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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H02J9/06 120
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019097914
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020195174
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 一輝
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-050228(JP,A)
【文献】特開2013-031325(JP,A)
【文献】特開2005-287137(JP,A)
【文献】特開2009-071935(JP,A)
【文献】特開2014-176254(JP,A)
【文献】特開2003-348769(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033820(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/169046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列接続される複数の電力変換装置と、
制御装置とを備え、
各電力変換装置は、
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、
直流電圧を交流電圧に変換して前記負荷に供給する逆変換器と、
前記順変換器および前記逆変換器に接続される直流ラインと、
前記逆変換器と前記負荷との間に接続されるスイッチとを含み、
前記直流ラインは、他の電力変換装置の前記直流ラインとは電気的に分離されており、
前記制御装置は、
負荷電流を供給するために必要な電力変換装置の適正運転台数を求め、
現在の運転台数と前記適正運転台数と運転の優先順位とに基づいて、各電力変換装置を運転状態および待機状態のうちのいずれの状態にするかを判別し、
前記運転状態にすると判別した各電力変換装置に属する前記順変換器および前記逆変換器を運転し、かつ、前記スイッチをオンし、
前記待機状態にすると判別した各電力変換装置に属する前記順変換器を運転するとともに前記逆変換器の運転を停止し、かつ、前記スイッチをオフする、無停電電源システム。
【請求項2】
各電力変換装置は、
前記順変換器の直流出力電圧を平滑化するコンデンサと、
前記コンデンサに並列接続された抵抗素子とをさらに含む、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記運転状態にすると判別した各電力変換装置および前記待機状態にすると判別した各電力変換装置において、前記順変換器の直流出力電圧が参照電圧になるように前記順変換器を制御する、請求項1または請求項2に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記運転状態にすると判別した各電力変換装置では、前記順変換器の直流出力電圧が参照電圧になるように前記順変換器を制御し、
前記待機状態にすると判別した各電力変換装置では、前記順変換器の直流出力電圧が前記参照電圧よりも低い下限電圧よりも高くなるように前記順変換器を間欠的に制御する、請求項1または請求項2に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
各電力変換装置は、前記逆変換器から前記負荷に流れる電流を検出する電流検出器をさらに含み、
前記制御装置は、それぞれ前記複数の電力変換装置に対応して設けられた複数の制御回路を含み、
各制御回路から見て当該制御回路に対応する電力変換装置は自装置であり、他の各電力変換装置は他装置であり、
各制御回路は通信回線によって他の各制御回路と互いに結合され、
各制御回路は、
前記自装置の前記電流検出器の検出結果と前記通信回線を介して得られた各他装置の前記電流検出器の検出結果との合計から前記負荷電流を求め、その前記負荷電流を供給するために必要な電力変換装置の前記適正運転台数を求める演算部と、
前記運転の優先順位を記憶した記憶部と、
前記現在の運転台数と前記演算部によって求められた前記適正運転台数と前記記憶部に記憶された前記運転の優先順位とに基いて、前記自装置を前記運転状態および前記待機状態のうちのいずれの状態にするかを判別する判別部と、
前記判別部によって前記運転状態にすると判別された各電力変換装置に属する前記順変換器および前記逆変換器を運転し、前記判別部によって前記待機状態にすると判別された各電力変換装置に属する前記順変換器を運転するとともに前記逆変換器の運転を停止する制御部とを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
各制御回路は、前記自装置の前記逆変換器が運転されている時間を計測し、計測した時間が予め定められた時間に到達した場合に書換指令信号を出力するタイマをさらに含み、
前記制御部は、前記自装置のタイマから前記書換指令信号が出力されたことに応じて、前記自装置の前記運転の優先順位を最下位にするとともに、前記通信回線を介して各他装置の前記運転の優先順位を1つ繰り上げ、
各制御回路の前記記憶部は、前記制御部によって変更された前記運転の優先順位を記憶する、請求項5に記載の無停電電源システム。
【請求項7】
各制御回路は、前記自装置の故障の有無を検出する故障検出器をさらに含み、
前記制御部は、前記故障検出器によって前記自装置の故障が検出された場合、前記自装置の運転を停止し、前記自装置を前記運転の優先順位から除外し、前記通信回線を介して各他装置の前記運転の優先順位を1つ繰り上げ、
各制御回路の前記記憶部は、前記制御部によって変更された前記運転の優先順位を記憶する、請求項5または請求項6に記載の無停電電源システム。
【請求項8】
各電力変換装置は、前記交流電源の健全時には、前記順変換器によって生成された直流電力を電力貯蔵装置に蓄え、前記交流電源の停電時には、前記電力貯蔵装置の直流電力を前記逆変換器に供給する双方向チョッパをさらに備え、
前記逆変換器は、前記交流電源の健全時には、前記順変換器から供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給し、前記交流電源の停電時には、前記双方向チョッパから供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無停電電源システムに関し、特に、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムが開示されている。各無停電電源装置は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータとを含む。
【0003】
この無停電電源システムでは、負荷電流を供給するために必要な無停電電源装置の適正運転台数を求め、その適正運転台数と現在の運転台数と優先順位とに基いて、各無停電電源装置を運転状態にするか停止状態にするかを判別し、運転状態にすると判別した各無停電電源装置のコンバータおよびインバータを運転し、停止状態にすると判別した各無停電電源装置のコンバータおよびインバータの運転を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-31325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、各無停電電源装置を運転状態か停止状態とし、停止状態の無停電電源装置に属するコンバータおよびインバータの運転を停止するので、負荷電流が増大した場合、停止状態の無停電電源装置を運転状態にするために時間が掛かり、負荷電流の増大に迅速に対応することができないという問題があった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、負荷電流の増大に迅速に対応することが可能な無停電電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る無停電電源システムは、負荷に対して並列接続される複数の電力変換装置と、制御装置とを備えたものである。各電力変換装置は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給する逆変換器とを含む。制御装置は、負荷電流を供給するために必要な電力変換装置の適正運転台数を求め、現在の運転台数と適正運転台数と運転の優先順位とに基づいて、各電力変換装置を運転状態および待機状態のうちのいずれの状態にするかを判別する。そして制御装置は、運転状態にすると判別した各電力変換装置に属する順変換器および逆変換器を運転し、待機状態にすると判別した各電力変換装置に属する順変換器を運転するとともに逆変換器の運転を停止する。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る無停電電源システムでは、各電力変換装置を運転状態か待機状態とし、待機状態の電力変換装置に属する順変換器を運転するとともに逆変換器の運転を停止する。したがって、負荷電流が増大した場合に、待機状態の電力変換装置を運転状態に迅速に移行させることができ、負荷電流の増大に迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1による無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示す無停電電源装置の負荷率と効率の関係を示す図である。
図3図1に示す制御回路の構成を示すブロック図である。
図4図3に示す制御回路の動作を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2による無停電電源システムの要部を示す回路ブロック図である。
図6図5に示す制御回路の動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態3による無停電電源システムの要部を示す回路ブロック図である。
図8】実施の形態4による無停電電源システムの要部を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1による無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。図1において、この無停電電源システムは、複数(たとえば3つ)の無停電電源装置U1~U3、複数のバッテリB1~B3、および複数の通信ケーブル8を備える。以下の説明では、無停電電源装置U1~U3を包括的に無停電電源装置Uと称し、バッテリB1~B3を包括的にバッテリBと称する場合がある。
【0011】
各無停電電源装置Uは、入力端子T1、バッテリ端子T2、出力端子T3、スイッチSW1~SW3、電流検出器CD1,CD2、コンデンサC1,C2,3、リアクトルL1,L2、コンバータ1、直流ライン2、抵抗素子4、双方向チョッパ5、インバータ6、および制御回路7を含む。
【0012】
入力端子T1は、商用交流電源9から供給される商用周波数の交流電圧VIを受ける。交流電圧VIの瞬時値は、制御回路7によって検出される。制御回路7は、たとえば、交流電圧VIが下限値よりも高い場合には、商用交流電源9から交流電圧VIが正常に供給されていると判別し、交流電圧VIが下限値よりも低下した場合には商用交流電源9の停電が発生したと判別する。また、制御回路7は、交流電圧VIに同期してコンバータ1およびインバータ6を制御する。
【0013】
バッテリ(電力貯蔵装置)B1~B3は、それぞれ無停電電源装置U1~U3のバッテリ端子T2に接続される。バッテリBは、直流電力を蓄える。バッテリBの端子間電圧VBの瞬時値は、制御回路7によって検出される。バッテリBの代わりにコンデンサが接続されていても構わない。無停電電源装置U1~U3の出力端子T3は、ともに負荷10に接続される。負荷10は、無停電電源装置U1~U3から供給される交流電力によって駆動される。
【0014】
スイッチSW1の一方端子は入力端子T1に接続され、その他方端子はリアクトルL1を介してコンバータ1の入力ノードに接続される。コンデンサC1は、スイッチSW1の他方端子に接続される。スイッチSW1は、対応する無停電電源装置Uの使用時にオンされ、たとえば無停電電源装置Uのメンテナンス時にオフされる。
【0015】
コンデンサC1およびリアクトルL1は、交流フィルタF1を構成する。交流フィルタF1は、低域通過フィルタであり、商用交流電源9からコンバータ1に商用周波数の交流電流を流し、コンバータ1で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源9側に流れることを防止する。電流検出器CD1は、商用交流電源9から無停電電源装置Uに流入する電流I1を検出し、その検出値を示す信号φI1を制御回路7に与える。
【0016】
コンバータ1は、制御回路7によって制御され、商用交流電源9から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源9の健全時)には、商用交流電源9から供給される交流電力を直流電力に変換して直流ライン2に出力する。商用交流電源9からの交流電力の供給が停止された場合(商用交流電源9の停電時)には、コンバータ1の運転は停止される。コンバータ1および交流フィルタF1は、交流電圧を直流電圧に変換する順変換器を構成する。
【0017】
直流ライン2は、コンバータ1、双方向チョッパ5、およびインバータ6に接続される。直流ライン2に現れる直流電圧VDCは制御回路7によって検出される。制御回路7は、商用交流電源9の健全時には、コンバータ1の直流出力電圧VDCが参照電圧VDCrになるようにコンバータ1を制御する。
【0018】
コンデンサ3は、直流ライン2に接続され、直流ライン2の直流電圧VDCを平滑化および安定化させる。抵抗素子4は、コンデンサ3に並列接続される。抵抗素子4は、無停電電源装置Uが故障した場合に直流電圧VDCを低下させ、無停電電源装置Uの使用者を保護するために設けられている。抵抗素子4の抵抗値は、コンバータ1の運転が停止された場合に、コンデンサ3の端子間電圧VDCをたとえば数十分で0Vに低下させることが可能な値に設定されている。
【0019】
双方向チョッパ5の高電圧側ノードは直流ライン2に接続され、その低電圧側ノードはスイッチSW2を介してバッテリ端子T2に接続されている。双方向チョッパ5は、制御回路7によって制御され、商用交流電源9の健全時には、コンバータ1によって生成された直流電力をバッテリBに蓄え、商用交流電源9の停電時には、バッテリBの直流電力をインバータ6に供給する。スイッチSW2は、無停電電源装置Uの使用時にオンされ、たとえばバッテリBのメンテナンス時にオフされる。
【0020】
制御回路7は、商用交流電源9の健全時には、バッテリBの端子間電圧VBが参照電圧VBrになるように双方向チョッパ5を制御し、商用交流電源9の停電時には、直流ライン2の直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ5を制御する。
【0021】
インバータ6は、制御回路7によって制御され、商用交流電源9の健全時には、コンバータ1によって生成された直流電力を商用周波数の交流電力に変換し、商用交流電源9の停電時には、バッテリBから双方向チョッパ5を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換する。
【0022】
インバータ6によって交流電圧VOを生成するためには、直流電圧VDCを下限電圧VLよりも高い電圧にする必要がある。たとえば、実効値が415Vの交流電圧VOを生成する場合には、下限電圧VLは600Vに設定される。参照電圧VDCrは、下限電圧VLよりも所定電圧だけ高い電圧に設定される。
【0023】
リアクトルL2の一方端子はインバータ6の出力ノードに接続され、その他方端子はスイッチSW3を介して出力端子T3に接続される。コンデンサC2は、リアクトルL2の他方端子に接続される。コンデンサC2およびリアクトルL2は、交流フィルタF2を構成する。
【0024】
交流フィルタF2は、低域通過フィルタであり、インバータ6から負荷10側に商用周波数の交流電流を流し、インバータ6で発生するスイッチング周波数の信号が負荷10側に通過することを防止する。換言すると交流フィルタF2は、インバータ6から出力される矩形波状の電圧を商用周波数の正弦波状の電圧に変換する。インバータ6および交流フィルタF2は、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器を構成する。
【0025】
リアクトルL2の他方端子に現れる交流出力電圧VOの瞬時値は、制御回路7によって検出される。電流検出器CD2は、無停電電源装置Uから負荷10に流れる電流I2を検出し、その検出値を示す信号φI2を制御回路7に与える。
【0026】
スイッチSW3は、制御回路7によって制御される。制御回路7は、対応する無停電電源装置Uを運転状態にする場合にはスイッチSW3をオンし、対応する無停電電源装置Uを待機状態にする場合にはスイッチSW3をオフする。
【0027】
制御回路7は、他の各無停電電源装置Uの制御回路7と通信ケーブル8によって互いに接続され、通信ケーブル8を介して他の各無停電電源装置Uの制御回路7と情報の授受を行なう。複数の無停電電源装置U1~U3に含まれる複数の制御回路7は、無停電電源システムを制御する1つの制御装置を構成する。
【0028】
以下の説明では、各制御回路7から見て当該制御回路7が属する無停電電源装置Uを自装置と称し、各制御回路7から見て当該制御回路7が属さない無停電電源装置Uを他装置と称する場合がある。
【0029】
複数の制御回路7は、複数の電流検出器CD2の検出結果に基づいて、無停電電源装置Uの現在の運転台数Nと、複数のインバータ6の出力電流I2の和の電流すなわち負荷電流ILを求める。そして、複数の制御回路7は、複数の無停電電源装置Uの分担電流ID=IL/Nを求め、各インバータ6の出力電流I2が分担電流IDになるように、各無停電電源装置Uに含まれるコンバータ1およびインバータ6を制御する。
【0030】
また、複数の制御回路7は、負荷電流ILを供給するために必要な無停電電源装置Uの適正運転台数Ncを求め、求めた適正運転台数Ncと、現在の運転台数Nと、予め定められた運転の優先順位とに基いて、各無停電電源装置Uを運転状態および待機状態のうちのいずれの状態にさせるかを判別する。
【0031】
複数の制御回路7は、運転状態にすると判別した無停電電源装置Uに属するコンバータ1およびインバータ6を運転し、スイッチSW3をオンする。また、複数の制御回路7は、待機状態にすると判別した無停電電源装置Uに属するコンバータ1を運転し、インバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフする。待機状態にすると判別した無停電電源装置Uに属するコンバータ1を運転するのは、コンバータ1の直流出力電圧VDCが下限電圧VLよりも低下することを防止し、負荷電流ILの増大に迅速に対応するためである。
【0032】
ここで、無停電電源装置Uの運転台数を制御する理由について説明する。図2は、図1に示した無停電電源装置Uの負荷率(%)と効率(%)の関係を示す図である。図2において、負荷率(%)が20~100(%)である場合には95%以上の高い効率(%)を得ることができるが、負荷率(%)が20(%)よりも低くなると効率(%)が急に低下することが分かる。
【0033】
N台の無停電電源装置Uを並列運転している場合、負荷電流ILがN台の無停電電源装置Uに均等に分担され、各無停電電源装置Uの分担電流IDはID=IL/Nとなる。N台の無停電電源装置Uを並列運転している場合において、各無停電電源装置Uの負荷率(%)が20(%)以下になり、効率(%)が低いときには、n台の無停電電源装置Uの運転を停止することにより、各無停電電源装置Uの分担電流ID=IL/(N-n)を大きくし、各無停電電源装置Uの効率(%)を大きくすることができる。ただし、Nは2以上の整数であり、nは1以上でN以下の整数である。
【0034】
たとえば、4台の無停電電源装置Uを並列運転しており、負荷率(%)が20(%)である場合、2台の無停電電源装置Uの運転を停止することにより、負荷率(%)を40(%)にし、効率(%)を高めることができる。
【0035】
したがって、効率(%)の良い負荷率(%)になるように、たとえば図2では負荷率(%)が30~60(%)になるように、無停電電源装置Uの運転台数を制御することにより、無停電電源システム全体の効率を向上させることができる。
【0036】
図3は、制御回路7のうちのコンバータ1、インバータ6、およびスイッチSW3の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図3において、制御回路7は、通信端子T4,T5、演算部11、記憶部12、判別部13、操作部14、電圧検出器15~17、制御部18、および制御電源19を含む。
【0037】
通信端子T4は、自装置(たとえばU1)の演算部11および制御部18に接続されるとともに、通信ケーブル8を介して他装置(たとえばU2)の演算部11および制御部18に接続される。通信端子T5は、自装置の演算部11および制御部18に接続されるとともに、通信ケーブル8を介してもう1つの他装置(たとえばU3)の演算部11および制御部18に接続される。
【0038】
演算部11は、自装置の電流検出器CD2の出力信号φI2を通信端子T4,T5を介して2つの他装置の演算部11および制御部18に送信するとともに、2つの他装置の電流検出器CD2の出力信号φI2を通信端子T4,T5を介して受信する。そして演算部11は、3つの電流検出器CD2の出力信号φI2に基づいて、無停電電源装置Uの現在の運転台数Nを求め、求めた運転台数Nを判別部13に与える。
【0039】
また、演算部11は、3つの電流検出器CD2の出力信号φI2に基づいて、3つのインバータ6の出力電流の和の電流、すなわち無停電電源装置U1~U3から負荷10に供給される負荷電流ILを求め、その負荷電流ILを供給するために必要な無停電電源装置Uの適正運転台数Ncを求め、求めた適正運転台数Ncを判別部13に与える。適正運転台数Ncの無停電電源装置Uを運転することにより、無停電電源システムの効率(%)を高めることができる。
【0040】
記憶部12には、無停電電源装置U1~U3が運転状態になる優先順位が格納されている。優先順位は、たとえば、無停電電源装置Uの番号順に設定される。この場合、無停電電源装置U1~U3の優先順位は、それぞれ第1位、第2位、第3位である。
【0041】
判別部13は、演算部11によって求められた現在の運転台数Nおよび適正運転台数Ncと、記憶部12に格納された運転の優先順位とに基いて、自装置を運転状態にするか待機状態にするかを判別し、判別結果を示す信号φ13を制御部18に与える。
【0042】
たとえば、現在の運転台数Nが3台であり、適正運転台数Ncが2台である場合、判別部13は、運転台数Nを1台減少させるべきであると判別する。判別部13は、自装置の優先順位に基いて、自装置を待機状態にするか運転状態にするかを判別する。
【0043】
無停電電源装置U1の判別部13は、自装置の優先順位が第1位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U2の判別部13は、自装置の優先順位が第2位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U3の判別部13は、自装置の優先順位が第3位であるので、自装置を待機状態にするべきであると判別する。
【0044】
逆に、現在の運転台数Nが2台であり、適正運転台数Ncが3台である場合、判別部13は、運転台数Nを1台増加させるべきであると判別する。無停電電源装置U1の判別部13は、自装置の優先順位が第1位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U2の判別部13は、自装置の優先順位が第2位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U3の判別部13は、自装置の優先順位が第3位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。
【0045】
操作部14は、たとえば操作ボタンを含む。システムの使用者は、操作部14を操作することにより、無停電電源装置Uを手動で運転したり、自動的に運転させることができる。また、システムの使用者は、操作部14を操作することにより、無停電電源装置Uの番号、無停電電源装置U1~U3が運転状態になる優先順位などを記憶部12に書込むことができる。
【0046】
1台の無停電電源装置Uの操作部14を用いて運転の優先順位を記憶部12に書込むと、その優先順位は制御部18によって全ての無停電電源装置U1~U3の記憶部12に書き込まれる。なお、無停電電源装置Uの番号は、その無停電電源装置Uが設置された位置、順番などにより自動的に設定されるようになっていてもよい。
【0047】
電圧検出器15は、商用交流電源9から供給される交流電圧VIの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御部18に与える。電圧検出器16は、直流ライン2の直流電圧VDCを検出し、その検出値を示す信号を制御部18に与える。電圧検出器17は、インバータ6および交流フィルタF2によって生成された交流電圧VOの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御部18に与える。
【0048】
制御部18は、判別部13によって自装置を待機状態にすると判別された場合には、自装置のコンバータ1を運転し、インバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフさせる。このとき制御部18は、電圧検出器15,16および電流検出器CD1の出力信号φI1に基づいて、コンバータ1の直流出力電圧VDCが参照電圧VDCrになるようにコンバータ1を制御する。これは、負荷電流ILが増大した場合に、自装置を待機状態から運転状態に迅速に移行させるためである。
【0049】
すなわち、仮に、自装置を待機状態にすると判別された場合にコンバータ1の運転を停止すると、コンデンサ3(図1)が抵抗素子4によって放電され、直流電圧VDCが0Vに低下してしまう。直流電圧VDCが下限電圧VLよりも低い場合には、インバータ6によって交流電圧VOを生成することができない。したがって、負荷電流ILが増大し、自装置を待機状態から運転状態に移行させる必要が生じた場合には、コンバータ1を運転して直流電圧VDCを0Vから下限電圧VLまで上昇させるための時間が掛かり、負荷電流ILの増大に迅速に対応することができない。
【0050】
これに対して本実施の形態1では、自装置を待機状態にすると判別された場合にコンバータ1を運転するので、直流電圧VDCを下限電圧VLよりも高い参照電圧VDCrに維持することができる。したがって、負荷電流ILが増大し、自装置を待機状態から運転状態に移行させる必要が生じた場合には、直ぐにインバータ6を運転することができ、負荷電流ILの増大に迅速に対応することができる。
【0051】
また、制御部18は、判別部13によって自装置を運転状態にすると判別された場合には、自装置のコンバータ1およびインバータ6を運転し、スイッチSW3をオンさせる。このとき制御部18は、電圧検出器15,16および電流検出器CD1の出力信号φI1に基づいて、コンバータ1の直流出力電圧VDCが参照電圧VDCrになるようにコンバータ1を制御する。また、制御部18は、電圧検出器15,17および電流検出器CD2の出力信号φI2に基づき、商用交流電源9からの交流電圧VIに同期してインバータ6を制御し、商用周波数の交流電圧VOを生成する。
【0052】
また、制御部18は、無停電電源装置U1~U3の電流検出器CD2の出力信号φI2に基づいて、無停電電源装置Uの現在の運転台数Nと、無停電電源装置U1~U3のインバータ6の出力電流I2の和の電流すなわち負荷電流ILを求める。そして、制御部18は、自装置の分担電流ID=IL/Nを求め、インバータ6の出力電流I2が分担電流IDになるように、自装置のコンバータ1およびインバータ6を制御する。
【0053】
また、制御部18は、電圧検出器15の出力信号に基づいて、商用交流電源9から交流電圧VIが正常に供給されているか否かを判別する。制御部18は、交流電圧VIが下限値よりも小さい場合には、交流電圧VIが正常に供給されておらず、停電が発生したと判別し、コンバータ1の運転を停止する。さらに、制御部18は、電圧検出器16によって検出される直流電圧VDCが下限値よりも低下した場合には、バッテリBの直流電力が下限値よりも減少したと判別し、インバータ6の運転を停止し、スイッチSWをオフする。
【0054】
制御電源19は、制御回路7全体に電源電圧VCCを供給する。コンバータ1およびインバータ6の運転が停止されている場合でも、制御回路7は制御電源19からの電源電圧VCCによって駆動され続ける。
【0055】
図4は、図3に示した制御回路7の動作を示すフローチャートである。制御回路7が動作するときには、無停電電源システムの電源がオンされ、無停電電源装置U1~U3のうちの所定台数(たとえば2台)の無停電電源装置Uが運転状態にされているものとする。
【0056】
図4のステップS1において演算部11は、自装置の電流検出器CD2の出力信号φI2に基づいて、自装置のインバータ6の出力電流I2を検出する。自装置のインバータ6の出力電流I2の検出値は、2つの他装置の演算部11および制御部18に与えられる。逆に、2つの他装置のインバータ6の出力電流I2の検出値が自装置の演算部11および制御部18に与えられる。
【0057】
ステップS2において演算部11は、無停電電源装置U1~U3のインバータ6の出力電流I2の検出値に基づいて、無停電電源装置Uの現在の運転台数Nを検出する。また、演算部11は、無停電電源装置U1~U3のインバータ6の出力電流I2の検出値を合計して、無停電電源装置U1~U3から負荷10に供給されている負荷電流ILを検出する。
【0058】
ステップS3において演算部11は、ステップS2で求めた負荷電流ILに基いて、負荷10を運転するために必要な無停電電源装置Uの適正運転台数Ncを求める。たとえば、無停電電源装置Uの定格電流がIrであり、負荷電流ILが定格電流Irの1.5倍である場合は無停電電源装置Uの適正運転台数Ncは2台である。適正運転台数Ncの無停電電源装置Uを運転すると、無停電電源システム全体としての効率(%)が高くなる。
【0059】
ステップS4において判別部13は、ステップS2で求められた現在の運転台数Nと、ステップS3で求められた適正運転台数Ncと、記憶部12に記憶された運転の優先順位とに基いて、自装置を運転状態にするか待機状態にするかを判別する。
【0060】
ステップS4において自装置を運転状態にすると判別された場合には、ステップS5において制御部18は、自装置のコンバータ1およびインバータ6を運転するとともにスイッチSW3をオンする。
【0061】
ステップS4において自装置を待機状態にすると判別された場合には、ステップS6において制御部18は、自装置のコンバータ1を運転し、インバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフする。ステップS5またはS6の後に、ステップS1が再度実行される。
【0062】
以上のように、この実施の形態1では、各無停電電源装置Uを運転状態または待機状態とし、運転状態の無停電電源装置Uに属するコンバータ1およびインバータ6を運転し、待機状態の無停電電源装置Uに属するコンバータ1を運転するとともにインバータ6の運転を停止する。したがって、各無停電電源装置Uにおいてコンバータ1の直流出力電圧VDCが低下することを防止することができ、負荷電流ILの増大に迅速に対応することができる。
【0063】
なお、この実施の形態1では、本願発明が3台の無停電電源装置U1~U3を備えた無停電電源システムに適用された場合について説明したが、これに限るものではなく、本願発明は4台以上の無停電電源装置Uを備えた無停電電源システムにも適用可能であることは言うまでもない。
【0064】
また、この実施の形態1では、自装置が待機状態の場合でも自装置が運転状態の場合と同様に、コンバータ1の直流出力電圧VDCが参照電圧VDCになるようにコンバータ1を制御した。しかし、自装置が待機状態の場合には、インバータ6の運転を停止するので、コンバータ1によってインバータ6の消費電力を生成する必要はない。そこで、自装置を待機状態にすると判別された場合には、コンバータ1の直流出力電圧VDCが下限電圧VLよりも大きくなるように、コンバータ1を間欠的に動作させても構わない。
【0065】
コンバータ1を間欠的に動作させる方法としては、第1の時間(たとえば1秒)だけコンバータ1を運転する動作と、第2の時間(たとえば5秒)だけコンバータ1の運転を停止する動作とを交互に実行する方法がある。第1の時間および第2の時間は、コンバータ1の直流出力電圧VDCが下限電圧VLよりも大きくなるように設定される。この変更例では、実施の形態1に比べ、待機状態の無停電電源装置Uにおける消費電力を低減することができる。
【0066】
[実施の形態2]
実施の形態1では、負荷電流ILの増大に迅速に対応するために、運転状態の無停電電源装置U以外のすべての無停電電源装置Uを待機状態とし、待機状態の無停電電源装置Uに属するコンバータ1を運転した。
【0067】
しかし、負荷電流ILが増大したとしても、所定台数(たとえば1台)の無停電電源装置Uを待機状態から運転状態にすれば足りることが予め分かっている場合には、運転状態の無停電電源装置U以外のすべての無停電電源装置Uを待機状態とする必要はなく、所定台数の無停電電源装置Uだけを待機状態にすれば足りる。この実施の形態1では、この問題の解決が図られる。
【0068】
図5は、この発明の実施の形態2による無停電電源システムの要部を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図5を参照して、この無停電電源システムが実施の形態1と異なる点は、判別部13および制御部18がそれぞれ判別部13Aおよび制御部18Aで置換されている点である。記憶部12には、複数の無停電電源装置Uの運転の優先順位と、待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数X(たとえば1台)が記憶されている。
【0069】
判別部13Aは、演算部11によって求められた現在の運転台数Nおよび適正運転台数Ncと、記憶部12に格納された待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数Xおよび運転の優先順位とに基いて、自装置を運転状態にするか待機状態にするかを判別し、判別結果を示す信号φ13を制御部18に与える。
【0070】
たとえば、現在の運転台数Nが2台であり、適正運転台数Ncが1台である場合、判別部13Aは、運転台数Nを1台減少させるべきであると判別する。判別部13Aは、所定台数Xおよび自装置の優先順位に基いて、自装置を運転状態、待機状態、および停止状態のうちのいずれの状態にするかを判別する。
【0071】
無停電電源装置U1の判別部13Aは、自装置の優先順位が第1位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U2の判別部13Aは、自装置の優先順位が第2位であり、待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数Xが1であるので、自装置を待機状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U3の判別部13Aは、自装置の優先順位が第3位であり、待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数Xが1であるので、自装置を停止状態にするべきであると判別する。
【0072】
逆に、現在の運転台数Nが1台であり、適正運転台数Ncが2台である場合、判別部13Aは、運転台数Nを1台増加させるべきであると判別する。無停電電源装置U1の判別部13Aは、自装置の優先順位が第1位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U2の判別部13Aは、自装置の優先順位が第2位であるので、自装置を運転状態にするべきであると判別する。無停電電源装置U3の判別部13Aは、自装置の優先順位が第3位であり、待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数Xが1であるので、自装置を待機状態にするべきであると判別する。
【0073】
制御部18Aは、判別部13Aによって自装置を運転状態にすると判別された場合には、自装置のコンバータ1およびインバータ6を運転し、スイッチSW3をオンさせる。また、制御部18Aは、判別部13Aによって自装置を待機状態にすると判別された場合には、自装置のコンバータ1を運転し、インバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフさせる。また、制御部18Aは、判別部13Aによって自装置を停止状態にすると判別された場合には、自装置のコンバータ1およびインバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフさせる。
【0074】
図6は、図5に示した制御回路7の動作を示すフローチャートであって、図4と対比される図である。図6を参照して、この制御回路7の動作が図4の動作と異なる点は、ステップS4がステップS4Aで置換され、ステップS7が追加されている点である。
【0075】
ステップS4Aにおいて判別部13Aは、ステップS2で求められた現在の運転台数Nと、ステップS3で求められた適正運転台数Ncと、記憶部12に記憶された待機状態にすべき無停電電源装置Uの台数Xおよび運転の優先順位とに基いて、自装置を運転状態、待機状態、および停止状態のうちのいずれの状態にするかを判別する。
【0076】
ステップS4Aにおいて停止状態にすると判別された場合には、ステップS7において制御部18Aは、自装置のコンバータ1およびインバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフする。ステップS5,S6,またはS7の後に、ステップS1が再度実行される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0077】
この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。また、停止状態にすると判別された無停電電源装置Uのコンバータ1の運転を停止するので、実施の形態1と比べ、無停電電源システムの消費電力を低減し、効率(%)を高めることができる。
【0078】
[実施の形態3]
図7は、この発明の実施の形態3による無停電電源システムの要部を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図7を参照して、この実施の形態3では、各無停電電源装置Uの制御回路7内にタイマー20が設けられる。
【0079】
タイマー20は、自装置が運転状態にされた時間を計測し、計測した時間が所定時間に到達したことに応じて書換指令信号を一定時間だけ出力する。タイマー20から書換指令信号が出力されると、そのタイマー20の計測時間は0秒にリセットされる。
【0080】
制御部18は、タイマー20からの書換指令信号に応答して、記憶部12に格納された運転の優先順位を更新し、自装置の優先順位を最下位にし、2つの他装置の優先順位を1つずつ繰り上げる。
【0081】
たとえば、無停電電源装置U1の制御部18は、タイマー20からの書換指令信号に応答して、記憶部12に格納された運転の優先順位を更新し、対応する無停電電源装置U1の優先順位を最下位にし、他の無停電電源装置U2,U3の優先順位を1つずつ繰り上げる。すなわち、無停電電源装置U1~U3が運転状態にされる優先順位は、それぞれ第3位、第1位、第2位に更新される。
【0082】
図4で示したように、ステップS4において判別部13は、ステップS2で求められた現在の運転台数Nと、ステップS3で求められた適正運転台数Ncと、記憶部12に記憶された運転の優先順位とに基いて、自装置を運転状態にするか待機状態にするかを判別する。
【0083】
したがって、たとえば3台の無停電電源装置U1~U3のうちの1台の無停電電源装置Uのみを運転状態にする状況が連続する場合には、3台の無停電電源装置U1~U3が1台ずつ順次運転される。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0084】
以上のように、この実施の形態3では、たとえば1台の無停電電源装置Uを運転状態にする場合、無停電電源装置U1~U3を1台ずつ順次、運転状態にする。したがって、無停電電源装置U1~U3の運転時間を均等化することができるので、運転状態にされる無停電電源装置Uが決められていた実施の形態1と比べ、各無停電電源装置Uの故障の発生を遅らせることができる。
【0085】
[実施の形態4]
図8は、この発明の実施の形態4による無停電電源システムの要部を示すブロック図であって、図3と対比される図である。図8を参照して、この実施の形態4では、各無停電電源装置Uの制御回路7内に故障検出器21および報知部22が追加される。
【0086】
故障検出器21は、自装置の故障の有無を検出し、自装置が故障した場合は故障検出信号を出力する。制御部18は、自装置の故障検出器21から故障検出信号が出力された場合には、自装置のコンバータ1およびインバータ6の運転を停止し、スイッチSW3をオフさせる。
【0087】
また、制御部18は、自装置を優先順位から除外し、各他装置の運転の優先順位を1つ繰り上げる。たとえば、無停電電源装置U1~U3の優先順位がそれぞれ第1位~第3位である場合において無停電電源装置U1が故障したとき、無停電電源装置U1が優先順位から除外され、無停電電源装置U2,U3の優先順位がそれぞれ第1位および第2位にされる。無停電電源装置U2,U3によって負荷10の運転が継続される。
【0088】
また、報知部22は、自装置の故障検出器21から故障検出信号に応答して、たとえば音、光、映像によって自装置が故障したことを無停電電源システムの使用者に報知する。使用者は、故障した無停電電源装置Uを修理する。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0089】
以上のように、この実施の形態4では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、1台の無停電電源装置Uが故障した場合でも、負荷10の運転を継続することができる。
【0090】
なお、上記実施の形態1~4および変更例を適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
U1~U3 無停電電源装置、B1~B3 バッテリ、T1 入力端子、T2 バッテリ端子、T3 出力端子、SW1~SW3 スイッチ、CD1,CD2 電流検出器、C1,C2,3 コンデンサ、L1,L2 リアクトル、1 コンバータ、2 直流ライン、4 抵抗素子、5 双方向チョッパ、6 インバータ、7 制御回路、8 通信ケーブル、9 商用交流電源、10 負荷、T4,T5 通信端子、11 演算部、12 記憶部、13,13A 判別部、14 操作部、15~17 電圧検出器、18,18A 制御部、19 制御電源、20 タイマー、21 故障検出器、22 報知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8