用第2組成物は、酸(グリオキシル酸)が配合されたものであるが、実施例3よりも評価に劣るから、毛髪用第1組成物への酸の配合が柔らかさ等の向上に適することを確認できる。
【0064】
【0065】
下記表5に、実施例4~5及び比較例4~5の評価結果を示す。表5に示す通り、毛髪用第1組成物のpHが酸性領域である実施例4~5は、アルカリ性領域の比較例4~5よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であったことから、毛髪用第1組成物が酸性であれば、柔らかさ等の向上に適することが分かる。また、グリオキシル酸の配合が滑らかさの向上に適し(実施例4)、乳酸の配合が柔らかさの配合に適する(実施例5)ことが、表5において確認できる。
【0066】
【0067】
下記表6に、実施例6~9の評価結果を示す。表6に示す通り、毛髪用第2組成物のpHが9.0未満である実施例6~7は、pHが9.0以上である実施例8~9よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であったことから、毛髪用第2組成物のpHが9.0未満であれば、柔らかさ等の向上により適することが分かる。また、毛髪用第2組成物のpHが8.0未満である実施例6は、pHが8.0以上である実施例7よりも、柔らかさ、滑らかさ、まとまりの平均点が高く、良好な結果であったことから、毛髪用第2組成物のpHが8.0未満であれば、柔らかさ等の向上に更に適することが分かる。
【0068】
【0069】
(処方例1e~1q)
下記表7~8には、本実施形態の毛髪用第1組成物の例として、処方例1e~1qを示す。処方例1e~1qの毛髪用第1組成物は、水と原料を配合して得られるO/W型のクリーム状組成物であり、配合される原料は、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ステアリル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、カチオン NH(クオタニウム-33、1,3-ブチレングリコールを含有する日本精化社製商品)、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソプロパノール、アセチルグルコサミン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン(1)、グリオキシル酸、乳酸、フェノキシエタノール、及び香料から選定され、その配合量は、下記表9又は10の通りである。また、各毛髪用第1組成物のpHについては、10%水酸化ナトリウム水溶液を使用して、表7~8の通りに調整した。
【0070】
【0071】
【0072】
下記表9~10には、本実施形態の毛髪用第2組成物の例として、処方例2i~2sを示す。処方例2i~2sの毛髪用第2組成物は、水と原料を配合して得られる水系の液状組成物であり、配合される原料は、SM8904(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体を含有する東レ・ダウコーニング社商品)、BELSIL DM3101E(高重合メチルポリシロキサン(1)、メチルポリシロキサンを含油する旭化成ワッカーシリコーン社商品)、silsoft CLX-E(ポリシリコーン-29、ジプロピレングリコールを含有するモメンティブ社商品)、NanoRepair-EL(γ-ドコサラクトン、ダイズステロールを含有する日本精化社商品)、グルコノデルタラクトン、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(10E.O.)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロパンジオール、グリオキシル酸、フェノキシエタノール、及び香料から選定され、その配合量は、下記表9又は10の通りである。
【0073】
【0074】