(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置、電池セルユニット、電源装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20230313BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20230313BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20230313BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230313BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230313BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20230313BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20230313BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/262 Z
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2019122483
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031457(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082509(WO,A1)
【文献】特開2015-060759(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶を角形とし、対向する主面を有する複数の電池セルと、
前記電池セルの少なくとも一方の主面と当接するように積層されたセパレータと、
前記セパレータが積層された前記電池セルの主面を被覆する熱収縮性フィルムと、
前記熱収縮性フィルムで被覆された複数の前記電池セルを、隣接する該電池セル同士の間に前記セパレータが介在されるように積層してなる電池積層体の両端面に配置された一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数のバインドバーと、
を備える電源装置であって、
前記セパレータが、非接着状態で前記電池セルの前記主面に積層されると共に、該セパレータの外周縁が該主面の外周縁に合わされて位置決めされ、さらに、熱収縮された前記熱収縮性フィルムで被覆されて該電池セルの定位置に固定されてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記セパレータは、前記電池セルの主面の外形に沿う四角形状であって、前記主面の横幅と等しい横幅を有しており、
前記セパレータの両側縁が前記主面の両側縁に一致されて、該主面の定位置に位置決めされてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載される電源装置であって、
前記セパレータは、前記電池セルの主面の外形に沿う四角形状であって、
前記セパレータの下端縁が前記主面の下側縁に一致されて、該主面の定位置に位置決めされてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記熱収縮性フィルムが、前記セパレータが積層された前記電池セルの主面、側面及び底面の全体を被覆してなる電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータが、前記電池セルの一方の主面に配置されてなる電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータが、前記電池セルの両方の主面に配置されてなる電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載される電源装置であって、
前記熱収縮性フィルムが、前記電池セルの外形に沿う袋状に形成してなる熱収縮袋である電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータの端面が、断面視において面取りされてなる電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータが、
無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材であることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項9に記載される電源装置であって、
前記無機粉末がシリカエアロゲルであることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項13】
外装缶を角形とし、対向する主面を有する電池セルと、
前記電池セルの少なくとも一方の主面と当接するように積層されたセパレータと、
前記セパレータが積層された前記電池セルを被覆する熱収縮性フィルムと
を備え、
前記セパレータが、非接着状態で前記電池セルの前記主面に積層されると共に、該セパレータの外周縁が該主面の外周縁に合わされて位置決めされ、さらに、熱収縮された前記熱収縮性フィルムで被覆されて該電池セルの定位置に固定されてなる電池セルユニット。
【請求項14】
外装缶を角形とし、対向する主面を有する複数の電池セルと、
前記電池セルの少なくとも一方の主面と当接するように積層されたセパレータと、
前記セパレータが積層された前記電池セルを被覆する熱収縮性フィルムと、
前記熱収縮性フィルムで被覆された複数の前記電池セルを、隣接する該電池セル同士の間に前記セパレータが介在されるように積層してなる電池積層体の両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数のバインドバーと、
を備える電源装置の製造方法であって、
前記セパレータの外周縁を前記電池セルの主面の外周縁に合わせて位置決めしながら、該セパレータを該電池セルの主面に積層する工程と、
前記セパレータが積層された前記電池セルの周囲を、前記熱収縮性フィルムで覆う工程と、
前記電池セルと前記セパレータとを覆う熱収縮性フィルムを加熱して前記熱収縮性フィルムを熱収縮させて、前記セパレータを前記電池セルの表面に密着させて定位置に固定する工程と、
前記熱収縮性フィルムで被覆された前記電池セルを厚さ方向に積層して前記電池積層体とする工程と、
前記電池積層体の両端面を一対の前記エンドプレートで覆い、該エンドプレート同士を前記バインドバーで締結する工程と
を含むことを特徴とする電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池セルを積層している電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置、電池セルユニット、電源装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電池セルを積層している電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の電池セルを複数枚積層し、電池セル同士の間には絶縁性のセパレータを介在させている。
電池セルは、充放電によって発熱する。近年の電池セルの高容量化の要求に伴い、セルあたりの発熱量も増す傾向にある。加えて、電源装置の高出力化、高容量化のため、電池セルの積層数も増えており、電池セルが発熱しても他の電池セルに影響を与えないよう、セパレータの断熱性能も高性能化が求められている。
【0003】
高容量の安全性対策で導入した断熱材セパレータは、成型の自由度が低く、これまでの樹脂のように電池セルを保持する形状に形成することができず、自身で位置決めができないという問題があった。
【0004】
一方で、セパレータを電池セルに貼り付けて生産性を向上させた蓄電素子が提案されている(特許文献1)。この蓄電素子は、
図14及び
図15に示すように、素子容器210を備える蓄電素子200であって、素子容器210が有する面のうちの少なくとも1つの面に配置されるスペーサ250、260と、スペーサ250、260の少なくとも1つの端部であるスペーサ端部250a、250b、260a、260bを覆うように配置される絶縁性のシート部材240とを備えている。これにより、スペーサ250、260が配置されている構成においても、生産性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この蓄電素子では、その電池セルの主面にスペーサを接着剤などにより貼付しなければならず、接着剤を用いるコスト増や、接着剤の塗布や貼り付けの工数が増える等の問題があった。
【0007】
本発明の目的の一は、電池セルに絶縁性のセパレータを容易に位置決めしながら定位置に配置して、安価に多量生産できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る電源装置は、外装缶11を角形とし、対向する主面1Aを有する複数の電池セル1と、電池セル1の少なくとも一方の主面1Aと当接するように積層されたセパレータ2と、セパレータ2が積層された電池セル1の主面1Aを被覆する熱収縮性フィルム5と、熱収縮性フィルム5で被覆された複数の電池セル1を、隣接する電池セル1同士の間にセパレータ2が介在されるように積層してなる電池積層体10の両端面に配置された一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数のバインドバー4とを備えている。セパレータ2は、非接着状態で電池セル1の主面1Aに積層されると共に、セパレータ2の外周縁が主面1Aの外周縁に合わされて位置決めされ、さらに、熱収縮された熱収縮性フィルム5で被覆されて電池セル1の定位置に固定されている。
【0009】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0010】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により電池セル1への充電を可能とすると共に、電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【0011】
本発明のある態様に係る電池セルユニットは、外装缶11を角形とし、対向する主面1Aを有する電池セル1と、電池セル1の少なくとも一方の主面1Aと当接するように積層されたセパレータ2と、セパレータ2が積層された電池セル1を被覆する熱収縮性フィルム5とを備え、セパレータ2が、非接着状態で電池セル1の主面に積層されると共に、セパレータ2の外周縁が主面1Aの外周縁に合わされて位置決めされ、さらに、熱収縮された熱収縮性フィルム5で被覆されて電池セル1の定位置に固定されている。
【0012】
本発明のある態様に係る電源装置の製造方法は、外装缶11を角形とし、対向する主面1Aを有する複数の電池セル1と、電池セル1の少なくとも一方の主面1Aと当接するように積層されたセパレータ2と、セパレータ2が積層された電池セル1を被覆する熱収縮性フィルム5と、熱収縮性フィルム5で被覆された複数の電池セル1を、隣接する電池セル1同士の間にセパレータ2が介在されるように積層してなる電池積層体10の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数のバインドバー4とを備える電源装置の製造方法であって、セパレータ2の外周縁を電池セル1の主面1Aの外周縁に合わせて位置決めしながら、セパレータ2を電池セル1の主面1Aに積層する工程と、セパレータ2が積層された電池セル1の周囲を、熱収縮性フィルム5で覆う工程と、電池セル1とセパレータ2とを覆う熱収縮性フィルム5を加熱して熱収縮性フィルム5を熱収縮させて、セパレータ2を電池セル1の表面に密着させて定位置に固定する工程と、熱収縮性フィルム5で被覆された電池セル1を厚さ方向に積層して電池積層体10とする工程と、電池積層体10の両端面を一対のエンドプレート3で覆い、エンドプレート3同士をバインドバー4で締結する工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
以上の電源装置、電池セルユニット、及び電源装置の製造方法は、セパレータの外周縁を電池セルの主面の外周縁に合わせて位置決めしながら、セパレータを電池セルの主面に積層し、セパレータが積層された電池セルを覆う熱収縮性フィルムを熱収縮させて、セパレータを電池セルの表面に密着させて定位置に固定するので、セパレータを容易に位置決めしながら、非接着状態で電池セルの定位置に固定できる。このため、接着剤にかかる部材コストを削減できると共に、接着剤の塗布や貼り付けの工数を省略して安価に多量生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
【
図4】電池セルとセパレータの積層状態を示す正面図である。
【
図5】電池セルとセパレータの積層状態を示す一部拡大垂直断面図である。
【
図7】電池セルとセパレータの積層状態の他の一例を示す正面図である。
【
図8】電池セルとセパレータの積層状態の他の一例を示す正面図である。
【
図9】電池セルとセパレータの積層状態の他の一例を示す断面図である。
【
図10】電池セルユニットの製造工程を示す分解斜視図である。
【
図11】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図12】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図13】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【
図14】従来の蓄電素子の製造工程を示す分解斜視図である。
【
図15】従来の蓄電素子の製造工程を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る電源装置は、外装缶を角形とし、対向する主面を有する複数の電池セルと、電池セルの少なくとも一方の主面と当接するように積層されたセパレータと、セパレータが積層された電池セルの主面を被覆する熱収縮性フィルムと、熱収縮性フィルムで被覆された複数の電池セルを、隣接する電池セル同士の間にセパレータが介在されるように積層してなる電池積層体の両端面に配置された一対のエンドプレートと、電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート同士を締結する複数のバインドバーとを備えている。セパレータは、非接着状態で電池セルの主面に積層されると共に、セパレータの外周縁が主面の外周縁に合わされて位置決めされ、さらに、熱収縮された熱収縮性フィルムで被覆されて電池セルの定位置に固定されている。
【0016】
以上の電源装置は、セパレータの外周縁を主面の外周縁に合わせて位置決めしながら、セパレータが積層された電池セルを熱収縮された熱収縮性フィルムで被覆することにより、セパレータを電池セルの表面に密着させて固定できるため、接着剤などを使用することなくセパレータを電池セルの定位置に位置決めしながら固定できる利点が得られる。このように、接着剤等を使用せずにセパレータを電池セルの定位置に固定するので、部材コストを削減できることに加えて、製造工数を減らせることで安価に多量生産することができる。また、セパレータを電池セルの表面に非接着状態で積層するので、電池セルの膨張等により外装缶が変形する状態においても、セパレータが外装缶の変形に追随されるのを抑制でき、セパレータが変形して損傷を受けるのを有効に防止できる。
【0017】
本発明の第2の実施形態に係る電源装置は、セパレータが、電池セルの主面の外形に沿う四角形状であって、主面の横幅と等しい横幅を有しており、セパレータの両側縁を主面の両側縁に一致させて、主面の定位置に位置決めしている。
【0018】
上記構成によれば、四角形状のセパレータの両側縁を電池セルの主面の両側縁に一致させることで、セパレータと電池セルとの相対位置を特定しながら正確に位置決めできる。
【0019】
本発明の第3の実施形態に係る電源装置は、セパレータが、電池セルの主面の外形に沿う四角形状であって、セパレータの下端縁を主面の下側縁に一致させて、主面の定位置に位置決めしている。
【0020】
上記構成によれば、四角形状のセパレータの下端縁を電池セルの主面の下端縁に一致させることで、セパレータと電池セルとの相対位置を特定しながら正確に位置決めできる。
【0021】
本発明の第4の実施形態に係る電源装置は、セパレータが積層された電池セルの主面、側面及び底面の全体を熱収縮性フィルムで被覆している。
【0022】
上記構成により、電池セルの上面を除く外周面を熱収縮性フィルムで被覆して絶縁しながら、端子面となる上面を表出させて、電極端子を接触不良なく電気接続できる。
【0023】
本発明の第5の実施形態に係る電源装置は、セパレータを、電池セルの一方の主面に配置している。
【0024】
本発明の第6の実施形態に係る電源装置は、セパレータを、電池セルの両方の主面に配置している。
【0025】
本発明の第7の実施形態に係る電源装置は、熱収縮性フィルムを、電池セルの外形に沿う袋状に形成してなる熱収縮袋としている。
【0026】
本発明の第8の実施形態に係る電源装置は、セパレータの端面を、断面視において面取りしている。
【0027】
上記構成により、電池セルの主面に積層されるセパレータの端面を断面視において面取りすることで、セパレータの端縁部におけるコーナー部と熱収縮性フィルムとの接触により熱収縮性フィルムが損傷を受けるのを抑制できる。また、熱収縮性フィルムを袋状の熱収縮袋とする構造においては、セパレータが積層された電池セルを一体構造として袋状の熱収縮袋にスムーズに挿入できる。
【0028】
本発明の第9の実施形態に係る電源装置は、セパレータを、無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材としている。さらに、本発明の第10の実施形態に係る電源装置は、無機粉末をシリカエアロゲルとしている。
【0029】
上記構成によると、ハイブリッド素材の熱伝導率を小さくして、セパレータの断熱特性を向上できる。以上のセパレータは、隣接する電池セル間に挟まれて、隣接する電池セルを断熱する。とくに、ハイブリッド素材であるセパレータは、熱暴走して高温に発熱した電池セルが隣の電池セルを加熱して熱暴走が誘発されるのを効果的に抑制する。さらに、このセパレータは、積層される電池セルを絶縁する絶縁シートとしても機能する。
【0030】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0031】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る電源装置100の斜視図を
図1に、垂直断面図を
図2に、水平断面図を
図3にそれぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、外装缶11を角形とし、対向する主面1Aを有する複数の電池セル1と、電池セル1の少なくとも一方の主面1Aと当接するように積層されるセパレータ2と、セパレータ2が積層された電池セル1の主面1Aを被覆する熱収縮性フィルム5と、熱収縮性フィルム5で被覆された複数の電池セル1を、隣接する電池セル1同士の間にセパレータ2が介在されるように積層してなる電池積層体10の両端面に配置された一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数のバインドバー4とを備えている。
【0032】
(電池セル1)
電池セル1は、
図4~
図6に示すように、幅広面である主面1Aの外形を四角形とする角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。電池セル1は、リチウムイオン二次電池などの非水系電解液二次電池である。電池セル1をリチウムイオン二次電池とする電源装置100は、容積と重量に対する充放電容量を大きくできる。ただし、電池セル
は、リチウムイオン二次電池には特定されず、充電できる全ての電池、たとえばニッケル水素電池なども使用できる。
【0033】
電池セル1は、正負の電極板を積層した電極体を外装缶11に収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶11は、外形を角形として、一対の主面1Aを有すると共に、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板12で気密に閉塞している。外装缶11は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板12は、外装缶11と同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板12は、外装缶11の開口部に挿入され、封口板12の外周と外装缶11の内周との境界にレーザ光を照射して、封口板12を外装缶11にレーザ溶接して気密に固定している。
【0034】
電池セル1は、図において上面である封口板12を端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子13を固定している。電極端子13は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。さらに、封口板12は、正負の電極端子13の間に、安全弁14の開口部15を設けている。安全弁14は、電池セル1の内圧が設定値よりも高くなると開弁して内部のガスを放出し、電池セル1の内圧上昇を防止すると共に、外装缶11や封口板12の破損を防止する。
【0035】
(電池セルユニット9)
以上の電池セル1は、
図4及び
図5に示すように、少なくとも一方の主面1Aと当接するようにセパレータ2が積層されると共に、セパレータ2を積層した状態で端子面1Xを除く外周面が熱収縮性フィルム5により被覆される。電池セル1は、セパレータ2の外周縁が主面1Aの外周縁に合わされて位置決めされることで、セパレータ2が主面1Aの定位置に積層される。電池セル1の主面1Aに積層されるセパレータ2は、接着剤等で接着されることなく、非接着状態で外装缶11の主面1Aに配置される。セパレータ2が積層された電池セル1は、周囲が熱収縮性フィルム5で覆われると共に、熱収縮性フィルム5が加熱処理されて熱収縮することで、セパレータ2が表面に密着された状態で固定される。電池セル1は、上面である端子面1Xを除く外周面が、熱収縮された熱収縮性フィルム5で被覆されて、セパレータ2が主面1Aの定位置に固定された電池セルユニット9が形成される。
【0036】
(セパレータ2)
セパレータ2は、電池セル1の主面1Aに当接する状態で配置されており、
図1~
図3に示すように、複数の電池セル1が互いに積層されて電池積層体10を構成する状態では、隣接する電池セル1同士の間に介在されて、隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池セル1間における熱伝導を遮断する。
【0037】
セパレータ2は、全体を無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材2Aとしている。無機粉末は好ましくはシリカエアロゲルである。このハイブリッド素材2Aは、繊維の微細な隙間に、熱伝導率の低い微細なシリカエアロゲルを充填している。シリカエアロゲルは担持されて繊維強化材の隙間に配置される。このハイブリッド素材2Aは、繊維強化材の繊維シートと、ナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルとからなり、シリカエアロゲルのゲル原料を、繊維に含浸して製造される。シリカエアロゲルを繊維シートに含浸した後、繊維を積層し、ゲル原料を反応させて湿潤ゲルを形成し、さらに湿潤ゲル表面を疎水化、熱風乾燥して製造される。繊維シートの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ただ、繊維シートの繊維は、難燃処理を施した酸化アクリル繊維やグラスウールなどの無機繊維も使用できる。
【0038】
繊維強化材は、好ましくは繊維径を0.1~30μmとする。繊維強化材は、繊維径を30μmより細くし、繊維による熱伝導を小さくして、ハイブリッド素材2Aの断熱特性を向上できる。シリカエアロゲルは、90%~98%を空気で構成している無機質の微粒子で、ナノオーダの球状体が結合したクラスタで形成される骨格間に微細孔があって、三次元的な微細な多孔性構造をしている。
【0039】
シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材2Aは、薄くて優れた断熱特性を示す。このハイブリッド素材2Aからなるセパレータ2は、電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーを考慮して、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止できる厚さに設定する。電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーは、電池セル1の充電容量が大きくなると大きくなる。したがって、セパレータ2の厚さは、電池セル1の充電容量を考慮して最適値に設定される。たとえば、充電容量を5Ah~20Ahとするリチウムイオン二次電池を電池セル1とする電源装置は、ハイブリッド素材2Aの厚さを0.5mm~3mm、最適には約1mm~2.5mmとする。ただし、本発明はハイブリッド素材2Aの厚さを以上の範囲に特定するものでなく、ハイブリッド素材2Aの厚さは、繊維シートとシリカエアロゲルからなる熱暴走の断熱特性と、電池セルの熱暴走の誘発を防止するために要求される断熱特性を考慮して最適値に設定される。
【0040】
ここで、セパレータ2として使用するハイブリッド素材2Aは、剛性が低くて平面状に保持する保形性が弱いと、電池セル1に積層して位置決めする際に、位置ずれしたり、しわが寄る等により、作業性が著しく低下するおそれがある。セパレータ2は、ハイブリッド素材2Aの表面に、ハイブリッド素材2Aよりも剛性の高い形状維持性のある保形シートを積層して積層シートとすることでこの問題を解消できる。保形シートには、たとえば熱可塑性樹脂のプラスチックシートを使用する。プラスチックシートは厚さで保形性を調整できるので、保形シートには、たとえば、厚さを0.1mmとする硬質プラスチックシートを使用する。セパレータ2は、ハイブリッド素材2Aの少なくとも片面に保形シートを接着して設けることができる。ただ、保形シートは、ハイブリッド素材の両面に設けて、保形性をより高くすることもできる。
【0041】
セパレータ2は、
図4~
図6に示すように電池セル1の主面1Aの外形に沿う四角形状であって、電池セルの主面と当接するように積層されて電池セルの定位置に配置される。
図4に示すセパレータ2は、主面1Aの横幅(W)と等しい横幅(d)を有すると共に、その上下幅(h)を主面1Aの上下幅(H)よりも小さくしており、電池セル1の定位置に配置した状態で、主面1Aの上端部に、セパレータ2と当接しない非接触領域1aを設けるようにしている。このセパレータ2は、
図4に示すように、両側縁と下端縁の3辺を電池セル1の主面1Aの両側縁と下端縁に一致させることで、電池セル1に対して相対位置を特定して位置決めしている。この構造は、電池セル1の主面1Aに対してセパレータ2の3辺を合わせて位置決めするので、正確にセパレータ2と電池セル1との相対位置を特定して、セパレータ2を電池セル1の定位置に配置できる。
【0042】
図に示すセパレータ2は、電池セル1の主面1A全体に当接することなく、電池セル1の上端部に非接触領域1aを設けている。この構造は、電池セル1の内圧が上昇して電池セルが変形する際に、電池セル1の上端部に大きさ圧力がかかるのを抑制して、封口部が損層を受けるのを有効に防止できる特長がある。ただ、セパレータは、電池セル1の主面全体と当接する大きさとしても良い。このセパレータは、外周縁である4辺を主面の外周縁に一致させてより確実に位置決めできる。
【0043】
以上のように、セパレータと電池セルの主面とを3辺で位置決めする構造は、セパレータを電池セルに対して正確に位置決めできる特長がある。ただ、セパレータは、必ずし
も両側縁と下端縁の3辺で電池セルの主面に対する相対位置を特定する構造には限定しない。
図7に示すセパレータは、電池セル1の主面1Aの外形に沿う四角形状として、主面1Aの横幅(W)と等しい横幅(d)とするが、上下幅(h)を
図4に示すセパレータ2よりも短くして、電池セル1の下端部を被覆せずに表出させて非接触領域1aを設ける構造としている。このセパレータ2は、両側縁を電池セル1の主面1Aの両側縁に一致させることで、電池セル1に対して相対位置を特定して位置決めしている。このセパレータは、その横幅(d)を主面の横幅(W)と等しくしているので、セパレータと主面1Aの両側縁を一致させることで、セパレータ2の横方向における位置ずれや傾動が防止される。また、電池セル1の下端縁との間に隙間ができるが、熱収縮性フィルム5が熱収縮された状態では、セパレータ2が電池セル1の表面に密着する状態で押圧されるので、セパレータ2は、上下方向の位置ずれが防止されて定位置に固定された状態に保持される。
【0044】
さらに、
図8に示すセパレータ2は、電池セル1の主面1Aの外形に沿う四角形状とするが、その横幅(d)を主面の横幅(W)よりも小さくして、電池セル1の両側縁部に被覆せずに表出される非接触領域1aを設けている。このセパレータ2は、下端縁を電池セル1の主面1Aの下端縁に一致させることで、電池セル1に対して相対位置を特定して位置決めしている。このセパレータ2は、セパレータ2と主面1Aの下端縁を一致させることで、セパレータ2の下端位置が特定されて、上下方向の位置ずれや傾動が防止される。また、電池セル1の両側縁との間に隙間ができるが、熱収縮性フィルム5が熱収縮された状態では、セパレータ2が電池セル1の表面に密着する状態で押圧されるので、セパレータ2は、横方向の位置ずれが防止されて定位置に固定された状態に保持される。
【0045】
以上のセパレータ2は、両側縁または/及び下端縁を線状に一致させて位置決めするので、簡単かつ容易に、しかも正確に位置決めできる特長がある。ただ、セパレータは、必ずしも、外周縁を線状に一致させて位置決めする構造には特定せず、外周縁の複数箇所を部分的に主面の外周縁に沿って合わせて位置決めすることもできる。このセパレータは、例えば、本体部分の外形を主面の外形よりもひとまわり小さくすると共に、両側縁または/及び下端縁から外側方向に突出する複数の凸部を設け、これらの凸部の先端縁を主面の外周縁に合わせて位置決めすることもできる。複数の凸部は、先端縁を湾曲面として、熱収縮フィルムの損傷を防止する形状とすることができる。このセパレータは、左右に突出する複数の凸部の先端縁を主面の両側縁に合わせて左右方向の位置を特定し、下方に突出する複数の凸部の先端縁を主面の下端縁に合わせて上下方向の位置を特定することができる。この構造のセパレータ2は、電池セルの外周縁に非接触領域を設けつつ、電池セルの主面に対して正確に位置決めできる。
【0046】
さらに、セパレータ2は、
図5の一部拡大図に示すように、外周縁において、端面を面取りして面取り部2rを設けている。このように、電池セル1の主面1Aに積層されるセパレータ2の端面を断面視において面取りすることで、セパレータ2の端面コーナー部が熱収縮性フィルム5と接触して熱収縮性フィルム5が損傷を受けるのを抑制している。また、熱収縮性フィルムを袋状の熱収縮袋5Aとする構造においては、セパレータ2が積層された電池セル1を一体構造として熱収縮袋5Aにスムーズに挿入できる特徴もある。さらに、セパレータは、外周縁部を、先端に向かって次第に薄くなる傾斜面とすることもできる。
【0047】
(熱収縮性フィルム2)
熱収縮性フィルム5は、
図4~
図6に示すように電池セル1の上面である端子面1Xを除く面を被覆して絶縁する。具体的には、電池セル1の上面を除く面であって、好ましくは、主面1Aと側面1Bと底面1Cの全面を被覆する。ただし、熱収縮性フィルムは、底面の全面と、主面及び側面の上部を除く部分を被覆することもできる。上面は、電極端子13を電気接続のために表出させる必要があることから熱収縮性フィルム5で被覆しない。
【0048】
熱収縮性フィルム5は、加熱処理することで収縮する特性を有するプラスチックフィルムが使用できる。このようなフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムが適している。PET製の熱収縮性フィルム5は、耐熱性、耐久性に優れ、安価である上、熱溶着で簡単に接着できるので好ましい。ただ、熱収縮性フィルムは、PET製のフィルムに特定せず、熱収縮性と絶縁性とを有する他のプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレン(PE)製のフィルム等が使用できる。
【0049】
熱収縮性フィルム5は、電池セル1の外形に沿う形状に形成されて、セパレータ2が積層された電池セル1を一体的に覆っている。熱収縮性フィルム5は、セパレータ2が定位置に積層された電池セル1の周囲を被覆する状態で加熱処理され、熱収縮してセパレータ2及び電池セル1の表面に密着する。
図6に示す熱収縮性フィルム5は、電池セル1の外形に沿う袋状に形成された熱収縮袋5Aとしている。この熱収縮袋5Aは、袋状に形成された状態では、セパレータ2が積層された電池セル1を開口部からスムーズに挿入できる内形となるように形成されると共に、加熱処理された状態では、熱収縮する熱収縮性フィルム5がセパレータ2及び電池セル1の表面に密着して、セパレータ2を電池セルの表面に固定できる形状に形成している。このように、熱収縮性フィルム5を熱収縮袋5Aの状態で使用する構造は、生産性を向上できる特徴がある。
【0050】
ただ、熱収縮性フィルムは、必ずしも袋状に形成された熱収縮袋として電池セルの表面を被覆する構造には限定しない。熱収縮性フィルムは、例えば、袋状に形成することなく1枚のシート状として、セパレータが積層された電池セルの外形に沿うように折り畳んで電池セルとセパレータとを一体的に覆うこともできる。シート状の熱収縮性フィルムを電池セルの外形に沿って折り畳んで電池セルとセパレータとを覆った熱収縮性フィルムは、加熱処理されて、熱収縮して電池セルとセパレータの表面に密着してセパレータを電池セルの表面に固定する。さらに、熱収縮性フィルムは、長尺状の熱収縮性フィルムを電池セル1に巻きつけて被覆することも、筒状に形成された熱収縮フィルムの内側に電池セル1を挿入して被覆することもできる。
【0051】
以上の電池セルユニット9は、二次電池セル1の一方の主面1Aにセパレータ2を配置して熱収縮性フィルム5で被覆する例を示している。さらに、電池セルユニット9は、
図9に示すように、電池セル1の対向する両側の主面1Aに対してセパレータ2を配置して熱収縮性フィルム5で被覆することもできる。この電池セルユニット9は、電池セル1の両側の主面1Aにそれぞれセパレータ2を位置決めしながら積層し、セパレータ2が積層された電池セル1の周囲を熱収縮性フィルム5で覆い、熱収縮性フィルム5を熱収縮させることで、2枚のセパレータ2が電池セル1の両面に密着状態で固定される。この構造の電池セルユニットは、2枚のセパレータ2を1つの電池セル1の両側の主面1Aに配置するので、電池積層体10を製造する際には、2枚のセパレータ2を装着した電池セル1と、セパレータ2を装着しない電池セル1とを交互に積層しながら効率よく組み立てできる。
【0052】
(電池積層体10)
以上のようにして、熱収縮された熱収縮性フィルム5で被覆された複数の電池セル1を、隣接する電池セル1同士の間にセパレータ2が介在されるように積層して電池積層体10を形成する。すなわち、複数の電池セルユニット9を、隣接する電池セルユニット9同士の間にセパレータ2が配置されるように互いに積層して、電池積層体10を形成する。電池積層体10は、正負の電極端子13を設けている端子面1X、
図1においては封口板12が同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。電池積層体10は、隣接する電池セル1の正負の電極端子13に金属製のバスバー(図示せず)が接続されて、バスバーでもって複数の電池セル1を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続される。直列に接続される電池セルは、外装缶に電位差が発生するので、間に介在されるセパレータで絶縁する。並列に接続される電池セルは、外装缶に電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、間に介在されるセパレータで断熱する。図に示す電池積層体10は、12個の電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体10を構成する電池セル1の個数とその接続状態を特定しない。
【0053】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、
図1~
図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されて、電池積層体10を両端から挟着している。エンドプレート3は、電池セル1の外形とほぼ等しい形状と寸法の四角形で、全体を金属で製作している。金属製のエンドプレート3は、優れた強度と耐久性を実現できる。電池積層体10の両端に配置される一対のエンドプレート3は、電池積層体10の両側面に沿って配置される複数のバインドバー4を介して締結される。
【0054】
(バインドバー4)
バインドバー4は、電池積層体10の対向する両側面に配置されて、電池積層体10の両端面に配置された一対のエンドプレート3を締結している。バインドバー4は、
図1と
図2に示すように、電池積層体10の積層方向に延長されており、一対のエンドプレート3を所定の寸法に固定して、その間に積層される電池セル1を所定の加圧状態に固定している。バインドバー4は、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板である。バインドバー4は、強い引張力に耐える金属板が使用される。図のバインドバー4は、電池積層体10の側面を被覆する上下幅の金属板としている。金属板からなるバインドバー4は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。図に示すバインドバー4は、上下の端縁部を折曲加工して、折曲部4aを形成している。上下の折曲部4aは、電池積層体10の左右の両側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う形状としている。図に示すバインドバー4は、複数の固定ピン6を介してエンドプレート3の両側面に固定している。
【0055】
以上の電源装置は、以下のようにして製造される。
1.位置決め工程
図10(A)に示すように、セパレータ2の外周縁を電池セル1の主面1Aの外周縁に合わせて位置決めしながら、セパレータ2を電池セル1の主面1Aに積層する。セパレータは、両側縁を電池セルの主面の両側縁に合わせて位置決めし、あるいは、下端縁を電池セルの主面の下端縁に合わせて位置決めし、あるいはまた、両側縁と下端縁の両方を電池セルの主面の両側縁と下端縁に合わせて位置決めされる。さらに、セパレータは、接着されることなく電池セルの主面に重なられて定位置に位置決めされる。
2.被覆工程
図10(B)及び(C)で示すように、セパレータ2が積層された電池セル1の周囲を、熱収縮性フィルム5で覆う。図では、セパレータ2が積層された電池セル1を、袋状に形成された熱収縮袋に挿入して周囲を熱収縮性フィルム5で覆っている。ただ、熱収縮性フィルムは、袋状に形成することなく1枚のシート状として、セパレータが積層された電池セルの外形に沿うように折り畳んで電池セルとセパレータとを覆うこともできる。
3.熱収縮工程
図10(D)で示すように、電池セル1とセパレータ2とを覆う熱収縮性フィルム5を加熱処理して熱収縮性フィルム5を熱収縮させる。熱収縮する熱収縮フィルムによって、セパレータ2が電池セル1の表面に密着状態に固定されて定位置に固定される。
4.電池セル積層工程
熱収縮性フィルム5で被覆された電池セル1(電池セルユニット9)を厚さ方向に積層して電池積層体10とする。
5.締結工程
電池積層体10の両端面を一対のエンドプレート3で覆い、エンドプレート3同士をバインドバー4で締結する。
【0056】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
【0057】
(ハイブリッド車用電源装置)
図11は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、
図11に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0058】
(電気自動車用電源装置)
また、
図12は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0059】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。
図13は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0060】
図13に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0061】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0062】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る電源装置は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0064】
100…電源装置
1X…端子面
1…電池セル
1A…主面
1B…側面
1C…底面
1a…非接触領域
2…セパレータ
2A…ハイブリッド素材
2r…面取り部
3…エンドプレート
4…バインドバー
4a…折曲部
5…熱収縮性フィルム
5A…熱収縮袋
6…固定ピン
9…電池セルユニット
10…電池積層体
11…外装缶
12…封口板
13…電極端子
14…安全弁
15…開口部
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
HV、EV…車両
200…蓄電素子
210…素子容器
240…シート部材
250…スペーサ
250a、250b…スペーサ端部
260…スペーサ
260a、260b…スペーサ端部