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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】RF導波路アレイにおける接地構造
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
G02F1/01 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018567823
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 GB2017051934
(87)【国際公開番号】W WO2018002656
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】1611576.8
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505318606
【氏名又は名称】ルメンタム・テクノロジー・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フラヴィオ・デロルト
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴィッラ
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-191095(JP,A)
【文献】特開2012-068679(JP,A)
【文献】特開2016-194537(JP,A)
【文献】特表2019-519816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0151414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光導波路を備え、前記複数の光導波路の各導波路が第1の方向に延びている、基板と、
前記基板の面上に配置される電気RF伝送線路アレイであって、
複数の信号電極と、
複数の接地電極と、
を備える、電気RF伝送線路アレイと、
を備える無線周波数(RF)導波路アレイであって、
前記複数の信号電極及び前記複数の接地電極の各電極が前記第1の方向に延在しており、
各信号電極が、前記複数の光導波路の2つのそれぞれの光導波路に信号を供給するように配置されており、
前記複数の接地電極が、信号電極の各対の間に配置された中間接地電極を含み、
前記中間接地電極が、前記信号電極と対向する前記中間接地電極の外縁部に配置された第1の領域において第1の高さを有し、第2の高さを有する第2の領域が前記第1の領域の間に1つだけ配置され、
前記第1の高さ及び前記第2の高さは前記基板の面に対して垂直な第2の方向において測定され、
前記第2の高さが前記第1の高さの75%未満であり、
前記第1の領域が前記第2の領域よりもそれぞれの信号電極に近く、
前記中間接地電極が前記第1の方向に対して垂直なU字形の断面を有する、無線周波数(RF)導波路アレイ。
【請求項2】
複数の光導波路を備え、前記複数の光導波路の各導波路が第1の方向に延びている、基板と、
前記基板の面上に配置される電気RF伝送線路アレイであって、
複数の信号電極と、
複数の接地電極と、
を備える、電気RF伝送線路アレイと、
を備える無線周波数(RF)導波路アレイであって、
前記複数の信号電極及び前記複数の接地電極の各電極が前記第1の方向に延在しており、
各信号電極が、前記複数の光導波路の2つのそれぞれの光導波路に信号を供給するように配置されており、
前記複数の接地電極が、信号電極の各対の間に配置されかつ1つまたは複数のチャネルによって分離された2つまたはそれより多くの中間接地電極を含み、
前記2つまたはそれより多くの中間接地電極の各々が、第1の領域において第1の高さを有し、前記1つまたは複数のチャネルの1つまで延びる第2の領域において第2の高さを有し、
前記第1の高さ及び前記第2の高さは前記基板の面に対して垂直な第2の方向において測定され、
前記第2の高さが前記第1の高さの75%未満であり、
前記第1の領域が前記第2の領域よりもそれぞれの信号電極に近く、
前記第2の領域が前記第1の方向に垂直でかつ前記基板の面に平行な第3の方向において不均一な幅を有し、
前記2つまたはそれより多くの中間接地電極の各々が前記第1の方向に対して垂直なL字形の断面を有する、無線周波数(RF)導波路アレイ。
【請求項3】
前記2つまたはそれより多くの中間接地電極が隣接し、前記第2の領域の幅の小さい部分と、前記第2の領域の幅の大きい部分とが、前記第1の方向に沿って交互に配置される、請求項2に記載のRF導波路アレイ。
【請求項4】
前記第2の領域の不均一な幅がその長さに沿って波状に変化する、請求項2または3に記載のRF導波路アレイ。
【請求項5】
前記第2の領域の不均一な幅が、その長さに沿って、
方形波形態、
正弦波形態、または
三角波形態
の1つによって変化する、請求項4に記載のRF導波路アレイ。
【請求項6】
前記方形波形態、前記正弦波形態、または前記三角波形態の波長が前記第1の方向に沿って変化する、請求項5に記載のRF導波路アレイ。
【請求項7】
各第1の領域が、それぞれの中間接地電極の最小幅未満の幅を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のRF導波路アレイ。
【請求項8】
前記1つまたは複数のチャネルの各チャネルが5から20ミクロンの間の幅である、請求項2に記載のRF導波路アレイ。
【請求項9】
前記第2の高さが、前記1つまたは複数のチャネルの最小幅と同等またはそれ未満である、請求項2に記載のRF導波路アレイ。
【請求項10】
前記第2の高さが5ミクロン以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載のRF導波路アレイ。
【請求項11】
前記第2の高さが前記第1の高さの10%未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載のRF導波路アレイ。
【請求項12】
前記第2の高さが前記第1の高さの3%未満である、請求項11に記載のRF導波路アレイ。
【請求項13】
前記第1の高さが少なくとも1つの前記信号電極の高さと少なくとも等しい、請求項1から12のいずれか一項に記載のRF導波路アレイ。
【請求項14】
前記チャネルの各々がローパスフィルタを含む、請求項2に記載のRF導波路アレイ。
【請求項15】
前記複数の光導波路がマッハツェンダ変調器を形成するように構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のRF導波路アレイを備えるデュアルパラレル同相/直交(I/Q)変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF光学装置に使用される構成要素に関する。特に、本発明は、例えばデュアルパラレル変調器で使用するための導波路アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルパラレルI/Q(同相/直交位相)変調器は、典型的には、図1に概略的に示される構造を有する。信号は、信号を4つのマッハツェンダ変調器110の各チャネルに分割する分波器101に入り、チャネルの各々は2つの導波路111と、電気RF(無線周波数)伝送線路112とを含む。変調器は必要な変調を行い、信号は合波器102によって再結合される。
【0003】
マッハツェンダ変調器は、図2に示すように、Aに沿った断面を有する。マッハツェンダ変調器の導波路部分は、導波路202を含む基板201を備える。RF伝送線路アレイ203は、基板の一方の面上に配置される。各RF伝送線路は、信号電極204を備える。各信号電極204は、両側に接地電極205を有する。変調器は、導波路が信号電極と接地電極との間の間隙の下に(信号電極の周りに対称的に)配置されるxカット(210)、または1つの信号電極の下に1つの導波路および1つの接地電極の下に1つの導波路を有するzカット(220)のいずれかで構成され得る。通常、アレイ内のすべての変調器は同じタイプであるが、説明のために図2にはzカットおよびxカット変調器の両方を示す。中間接地電極(すなわち、2つの信号電極間の接地電極)は、隣接するRF伝送線路間で共有される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、一般論として、信号電極の各対の間に複数の接地電極を設けることを提案する。この構成は、RF伝送線路内の各信号電極によって生成された力線の閉じ込めを改善することが分かった。連続する接地線はチャンネルによって区切られる。
【0005】
特に、第1の態様は、無線周波数RF導波路アレイを提案する。このアレイは、基板と電気RF伝送線路アレイとを備える。基板は複数の光導波路を備え、各導波路は第1の方向に延びている。電気RF伝送線路アレイは基板の面上に配置され、複数のRF伝送線路を備える。各伝送線路は、信号電極と、信号電極の両側に配置された少なくとも2つの接地電極とを備える。各電極は第1の方向に延在する。各信号電極は、2つのそれぞれの導波路に信号を供給するように配置され、すなわち各RF伝送線路は、2つのそれぞれの導波路に隣接して配置される。接地電極は、信号電極の各対の間に配置された少なくとも2つの中間接地電極を含む。異なるRF伝送線路の中間接地電極は、チャネルによって互いに分離されている。
接地線の様々な構成については後述する。
【0006】
本発明の第2の態様は、信号電極から比較的離れた領域において接地電極の厚さ(すなわち基板の表面を横切る方向の高さ)を薄くすることを提案する。これは、接地電極を製造するのに必要とされる材料(典型的には金)の量を減少させ、RF伝送線路の品質を許容できる程度しか(またはさらには全く)低下させない。典型的には実質的に均質な化学組成を有する各接地電極は、信号電極により近いより厚い厚さの領域およびより薄い厚さの領域を作製する単一の工程段階で形成することができる。
【0007】
特に、第2の態様は、無線周波数RF導波路アレイを提案する。このアレイは、基板と電気RF伝送線路アレイとを備える。基板は複数の光導波路を備え、各導波路は第1の方向に延びている。電気RF伝送線路アレイは基板の面上に配置され、複数の信号電極と複数の接地電極とを備える。各電極は第1の方向に延在する。各信号電極は、2つのそれぞれの導波路に信号を供給するように配置されている。接地電極は、信号電極の各対の間に配置された少なくとも1つの中間接地電極を含む。中間接地電極は、1つまたは複数の第1の領域内において第1の高さを有し、少なくとも1つの第2の領域内において第2の高さを有し、高さは基板の面に対して垂直な方向に測定される。各中間電極について、第1の領域の各々は、第2の領域よりもそれぞれの信号電極に近い。第2の高さは第1の高さの75%未満である。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、第1または第2の態様のいずれかによるRF導波路アレイを備えるデュアルパラレル同相/直交I/Q変調器が提供される。
本発明の他の実施形態は、請求項2以降に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】デュアルパラレルI/Q(同相/直交)変調器の概略図である。
図2図1の線Aに沿った導波路アレイの断面図である。
図3図1に示す種類のRF伝送線路アレイにおける信号電極からの電界分布を示す。
図4】例示的な導波路アレイの断面図である。
図5図2および4の導波路アレイの性能を比較するグラフである。
図6】例示的な導波路アレイの性能を比較するグラフである。
図7】例示的な導波路アレイにおける信号電極からの電界分布を示す。
図8】さらなる例示的な導波路アレイの平面図および断面図を示す。
図9A】例示的な導波路アレイの性能を示すグラフである。
図9B】例示的な導波路アレイの電界分布を示す。
図10】例示的な導波路アレイのための接地電極の例示的な配置を示す。
図11】さらに別の例示的な導波路アレイの断面図である。
図12】さらに別の例示的な導波路アレイの断面図である。
図13】さらに別の例示的な導波路アレイの断面図である。
図14】さらに別の例示的な導波路アレイの断面図である。
図15】さらに別の例示的な導波路アレイの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「長さ」は、RF伝送線路内のRF信号の進行方向、すなわち図2の「ページ外」の距離を指すために使用される。
本明細書において、「高さ」は、RF伝送線路が取り付けられている基板の面に対して垂直な方向、すなわち図2における垂直方向の距離を指すために使用される。
「幅」は、特に明記しない限り、高さと長さの両方に垂直な方向、すなわち図2における水平方向の距離を指すために使用される。
【0011】
図3は、図2に示したRF伝送線路アレイの電界線分布を示す(基板および導波路は、明確にするために省略されている)。信号電極は左から右へ311、312、313、314と表示され、接地電極は左から右へ321、322、323、324、325と表示される。321および325は端部接地電極であり、322、323および324は中間接地電極である。力線300から分かるように、信号電極312からの信号は、接地電極322および323を通って、最も近い他の信号電極311および313へと延びる。広い電界分布は、単一の伝送線路の場合であっても、高周波損失を引き起こし、隣接する線路への電界の広がりは、望ましくない「クロストーク」、すなわち他の線路によって引き起こされる1つの線路への干渉を引き起こす。
【0012】
通常、接地電極は100ミクロンを超える幅を有する。単一の伝送線路の場合には、より狭い接地電極を使用すると、実際には、高周波での伝送線路の性能が向上することが分かった。これは、伝送線路の構造をコプレーナ導波路の「理想的な」場合(接地電極が無限幅を有する場合)からさらに遠くに移動させるので、予想外のことである。この向上は電界のより厳密な閉じ込めによるものであると理論付けられる。
【0013】
図2に示すRF伝送線路アレイの構造では、このような狭い接地電極を使用することはできない。接地電極の幅が100ミクロン未満の場合、信号電極間の距離が狭くなり、クロストークが顕著になる。代わりに、図4に示すように、各中間接地電極を少なくとも2つに分割することを提案する。図4では、各信号電極411、412、413、414は2つの接地電極421、422、423、・・・428に隣接している。例えば、信号電極412は接地電極423および424に隣接している。中間接地電極422、423、424、425、426、427はチャネル431、432、433によって分離されている。各接地電極は好ましくは150ミクロン未満、好ましくは100ミクロンと同等またはそれ未満の幅を有する。この分離は、より狭い接地電極を提供し、高周波性能を改善するだけでなく、RF伝送線路間のある程度の分離も提供し、それはクロストークを減少させる。
【0014】
図5は、これらの改善を示す。図5は、一つの線路の理想的な伝送(S21)曲線からの偏差を示すグラフであり、下側の曲線は従来技術の伝送線路アレイを示し、上側の曲線は図4の伝送線路アレイを示している。より高い周波数では、伝送パラメータS21は理想的な場合により近い。
【0015】
21曲線の改善は、接地電極が狭くなっても続く。図6は、標準接地電極(下曲線)を有する、標準接地電極の幅の1/3の幅の接地電極(真ん中)を有する、および標準接地電極の幅の1/5の接地電極(上)を有する、RF伝送線路の理想的なS21曲線からの偏差を示す。
【0016】
狭い接地構造のさらなる利点は、それが伝送線路と導波路との間の電気光学効率を改善することである。図7に示すように、信号電極712、722からの電界711、721がより集中しているので、より多くの電界が導波路713(zカットで示す)および723(xカットで示す)を通過する。この利点は、接地電極の幅が導波路の幅と同様であるとき、例えば導波路の幅の2倍未満であるときに最大となる。利点はzカット構成で最大である。zカット構成では、導波路の上にある接地電極を狭くするだけで電気光学効率に何らかの利益をもたらす。
【0017】
接地電極が非常に狭い場合、おそらく狭い電極は、非対称性がはるかに大きい変動を引き起こすことを意味するため、S21曲線に著しい非平滑性がある。図8に示すような構造を使用することによって、電気光学効率の向上を維持しながら、この影響を軽減することができる。zカットの場合に導波路の上に配置されていない信号電極、導波路、および接地電極810は変化しない。zカットの場合に導波管の上に配置された接地電極800、またはxカットの場合の両方の接地電極は、それらの中に複数のスロット801をそれぞれ有する。スロットは接地電極の長さに沿って延び、電極を導波路の上の領域とそうでない領域に分割する。導波路の上の領域は電気光学効率を改善するために狭くすることができ、導波路の上でない領域およびスロットを有しない接地電極の領域はS21曲線を滑らかにするように作用する。1つの接地電極につき2つのスロットしか示されていないが、1つの接地電極につき任意の数のスロット、好ましくは全て同一線上にありかつ同じ方向に延びるスロットがあってもよい。
【0018】
スロットの長さは、いくつかの制約に基づいて選択することができる。スロットが短すぎる場合、それらは変調器の性能に影響を及ぼさない。スロットが長すぎると、それらは線路内にキャビティを形成し、それがS21曲線上にノッチを生じさせる可能性がある。可能な長さの値は50ミクロン超、350ミクロン未満である。350ミクロンを超える長さの値では、共振がS21曲線で明らかになるが、用途によってはこれより長い長さでも許容できる場合がある。例えば、スロットは80ミクロンの長さを有し、スロット間の距離は40ミクロンであり、その結果、線に沿って複製される120ミクロンの「セル」が得られる。スロットは、周期的に(すなわち、すべてのスロットが同じ長さを有し、スロットが一定の距離だけ対をなして互いに間隔を置いて)配置されてもよく、または非周期的に配置されてもよい。スロットを周期的に配置すると、線路に共振が生じる可能性があるが、他の方法でこれらを補正することができる。
【0019】
図9Aおよび9Bは、図4による伝送線路の低周波挙動を示す。図5Aのグラフは、接地電極がプローブステーションと接続された(すなわち、互いに電気的に絶縁された)場合を示す一方で、図9Aは、接地電極が伝送線路の始点または終点またはその先のある点で電気的に接続されている場合(例えば、パッケージが接地として機能するため、パッケージ製品では一般的に共通接地に接続)を示すグラフである。グラフからわかるように、低い周波数領域で大量の歪みがある。これは、接地電極が分離されていない伝送線路アレイ、または狭い接地電極を備えた単一伝送線路では見られず、この場合におけるその発見は驚くべきことである。
【0020】
この効果は、図9Bに示される電界の分布に起因して生じるようである。低周波数では、隣接する伝送線路の中間接地電極間に大きな電界を有するモードが発生する。これは線の間の結合とS21曲線上の不安定性をもたらす。高周波数では、この効果はない。したがって、伝送線路において低いRF周波数で動作することが要求される変調器(または伝送線路アレイの他の用途)にとって、このモードは望ましくない。
【0021】
我々は、広義には、望ましくないモードを取り除くための2つの手法を提案する。第1の手法では、伝送線路アレイは、図4のアーキテクチャと比較してモードに対する損失を増大させるように構成されている。モードの損失が高いほど、モードが著しくなる周波数が低くなり、導波路はモードを導波路の動作周波数以下に「プッシュ」するように構成することができる。第2の手法では、隣接する中間接地電極は、それらが低周波数では単一の共有電極として、また高周波数では分離電極として作用するように接続される。
【0022】
第1の手法の一例は、中間電極間のチャネルを狭くすることである。チャネルが狭いほど、低周波数モードの損失が大きくなる。この効果は、チャネルの幅が20ミクロン未満の場合に顕著になり、チャネルが狭くなるにつれて曲線は滑らかになる。しかしながら、非常に狭いチャネルは、中間接地電極の接触を引き起こす製造誤差のために悪影響を及ぼす可能性がある。現在の技術では、これは5ミクロン未満の幅のチャネルに対して起こると予想されるが、製造における将来の改良はより狭いチャネルを可能にするかもしれない。接地電極間の好ましい間隔は10ミクロンである。
【0023】
第1の手法の他の例は、中間接地電極の幅をそれらの長さに沿って変えることである。これにより、チャネル内の電界の分布が強制的に変化され、それによって不要モードが非常に損失性となる。これは、各中間接地電極の幅を独立して変えることによって(すなわち、チャネルの幅を変えるが、中間接地電極を確実に分離したままにすることによって)達成することができる。あるいは、これは、隣接する中間接地電極が互いに交互に配置されるように、各中間接地電極の幅を協調的に変化させることによって行うことができる。チャネル幅は、電極の長さに対して垂直に測定するか、またはチャネルの壁に対して垂直に測定して、一定に維持され得る。各接地電極の最小幅は、好ましくは10ミクロンより大きく80ミクロン未満である。
【0024】
例示的な構造が図10に示されている。示されている構造のそれぞれにおいて、幅変動は接地電極の長さにわたる「波状」形成であり、すなわち幅は周期的または変調幅で最小幅と最大幅との間で繰り返し変動する。波状および非波状の両方の幅の他の変形例も可能であることが理解されよう。最大の利点を示す構造は、チャネルが「方形波」1001を形成する、すなわち、接地電極の各々がその長さに沿って方形波に従って変化する場合であり、その結果、接地電極が接触することなく2つの方形波が交互に配置できる。しかしながら、「方形波」パターンは製造が困難であり得ると予想されるので、代替として、チャネルの形状(および中間接地電極の幅の変動)は三角波1002、正弦波1003、または電極に沿った距離の関数である他の様々な構成を形成することができる。一定の波長を有する周期関数を使用すると、導波路内にキャビティが形成され、共振がもたらされ得るため、幅が周期関数によって変化する場合、その関数の波長は、電極の長さにわたって変化し得る(すなわち、変調される)。この例は、正弦波1004について示されている。導波路内のキャビティはまた、低い波長、例えば600ミクロン未満、より好ましくは500ミクロン未満、例えば450ミクロン、より好ましくは250ミクロン未満、例えば200ミクロンを有する周期関数を提供することによって回避され得る。
【0025】
幅の変動が使用される場合、図7を参照して上述した狭い導波路の利点のいくつかを提供するために、幅は導波路の幅の2倍未満の幅からより大きい幅の間で変動し得る。
【0026】
図11に示されるように、第1の手法のさらに別の例は、不要モードが問題となる、例えば高吸収および/または高い損失正接(例えば0.1より高い)の材料、例えば磁気負荷材料の周波数で高いRF損失を引き起こすチャネルに、材料1101、1102、1103を導入することである。不要モードのみがチャネル内に著しく伝搬するので、これは不要モードへの損失を有利に引き起こすであろう。材料はチャネル1101を完全に満たすか、またはその高さ1102、幅1103、および/または長さに沿ってチャネルを部分的にしか満たさないこともある。損失が必要とされる周波数は、a)不要モードが著しい(例えば、10GHz未満、または5GHz未満)、およびb)それらの周波数における導波路の性能が重要である(例えば、0.5GHz超、1GHz超、または応用の性能要件に応じて)ものである。
【0027】
図12に示す第2の手法は、隣接する中間接地電極をローパスフィルタ1201(概略的に示す)、またはローパスフィルタと同等に機能する他の構造と接続することによって達成することができる。例えば、隣接する中間接地電極は、(例えば、基板上に直接形成される)薄い(例えば、1ミクロン未満)金属層1202によって接続されてもよく、それは中間接地電極を低周波数で効果的に接続し、かつ高周波で効果的に切断し得る。これは、個別の接地電極でのみ発生する不要モードが低周波では発生しないことを意味する。別々の接地電極の利点は高周波(例えば25GHz以上)でのみ重要であるので、接地電極を低周波数で接続することにはマイナス面がほとんどない。
【0028】
RF伝送線路アレイに対してなされ得るさらなる改善は、必要な金の量を低減することである。従来技術のRF伝送線路では、接地電極は信号電極と同じ高さを有する。しかしながら、伝送線路の挙動は、信号電極に最も近い接地電極の領域によって主に支配される。したがって、必要な金の量を低減するために、図13に示されるような接地電極構造を使用することができる。各接地電極1300は、信号電極と同じ高さであるそれぞれの信号電極に近接する第1の領域1301と、より低い高さである信号電極からさらに離れた第2の領域1302とを有する。このようにして、接地電極を形成するのに必要とされる金の量を著しく減らすことができる。低減された高さは、信号電極の高さの75%以下、例えば、信号電極の高さの50%、25%、10%もしくは5%未満、または10ミクロン、5ミクロン、2ミクロン、もしくは1ミクロン未満であり得る。接地電極は、U字形の形状を有することができる。
【0029】
上記の改良のいずれも組み合わせることができる。例えば、
‐狭いチャネルとさまざまな幅の接地電極の両方を使用して、低周波数で不要モードをさらに抑制することができる。
図8に示す中間接地電極内の「スロット」は、さまざまな幅の接地電極と組み合わせることができる。これは、接地電極の最小幅内、または最小幅と最大幅との間の接地電極の領域内にスロットを設けることによって行うことができる。
‐高さの低い接地電極は、分離された中間接地電極を有する構造で実施することができる。
【0030】
最後のポイントを図14に示す。中間接地電極1400は、信号電極と同じ高さを有する第1の領域1301と、高さが減少した第2の領域1302とを備えることができ、第1の領域は信号電極からより遠い。一例として、各中間接地電極は、L字形の外形を有することができる。これらの実施形態において接地電極の高さを低減することはまた、チャネル内の短絡のリスクを低減するのに役立つ。ここで、チャネルに隣接する接地電極の高さがチャネルの幅と同等またはそれより小さい場合、短絡のないように容易にチャネルを製造することできる。
【0031】
低減された高さは、信号電極の高さの75%未満、より好ましくは50%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは3%未満であり得る。ミクロンでは、低減された高さは5ミクロン以下、より好ましくは3ミクロン以下、より好ましくは1.5ミクロン以下であり得る。
【0032】
これは、接地電極の幅がそれらの長さに沿って変化するときにさらなる利点を提供する。このような変化は、全体を通して信号電極と同じ高さである接地電極の場合よりも接地電極の低い高さ部分で製造するのが簡単である。したがって、幅の変動を全て第2の領域内で行うこと、または等価的に第1の領域を完全に接地電極の最小幅内に配置することが提案される。一例が図15に示されており、中間接地電極1501、1502はそれぞれ、第1の領域1503において信号電極と同等の高さを有し、第2の領域1504において減少した高さを有する。各中間接地電極1501、1502は、幅が変化し、変化は第2の領域1504内で生じる。
【0033】
上記の例による導波路アレイの設計は様々な要因のトレードオフであり、要求される性能は用途に依存することに留意されたい。したがって、有利であると説明されている特徴は、その特徴が必要であることを意味するのではなく、多くの用途において、S21曲線における非平滑性またはクロストークが許容される十分な許容範囲があるので、より好ましくない例を使用することもできる。
【0034】
本発明を上記の好ましい実施形態に関して説明したが、これらの実施形態は例示にすぎず、特許請求の範囲はそれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者は、添付の特許請求の範囲内に含まれると考えられる開示を考慮して、修正および代替をなすことができるであろう。本明細書に開示または例示した各特徴は、単独でも、本明細書に開示または例示した他の任意の特徴と任意の適切な組み合わせでも、本発明に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0035】
201 基板
202、713、723 導波路
203 RF伝送線路アレイ
204、311、312、313、314、411、412、413、414、712、722 信号電極
205、321、322、323、324、325、421、422、423、424、425、426、427、428、800、810、1300、1400、1501、1502 接地電極
210 Xカット
220 Yカット
431、432、433 チャネル
801 スロット
1001 方形波
1002 三角波
1003、1004 正弦波
1201 ローパスフィルタ
1202 金属層
1301、1401、1503 第1の領域
1302、1402、1504 第2の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15