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  • 特許-オーステナイト鉄合金を製造する方法 図1
  • 特許-オーステナイト鉄合金を製造する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】オーステナイト鉄合金を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/15 20060101AFI20230313BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230313BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230313BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230313BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230313BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
B22F3/15 H
C22C38/00 304
C22C38/58
B22F1/00 T
C22C33/02 B
B22F3/24 102Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019032578
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2019151924
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】1803142.7
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591005785
【氏名又は名称】ロールス・ロイス・ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】ROLLS-ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・エイ・スチュアート
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-227153(JP,A)
【文献】特表2013-542316(JP,A)
【文献】特開昭62-037346(JP,A)
【文献】特開昭60-190552(JP,A)
【文献】特開昭50-030727(JP,A)
【文献】米国特許第04803045(US,A)
【文献】国際公開第2016/006280(WO,A1)
【文献】特開平01-230754(JP,A)
【文献】特開2002-275602(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103801691(CN,A)
【文献】Ohriner et al,The Chemistry and Structure of Wear-Resistant, Iron-Base Hardfacing Alloys,Metallurgical Transactions,1991年,22A,983-991
【文献】J. W. SIMMONS ET AL,Microstructural characterization of as-cast high-nitrogen Fe-15Cr-15Ni alloys,JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE,米国,1992年,27・22,6105-6115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 38/00-38/60
C22C 33/02
C23C 8/00-12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーステナイト鉄合金を製造する方法であって、オーステナイト鉄合金粉末を缶内に配置すること;前記缶から空気及び他の気体を排出すること;前記缶中に窒素ガスを供給すること;前記缶を封止し、次に前記缶内において前記オーステナイト鉄合金粉末を熱間等方圧加圧して、前記オーステナイト鉄合金粉末中に前記窒素を拡散させて、窒素富化オーステナイト鉄合金バーを製造すること;及び前記窒素富化オーステナイト鉄合金バーから前記缶を除去すること;を含み、前記窒素富化オーステナイト鉄合金は、12~41重量%のクロム、7~9重量%のマンガン、4~5重量%のケイ素、4~6重量%のニッケル、2.5重量%以下の炭素、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成される上記方法。
【請求項2】
前記オーステナイト鉄合金粉末が150マイクロメートル以下の寸法を有する粉末粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オーステナイト鉄合金粉末が50マイクロメートル以上の寸法を有する粉末粒子を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記缶が軟鋼缶を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において1000℃~1200℃の温度で熱間等方圧加圧することを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において1110℃~1130℃の温度で熱間等方圧加圧することを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において1120℃の温度で熱間等方圧加圧することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において80MPa~140MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において90MPa~110MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記オーステナイト鉄合金粉末を前記缶内において100MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記窒素富化オーステナイト鉄合金が、28重量%のクロム、9重量%のマンガン、5重量%のケイ素、6重量%のニッケル、2.5重量%以下の炭素、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記窒素富化オーステナイト鉄合金が0.8~1.2重量%の炭素から構成される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記窒素富化オーステナイト鉄合金が1.7~2.0重量%の炭素から構成される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記窒素富化オーステナイト鉄合金が2.2~2.5重量%の炭素から構成される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記窒素富化オーステナイト鉄合金を用いて物品を製造するか又は物品上に被覆を与えることを含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記物品又は被覆物品が原子炉の構成部品である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーステナイト鉄合金又はオーステナイト鋼を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーステナイト鉄合金又はオーステナイト鋼の強度を向上させ、及び/又は耐腐食性を増加させ、及び/又はオーステナイト相の安定化を与えるために、オーステナイト鉄合金、即ちオーステナイト鋼に通常は窒素が加えられる。窒素は、通常は、オーステナイト鉄合金の原材料の製造中、例えば鋳造プロセス中に例えば比較的高い窒素含量を有する母合金を用いることによってオーステナイト鉄合金に加えられる。窒素は、部品の製造中において、例えばオーステナイト鉄合金部品を窒化することによってオーステナイト鉄合金に加えることができる。オーステナイト鉄合金の窒化は比較的高い温度において行われ、これによりオーステナイト鉄合金部品の機械特性が影響を受ける可能性がある。更に、窒化が必要ないオーステナイト鉄合金部品の領域は、それらが窒化されるのを阻止するためにマスクしなければならず、これは窒化プロセスの時間及びコストを増加させる。
【0003】
オーステナイト鉄合金部品は、合金を金型中に流し込むことによって製造することができる。オーステナイト鉄合金部品はまた、粉末冶金によって製造することもできる。これは、オーステナイト鉄合金粉末を缶内に配置すること、缶から空気及び他の気体を排出すること、缶を封止すること、及び次に缶を熱間等方圧加圧してオーステナイト鉄合金バーを製造することを含む。次に缶をオーステナイト鉄合金バーから除去し、次にオーステナイト鉄合金バーを用いて部品を製造する。
【発明の概要】
【0004】
第1の形態によれば、オーステナイト鉄合金を製造する方法であって、オーステナイト鉄合金粉末を缶内に配置すること;前記缶から空気及び他の気体を排出すること;前記缶中に窒素ガスを供給すること;前記缶を封止し、次に前記缶内において前記オーステナイト鉄合金粉末を熱間等方圧加圧して、前記オーステナイト鉄合金粉末中に前記窒素を拡散させて、窒素富化オーステナイト鉄合金バーを製造すること;及び前記窒素富化オーステナイト鉄合金バーから前記缶を除去すること;を含み、前記窒素富化オーステナイト鉄合金は、12~41重量%のクロム、7~9重量%のマンガン、4~5重量%のケイ素、4~6重量%のニッケル、2.5重量%以下の炭素、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成される上記方法が提供される。
【0005】
オーステナイト鉄合金粉末は、オーステナイト鉄合金粉末、又はオーステナイト鉄合金粉末と1以上の他の相の鉄合金粉末との混合物を含んでいてよい。
オーステナイト鉄合金粉末と1以上の他の相の鉄合金粉末との混合物は、オーステナイト鉄合金粉末とフェライト鉄合金粉末との混合物を含んでいてよい。
【0006】
窒素は、オーステナイト鉄合金のオーステナイトマトリクス全体にわたって積層欠陥エネルギーを低下させる。
オーステナイト鉄合金粉末は、150マイクロメートル以下の寸法を有する粉末粒子を含んでいてよい。
【0007】
オーステナイト鉄合金粉末は50マイクロメートル以上の寸法を有する粉末粒子を含んでいてよい。
缶は軟鋼缶を含んでいてよい。
【0008】
本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において1000℃~1200℃の温度で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において1110℃~1130℃の温度で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において1120℃の温度で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。
【0009】
本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において80MPa~140MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において90MPa~110MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。本方法には、オーステナイト鉄合金粉末を缶内において100MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含ませることができる。
【0010】
窒素富化オーステナイト鉄合金は、28重量%のクロム、9重量%のマンガン、5重量%のケイ素、6重量%のニッケル、2.5重量%以下の炭素、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成されていてよい。
【0011】
窒素富化オーステナイト鉄合金は、0.8~1.2重量%の炭素から構成されていてよい。窒素富化オーステナイト鉄合金は、1.7~2.0重量%の炭素から構成されていてよい。窒素富化オーステナイト鉄合金は、2.2~2.5重量%の炭素から構成されていてよい。
【0012】
窒素富化オーステナイト鉄合金は、0.08~0.2重量%の窒素から構成されていてよい。
窒素富化オーステナイト鉄合金はコバルトを含まない。
【0013】
窒素富化オーステナイト鉄合金を用いて部品を製造するか又は部品上に被覆を与えることができる。
かかる部品は原子炉の構成部品であってよい。より一般的には、窒素富化オーステナイト合金は物品を構成することができ、或いは物品の被覆、例えば表面硬化層を構成することができる。
【0014】
オーステナイト鉄合金はオーステナイト鋼であってよい。
当業者であれば、互いに相容れない場合を除いて、上記の任意の形態に関して記載される特徴は、必要に応じて変更を加えて任意の他の形態に適用することができることを認識するであろう。更に、互いに相容れない場合を除いて、ここに記載する任意の特徴は、任意の形態に適用することができ、及び/又はここに記載する任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0015】
ここで、例のみとして、図を参照して幾つかの態様を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、オーステナイト鉄合金を製造する方法を示すフロー図である。
図2図2は、オーステナイト鉄合金を製造する方法において用いる缶を排気し、及びそれに窒素を供給するために用いる装置を示す概要図である。
図3図3は、オーステナイト鉄合金を製造する方法において用いるための熱間等方圧加圧炉を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
オーステナイト鉄合金を製造する方法は、図1に示すように、オーステナイト鉄合金粉末を缶内に配置すること(12);前記缶から空気及び他の気体を排出すること(14);前記缶中に窒素ガスを供給すること(16);前記缶を封止し(18)、次に前記缶内において前記オーステナイト鉄合金粉末を熱間等方圧加圧して、前記オーステナイト鉄合金粉末中に前記窒素を拡散させて、窒素富化オーステナイト鉄合金バーを製造すること(20);及び前記窒素富化オーステナイト鉄合金バーから前記缶を除去すること(22);を含む。熱間等方圧加圧によって、オーステナイト鉄合金粉末粒子34が、緻密化(consolidate)、例えば圧縮及び拡散接合されてオーステナイト鉄合金バーになる(20)。オーステナイト鉄合金粉末は、まず、鉄合金を溶融して液体の鉄合金を生成させ、次に液体の鉄合金をガスアトマイズして固体の粉末鉄合金を速やかに生成させることを含むガスアトマイズによって製造される。液体鉄合金のガスアトマイズ中に液体鉄合金が急速固化するために、オーステナイト鉄合金粉末は、オーステナイト鉄合金粉末、又はオーステナイト鉄合金粉末と1以上の他の相の鉄合金粉末との混合物、例えばオーステナイト鉄合金粉末とフェライト鉄合金粉末との混合物を含んでいてよい。鉄合金粉末の組成と、熱間等方圧加圧中の鉄合金粉末の熱処理との組合せによって、緻密化されたオーステナイト鉄合金バー内にオーステナイト相が生成する。
【0018】
図2は、缶から空気及び他の気体を排出し、及び缶に窒素を供給するために用いる装置30を示す。図2は、オーステナイト鉄合金粉末34を含む缶32を示す。オーステナイト鉄合金はオーステナイト鋼であってよい。缶32は軟鋼缶を含んでいてよい。缶32中に配置されるオーステナイト鉄合金粉末34は、150マイクロメートル以下の寸法を有する粉末粒子を含む。キャニスター32中に配置されるオーステナイト鉄合金粉末34は、50マイクロメートル以上の寸法を有する粉末粒子を含む。
【0019】
缶32の内部からパイプ38を通して空気及び他の気体を排出するようにポンプ36が配置され、缶の内部にパイプ42及びバルブ44を通して窒素を供給するように窒素ガスの供給源40が配置されている。ポンプ36を、缶32の内部からパイプ38を通して気体を排出するように配置し、次にパイプ38を任意の好適な技術、例えば溶接又は圧接及び溶接によって封止する。パイプ38を封止したら、バルブ44を開放してパイプ42を通して窒素を缶32の内部の中に供給する。十分な量の窒素が缶32中に供給された時点で、パイプ42を任意の好適な技術、例えば溶接又は圧接及び溶接によって封止して、完全に封止された缶32を形成する。次に、封止された缶32を、窒素供給源40、バルブ44、及びポンプ36から取り外して、熱間等方圧加圧の準備が完了する。
【0020】
図3は、熱間等方圧加圧(HIP)容器50内のオーステナイト鉄合金粉末を含む封止された缶32を示す。HIP容器50は、ヒーター、並びに不活性ガスをHIP容器50中に供給するためのパイプ52及びバルブ54を有する。HIP容器50に不活性ガスを供給し、HIP容器50内の温度及び圧力を上昇させて、オーステナイト鉄合金粉末34を缶32内において熱間等方圧加圧して、窒素をオーステナイト鉄合金粉末34中に拡散させて、窒素富化オーステナイト鉄合金バーを生成させる。
【0021】
本方法は、オーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において1000℃~1200℃の温度で熱間等方圧加圧することを含む。本方法は、オーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において1110℃~1130℃の温度で熱間等方圧加圧することを含み、例えばオーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において1120℃の温度で熱間等方圧加圧することを含む。本方法は、オーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において80MPa~140MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含む。本方法は、オーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において90MPa~110MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含み、例えばオーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において100MPaの圧力で熱間等方圧加圧することを含む。熱間等方圧加圧は、温度及び圧力を数時間の間一定に維持することを含む。一例においては、本方法は、オーステナイト鉄合金粉末34を、缶32内において、1120℃の温度及び100MPaの圧力で4時間熱間等方圧加圧することを含む。
【0022】
1120℃よりも低い温度を用いる場合には、オーステナイト鉄合金粉末を熱間等方圧加圧する圧力及び時間を適切に増加させる。1120℃よりも高い温度を用いる場合には、オーステナイト鉄合金粉末を熱間等方圧加圧する圧力及び時間を適切に減少させる。加熱速度は10℃/分であってよく、冷却速度は10℃/分であってよい。
【0023】
得られる窒素富化オーステナイト鉄合金バーは0.2重量%以下の窒素から構成される。得られる窒素富化オーステナイト鉄合金は2.5重量%以下の炭素から構成されていてよく、炭素を加えることによってオーステナイト鋼合金が生成する。窒素富化オーステナイト鉄合金は、12~41重量%のクロム、7~9重量%のマンガン、4~5重量%のケイ素、4~6重量%のニッケル、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成される。例えば、窒素富化オーステナイト鉄合金は、28重量%のクロム、9重量%のマンガン、5重量%のケイ素、6重量%のニッケル、0.2重量%未満の窒素、並びに残余量の鉄及び不可避的不純物から構成される。窒素富化オーステナイト鉄合金は、0.08~0.2重量%の窒素から構成されていてよい。オーステナイト鉄合金はコバルトを含まないことを留意すべきである。
【0024】
一態様においては、オーステナイト鉄合金は、重量基準で0.8~1.2重量%の炭素を有する。これによって、ステライト6に匹敵する炭化物含量を有する合金が得られる。他の態様においては、オーステナイト鉄合金は、重量基準で1.7~2.0重量%の炭素を有する。これによって、ステライト12に匹敵する炭化物含量を有する合金が得られる。他の態様においては、オーステナイト合金は、重量基準で2.2~2.5重量%の炭素を有する。これにより、ステライト3に匹敵する炭化物含量を有する合金が得られる。ステライトは登録商標である。
【0025】
図1に戻り、得られる窒素富化オーステナイト鉄合金バーを用いて、部品を製造するか、または部品上に被覆を与えることができる(24)。得られる窒素富化オーステナイト鉄合金バーを片に機械加工して、これをその後に機械加工、形成、又は成形して物品にすることができ、或いは得られる窒素富化オーステナイト鉄合金バーを、物品上に被覆を与えるために用いる粉末形態に加工することができ、或いは得られる窒素富化オーステナイト鉄合金バーを片に機械加工して、これをその後に機械加工、形成、又は成形して、物品のために形成される被覆又はライニングにすることができる。物品は、原子炉の構成部品であってよい。より一般的には、窒素富化オーステナイト合金は、物品を構成することができ、或いは物品の被覆、例えば表面硬化層を構成することができる。
【0026】
本発明の有利性は、粉末冶金加工において、オーステナイト鉄合金が缶内にある時点で、且つ缶を封止して熱間等方圧加圧する前にオーステナイト鉄合金に窒素を加えているので、オーステナイト鉄合金粉末に関してバルク(液体又は固体)のオーステナイト鉄合金よりも大きな表面積/体積比のために、オーステナイト鉄合金中への窒素の吸収がより有効であることである。熱間等方圧加圧(HIP)プロセスを利用して、窒素をオーステナイト鉄合金中に拡散させ、オーステナイト鉄合金粉末をオーステナイト鉄合金バーに緻密化する。而して、熱間等方圧加圧(HIP)プロセスは、2つの別個であるが同時進行の働きを同時に遂行する。オーステナイト鉄合金粉末の大きな表面積/体積比により、オーステナイト鉄合金内における窒素のより均一な分布が生成するように窒素をオーステナイト鉄合金中に導入することが確実になり、熱間等方圧加圧(HIP)プロセスの時間、圧力、及び温度プロファイルによって、これを達成することが可能になる。窒素は、オーステナイト鉄合金又はオーステナイト鋼のオーステナイトマトリクス全体にわたって積層欠陥エネルギーを減少させる。0.2重量%より多い窒素を加えると、窒素の一部がクロムと反応して窒化クロム(CrN)が形成される可能性があり、これにより、遊離クロムの量が減少することによって、オーステナイト鉄合金の硬度が増加し、延性が減少し、耐腐食性が減少する。
【0027】
表面硬化オーステナイト鉄合金は低い積層欠陥エネルギーが必要である。これは、低い積層欠陥エネルギーによって、オーステナイト鉄合金の結晶構造中に内部欠陥を導入することがより容易になるからである。オーステナイト鉄合金の結晶構造中の内部欠陥によって、マトリックスがより強固になり、したがってより変形し難くなり、ゴーリングは表面硬化オーステナイト合金の接触表面において永久塑性変形を生じさせるので、これによってより高い耐ゴーリング性が与えられる。したがって、より低い積層欠陥エネルギーはより多い内部欠陥を意味し、これはより大きな変形応力、したがってより高い耐ゴーリング性が必要であることを意味する。
【0028】
本発明は上記に記載の態様に限定されず、ここに記載する概念から逸脱することなく種々の修正及び改良を行うことができることが理解される。互いに相容れない場合を除いて、任意の特徴は別々か又は任意の他の特徴と組み合わせて用いることができ、本発明はここに記載する1以上の特徴の全ての組合せ及びサブコンビネーションに拡張され、且つこれらを包含する。
図1
図2
図3