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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ウェアラブルスピーカシステム
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20230313BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20230313BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
H04R1/00 318Z
H04R1/02 101B
H04R1/28 310B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019029569
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020136963
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 毅
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039245(WO,A1)
【文献】実開昭55-082887(JP,U)
【文献】実開昭56-063182(JP,U)
【文献】実開平03-044993(JP,U)
【文献】特開2018-148480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/02
H04R 1/28
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状のエンクロージャを有するウェアラブルスピーカシステムであって、
スピーカユニットと、
端部の一方が、前記スピーカユニットの内部と連通するバスレフダクトであって、前記エンクロージャの内部に格納されているバスレフダクトと、を備え、
前記エンクロージャには開口部が設けられており、前記バスレフダクトの端部の他方は前記エンクロージャの内部に格納されており、
さらに、
前記エンクロージャの内部に、前記スピーカユニットと内部同士で連通する蛇腹筒を備え、
前記バスレフダクトは前記蛇腹筒を貫通するように設けられており、
前記開口部は、前記エンクロージャの前記蛇腹筒と対応する位置に設けられていることを特徴とするウェアラブルスピーカシステム。
【請求項2】
前記開口部は、前記エンクロージャのU字状の内側側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項3】
前記バスレフダクトの前記スピーカユニットの内部と連通していない端部に吸音材が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項4】
前記開口部は複数設けられているとともに、前記エンクロージャの端部から離れるに従って、大きくなることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが耳以外の身体の一部に装着して使用するウェアラブルスピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステムにおいて、臨場感を得るために、大口径スピーカやヘッドフォンが使用される場合がある。しかし、大口径スピーカを有するスピーカシステムを用いる場合、ある程度の空間の広さが必要となる。また、ヘッドフォンを用いる場合、ヘッドフォンはユーザの両耳を挟むように用いるため、使用時間が長くなると、ユーザに対し疲労感を与えてしまう。
【0003】
そこで、特許文献1、2には、ユーザの体に装着し、ユーザの耳を塞がないで使用するウェアラブルスピーカシステムが記載されている。例えば、特許文献1には、U字形のエンクロージャを備えるウェアラブルスピーカシステムであって、エンクロージャに開口部を設け、当該開口部がバスレフダクトの端部となっているウェアラブルスピーカシステムが記載されている。また、特許文献2には、スピーカユニットと蛇腹筒とでウェアラブルスピーカシステムを構成し、スピーカユニットと蛇腹筒との内部同士が連通されたウェアラブルスピーカシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018―148479号公報(2018年9月20日公開)
【文献】特開2018―148480号公報(2018年9月20日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は以下の問題がある。特許文献1、2に記載の技術では、バスレフダクトの端部がそのままエンクロージャの開口部となっており、バスレフダクトからの出力に伴う風切音が、直接外部に出力され、ユーザに不快感、違和感を与えてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザに与える不快感、違和感を抑制したウェアラブルスピーカシステムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るウェアラブルスピーカシステムは、U字状のエンクロージャを有するウェアラブルスピーカシステムであって、スピーカユニットと、端部の一方が、前記スピーカユニットの内部と連通するバスレフダクトであって、前記エンクロージャの内部に格納されているバスレフダクトと、を備え、前記エンクロージャには開口部が設けられており、前記バスレフダクトの端部の他方は前記エンクロージャの内部に格納されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、バスレフダクトの端部が、エンクロージャの開口部となっていないので、バスレフダクトから出力される風切音がエンクロージャから直接出力されることがない。これにより、ユーザに対し、風切音が直接聞こえてしまうということを抑制することでき、ユーザに不快感、違和感を与えてしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るウェアラブルスピーカシステムの概要を示す図であり、(a)はウェアラブルスピーカシステムの正面図であり、(b)は斜視図である。
図2】上記ウェアラブルスピーカシステムの使用例を説明するための図である。
図3】上記ウェアラブルスピーカシステムのエンクロージャの内部構造を説明するための概略図である。
図4】上記ウェアラブルスピーカシステムのエンクロージャの内部構造を説明するための概略図である。
図5】上記ウェアラブルスピーカシステムのエンクロージャの内部構造を説明するための概略図である。
図6】、上記ウェアラブルスピーカシステムにおいて、バスレフダクトの端部を介して開口部から空気が出入りする様子を説明するための図であり、エンクロージャの外面から見た図であり、(b)はエンクロージャの内部を示す図であり、(c)はエンクロージャの内部であり、かつ、蛇腹筒を取り除いた状態を示す図である。
図7】本実施形態において、おもりを取り付けたバスレフダクトと蛇腹筒との関係を示す図である。
図8】本実施形態における、バスレフダクトとおもりとの関係を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は斜視図である。
図9】本実施形態における、蛇腹筒とバスレフダクトとの関係を示す図であり、(a)は正しい方向からバスレフダクトを蛇腹筒に挿入する例を示す図であり、(b)は誤った方向からバスレフダクトを蛇腹筒に挿入する例を示す図である。
図10】(a)、(b)は、本実施形態における蛇腹筒の両端部の径の違いによる利点を説明するための図である。
図11】本実施形態における、バスレフダクトの固定部の詳細を示す図であり、(a)は、蛇腹筒に、おもりを取り付けたバスレフダクトが挿入されている状態の側面図であり、(b)は(a)のD領域を拡大し、おもりを取り除いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ウェアラブルスピーカシステム100の全体構成〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。まず、図1を参照して本実施形態に係るウェアラブルスピーカシステム100の概要を説明する。図1はウェアラブルスピーカシステム100の概要を示す図であり、(a)はウェアラブルスピーカシステム100の正面図であり、(b)は斜視図である。なお、図1に示す、蛇腹筒110、バスレフダクト(ダクトチューブ)111、およびおもり(錐体)112は、エンクロージャ101の内部に格納されており、外部からは見えないため、破線で示している。
【0011】
なお、本実施形態では、ウェアラブルスピーカシステム100において、スピーカユニット102から音が出力される方向、すなわち、使用時にユーザの耳に向く方向をY方向、スピーカユニット102の右スピーカ(スピーカユニット102R)から左スピーカ(スピーカユニット102L)の方向をX方向、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。また、ウェアラブルスピーカシステム100を-Y方向に見た面を正面と呼ぶ。
【0012】
図1の(a)および(b)に示すように、ウェアラブルスピーカシステム100は、エンクロージャ101を備える。エンクロージャ101は、正面から見た場合、略U字形(U字状)となっている。なお、エンクロージャ101を正面から見た場合の形状は、馬蹄形、逆U字形などと表現することもできる。エンクロージャ101は、中央部から±X方向からややZ方向に延びる部分(首後部分101A)と、当該首後部分の端部からそれぞれZ方向に延びる部分(首横部分101B)とを含む。
【0013】
首後部分101Aは、可撓性のある部材で構成されている。首後部分101Aは、ユーザが装着する際に若干撓むことにより、ウェアラブルスピーカシステム100を容易にユーザの首回りに装着することができる。一方、首横部分101Bは、首後部分101Aよりも固い部材で構成されている。
【0014】
また、スピーカユニット102は、エンクロージャ101の端部に設けられている。なお、使用時にユーザの右耳に対応する側をスピーカユニット102R、左耳に対応する側をスピーカユニット102Lと呼び、両者を区別する必要がないときは単にスピーカユニット102と呼ぶ。
【0015】
スピーカユニット102は、公知の技術で実現可能であるので詳細な説明は省略するが、Y方向に向けて開口を有するスピーカを有し、スピーカには、図示しないフレーム、磁気回路、振動板等が含まれる。
【0016】
開口部103は、エンクロージャ101に設けられている開口であり、本実施形態では、エンクロージャ101の首横部分101Bの内側側面に円形で4個ずつ、エンクロージャ101に沿って設けられており、首後部分101Aに向かうに従って円の半径が大きくなっている。開口部103は、エンクロージャ101の左右の首横部分101Bそれぞれに設けられており、スピーカユニット102Rに対応する側を開口部103R、スピーカユニット102Lに対応する側を開口部103Lとする。なお、両者を区別する必要がないときは単に開口部103と呼ぶ。また、開口部103の形状、数は一例であり、円形に限られるものではなく、数も4個に限られない。
【0017】
なお、開口部103が設けられているエンクロージャ101の首横部分101Bには、蛇腹筒110が設けられている。よって、開口部103は、エンクロージャ101の蛇腹筒110と対応する位置に設けられているということもできる。
【0018】
次に、図2を参照して、ウェアラブルスピーカシステム100の使用例を説明する。図2は、ウェアラブルスピーカシステム100の使用例を説明するための図である。図2に示すように、ウェアラブルスピーカシステム100は、エンクロージャ101の首後部分101Aを、ユーザの首の後方に位置させ、エンクロージャ101の首横部分101Bを、ユーザの首の斜め後方から首両側面を経て左右斜め前方に位置させるように、首に掛けて使用する。これにより、スピーカユニット102から出力される音がユーザの耳に適切に届くことになる。また、ウェアラブルスピーカシステム100はユーザの耳を直接塞ぐこともないため、従来のヘッドフォンのように使用とともにユーザに疲労感等を与えることも抑制することができる。
【0019】
次に、図3図5を参照して、エンクロージャ101の内部構造について説明する。図3図5は、エンクロージャ101の内部構造を説明するための概略図である。なお、図3図5では、発明の説明に必要な部材を主に示しており、エンクロージャ101の内部に含まれる全ての部材を示しているものではない。なお、図3は、エンクロージャ101の内部を正面(Y方向)から見た図であり、図4は、エンクロージャ101の内部を側面(X方向)から見た図であり、図5は、エンクロージャ101の内部を反対面(-Y方向)から見た図である。
【0020】
図3図5に示すように、エンクロージャ101の内部において、スピーカユニット102の内部は蛇腹筒110の端部、およびバスレフダクト111の端部と接続されている。また、バスレフダクト111は筒状であり、中央部分にはおもり112が取付けられ、おもり112は蛇腹筒110の略中央で保持されている。
【0021】
また、バスレフダクト111のスピーカユニット102とは反対側の端部には吸音材104が設けられている。
【0022】
なお、図3図5では、ウェアラブルスピーカシステム100における一方の端部を示しており、他端も同様の構成となっている。
【0023】
蛇腹筒110およびバスレフダクト111は、一方の端部がスピーカユニット102側、他方の端部が首後部分101A側となるように、エンクロージャ101の内部、より詳細には首横部分101Bの首後部分101A寄りに配置されている。蛇腹筒110は、両端がエンクロージャ101の内面に形成された固定部で固定されている。そして、蛇腹筒110は、蛇腹状の筒であり、側面に谷折りと山折りとの繰り返しが形成されている。側面に谷折りと山折りとの繰り返しが形成されているので、蛇腹筒110は伸縮可能である。また、蛇腹筒110の略中央は、おもり112を保持できるように、おもり112の長さとほぼ同様の長さで谷折りおよび山折りが形成されていない部分を含む。
【0024】
このように、エンクロージャ101の内部でスピーカユニット102の内部と蛇腹筒110の端部およびバスレフダクト111の端部とが接続されることにより、スピーカユニット102内の気圧の変動は、エンクロージャ101の内部空間を介し、蛇腹筒110およびバスレフダクト111に伝わる。この気圧の変動により、バスレフダクト111に取り付けられているおもり112が蛇腹筒110内で振動することになる。そして、この振動によりエンクロージャ101が振動する。これにより、スピーカユニット102による出力、すなわち、スピーカユニット102から出力される音に応じてエンクロージャ101が振動することになるので、ユーザに対し、出力される音に応じた振動を感じさせることができる。換言すれば、ユーザに対し臨場感を与えることができる。
【0025】
また、バスレフダクト111のスピーカユニット102とは反対側の端部は、エンクロージャ101の首後部分101A側に開口している。この開口は、エンクロージャ101の内部空間を介して開口部103につながる。これにより、スピーカユニット102の振動板の振動に応じて、エンクロージャ101の内部の気圧が変動すると、バスレフダクト111の内部の気圧が変動し、バスレフダクト111の端部を介して開口部103からバスレフダクト111からの出力の基づく音が出力されることになる。振動板により発生するスピーカユニット102の内部の気圧変動のうち高周波成分は低周波成分よりも減衰しながらバスレフダクト111に伝わるので、バスレフダクト111からの出力は、主に低周波成分の大きさに応じたものとなる。したがって、開口部103から出力される音も主に低周波成分に応じたものとなる。これにより、ユーザは、開口部103の出力から低音を感じることができる。
【0026】
次に、図6を参照して、バスレフダクト111からの出力に伴う風切音がユーザに届き難くなった理由を説明する。図6は、バスレフダクト111の端部を介して開口部103から空気が出入りする様子を説明するための図である。図6の(a)は、エンクロージャ101の外面から見た図であり、(b)はエンクロージャ101の内部を示す図であり、(c)はエンクロージャ101の内部であり、かつ、蛇腹筒110を取り除いた状態を示す図である。
【0027】
従来技術では、開口部103がバスレフダクト111の端部となっていた。一方、図6に示すように、本実施形態では、開口部103とバスレフダクト111の端部とはエンクロージャ101の内部を介してつながっている。よって、バスレフダクト111の端部から出た空気は、図6の破線の矢印で示すように、エンクロージャ101の内部を介して開口部103から出ることになる。これにより、従来技術のようにバスレフダクト111からの風切音が直接ユーザに聞こえてしまうということを抑制することができる。さらに、本実施形態ではバスレフダクト111の端部に吸音材104を備えている。これにより、バスレフダクト111からの風切音がユーザに聞こえてしまうということをより抑制することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係るウェアラブルスピーカシステム100は、U字状のエンクロージャ101を有するウェアラブルスピーカシステム100であって、スピーカユニット102と、端部の一方が、前記スピーカユニット102の内部と連通するバスレフダクト111であって、前記エンクロージャ101の内部に格納されているバスレフダクト111と、を備え、前記エンクロージャ101には開口部103が設けられており、前記バスレフダクト111の端部の他方は前記エンクロージャ101の内部に格納されているものである。
【0029】
〔蛇腹筒110、バスレフダクト111、おもり112の詳細〕
次に、図7図11を参照して、蛇腹筒110、バスレフダクト111、およびおもり112の詳細について説明する。
【0030】
図7は、おもり112を取り付けたバスレフダクト111と蛇腹筒110との関係を示す図である。蛇腹筒110の内部の略中央には、おもり112を保持するためのストッパ(保持部)115およびストッパ116が備えられている。そして、ストッパ115は、ストッパ116よりも蛇腹筒110の径の中心方向に向かう長さが長い。これにより、正しい方向、すなわち、ストッパ116からストッパ115に向かう方向に、おもり112が取付けられたバスレフダクト111が挿入されると、おもり112はストッパ116を通り抜けストッパ115により確実に保持される。また、保持された状態では、おもり112はストッパ116にも保持されることになる。また、おもり112は、その側面が、蛇腹筒110の内面と接触するように蛇腹筒110の内部で保持される。
【0031】
図8は、バスレフダクト111とおもり112との関係を示す図であり、(a)は横から見た側面図であり、(b)は斜めから見た斜視図である。図8に示すように、おもり112は、中央に開口がある円柱形状である。換言すれば円柱形状の軸方向に開口部が設けられている。開口部をバスレフダクト111が貫通することにより、バスレフダクト111の固定部におもり112が保持される。なお、図8に示す例では、円盤形状のおもりを複数組み合わせることにより円柱形状を形成しているが、これに限定されるものではない。図8に示すように、バスレフダクト111は、おもり112を保持するために、おもり112の開口部の半径よりも大きい固定部と、端部から中央に向かって半径が大きくなるテーパ形状の挿入部とを有する。そして、テーパ形状の固定部側は、おもり112の開口の半径よりも若干、半径が大きくなっている。これにより、おもり112をバスレフダクト111に容易に挿入できるとともに、一旦、挿入されると、固定部と挿入部とで確実におもり112を保持できる。
なお、固定部と挿入部とによりおもり112を固定するのでこれらを総称して1対の固定部と呼ぶこともできる。
【0032】
図9は、蛇腹筒110とバスレフダクト111との関係を示す図である。図9の(a)は正しい方向からバスレフダクト111を蛇腹筒110に挿入する例を示す図であり、(b)は誤った方向からバスレフダクト111を蛇腹筒110に挿入する例を示す図である。
【0033】
図9に示すように、バスレフダクト111の固定部の直径Aと、蛇腹筒110の端部それぞれの直径B、Cは、全て長さが異なり、その関係は、B>A>Cとなっている。すなわち、蛇腹筒110の両端部の直径は異なっているとともに、バスレフダクト111の固定部の直径は、蛇腹筒110の両端部の直径の間である。これにより、バスレフダクト111は、半径がBの端部から蛇腹筒110に挿入することは可能であるが、半径がCの端部からは挿入することが不可能となる。これにより誤った方向からバスレフダクト111を挿入してしまうことを防止することができる(図9の(b)参照)。
【0034】
図10は、蛇腹筒110の両端部の径の違いの利点を説明するための図である。図10の(a)に示すように蛇腹筒110のスピーカユニット102とは反対側の端部の径を、小さくすることで、蛇腹筒110がエンクロージャ101の曲面部分に配置された際、エンクロージャ101との接触を回避できるので好適である(図10の(b)の破線で示す領域参照)。同端部は、振幅量が中央部に比べて少ない為、端部の径を小さくしても蛇腹筒110全体としての振動性能への影響は少ない。
【0035】
図11は、バスレフダクト111の固定部の詳細を示す図であり、(a)は、蛇腹筒110に、おもり112を取り付けたバスレフダクト111が挿入されている状態の側面図であり、(b)は(a)のD領域を拡大し、おもり112を取り除いた状態を示す図である。
【0036】
図11の(b)に示すように、バスレフダクト111の固定部のおもり112が接触する側の面は、径方向外側にいくに従って、おもり112側に湾曲するような凹形状を有している。スピーカユニット102の振動板による気圧の変動に基づく空気は、図11の(a)に矢印で示すように、蛇腹筒110の内部を進み、バスレフダクト111とおもり112の間を進もうとする。ここで、本実施形態のように、バスレフダクト111の固定部が凹形状を有すれば、バスレフダクト111の固定部とおもり112との密着度合が高まり、バスレフダクト111とおもり112との間を空気が進むことが難しくなる。これにより、空気がバスレフダクト111とおもり112との間から漏れることを抑制することができ、スピーカユニット102の振動板による気圧の変動に基づいて、確実におもり112を振動させることができる。
【0037】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るウェアラブルスピーカシステム100は、U字状のエンクロージャ101を有するウェアラブルスピーカシステム100であって、スピーカユニット102と、端部の一方が、前記スピーカユニット102の内部と連通するバスレフダクト111であって、前記エンクロージャ101の内部に格納されているバスレフダクト111と、を備え、前記エンクロージャ101には開口部103が設けられており、前記バスレフダクト111の端部の他方は前記エンクロージャ101の内部に格納されていることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、バスレフダクトの端部が、エンクロージャの開口部となっていないので、バスレフダクトから出力される風切音がエンクロージャから直接出力されることがない。これにより、ユーザに対しに、風切音が直接聞こえてしまうということを抑制することでき、ユーザに不快感、違和感を与えてしまうことを防止することができる。
【0039】
本発明の態様2に係るウェアラブルスピーカシステム100では、前記態様1において、前記開口部103は、前記エンクロージャ101のU字状の内側側面に設けられているものであってもよい。
【0040】
上記の構成によれば、ユーザに対し風切音が直接聞こえてしまうことを抑制しつつ、バスレフダクトからの低音域の出力をユーザに認識させることができる。
【0041】
本発明の態様3に係るウェアラブルスピーカシステム100では、前記態様1または2において、前記バスレフダクト111の前記スピーカユニット102の内部と連通していない端部に吸音材104が備えられていてもよい。
【0042】
上記の構成によれば、バスレフダクトからの風切音がユーザに聞こえてしまうことをより抑制することができる。
【0043】
本発明の態様4に係るウェアラブルスピーカシステム100では、前記態様1~3の何れかにおいて、前記エンクロージャ101の内部に、前記スピーカユニット102と内部同士で連通する蛇腹筒110を備え、前記バスレフダクト111は前記蛇腹筒110を貫通するように設けられており、前記開口部103は、前記エンクロージャ101の前記蛇腹筒110と対応する位置に設けられているものであってもよい。
【0044】
上記の構成によれば、開口部は、バスレフダクトの端部から離れた位置となるので、ユーザに対しに、風切音が直接聞こえてしまうということを抑制することできるとともに、ユーザに対しバスレフダクトからの低音域の出力をユーザに認識させることができる。
【0045】
本発明の態様5に係るウェアラブルスピーカシステム100では、前記態様1~4の何れかにおいて、前記開口部103は複数設けられているとともに、前記エンクロージャ101の端部から離れるに従って、大きくなるものであってもよい。
【0046】
上記の構成によれば、ユーザに対しに、風切音が直接聞こえてしまうということを抑制することできるとともに、ユーザに対しバスレフダクトからの低音域の出力をユーザに認識させることができる。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 ウェアラブルスピーカシステム
101 エンクロージャ
102(102L、102R) スピーカユニット
103(103L、103R) 開口部
104 吸音材
110 蛇腹筒
111 バスレフダクト(ダクトチューブ)
112 おもり(錐体)
115、116 ストッパ(保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11