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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】非破壊検査方法及び非破壊検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20230313BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230313BHJP
   B61F 5/52 20060101ALI20230313BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
G01M17/08
G01H17/00 C
B61F5/52
B61L25/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019226708
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021096122
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一雄
(72)【発明者】
【氏名】高安 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】碓井 隆
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 功
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174180(JP,A)
【文献】特開平05-184002(JP,A)
【文献】特開平05-281096(JP,A)
【文献】特開2018-007336(JP,A)
【文献】特開昭60-197460(JP,A)
【文献】特開2013-035536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 -17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を支持する台車に設置された複数のセンサが、前記車体と前記台車との間に挿入された持上げ部材により前記車体を昇降させるときに発生する弾性波を検出するステップと、
評価装置が、前記複数のセンサにより検出された弾性波に基づいて、前記台車の欠陥の位置を推定するステップと、
を含む非破壊検査方法。
【請求項2】
前記推定するステップは、前記複数のセンサにより検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発信源分布を導出し、前記発信源分布から前記台車の欠陥の位置を推定する、
請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記車体を昇降させるときの前記持上げ部材による荷重範囲は、前記台車の弾性変形範囲内である、
請求項1又は2に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
第1の荷重範囲により発生する前記弾性波の最大振幅が閾値以下の場合、前記第1の荷重範囲とは異なる第2の荷重範囲で前記持上げ部材が、前記車体を昇降させるステップと、
前記弾性波の最大振幅が閾値より大きい場合、前記評価装置が、前記弾性波に基づいて、前記台車の欠陥の位置を推定することを決定するステップと、
を更に含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項5】
前記持上げ部材が、複数の異なる荷重範囲で前記車体を昇降させ、第1の荷重範囲により発生する前記弾性波の最大振幅が閾値より大きい場合、前記第1の荷重範囲で更に所定の追加回数、前記車体を昇降させるステップ、
を更に含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項6】
前記複数のセンサは、前記台車の台車枠の溶接線の上、又は溶接線から第1の距離の範囲内に設置される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項7】
前記複数のセンサは、前記台車の台車枠のボルト接合部から第2の距離の範囲外に設置される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項8】
車体を支持する台車から、持上げ部材により前記車体を昇降させるときに発生する弾性波を検知する複数のセンサと、
前記複数のセンサにより検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発信源分布を導出する標定部と、
前記発信源分布から前記台車の欠陥の位置を推定する評価部と、
を備える非破壊検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は非破壊検査方法及び非破壊検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材などにより構成される構造物の、疲労き裂などによる損傷の発生が社会課題となっており、損傷の発生を重大な状況に陥る前に検知する予兆検知の方法が広く求められている。例えば、鉄道用台車の疲労き裂などによる損傷の発生を重大な状況に陥る前に検知する予兆検知の方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-174180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、欠陥の位置を推定する検査の検査時間をより短縮することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の非破壊検査方法は、車体を支持する台車に設置された複数のセンサが、前記車体と前記台車との間に挿入された持上げ部材により前記車体を昇降させるときに発生する弾性波を検出するステップと、評価装置が、前記複数のセンサにより検出された弾性波に基づいて、前記台車の欠陥の位置を推定するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】前方から見た鉄道車両の例を示す概略図。
図2】上方から見た台車の例を示す概略図。
図3】実施形態の側梁の構造の例を説明するための図。
図4】実施形態の非破壊検査方法の例を示す概略図。
図5】実施形態のジャッキ及びセンサの配置例を示す図。
図6】実施形態の非破壊検査システムの機能構成の例を示す図。
図7】実施形態のAE震源密度分布(発信源分布)の例を示す図。
図8】実施形態の非破壊検査方法の例を示すフローチャート。
図9】実施形態の非破壊検査システムの評価装置のハードウェア構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、非破壊検査方法及び非破壊検査システムの実施形態を詳細に説明する。
【0008】
実施形態の非破壊検査方法では、損傷としての内部き裂の発生や進展、又はき裂界面のこすれに伴い発生する弾性波(アコースティック・エミッション:AE)を、高感度センサ(AEセンサ)により検出する。高感度センサは、物理量を検知するセンサであればよく、例えばAE(AcousticEmission:アコースティック・エミッション)センサ以外にも、加速度センサ、マイク及び温度センサ等であってもよく、物理量を検知することができるセンサであれば他のセンサであってもよい。センサは、検知した物理量を電気信号に変換する。
【0009】
AE信号は、目視等で確認可能な規模に至る前のき裂を兆候として検出することが可能であるため、AE信号は材料の健全性を表す指標として有用である。そのためAE方式によって構造物の劣化の予兆を検出する技術の研究が盛んに行われている。特に石油タンクの腐食診断、及び、機械装置の製造工程等においては、欧米を中心にAE方式の検出技術が幅広く使用され、またAE方式の検出技術の標準化も行われている。
【0010】
以下の実施形態では、貨物あるいは旅客を輸送する鉄道車両の台車を検査する場合を例にして説明する。
【0011】
図1は、前方から見た鉄道車両100の例を示す概略図である。図2は、上方から見た台車1の例を示す概略図である。台車1は車体2の荷重を支え、かつ、駆動力及びブレーキ力を伝達する走行装置である。台車1は、台車枠3、車軸4a、車輪4b、1次サスペンション5、2次サスペンション6、モータ7、ギヤ8及びブレーキ9を備える。
【0012】
台車枠3は台車1の構造強度を決める重要部品であり、台車1の進行方向に沿って2本の側梁(がわばり)10が存在し、2本の側梁10を結合するため直交方向に横梁(よこばり)11が配置される。特に、側梁10は車輪4bから伝わった走行外乱を直に受けるため、破損リスクの高い部品である。側梁10自体はプレス加工された鋼板同士を溶接して組み立てられるが、仮に溶接部12に欠陥が生じた場合には走行中徐々に成長して全体の破損に至る恐れがあるため、欠陥の早期の検出が求められる。
【0013】
1次サスペンション5は、台車枠3と輪軸(車軸4aと車輪4bを合わせた部品)との結合部品である。1次サスペンション5には、主にコイルばねが使用される。
【0014】
2次サスペンション6は、車体2と台車枠3との結合部品である。2次サスペンション6には、主に空気ばねが使用される。
【0015】
図3は、実施形態の側梁10の構造の例を説明するための図である。図中の符号12は、溶接線を示す。側梁10の構成要素は、鋼材21、すみ肉板22、裏当て金23、軸ばね座24である。鋼材21の材質は、例えばSM490Yである。軸ばね座24には貫通穴25が設けられている。
【0016】
図4は実施形態の非破壊検査方法の例を示す概略図である。損傷を検知する対象物、図4の場合は台車枠3にセンサ32が設置される。次に、車体2と台車枠3との間にジャッキ31(例えば油圧ジャッキ)が挿入される。次に、ジャッキ31の操作によって載荷部41を上昇させることによって、車体2が持ち上げられる。この際、車体2を持ち上げるための荷重がジャッキ31の支持部42(ジャッキ31と台車枠3との接触面)に負荷として台車枠3に加わる(載荷)。
【0017】
次に、車体2が持ち上げられた状態でジャッキ31が逆方向に操作されることによって、載荷部41が下降し、車体2が降ろされる。この際、車体2を持ち上げるために支持部42に加わっていた負荷が除去される(除荷)。
【0018】
この載荷及び除荷を繰り返すことにより、台車枠3の欠陥、例えば溶接部12に内在したき裂が、こすれたり、進展したりすることにより弾性波(AE)が発生する。そのAEは、センサ32により検知される。実施形態の非破壊検査方法では、この検知した信号を分析することによって欠陥201の位置を特定する。なお、載荷と除荷を繰り返したときに最小荷重と最大荷重で決定される荷重の範囲をここでは荷重範囲と呼ぶ。たとえば、最小荷重0kNと最大荷重5kN、最小荷重0.5kNと最大荷重10kNなどの組み合わせの荷重範囲がある。
【0019】
図5は実施形態のジャッキ31及びセンサ32の配置例を示す図である。センサ32は、き裂等の欠陥を検知する対象である台車1の構成部品、例えば台車枠3に設置される。図5の例では、4つのセンサ32が、台車枠3においてき裂の発生が懸念される領域、例えば台車枠3の溶接線12付近に設置される。なお、センサ32の数は、4つに限らず任意でよい。
【0020】
図5の例では、2本の側梁10の各溶接線12付近に2個ずつセンサ32が設置されている。センサ32の設置位置は欠陥に起因して台車枠3を伝播する弾性波を効率よく検知可能な位置であれば図5に示す位置以外でもよい。
【0021】
例えば、複数のセンサ32は、台車1の台車枠3の溶接線12の上、又は溶接線12から第1の距離の範囲内に設置される。
【0022】
また例えば、複数のセンサ32は、台車1の台車枠3のボルト接合部から第2の距離の範囲外に設置される。これにより、センサ32が、ボルト接合部を介して伝わることによって減衰したAEを検出することを防ぐ。
【0023】
車体2を持ち上げるために台車1に設置されるジャッキ31は、例えば図5に示すように台車枠3の溶接線12付近に設置される。ジャッキ31の挿入位置は、台車枠3に負荷を加えることができる位置であればよく、例えば台車枠3の中央部横梁11付近などでもよい。このような位置に設置されたジャッキ31で車体2が持ち上がることにより台車1に負荷が加えられ、台車1全体がわずかに変形し、前述のように台車枠3の欠陥、例えばき裂201からAEが発生する。実施形態の非破壊検査方法では、発生したAEを複数のセンサ32で検知することで欠陥201の位置を標定する。
【0024】
なお、ジャッキ31で車体2を持ち上げる際に、台車枠3が塑性変形する程度の負荷を加えることは好ましくないため、ジャッキ31による荷重範囲は台車枠3の弾性変形範囲内にとどめることが好ましい。
【0025】
[機能構成の例]
図6は実施形態の非破壊検査システム200の機能構成の例を示す図である。実施形態の非破壊検査システム200は、センサ32-1~32-n(nは2以上の整数)、信号処理部33、及び、評価装置34を備える。評価装置34は、標定部341、評価部342及び表示部343を備える。
【0026】
非破壊検査システム200は、台車1の健全性の評価に用いられる。なお、本実施形態では、鉄道向け台車1を例に説明するが、対象は鉄道向け台車1に限定されない。例えば、対象は、亀裂の発生または進展、あるいは外的衝撃に伴い弾性波が発生する構造物で、上部に設置される副構造物の荷重を支えるものであればどのようなものであってもよい。
【0027】
信号処理部33及び評価装置34は、有線又は無線により通信可能に接続される。なお、以下の説明では、センサ32-1~32-nについて区別しない場合にはセンサ32と記載する。
【0028】
センサ32は、台車1に設置される。例えば、センサ32は、鉄道向け台車1の台車枠3に設置される。センサ32は、圧電素子を有し、台車枠3に伝播する弾性波(AE波)を検出し、検出された弾性波を電圧信号(AE源信号)に変換する。センサ32は、AE信号源に増幅、周波数制限などの処理を施し、当該AE源信号を信号処理部33に入力する。なお、センサ32は、圧電素子を有するものに限らず、固体を伝播する弾性波を検出し、電気信号に変換するものであれば良く、例えば、ピエゾ抵抗素子を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサであっても良い。
【0029】
信号処理部33は、センサ32による処理が施されたAE源信号を受け付けると、当該AE源信号に対して、必要とされるノイズ除去及びパラメータ抽出などの信号処理を行うことによって弾性波に関する情報を含むAE特徴量を抽出する。弾性波に関する情報とは、例えば、AE源信号の振幅、エネルギー、立ち上がり時間、持続時間、周波数及びゼロクロスカウント数などの情報である。
【0030】
信号処理部33は、抽出されたAE特徴量に基づく情報を評価装置34に入力する。AE特徴量に基づく情報には、例えばセンサID、AE検知時刻、AE源信号の振幅、エネルギー、立ち上り時間及び周波数などの情報が含まれる。
【0031】
ここで、AE源信号の振幅は、例えば弾性波の中で最大振幅の値である。エネルギーは、例えば各時点において振幅を二乗したものを時間積分した値である。なお、エネルギーの定義は、上記例に限定されず、例えば波形の包絡線を用いて近似されたものでもよい。立ち上がり時間は、例えば弾性波がゼロ値から予め設定される所定値を超えて立ち上がるまでの時間T1である。持続時間は、例えば弾性波の立ち上がり開始から振幅が予め設定される値よりも小さくなるまでの時間である。周波数は、弾性波の周波数である。ゼロクロスカウント数は、例えばゼロ値を通る基準線を弾性波が横切る回数である。
【0032】
標定部341は、信号処理部33から、AE特徴量に基づく情報を受け付ける。また、標定部341は、台車1に設置されたセンサ32の位置を示す情報(以下、「センサ位置情報」という。)をセンサIDに対応付けて予め保持する。設置位置を示す情報は、例えば台車1の特定位置からの水平方向及び垂直方向の距離などである。標定部341は、AE特徴量に基づく情報(センサID及びAE検知時刻等)と、センサ位置情報とに基づいてAE発生源の位置標定を行う。
【0033】
標定部341は、ある期間分の位置標定結果を用いて、AE震源密度分布(発信源分布)を導出する。AE震源密度分布は、台車で発生した弾性波の発信源が示された分布を表す(後述の図7参照)。標定部341は、導出されたAE震源密度分布を評価部342に入力する。
【0034】
評価部342は、標定部341からAE震源密度分布を受け付け、信号処理部33からAE特徴量に基づく情報を受け付ける。評価部342は、AE震源密度分布と、AE特徴量に基づく情報とに基づいて、台車1の健全性、特にき裂等の欠陥の位置情報を評価する。AE特徴量に基づく情報は、例えばAE信号振幅やエネルギーが用いられる。例えば、AE源信号振幅やエネルギーが所定値以下のデータを除去するなどに用いられ、これにより信頼性の高いデータを得られる。
【0035】
評価部342は、評価部342の処理により得られた評価結果を表示部343に表示させる。
【0036】
表示部343は、例えば液晶ディスプレイ、及び、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部343は、評価部342の制御に従って評価結果を表示する。なお、表示部343は、画像表示装置を評価装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部343は、評価結果を表示するための映像信号を生成し、表示部343と接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0037】
なお、図6の例では、信号処理部33が、例えばエッジコンピュータ等によって、評価装置34の外部に備えられている場合が示されているが、信号処理部33は評価装置34の内部に備えられていてもよい。
【0038】
図7は実施形態のAE震源密度分布(発信源分布)の例を示す図である。図7の例では、簡単のため2つのセンサ32により1次元の位置標定を行なった結果を示す。図7(a)は側梁10の延長方向(x方向)におけるAE震源密度分布を表す。図7(b)は測定対象の側梁10に設置されたセンサ32の位置を表す。図7(b)の例では、センサ32は側梁10の左右端付近にそれぞれ1つずつ(CH1及びCH2)設置されている。
【0039】
図7(a)の例では、CH1及びCH2のセンサ32により検知された信号に基づいた位置標定の結果、側梁10の中央部やや右付近(x=280mm付近)にAE震源密度が高い点が存在する。この点が示唆する側梁10上の位置が、図5(b)に示される欠陥201である。この結果では、側梁10において溶接線12上にき裂が発生しやすいことを加味した上で、溶接線12上の点を欠陥位置として特定している。
【0040】
[非破壊検査方法の例]
図8は実施形態の非破壊検査方法の例を示すフローチャートである。はじめに、き裂等の欠陥を検知する対象の台車1に弾性波を検知するためのセンサ32が複数、設置される(ステップS1)。
【0041】
次に、車体2と台車1の間にジャッキ31が挿入される(ステップS2)。ジャッキ31の載荷部41及び支持部42は、それぞれ車体2と台車1とに必要に応じて治具を介して接触させられ、固定される。
【0042】
次に、センサ32が、弾性波(AE)の計測を開始する(ステップS3)。
【0043】
次に、ジャッキ31による荷重範囲が決定(変更)され(ステップS4)、ジャッキ31が、車体2の上げ下ろしを所定の回数、行う(ステップS5)。具体的には、ジャッキ31が、載荷部41に上昇圧力を加え、車体2を持ち上げる。最大上昇圧力(最大載荷荷重)は台車枠3の弾性変形範囲内の所定圧力までとし、その後、圧力を除去し、車体2を下す。
【0044】
次に、信号処理部33が、十分な数のAEが検知されたか否かを判定する(ステップS6)。信号処理部33が、車体2の上げ下ろしの期間に発生するAEのセンサ32による検知信号を監視し、その後の評価に十分な数のAEを検知できるまで、車体2の上げ下ろしが繰り返される。すなわち、十分な数のAEが検知されていない場合(ステップS6,No)、処理はステップS5に戻る。
【0045】
十分な数のAEが検知された場合(ステップS6,Yes)、信号処理部33が、AEの最大振幅が閾値(例えば60dBμ)より大きいか否かを判定する(ステップS7)。AEの最大振幅が閾値以下の場合(ステップS7,No)、処理はステップS4に戻る。すなわち、第1の荷重範囲とは異なる第2の荷重範囲に変更し、ジャッキ31(持上げ部材)で、車体2を昇降させる。
【0046】
AEの最大振幅が閾値より大きい場合(ステップS7,Yes)、評価装置34が、検知信号の分析を行う(ステップS8)。検知信号の分析では、車体の上げ下ろし期間、すなわち、台車枠3への載荷及び除荷期間に発生したAE信号を用いて、AE源の位置標定が行われる。位置標定に当たっては、評価装置34が、位置標定結果のうち計算結果の信頼性がより高い結果を抽出することが望ましい。例えば、標定部341が、位置標定結果として複数のAE源の分布、及び、AE源の分布に基づくAE源密度分布(正規化されたAE源の分布)を算出し、評価部342が、密度のより高い部分を欠陥201の位置として推定(特定)する。
【0047】
なお、ジャッキ31(持上げ部材)が、複数の異なる荷重範囲で車体2を昇降させ、ある荷重範囲により発生する弾性波の最大振幅が閾値より大きい場合、当該荷重範囲で更に所定の追加回数、車体2を昇降させてもよい。すなわち、より効果の高い荷重範囲によって発生するAEを、センサ32により多く検出させてもよい。
【0048】
最後に、実施形態の非破壊検査システム200の評価装置34のハードウェア構成の例について説明する。
【0049】
[ハードウェア構成の例]
図9は実施形態の非破壊検査システム200の評価装置34のハードウェア構成の例を示す図である。
【0050】
評価装置34は、制御装置301、主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306を備える。制御装置301、主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306は、バス310を介して接続されている。
【0051】
制御装置301は、補助記憶装置303から主記憶装置302に読み出されたプログラムを実行する。制御装置301は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。
【0052】
主記憶装置302は、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)等のメモリである。補助記憶装置303は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び、メモリカード等である。
【0053】
表示装置304は表示情報を表示する。表示装置304は、例えば液晶ディスプレイ等である。入力装置305は、コンピュータを操作するためのインタフェースである。入力装置305は、例えばキーボードやマウス等である。コンピュータがスマートフォン及びタブレット型端末等のスマートデバイスの場合、表示装置304及び入力装置305は、例えばタッチパネルである。通信装置306は、他の装置と通信するためのインタフェースである。
【0054】
コンピュータで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、メモリカード、CD-R及びDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されてコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供される。
【0055】
またコンピュータで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。またコンピュータで実行されるプログラムをダウンロードさせずにインターネット等のネットワーク経由で提供するように構成してもよい。
【0056】
またコンピュータで実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0057】
コンピュータで実行されるプログラムは、上述の評価装置34の機能構成(機能ブロック)のうち、プログラムによっても実現可能な機能ブロックを含むモジュール構成となっている。当該各機能ブロックは、実際のハードウェアとしては、制御装置301が記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、上記各機能ブロックが主記憶装置302上にロードされる。すなわち上記各機能ブロックは主記憶装置302上に生成される。
【0058】
なお上述した各機能ブロックの一部又は全部をソフトウェアにより実現せずに、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよい。例えば、評価装置34の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0059】
また複数のプロセッサを用いて各機能を実現する場合、各プロセッサは、各機能のうち1つを実現してもよいし、各機能のうち2つ以上を実現してもよい。
【0060】
また評価装置34を実現するコンピュータの動作形態は任意でよい。例えば、評価装置34を1台のコンピュータにより実現してもよい。また例えば、評価装置34を、ネットワーク上のクラウドシステムとして動作させてもよい。
【0061】
以上、説明したように、実施形態の非破壊検査方法では、車体2を支持する台車1に設置された複数のセンサ32が、車体2と台車1との間に挿入された持上げ部材(ジャッキ31)により車体2を昇降させるときに発生する弾性波を検出するステップと、評価装置34が、複数のセンサ32により検出された弾性波に基づいて、台車1の欠陥の位置を推定するステップと、を含む。
【0062】
例えば従来は、鉄道用台車の疲労き裂は超音波探傷により検出することが試みられているが、検査対象の下地処理に時間がかかることや対象物をプローブにより走査する必要があった。
【0063】
上述の実施形態の非破壊検査方法によれば、欠陥201の位置を推定する検査の検査時間をより短縮することができる。例えば、検査対象の下地処理が必要な場合は、センサ32の設置位置に施せばよく、プローブにより検査対象を走査する場合に比べて下地処理にかかる時間を短縮することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 台車
2 車体
3 台車枠
4a 車軸
4b 車輪
5 1次サスペンション
6 2次サスペンション
7 モータ
8 ギヤ
9 ブレーキ
10 側梁
11 横梁
12 溶接線
21 溝形鋼板
22 すみ肉板
23 裏当て金
24 鍛造部品
25 スロット溶接用貫通穴
31 ジャッキ
32 センサ
33 信号処理部
34 評価装置
41 載荷部
42 支持部
100 鉄道車両
200 非破壊検査システム
201 欠陥
301 制御装置
302 主記憶装置
303 補助記憶装置
304 表示装置
305 入力装置
306 通信装置
310 バス
341 標定部
342 評価部
343 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9