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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】物体の距離、形状計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230313BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20230313BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G06T7/593
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019166036
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021043092
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松崎 謙司
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐治
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545818(JP,A)
【文献】特開平09-014943(JP,A)
【文献】特開2007-170851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
21/00
G06T 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に蓄光塗料を塗布する塗布装置と、前記蓄光塗料を発光させるための光を投光する投光装置と、前記蓄光塗料が発光した光を撮像する撮像装置と、前記撮像装置に接続され、前記撮像装置が撮像した撮像データに基づいて特徴点を特定する画像処理装置と、前記画像処理装置に接続され、2次元又は3次元マップを作成し物体の距離、形状を求める制御装置を有する物体の距離、形状計測装置。
【請求項2】
前記投光装置は、フラッシュ装置、光源及び液晶プロジェクタを備え、スポット状又はスリット状の光あるいは一次元又は2次元のバーコード状の光を前記蓄光塗料に投光する請求項1記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項3】
前記撮像装置は複数のカメラからなる立体カメラ又はラインセンサである請求項1又は2に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項4】
前記撮像装置に特定の波長の光のみを透過させるフィルタを設けた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項5】
前記塗布装置に隣接して乾燥装置を設けた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項6】
少なくとも前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置からなる1セットの形状測定部を、移動体の中央部に配置した請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項7】
少なくとも前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置からなる1セットの形状測定部を、移動体の車輪の両側にそれぞれ配置するとともに、前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置の配列順は相互に逆向きである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物体の距離、形計測装置。
【請求項8】
少なくとも前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置からなる1セットの形状測定部を、移動体の前端部及び後端部の両側部にそれぞれ配置するとともに、前記前端部及び後端部に設けられた前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置の配列順は相互に逆向きである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項9】
前記移動体に多関節アームを搭載し、前記多関節アームの先端に少なくとも前記塗布装置、前記投光装置及び前記撮像装置からなる1セットの形状測定部を配置した請求項6乃至8のいずれか1項に記載の物体の距離、形状計測装置。
【請求項10】
塗布装置により対象物に蓄光塗料を塗布する塗布ステップと、投光装置により前記蓄光塗料を発光させるための光を投光する投光ステップと、撮像装置により前記蓄光塗料が発光した光を撮像する撮像ステップと、画像処理装置により前記撮像装置が撮像した撮像データに基づいて特徴点を特定する特定ステップと、制御装置により前記特徴点を用いて2次元又は3次元マップを作成し物体の距離、形状を求める距離、形状計測ステップと、を有する物体の距離、形状計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物体の距離、形状計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体までの距離計測や物体の2次元/3次元の形状計測技術では、対象物に光を投射し、反射光を検出してタイムオブフライト法により対象物までの距離を算出する手段や、反射光をラインセンサや立体カメラで検出し三角測量法により対象物までの距離を算出する手段が一般的である。これらの計測手段は、計測装置を静止した状態で計測データを取得し、対象物までの距離、位置及び形状を算出する。
【0003】
これらの計測データに基づき、計測装置を搭載した自立型移動車や多関節アームとの位置関係を特定するには、対象物の特徴点の特定及び照合が必要となる。また、この特徴点の特定及び照合は、立体カメラで撮像した左右映像の各ポイントを照合する際も必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-215193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、物体の距離や位置及び形状計測技術では特徴点を特定し照合する必要があるが、例えば均一な円形パイプ内を自立走行する移動ロボット等からなる移動体では、センサの視野内に特徴点がなく、距離、形状の計測データとの照合に利用することができない。
【0006】
そこで、移動体の車輪の回転量をエンコーダでカウントして移動距離を計測する方法や、ジャイロ等を搭載して経路計算する方法等が一般的に用いられているが、これらの移動体の状態を検知する内界センサによる計測では、累積誤差が発生し、移動距離が長くなるにつれて、移動体の位置情報を正確に把握することができなくなるという課題があった。
【0007】
また、多関節アームに計測装置を搭載した距離、形状計測技術では、多関節アームが対象物に接近するとセンサの視野範囲が均一な平面又は曲面となり、特徴点を見いだすことができず、距離、計測データとの照合に利用することができない。
【0008】
そこで、計測装置が接近する対象面にシンボルシールやバーコードシール等を貼り付けて特徴点とする方法、又は対象物が自動車等の場合、誘導シールを走行面に貼り付けて特徴点とする方法等が用いられているが、適用分野が限定されているとともに、事前作業負担及び作業コストが増大するという課題があった。
【0009】
本発明の実施形態は上述した課題を解決するためになされたもので、特徴点の特定が困難な対象物に対して、蓄光塗料を用いて特徴点を形成することで、物体の距離、姿勢、形状等を高精度で計測することができる物体の距離、形状計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る物体の距離、形状計測装置は、対象物に蓄光塗料を塗布する塗布装置と、前記蓄光塗料を発光させるための光を投光する投光装置と、前記蓄光塗料が発光した光を撮像する撮像装置と、前記撮像装置に接続され、前記撮像装置が撮像した撮像データに基づいて特徴点を特定する画像処理装置と、前記画像処理装置に接続され、2次元又は3次元マップを作成し物体の距離、形状を求める制御装置を有する。
【0011】
また、本実施形態に係る物体の距離、形状計測方法は、塗布装置により対象物に蓄光塗料を塗布する塗布ステップと、投光装置により前記蓄光塗料を発光させるための光を投光する投光ステップと、撮像装置により前記蓄光塗料が発光した光を撮像する撮像ステップと、画像処理装置により前記撮像装置が撮像した撮像データに基づいて特徴点を特定する特定ステップと、制御装置により前記特徴点を用いて2次元又は3次元マップを作成し物体の距離、形状を求める距離、形状計測ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、特徴点の特定及び照合が困難な対象物に対して、蓄光塗料を用いて特徴点を形成することで、物体の距離や位置及び形状を高精度で計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図2】第1の実施形態に係る距離、形状計測装置の制御ブロック図。
図3】第2の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図4】第3の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図5】第4の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図6】第5の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図7】(a)は第6の実施形態に係る距離、形状計測装置の平面図、(b)は(a)のX1-X1線側面図。
図8】(a)は第7の実施形態に係る距離、形状計測装置の平面図、(b)は(a)のX2-X2線側面図。
図9】(a)は第8の実施形態に係る距離、形状計測装置の平面図、(b)は側面図。
図10】第8の実施形態に係る距離、形状計測装置によって形成された発光パターンの模式図。
図11】第8の実施形態に係る距離、形状計測装置によって形成された発光パターンの具体例。
図12】(a)は第8の実施形態の変形例に係る距離、形状計測装置の平面図、(b)は側面図。
図13】第9の実施形態に係る距離、形状計測装置の構成図。
図14】第9の実施形態に係る距離、形状計測装置の操作図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図1及び図2を用いて説明する。なお、本実施形態では距離、形状計測装置が床面上を移動する移動体に搭載されている例について説明する。
【0015】
(構成)
本実施形態に係る距離、形状計測装置1は、図1に示すように、例えば床面等の走行面12を移動する自立移動型の移動体8、移動体8に設けられ、蓄光塗料Aをスプレー塗布する塗布装置2、蓄光塗料Aを発光させる波長の光を投光する投光装置3、蓄光塗料Aからの発光状態を撮像する立体カメラやラインセンサ等からなる撮像装置4、撮像装置4に接続された画像処理装置5、画像処理装置5に接続され2次元/3次元マップを作成するためのデータ生成ソフト部6、移動体8の走行制御及び塗布装置2乃至データ生成ソフト部6の各構成要素を統括的に制御する制御装置10、から構成される。
【0016】
本実施形態では、塗布装置2及び投光装置3は移動体8の前部及び後部に設けられ、それぞれ前部及び後部から塗布装置2、投光装置3の順で設けられている。
図2は、距離、形状計測装置1を構成する各構成要素の制御ブロック図で、制御装置10が移動体8の走行制御及び塗布装置2乃至データ生成ソフト部6を統括的に制御する例を示している。
【0017】
また、本実施形態では、自立移動型の移動体8のほか、無人走行台車、狭隘な空間を移動する移動ロボット、自動車等にも適用可能である。さらに、本実施形態では、画像処理装置5、データ生成ソフト部6及び制御装置10を移動体8に設ける例を示しているが、これに限定されず、通信環境が整っていれば移動体8以外の場所に設けてもよい。
【0018】
(作用)
上記のように構成された距離、形状計測装置1において、まず、塗布装置2により走行面12へ蓄光塗料Aをスプレー塗布する(塗布ステップ)。次に、蓄光塗料Aが塗布された走行面12に投光装置3により所定の波長の光を投光し、蓄光塗料Aを発光させる(投光ステップ)。その際、投光装置3はスポット光や所定形状のマーカ状又はパターン状の光を投光すれば、走行面12は同じ形状の光を一定時間発光し続けることになる。
【0019】
そして、この発光状態を2次元カメラやラインセンサ等からなる撮像装置4で撮像し(撮像ステップ)、その画像データを画像処理装置5に送る。画像処理装置5では、逐次発生する画像データから特徴点を特定し(特定ステップ)、特徴点のマップデータを作成し、2次元/3次元のデータ生成ソフト部6に伝達される。
【0020】
データ生成ソフト部6は、投光装置3が投光した個々の発光マーカや発光パターン等からなる特徴点のマップデータと、撮像装置4が読み取った特徴点のマップデータとを照合する。そして、走行面12で発光した発光マーカや発光パターン等の特徴点間の距離、方位等を計算し、この結果から、走行経路の2次元/3次元マップを作成し、最終的に制御装置10により移動体8の現在位置、方位、移動速度等を求め、移動体8の距離、形状を計測する(距離、形状計測ステップ)。
【0021】
また、本実施形態では、塗布装置2及び投光装置3は移動体8の前部及び後部にそれぞれ逆向きに設けられているため、移動体8の移動方向が紙面左側(前進方向)又は右側(後進方向)のいずれであっても距離、形状計測を行うことができる。
【0022】
(効果)
本実施形態によれば、蓄光塗料Aの発光作用を利用して、非接触で走行面12上にマーカ状やパターン状の光を描くことができるようになる。この発光マーカや発光パターンは走行経路上で一定時間発光し続けるので、特徴点が確実に形成されるとともに、特徴点を容易に特定することが可能となる。これにより、移動体8の2次元/3次元マップの作成、並びに移動体8の位置、方位及び速度等の計測を高精度で行うことができる。
【0023】
また、蓄光塗料Aは一時的なマーカの機能を有するため、事前に走行経路上に軌道シール等を貼ったものと同様な効果を得ることができるとともに、マーカやパターンの形状を適宜変更することで識別が容易な特徴点を複数形成することができる。
さらに、事前に軌道シールを設置する等の作業も必要としないので、事前作業負担及び作業コストを軽減することができる。
【0024】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図3を用いて説明する。
【0025】
(構成)
移動体8が高速に移動しているような場合、通常の投光装置3では光量が不足し撮像装置4で読み取れるレベルの明るさに蓄光塗料Aを光らせることができない場合や、光パターンが流れて輪郭が不明瞭になる等の不具合が生じるリスクがあり、特徴点を的確に抽出することができない可能性がある。
【0026】
そのため、本第2の実施形態では、蓄光塗料Aが高輝度でかつ明瞭なマーカ状又はパターン状の光を発光可能とするために、投光装置3にフラッシュ装置3-1を付加する構成としている。
【0027】
具体的には、図3に示すように、投光装置3に充電部とフラッシュ回路部等(図示せず)からなるフラッシュ装置3-1を設けた構成としている。
これにより、フラッシュ装置3-1を有さない投光装置3に比較して、平均出力は同じでも大きなエネルギーの光を極めて短時間だけ発光させることができる。
【0028】
(作用効果)
本第2の実施形態によれば、投光装置3にフラッシュ装置3-1を設けたことで、投光装置3からの光の投光時間が短くても、高エネルギーの光を投光可能となるため、蓄光塗料Aから静止した状態で一定時間投光した時とほぼ変わらないような鮮明で明るい発光を得ることができる。
これにより、移動体8が高速で移動している場合でも、特定可能な特徴点を確実に形成することができる。
【0029】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置について、図4を用いて説明する。
【0030】
(構成)
本実施形態では、投光装置3として、フラッシュ装置3-1、ランプ等からなる光源3-2及び液晶プロジェクタ3-3を用いる構成としている。光源3-2は蓄光塗料Aを発光させる波長の光を生成し、液晶プロジェクタ3-3は、制御装置10からの指令により、所定の発光パターンを生成するような制御が行われる。
【0031】
発光パターンとしては後述する図10図11に示すようなバーコード状の発光パターンを用いることができるが、これ以外にも液晶プロジェクタ3-3を制御することで任意の発光パターンを生成することも可能である。
【0032】
(作用効果)
本実施形態によれば、液晶プロジェクタ3-3を制御することで、種々のパターンの発光パターンを生成することができるため、複数の特徴点を明瞭に区別して特定することが可能となる。
【0033】
また、画像処理装置5は抽出すべき特徴点の情報を事前に有しているので、データ生成ソフト部6の処理負担を軽減化することができるため、短時間で高精度の移動体8の2次元/3次元マップを作成し、移動体8の位置、方位及び移動速度等を高精度で求めることができる。
【0034】
また、発光パターンを図10図11に示すようなバーコード状にすると、リニアエンコーダに使用されている磁気シールと同じような効果、作用を得ることも可能となる。なお、発光パターンを二次元的な縞模様状にすると、移動体8の方位を認識させることや、走行面12上に固有情報を表示することも可能となる。
【0035】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図5を用いて説明する。
【0036】
(構成)
本実施形態では、上記実施形態における撮像装置4の受光面に色フィルタ11を設ける構成としている。
【0037】
本実施形態において、蓄光塗料Aは投光装置3から投光される所定の波長の光により、特定の色の光を発光させる。そして、撮像装置4では色フィルタ11により特定の色(波長)の光を有する画像のみが撮像装置4で撮像される。
【0038】
(作用効果)
本実施形態によれば、2次元カメラやラインセンサ等からなる撮像装置4の受光面に、蓄光塗料Aが発光する特定の色の光のみを通過可能な色フィルタ11を設けたことにより、蓄光塗料Aで発光した色の画像のみが輝度情報として撮像装置4に取り込まれる。これにより、外光反射による光や走行面12上の他の光をノイズとして減光又は遮断することができるため、特徴点の特定をより高精度で行うことができる。
【0039】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図6を用いて説明する。
【0040】
(構成)
本実施形態では、塗布装置2に隣接してドライヤ等からなる乾燥装置7を設けた構成としている。
【0041】
具体的には、図6に例示するように、移動体8の前部及び後部において、塗布装置2と投光装置3との間に乾燥装置7を設けている。乾燥装置7は温風等を送風する公知のドライヤ等の送風装置が用いられる。
【0042】
(作用効果)
投光装置3により所定の発光マーカや発光パターンを有する光が投光される際に、走行面12に塗布された蓄光塗料Aが十分乾燥していないと、発光パターンが固定されないで流動したり、輪郭が不明確となる場合があり、撮像装置4で特徴点を的確に特定できなくなる可能性がある。
【0043】
本実施形態によれば、塗布装置2に隣接して乾燥装置7を設けたことで、塗布された蓄光塗料Aを速やかに乾燥させ、明瞭な発光パターンを得ることが可能となる。これにより、撮像装置4で特徴点を的確に把握することができるようになるため、特徴点の特定をより高精度で行うことができる。
【0044】
[第6の実施形態]
第6の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図7(a)、(b)を用いて説明する。
【0045】
本実施形態は、塗布装置2、投光装置3、乾燥装置7及び立体カメラ4-1、4-2からなる撮像装置4を1セットの形状測定部Bとした場合、1セットの形状測定部Bを移動体8の下部の中央部に配置した構成としている。
具体的には、図7(a)、(b)に例示するように、1セットの形状測定部Bを移動体8の下部で、かつ、左右一対の車輪9の間に配置している。
【0046】
本実施形態では、移動体8は図7(a)、(b)の紙面左側(便宜上、「前進方向」という。)に移動することを想定しており、1セットの形状測定部Bにより移動体8の距離、形状測定が可能である。
これにより、距離、形状計測装置1の小型化、演算処理負担の軽減化を図ることができる。
なお、本実施形態では、塗布装置2、投光装置3、乾燥装置7及び撮像装置4を1セットの形状測定部Bとしているが、乾燥装置7を省略してもよい。
【0047】
[第7の実施形態]
第7の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図8(a)、(b)を用いて説明する。
【0048】
本実施形態では、移動体8の車輪9に操舵可能なステアリング駆動軸9aを設け、塗布装置2、乾燥装置7、投光装置3及び撮像装置4(立体カメラ)からなる形状測定部B1、B2を、車輪9の両側にそれぞれ設けた構成としている。各形状測定部B1、B2は車輪9を支持固定する固定フレーム9bに取り付けられる。
【0049】
また、形状測定部B1、B2は、移動体8が前進方向又は後進方向に移動する場合に備えて、形状測定部B1、B2を構成する塗布装置2、乾燥装置7、投光装置3及び撮像装置4を、相互に逆向きに配置している。
【0050】
これにより、方向転換、前進又は後進等、いろいろな方向に移動する移動体8に対して、形状測定部B1、B2を車輪9の両側に設けたことで、移動体8の動きに沿った発光パターンを確実に形成することができるため、特徴点をより高精度で生成及び特定することができる。
【0051】
[第8の実施形態]
第8の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図9図11を用いて説明する。
【0052】
(構成)
本実施形態は、図9(a)、(b)に例示するように、移動体8の4つの側端部にそれぞれ1セットの形状測定部C1~C4を配置している。1つの形状測定部C1は、塗布装置2a、乾燥装置7a、フラッシュ装置3-1、光源3-2、液晶プロジェクタ3-3からなる投光装置3a、立体カメラ(ラインセンサを含む)からなる撮像装置4aからなり、各形状測定部C1~C4は、図10に示すように、一定区間移動する毎にバーコード状の発光パターンをフラッシュ点灯により形成する。
なお、移動体8が前進方向に移動する場合は形状測定部C1、C2が使用され、後進方向に移動する場合は、形状測定部C3、C4が使用される。
【0053】
(作用効果)
まず、移動体8が前進方向に移動開始すると、同時に塗布装置2により蓄光塗料Aを走行面12に散布し、乾燥装置7により速やかに乾燥される。次いで、投光装置3のフラッシュ点灯によりバーコード状の発光パターンが走行面に投光され、投光された部分は一定時間発光を継続する。
図10は上記のようにして形成されたバーコード状の発光パターンa1~anの模式図である。
【0054】
投光装置3から投光される光領域は投光角度に応じた一定の面積を有しており、図10に示すように、次にフラッシュ点灯する領域と相互に重複しないように、好ましくは所定幅の非投光領域が形成されるように、制御装置10により移動体8の移動速度及び/又は投光装置3のフラッシュ点灯のタイミングが制御される。
なお、フラッシュ点灯のタイミングは、撮像装置4で得られた撮像結果に基づいて制御装置10が決定するようにしてもよい。
【0055】
図11は移動体8の4つの側端部にそれぞれ1セットの形状測定部C1~C4を配置している形状計測装置(図9参照)によって得られた発光パターンの具体例である。
図11の具体例では、例えば、移動体8の前進方向に対して移動体8の前端部側部の左右の形状測定部C1、C2の投光装置3a、3bのフラッシュ点灯のタイミングをずらすことで、必ずいずれかの撮像装置4a、4bで発光パターンを撮像可能とするとともに、発光パターンの両端では、図11の領域Yとして図示しているように、撮像装置4a、4bが同時に発光パターンを撮像できるようにフラッシュ点灯のタイミングを制御する。
【0056】
これにより、移動体8の現在位置を途切れることなく連続的に計測することが可能となる。また、各発光パターンが重ならないようにフラッシュ点灯のタイミングを制御することも可能であり、各発光パターンの特徴点の分離、特定が容易になる。
また、後進方向についても移動体8の後端部側部の左右の形状測定部C3、C4により、同様にフラッシュ点灯のタイミングを制御する。
【0057】
ところで、車輪9で走行する移動体8に固定された投光装置3と走行面12との距離は既知であるので、発光パターン(輝度分布)投影面の実距離は、既知とすることができる。
【0058】
したがって、走行面12上のこの発光パターンを撮像装置4a、4bで読み取り、画像処理装置5で各撮像画像の同じポイントを発光パターンの既知の特徴点情報より抽出して同定し、その同定結果より三角測量法により各ポイント間の距離を計算することができる。そして、この計算データからデータ生成ソフト部6にて、高精度の2D/3D経路データを作成することができる。
【0059】
従来の距離、形状計測手段において、車輪9により駆動される移動体8の走行では、走行中にすべりが発生し、車輪駆動情報からの走行経路測定だけでは累積誤差が出る問題があり、この累積誤差をキャンセルするために、走行面に位置同定のためシールや、リニアの移動距離を計測するための磁気テープを貼るなどの事前作業が必要となっていた。
【0060】
しかしながら、本実施形態の距離、形状計測装置によれば、シールや磁気テープ設置等の事前作業が不要となり、作業負担やコストの軽減化を図ることができるとともに、4セットの形状測定部C1~C4を用いることで、累積誤差を少なくし、より高精度の距離、形状計測が可能となる。
【0061】
(変形例)
本変形例では、図12(a)、(b)に示すように、形状測定部C1~C4をクローラ走行式の移動体8に適用した構成例である。
【0062】
従来のクローラ走行式の移動体8では、左右のクローラ17の速度差を与えることで、移動体8の旋回を行っており、その時、左右のクローラは走行面12に対し滑りを発生する。そのため、クローラ17の回転量から走行距離を計測することが困難で、正確な経路を算出することも難しかった。
【0063】
本変形例によれば、上記第8の実施形態と同様に、走行面12に形成した発光パターンから移動距離を読み取っているので、累積誤差が少ない、より高精度の距離、形状計測が可能となる。
なお、その他の作用効果は、上記第8の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0064】
[第9の実施形態]
第9の実施形態に係る物体の距離、形状計測装置及び計測方法について、図13図14を用いて説明する。
【0065】
(構成)
本実施形態では、第8の実施形態で説明したクローラ走行式の移動体8の上部に、形状測定部Dが先端部に取り付けられた多関節アーム15を搭載し、例えば、広範囲の壁面に複数のネジ穴を開ける作業を行うため、作業対象の壁面の2次元/3次元マップを作成する例について説明する。
【0066】
多自由度の多関節アーム15は、図13に示すように、塗布装置2、投光装置3、乾燥装置7及び2台の立体カメラからなる撮像装置4を1セットとする形状測定部Dを多関節アーム15の先端のエンドエフェクタ18に取付け固定する。なお、塗布装置2、投光装置3、乾燥装置7及び撮像装置4の具体的構成は上記実施形態のものと重複するので説明を省略する。
また、移動体8としてクローラ走行式の代わりに車輪9を用いた移動体8にも適用できることはもちろんである。
【0067】
(作用効果)
まず、作業開始前に、撮像装置4にてネジ穴作業の基点20となるポイント(本例では、例えば、ドア枠14を基準位置と想定)を認識し(図14参照)、移動体8を位置決めし、移動体8の動きと多関節アーム15の動作により、基点20から特定のネジ穴位置22の方向に向かって、ネジ穴位置22付近まで万遍なく蓄光塗料Aを塗布する。
【0068】
移動中、壁面13と形状測定部Dとの距離は、壁面13と走行面12との境界線23を撮像装置4で認識することや、移動体8自身が有する形状測定部C1~C4による移動体8の距離測定機能により、壁面13に対して一定距離を維持しながら形状測定部を移動させることが可能である。
【0069】
この塗布作業を完了した後、移動体8を基点20まで戻し、多関節アーム15を塗布した面に位置決めし、投光装置3により蓄光塗料Aに発光パターン(濃度分布又は意図的なパターン)を投光し、発光させる。
【0070】
この発光パターンを、撮像装置4により撮影し、得られた撮像画像の特徴点を画像処理装置5で分析し、それぞれの同一ポイントの3次元の位置を三角測量法より求め、壁面13の2D/3Dデータをデータ生成ソフト部6で作成する。
【0071】
この2D/3Dデータより、多関節アーム15から壁面13までの距離、姿勢を計算し、多関節アーム15と壁面13との位置、姿勢が一定となるように移動体8と多関節アーム15を移動制御する。
【0072】
多関節アーム15が一定速度で一定距離移動する毎にこの作業が行われ、この作業は、最終的に多関節アームが塗布終了点(本例では特定のネジ穴位置22)まで到達するまでに繰り返される。
【0073】
本実施形態によれば、各撮像画像の特徴点の間の距離を三角測量計算により求めることができ、移動体8や多関節アーム15が移動又は動作中でも、撮像画像は移動しないので、累積誤差がない距離、形状計測を行うことができる。
【0074】
また、第3の実施形態で説明した液晶プロジェクタ3-3を用いた場合等は、バーコード状の発光パターンを得ることができるようになり、絶対位置式の磁気エンコーダの磁気パターンのような効果を得ることも可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、蓄光塗料を開始点から最終点まで塗布した後、開始点に戻って発光パターンを形成しているが、第1~第8の実施形態で説明したように、塗布作業と同時に発光パターンを形成、撮像するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、形状測定部Dの撮像装置4として2台のカメラからなる立体カメラを用いているが、これに限定されず、撮像装置4として1台のカメラを用い、当該カメラの視野範囲中の特定の1点の距離を非接触にて計測可能な光学系式距離センサを搭載することで、撮像装置4と撮影面までの距離が特定できるため、立体カメラによる三角測量法と同等の距離、形状計測が可能である。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
A…蓄光塗料、B、B1、B2、C1~C4、D…形状測定部、1…距離、形状計測装置、2…塗布装置、3…投光装置、3-1…フラッシュ装置、3-2…光源、3-3…液晶プロジェクタ、4…撮像装置、5…画像処理装置、6…データ生成ソフト部、7…乾燥装置、8…移動体、9…車輪、10…制御装置、11…色フィルタ、12…走行面、13…壁面、15…多関節アーム、17…クローラ、18…エンドエフェクタ
図1
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