IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

特許7242422ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法
<>
  • 特許-ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法 図1
  • 特許-ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法 図2
  • 特許-ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法 図3
  • 特許-ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法 図4
  • 特許-ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ステージ姿勢把握装置、ステージ移動装置、ステージ姿勢把握方法、およびステージ姿勢修正方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230313BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20230313BHJP
   G05D 3/10 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 F
G05D3/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019094207
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020190582
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】臼本 宏昭
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289514(JP,A)
【文献】特開2003-264134(JP,A)
【文献】特開2006-226862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握装置であって、
入力信号を取得する入力信号取得部と、
前記入力信号から前記ステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、
を備え、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、または一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分を含む未処理信号に対して所定の処理を行った被処理信号であり、
前記入力信号は、横軸を時刻tにおける前記未処理信号、縦軸を時刻t+Δtにおける前記未処理信号とした時系列座標データ、あるいは、前記時系列座標データの表示動画であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するためのステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
を有し、
前記センサは、
前記エアベアリングにおける気圧を計測する圧力センサと、
前記移動機構におけるトルクを計測するトルク検出センサと、
前記移動体の加速度を計測する加速度センサと、
の少なくとも1つを含み、
前記検出信号は、
前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、
前記移動機構の一方または両方における前記トルクと、
前記移動体の一方または両方における前記加速度と、
の少なくとも1つを含む、ステージ姿勢把握装置。
【請求項2】
ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握装置であって、
入力信号を取得する入力信号取得部と、
前記入力信号から前記ステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、
を備え、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられた一対のセンサから得られた一対の検出信号差分、または、前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するためのステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
を有し、
前記センサは、少なくとも
前記移動機構におけるトルクを計測する一対のトルク検出センサ
を含み、
前記検出信号は、少なくとも
前記移動機構の両方における前記トルク
を含み、
前記入力信号は、前記トルクの差分、または、前記トルクの差分に所定の処理を行った被処理信号である、ステージ姿勢把握装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のステージ姿勢把握装置であって、
前記学習モデルは、前記入力信号を入力するとともに、前記ステージ姿勢を検知した検知信号を教師データとして与えることによって得られたモデルである、ステージ姿勢把握装置。
【請求項4】
請求項1記載のステージ姿勢把握装置であって、
前記検出信号は、少なくとも前記トルクの差分を含む、ステージ姿勢把握装置。
【請求項5】
上面に被処理物を載置するためのステージを移動させるステージ移動装置であって、
ステージ移動機構と、
入力信号を取得する入力信号取得部と、
前記入力信号から前記ステージ移動機構のステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、
を備え、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分、または、前記検出信号または前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するためのステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
前記ステージの姿勢を修正するステージ姿勢修正機構と、
を有し、
前記センサは、
前記エアベアリングにおける気圧を計測する圧力センサと、
前記移動機構におけるトルクを計測するトルク検出センサと、
前記移動体の加速度を計測する加速度センサと、
の少なくとも1つを含み、
前記検出信号は、
前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、
前記移動機構の一方または両方における前記トルクと、
前記移動体の一方または両方における前記加速度と、
の少なくとも1つを含み、
前記ステージ姿勢修正機構は、前記姿勢推定部の出力した前記推定ステージ姿勢に基づいて、前記ステージの姿勢を修正する、ステージ移動装置。
【請求項6】
ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握方法であって、
a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、
を有し、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号または一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分を含む未処理信号に対して所定の処理を行った被処理信号であり、
前記入力信号は、横軸を時刻tにおける前記未処理信号、縦軸を時刻t+Δtにおける前記未処理信号とした時系列座標データ、あるいは、前記時系列座標データの表示動画であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するためのステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
を有し、
前記検出信号は、
前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、
前記移動機構の一方または両方におけるトルクと、
前記移動体の一方または両方における加速度と、
の少なくとも1つを含む、ステージ姿勢把握方法。
【請求項7】
ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握方法であって、
a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、
を有し、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられた一対のセンサから得られた一対の検出信号差分、または、前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するためのステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
を有し、
前記検出信号は少なくとも
前記移動機構の両方におけるトルク
を含み、
前記入力信号は、前記トルクの差分、または、前記トルクの差分に所定の処理を行った被処理信号である、ステージ姿勢把握方法。
【請求項8】
ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢修正方法であって、
a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、
c)前記工程b)で出力された前記推定ステージ姿勢に基づいて、ステージの姿勢を修正する工程と、
を有し、
前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分、または、前記検出信号または前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、
前記ステージ移動機構は、
上面に被処理物を載置するための前記ステージと、
前記ステージとともに移動する一対の移動体と、
前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、
一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、
前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、
を有し、
前記検出信号は、
前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、
前記移動機構の一方または両方におけるトルクと、
前記移動体の一方または両方における加速度と、
の少なくとも1つを含む、ステージ姿勢修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を保持するステージの姿勢を把握するステージ姿勢把握装置、および、当該ステージを移動させるステージ移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板等の被処理物の表面に対して露光や塗布等の処理を行う処理装置において、被処理物を移動させつつ、処理部による処理を行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、描画対象である基板を移動させつつ、感光材料が塗布された基板の主面に対して空間変調された光を照射してパターンを描画する描画装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の描画装置は、基板を水平姿勢で保持するステージと、ステージを移動方向に沿って案内する一対の移動機構(リニアモータおよびガイドレール)とを有している。この種の装置では、一対の移動機構の条件の違い等の機械構成上の問題によって、ステージの移動方向に対する角度(Yaw角度、回転角度)が傾いたり(偏走)、当該Yaw角度が変動したり(偏揺れ)する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-72434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏走や偏揺れ等の所謂ヨーイング現象が生じると、処理部による処理についてプロセス品質が低下する。ヨーイング現象を抑制する方法として、例えば、ステージ移動機構の機械的精度を向上させる方法がある。しかしながら、機械的精度の追求を行うと、その実現コストが高くなる。さらに、十分な機械的精度を有する装置であっても、部品の摩耗や劣化等の経時変化によって機械的精度は低下する。
【0006】
また、生じたヨーイング現象に対処する方法として、例えば、特許文献1に記載のレーザ光の反射を用いた位置パラメータ計測機構によってステージまたはステージ上の被処理物の位置を計測し、回転角度を検出する方法がある。この場合、検出した回転角度に基づいてステージ姿勢を補正したり、ステージ姿勢は補正せずに処理部による処理位置を補正したりすることで、被処理物に対する処理位置がずれることを抑制できる。しかしながら、このようなレーザ光の反射を用いた位置パラメータ計測機構を設けると、コストがかかるとともに、装置の体格が大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、直接回転角度を検出することなく、ステージ姿勢を推定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握装置であって、入力信号を取得する入力信号取得部と、前記入力信号から前記ステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、を備え、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、または一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分を含む未処理信号に対して所定の処理を行った被処理信号であり、前記入力信号は、横軸を時刻tにおける前記未処理信号、縦軸を時刻t+Δtにおける前記未処理信号とした時系列座標データ、あるいは、前記時系列座標データの表示動画であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するためのステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、を有し、前記センサは、前記エアベアリングにおける気圧を計測する圧力センサと、前記移動機構におけるトルクを計測するトルク検出センサと、前記移動体の加速度を計測する加速度センサと、の少なくとも1つを含み、前記検出信号は、前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、前記移動機構の一方または両方における前記トルクと、前記移動体の一方または両方における前記加速度と、の少なくとも1つを含む。
本願の第2発明は、ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握装置であって、入力信号を取得する入力信号取得部と、前記入力信号から前記ステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、を備え、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられた一対のセンサから得られた一対の検出信号差分、または、前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するためのステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、を有し、前記センサは、少なくとも前記移動機構におけるトルクを計測する一対のトルク検出センサを含み、前記検出信号は、少なくとも前記移動機構の両方における前記トルクを含み、前記入力信号は、前記トルクの差分、または、前記トルクの差分に所定の処理を行った被処理信号である
【0009】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明のステージ姿勢把握装置であって、前記学習モデルは、前記入力信号を入力するとともに、前記ステージ姿勢を検知した検知信号を教師データとして与えることによって得られたモデルである。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明ステージ姿勢把握装置であって、前記検出信号は、少なくとも前記トルクの差分を含む。
【0012】
本願の第5発明は、上面に被処理物を載置するためのステージを移動させるステージ移動装置であって、ステージ移動機構と、入力信号を取得する入力信号取得部と、前記入力信号から前記ステージ移動機構のステージ姿勢を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルに前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する姿勢推定部と、を備え、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分、または、前記検出信号または前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するためのステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、前記ステージの姿勢を修正するステージ姿勢修正機構と、を有し、前記センサは、前記エアベアリングにおける気圧を計測する圧力センサと、前記移動機構におけるトルクを計測するトルク検出センサと、前記移動体の加速度を計測する加速度センサと、の少なくとも1つを含み、前記検出信号は、前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、前記移動機構の一方または両方における前記トルクと、前記移動体の一方または両方における前記加速度と、の少なくとも1つを含み、前記ステージ姿勢修正機構は、前記姿勢推定部の出力した前記推定ステージ姿勢に基づいて、前記ステージの姿勢を修正する。
【0013】
本願の第6発明は、ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握方法であって、a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、を有し、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号または一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分を含む未処理信号に対して所定の処理を行った被処理信号であり、前記入力信号は、横軸を時刻tにおける前記未処理信号、縦軸を時刻t+Δtにおける前記未処理信号とした時系列座標データ、あるいは、前記時系列座標データの表示動画であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するためのステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、を有し、前記検出信号は、前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、前記移動機構の一方または両方におけるトルクと、前記移動体の一方または両方における加速度と、の少なくとも1つを含む。
【0014】
本願の第7発明は、ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢把握方法であって、a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、を有し、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられた一対のセンサから得られた一対の検出信号差分、または、前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するためのステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、を有し、前記検出信号は少なくとも、前記移動機構の両方におけるトルクを含み、前記入力信号は、前記トルクの差分、または、前記トルクの差分に所定の処理を行った被処理信号である
【0015】
本願の第8発明は、ステージ移動機構のステージ姿勢を把握するためのステージ姿勢修正方法であって、a)入力信号を入力とし、前記ステージ姿勢を出力の教師データとして、前記入力信号と前記ステージ姿勢との関係を機械学習した姿勢推定部を準備する工程と、b)前記工程a)の後に、前記姿勢推定部に前記入力信号を入力し、推定ステージ姿勢を出力する工程と、c)前記工程b)で出力された前記推定ステージ姿勢に基づいて、ステージの姿勢を修正する工程と、を有し、前記入力信号は、前記ステージ移動機構に設けられたセンサから得られた検出信号、一対の前記センサから得られた一対の前記検出信号の差分、または、前記検出信号または前記差分に所定の処理を行った被処理信号であり、前記ステージ移動機構は、上面に被処理物を載置するための前記ステージと、前記ステージとともに移動する一対の移動体と、前記移動体を主走査方向に移動させる、一対の移動機構と、一部が前記移動体の下方に配置され、前記移動体を主走査方向に案内する一対のガイド部と、前記移動体と前記ガイド部との上下方向の間隙に加圧気体を供給する一対のエアベアリングと、を有し、前記検出信号は、前記エアベアリングの一方または両方における圧力値と、前記移動機構の一方または両方におけるトルクと、前記移動体の一方または両方における加速度と、の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明から第8発明によれば、各センサからの検出信号に基づいてステージ姿勢を推定することができる。したがって、直接ステージの回転角度を検出することなく、ステージ姿勢を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る描画装置の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る描画装置の制御ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る描画装置の構成を示した概略上面図である。
図4】第1実施形態に係るステージ移動装置の構成を示した概略断面図である。
図5】被処理回転角度、被処理トルク差および被処理第1圧力値の例を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<1.描画装置の構成>
本発明のステージ移動装置の第1実施形態に係るステージ移動機構1を有する描画装置9について、図1を参照しつつ説明する。図1は、描画装置9の斜視図である。図2は、描画装置9の制御ブロック図である。図3は、描画装置9の構成を示した概略上面図である。
【0020】
描画装置9は、感光材料が表面に塗布された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に対して、空間変調された光を照射してパターンを描画する、直接描画装置である。なお、基板Wは、基層のみからなる単層基板であってもよく、基層の少なくとも一方側の表面に機能層が積層された積層基板であってもよい。以下では、描画装置9が積層基板である基板Wの表面にパターンを描画する場合について説明する。
【0021】
描画装置9は、図1に示すように、ステージ移動機構1と、フレーム91と、描画処理部92と、制御部100とを有する。
【0022】
ステージ移動機構1は、基板Wを水平姿勢で保持するステージSの水平方向(主走査方向および副走査方向)の位置を移動させるための装置である。ステージ移動機構1は、ステージ移動機構1の各部を支持する基台11を有する。ステージ移動機構1の詳細な構成については、後述する。
【0023】
フレーム91は、描画処理部92を基台11の上方において保持する。フレーム91は、2つの脚部911と、ヘッド固定部912とを有する。2つの脚部911はそれぞれ、基台11の副走査方向の端部から上方へ向かって柱状に延びる。ヘッド固定部912は、2つの脚部911の上端部同士を副走査方向に繋ぐ。
【0024】
図3に示すように、描画処理部92は、2つの光学ヘッド81と、照明光学系82と、レーザ発振器83と、レーザ駆動部84とを有する。2つの光学ヘッド81は、ヘッド固定部912に固定される。照明光学系82、レーザ発振器83およびレーザ駆動部84は、例えば、フレーム91のヘッド固定部912の内部の空間に収容される。
【0025】
光学ヘッド81は、照明光学系82を介してレーザ発振器83に接続されている。また、レーザ発振器83には、レーザ発振器83の駆動を行うレーザ駆動部84が接続されている。レーザ駆動部84を動作させると、レーザ発振器83からパルス光が出射され、当該パルス光が照明光学系82を介して光学ヘッド81の内部に導入される。
【0026】
光学ヘッド81の内部には、光を空間変調する空間光変調器や、光学ヘッド81の内部に導入されたパルス光を空間光変調器を介して基板Wの上面に照射する光学系などが設けられている。空間光変調器としては、たとえば、回折格子型の空間光変調器であるGLV(登録商標:Grating Light Valve)等が採用される。光学ヘッド81の内部に導入されたパルス光は、空間光変調器等によって所定のパターン形状に成形された光束として基板Wの上面に照射される。これにより、基板W上のレジスト等の感光層を露光し、基板Wの表面にパターンが描画される。
【0027】
描画処理を行う際には、光学ヘッド81による露光と、ステージ移動機構1による基板Wの移動とを繰り返して行う。具体的には、露光と、露光幅分の基板Wの副走査方向の移動とを繰り返して副走査方向に延びる領域の描画を行った後、ステージ移動機構1が基板Wを主走査方向へと移動する。このように、副走査方向に延びる領域の描画と、主走査方向の移動とを繰り返して、基板Wの描画領域全体にパターンを形成する。
【0028】
制御部100は、ステージ移動機構1を含む描画装置9の各部の動作を制御する。制御部100は、図2に示すように、描画装置9の各部と電気的に接続される。具体的には、制御部100は、ステージ移動機構1の後述する主走査機構13、副走査機構15および回転機構16の各部と、ステージ移動機構1の後述する圧力センサ21、トルク検出センサ22および加速度センサ23と、描画処理部92の光学ヘッド81およびレーザ駆動部84と接続される。
【0029】
図1中に概念的に示したように、制御部100は、CPU等の演算処理部101、RAM等のメモリ102、およびハードディスクドライブ等の記憶部103を有するコンピュータにより構成されている。制御部100は、記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムPやデータDを、メモリ102に読み出し、当該コンピュータプログラムPおよびデータDに基づいて、演算処理部101が演算処理を行うことにより、描画装置9内の各部の動作を制御する。これにより、描画装置9における描画処理が実行される。
【0030】
<2.ステージ移動機構の構成>
次に、ステージ移動機構1の構成について、図1図4を参照しつつ説明する。図4は、ステージ移動機構1の構成を示した概略断面図である。
【0031】
ステージ移動機構1は、ステージSと、基台11と、ベースプレート12と、主走査機構13と、支持プレート14と、副走査機構15と、回転機構16と、ステージ姿勢把握装置10を有する。
【0032】
ステージSは、その上面に、被処理物である基板Wを載置する。本実施形態のステージSは、平板状の外形を有し、上面が基板Wを保持する保持面となっている。ステージSの保持面には、基板Wを保持するために、例えば、基板Wの端部を保持するチャックピンや、基板Wの裏面を吸着保持する真空吸引部等の保持機構が設けられる。
【0033】
基台11は、ステージ移動機構1の各部と、フレーム91および描画処理部92とを安定的に保持するための台である。基台11の下面には、4つの脚部111および2つのダンパ112が設けられている。脚部111およびダンパ112の長さは調整可能であるため、基台11を水平に設置することができる。
【0034】
ベースプレート12は、基台11上において、主走査機構13によって主走査方向に移動可能に支持されている。主走査機構13は、一対のリニアモータ131と、一対のエアガイド132とを有する。
【0035】
一対のリニアモータ131はそれぞれ、固定子131aおよび移動子131bを有する。固定子131aは、基台11の上面に敷設され、主走査方向に延びる。2つの固定子131aはそれぞれ、基台11の副走査方向の両端部付近に配置される。移動子131bは、ベースプレート12に対して直接または間接的に固定され、ベースプレート12とともに主走査方向に移動する。本実施形態では、移動子131bは、エアガイド132の後述するエアベアリング132bを介してベースプレート12に固定される。
【0036】
一対のエアガイド132はそれぞれ、ガイドレール132aおよびエアベアリング132bを有する。エアガイド132は、エアスライドとも称される案内機構である。ガイドレール132aは、基台11の上面に敷設され、主走査方向に延びる。1対のガイドレール132aはそれぞれ、一対の固定子131aの副走査方向内側に沿って配置される。
【0037】
一対のエアベアリング132bはそれぞれ、ベースプレート12の副走査方向の両端部に固定されている。また、一対の移動子131bがそれぞれ、一対のエアベアリング132bに固定されている。
【0038】
エアベアリング132bは、ガイドレール132aの上方に配置される。図4に示すように、エアベアリング132bの下面には、ガイドレール132aの上面に向かって気体を吐出するためのエア供給孔132cが設けられている。ステージ移動機構1の駆動時には、ユーティリティ設備からエアベアリング132bに常時エアが供給される。これにより、エアベアリング132bの下面に設けられたエア供給孔132cからガイドレール132aに向けて加圧気体が供給される。その結果、エアベアリング132bは、ガイドレール132a上に非接触で浮上支持される。
【0039】
このような構成により、リニアモータ131を動作させると、ベースプレート12は、エアガイド132に非接触で案内された状態で主走査方向に沿って低摩擦で滑らかに移動することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、移動子131bおよびエアベアリング132bはベースプレート12の側方に配置されているが、本発明はこの限りではない。移動子131bおよびエアベアリング132bは、ベースプレート12の下面に配置されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、移動子131bおよびエアベアリング132bが、「移動体」を構成している。また、リニアモータ131が、移動体である移動子131bを主走査方向に移動させる「移動機構」を構成している。また、ガイドレール132aが、移動体であるエアベアリング132bの下方に配置され、エアベアリング132bを主走査方向に案内する「ガイド部」を構成する。
【0042】
支持プレート14は、ベースプレート12上において、副走査機構15によって副走査方向に移動可能に支持されている。副走査機構15は、リニアモータ151と、一対のガイド152とを有する。
【0043】
リニアモータ151は、固定子151aおよび移動子151bを有する。固定子151aは、ベースプレート12の上面に敷設され、副走査方向に延びる。固定子151aは、ベースプレート12の主走査方向の略中央に配置される。移動子151bは、支持プレート14の下面に固定され、支持プレート14とともに副走査方向に移動する。
【0044】
一対のガイド152はそれぞれ、ガイドレール152aおよびボールベアリング152bを有する。ガイドレール152aは、ベースプレート12の上面に敷設され、副走査方向に延びる。一対のガイドレール152aは、固定子151aの主走査方向の両側に配置される。
【0045】
一対のボールベアリング152bは、支持プレート14の下面に固定される。一対のボールベアリング152bは、ガイドレール152aに沿って移動可能に配置される。これにより、支持プレート14がガイドレール152aに沿って副走査方向に案内される。なお、本実施形態のガイド152には、ボールベアリングを用いたが、その他のベアリング機構が用いられてもよい。
【0046】
このような構成により、リニアモータ151を動作させると、支持プレート14は、ガイド152に案内された状態で副走査方向に沿って移動することができる。
【0047】
回転機構16は、支持プレート14上にステージSを回転可能に支持する。回転機構16には、例えば、モータが用いられる。
【0048】
このように、ステージSは、主走査機構13、副走査機構15および回転機構16によって、主走査方向および副走査方向に移動可能であるとともに、その回転角度を調整可能である。
【0049】
また、ステージ移動機構1には、ステージ移動機構1の各部の状態を検出するための各種センサ21~23が設けられている。具体的には、ステージ移動機構1は、一対の主走査機構13に設けられる一対の圧力センサ21、一対のトルク検出センサ22、および一対の加速度センサ23を有する。
【0050】
圧力センサ21は、ガイドレール132aとエアベアリング132bとの上下方向の間隙における気圧を計測する。なお、圧力センサ21は、エアベアリング132bの内部において気体供給孔付近の気圧を計測するものであってもよい。トルク検出センサ22は、リニアモータ131におけるモータトルクを計測する。加速度センサ23は、リニアモータ131の移動子131bの加速度を計測する。これらの各種センサ21~23から得られた検出信号が、制御部100に入力される。
【0051】
ここで、ステージ移動機構1に対して着脱可能なステージ姿勢計測部70について説明を行う。図3には、描画装置9に装着されたステージ姿勢計測部70が示されている。ステージ姿勢計測部70は、ステージSの位置を計測する機構である。具体的には、ステージ姿勢計測部70は、ステージSの主走査方向の位置と、主走査方向に対する角度θ(以下では「回転角度θ」と称する)を計測する。
【0052】
本実施形態のステージ姿勢計測部70は、干渉式のレーザ測長器により構成される。ステージ姿勢計測部70は、図2および図3に示すように、ミラー71、レーザ光源72、ビームスプリッタ73、ビームベンダ74、第1干渉計75、第2干渉計76、および計測制御部77を有する。
【0053】
ミラー71は、ステージSの主走査方向の一方の端部に固定される。ステージSが主走査方向に対して真っ直ぐ配置されている場合、すなわち、回転角度θが0°である場合、ミラー71は主走査方向に対して垂直に配置される。
【0054】
レーザ光源72は、副走査方向にレーザ光を出射する。レーザ光源72から出射されたレーザ光は、その一部がビームスプリッタ73で反射され、分光される。ビームスプリッタ73で反射・分光された第1の分岐光は、主走査方向へ向かい、第1干渉計75を介してミラー71へと向かう。
【0055】
レーザ光源72から出射されたレーザ光のうち、ビームスプリッタ73を透過した第2の分岐光は、ビームベンダ74において反射され、主走査方向へ向かい、第2干渉計76を介してミラー71へと向かう。これにより、第1干渉計75を介した第1の分岐光と、第2干渉計76を介しが第2の分岐光とは、副走査方向の異なる位置でミラー71に当たり、ミラー71において反射される。
【0056】
ミラー71において反射した第1の分岐光は、第1干渉計75に再び入射される。第1干渉計75は、ミラー71へ向かう第1の分岐光と、ミラー71で反射された第1の分岐光との干渉に基づき、第1干渉計75からミラー71までの距離を計測する。同様に、ミラー71において反射した第2の分岐光は、第2干渉計76に再び入射される。第2干渉計76は、ミラー71へ向かう第2の分岐光と、ミラー71で反射された第2の分岐光との干渉に基づき、第2干渉計76からミラー71までの距離を計測する。
【0057】
計測制御部77には、第1干渉計75における計測結果と、第2干渉計76における計測結果とが入力される。計測制御部77は、第1干渉計75および第2干渉計76の計測結果に基づいて、ステージSの主走査方向の位置と、ステージSの回転角度θを算出することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、描画装置9の制御部100が計測制御部77の役割を果たしているが、本発明はこの限りではない。計測制御部77は、制御部100とは別のコンピュータ等により実現されてもよい。
【0059】
このステージ姿勢計測部70は、ステージ移動機構1に対して着脱可能である。後述する学習処理を行う際には、ステージ姿勢計測部70をステージ移動機構1に装着して、ステージSの回転角度θを計測する。この学習処理によって、学習モデルMが構築される。その後、学習モデルMを用いてステージ姿勢把握処理を行う際には、ステージ姿勢計測部70はステージ移動機構1から取り外す。
【0060】
ステージ姿勢計測部70をステージ移動機構1の必須構成とすると、ステージ移動機構1の体格が大きくなるとともに、コストが増大する。そこで、本発明のステージ姿勢把握方法を用いることにより、ステージ姿勢計測部70を有さないステージ移動機構1であっても、ステージSの回転角度θを安定してステージSの移動を行うことができる。
【0061】
例えば、ステージ移動機構1の出荷前に学習処理を行えば、ステージ姿勢計測部70を有してないステージ移動機構1を販売することができる。また、複数のステージ移動機構1を有するユーザが、1つのステージ姿勢計測部70を用いて事前に各ステージ移動機構1の学習処理を行ってもよい。このようにすれば、複数のステージ移動機構1に対してステージ姿勢計測部70は1つあればよい。
【0062】
<3.ステージ姿勢把握装置の構成>
続いて、ステージ姿勢把握装置10の構成について説明する。本実施形態のステージ姿勢把握装置10は、描画装置9の有する制御部100によって実現される。しかしながら、本発明はこれに限られない。ステージ姿勢把握装置10は、描画装置9とは別個に設けられたコンピュータ等であってもよい。また、ステージ姿勢把握装置10は、描画装置9の制御部100と、インターネット等のネットワークを介して通信可能な装置であってもよい。
【0063】
図2に示すように、制御部100は、ソフトウェア上で実現される処理部として、入力信号取得部33と、姿勢推定部34とを有する。そして、入力信号取得部33および姿勢推定部34により、ステージ姿勢把握装置10が構成される。
【0064】
入力信号取得部33には、ステージ移動機構1に設けられた各種センサ21~23から入力された検出信号を処理し、あるいは未処理のまま、姿勢推定部34へと入力する。
【0065】
入力信号取得部33には、一対の圧力センサ21から、一対のエアガイド132のそれぞれにおける圧力値として、第1圧力値S211および第2圧力値S212が入力される。入力信号取得部33には、一対のトルク検出センサ22から、一対のリニアモータ131におけるトルク値として、第1トルクS221および第2トルクS222が入力される。また、入力信号取得部33には、一対の加速度センサ23から、一対のリニアモータ131の移動子131bの加速度として、第1加速度S231および第2加速度S232が入力される。
【0066】
入力信号取得部33は、センサ21~23から入力された検出信号S211,S212,S221,S222,S231,S232に対して所定の処理を行った被処理信号を算出する。そして、当該被処理信号を、入力信号S33として姿勢推定部34へと入力する。
【0067】
入力信号取得部33が姿勢推定部34へと入力する入力信号S33には、例えば、検出信号S211,S212,S221,S222,S231,S232のうちの1つ以上が含まれてもよい。また、入力信号S33には、検出信号の差分が含まれてもよい。すなわち、入力信号S33には、第1圧力値S211および第2圧力値S212の差分と、第1トルクS221および第2トルクS222の差分と、第1加速度S231および第2加速度S232の差分とのいずれか1つ以上が含まれてもよい。
【0068】
また、入力信号S33には、検出信号または検出信号の差分である未処理信号に対して、所定のプロット処理を行った被処理信号が含まれてもよい。本実施形態において、プロット処理とは、未処理信号を、時刻tにおける未処理信号の値をx軸とし、時刻t+Δtにおける未処理信号の値をy軸とした時系列2次元座標データへと変換する処理である。なお、被処理信号は、当該時系列2次元座標データの表示動画であってもよい。
【0069】
検出信号は、例えば、1000Hzで検出されている。すなわち、検出信号のサンプリング間隔は、1msである。これに対し、プロット処理においてx軸の値とy軸の値との時刻差Δtは、例えば、10msとする。なお、時刻差Δtは、サンプリング間隔と同じ1msであってもよいし、その他の任意の期間でもよい。
【0070】
図5は、被処理回転角度、被処理トルク差および被処理第1圧力値の例を概念的に示した図である。図5の各グラフには、時刻t=T1~T1+ΔT、時刻t=T2~T2+ΔT、時刻t=T3~T3+ΔTの3つの期間における二次元座標データがプロットされている。
【0071】
図5の上段には、回転角度θに対してプロット処理を行った被処理回転角度の例が示されている。図5の上段のグラフにおいて、横軸は時刻tにおける回転角度θ(t)であり、縦軸は時刻t+Δtにおける回転角度θ(t+Δt)である。
【0072】
図5の中段には、第1トルクS221および第2トルクS222の差分に対してプロット処理を行った被処理トルク差が示されている。図5の中段のグラフにおいて、横軸は時刻tにおけるトルク差ΔTr(t)であり、縦軸は時刻t+Δtにおけるトルク差ΔTr(t+Δt)である。
【0073】
また、図5の下段には、第1圧力値S211に対してプロット処理を行った被処理第1圧力値が、グラフで示されている。図5の下段のグラフにおいて、横軸は時刻tにおける第1圧力値Pr(t)であり、縦軸は時刻t+Δtにおける第1圧力値Pr(t+Δt)である。
【0074】
ここで、図5中に示す時刻T2は、時刻T1+ΔTよりも遅い時刻であり、時刻T3は、時刻T2+ΔTよりも遅い時刻である。図5中、各グラフ中には、時刻t=T1~T3+ΔTの期間の各二次元座標データ時系列の動きが、矢印で示されている。図5の上段および中段に示すように、被処理回転角度と被処理トルク差とは、類似の挙動をしているが、その動作変換点のタイミングが異なる。また、図5の下段に示す被処理第1圧力値は、ノイズが大きいため3つの期間のそれぞれについて挙動の傾向を把握するのが困難であるが、各期間を1つのまとまりとして、長い期間で観察すると時系列で一定の挙動をしていることがわかる。
【0075】
入力信号S33として被処理信号の時系列2次元座標データの表示動画を用いる場合、当該動画中に表示されるデータは、各時刻tに対応する2次元座標データのみであってもよいし、図5のように、時刻t=t~t+ΔTの範囲における2次元座標データを全て示したものであってもよい。すなわち、所定の期間ΔTの範囲における2次元座標データをまとめて表示したものを入力信号S33としてもよい。特に、図5の下段に示すようなノイズが大きい検出信号については、所定の期間の範囲における2次元座標データをまとめて表示することで、ノイズの影響を軽減できると考えられる。
【0076】
姿勢推定部34には、入力信号取得部33から入力信号S33が入力される。姿勢推定部34は、入力信号S33からステージ姿勢を示す回転角度θを推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルMを有する。姿勢推定部34は、この学習モデルMに入力信号S33を入力し、推定ステージ姿勢である推定回転角度θ’を出力する。
【0077】
この学習モデルMは、機械学習処理が施された、学習済み機械学習アルゴリズムである。学習モデルMを得るために用いられる機械学習アルゴリズムには、例えば、一層ニューラルネットワークやディープラーニング等を含むニューラルネットワーク、ランダムフォレストや勾配ブースティング等を含む決定木系アルゴリズム、サポートベクトルマシンといった教師あり機械学習アルゴリズムが用いられる。
【0078】
学習モデルMの構築のための機械学習を行う際には、ステージ姿勢計測部70をステージ移動機構1に装着する。そして、入力信号S33と、教師データとしての回転角度θとを、機械学習アルゴリズムに入力する。これにより、機械学習アルゴリズムが、入力信号S33と回転角度θとの関係を学習する。その結果得られた学習モデルMは、入力信号S33が入力されると、推定回転角度θ’を出力可能となる。すなわち、この学習モデルMは、入力信号S33を入力するとともに、ステージ姿勢を検知した検出信号を教師データとして与えることによって得られたモデルである。
【0079】
描画装置9における描画処理が行われる場合、ステージ移動機構1によるステージ移動処理が行われる。ステージ移動機構1によるステージ移動処理中には、ステージ姿勢把握装置10が各センサ21~23から入力された検出信号に基づいて、ステージ姿勢を推定し、推定回転角度θ’を算出する。そして、制御部100は、当該推定回転角度θ’に基づいて、回転機構16を動作させて、回転角度θが0°に維持されるようにステージSを回転させる。すなわち、回転機構16は、推定ステージ姿勢である推定回転角度θ’に基づいてステージSの姿勢を修正する「ステージ姿勢修正機構」である。
【0080】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0081】
上記の実施形態では、検出信号が、エアベアリング(エアガイド132)の圧力値(第1圧力値S211および第2圧力値S212)、移動機構(リニアモータ131)におけるトルク(第1トルクS221および第2トルクS222)、および、移動体(リニアモータ131の移動子131b)の加速度(第1加速度S231および第2加速度S232)の少なくとも1つを含む。本発明の検出信号は、これらに限られず、その他の信号が含まれていてもよい。例えば、検出信号として、ステージ移動装置の周辺における音声を検出した音響信号や、ステージ移動装置の所定の部位における振動を検出した振動検出信号が含まれていてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態に係るステージ移動装置は、描画装置に用いられたが、本発明はこれに限られない。ステージ移動装置は、ステージ上に載置された記録媒体に対して印刷処理を行う印刷装置、ステージ上に載置された基材に対して液体を塗布する塗布装置、等のその他の装置に用いられてもよい。
【0083】
また、上記の実施形態において、ステージの回転角度を計測するステージ姿勢計測部として、干渉式のレーザ測長器を用いたが、本発明はこれに限られない。ステージ姿勢計測部は、例えば、格子等の参照パターンが設けられた基板をステージ上に載置し、当該基板を上方からCCDカメラ等で撮影することにより、撮影画像に基づいてステージの回転角度を検出するものであってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 ステージ移動機構
9 描画装置
10 ステージ姿勢把握装置
13 主走査機構
21 圧力センサ
22 トルク検出センサ
23 加速度センサ
33 入力信号取得部
34 姿勢推定部
100 制御部
131 リニアモータ
131a 固定子
131b 移動子
132 エアガイド
132a ガイドレール
132b エアベアリング
M 学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5