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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】紙幣処理装置及び紙幣処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/60 20190101AFI20230313BHJP
   G07D 11/20 20190101ALI20230313BHJP
   G07D 7/00 20160101ALI20230313BHJP
   G07D 7/187 20160101ALI20230313BHJP
【FI】
G07D11/60
G07D11/20
G07D7/00 J
G07D7/187
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018224374
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020087228
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 高士
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169671(JP,A)
【文献】特開2016-218713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
G07D 7/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の識別を行う識別部と、
設定された処理内容と前記識別部の識別結果とに基づいて、前記紙幣に関する処理を行う処理部と、
操作者の操作に基づいて前記識別部の識別事項を設定する識別設定部と、
前記識別設定部が設定をした識別事項を出力する出力部と、
操作者の操作に基づいて前記処理内容を設定する処理設定部と、
前記識別設定部が設定した識別事項と、前記処理設定部が設定した処理内容との組み合わせに基づいて、処理の実行可否を判断する制御部と、を備え、
前記出力部は、前記識別事項として所定の事項が設定された場合には、第1の態様で識別事項を出力しかつ、前記所定の事項が設定されていない場合には、第2の態様で識別事項を出力し、
前記制御部は、処理の実行ができないと判断した場合には、前記処理部が処理を実行することを制限する紙幣処理装置。
【請求項2】
前記識別設定部は、前記紙幣の正損の識別レベルを設定し、
前記所定の事項は、前記紙幣の正損を識別しないことであり、
前記出力部は、前記紙幣の正損を識別することが設定された場合には、設定された識別レベルを通常の態様で出力しかつ、前記紙幣の正損を識別しないことが設定された場合には、正損の識別をしない旨を警告の態様で出力する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別事項として前記所定の事項が設定されかつ、処理の実行ができると判断した場合には、前記出力部に前記第2の態様で前記識別事項を出力させかつ、前記処理部が処理を実行することを許可する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、処理の実行ができないと前記制御部が判断した場合には、前記識別事項の再設定を操作者に促す出力を行う請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
操作者の操作に基づいて、識別部が紙幣の識別を行う際の識別事項を、識別設定部が設定するステップと、
前記識別事項として所定の事項が設定された場合に、出力部が第1の態様で識別事項を出力するステップと、
前記識別事項として前記所定の事項が設定されていない場合に、前記出力部が第2の態様で識別事項を出力するステップと、
操作者の操作に基づいて、処理部が実行する処理内容を、処理設定部が設定するステップと、
設定された処理内容と前記識別部の識別結果とに基づいて、前記処理部が前記紙幣に関する処理を行うステップと、
設定された識別事項と、設定された処理内容との組み合わせに基づいて、制御部が処理の実行可否を判断するステップと、
処理の実行ができないと前記制御部が判断した場合に、前記処理部が処理を実行することを制限するステップと、を備えている紙幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置及び紙幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣整理機が記載されている。紙幣整理機は、操作者が設定をした処理内容と、識別部が紙幣の識別を行った結果と、に基づいて紙幣に関する処理を行う。特許文献1の紙幣整理機は、例えば、投入された紙幣を識別して、正券のみからなる帯封紙幣を作成したり、正券及び損券が混合している帯封紙幣を作成したり、することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-107061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような紙幣処理装置は、識別部が識別を行う紙幣の正損レベル(つまり、正券と判断するか、損券と判断するかの境となる識別レベル)を、操作者が変更・設定することが可能に構成されている。操作者は、紙幣の正損レベルを、厳しいレベルから甘いレベルまで、複数の段階から、任意に選択することができる。
【0005】
また、操作者は、紙幣の正損を識別しないと設定することも可能である。
【0006】
ところが、操作者が紙幣の正損の識別を行わないと設定する一方で、操作者が正券のみから帯封紙幣を作成することを設定した場合、正券のみの帯封紙幣を作成するには紙幣の正損を識別しなければならないため、紙幣処理装置は、処理を適切に実行することができない。具体的には、識別できる全ての紙幣が帯封されるため、正券と損券が混合状態の帯封紙幣が生成される。紙幣処理装置が処理を適切に実行するために、現在設定している紙幣の識別事項を、操作者に適切に伝えることが好ましい。
【0007】
また、操作者が正券及び損券が混合している帯封紙幣を作成することを設定した場合は、正損を識別することは不要になる。操作者が紙幣の正損の識別を行わないことを設定しても、紙幣処理装置は処理を実行することができる。しかしながら、紙幣の正損の識別を行わない設定は、希な設定である。識別事項が希な設定である点を操作者に対し報知することが、操作者が紙幣処理装置を用いて処理を正しく行う上では有利になる。
【0008】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置において、設定している識別事項を、操作者に対し適切に伝える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に、ここに開示する紙幣処理装置は、紙幣の識別を行う識別部と、設定された処理内容と前記識別部の識別結果とに基づいて、前記紙幣に関する処理を行う処理部と、操作者の操作に基づいて前記識別部の識別事項を設定する識別設定部と、前記識別設定部が設定をした識別事項を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記識別事項として所定の事項が設定された場合には、第1の態様で識別事項を出力しかつ、前記所定の事項が設定されていない場合には、第2の態様で識別事項を出力する。
【0010】
この構成によると、出力部は、識別事項として所定の事項が設定されている場合と、設定されていない場合とで、当該識別事項を異なる態様で出力する。操作者に対し、設定している識別事項を適切に伝えることができる。
【0011】
前記識別設定部は、前記紙幣の正損の識別レベルを設定し、前記所定の事項は、前記紙幣の正損を識別しないことであり、前記出力部は、前記紙幣の正損を識別することが設定された場合には、設定された識別レベルを通常の態様で出力しかつ、前記紙幣の正損を識別しないことが設定された場合には、正損の識別をしない旨を警告の態様で出力する、としてもよい。
【0012】
こうすることで、紙幣の正損を識別しないことが設定されている場合に、操作者に対し注意を喚起することができる。
【0013】
紙幣処理装置は、操作者の操作に基づいて前記処理内容を設定する処理設定部と、前記識別設定部が設定した識別事項と、前記処理設定部が設定した処理内容との組み合わせに基づいて、処理の実行可否を判断する制御部と、を備え、前記制御部は、処理の実行ができないと判断した場合には、前記処理部が処理を実行することを制限する。
【0014】
こうすることで、識別事項の設定に起因して紙幣処理装置が不適切な処理を実行することを抑制することができる。
【0015】
前記制御部は、前記識別事項として前記所定の事項が設定されかつ、処理の実行ができると判断した場合には、前記出力部に前記第2の態様で前記識別事項を出力させかつ、前記処理部が処理を実行することを許可する、としてもよい。
【0016】
こうすることで、紙幣処理装置が処理を適切に実行することを可能になると共に、操作者に対し、設定している識別事項を伝えることができる。
【0017】
前記出力部は、処理の実行ができないと前記制御部が判断した場合には、前記識別事項の再設定を操作者に促す出力を行う、としてもよい。
【0018】
再設定を促された操作者が、識別事項の再設定を行うことによって、紙幣処理装置は、処理を、適切に実行することが可能になる。
【0021】
ここに開示する紙幣処理方法は、操作者の操作に基づいて、識別部が紙幣の識別を行う際の識別事項を、識別設定部が設定するステップと、前記識別事項として所定の事項が設定された場合に、出力部が第1の態様で識別事項を出力するステップと、前記事項として前記所定の事項が設定されていない場合に、前記出力部が第2の態様で識別事項を出力するステップと、操作者の操作に基づいて、処理部が実行する処理内容を、処理設定部が設定するステップと、設定された処理内容と前記識別部の識別結果とに基づいて、前記処理部が前記紙幣に関する処理を行うステップと、設定された識別事項と、設定された処理内容との組み合わせに基づいて、制御部が処理の実行可否を判断するステップと、処理の実行ができないと前記制御部が判断した場合に、前記処理部が処理を実行することを制限するステップと、を備えている。
【0022】
こうすることで、識別事項の設定に起因して紙幣処理装置が不適切な処理を実行することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、前記の紙幣処理装置及び紙幣処理方法によると、設定している識別事項を、操作者に対し適切に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、紙幣処理装置の外観を例示する斜視図である。
図2図2は、紙幣処理装置の内部構成を例示する図である。
図3図3は、紙幣の正損に係る識別事項を説明する図である。
図4図4は、処理の実行が不可になる識別事項と処理内容との組み合わせを示す図である。
図5図5は、紙幣処理装置の表示部に表示される処理開始前の待機画面を例示する図である。
図6図6は、設定されている識別パターンの詳細を示す画面を例示する図である。
図7図7は、図6とは異なる識別パターンの詳細を示す画面を例示する図である。
図8図8は、正損の識別をオフにした場合の、処理開始前の待機画面を例示する図である。
図9図9は、正損の識別がオフであることを出力する変形例を示す図である。
図10図10は、処理の実行が不可である場合の、処理開始前の待機画面を例示する図である。
図11図11は、識別レベルの再設定を促す変形例を示す図である。
図12図12は、設定している識別レベルに対して、選択することができない処理内容をユーザに提示する、設定画面を例示する図である。
図13図13は、ここに開示する技術が適用可能な紙幣処理装置(紙幣整理機)を例示する外観図である。
図14図14は、ここに開示する技術が適用可能な貨幣処理装置(出納機)を例示する外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、紙幣処理装置及び紙幣処理方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、紙幣処理装置の一例である。図1は、紙幣処理装置1の外観を示している。図2は、紙幣処理装置1の内部の構成を示している。
【0028】
紙幣処理装置1は、紙幣を識別及び計数し、種類別に分類をした上で、所定枚数毎の帯封紙幣を作成したり(帯封モード)、紙幣を所定枚数毎に区分したり(バッチモード)、紙幣の計数を行ったり(入金モード)する装置である。紙幣処理装置1は、紙幣整理機とも呼ばれる。尚、以下の説明では、便宜上、図2における紙面左を「前」、紙面右を「後」と呼ぶ場合がある。
【0029】
(紙幣処理装置の構成)
紙幣処理装置1には、バラ紙幣を集積する第1外部集積部11及び第2外部集積部12と、バラ紙幣が投入される投入部13、リジェクト券を集積するリジェクト部14、帯封された紙幣を出金するための投出部15、及び、後述する端数紙幣を返却する返却部16がそれぞれ設けられている。
【0030】
投入部13は、筐体10の前面の上部に設けられている。操作者は投入部13の内部にバラ紙幣を投入することができる。投入部13は、複数枚の紙幣を、集積した状態で保持することができる。投入部13には、様々な金種を含む紙幣が投入される。投入部13は、保持している紙幣を、繰り出しローラ131によって一枚一枚、筐体10の内部へ繰り出す。
【0031】
第1外部集積部11及び第2外部集積部12は、紙幣処理装置1の筐体10の上部に、前後に並んで設けられている。第1外部集積部11及び第2外部集積部12はそれぞれ、複数枚の紙幣を集積することができる。操作者は、第1外部集積部11及び第2外部集積部12に集積されている紙幣を、手で取り出すことができる。
【0032】
リジェクト部14は 筐体10の前面における投入部13の下側に設けられている。リジェクト部14は、複数枚の紙幣を集積することができる。操作者は、リジェクト部14に集積されている紙幣を、手で取り出すことができる。
【0033】
投出部15は、筐体10の前面の下部に開口している。帯封紙幣は、投出部15のスロープを通って筐体10の外に投出される。投出部15から投出された帯封紙幣は、予め置かれた容器等に入る。
【0034】
返却部16は、筐体10の上部に設けられている。返却部16は、紙幣が載るトレイ161を有している。トレイ161は、図2に実線及び一点鎖線で示すように、前後方向に移動する。紙幣を載せたトレイ161が、一点鎖線に示すように前進すると、操作者は、トレイ161から紙幣を、手で取り出すことができる。
【0035】
紙幣処理装置1の上部には、表示部17が設けられている。表示部17は、返却部16の上側に配設されている。表示部17は、タッチパネルからなる。表示部17は、操作者が操作を行うための操作部を兼用する。表示部17は、紙幣処理装置1が処理を行っているときには、紙幣の処理状況等の情報を含んだ計数画面を表示する。表示部17はまた、紙幣の処理に関する複数の項目を、操作者が設定入力するための設定画面を表示する。表示部17は、出力部の一例である。
【0036】
図2に示すように、紙幣処理装置1は、筐体10の内部に、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、帯封部7、制御部41、及び記憶部42を備えている。
【0037】
搬送部3は、紙幣の搬送方向の順に、投入部13から、識別部18、第1反転部21、リジェクト部14、第2反転部22、第1~第5集積部51~55、第1外部集積部11及び第2外部集積部12までの間で、バラ紙幣の搬送を行う。搬送部3は、筐体10の内部に配設された搬送路を有している。搬送路は、詳細な図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、搬送される紙幣を検出する通過センサ及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送部3は、所定の間隔を空けて、紙幣を一枚一枚、搬送路に沿って搬送する。
【0038】
識別部18は、紙幣の搬送方向について、投入部13の下流に設けられている。識別部18は、搬送路に沿って搬送される紙幣の金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。
【0039】
第1反転部21は、スイッチバック機構を含み、識別部18の識別結果に応じて、紙幣の表裏及び天地方向の両方を、選択的に反転するよう構成されている。第1反転部21は、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がある紙幣の表裏及び天地方向の向きを反転させると共に、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がない紙幣を、そのまま通過させる。第1反転部21を通過した紙幣は、少なくとも表裏が揃っている。
【0040】
第1反転部21の前側には、リジェクト部14が配設されている。リジェクト部14につながる搬送路141は、紙幣の搬送方向について第1反転部21の下流から分岐している。リジェクト券と識別された紙幣は、リジェクト部14に搬送される。
【0041】
第2反転部22は、スパイラル機構を含み、紙幣の搬送幅方向の向きを、選択的に反転するよう構成されている。第2反転部22は、識別部18の識別結果に応じて、左右方向の向きを反転する必要がある紙幣の左右方向の向き及び表裏を反転させると共に、左右方向の向きを反転する必要がない紙幣を、そのまま通過させる。この紙幣処理装置1は、反転部として、第1反転部21と第2反転部22との二種類の反転部を備えることにより、紙幣の表裏及び天地方向の向きの両方を揃えることができる。
【0042】
第1~第5集積部51~55は、識別部18、第1反転部21及び第2反転部22の後側に配設されている。第1~第5集積部51~55は、上下方向に並んで配設されている。第1~第5集積部51~55は、帯封対象の紙幣を、例えば金種毎に集積する。操作者は、第1~第5集積部51~55に集積する紙幣の種類を設定することができる。
【0043】
第2反転部22の下流で紙幣を搬送する搬送路は、第1~第5集積部51~55の前側でかつ、識別部18、第1反転部21及び第2反転部22の後側で、第1~第5集積部51~55に沿うように上下方向に伸びて配設されている。上下方向に伸びる搬送路から分岐した五つの分岐路が、第1~第5集積部51~55のそれぞれに接続されている。紙幣は、第1~第5集積部51~55のそれぞれに対し、前側から投入される。投入された紙幣は、第1~第5集積部51~55のそれぞれに集積される。
【0044】
図示は省略するが、各分岐路の分岐箇所には、紙幣の搬送方向を切り替える分岐爪が設けられている。制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、各分岐爪を動かす。このことによって、紙幣は、第1~第5集積部51~55に、選択的に投入される。
【0045】
上下方向に伸びる搬送路の下流側は、途中で二つに分岐して、第1外部集積部11及び第2外部集積部12のそれぞれに接続されている。分岐箇所には、図示は省略するが、分岐爪が配設されている。制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、分岐爪を動かすことにより、紙幣は、第1外部集積部11及び第2外部集積部12に、選択的に投入される。
【0046】
運搬部6は、上下方向に並んだ第1~第5集積部51~55の後側に配設されている。運搬部6は、紙幣を掴むアーム部61と、アーム部61を上下方向に往復移動させるガイド部62とを備えている。ガイド部62は、上下方向に伸びている。アーム部61は、ガイド部62に沿って上下方向に移動をする。アーム部61は、第1~第5集積部51~55それぞれの高さ位置に位置づけられ、第1~第5集積部51~55に集積されている紙幣を、後方に向かって取り出す。
【0047】
帯封部7は、第2反転部22の下側に配設されている。帯封部7は、運搬部6の下端部に位置している。運搬部6は、第1~第5集積部51~55から取り出した紙幣を、帯封部7に運搬する。帯封部7の構成の詳細な図示は省略するが、帯封部7は、公知の様々な構成を採用することができる。帯封部7は、例えば紙幣の束の外周囲に帯封紙を巻き付けることによって帯封を行うようにしてもよい。帯封部7はまた、帯封紙によって形成した輪の中に紙幣の束を挿入することによって帯封を行うようにしてもよい。
【0048】
帯封部7は、帯封紙に情報を印す印字部71を有している。印字部71は、帯封紙に印刷を行う印刷部、及び、帯封紙にスタンプを押す押印部の両方、又は、いずれか一方を含んでいる。印字部71は、帯封をする前、又は、帯封をした後に、帯封紙に情報を印す。印字部71は、帯封を行った日時の情報や、帯封処理を行った操作者を特定する情報等を、帯封紙に印す。また、印字部71は、例えば帯封紙幣を作成した金融機関名の情報、及び、帯封紙幣が損券である旨の情報を、帯封紙に印す。
【0049】
帯封部7の前側には、ベルト式の第2運搬部72が設けられている。第2運搬部72は、帯封部7が帯封をした帯封紙幣を、前方に向かって投出部15まで搬送する。帯封紙幣は、投出部15のスロープを通って筐体10の外に投出される。
【0050】
紙幣処理装置1が分類処理を行った際、帯封枚数に至らずに第1~第5集積部51~55に紙幣が残ってしまう場合がある。運搬部6は、第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣を返却部16へ運搬する。
【0051】
制御部41は、図示は省略するが、第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、返却部16、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、及び、帯封部7が、信号の授受可能に接続されている。記憶部42には、各種の情報やプログラムが記憶されている。制御部41は、前述した第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、返却部16、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、及び、帯封部7に、記憶部42が記憶している各種の情報やプログラムに基づいて制御信号を出力する。このことにより、紙幣処理装置1は、紙幣を識別及び計数し、種類別に分類をする処理を行う。第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、返却部16、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、及び、帯封部7は、処理部を構成する。
【0052】
記憶部42は、表示部17に表示をする各種の画面に関する情報、及び、帯封モード、バッチモード及び入金モードにおいて設定が必要な複数の項目について予め設定をした登録パターンの情報(後述するように、紙幣の正損に関する識別パターンの情報を含む)等を記憶している。記憶部42はまた、詳細は後述するが、処理を実行することができない、紙幣の正損に関する識別事項と処理内容との組み合わせに関する情報を記憶している(図4も参照)。
【0053】
紙幣処理装置1の筐体10における、第1外部集積部11及び第2外部集積部12の側部には、図1に示すように、操作者が操作を行うスタートボタン19が設けられている。操作者は、投入部13に、処理対象の紙幣を投入した後、スタートボタン19を操作することによって、紙幣処理装置1に、処理を開始させることができる。
【0054】
紙幣処理装置1にはまた、ネットワーク81を介して操作端末82が接続されている。操作者は、操作端末82を操作することによって、紙幣処理装置1に、処理を開始させることもできる。尚、操作端末82は、ネットワーク81を介さずに、紙幣処理装置1に直接的に接続することも可能である。
【0055】
さらに、紙幣処理装置1は、自動スタートを設定することが可能に構成されている。自動スタートとは、操作者が処理対象の紙幣を投入部13に投入すれば、そのことをセンサが検知することによって、スタートボタン19の操作や、操作端末82の操作を行わなくても、紙幣処理装置1が処理を開始することである。
【0056】
(紙幣処理装置の処理モード)
前述したように、紙幣処理装置1は、紙幣に関する処理を行うモードとして、帯封モード、バッチモード及び入金モードの三つのモードを有している。
【0057】
ここで、各モードにおける紙幣の処理について簡単に説明をする。先ず、帯封モードでは、投入部13に投入された紙幣について、操作者によって指定された紙幣を結束した帯封紙幣を作成する。作成された帯封紙幣は、投出部15から投出される。帯封モードにおいては、指定外の紙幣の一部についても、第1外部集積部11及び/又は第2外部集積部12を利用することによって、分類することができる。帯封対象に指定された紙幣、及び、第1外部集積部11又は第2外部集積部12に集積される紙幣以外の紙幣は、リジェクト部14に集積される。
【0058】
バッチモードは、投入部13に投入された紙幣について、操作者によって指定された紙幣を、所定枚数に区分する。指定された紙幣は、第1外部集積部11及び第2外部集積部12に交互に集積される。指定外の紙幣は、リジェクト部14に集積される。
【0059】
入金モードは、投入部13に投入された紙幣の計数を行うが、入金モードにおいては、いずれか一の金種を指定することにより、当該金種の紙幣を、第1外部集積部11に集積することができる。指定外の紙幣は、第2外部集積部12に集積される。
【0060】
(紙幣処理装置の識別レベル)
紙幣処理装置1は、識別部18が紙幣の正損を識別することに関し、その識別レベル(具体的には、正券と判断するか、損券と判断するかの境となる識別レベル)を操作者が変更・設定することが可能に構成されている。操作者は、後述するように、表示部17に表示される設定画面において、識別レベルを変更・設定することが可能である。
【0061】
図3は、紙幣の正損の識別に係るレベルを例示している。操作者が、正損(具体的には汚損)に関する識別レベルを、金種毎に、レベル1~レベル7までの7段階で設定することが可能になるよう、紙幣処理装置1は構成されている。レベル1は、識別レベルが甘い(つまり、損券と識別される紙幣が少なくなる)。レベル7は、識別レベルが厳しい(つまり、損券と識別される紙幣が多くなる)。操作者はまた、選択した各レベルにおいて、識別レベルの補正を行うことが可能である。
【0062】
紙幣処理装置1はまた、設定画面において、操作者が、正損に関する識別を行わない設定(つまり、OFF設定、又は、レベル0設定)をすることが可能に構成されている。正損の識別をOFFにしたときに、識別部18は、識別可能な全ての紙幣を正券と識別するように構成してもよい。
【0063】
操作者が、識別レベルを選択した後、識別レベルの補正をマイナス方向に補正する結果、正損に関する識別を行わない設定がなされるよう構成してもよい。以下の説明において、操作者が紙幣の正損を識別しない設定をすること(つまり、識別をOFFにすること)には、操作者が正損に係る識別をOFFにすること、及び、操作者が識別レベルを補正することによって結果的に、正損の識別がOFFになることの両方が含まれる。
【0064】
尚、損券の判定項目としては、紙幣の厚みに関する「厚損」、紙幣の欠けに関する「欠損」、紙幣の汚れに関する「汚損」の大きく三つがある。操作者は、紙幣の正損に関する識別レベルの設定を、これらの判定項目毎に行うことができると共に、汚損に関しては、金種毎に識別レベルを設定することができる。設定した識別レベルの組み合わせは、識別パターンとして予め記憶部42に記憶させることができる。後述するように、操作者は、紙幣処理装置1を用いて処理を行う際に、記憶されている識別パターンの中から、所望の識別パターンを選択することができると共に、選択した識別パターンにおいて、各項目及び各金種の識別レベルを設定することができる。
【0065】
尚、操作者は、表示部17に表示される設定画面において、正損の識別レベルを変更したり、識別をOFFにしたりする以外に、紙幣処理装置1の、例えば初期設定によって、当該紙幣処理装置1を、紙幣の正損を識別しない運用(設定)にすることも可能である。
【0066】
図4は、正損の識別をOFFにすることに起因して紙幣処理装置1が処理を実行することができない、識別事項と処理内容との組み合わせを例示している。図4に示す組み合わせ情報は、記憶部42に記憶されている。具体的に、紙幣処理装置1は、入金モードと、正損の識別をOFFにする識別事項との組み合わせでは、入金処理を実行することができない。同様に、紙幣処理装置1は、バッチモードと、正損の識別をOFFにする識別事項との組み合わせでは、バッチ処理を実行することができない。
【0067】
紙幣処理装置1は、帯封モードに関し、正券のみの帯封紙幣を作成する場合(正券)、損券のみの帯封紙幣を作成する場合(損券)、正券の帯封紙幣及び損券の帯封紙幣を分けて作成する場合(正損分類)は、正損の識別をOFFにする識別事項との組み合わせでは、帯封処理を実行することができない。これらの処理は、正券と損券とを分類することが必要なためである。
【0068】
一方、紙幣処理装置1は、帯封モードに関し、正券及び損券の両方が含まれ得る帯封紙幣を作成する場合(正損混合)は、正損の識別をOFFにする識別事項との組み合わせでも、帯封処理を実行することができる。この処理は、正券と損券とを分類することが不要なためである。
【0069】
後述するように、制御部41は、識別事項と処理内容との組み合わせ情報に基づいて、操作者が設定をした識別事項及び処理内容に応じて、紙幣処理装置1の表示部17が表示する画面の態様を変更する。
【0070】
(紙幣処理装置の画面表示)
前述したように、操作者は、紙幣の識別に関する事項として、正損に関する識別を行わない設定を行うことが可能である。この設定は希な設定であるため、紙幣処理装置1を用いて紙幣の処理を適切に行うためには、操作者に対して、希な設定を行っていることを通知し、操作者の注意を喚起することが好ましい。また、操作者が、紙幣処理装置1に不適切な処理を実行させてしまうことを抑制するために、識別事項と処理内容との組み合わせに関し、処理を実行することができない組み合わせが設定されている場合は、操作者に、その旨を報知することが好ましい。
【0071】
紙幣処理装置1は、操作者に、設定されている識別事項を適切に伝えることができるよう、表示部17に表示する画面を構成している。制御部41は、表示部17に表示する画面の制御を行うと共に、画面を通じた操作者の操作に応じて、各種の設定を行ったり、表示部17の表示を制御したりする。
【0072】
図5は、表示部17に表示される処理開始前の画面D1を例示している。図5の画面D1では、処理モードとして、帯封モードが選択されていると共に、現行券の金種毎に、正損混合の帯封紙幣を作成するように、処理内容が設定されている。
【0073】
操作者が、画面D1の上部の「帯封」のタブを選択すると、図示は省略するが、操作者は、処理モードを「入金」「バッチ」「帯封」から選択することができると共に、選択した処理モードにおいて、その処理内容を設定することができる(つまり、処理設定部に相当する)。
【0074】
画面D1の右下部には、「損検知1」と記載されたボタンが設けられている。このボタンは、現在設定されている、紙幣の正損に関する識別パターンを、操作者に報知している。つまり、図5の例は、識別パターン1が設定されていることを意味している。識別パターンは、複数の判定項目に係る識別レベルの組み合わせとして、記憶部42に記憶されている。識別パターンを出力することは、当該識別パターンに対応する識別レベルを出力することと等価である。
【0075】
操作者が、当該ボタン(「損検知1」と記載されたボタン)を選択すると、表示部17は、図6に示す画面D2を表示する。画面D2は、現在設定されている識別パターン1の詳細を、ポップアップ画面D21で、操作者に提示する。ポップアップ画面D21の上部には、現在設定されている識別パターンが「1」であることが示されている。図例では、識別パターン1は、「厚損」がレベル4、「欠損」がレベル4、「汚損」が「万券」、「5千券」、「2千券」、及び「千券」の各金種について、レベル4が設定されていることを示している。
【0076】
操作者は、ポップアップ画面D21における「厚損」、「欠損」、並びに「汚損」の「万券」、「5千券」、「2千券」、及び「千券」の各項目を選択することによって、各項目の識別レベルを変更・設定することができる(つまり、識別設定部に相当する)。尚、ポップアップ画面における「暗証番号 なし」は、各項目の識別レベルを変更・設定するための暗証番号が設定されていないことを意味している。
【0077】
画面D2におけるポップアップ画面D21において、「1」の両側には、識別パターンを変更するための矢印「<」「>」が設けられている。操作者は、「<」又は「>」を操作することによって、識別パターンを変更することができる。
【0078】
図7は、操作者が、識別パターン2を選択したときの画面D3を例示している。識別パターン2は、識別パターン1とは異なり、汚損の識別レベルが、全ての金種についてOFFである。識別パターン2は、正損を識別しない識別パターンである。操作者は、画面D3のポップアップ画面D31において、「変更」を選択すると、紙幣の正損の識別パターンを、識別パターン2に設定することができる。
【0079】
図8は、図7の画面において操作者が「変更」を選択した後に、表示部17が表示する画面D4を例示している。前述したように、識別パターンは識別パターン2に変更されている。識別パターン2は、全て金種について正損を識別しない。画面D4は、希な識別パターンを設定していることを操作者に伝えるために、画面右下に設けたボタンを、色つきに変更している。ボタンは、警告色としてもよい。警告色は、例えば赤色である。ボタンを色つきにすることは、「警告の態様での出力」に相当する。一方、図5に示す画面D1は、画面右下に設けたボタンを、色無し(つまり、白色)にしている。ボタンを色無しにすることは、「通常の態様での出力」に相当する。
【0080】
また、画面D4におけるボタンは、識別パターンの番号を示す代わりに、「損検知無効」と表示している。こうすることで、操作者に、正損の識別をしないことを認識させることができる。尚、画面D4におけるボタンを、画面D1と同様に、「損検知2」と表示してもよい。
【0081】
前述したように、汚損の識別に関しては、金種毎に、識別レベルをOFFにすることが可能である。識別パターン2のように、全て金種について正損の識別がOFFであるときにのみ、画面D4における画面右下のボタンを警告色にしてもよい。いずれかの金種についての正損の識別がOFFでないときには、画面D4における画面右下のボタンを、警告色ではなく、通常の色無しにしてもよい。
【0082】
また、図示は省略するが、紙幣の正損の識別がOFFであるときには、ボタンを点滅させることによって、操作者の注意を喚起するようにしてもよい。尚、ボタンは、警告色又は色無しのいずれであってもよい。また、正損の識別がOFFに設定されているときには、画面の背景色を、正損の識別がOFFに設定されていないときとは異なる色にしてもよい。背景色は、操作者の注意を喚起するのであれば、どのような色(例えば警告色)であっても良い。
【0083】
また、表示部17が表示する画面の構成を変更することに代えて、又は、画面の構成を変更することに加えて、紙幣処理装置1は、例えば「損検知は無効に設定されています」といった音声を出力してもよい。この構成も出力部の一例である。こうすることで、操作者は、正損の識別がOFFに設定されていることに気づきやすくなる。
【0084】
図9は、図8とは異なる態様の画面D5の構成例を示している。画面D5は、正損の識別がOFFに設定されている場合に、画面上部に、「損検知は無効に設定されています」という文言が右から左へスクロールするような形態で表示している。こうしたスクロール表示を利用して、正損の識別をしない旨を出力することによって、操作者の注意を喚起することができる。
【0085】
図8の画面D4では、帯封モードとして「正損混合」が設定されている。図4に示すように、正損混合の帯封モードと、正損の識別がOFFの識別事項とは、処理の実行が可能な組み合わせである。画面D4は、その上部に、「スタートできます」と表示しており、操作者に処理の実行が可能な旨を報知している。操作者は、前述したように、スタートボタン19を操作するか、操作端末82を操作するか、又は、(自動スタートが設定されている場合)処理対象の紙幣を投入部13に投入するか、を行うことにより、紙幣処理装置1は、紙幣の帯封処理を開始する。つまり、制御部41は、処理の実行を許可する。
【0086】
これに対し、図10に示す画面D6では、帯封モードとして「正券」が設定されている。図4に示すように、正券の帯封モードと、正損の識別がOFFの識別事項とは、処理の実行ができない組み合わせである。画面D6は、画面D5とは異なり、その上部に「損検知パターンを確認してください」と表示している。操作者に、識別パターンの再設定を促している。
【0087】
紙幣処理装置1は、画面D6の状態においては、操作者が仮に、スタートボタン19を操作しても、帯封処理を開始しない。制御部41は、識別事項と処理内容との組み合わせに基づき処理の実行ができないと判断した場合は、処理の実行を制限する。尚、操作者が操作端末82を操作した場合も同様に、紙幣処理装置1は、帯封処理を開始しない。また、自動スタートが設定されていて、操作者が処理対象の紙幣を投入部13に投入しても、紙幣処理装置1は、紙幣の帯封処理を開始しない。こうして、紙幣処理装置1は、不適切な紙幣の処理の実行を抑制することができる。
【0088】
尚、画面D6において、操作者が識別パターンの再設定を行うことにより、処理の実行が可能な、識別事項と処理内容との組み合わせになれば、紙幣処理装置1は、操作者の操作に応じて、帯封処理を開始する。
【0089】
図11は、図10とは異なる態様の画面D7の構成例を示している。画面D7は、処理が実行できない、識別事項と処理内容との組み合わせが設定されている場合に、ポップアップ画面D71を表示している。ポップアップ画面D71には、「損検知パターンを確認して下さい。」という文言と矢印とが表示されており、操作者が「損検知無効」のボタンを操作して識別パターンの再設定を促すよう構成されている。
【0090】
尚、ポップアップ画面に代えて、操作者に「損検知無効」のボタンを操作させるよう誘導する、誘導アイコンを画面に表示してもよい。
【0091】
また、設定画面において、実行することができない識別事項と処理内容との組み合わせを、操作者が選択したタイミングで、紙幣処理装置1は、警告音(例えばブザー音)を発したり、音声による警告メッセージ(例えば「損検知が無効であるため、この処理を実行することができません」を発したりしてもよい。この構成も出力部の一例である。
【0092】
さらに、実行することができない識別事項と処理内容との組み合わせを、操作者が選択することを抑制するために、例えば図12に示すように、処理内容を設定する画面D8において、選択肢の一部を、設定されている識別事項に対応して、操作者が選択できないように制限してもよい。
【0093】
画面D8は、帯封モードにおける処理内容を設定する画面を例示している。具体的に、この画面D8には、設定項目として、(1)帯封対象の「金種」、(2)帯封対象の「券種」、(3)帯封対象の「刷種」、及び、(4)第1外部集積部11及び第2外部集積部12に集積をする、帯封対象外の紙幣の分類ルール(「スタッカ」)、を含んでいる。
【0094】
ここで、当該画面D8の右下に示すように、識別パターンは「2」が設定されている。図7に示す通り、識別パターン2は、全ての金種について、正損の識別をOFFにする識別事項を含んでいる。画面D8において、帯封対象の券種を選択する項目では、正損の識別をOFFにする識別事項と組み合わせることができない「正券」「損券」「正損分類」の各選択肢を、操作者が選択できないように構成されている。図例においては、これらの選択肢をグレーアウト状態で表示している。尚、これらの選択肢を表示しないようにしてもよい。「正損混合」の選択肢は、正損の識別をOFFにする識別事項と組み合わせることができるため、操作者は選択することができる。このように、処理内容を設定する画面D8において、処理の実行が不可能となる処理内容の選択ができないよう構成することにより、処理を実行することができない識別事項と処理内容との組み合わせを、操作者が設定してしまうことを、未然に防止することができる。
【0095】
尚、図示は省略するが、前記とは逆に、識別パターンを設定する画面において、設定されている処理内容に対して組み合わせることができない選択肢を、操作者が選択することができないよう構成してもよい。
【0096】
ここで、紙幣処理装置1は、初期設定において、「旧券」をリジェクト紙幣扱いに設定することができる。初期設定において、「旧券」をリジェクト紙幣扱いに設定した場合、図12に例示している画面において、刷種として「旧券」及び「現旧分類」を選択することはできなくなると共に、「スタッカ」において「現旧分類」を選択することはできなくなる。
【0097】
尚、以上においては、全ての金種について正損の識別をOFFにすることを例に、ここに開示する技術を説明した。正損の識別レベルは、図6の画面D2に示すように金種毎に設定することが可能でありかつ、帯封処理は、図12の画面D8に示すように金種毎に処理を行うことができる。そこで、制御部41は、処理の実行の可否を、金種毎に判断してもよい。つまり、正損の識別をOFFに設定している金種を対象とした処理(但し、正損識別が必要な処理)は、実行を不可にし、正損の識別をOFFに設定している金種を対象としない処理は、実行を可にしてもよい。例えば、万券についてのみ正損の識別をOFFにする識別事項が設定されている場合、万券について「正券」「損券」「正損混合」の帯封処理は実行不可とし、万券以外の「5千券」「2千券」及び「千券」について、「正券」「損券」「正損混合」の帯封処理は実行可としてもよい。尚、記憶部42は、金種毎に、識別事項と処理内容との組み合わせと、処理の実行の可否とを記憶してもよい。
【0098】
尚、例えば初期設定において、当該紙幣処理装置1を、紙幣の正損を識別しない運用にした場合も、操作者が正損を識別しない設定を行った場合と同様に、各種の出力を行うようにすればよい。
【0099】
ここに開示する技術は、図1に示す紙幣処理装置1に適用することに限らない。例えば図13に例示するような卓上型の紙幣整理機100に、ここに開示する技術を適用してもよい。この紙幣整理機100は、帯封機能を有しておらず、前述した入金モードと、バッチモードとを実行することが可能である。尚、バッチモードは、帯封紙幣の作成を目的として実行することが可能である。バッチモードは、例えば「正券」「損券」「正損分類」「正損混合」のそれぞれについて実行可能にしてもよい。
【0100】
また、ここに開示する技術は、例えば図14に示すような、貨幣処理装置101に適用することが可能である。貨幣処理装置101は、紙幣及び硬貨の処理を行う、いわゆる出納機であり、バラ紙幣及び帯封紙幣の処理を行う紙幣処理機(紙幣処理装置)102を有している。紙幣処理機102は、前記の紙幣処理装置1と同様に、入金モード、バッチモード、及び、帯封モードを実行することが可能である。
【0101】
尚、前記で説明をした識別事項に関する各種の出力(表示)は、紙幣処理装置が有している表示部等を通じて、操作者に出力する他にも、紙幣処理装置に接続されている端末(図1の例では、操作端末82)の表示部等を通じて、操作者に出力するようにしてもよい。
【0102】
さらに、図示は省略するが、ここに開示する技術は、その他の様々な紙幣処理装置、又は、貨幣処理装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 紙幣処理装置
100 紙幣整理機(紙幣処理装置)
102 紙幣処理機(紙幣処理装置)
11 第1外部集積部(処理部)
12 第2外部集積部(処理部)
13 投入部(処理部)
14 リジェクト部(処理部)
16 返却部(処理部)
17 表示部(出力部)
18 識別部
21 第1反転部(処理部)
22 第2反転部(処理部)
3 搬送部(処理部)
41 制御部
42 記憶部
51~55 集積部(処理部)
6 運搬部(処理部)
7 帯封部(処理部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14