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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】積みブロックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20230313BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230313BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20230313BHJP
   B28B 11/14 20060101ALI20230313BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20230313BHJP
   E02B 3/04 20060101ALI20230313BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C04B38/00 301A
C04B28/02
C04B18/16
C04B38/00 302Z
B28B11/14
E02B3/14 301
E02B3/04
E02D29/02 304
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018208128
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020075825
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】中 新弥
(72)【発明者】
【氏名】十文字 拓也
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003339(JP,A)
【文献】特開2008-266130(JP,A)
【文献】特開2009-073677(JP,A)
【文献】特開2007-153730(JP,A)
【文献】特開2004-292277(JP,A)
【文献】特開2001-270767(JP,A)
【文献】特開2000-034178(JP,A)
【文献】特開2000-202814(JP,A)
【文献】特開平08-218304(JP,A)
【文献】特開2015-160789(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1495147(CN,A)
【文献】特開2008-038452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 7/00-28/36
E02B 3/04-3/14
E02D 29/02
B28B 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、水廃瓦である粘土瓦の破砕物のみからなる粗骨材、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、及びスラグ細骨材の中から選ばれる1種またはこれらの混合物のみからなる細骨材、並びに、セメント分散剤を含む水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含む積みブロックであって、
上記水硬性組成物の硬化体は、空隙率が12~23%の多孔質のものである、積みブロックを製造するための方法であって、
一対の積みブロックを製造するための型枠の中に、少なくとも表面部分の一部を形成させるための材料としての上記水硬性組成物を含む、上記積みブロックのコンクリート材料を充填する充填工程と、
上記充填工程で得られた上記型枠内の上記コンクリート材料を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程で得られた上記コンクリート材料の硬化体を2つに割裂して、割裂部分である表面部分が上記水硬性組成物の硬化体によって形成されている、上記積みブロックを得る割裂工程、を含み、
上記水硬性組成物の単位体積1m 中、上記セメントの量が350~500kg、上記水の量が70~100kg、上記粗骨材の量が1,000~1,500kg、および、上記細骨材の量が150~250kgであり、
上記セメント100質量部に対する上記セメント分散剤の配合量が、固形分換算で、0.1~2.0質量部であることを特徴とする積みブロックの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の積みブロックの製造方法によって積みブロックを得た後、該積みブロックを鉛直または傾斜した表面形成部分の少なくとも一部として用いて土木構造物を構築することを特徴とする土木構造物の構築方法。
【請求項3】
上記土木構造物が、護岸、擁壁または堤防である請求項に記載の土木構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積みブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリットン・ブロックは、即時脱型により締め固めたブロックを割裂することで得られる、自然石の割肌に類似した割面を意匠として取り入れている小型の積みブロックである。
スプリットン・ブロックとして、例えば、特許文献1には、圧縮強さが100N/mm以上であるセメントペースト硬化体またはセメントモルタル硬化体からなる円柱成形体を、直径方向に線載荷して割裂し、該割裂した面を露出してなる、スプリットン・ブロックが記載されている。
一方、雨水等の水はけが良くなり、かつ、草木類の植生が可能で自然環境を保護しうるという観点から、多数の空隙を有するポーラスコンクリートが、河川の護岸や、海岸や道路等の法面の擁壁等に用いられる積みブロックに用いられている。
【0003】
植物を育成可能な緑化ブロックとして、特許文献2には、多孔質セラミックスの廃材が平均粒径5~10mmで粉砕された無数の大径骨材と、各該大径骨材間に間隙を確保しつつ各該大径骨材を結合する上層用バインダとからなり、表面で芝その他の植物が育成される上層と、 前記廃材が平均粒径1~4mmで粉砕された無数の小径骨材と、各該小径骨材間に間隙を確保しつつ各該小径骨材を結合する下層用バインダとからなり、該上層下に該下層用バインダによって一体に形成された下層とを備えていることを特徴とする緑化ブロックが記載されている。また、上記緑化ブロックに用いられる大径骨材として、廃瓦が粉砕されたものを使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-160789号公報
【文献】特開2010-98974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、強度(例えば、圧縮強度)が大きく、かつ、保水性に優れた積みブロックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、廃瓦破砕物からなる粗骨材等の特定の材料を含みかつ空隙率が11%以上である水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含む、積みブロックによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1] セメント、水、および、廃瓦破砕物からなる粗骨材を含む水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含む積みブロックであって、上記水硬性組成物の硬化体の空隙率が11%以上であることを特徴とする積みブロック
[2] 上記水硬性組成物の硬化体の空隙率が12~23%の範囲内である前記[1]に記載の積みブロック
[3] 上記廃瓦破砕物が、粘土瓦の破砕物である前記[1]又は[2]に記載の積みブロック
[4] 上記水硬性組成物が、細骨材を含み、かつ、上記水硬性組成物の単位体積1m中、上記セメントの量が350~500kg、上記水の量が70~100kg、上記廃瓦破砕物からなる粗骨材の量が1,000~1,500kg、および、上記細骨材の量が150~250kgである前記[1]~[3]のいずれかに記載の積みブロック
【0007】
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の積みブロックを製造するための方法であって、一対の積みブロックを製造するための型枠の中に、少なくとも表面部分の一部を形成させるための材料としての上記水硬性組成物を含む、上記積みブロックのコンクリート材料を充填する充填工程と、上記充填工程で得られた上記型枠内の上記コンクリート材料を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程で得られた上記コンクリート材料の硬化体を2つに割裂して、割裂部分である表面部分が上記水硬性組成物の硬化体によって形成されている、上記積みブロックを得る割裂工程、を含む積みブロックの製造方法。
[6] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の積みブロックを、鉛直または傾斜した表面形成部分の少なくとも一部として含むことを特徴とする土木構造物。
[7] 上記土木構造物が、護岸、擁壁または堤防である前記[6]に記載の土木構造物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積みブロックは、強度(例えば、圧縮強度)が大きく、かつ、保水性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積みブロックの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の積みブロックの製造方法の前半部分(充填工程等)における、型枠の鉛直方向の略中央部分において水平方向に切断した状態の一例を示す断面図である。
図3】本発明の積みブロックの製造方法の後半部分(割裂工程等)における、積みブロックの鉛直方向の略中央部分において水平方向に切断した状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積みブロックは、セメント、水、および、廃瓦破砕物からなる粗骨材を含む水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含む積みブロックであって、水硬性組成物の硬化体の空隙率が11%以上であるものである。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
水硬性組成物の単位体積1m中のセメントの量は、好ましくは350~500kg、より好ましくは360~480kg、特に好ましくは370~460kgである。該量が350kg以上であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。該量が500kg以下であれば、水硬性組成物の成形性及び作業性をより向上することができる。
【0012】
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、スラッジ水等が挙げられる。
水硬性組成物の単位体積1m中の水の量は、好ましくは70~100kg、より好ましくは72~95kg、より好ましくは75~90kgである。該量が70kg以上であれば、混練後の打設等の作業が可能な時間をより十分に確保することができ、水硬性組成物の成形性及び作業性をより向上させることができる。該量が100kg以下であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。
また、水セメント比は、好ましくは15~30%、より好ましくは17~28%、さらに好ましくは18~25%、特に好ましくは18~22%である。該比が15%以上であれば、混練後の打設等の作業が可能な時間をより十分に確保することができ、水硬性組成物の成形性及び作業性をより向上させることができる。該比が30%以下であれば、連続空隙を十分に形成させて、透水性をより向上させることができ、かつ、硬化体の強度をより大きくすることができる。
なお、水セメント比とは、水とセメントの質量比(水/セメント)を百分率(%)で表したもの([水/セメント]×100;単位:%)である。
【0013】
廃瓦破砕物からなる粗骨材とは、規格外品や使用済みの瓦の廃材の破砕物である。瓦の例としては、陶器瓦やいぶし瓦等の、粘土やシャモット(耐火粘土を1,300~1,400℃程度で加熱した後、砕いて細かい粒状にしたもの)等を原料とする粘土瓦や、セメント瓦等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性や、保水性に優れた積みブロックを得ることができる観点から、粘土瓦が好ましい。粘土瓦の中でも、釉薬(うわ薬)をかけずに焼き上げた瓦であるいぶし瓦が、保水性の観点から、好ましい。
本発明では、廃瓦破砕物を用いることで、廃瓦の有効活用を図ることができ、積みブロックの強度(例えば、圧縮強度)を維持しつつ、該ブロックの保水性を向上することができる。
廃瓦破砕物からなる粗骨材の粒度は、積みブロックの用途に応じて適宜定めればよいが、通常、5~30mm、好ましくは5~25mm、より好ましくは5~20mm、特に好ましくは5~15mmである。該粒度が大きいほど、積みブロック中の空隙が大きくなる。また、廃瓦破砕物からなる粗骨材の粒度分布は、粒度5~13mmのものが90質量%以上であることが好ましい。
本明細書中、「粒度」とは、ふるいの目開き寸法に対応する大きさを意味する。
【0014】
廃瓦破砕物からなる粗骨材の表乾密度は、通常、1.0~4.0g/cm、好ましくは1.5~3.5g/cm、より好ましくは2.0~3.0g/cmである。該表乾密度が1.0g/cm以上であれば、製品重量をより大きくして、既定の製品重量を確保することが容易となる。該表乾密度が4.0g/cmを超えるものは、入手が困難である。
水硬性組成物の単位体積1m中の廃瓦破砕物からなる粗骨材の量は、好ましくは1,000~1,500kg、より好ましくは1,100~1,400kg、特に好ましくは1,150~1,350kgである。粗骨材の量を上記数値範囲内とすることで、積みブロックの強度を維持しつつ、保水性を向上することができる。
【0015】
水硬性組成物は、必要に応じて他の材料を含んでいてもよい。他の材料の例としては、細骨材、セメント分散剤、及び、セメント混和材等が挙げられる。
細骨材の例としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、及びスラグ細骨材、またはこれらの混合物等が挙げられる。水硬性組成物が細骨材を含むことによって、硬化後の乾燥による収縮を抑制することができる。
細骨材の粒度分布は、粒度4mm以下のものが90質量%以上であることが好ましい。
水硬性組成物の単位体積1m中の細骨材の量は、好ましくは150~250kg、より好ましくは160~240kg、さらに好ましくは170~235kg、さらに好ましくは180~230kg、特に好ましくは30~80質量部である。
細骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは10~130質量部、さらに好ましくは20~120質量部、特に好ましくは30~80質量部である。該配合量が150質量部以下であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。
【0016】
セメント分散剤の例としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、またはポリカルボン酸系等の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤等が挙げられる。中でも、水硬性組成物の流動性、施工性、及び強度発現性をより向上させる観点から、AE減水剤又は高性能AE減水剤が好ましく、高性能AE減水剤がより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント100質量部に対するセメント分散剤の配合量(複数の種類を用いる場合、合計量)は、固形分換算で、好ましくは0.1~2.0質量部、より好ましくは0.2~1.8質量部、特に好ましくは0.4~1.6質量部である。該量が0.1質量部以上であれば、混練後の打設等の作業が可能な時間をより十分に確保することができ、成形性及び作業性をより向上させることができる。該量が2.0質量部以下であれば、連続空隙を十分に形成させて、透水性をより向上させることができる。
【0017】
セメント混和材の例としては、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、珪石粉末等の無機粉末が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメントとセメント混和材の合計量中のセメント混和材の割合は、水硬性組成物の強度発現性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0018】
廃瓦破砕物からなる粗骨材100体積%に対する、ペースト(水硬性組成物が細骨材を含まない場合における、粗骨材以外の上記材料の混合物)またはモルタル(水硬性組成物が細骨材を含む場合における、粗骨材以外の上記材料の混合物)の体積比(ペーストまたはモルタル/粗骨材の体積比)は、好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.35~0.75、さらに好ましくは0.4~0.7、特に好ましくは0.45~0.65である。該体積比が0.3以上であれば、水硬性組成物の強度発現性がより向上する。該体積比が0.8以下であれば、連続空隙を十分に形成させて、透水性をより向上させることができる。
【0019】
本発明の積みブロックにおいて、セメント、水、および、廃瓦破砕物からなる粗骨材を含む水硬性組成物の硬化体は、少なくとも表面部分の一部(特に、該硬化体を敷設したときに露出する面)として含まれていればよい。
また、透水性をより向上させ、植生可能な部分をより広くする観点から、積みブロックの表面部分全てが、多孔質(ポーラス)の硬化体によって形成されていることが好ましい。また、製造の容易性の観点から、積みブロック全てが、上記水硬性組成物の硬化体からなるものであってもよい。
本発明の積みブロックにおいて、水硬性組成物の硬化体の空隙率は、用途によっても異なるが、透水性の観点からは、11%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上、特に好ましくは14%以上である。また、上記空隙率は、硬化体の強度をより大きくする観点からは、好ましくは23%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下、特に好ましくは15%以下である。
【0020】
本発明の積みブロックは、透水性と保水性を兼ね備えていることから、植生可能なものである。
ここで、透水性とは、積みブロックの中に浸透した水が、該ブロックの下方または側方から排出される程度に、水の流通性が大きいことをいう。
保水性とは、積みブロックの中で、ある程度の期間、毛細管現象等によって水分が保持されることをいう。
本発明の積みブロックは、外部空間と連通する多数の連続空隙(ポーラス)を含むことから、透水性及び保水性を有する。また、本発明の積みブロックは、廃瓦破砕物からなる粗骨材を含むことから、砂利等の粗骨材を含む場合に比べて、保水性が高められたものである。
本発明の積みブロックの用途としては、該ブロックの露出面が水平方向に延びるものとなる用途(例えば、道路の両側の植生される部分や、河川の両側の植生される部分等)の他、該ブロックの露出面が鉛直または傾斜して延びるもの(換言すると、該ブロックを複数含む土木構造物であって、該ブロックを、該土木構造物の鉛直または傾斜した表面形成部分の少なくとも一部として含むもの)となる用途(例えば、河川等の護岸や、道路等の擁壁や、河川等の堤防)が挙げられる。
上記土木構造物(例えば、河川等の護岸や、道路等の擁壁や、河川等の堤防)の構築方法は、特に限定されるものではなく、一般的なコンクリート製の積みブロックを用いた土木構造物の構築方法であればよい。
例えば、法面に基礎ブロックを設置した後、該基礎ブロックの上部に根石を設置し、次いで、裏込めコンクリートを、法面と積みブロックの間に裏込めコンクリートが介在するように打設しながら、本発明の積みブロックを上記根石の上部に積み上げ、最後に、積み上げられた積みブロックの上部に天端コンクリートを打設する方法が挙げられる。積みブロックの積み上げ方法の例としては、谷積み、布積み等が挙げられる。
【0021】
以下、本発明の積みブロックの一例について、図1を参照にしながら具体的に説明する。
積みブロック1は、基層2と表層3からなる。基層2は、通常、地中に埋設される部分である。基層2は、例えば、即時脱型コンクリート等の硬化体からなるものである。即時脱型コンクリートの例としては、「JIS A 1150:2007(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準拠して測定したスランプフロー値が、好ましくは2cm以下、より好ましくは1cm以下、特に好ましくは0.5cm以下の普通コンクリート(ポーラスコンクリートではないもの)等が挙げられる。また、基層2は、上述の水硬性組成物の硬化体からなるものであってもよい。
表層3は、上述の水硬性組成物の硬化体からなるものである。
基層2及び表層3の境界面には、基層2から表層3が剥落しにくくする観点から、お互いに嵌合するような凹凸形状が形成されていてもよい。
【0022】
本発明の積みブロックの製造方法の一例は、一対の積みブロックを製造するための型枠の中に、少なくとも表面部分の一部(具体的には、後で硬化体を2つに割裂したときに割裂面となる部分)を形成させるための材料としての上述した水硬性組成物、及び、必要に応じて用いられる他の水硬性組成物(例えば、表面部分以外の部分を形成させるための他の水硬性組成物)を充填する充填工程と、充填工程で得られた型枠内のコンクリート材料(上述の1種または2種の水硬性組成物)を硬化させる硬化工程と、硬化工程で得られたコンクリート材料の硬化体を2つに割裂して、割裂部分である表面部分が、本発明で用いる水硬性組成物の硬化体によって形成されている、積みブロックを得る割裂工程、を含むものである。以下、2種類の水硬性組成物を用いた例について、図2~3を参照しつつ、工程ごとに詳しく説明する。
【0023】
まず、一対の積みブロックを製造するための型枠4に冶具5を敷設することで、型枠4内に水硬性組成物Aを充填させるための空洞6を形成する(図2(a)参照)。なお、水硬性組成物Aは、本発明で用いる水硬性組成物とは異なる水硬性組成物(図1中の基層2を形成させるための材料)である。
次いで、空洞6に水硬性組成物A(符号7a)を充填し(図2(b)参照)、硬化させた後、治具5を取り除くことで、型枠4内に水硬性組成物Bを充填させるための空洞8を形成することができる(図2(c)参照)。なお、水硬性組成物Bは、本発明で用いる水硬性組成物である。
【0024】
その後、型枠4内の空洞8に水硬性組成物B(符号9a)を充填させる(図2(d)参照)。
なお、水硬性組成物A~Bの調製方法としては、特に限定されるものではなく、二軸型ミキサーやパン型ミキサー等を用いて、各材料を混練すればよい。
次に、型枠4内に充填された水硬性組成物B(符号9a)を硬化させ、硬化体9bを形成させる(図3(e)参照)。型枠内の水硬性組成物B(符号9a)の硬化は、例えば、振動締固め等によって行われる。水硬性組成物Bの硬化後、脱型することで、一対の積みブロック10を得ることができる(図3(e)参照)。
【0025】
脱型後に得られた、一対の積みブロック10を、水硬性組成物Bの硬化体9bの略中央部分において2つに割裂して、表面部分が水硬性組成物Bの割裂体9cである、二つの積みブロック1を得る(図3(f)参照)。
得られた積みブロック1は、その表層(図3(f)の割裂体9c)が、本発明で用いる水硬性組成物からなるものであるため、透水性及び保水性を備えたものである。
また、得られた積みブロック1は、割裂した際に、廃瓦破砕物も割れて、該廃瓦破砕物が水硬性組成物に覆われることなく割裂面に露出しているため、色鮮やかな優れた意匠性を有するものとなり、廃瓦破砕物の割裂面から水が浸透し、かつ廃瓦破砕物内に保水されるものである。
以上、2種類の水硬性組成物を用いた例について説明したが、本発明で用いる水硬性組成物のみを用いる場合には、図2の(d)~図3の(f)の一連の工程を行えばよい。
【実施例
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント、密度:3.16g/cm
(2)廃瓦破砕物からなる粗骨材;シャモット瓦骨材(シャモットを原料とする、廃棄用の、陶器瓦といぶし瓦の混合物を破砕してなる破砕物からなる骨材)、愛知県陶器瓦工業組合製、粒度:5~13mm、表乾密度:2.26g/cm
(3)細骨材;山砂、粒度:5mm以下(粒度4mm以下のもの:90質量%以上)、
表乾密度:2.63g/cm
(4)水;水道水
(5)高性能AE減水剤:BASFジャパン社製、商品名:「マスターグレニウムSP8SV」
【0027】
[実施例1]
積みブロックの目標空隙率を14%とし、水硬性組成物(セメント、水、シャモット瓦骨材及び細骨材からなるもの)の単位体積1m中の、各材料の量が表1に記載される量となるように、ミキサー(容量:20リットル、日本アイリッヒ社製)に各材料を投入して混練を行った。各材料は、粗骨材、セメント、細骨材の順番にミキサーに投入し、空練りを30秒間行った後、成形後のブロック底部にモルタルのたれが生じないことを目安とする量(セメント100質量部に対して、固形分換算で0.9質量部)の高性能AE減水剤を溶解した水をミキサーに投入して、210秒間混練りを行った。
次いで、混練物を一対の積みブロックを製造することが可能な型枠(縦:260mm、横:160mm、高さ:190mm)に充填した後、高振動加圧即時脱型成形機を用いて、振動数:72.5Hz、加圧力:0.123MPaの条件で、11秒間、振動成形を行った。
成形直後の積みブロックの空隙率を、「性能設計対応型ポーラスコンクリートの施工標準と品質保証体制の確立研究委員会報告書」のポーラスコンクリートのフレッシュ時の空隙率測定方法(案)に準拠して測定した(表2中、「実測空隙率」と示す。)。結果を表2に示す。
成形後、20℃の条件下で2時間の前置き養生を行った後、20℃/時間の昇温速度で、65℃まで温度を上昇し、65℃の温度を3時間維持し、次いで、4.5℃/時間の降温速度で、20℃になるまで温度を降温する蒸気養生を行った。
【0028】
[圧縮強度の測定]
蒸気養生後の積みブロックについて、さらに、室温20℃、相対湿度70℃の恒温室内で気中養生を行った。
気中養生を開始し、7日、及び、14日経過の各時点において、積みブロックの締固め方向に対して直角の方向から、コア供試体(φ75×160mm)を、3本採取して、該コア供試体の圧縮強度を、「JIS A 1108:2006(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。3本のコア供試体の圧縮強度の平均値を表2に示す。
[保水量の測定]
蒸気養生後の積みブロックを、100t耐圧試験機を用いて割裂し、2個の積みブロックを得た。
得られた2個の積みブロックを、水温が20℃である水の中で、72時間以上吸水させた後、水から出して、室温20℃、相対湿度70℃の恒温室内で気中養生を行った。
吸水させた後、0日、1日、2日、3日、6日、7日経過の各時点における、積みブロックの保水量を「JIPEA-TM-7(インターロッキングブロックの保水性試験方法)」に準拠して測定した。結果を表3に示す。
【0029】
[実施例2]
積みブロックの目標空隙率を18%とする以外は、実施例1と同様にして、積みブロックを作成し、実施例1と同様にして、実測空隙率、圧縮強度、保水量を測定した。
[比較例1]
積みブロックの目標空隙率を10%とする以外は、実施例1と同様にして、積みブロックを作成し、実施例1と同様にして、実測空隙率、圧縮強度、保水量を測定した。
それぞれの結果を、表2~3に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表2から、実施例1~2における積みブロックの圧縮強度(材齢7日:26.5~33.6N/mm、材齢14日:26.5~30.3N/mm)は、18N/mm以上(一般的な積みブロックに求められる圧縮強度)であることがわかる。
表3から、実施例1~2における積みブロックの各材齢における保水量は、各々、比較例1における積みブロックの各材齢における保水量よりも大きいことがわかる。
【0034】
また、実施例1における積みブロックの、材齢6日における保水量(0.077g/cm)及び材齢7日における保水量(0.076g/cm3)から算出される保水量の減少率((材齢6日における保水量-材齢7日における保水量)/材齢6日における保水量×100%)は、1.30%であった。
また、実施例2における積みブロックの、材齢6日における保水量(0.084g/cm)及び材齢7日における保水量(0.082g/cm3)から算出される保水量の減少率((材齢6日における保水量-材齢7日における保水量)/材齢6日における保水量×100%)は、2.38%であった。
一方、比較例1における積みブロックの、材齢6日における保水量(0.064g/cm)及び材齢7日における保水量(0.060g/cm3)から算出される保水量の減少率((材齢6日における保水量-材齢7日における保水量)/材齢6日における保水量×100%)は、6.25%であった。
すなわち、実施例1~2における積みブロックの材齢6~7日における保水量は0.080g/cm程度であり、その保水量の減少率(1.30~2.38%)は、比較例1における積みブロックの材齢6~7日における保水量の減少率(6.25%)よりも小さく、保水量の減少の程度が頭打ちになっていることがわかる。したがって、実施例1~2における積みブロックは、植栽を育成しやすいものであることがわかる。
【符号の説明】
【0035】
積みブロック
2 基層
3 表層
4 型枠
5 治具
6,8 空洞
7a 水硬性組成物Aの未硬化体
7b 水硬性組成物Aの硬化体
9a 水硬性組成物Bの未硬化体
9b 水硬性組成物Bの硬化体
9c 水硬性組成物Bの割裂体
10 一対の積みブロック
図1
図2
図3