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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230313BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230313BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230313BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230313BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230313BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230313BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20230313BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230313BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20230313BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/08
B32B27/00 M
B32B27/18 F
B32B29/00
G09F3/02 V
G09F3/10 H
C09J7/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018227600
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090590
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 明
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 丘雅
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴司
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3134457(JP,U)
【文献】特開2007-254535(JP,A)
【文献】特開2008-069275(JP,A)
【文献】特開平06-239062(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178220(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体である、内容物を収納する容器または当該容器を包む包装材に貼着して用いられる粘着シートであって、
紙基材と、
前記紙基材の一方の面側に設けられた粘着剤層とを有し、
前記粘着剤層は、エマルション型の粘着剤と、香料を内包するマイクロカプセルとを含み、
前記粘着剤層中における前記マイクロカプセルの含有率は、5質量%以上50質量%以下であり、
前記粘着剤層にて前記被着体に貼着した状態から剥離した際に、前記マイクロカプセルが破壊され、前記香料が放散されるよう構成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記紙基材は、そのISO透気度が0.5μm/(Pa・s)以上100μm/(Pa・s)以下である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤およびシリコーン系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
ステンレス鋼板の表面に対する前記粘着剤層の粘着力は、3N/25mm以上20N/25mm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚さは、5μm以上100μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、商品を箱に入れて梱包する際に、粘着ラベルを用いて箱の開封部が閉じられる。また、例えば、商品が入った箱を包装紙でラッピングする際には、粘着テープを用いて包装紙の端部が閉じられる。これらの粘着ラベルや粘着テープは、例えば、基材と、基材の一方の面に積層された粘着剤層とを備えている。
【0003】
一方、香料を内包するマイクロカプセルが粘着剤層中に分散している粘着テープが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の粘着テープでは、粘着剤層を被着体に貼った際に、粘着剤層に含有されたマイクロカプセルが、押圧力によって破壊され、香料が放散されるようになっている。
【0005】
このような粘着テープは、上述の箱の開封部や包装紙の端部に貼った際の押圧力によって、マイクロカプセルが破壊される。このため、開封部や包装紙を開封する際、すなわち粘着剤層を被着体から剥離する際には、香料を放散させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-069275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、被着体から剥離する際に、香料を好適に放散することができる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 被着体である、内容物を収納する容器または当該容器を包む包装材に貼着して用いられる粘着シートであって、
紙基材と、
前記紙基材の一方の面側に設けられた粘着剤層とを有し、
前記粘着剤層は、エマルション型の粘着剤と、香料を内包するマイクロカプセルとを含み、
前記粘着剤層中における前記マイクロカプセルの含有率は、5質量%以上50質量%以下であり、
前記粘着剤層にて被着体に貼着した状態から剥離した際に、前記マイクロカプセルが破壊され、前記香料が放散されるよう構成されていることを特徴とする粘着シート。
【0009】
(2) 前記紙基材は、そのISO透気度が0.5μm/(Pa・s)以上100μm/(Pa・s)以下である上記(1)に記載の粘着シート。
【0011】
) 前記粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤およびシリコーン系粘着剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【0012】
) ステンレス鋼板の表面に対する前記粘着剤層の粘着力は、3N/25mm以上20N/25mm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の粘着シート。
【0013】
) 前記粘着剤層の厚さは、5μm以上100μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被着体から剥離する際に、香料を好適に放散することができる粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の粘着シートの第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。
図2】本発明の粘着シートを被着体から剥離する際の態様を模式的に示す縦断面図である。
図3】本発明の粘着シートの第2実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の粘着シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
《第1実施形態》
まず、本発明の粘着シートの第1実施形態について説明する。
<粘着シート>
図1は、本発明の粘着シートの第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。図2は、本発明の粘着シートを被着体から剥離する際の態様を模式的に示す縦断面図である。
【0017】
図1に示すように、粘着シート1は、紙基材11と、紙基材11の一方の面である第2の面112に設けられた粘着剤層12とを有する。また、粘着剤層12は、エマルション型の粘着剤と、香料を内包するマイクロカプセル20とを含み、粘着剤層12中には、マイクロカプセル20が分散している。そして、粘着シート1は、粘着剤層12にて被着体100に貼着した状態から剥離した際に、マイクロカプセル20が破壊され、前記香料が放散されるよう構成されている。より具体的には、図2に示すように、粘着シート1は、粘着剤層12にて被着体100に貼着した状態から、図2中の矢印Y方向へ引っ張られると、湾曲した状態となる。この際、被着体100からの粘着剤層12の剥離直後の部分、すなわち、剥離先端部123が、変形(特に伸長)する。粘着剤層12の変形による応力に起因して、マイクロカプセル20に引張力が加わり、マイクロカプセル20が破壊され、香料が放散されるように、粘着シート1は構成されている。
【0018】
このような構成により、粘着シート1を被着体100から剥離するより前の時点(例えば、粘着シート1を被着体100に貼着する際等に)、マイクロカプセル20が不本意に破壊されてしまうことが好適に防止され、粘着シート1を被着体100から剥離する際に香料を好適に放散させることができる。
【0019】
また、本発明の粘着シート1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。すなわち、粘着シート1が、所定の内容物を収納する容器や当該容器を包む袋、箱、包装紙、ラッピングフィルム等の包装材に貼着されるものである場合において、マイクロカプセル20中に含まれる香料として、前記内容物を想起させる香りのものを用いることにより(例えば、内容物が抹茶、抹茶を含む加工品、または、抹茶風味の食品である場合に、香料が抹茶を想起させる香りのものであると)、被着体100としての前記容器や前記包装材から、粘着シート1を剥離する際に、前記内容物の香りが漂ってきているかのような心理的効果を得ることができる。その結果、例えば、香料の香りを嗅いだ者の前記内容物に対する期待を高めたり、前記内容物が食品である場合に、香料の香りを嗅いだ者に対し、当該内容物の風味、品質がより高いものであるとの印象を与えたりすることができる等、内容物やその包装体の商品価値をより高めることができる。なお、本明細書において、食品は、固形状の食品、半固形状の食品(ゼリー等)に加え、液体(飲み物)を含む概念である。
【0020】
以下、各構成について具体的に説明する。なお、本明細書中、「フィルム」は、シートの概念を含む用語として使用される。また、本明細書中において、粘着シートは、粘着ラベルおよび粘着テープを含む概念である。なお、被着体100は、前述したような所定の内容物を収納する容器や当該容器の包装材等に限らず、いかなるものであってもよい。
【0021】
[紙基材]
紙基材11は、粘着シート1を被着体100に貼着した状態において表面に露出する第1の面111と、粘着剤層12に対向する第2の面112とを有する単層体である。紙基材11は、粘着剤層12を支持する機能とともに、紙基材11に付された着色や模様により被着体100を識別する機能を有する。
また、紙基材11は、通気性を有している。
【0022】
これにより、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、香料が紙基材11を通過することができる。したがって、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、粘着シート1の粘着剤層12側の面とは反対の面側、すなわち、紙基材11側から、香料を放散させることができる。
【0023】
これに対し、紙基材11の代わりに、例えば、プラスチックフィルム等を用いた場合には、このような機能は得られない。
【0024】
紙基材11としては、例えば、各種の和紙、洋紙等が挙げられる。例えば、紙基材11は、クラフト紙等の包装紙、上質紙、中質紙、グラシン紙等の非塗工紙、コート紙やアート紙等の塗工紙、木材繊維と他の繊維を混合して抄いた混抄紙であってもよい。
【0025】
紙基材11の第1の面111および第2の面112のうちの少なくとも一方には、表面処理が施されていてもよい。
【0026】
このような表面処理としては、例えば、粗面化処理、親水化処理、撥水処理、離型処理等が挙げられる。
【0027】
例えば、紙基材11の第1の面111に、離型処理としてシリコーン表面処理を施すことができる。
【0028】
これにより、粘着シート1をロール状に巻いた際に、紙基材11の第1の面111、すなわち、裏面が粘着剤層12の表面に貼り付いて離れにくくなることを効果的に防止することができる。
【0029】
紙基材11の厚さは、特に限定されないが、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上75μm以下であるのがより好ましい。
【0030】
これにより、紙基材11は、粘着剤層12を好適に支持することができるとともに、香料をより通過させやすくなり、粘着シート1全体として、香料をより効率良く放散することができる。
【0031】
また、紙基材11は、添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、各種の染料、顔料等の着色剤が挙げられる。
【0032】
紙基材11が着色剤により着色されていることにより、例えば、以下のような効果が得られる。すなわち、紙基材11を、特定の香りの物を想起させる色に着色することにより、香料の香りが比較的弱い場合や、天然物とは異なる香りの合成香料を用いた場合であっても、香料の香りを嗅いだ者に、好適な香りであると認識させやすくなる。
【0033】
特に、粘着シート1が、所定の内容物を収納する容器や当該容器を包む袋、箱、包装紙、ラッピングフィルム等の包装材に貼着されるものであり、マイクロカプセル20中に含まれる香料として、前記内容物を想起させる香りのものを用い、さらに、紙基材11として前記内容物を想起させる色に着色されたものを用いることにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0034】
上述したように、紙基材11は、通気性を有している。
紙基材11の透気度は、特に限定されないが、0.5μm/(Pa・s)以上100μm/(Pa・s)以下であるのが好ましく、10μm/(Pa・s)以上30μm/(Pa・s)以下であるのがより好ましい。
これにより、紙基材11を通して、より効率良く香料を放散することができる。
【0035】
なお、上記透気度は、23℃において、JIS P8117-2009(ISO 5636-5:2003)に準拠し、ISO透気度として測定される。また、上記透気度の測定には、例えば、ガーレー標準型デンソメーター(B型)を用いることができる。
【0036】
紙基材11の坪量は、30g/m以上250g/m以下であるのが好ましく、50g/m以上210g/m以下であるのがより好ましい。
【0037】
このような紙基材11は、適度な剛性を有すると言える。これにより、粘着シート1の被着体100への貼着および被着体100からの剥離をより容易に行うことができる。さらに、被着体100からの粘着シート1の剥離時に、紙基材11が適度にしなり、例えば、図2に示すように湾曲形状をなし、これにより、粘着剤層12をより好適に変形させることができる。その結果、粘着剤層12の変形に伴うマイクロカプセル20の破壊および香料の放散をより効率良く行うことができる。
【0038】
[粘着剤層]
図1および図2に示すように、粘着剤層12は、紙基材11に対向する第1の面121と、第1の面121とは反対側の面(被着体100に接触する面)である第2の面122とを有する単層体である。
【0039】
粘着剤層12は、粘着剤層形成用組成物により構成されている。粘着剤層形成用組成物は、エマルション型の粘着剤と、香料を内包するマイクロカプセル20とを含んでいる。このように、粘着剤層12は、粘着力を発現する機能とともに、マイクロカプセル20を保持ないし担持する機能も有している。
【0040】
(粘着剤)
粘着剤層12を構成する粘着剤は、エマルション型の粘着剤である。
エマルション型の粘着剤を用いることにより、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、香料を効率良く放散することができる。これは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、粘着シート1を被着体100から剥離する際に、粘着剤層12が伸長変形して、粘着剤層12中のマイクロカプセル20に引張応力が付与される。その結果、マイクロカプセル20が破壊され、マイクロカプセル20に内包されていた香料が流出し放散される。ここで、粘着剤層12の変形した部分には、破壊されたマイクロカプセル20からの香料が通過し得る隙間が生じている。このような隙間は、溶剤型の粘着剤等によって構成されている粘着剤層に比べて、上述のエマルション型の粘着剤によって構成されている粘着剤層12において生じやすい。より具体的には、エマルションを構成する各粒子の界面に対応する部位に、界面活性剤が存在し、また各粒子が融着していない部分が存在するため、上記のような隙間を生じやすい。そのため、隙間を通じて香料を効率良く放散することができる。特に、粘着剤層12の厚さが比較的厚い場合であっても、上記のような隙間を好適に形成することができ、粘着剤層12の表面(第2の面122)側および紙基材11の表面(第1の面111)側から、香料を効率良く放散することができる。
【0041】
言い換えると、エマルション型の粘着剤の代わりに溶剤型の粘着剤等を用いた場合、粘着剤層は、破壊されたマイクロカプセルからの香料が通過し得る隙間が生じにくい。そのため、香料を効率良く放散することができない。
【0042】
粘着剤層12を構成するエマルション型の粘着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂系粘着剤、熱硬化性樹脂系粘着剤、エラストマー系粘着剤等が挙げられる。
【0043】
このような粘着剤としては、より具体的には、例えば、アクリル系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤、エチレン酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、後に詳述するマイクロカプセル20との密着性、耐候性等の点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられ、アクリル系粘着剤がより好ましく用いられる。
【0045】
アクリル系粘着剤の具体例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキルエステルの共重合体等が挙げられる。
【0046】
粘着剤層12中における前記粘着剤の含有率は、40質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、60質量%以上95質量%以下であるのがより好ましい。
【0047】
これにより、粘着剤層12の粘着力を適度に保ちつつ、被着体100から粘着シート1を剥離する際の粘着剤層12の変形(特に伸長)に伴うマイクロカプセル20の破壊および香料の放散がより効率良く行われる。
【0048】
(マイクロカプセル)
マイクロカプセル20は、粘着シート1の製造時および貼着時の押圧では破壊されず、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、粘着剤層12が変形(特に伸長)することにより破壊されるように構成されている。以下、マイクロカプセル20の構成について具体的に説明する。
【0049】
マイクロカプセル20は、香料を含む芯部(核、コア)と、樹脂材料を含む殻部(壁部、シェル)とで構成されている。香料は芯物質であり、樹脂材料は壁物質であるとも言える。すなわち、マイクロカプセル20は、芯物質が、壁物質によって被覆されることにより、マイクロカプセル化された構造体である。
【0050】
香料は、固体、液体および気体のいずれの形態であってもよいが、液体であるのが好ましい。これにより、マイクロカプセル化を容易に行うことができるとともに、被着体100から粘着シート1を剥離する際の粘着剤層12の変形(特に伸長)に伴って、マイクロカプセル20が破壊した際に、粘着剤層12を形成するエマルション粒子の間の隙間を通って紙基材11に染み込み、紙基材11中で揮発することにより、香料の放散がより効率良く行われる。
【0051】
香料の種類は、特に限定されず、例えば、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類、ブドウ、メロン、リンゴ、キウイフルーツ、バナナ、パイナップル、桃、イチゴ等の果物、緑茶(抹茶を含む)、紅茶等の茶類、香辛料等の食品;ラベンダー、バラ、金木犀、桜等の花等の香りに対応するものが挙げられ、天然香料であってもよいし、合成香料であってもよい。なお、香料の香りは、前記内容物を想起させるものであればよく、内容物と同一の香りでなくてもよい。
【0052】
殻部を構成する樹脂材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレア系樹脂、ポリウレタンウレア系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。中でも、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂が好ましく、メラミン系樹脂がより好ましい。
【0053】
これにより、マイクロカプセル20の殻部の強度をより好適なものとしつつ、マイクロカプセル20の殻部と、エマルション型の粘着剤との結合力をより優れたものとすることができる。その結果、例えば、粘着シート1の製造時や粘着シート1を被着体100に貼着する際等、被着体100からの粘着シート1の剥離時以外に、不本意に、マイクロカプセル20の殻部が破壊してしまうことを防止しつつ、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、粘着剤層12の変形(特に伸長)に伴う応力を、マイクロカプセル20により効率良く伝えることができ、マイクロカプセル20と粘着剤との界面剥離が生じることをより効果的に防止し、マイクロカプセル20の破壊および香料の放散をより効率良く行わせることができる。
【0054】
殻部の膜厚は、特に限定されないが、10nm以上800nm以下であるのが好ましく、50nm以上500nm以下であるのがより好ましい。
【0055】
これにより、マイクロカプセル20の殻部の強度をより好適なものとしつつ、マイクロカプセル20の殻部と、エマルション型の粘着剤との結合力をより優れたものとすることができる。その結果、例えば、被着体100からの粘着シート1の剥離時以外に、不本意に、マイクロカプセル20の殻部が破壊してしまうことを防止しつつ、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、マイクロカプセル20の破壊および香料の放散をより効率良く行わせることができる。
【0056】
マイクロカプセル20の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上7μm以下であるのがより好ましい。
【0057】
これにより、マイクロカプセル20の殻部の強度をより好適なものとしつつ、マイクロカプセル20の殻部と、エマルション型の粘着剤との結合力をより優れたものとすることができる。その結果、例えば、被着体100からの粘着シート1の剥離時以外に、不本意に、マイクロカプセル20の殻部が破壊してしまうことを防止しつつ、被着体100から粘着シート1を剥離する際に、マイクロカプセル20の破壊および香料の放散をより効率良く行わせることができる。
【0058】
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、コールター法を用いた粒度分布測定によって得られた値を意味する。
【0059】
以上説明したマイクロカプセル20は、例えば、コアセルベーション法、インサイチュー重合法、界面重合法等によって製造することができる。
【0060】
粘着剤層12中におけるマイクロカプセル20の含有率は、1質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、5質量%以上35質量%以下であるのがより好ましい。
【0061】
これにより、粘着剤層12中における粘着剤の含有率を好適な値とすることができ、粘着剤層12の粘着力を適度に保ちつつ、被着体100から粘着シート1を剥離する際の粘着剤層12の変形(特に伸長)に伴うマイクロカプセル20の破壊および香料の放散がより効率良く行われる。
【0062】
図示の構成では、マイクロカプセル20は、粘着剤層12全体に均一に分散している。すなわち、マイクロカプセル20は、粘着剤層12の面方向および厚さ方向に均一に分散している。このため、エマルション型の粘着剤とマイクロカプセル20とを混合し、粘着剤層形成用組成物を得、これを層状にすることによって粘着剤層12を容易に得ることができる。
【0063】
なお、マイクロカプセル20は、粘着剤層12の少なくとも一方の面側に偏在していてもよく、粘着剤層12の厚さ方向の途中に偏在していてもよい。例えば、粘着剤層12の厚さ方向の中間に、マイクロカプセル20が偏在していてもよい。また、マイクロカプセル20は、粘着剤層12の面方向の一部に偏在していてもよい。
【0064】
粘着剤層12は、エマルション型の粘着剤およびマイクロカプセル20を含むものであればよく、これら以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。
【0065】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、およびアミノ樹脂系架橋剤が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0067】
充填剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。
【0068】
酸化防止剤としては、例えば、アニリド系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、チオエステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0069】
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
【0070】
これにより、より好適な粘着力を得つつ、十分な量のマイクロカプセル20を含有させることができるとともに、被着体100への粘着シート1の貼着、被着体100からの粘着シート1の剥離をより好適に行うことができる。
【0071】
紙基材11の厚さをT[μm]、粘着剤層12の厚さをT[μm]としたとき、1<T/Tの関係を満足するのが好ましく、1.5<T/T<3の関係を満足するのがより好ましい。
【0072】
これにより、紙基材11が粘着剤層12を確実に支持するとともに、紙基材11の屈曲ないし湾曲、および、粘着剤層12の変形をより好適に行うことができる。その結果、前述した効果をより顕著に発揮させることができる。
【0073】
また、ステンレス鋼板の表面に対する粘着剤層12の粘着力は、3N/25mm以上20N/25mm以下であるのが好ましく、5N/25mm以上18N/25mm以下であるのがより好ましい。
【0074】
これにより、一般に、多様な被着体100に貼着した状態で、不本意に当該被着体100から剥離してしまうことをより効果的に防止しつつ、当該被着体100からの剥離時においては、マイクロカプセル20をより効果的に破壊させることができ、香料の放散をより効率良く行うことができる。
【0075】
なお、上記粘着力は、23℃において、JIS Z0237:2009に準拠して測定することができる。
【0076】
粘着シート1が貼着される被着体100は、特に限定されないが、被着体100の表面(粘着シート1が貼着される部位)の構成材料としては、例えば、各種の紙;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等のプラスチック;ガラス;金属等が挙げられる。
【0077】
以上説明した粘着シート1は、被着体100から剥離する際に、香料を好適に放散することができる。
【0078】
<被着体からの粘着シートの剥離時の態様>
次に、被着体からの本発明の粘着シートの剥離時の態様について説明する。
図2は、本発明の粘着シートを被着体から剥離する際の態様を模式的に示す縦断面図である。
【0079】
図2では、粘着シート1が、粘着剤層12にて被着体100に貼着した状態から、被着体100の表面に対して90度方向(図2中の矢印Yで示す方向)に引っ張られ、これにより、粘着剤層12が被着体100から剥離されている。
【0080】
この剥離時に、粘着剤層12の剥離直後の部分、すなわち剥離先端部123は、特に変形が著しい。図2の紙面に向かって粘着シート1を見たとき、剥離先端部123は、大きく伸長している。粘着剤層12の剥離先端部123付近において、その伸長に伴い、マイクロカプセル20に応力が付与される。この応力に起因して、マイクロカプセル20が破壊され、マイクロカプセル20に内包されていた香料が、放散される。
【0081】
また、剥離先端部123では、破壊されたマイクロカプセル20からの香料が通過し得る、例えばクラックのような隙間が粘着剤層12中に生じている。この隙間を介して、マイクロカプセル20に内包されていた香料が、効率的に放散される。このような隙間は、エマルション型の粘着剤の特性に起因して生じていると言える。
【0082】
このため、エマルション型の粘着剤によって構成されている粘着剤層12は、溶剤型の粘着剤によって構成されているものに比べて、被着体100からの剥離時の変形による隙間が生じやすくなっている。
【0083】
さらに、粘着剤層12は、紙基材11によって支持されている。このため、粘着剤層12が変形してマイクロカプセル20が破壊された時に、マイクロカプセル20に内包されていた香料が、紙基材11を介しても放散される。すなわち、マイクロカプセル20に内包されていた香料は、粘着剤層12の第2の面122側に向かって放散されるとともに、紙基材11を介して紙基材11の第1の面111側に向かって放散される。
【0084】
粘着シート1は、図2に示される状態から、粘着シート1を被着体100から引きはがす方向(図2中では矢印Yで示す方向。被着体100の表面に対して90°方向)にさらに引っ張られると、粘着剤層12が被着体100からさらに剥離される。これにより、粘着剤層12の剥離先端部123が、図2中の矢印X方向に移動するように、粘着剤層12がさらに変形(特に伸長)していく。このようにして、粘着剤層12全体において、剥離先端部123の変形(特に伸長)に伴うマイクロカプセル20の破壊および香料の放散がなされ得る。
【0085】
粘着シート1を被着体100から剥離する際の紙基材11の湾曲部113の曲率半径Rは、3mm以上50mm以下であるのが好ましく、5mm以上30mm以下であるのがより好ましい。
【0086】
これにより、粘着剤層12を十分に変形させることができ、粘着剤層12の変形に伴うマイクロカプセル20の破壊および香料の放散を特に効率良く行うことができる。
【0087】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の粘着シートの第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の粘着シートの第2実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【0088】
以下、第2実施形態の粘着シート1について、前記第1実施形態の粘着シート1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態の粘着シート1は、粘着剤層12の第2の面122を被覆する剥離ライナー13をさらに含み、それ以外は、前述した実施形態と同様である。
【0090】
剥離ライナー13は、ラベルとして型抜きされ個片化された粘着シートを、複数枚まとめて支持する機能を有している。
【0091】
剥離ライナー13としては、例えば、粘着剤層12と接触する面がシリコーンで構成され、粘着シートを剥離することができる。
【0092】
このような粘着シート1によれば、粘着シート1をシート状のまま保管、輸送することができる。そのため、粘着シート1の取扱いが容易となる。なお、このような粘着シート1によっても、前述した効果を発揮することができることは言うまでもない。
【0093】
本実施形態の粘着シート1は、例えば、粘着剤層12を剥離ライナー13上に形成した後、粘着剤層12の第1の面121上に紙基材11を貼り合わせることによって、製造することもできる。この製造時においても、粘着剤層12中のマイクロカプセル20は破壊されない。すなわち、剥離ライナー13上に形成された粘着剤層12に紙基材11をさらに貼り合わせる際、紙基材11を粘着剤層12に対して押圧するが、この際の押圧力では、通常、粘着剤層12中のマイクロカプセル20は、破壊されない。これは、粘着剤によるクッション性が発揮されることも影響していると考えられる。この押圧力は、通常、100N/m以上2000N/m以下の範囲とされる。
【0094】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
【0095】
例えば、本発明に係る粘着シートは、紙基材と粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有していてもよい。
【0096】
また、本発明に係る粘着シートは、紙基材の粘着剤層に対向する面とは反対の面(第1の面)側に、少なくとも1層の被覆層を有していてもよい。例えば、紙基材の第1の面側に、印刷層が設けられていてもよい。また、粘着剤層の紙基材と反対の面(粘着シートの表面)にコート層が設けられていてもよい。さらに、本発明に係る粘着シートは、粘着テープまたは両面粘着テープとして使用されるように構成されていてもよい。
【0097】
また、前述した実施形態では、紙基材が単層体である場合について代表的に説明したが、紙基材は、複数の層を備える積層体であってもよい。
【0098】
また、前述した実施形態では、粘着剤層が単層体である場合について代表的に説明したが、粘着剤層は、複数の層を備える積層体であってもよい。
【実施例
【0099】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
【0100】
[1]粘着シートの製造
(実施例1)
エマルション型の粘着剤として、アクリル系粘着剤100質量部(固形分換算)に、10質量部(固形分換算)のエマルション型の粘着付与剤と、10質量部(固形分換算)のマイクロカプセルとを添加・混合して、粘着剤層形成用組成物を調製した。なお、マイクロカプセルは、コアセルベーション法により、メラミン系樹脂で香料を被覆した構成のものを得た。
【0101】
得られた粘着剤層形成用組成物を、剥離ライナーの上に塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を、90℃で1分間乾燥させて、厚さが30μmの粘着剤層を得た。
【0102】
得られた粘着剤層上に、基材(紙基材)として坪量75g/mのクラフト紙を貼り合わせて、500N/mの押圧力で押圧することにより、粘着シートを得た。23℃において、JIS P8117-2009に準拠して測定される基材(紙基材)のISO透気度は、17.3μm/(Pa・s)であった。
【0103】
(実施例2~5)
粘着剤層および基材の構成を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0104】
(比較例1~3)
粘着剤層および基材の構成を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0105】
前記各実施例および各比較例の粘着シートを構成する粘着剤層および基材の条件を表1にまとめて示す。
【0106】
【表1】
【0107】
[2]評価
[2-1]香り評価
前記各実施例および各比較例で製造した粘着シートについて、以下のようにして、香り評価を行った。
【0108】
まず、前記各実施例および各比較例で得られた粘着シートを幅25mm、長さ250mmに裁断して試験片を得た。
【0109】
各試験片から剥離ライナーを剥離し、粘着剤層を包装紙(クラフト紙)に貼付した。その後、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで、上記包装紙から各試験片を剥離した。この際、以下の評価基準に基づいて、香りの発生の程度を評価した。
【0110】
A:好適に香りを感じることができる。
B:十分に香りを感じることができる。
C:香りをわずかに感じることができる。
D:香りをほとんど感じることができない。
【0111】
[2-2]粘着力
前記各実施例および各比較例で製造した粘着シートについて、以下のようにして、粘着力の測定を行った。
【0112】
まず、前記各実施例および各比較例で得られた粘着シートを幅25mm、長さ250mmに裁断して試験片を得た。
【0113】
各試験片から剥離ライナーを剥離し、紙基材上に、質量2kgのゴムロールを1往復させることにより押圧して、粘着剤層をステンレス鋼板に貼付した。
【0114】
各試験片を、23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後、23℃において、JIS Z0237:2009に準拠して粘着力の測定を行った。より具体的には、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで、上記ステンレス鋼板から剥離し、この剥離時の粘着力(N/25mm)を測定した。
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0115】
【表2】
【0116】
本発明の粘着シートは、各比較例の粘着シートに比べ、香り評価について、良好な結果が得られた。また、各実施例の粘着シートの中でも、ステンレス鋼板に対する粘着力が好適な範囲内の値であった実施例では、香り評価について、特に良好な結果が得られた。
これに対して、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【0117】
また、粘着剤層中におけるマイクロカプセルの含有率を1質量%以上50質量%以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例および各比較例と同様にして粘着シートを製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向の結果が得られた。
【0118】
また、粘着剤層の厚さを5μm以上100μm以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例および各比較例と同様にして粘着シートを製造し、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向の結果が得られた。
【符号の説明】
【0119】
1…粘着シート
11…紙基材
111…第1の面
112…第2の面
113…湾曲部
12…粘着剤層
121…第1の面
122…第2の面
123…剥離先端部
13…剥離ライナー
20…マイクロカプセル
100…被着体
R…曲率半径
X…矢印
Y…矢印
図1
図2
図3