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特許7242534腫瘍選択的なTATAボックスおよびCAATボックスの変異体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】腫瘍選択的なTATAボックスおよびCAATボックスの変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20230313BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230313BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/11
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/02
A61K35/761
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019541082
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018016025
(87)【国際公開番号】W WO2018140970
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】62/452,075
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518246958
【氏名又は名称】エピセントアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】リード,トニー アール.
(72)【発明者】
【氏名】オロンスキー,ブライアン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘジラン,ファラー
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,クリストファー
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519014(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076374(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/008976(WO,A1)
【文献】半田 宏,アデノウイルス転写の機構,ウイルス,1987年,Vol. 37(2),pp. 229-240
【文献】小澤 敬也,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる遺伝子治療,ウイルス,2003年,Vol. 53(2),pp. 163-170
【文献】西山 幸廣 ほか,単純ヘルペスウイルスを利用した癌に対するウイルス療法,ウイルス,2007年,Vol. 57(1),pp. 57-66
【文献】Xing L et al.,E1A promoter of bovine adenovirus type 3,J. Gen. Virol.,2006年,Vol. 87(12),pp. 3539-3544
【文献】Hedjran, F. et al.,Deletion analysis of Ad5 Ela transcriptional control region: impact on tumor-selective expression of Ela and Elb,CANCER GENE THERAPY,2011年,Vol. 18,pp. 717 - 723
【文献】Hearing, P. et al.,The adenovirus type 5 E1A transcriptional control region contains a duplicated enhancer element,Cell,1983年,Vol. 33(3),pp. 695 -703
【文献】He, T. C. et al.,A simplified system for generating recombinant adenoviruses,Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.,1998年,Vol. 95(5),pp. 2509-2514
【文献】Yamamoto, M. et al.,Transcription initiation activity of adenovirus left-end sequence in adenovirus vectors with E1 deleted,J. Virol.,2003年,Vol. 77(2),pp. 1633-1637
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーター、ここで該改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、細胞において遺伝子の選択的発現を可能にする、または
(ii)遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーター(i)および改変されたCAATボックス系プロモーター、ここで該改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、細胞において遺伝子の選択的発現を可能にする、
を含む、組み換えアデノウイルスであって、該改変されたTATAボックス系プロモーターがE1aプロモーターであり、該改変されたCAATボックス系プロモーターが、E1aプロモーターであり、改変されたTATAボックス系プロモーターまたはCAATボックス系プロモーターに含まれる改変が、別の機能性プロモーター配列の付加または別の機能性プロモーター配列による置換を含まず、該組み換えアデノウイルスが、細胞において複製し、該組み換えアデノウイルスが、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、組み換えアデノウイルス。
【請求項2】
組み換えアデノウイルスが、組み換えアデノウイルス5型(Ad5)である、請求項1記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項3】
i)改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変が全TATAボックスの欠失を含む、および/または
ii)改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変が全CAATボックスの欠失を含む、
請求項1または2記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項4】
i)アデノウイルスが、E1aプロモーターの-27~-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む;
ii)アデノウイルスが、Ad5ゲノム(配列番号:8)の472~475に対応するヌクレオチドの欠失を含む;
iii)アデノウイルスが、配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)および/またはTATTCCCG(配列番号:13)を含むアデノウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む;
iv)アデノウイルスが、E1aプロモーターの-76~-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む;
v)アデノウイルスが、Ad5ゲノム(配列番号:8)の423~431に対応するヌクレオチドの欠失を含む;
vi)アデノウイルスが、配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)を含むアデノウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む;および/または
vii)アデノウイルスが、Ad35ゲノム(配列番号:24)の477~484に対応するヌクレオチドの欠失を含む、
請求項1~3いずれか一項記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項5】
組み換えアデノウイルスが、
i)非増殖停止細胞において選択的に複製する、
ii)細胞において細胞溶解活性を選択的に有する、および/または
iii)非増殖停止細胞において細胞溶解活性を選択的に有する、
請求項1~4いずれか一項記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項6】
組み換えアデノウイルスが、
i)細胞においてE1aおよび/またはE1bを選択的に発現する、および/または
ii)非増殖停止細胞においてE1aおよび/またはE1bを選択的に発現する、
請求項2~5いずれか一項記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項7】
細胞が、内細胞、上皮細胞、線維芽細胞および/または免疫細胞である、請求項1~6いずれか一項記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項8】
請求項1~7いずれか一項記載の組み換えアデノウイルスおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
癌の治療を必要とする被験体に、該組み換えアデノウイルスの有効量を投与して、癌を治療する工程を含む、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法に使用するための請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌が、肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌および甲状腺癌から選択される、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
組み換えアデノウイルスの有効量が102~1015プラーク形成単位(pfu)である、請求項9または10記載の医薬組成物。
【請求項12】
改変されたE1aプロモーターが機能性TATAボックスを欠き、細胞において遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたE1aプロモーターを改変する工程、および/または該E1aプロモーターが機能性CAATボックスを欠き、細胞において遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結された該E1aプロモーターを改変する工程を含む、腫瘍崩壊性アデノウイルスを作り変える方法。
【請求項13】
配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22および配列番号:23から選択されるヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項14】
配列番号:3のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項15】
請求項13または14記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項16】
(a) 請求項15記載の宿主細胞を、組み換えアデノウイルスを産生する条件下で増殖させる工程;および
(b) 組み換えアデノウイルスを精製する工程
を含む、組み換えアデノウイルスを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本願は、その全体において参照により本明細書に援用される2017年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/452,075号の利益およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、分子生物学およびウイルス学、特に過増殖および/または非増殖停止(non-growth arrested)細胞に優先的に感染する改変されたウイルスである。
【背景技術】
【0003】
背景
癌を引き起こす基礎になる分子機構の広い知識に関わらず、ほとんどの進行した癌は、現在の化学療法および放射線プロトコルでは不治のままである。腫瘍崩壊性ウイルスは、種々の悪性疾患についての現在の標準的な治療を有意に増加させる可能性を有する基盤技術として明らかになっている(Kumar, S. et al. (2008) CURRENT OPINION IN MOLECULAR THERAPEUTICS 10(4):371-379; Kim, D. (2001) EXPERT OPINION ON BIOLOGICAL THERAPY 1(3):525-538; Kim D. (2000) ONCOGENE 19(56):6660-6669)。これらのウイルスは、感染-再生(reproduction)-溶解の連鎖反応により悪性細胞を直接的に破壊するだけでなく、抗腫瘍免疫を間接的に誘導もする腫瘍崩壊性剤としての将来性を示している。これらの免疫刺激特性は、ウイルスが複製するごとにコピーされて発現される治療的トランスジーンの挿入により高められる。
【0004】
以前に開発された腫瘍崩壊性ウイルスとしては、正常細胞においては転写的に弱められるが癌細胞においては転写的に活性であるTAV-255と称される腫瘍崩壊性血清型5アデノウイルス(Ad5)が挙げられる(PCT公開公報WO2010/101921参照)。TAV-255ベクターがこの腫瘍選択性を達成する機構は、特異的なDNA配列への結合を介してウイルスが宿主細胞に侵入した後に転写される最初期遺伝子であるE1aのアデノウイルス発現を制御するタンパク質である転写因子Pea3およびE2Fについての3つの転写因子(TF)結合部位の標的化された欠失を介すると考えられる。
【0005】
今日までの努力にかかわらず、特に、ヒト患者において癌および過増殖障害を治療するために腫瘍選択的複製、ウイルス媒介性溶解および/または治療的トランスジーン発現を示す改善された腫瘍崩壊性ウイルスの必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は部分的に、特定のウイルスプロモーターについて、TATAおよび/またはCAATボックスは、正常な健常細胞において転写を駆動するために必要であるが、癌細胞における活性な転写にとって重要でないという発見に基づく。
【0007】
したがって、一局面において、本発明は、(i)遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーター、ここで該改変されたTATAボックス系プロモーターは機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする;および/または(ii)遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーター、ここで該改変されたCAATボックス系プロモーターは機能性CAATボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする、を含む組み換えウイルスを提供する。
【0008】
別の局面において、本発明は、遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスを提供し、該改変されたTATAボックス系プロモーターは、機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする。
【0009】
別の局面において、本発明は、遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスを提供し、該改変されたCAATボックス系プロモーターは、機能性CAATボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする。
【0010】
前述の組み換えウイルスのいずれかのある態様において、組み換えウイルスは、組換え型のワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、粘液腫ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス(MV)およびニューカッスル病ウイルス(NDV)から選択される。ある態様において、組み換えウイルスは、アデノウイルス、例えば5型アデノウイルス(Ad5)または35型アデノウイルス(Ad35)、例えば5型アデノウイルスである。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターおよび/または改変されたCAATボックス系プロモーターは、初期遺伝子プロモーター、例えばE1aプロモーター、E1bプロモーターまたはE4プロモーター、例えばE1aプロモーターである。
【0011】
前述の組み換えウイルスのいずれかのある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、全TATAボックスの欠失を含む。ある態様において、ウイルスは、それぞれ配列番号:2のヌクレオチド471~474、467~474、454~551および352~551ならびに配列番号:8のヌクレオチド472~475、468~475、455~552および353~552に対応するアデノウイルス5型E1aプロモーターの-27~-24、-31~-24、-44~+54または-146~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0012】
ある態様において、ウイルスは、アデノウイルス5型E1aプロモーターの-29~-26、-33~-26、-44~+52または-148~+52に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、ウイルスは、配列番号:2のヌクレオチド471~475、467~475、446~551および352~551に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は組み換えウイルスを提供し、該ウイルスは、5型アデノウイルスであり、該ウイルスは、それぞれ配列番号:2のヌクレオチド471~474、467~474、454~551および352~551ならびに配列番号:8のヌクレオチド472~475、468~475、455~552および353~552に対応するアデノウイルス5型E1aプロモーターの-27~-24、-31~-24、-44~+54または-146~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0014】
別の局面において、本発明は組み換えウイルスを提供し、該ウイルスは、5型アデノウイルスであり、該ウイルスは、アデノウイルス5型E1aプロモーターの-29~-26、-33~-26、-44~+52もしくは-148~+52に対応するヌクレオチドの欠失または配列番号:2のヌクレオチド471~475、467~475、446~551および352~551に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0015】
別の局面において、本発明は組み換えウイルスを提供し、該ウイルスは、5型アデノウイルスであり、該ウイルスは、ポリヌクレオチド欠失を含み、該欠失は、配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)またはTATTCCCG(配列番号:13)を含む組換え5型アデノウイルスを生じ、該配列は、2つのポリヌクレオチド配列を連結することにより生じ、該2つの配列は、そうでなければ欠失したポリヌクレオチド配列に隣接する。
【0016】
前述の組み換えウイルスのいずれかのある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、全CAATボックスの欠失を含む。ある態様において、ウイルスは、配列番号:2のヌクレオチド422~430および配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応するアデノウイルス5型E1aプロモーターの-76~-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0017】
別の局面において、本発明は組み換えウイルスを提供し、該ウイルスは、5型アデノウイルスであり、該ウイルスは、配列番号:2のヌクレオチド422~430および配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応するアデノウイルス5型E1aプロモーターの-76~-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0018】
前述の組み換えウイルスのいずれかのある態様において、ウイルスは、配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22もしくは配列番号:23のヌクレオチド配列または配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22もしくは配列番号:23に対して80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0019】
別の局面において、本発明は組み換えウイルスを提供し、該ウイルスは、5型アデノウイルスであり、該ウイルスは、ポリヌクレオチド欠失を含み、該欠失は、配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)を含む組換え5型アデノウイルスを生じ、該配列は、2つのポリヌクレオチド配列を連結することにより生じ、該2つの配列は、そうでなければ欠失したポリヌクレオチド配列に隣接する。
【0020】
前述の組み換えウイルスのいずれかのある態様において、ウイルスは、Ad35ゲノムの477~484に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0021】
ある態様において、前述の組み換えウイルスのいずれかは、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列をさらに含み得る。治療的トランスジーンは、治療的ポリペプチド、例えばアポトーシス剤、抗体、CTL応答性ペプチド、サイトカイン、細胞溶解剤、細胞傷害剤、酵素、免疫応答を誘発するために腫瘍細胞の表面上に発現される異種抗原、免疫刺激または免疫調節剤、インターフェロン、溶解性ペプチド、癌タンパク質、細胞死をもたらすプロセスを触媒するポリペプチド、体細胞における遺伝的欠陥を補うポリペプチド、腫瘍サプレッサータンパク質、ワクチン抗原、およびそれらの任意の組合せをコードし得る。治療的トランスジーンは、治療的核酸、例えばアンチセンスRNAまたはリボザイムをコードし得る。ある態様において、治療的トランスジーンは、アセチルコリン、抗PD-1抗体重鎖または軽鎖、抗PD-L1抗体重鎖または軽鎖、BORIS/CTCFL、CD19、CD20、CD80、CD86、CD137L、CD154、DKK1/Wnt、ICAM-1、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-17、IL-23、IL-23A/p19、インターフェロンγ、TGF-β、TGF-βトラップ、FGF、IL-24、IL-27、IL-35、MAGE、NY-ESO-1、p53およびチミジンキナーゼから選択される。ある態様において、治療的トランスジーンはTGF-βトラップである。ある態様において、組み換えウイルスは、E1b-19KおよびE1b-55K開始部位を含み、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列は、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に挿入される。
【0022】
ある態様において、前述の組み換えウイルスのいずれかは、少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能性部分の欠失を含み得る。
【0023】
ある態様において、前述の組み換えウイルスのいずれかは、過増殖細胞および/または非増殖停止細胞において選択的に複製し得る。ある態様において、前述の組み換えウイルスのいずれかは、過増殖細胞および/または非増殖停止細胞においてE1a、E1bおよび/または治療的トランスジーンを選択的に発現し得る。ある態様において、前述の組み換えウイルスのいずれかは、過増殖細胞および/または非増殖停止細胞において細胞溶解活性を選択的に有し得る。
【0024】
過増殖および/または非増殖停止細胞は、癌細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞および/または免疫細胞であり得る。過増殖および/または非増殖停止細胞は、癌細胞、例えば肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌また甲状腺癌の細胞であり得る。
【0025】
別の局面において、本発明は、過増殖および/または非増殖停止細胞においてウイルスの選択的な発現を可能にする任意の改変されたかまたは欠失されたウイルス制御配列を含む組み換えウイルスを提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、前述の組み換えウイルスの任意の1つまたは組合せおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
別の局面において、本発明は、被験体において過増殖疾患を治療する方法を提供する。該方法は、被験体に、本明細書に記載される組み換えウイルスの有効量を投与して、被験体における過増殖疾患を治療する工程を含む。ある態様において、過増殖疾患は、癌、アテローム硬化症、関節リウマチ、乾癬、狼瘡、特発性肺線維症、強皮症肺高血圧(sclerodermapulmonary hypertension)、喘息、腎臓線維症、COPD、嚢胞性線維症、DIP、UIP、黄斑変性、再狭窄、網膜症、過増殖線維芽細胞障害、強皮症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性細小血管症症候群、移植片拒絶、糸球体症および肝硬変から選択される。
【0028】
ある態様において、過増殖疾患は癌である。ある態様において、癌は、肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌および甲状腺癌から選択される。
【0029】
別の局面において、本発明は、被験体において腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、被験体に、本明細書に記載される組み換えウイルスの有効量を投与して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む。
【0030】
別の局面において、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、該細胞を、本明細書に記載される組み換えウイルスの有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む。
【0031】
前述の方法のそれぞれにおいて、組み換えウイルスは、例えば手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与され得る。前述の方法のそれぞれにおいて、組み換えウイルスの有効量は、例えば102~1015プラーク形成単位(pfu)を含み得る。前述の方法のそれぞれにおいて、被験体は、例えばヒト、例えば小児のヒトまたは動物であり得る。
【0032】
前述の方法のそれぞれにおいて、組み換えウイルスの有効量は、例えば被験体における抗原に対する免疫応答を測定することにより同定され得る。ある態様において、抗原に対する免疫応答は、被験体に、被験体の皮膚上の注射部位で抗原を注射し、注射部位での硬変のサイズを測定することにより測定される。
【0033】
別の局面において、本発明は、標的細胞において治療的トランスジーンを発現させる方法を提供する。該方法は、細胞を、本明細書に記載される組み換えウイルスの有効量に暴露して、標的トランスジーンを発現させる工程を含む。
【0034】
別の局面において、本発明は、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法を提供する。該方法は、改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルスTATAボックス系プロモーターを改変する工程を含む。
【0035】
別の局面において、本発明は、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法を提供する。該方法は、改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルスCAATボックス系プロモーターを改変する工程を含む。
【0036】
別の局面において、本発明は、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法を提供する。該方法は、改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルスTATAボックス系プロモーターを改変する工程、および/または改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルスCAATボックス系プロモーターを改変する工程を含む。
【0037】
別の局面において、本発明は、配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22もしくは配列番号:23のヌクレオチド配列、または配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22もしくは配列番号:23に対して80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する配列を含む単離された核酸を提供する。ある態様において、該単離された核酸は、配列番号:4のヌクレオチド配列を含む。本発明は、前述の核酸の1つ以上を含む宿主細胞を提供する。
【0038】
別の局面において、本発明は、組み換えウイルスを作製する方法を提供する。該方法は、(a)前述の宿主細胞の1つ以上を、該宿主細胞が組み換えウイルスを生じる条件下で増殖させる工程;および(b)組み換えウイルスを精製する工程を含む。
【0039】
本発明のこれらのおよび他の局面および利点は、以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図面の説明
本発明は、以下の図面を参照してより完全に理解され得る。
図1-1】図1Aは、E1a遺伝子の開始コドンまでのAd-Δ350(TATAボックスとCAATボックスの両方の欠失を含む)の5'末端のヌクレオチド配列を示す。野生型アデノウイルス配列からの200ヌクレオチド欠失の部位をハイフンで記す。図1Bは、E1a遺伝子の開始コドンまでのAd-TATAの5'末端のヌクレオチド配列を示す。野生型アデノウイルス配列からの8ヌクレオチド欠失の部位をハイフンで記す。図1Cは、E1a遺伝子の開始コドンまでのAd-CAATの5'末端のヌクレオチド配列を示す。野生型アデノウイルス配列からの9ヌクレオチド欠失の部位をハイフンで記す。図1Dは、E1a遺伝子の開始コドンまでのAd-CAAT-TATAの5'末端のヌクレオチド配列を示す。野生型アデノウイルス配列からの9ヌクレオチドおよび8ヌクレオチド欠失の部位をハイフンで記す。
図1-2】図1Eは、E1a遺伝子の開始コドンまでのAd-CAAT-mTATAの5'末端のヌクレオチド配列を示す。野生型アデノウイルス配列からの9ヌクレオチドおよび4ヌクレオチド欠失の部位をハイフンで記す。図1Fは、E1a遺伝子の開始コドンまでの野生型Ad5の5'末端のヌクレオチド配列を示す。CAATボックス(GGTCAAAGT)およびTATAボックス(TATTTATA)をボックスで示す。
図2図2Aは、Ad-Δ350またはAd-TAV-255での感染後の示された時間での癌性Panc-1細胞におけるE1a発現レベルを示すウエスタンブロットを示す。図2Bは、Ad-Δ350またはAd-TAV-255での感染後の示された時間での非癌性WI-38細胞におけるE1a発現レベルを示すウエスタンブロットを示す。Lはラダーを示し、CNは非感染対照を示す。
図3図3Aは、Ad-Δ350またはAd-TAV-255での3または5の感染多重度(multiplicity of infection)(MOI)での感染後72時間の癌性Panc-1細胞におけるE1a発現レベルを示すウエスタンブロットを示す。図3Bは、Ad-Δ350またはAd-TAV-255での3または5の感染多重度(MOI)での感染後72時間の癌性A549細胞におけるE1a発現レベルを示すウエスタンブロットを示す。Lはラダーを示し、CNは非感染対照を示す。
図4図4Aは、示されたMOIでのAd-Δ350での感染後の示された時点での癌性のHCT116細胞、Panc-1細胞およびA549細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。図4Bは、示されたMOIでのAd-Δ350またはAd-TAV-255での感染後10日の非癌性のMRC5細胞およびWI38細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図5図5は、非感染対照としてのおよび5のMOIでのAd-CAATまたはAd-CAAT-mTATAでの感染の3日後の癌性のA549、Panc1、HCT116およびHep3b細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図6図6は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の3日後の癌性のADS-12、ASPC1、HT-29およびHep3b細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図7図7は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の4日後の癌性のADS-12、ASPC1、HT-29およびHep3b細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図8図8は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の3日後の癌性のPanc1、A549、MeWoおよびHCT-116細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図9図9は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の4日後の癌性のPanc1、A549、MeWoおよびHCT-116細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図10図10は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の5日後の癌性のA549、HCT116、Hep3bおよびPanc1細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図11図11は、非感染対照としてのならびに5のMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の5日後の癌性のMeWo、HT29、ADS12およびASPC細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図12図12は、非感染対照としてのならびに示されたMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の4日後の非癌性のWI38細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図13図13は、非感染対照としてのならびに示されたMOIでのAd-TATA、Ad-CAAT、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kでの感染の6日後の非癌性のWI38細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。
図14図14は、示されたMOIでのAd-Δ350-Δ19kでの感染の5日後の癌性のPanc-1細胞、A549細胞およびADS12細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図15図15は、示されたMOIでのAd-Δ350-GM-CSFでの感染の5日後の癌性のPanc-1細胞、A549細胞およびADS12細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図16図16は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の3日後の癌性のA549細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図17図17は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の5日後の癌性のA549細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図18図18は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の3日後の癌性のHCT116細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図19図19は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の5日後の癌性のHCT116細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図20図20は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の3日後の癌性のHep3b細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図21図21は、5のMOIでのAd-Δ350-Δ19k、Ad-Δ350-mGM-CSFおよびAd-TAV-Δ19kでの感染の5日後の癌性のMeWo細胞のクリスタルバイオレット染色を示す。クリスタルバイオレットは生細胞を青色に染色する。CNは非感染対照を示す。
図22図22は、10のMOIでのAd-Δ350-Δ19kまたはAd-Δ350-mGM-CSFでのA549細胞の感染後のELISAによりアッセイされた場合のmGM-CSF発現を示す棒グラフを示す。
図23図23は、示されたMOIでのAd-Δ350-Δ19kまたはAd-Δ350-mGM-CSFでのADS12細胞の感染後のELISAによりアッセイされた場合のmGM-CSF発現を示す棒グラフを示す。
図24図24は、バッファ、Ad-Δ350-Δ19k(350-19kと記す)またはAd-TAV-Δ19k(TAV-19kと記す)のいずれかの3回の腫瘍内注射により処置された皮下ADS-12腫瘍を保有するマウスの腫瘍体積を示す。図中のそれぞれの線は、個々のマウスの腫瘍体積を示す。
図25図25は、E1Aプロモーター中のTATAボックスの欠失を含むヒトアデノウイルス35型ゲノムをトランスフェクトしたHEK-293細胞から生じるウイルス性細胞変性効果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
転写は、プロモーターと称されるDNAの短い配列へのRNAポリメラーゼII(RNA pol II)の正確な配置を必要とする。プロモーター配列はたびたび、TATAボックスと称され、しばしばG/Cリッチ配列と隣り合い、転写の開始部位の約30塩基対上流に位置する高度に保存されたA/Tリッチ配列を含む。同定可能なTATAボックスを欠く遺伝子は、典型的にハウスキーピング遺伝子であり、転写について転写因子Sp1に依存するが、TATAボックスを含む遺伝子は典型的に、生物学的応答経路に応答する高度に制御された遺伝子である。TATAボックスは、RNA pol IIの起用(recruitment)に必要とされる転写因子IIB(TFIIB)およびTATA結合タンパク質(TBP)により認識される。転写におけるTATAボックスの中心的な役割は、TATAボックスの変異または除去、例えばアデノウイルスE1a遺伝子のプロモーター中のTATAボックスの除去後の、障害されるかまたは不活性化される転写の実験的観察により裏付けられる(Wu et al. (1987) NATURE 326(6112):512-5)。
【0042】
多くのプロモーター中に存在するさらなる配列はCAATボックスである。CAATボックスは典型的に、遺伝子の転写開始部位の約60~100塩基上流に位置し、コンセンサス配列GG(T/C)CAATCTを有する。CAATボックスは、核結合因子(核因子YまたはNF-Yとも称される)およびCCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)により認識される。
【0043】
本発明は部分的に、特定のウイルスプロモーター、例えば5型アデノウイルス(Ad5)E1aプロモーターについて、TATAおよび/またはCAATボックスは、正常な健常細胞においては転写を駆動するために必要であるが、癌性細胞においては活性な転写にとって重要ではないという発見に基づく。したがって、一局面において、本発明は、(i)遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーター、ここで該改変されたTATAボックス系プロモーターは機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする;および/または(ii)遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーター、ここで該改変されたCAATボックス系プロモーターは機能性CAATボックスを欠き、過増殖細胞および/または非増殖停止において遺伝子の選択的な発現を可能にする、を含む組み換えウイルスを提供する。TATAボックス系プロモーターおよびCAATボックス系プロモーターは、同じプロモーター(例えばAd5 E1aプロモーター)であっても、異なるプロモーターであってもよい。
【0044】
別の局面において、本発明は、遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスを提供し、該改変されたTATAボックス系プロモーターは、機能性TATAボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする。
【0045】
別の局面において、本発明は、遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスを提供し、該改変されたCAATボックス系プロモーターは、機能性CAATボックスを欠き、過増殖および/または非増殖停止細胞において遺伝子の選択的な発現を可能にする。
【0046】
別の局面において、本発明は、過増殖および/または非増殖停止細胞においてウイルスの選択的な発現を可能にする、任意の改変されたまたは欠失されたウイルス制御配列を含む組み換えウイルスを提供する。TATAおよびCAATボックス以外の例示的なウイルス制御配列としては、TATAボックスの下流のAd5 E1aイニシエーター配列およびAd5 E1aプロモーター因子が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「TATAボックス」は、TATA結合タンパク質(TBP)に結合し得るヌクレオチド配列をいう。TATAボックスは典型的に、TATAAA(配列番号:1)のコア配列を含むA/Tリッチ8ヌクレオチドセグメントを含み、該8ヌクレオチドセグメントは、G/Cリッチ配列と隣り合うが、TATAボックスは、典型的なTATA配列とはほとんど類似点を有し得ない。
【0048】
本明細書で使用する場合、「改変されたTATAボックス」は、野生型TATAボックス配列に対して1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加を有するTATAボックスをいう。
【0049】
本明細書で使用する場合、「機能性TATAボックス」は、TBPに結合し得るTATAボックス、例えば対応する野生型TATAボックス配列の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%または少なくとも40%のTBP結合活性を有するTATAボックスをいう。本明細書で使用する場合、「非機能性TATAボックス」は、対応する野生型TATAボックス配列の例えば30%未満、20%未満、10%未満または0%のTBP結合活性を有するTATAボックスをいう。TBPがTATAボックスに結合するかどうかを決定するためのアッセイは当該技術分野で公知である。例示的な結合アッセイとしては、電気泳動移動度シフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay)、クロマチン免疫沈降アッセイおよびDNAseフットプリントアッセイが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「TATAボックス系プロモーター」は、TATAボックスを含む任意の遺伝子プロモーターをいう。
【0051】
本明細書で使用する場合、「改変されたTATAボックス系プロモーター」は、1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加により改変されたTATAボックス系プロモーターをいう。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失からなる。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の全TATAボックスの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の全TATAボックスの欠失からなる。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、全TATAボックス系プロモーターの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、全TATAボックス系プロモーターの欠失からなる。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、別の機能性プロモーター配列の付加または該配列による置換を含まない。
【0052】
ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の1~300、1~200、1~100、1~75、1~50、1~25、1~10、1~8、1~4ヌクレオチド、4~300、4~200、4~150、4~100、4~75、4~50、4~25、4~10、4~8、8~300、8~200、8~150、8~100、8~75、8~50、8~25、8~10、10~300、10~200、10~150、10~100、10~75、10~50、10~25、25~300、25~200、25~150、25~100、25~75、25~50、50~300、50~200、50~150、50~100、50~75、75~300、75~200、75~150、75~100、100~300、100~200、100~150、150~300、150~200または200~300ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の約10、約25、約50、約75、約100、約150、約200または約300ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の約200ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の 1、2、3、4、5、6、7、8または10ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型TATAボックス系プロモーター配列の4または8ヌクレオチドの欠失を含む。
【0053】
本明細書で使用する場合、「CAATボックス」は、C/EBPまたはNF-Yタンパク質に結合し得るヌクレオチド配列をいう。CAATボックスは典型的に、GG(T/C)CAATCTのコンセンサス配列を含む。
【0054】
本明細書で使用する場合、「改変されたCAATボックス」は、野生型CAATボックス配列に対して1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加を有するCAATボックスをいう。
【0055】
本明細書で使用する場合、「機能性CAATボックス」は、C/EBPまたはNF-Yタンパク質に結合し得るCAATボックス、例えば対応する野生型CAATボックス配列のC/EBPまたはNF-Y結合活性の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%または少なくとも40%を有するCAATボックスをいう。本明細書で使用する場合、「非機能性CAATボックス」は、対応する野生型CAATボックス配列のC/EBPまたはNF-Y結合活性の例えば30%未満、20%未満、10%未満または0%を有するCAATボックスをいう。C/EBPまたはNF-Yタンパク質がCAATボックスに結合するかどうかを決定するためのアッセイは当該技術分野で公知である。例示的な結合アッセイとしては、電気泳動移動度シフトアッセイ、クロマチン免疫沈降アッセイおよびDNAseフットプリントアッセイが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用する場合、「CAATボックス系プロモーター」は、CAATボックスを含む任意の遺伝子プロモーターをいう。
【0057】
本明細書で使用する場合、「改変されたCAATボックス系プロモーター」は、1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加により改変されたCAATボックス系プロモーターをいう。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失からなる。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の全CAATボックスの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の全CAATボックスの欠失からなる。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、全CAATボックス系プロモーターの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、全CAATボックス系プロモーターの欠失からなる。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、別の機能性プロモーター配列の付加または該配列による置換を含まない。
【0058】
ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の1~300、1~200、1~100、1~75、1~50、1~25、1~10、1~8、1~4ヌクレオチド、4~300、4~200、4~150、4~100、4~75、4~50、4~25、4~10、4~8、8~300、8~200、8~150、8~100、8~75、8~50、8~25、8~10、10~300、10~200、10~150、10~100、10~75、10~50、10~25、25~300、25~200、25~150、25~100、25~75、25~50、50~300、50~200、50~150、50~100、50~75、75~300、75~200、75~150、75~100、100~300、100~200、100~150、150~300、150~200または200~300ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の約10、約25、約50、約75、約100、約150、約200または約300ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の約200ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の1、2、3、4、5、6、7、8または10ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックス系プロモーター配列の9ヌクレオチドの欠失を含む。
【0059】
用語「操作可能に連結された」は、機能的な関係におけるポリヌクレオチド因子の連結をいう。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に配置される場合に「操作可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、遺伝子の転写に影響を及ぼす場合に、遺伝子に操作可能に連結される。操作可能に連結されたヌクレオチド配列は典型的に連続である。しかしながら、プロモーターから数キロベース離れ、イントロン配列が可変的な長さであり得る場合にエンハンサーは一般的に機能するので、いくつかのポリヌクレオチド因子は操作可能に連結され得るが、直接的に隣り合わず、異なる対立遺伝子または染色体からトランスに機能さえもし得る。ある態様において、遺伝子(コーディング領域)は、改変されたTATAボックス-および/または改変されたCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結される。
【0060】
用語「トランスジーン」は、外来性の遺伝子またはポリヌクレオチド配列をいう。用語「治療的トランスジーン」は、ウイルス内でまたはウイルスにより複製および/または発現される場合に標的細胞、体液、組織、臓器、生理学的系または被験体において治療効果を付与するトランスジーンをいう。
【0061】
ある態様において、組み換えウイルスは、非過増殖および/または増殖停止細胞と比較して、過増殖および/または非増殖停止細胞、例えば癌細胞において、改変されたTATAボックス-および/または改変されたCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結された遺伝子の選択的な発現を示す。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞における遺伝子の発現は、過増殖細胞および/または非増殖停止細胞における遺伝子の発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、ウイルスは、非過増殖および/または増殖停止細胞において検出可能な遺伝子の発現を示さない。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞における組み換えウイルスによる改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結された遺伝子の発現は、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを有さない対応するウイルスによる遺伝子の発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、組み換えウイルスは、初期遺伝子、例えばアデノウイルスE1aまたはE1bの選択的発現を示す。遺伝子発現は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば本明細書における実施例2に記載されるようなウエスタンブロットにより決定され得る。
【0062】
ある態様において、過増殖および/または非増殖停止細胞、例えば癌細胞における組み換えウイルスによる改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結された遺伝子、例えば初期遺伝子の選択的な発現は、過増殖および/または非増殖停止細胞においてウイルスの選択的複製を生じる。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞におけるウイルスの複製は、過増殖および/または非増殖停止細胞におけるウイルスの複製の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞におけるウイルスの複製は、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを有さない対応するウイルスの複製の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ウイルス複製は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法により、例えば本明細書における実施例2に記載されるようなウエスタンブロットにより例えばウイルスタンパク質の発現をアッセイすることにより、例えば本明細書における実施例3に記載されるようなクリスタルバイオレット染色によりウイルス媒介性の溶解をアッセイすることにより、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により決定され得る。
【0063】
ある態様において、過増殖および/または非増殖停止細胞、例えば癌細胞における組み換えウイルスによる改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結された遺伝子、例えば初期遺伝子の選択的発現は、過増殖および/または非増殖停止細胞の選択的なウイルス媒介性の溶解(すなわち細胞溶解活性)を生じる。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞のウイルス媒介性の溶解は、過増殖および/または非増殖停止細胞のウイルス媒介性の溶解の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、ウイルスは、非過増殖および/または増殖停止細胞の検出可能なウイルス媒介性の溶解を示さない。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞のウイルス媒介性の溶解は、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを有さない対応するウイルスによる細胞のウイルス媒介性の溶解の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ウイルス媒介性の溶解は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば本明細書における実施例3に記載されるようなクリスタルバイオレット染色により決定され得る。
【0064】
ある態様において、過増殖および/または非増殖停止細胞、例えば癌細胞における組み換えウイルスによる改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに操作可能に連結された遺伝子、例えば初期遺伝子の選択的な発現は、組み換えウイルスによる治療的トランスジーンの選択的な発現を生じる。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞における治療的トランスジーンの発現は、過増殖および/または非増殖停止細胞における治療的トランスジーンの発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、ウイルスは、非過増殖および/または増殖停止細胞における治療的トランスジーンの検出可能な発現を示さない。ある態様において、非過増殖および/または増殖停止細胞における治療的トランスジーンの発現は、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを有さない対応するウイルスによる該細胞における治療的トランスジーンの発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。治療的トランスジーン発現は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば本明細書における実施例4に記載されるようなELISAにより決定され得る。
【0065】
該過増殖および/または非増殖停止細胞は、癌細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞および/または免疫細胞であり得る。該過増殖および/または非増殖停止細胞は、癌細胞、例えば肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌または甲状腺癌の細胞であり得る。さらなる態様において、過増殖細胞は、過増殖障害に由来する。例示的な過増殖障害としては、血管増殖障害(例えば再狭窄、網膜症およびアテローム硬化症)、線維症障害(例えば肝硬変、例えば肝臓肝硬変(hepatic cirrhosis)(肝炎などのウイルス感染に対して続発性であり得る))、糸球体間質障害(例えばヒトの腎疾患、例えば糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性細小血管症症候群、移植片拒絶および糸球体症)、前癌性障害(例えば過形成または異形成)、自己免疫障害、関節リウマチ、乾癬、狼瘡、特発性肺線維症、強皮症肺高血圧、喘息、腎臓線維症、COPD、嚢胞性線維症、DIP、UIP、黄斑変性、過増殖線維芽細胞障害および強皮症が挙げられる。
【0066】
配列同一性は、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法で、例えば公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアを使用して決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるアルゴリズムを使用したBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)分析(Karlin et al., (1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264-2268; Altschul, (1993) J. MOL. EVOL. 36, 290-300; Altschul et al., (1997) NUCLEIC ACIDS RES. 25:3389-3402、参照により援用される)は、配列類似性の検索のために調整される。配列データベースの検索における基本的な問題の議論については、参照により十分に援用されるAltschul et al., (1994) NATURE GENETICS 6:119-129参照。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定し得る。ヒストグラム、ディスクリプション、アラインメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対する適合を報告するための統計的有意さ閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターについての検索パラメーターは、デフォルト設定にある。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al., (1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919、参照により十分に援用される)。4つのblastnパラメーターは以下の通りに調整され得る:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty));wink=1(クエリに沿ってwink.sup.thの位置毎にワードヒットを生じる);およびgapw=16(その範囲内でギャップのあるアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。同等のBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であり得る。検索はまた、NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメーターを使用して実施され得る(例えば:-G、オープンギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11;-E、伸長ギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1;-q、ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティー[整数]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチド適合についての報酬(reward)[整数]:デフォルト=1;-e、予測値[実数]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3;-y、ビットでのblast伸長についてのドロップオフ(X):デフォルト=blastnについて20/その他について7;-X、ギャップのあるアラインメントについてのXドロップオフ値(ビット(in bit)):デフォルト=全てのプログラムについて15であるがblastnには適用可能ではない;および-Z、ギャップのあるアラインメントについての最終Xドロップオフ値(ビット):blastnについて50、その他について25)。ペアワイズタンパク質アラインメントについてのClustalWも使用され得る(デフォルトパラメータは、例えばBlosum62マトリックスおよびギャップオープンペナルティー(Gap Opening Penalty)=10およびギャップ伸長ペナルティー=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列間の最適合比較はDNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0067】
I. ウイルス
用語「ウイルス」は、タンパク質合成機構またはエネルギー生成機構の両方を有さない偏性細胞内寄生体のいずれかをいうために本明細書において使用される。ウイルスのゲノムはRNAまたはDNAであり得る。本発明の実施において有用なウイルスとしては、組換えにより改変されたエンベロープを有するかまたはエンベロープを有さないDNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられ、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科(poxyiridae)またはアデノウイルス科から選択される。組み換えにより改変されたウイルスは、本明細書において「組み換えウイルス」と称される。組み換えウイルスは、例えば複製欠陥、条件的複製もしくは複製コンピテントにするための組み換えDNA技術により改変され得るか、および/または外来性トランスジーンの発現を含むための組み換えDNA技術により改変され得る。親ベクターの特性のそれぞれの有利な因子を利用するキメラウイルスベクター(例えばFeng et al. (1997) NATURE BIOTECHNOLOGY 15:866-870参照)も、本発明の実施に有用であり得る。治療される種由来のウイルスを使用することが一般的に好ましいが、ある例において、好ましい病原体特徴を有する異なる種由来のベクターを使用することが有利であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療のためのウマヘルペスウイルスベクターがPCT公開公報WO98/27216に記載される。該ベクターは、ウマウイルスがヒトに対して病原性でないためにヒトの治療に有用であると記載される。同様に、ヒツジアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避することが主張されるので、ヒトの遺伝子治療に使用され得る。かかるベクターは、PCT公開公報WO97/06826に記載される。
【0068】
本発明の実施に有用なウイルスは、TATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを含む。ある態様において、TATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターは、初期段階遺伝子、例えば宿主細胞への侵入後であるが複製の前に産生され、典型的にゲノムの複製および後期遺伝子の発現を開始するタンパク質をコードする遺伝子のためのプロモーターである。
【0069】
初期遺伝子TATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターを有するウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、単純ヘルペスウイルス(herpes viruses simplex virus)1型、アデノ随伴ウイルス、インフルエンザウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ニューカッスルウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、シンドビスウイルス(SIN)およびセンダイウイルス(SV)が挙げられる。
【0070】
好ましくは、組み換えウイルスはアデノウイルスである。アデノウイルスは、ヌクレオカプシドおよび二本鎖直線状DNAゲノムで構成される、中程度の大きさ(90~100nm)のエンベロープを有さない(ネイキッド)正二十面体ウイルスである。アデノウイルスは、宿主の複製機構を使用して哺乳動物細胞の核内で複製する。用語「アデノウイルス」は、アデノウイルス属(genus Adenoviridiae)の任意のウイルスをいい、限定されないが、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルのアデノウイルス亜属が挙げられる。特に、ヒトアデノウイルスとしてはA~F亜属およびそれらの個々の血清型が挙げられ、個々の血清型およびA~F亜属としては限定されないが、ヒトアデノウイルスの1、2、3、4、4a、5、6、7、8、9、10、11(Ad11aおよびAd11p)、12、13、14、15、16、17、18、19、19a、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34a、35、35p、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48および91型が挙げられる。ヒトアデノウイルスの2、5および35型由来の組み換えウイルスが好ましい。そうではないと記載されない限り、全てのアデノウイルス5型ヌクレオチド番号は、本明細書において配列番号:8に示されるNCBI参照配列AC_000008.1に関連し、全てのアデノウイルス35型ヌクレオチド番号は、本明細書において配列番号:24に示されるNCBI参照配列AC_000019.1に関連する。アデノウイルス5型ゲノムの5'末端をコードする例示的なプラスミドベクター(pXC1)の配列を本明細書中の配列番号:2に示す。
【0071】
アデノウイルス複製サイクルは2つの段階:4つの転写単位E1、E2、E3およびE4が発現される初期段階ならびにウイルスDNA合成の開始後、後期転写産物が主要後期プロモーター(major late promoter)(MLP)から主に発現される際に起こる後期段階を有する。後期メッセージは、ウイルスの構造タンパク質のほとんどをコードする。E1、E2およびE4の遺伝子産物は、転写活性化、細胞形質転換、ウイルスDNA複製およびその他のウイルス機能の原因であり、ウイルス増殖に必要である。
【0072】
ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターはアデノウイルスE1a、E1bまたはE4プロモーターである。ある態様において、改変されたTATAボックス系プロモーターはアデノウイルスE1aプロモーター、例えばAd5 E1aプロモーターである。改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変は、例えば全E1aプロモーターTATAボックスの欠失を含み得、例えばAd5 E1aプロモーターのヌクレオチド-27~-24に対応する欠失を含み得る。ある態様において、ウイルスは、配列番号:2のヌクレオチド471~474、467~474、454~551および352~551ならびに配列番号:8のヌクレオチド472~475、468~475、455~552および353~552のそれぞれに対応するAd5 E1aプロモーターの-27~-24、-31~-24、-44~+54または-146~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、ウイルスは、Ad5 E1aプロモーターの-29~-26、-33~-26、-44~+52または-148~+52に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0073】
ある態様において、ウイルスは、Ad5 E1aプロモーターの約-50~約-10、約-50~約-20、約-50~約-30、約-50~約-40、約-40~約-10、約-40~約-20、約-40~約-30、約-30~約-10、約-30~約-20または約-20~約-10に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0074】
ある態様において、ウイルスは、ポリヌクレオチド欠失を含み、該欠失は、配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)またはTATTCCCG(配列番号:13)を含むウイルスを生じ、該配列は、2つのポリヌクレオチド配列を連結することにより生じ、該2つの配列は、そうでなければ欠失したポリヌクレオチド配列に隣接する。ある態様において、ウイルスは、配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)もしくはTATTCCCG(配列番号:13)またはCTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)もしくはTATTCCCG(配列番号:13)に対して80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0075】
ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターはアデノウイルスE1a、E1bまたはE4のプロモーターである。ある態様において、改変されたCAATボックス系プロモーターはアデノウイルスE1aプロモーター、例えばAd5 E1aプロモーターである。改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変は、例えば全E1aプロモーターCAATボックスの欠失を含み得、例えば配列番号:2のヌクレオチド422~430および配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応するアデノウイルス5型E1aプロモーターのヌクレオチド-76~-68に対応する欠失を含み得る。
【0076】
ある態様において、ウイルスは、Ad5 E1aプロモーターの約-90~約-50、約-90~約-60、約-90~約-70、約-90~約-80、約-80~約-50、約-80~約-60、約-80~約-70、約-70~約-50、約-70~約-60または約-60~約-50に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0077】
ある態様において、ウイルスは、ポリヌクレオチド欠失を含み、該欠失は、配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)を含むウイルスを生じ、該配列は、2つのポリヌクレオチド配列を連結することにより生じ、該2つの配列は、そうでなければ欠失したポリヌクレオチド配列に隣接する。ある態様において、ウイルスは、配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)またはTTCCGTGGCG(配列番号:14)に対して80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくはは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0078】
ある態様において、ウイルスは、Ad5 E1aプロモーターの約-200~約+50、約-175~約+50、約-150~約+50、約-125 約+50、約-100~約+50、約-75~約+50、約-50~約+50、約-25~約+50、約+1~約+50、約+25~約+50、約-200~約+25、約-175~約+25、約-150~約+25、約-125 約+25、約-100~約+25、約-75~約+25、約-50~約+25、約-25~約+25、約+1~約+25、約-200~約+1、約-175~約+1、約-150~約+1、約-125 約+1、約-100~約+1、約-75~約+1、約-50~約+1、約-25~約+1、約-200~約-25、約-175~約-25、約-150~約-25、約-125 約-25、約-100~約-25、約-75~約-25、約-50~約-25、約-200~約-50、約-175~約-50、約-150~約-50、約-125 約-50、約-100~約-50、約-75~約-50、約-200~約-75、約-175~約-75、約-150~約-75、約-125 約-75、約-100~約-75、約-200~約-100、約-175~約-100、約-150~約-100、約-125 約-100、約-200~約-125、約-175~約-125、約-150~約-125、約-200~約-150、約-175~約-150または約-200~約-175に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0079】
ある態様において、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに加えて、ウイルスは、制御配列またはプロモーターに対して1つ以上のさらなる改変を有する。制御配列またはプロモーターに対するさらなる改変は、制御配列またはプロモーターの野生型配列と比較して1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加を含む。さらなる改変は、改変されたTATAボックス-および/またはCAATボックス系プロモーターに隣接し得るかまたは該プロモーターから遠位にあり得る。
【0080】
ある態様において、制御配列またはプロモーターのさらなる改変は、例えば転写因子結合部位の配列の一部を欠失することによりまたは該結合部位に1つの点変異を挿入することにより、転写因子に対する親和性を低減するために、転写因子結合部位の配列の改変を含む。ある態様において、さらなる改変された制御配列は、癌細胞における発現を高めるが、正常細胞における発現を弱める。
【0081】
ある態様において、制御配列またはプロモーターのさらなる改変は、E1a制御配列に対するさらなる改変を含む。E1a制御配列は、Pea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよびPea3 Vと命名される転写因子Pea3に対する5つの結合部位を含み、Pea3 Iは、E1a開始部位に対して最も近位にあるPea3結合部位であり、Pea3 Vは最も遠位にある。E1a制御配列はまた、本明細書でE2F IおよびE2F IIと命名される転写因子E2Fに対する結合部位を含み、E2F Iは、E1a開始部位に対して最も近位にあるE2F結合部位であり、E2F IIはより遠位にある。結合部位はE1a開始部位から以下のように整列される:Pea3 I、E2F I、Pea3 II、E2F II、Pea3 III、Pea3 IVおよびPea3 V。
【0082】
ある態様において、これらの7つの結合部位またはそれらの機能性部分の少なくとも1つが欠失される。「機能性部分」は、欠失された場合に、機能性、例えば結合部位のそのそれぞれの転写因子(Pea3またはE2F)に対する結合親和性を、完全配列に対して例えば少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%だけ低減するかまたは排除さえする結合部位の一部である。ある態様において、1つ以上の結合部位全体が欠失される。ある態様において、1つ以上の結合部位の機能性部分が欠失される。「欠失された結合部位」は、結合部位全体の欠失および機能性部分の欠失の両方を包含する。2つ以上の結合部位が欠失される場合、結合部位全体の欠失と機能性部分の欠失の任意の組合せが使用され得る。
【0083】
ある態様において、少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能性部分が欠失される。欠失されるPea3結合部位はPea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vであり得る。ある態様において、欠失されるPea3結合部位はPea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vである。ある態様において、欠失されるPea3結合部位はPea3 IVおよび/またはPea3 Vである。ある態様において、欠失されるPea3結合部位はPea3 IIおよび/またはPea3 IIIである。ある態様において、欠失されるPea3結合部位はPea3 IIおよびPea3 IIIの両方である。ある態様において、Pea3 I結合部位またはその機能性部分は保持される。
【0084】
ある態様において、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能性部分が欠失される。ある態様において、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能性部分は保持される。ある態様において、保持されたE2F結合部位はE2F Iおよび/またはE2F IIである。ある態様において、保持されたE2F結合部位はE2F IIである。ある態様において、全欠失は本質的に、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vまたはそれらの機能性部分の1つ以上からなる。ある態様において、ウイルスは、以降TAV-255欠失と称するE1a開始部位の-305~-255上流に位置する50塩基対の領域の欠失を有する。ある態様において、ウイルスは、以降TAV-255欠失と称する、例えばAd5ゲノム(配列番号:8)の195~244に対応するE1a開始部位の-304~-255上流に位置する50塩基対の領域の欠失を有する。ある態様において、TAV-255欠失は、配列GGTGTTTTGG(配列番号:11)を含むE1aプロモーターを生じる。
【0085】
開示される組み換えウイルスは、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列を含み得る。治療的トランスジーンは、治療的核酸、例えばアンチセンスRNAまたはリボザイムRNAをコードし得る。治療的トランスジーンは、治療的ペプチドまたはポリペプチド、例えばアポトーシス因子、抗体、CTL応答性ペプチド、サイトカイン、細胞溶解剤、細胞傷害剤、酵素、免疫応答を誘発するために腫瘍細胞の表面上に発現する異種抗原、免疫刺激剤もしくは免疫調節剤、インターフェロン、溶解性ペプチド、癌タンパク質、細胞死を誘導するプロセスを触媒するポリペプチド、体細胞における遺伝的欠陥を補うポリペプチド、腫瘍サプレッサータンパク質、ワクチン抗原またはそれらの任意の組合せをコードし得る。
【0086】
ある態様において、治療的トランスジーンは、アセチルコリン、抗PD-1抗体重鎖または軽鎖、抗PD-L1抗体重鎖または軽鎖、BORIS/CTCFL、CD19、CD20、CD80、CD86、CD137L、CD154、DKK1/Wnt、ICAM-1、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-17、IL-23、IL-23A/p19、インターフェロンγ、TGF-β、TGF-βトラップ、FGF、IL-24、IL-27、IL-35、MAGE、NY-ESO-1、p53およびチミジンキナーゼから選択される治療的ポリペプチドをコードする。ある態様において、治療的トランスジーンはTGF-βトラップである。本発明における使用に適したTGF-βトラップタンパク質は、2017年9月27日に出願された米国特許出願第15/717,199号に記載される。
【0087】
アデノウイルスE1b-19k遺伝子は、主に抗アポトーシス遺伝子として機能し、細胞性抗アポトーシス遺伝子BCL-2のホモログである。子孫ウイルス粒子の成熟の前の宿主細胞死はウイルス複製を制限するので、E1b-19kは、成熟前の細胞死を防ぎ、それにより感染を進行させ成熟ビリオンを生成させるためのElカセットの一部として発現される。したがって、ある態様において、E1b-19K挿入部位を含む組み換えウイルスが提供され、例えばアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位に挿入された治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列を有する。
【0088】
ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位(すなわちE1b-19kの開始コドンをコードする、例えば配列番号:8のヌクレオチド1714~1716に対応するヌクレオチド配列)とE1b-55Kの開始部位(すなわちE1b-55kの開始コドンをコードする、例えば配列番号:8のヌクレオチド2019~2021に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される。明細書および特許請求の範囲を通して、2つの部位の間の挿入、例えば(i)第1の遺伝子(例えばE1b-19k)の開始部位と第2の遺伝子(例えばE1b-55K)の開始部位の間、(ii)第1の遺伝子の開始部位と第2の遺伝子の停止部位の間、(iii)第1の遺伝子の停止部位と第2の遺伝子の開始部位の間または(iv)第1の遺伝子の停止部位と第2の遺伝子の停止部位の間の挿入は、挿入の周囲にある所定の開始部位または停止部位を構成するヌクレオチドの全部または一部が最終的なウイルス中に存在し得るかまたは非存在であり得ることを意味することが理解される。同様に、2つのヌクレオチドの間の挿入は、挿入の周囲にあるヌクレオチドが最終的なウイルス中に存在し得るかまたは非存在であり得ることを意味することが理解される。
【0089】
ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位(すなわちE1b-19kの開始コドンをコードする、例えば配列番号:8のヌクレオチド1714~1716に対応するヌクレオチド配列)とE1b-19Kの停止部位(すなわちE1b-19kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:8のヌクレオチド2242~2244に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305、約100~約300、約100~約250、約100~約200、約100~約150、約150~約305、約150~約300、約150~約250または約150~約200ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、約200ヌクレオチド、例えばE1b-19Kの開始部位に隣接する203ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号:8)のヌクレオチド1714~1916に対応する欠失を含むかまたは治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号:8)の1714に対応するヌクレオチドと1916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある態様において、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列は、CTGACCTC(配列番号:9)とTCACCAGG(配列番号:10)の間に挿入され、例えば組み換えアデノウイルスは、5'~3'の方向で、CTGACCTC(配列番号:9)、治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列およびTCACCAGG(配列番号:10)を含む。CTGACCTC(配列番号:9)およびTCACCAGG(配列番号:10)は、Ad5ゲノム(配列番号:8)内にE1b-19K挿入部位に対する特有の境界配列を画定する。明細書および特許請求の範囲を通して、部位に隣接する欠失、例えば遺伝子の開始部位に隣接する欠失または遺伝子の停止部位に隣接する欠失は、該定義が、所定の開始部位または停止部位を構成するヌクレオチドの全部、一部の欠失を含み得るかまたは該ヌクレオチドを含み得ないことを意味することが理解される。
【0090】
ある態様において、前述のウイルスのいずれかにおいて、組み換えアデノウイルスはさらにE4欠失を含む。ある態様において、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位(すなわちE4-ORF6/7の開始コドンをコードする、例えば配列番号:23のヌクレオチド34075~34077に対応するヌクレオチド配列)と右逆方向末端反復(right inverted terminal repeat) (ITR;例えば配列番号:23のヌクレオチド35836~35938に対応する)の間に配置される。ある態様において、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位とE4-ORF1の開始部位(すなわちE4-ORF1の開始コドンをコードする、例えば配列番号:23のヌクレオチド35524~35526に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される。ある態様において、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位とE4-ORF1の開始部位の間のヌクレオチド配列の欠失を含む。ある態様において、E4欠失は、約500~約2500、約500~約2000、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約2500、約1000~約2000、約1000~約1500、約1500~約2500、約1500~約2000または約2000~約2500ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約250~約1500、約250~約1250、約250~約1000、約250~約750、約250~約500、500~約1500、約500~約1250、約500~約1000、約500~約750、750~約1500、約750~約1250、約750~約1000、約1000~約1500または約1000~約1250ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約1450ヌクレオチドの欠失を含み、例えばE4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約1449ヌクレオチドの欠失を含む。ある態様において、E4欠失は、Ad5ゲノム(配列番号:23)のヌクレオチド34078~35526に対応する欠失を含む。
【0091】
II. ウイルス産生の方法
本発明の組み換えウイルスを産生するための方法は当該技術分野で公知である。典型的に、開示されるウイルスは、感染性ウイルス粒子を産生させるのに適した条件下で、トランスフェクトされたかまたは感染された宿主細胞を培養することを含む従来技術を使用して、適切な宿主細胞株中で産生される。ウイルス遺伝子をコードする核酸をプラスミドに組み込み得、従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入し得る。開示されるウイルスの産生に適した例示的な宿主細胞としては、HeLa、Hela-S3、HEK293、911、A549、HER96またはPER-C6細胞などのヒト細胞株が挙げられる。特定の産生および精製の条件は、使用するウイルスおよび産生系に応じて変化する。アデノウイルスについて、ウイルス粒子の生成のための従来の方法は、その後のシャトルプラスミド(通常アデノウイルスゲノムの小サブセットを含み、任意に、あり得るトランスジーン発現カセットを含む)およびアデノウイルスヘルパープラスミド(全アデノウイルスゲノムのほとんどを含む)のインビボ組換えへと続く共トランスフェクションである。
【0092】
アデノウイルスの生成のための代替的な方法としては、細菌人工染色体(BAC)系、相補的アデノウイルス配列を含む2つのプラスミドを利用するrecA÷細菌株におけるインビボ細菌組換え、および酵母人工染色体(YAC)系の利用が挙げられる。
【0093】
産生後、感染性ウイルス粒子を培養から回収して、任意に精製する。典型的な精製工程としては、プラーク精製、遠心分離、例えば塩化セシウム勾配遠心分離、清澄化、酵素処理、例えばベンゾナーゼまたはプロテアーゼの処理、クロマトグラフィー工程、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたはろ過工程が挙げられ得る。
【0094】
III. 治療組成物および治療の方法
治療的使用のために、組み換えウイルスは、好ましくは薬学的に許容可能な担体と合わされる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を有さず、妥当な利益/リスク比と釣り合ったヒトおよび動物の組織との接触における使用に適切なバッファ、担体および賦形剤を意味する。担体(1つまたは複数)は、製剤の他の成分と適合性であり、レシピエントに対して有害でないという意味において「許容可能である」べきである。薬学的に許容可能な担体としては、医薬投与に適合性であるバッファ、溶媒、分散媒、コーティング、等張および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質についてのかかる媒体および剤の使用は当該技術分野で公知である。
【0095】
本明細書に開示される組み換えウイルスを含む医薬組成物は、単位剤型で存在し得、任意の適切な方法で調製され得る。医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜および直腸投与である。融合タンパク質のための好ましい投与経路はIV注射である。有用な製剤は、医薬の分野で公知の方法により調製され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (Mack Publishing Company, 1990)参照。非経口投与に適した製剤化成分としては、注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファ;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性の調整のための剤が挙げられる。
【0096】
静脈内投与について、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM (BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保存されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。
【0097】
好ましくは、医薬製剤は滅菌されている。滅菌は、任意の適切な方法、例えば滅菌濾過膜を用いた濾過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、濾過滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後に行われ得る。
【0098】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、有益または望ましい結果をもたらすのに十分な活性成分の量(例えば本発明の組み換えウイルスの量)をいう。有効量は1つ以上の投与、適用または用量で投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。
【0099】
ある態様において、活性成分の治療有効量は、0.1mg/kg~100mg/kg、例えば1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~10mg/kgの範囲である。ある態様において、組み換えウイルスの治療有効量は、102~1015プラーク形成単位(pfu)、例えば102~1010、102~105、105~1015、105~1010または1010~1015プラーク形成単位の範囲である。投与量は、治療される疾患または徴候(indication)の型および程度、患者の全体的な健康、抗体のインビボ効力、医薬製剤ならびに投与経路などの変数に依存する。所望の血液レベルまたは組織レベルを迅速に達成するために、初期用量はより高いレベルを超えて増加され得る。代替的に、初期用量は最適よりも小さく、日用量は治療の過程の際に段々に増加され得る。ヒト用量は、例えば0.5mg/kg~20mg/kgで実施するように設計される従来の第I相用量増加試験において最適化され得る。投与頻度は、投与経路、投与量、ウイルスの血清半減期および治療される疾患などの要因に応じて変化し得る。例示的な投与頻度は、1日に1回、1週間に1回および2週間毎に1回である。好ましい投与経路は非経口、例えば静脈内注射である。ウイルス系薬物の製剤化は当該技術分野における通常の技術の範囲内である。ある態様において、組み換えウイルスは凍結乾燥され、次いで投与時に緩衝化食塩水中で再構成される。
【0100】
本明細書に開示される組み換えウイルスは、種々の医学的徴候を治療するために使用され得る。例えば、組み換えウイルスは、種々の過増殖疾患、例えば癌を治療するために使用され得る。過増殖細胞、例えば癌細胞は、癌細胞の増殖を阻害または低減するように組み換えウイルスの治療有効量に暴露される。本発明は、被験体において癌を治療する方法を提供する。該方法は、被験体に、本発明の組み換えウイルスの有効量を単独でまたは別の治療剤と組み合わせてのいずれかで投与して、被験体において癌を治療する工程を含む。ある態様において、被験体への組み換えウイルスの有効量の投与は、該被験体における腫瘍負荷を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%だけ低減する。
【0101】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、被験体、例えばヒトにおける疾患の治療を意味する。これは、(a)疾患を阻害すること、すなわちその進展を止めること;および(b)疾患を軽減すること、すなわち疾患状態の後退を引き起こすことを含む。本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本明細書に記載される方法および組成物により治療される生物をいう。好ましくは、かかる生物としては限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)、およびより好ましくはヒトが挙げられる。
【0102】
癌の例としては、固形腫瘍、軟組織腫瘍、血液の腫瘍および転移性の病変が挙げられる。血液の腫瘍の例としては、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば変形(transformed)CLL、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、毛様細胞性白血病、骨髄異形成症候群(myelodyplastic syndrome)(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫またはリクター症候群(リクター形質転換(Richter's Transformation))が挙げられる。固形腫瘍の例としては悪性疾患、例えば種々の臓器系の肉腫、腺癌および癌腫、例えば頭頸部(咽頭を含む)、甲状腺、肺(小細胞または非小細胞肺癌(NSCLC))、乳房、リンパ系、胃腸(例えば口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、小腸、結腸および直腸、および肛門)、生殖器および尿生殖器管(例えば腎臓、尿路上皮、膀胱、卵巣、子宮、子宮頸、子宮内膜、前立腺、精巣)、CNS(例えば神経またはグリア細胞、例えば神経芽腫または神経膠腫)、または皮膚(例えば黒色腫)を冒すものが挙げられる。
【0103】
ある態様において、癌は、肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌および甲状腺癌から選択される。
【0104】
さらなる例示的な過増殖疾患としては血管増殖障害 (例えば再狭窄、網膜症およびアテローム硬化症)、線維症性障害(肝硬変、例えば肝臓肝硬変(肝炎などのウイルス感染に続発性であり得る))、メサンギウム障害(例えばヒト腎臓疾患、例えば糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性細小血管症症候群、移植片拒絶および糸球体症)、前癌性障害(例えば過形成または異形成)、自己免疫障害、関節リウマチ、乾癬、狼瘡、特発性肺線維症、強皮症肺高血圧、喘息、腎臓線維症、COPD、嚢胞性線維症、DIP、UIP、黄斑変性、過増殖線維芽細胞障害および強皮症が挙げられる。
【0105】
ある態様において、組み換えウイルスは、1つ以上の治療、例えば手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法またはウイルス療法と組み合わせて被験体に投与される。
【0106】
ある態様において、本発明の組み換えウイルスは、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばエルロチニブと組み合わせて投与される。
【0107】
ある態様において、本発明の組み換えウイルスは、チェックポイント阻害剤、例えば抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。例示的な抗PD-1抗体としては、例えばニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck Sharp & Dohme Corp.)、PDR001 (Novartis Pharmaceuticals)およびピジリズマブ(pidilizumab) (CT-011、Cure Tech)が挙げられる。例示的な抗PD-L1抗体としては、例えばアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech)、デュバルマブ(duvalumab) (AstraZeneca)、MEDI4736、アベルマブおよびBMS 936559 (Bristol Myers Squibb Co.)が挙げられる。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせて」投与されるは、被験体の障害による苦痛の過程で、患者に対する治療の効果がある時点で(at a point in time)重複するように、2つ(またはそれ以上)の異なる治療を被験体に送達することを意味することが理解される。ある態様において、1つの治療の送達は、第2の送達が開始された場合に依然として行われているので、投与期間の重複がある。これは本明細書において時々「同時(simultaneous)」または「同時(concurrent)送達」と称される。他の態様において、1つの治療の送達は、他の治療の送達が開始する前に終了する。いずれかの場合のいくつかの態様において、組合せの投与のために治療はより効果的になる。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えばより少ない第2の治療で同等の効果が見られるか、または第2の治療は、第2の治療を第1の治療の非存在下で投与した場合に見られるよりも大きな程度に症状を低減するか、または第1の治療により同様の状況が見られる。ある態様において、送達は、症状または他の障害に関連のあるパラメーターの低減が他の治療の非存在下で1つの治療を送達した場合に観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、全体的に相加的または相加的よりも大きくあり得る。送達は、送達される第1の治療の効果が第2のものを送達する場合に依然として検出可能であるようなものであり得る。
【0109】
ある態様において、組み換えウイルスの有効量は、被験体における抗原に対する免疫応答を測定することにより同定され、および/または被験体を治療する方法は、被験体における抗原に対する免疫応答を測定することをさらに含む。過増殖疾患、例えば癌は免疫抑制により特徴付けられ得、被験体における抗原に対する免疫応答の測定は、被験体における免疫抑制のレベルを示し得る。したがって、被験体における抗原に対する免疫応答の測定は、治療の有効性および/または組み換えウイルスの有効量を示し得る。被験体における抗原に対する免疫応答は、当該技術分野で公知の任意の方法により測定され得る。ある態様において、抗原に対する免疫応答は、被験体に、被験体の皮膚の注射部位で抗原を注射して、注射部位の硬変のサイズまたは炎症の量を測定することにより測定される。ある態様において、抗原に対する免疫応答は、抗原への暴露の際の被験体の細胞からのサイトカイン(例えばインターフェロンγ、IL-4および/またはIL-5)の放出により測定される。
【0110】
明細書を通して、ウイルス、組成物および系が特定の成分を有する、含む(including)または含む(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有する、含む(including)または含む(comprising)と記載される場合、追加的に、記載される成分から本質的になるかまたは記載される成分からなる本発明の組成物、デバイスおよび系があることならびに記載されるプロセス工程から本質的になるかまたは記載されるプロセス工程からなる本発明のプロセスおよび方法があることが企図される。
【0111】
本願において、因子もしくは成分が記載される因子もしくは成分のリストに含まれるおよび/または該リストから選択されるといわれる場合、因子もしくは成分は、記載される因子もしくは成分のいずれか1つであり得るか、または因子もしくは成分は記載される因子もしくは成分の2つ以上からなる群より選択され得ることが理解されるべきである。
【0112】
さらに、本明細書に記載されるウイルス、組成物、系、方法またはプロセスの因子および/または特徴は、本明細書において明示的であるか暗示的であるのいずれにせよ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の方法で組み合され得ることが理解されるべきである。例えば、特定の化合物について参照がなされる場合、該化合物は、文脈からそうではないと理解されない限り、本発明の組成物および/または本発明の方法の種々の態様で使用され得る。すなわち、本願の範囲内で、態様は、明確かつ簡潔な適用が記載および図示されるのを可能にする様式で記載され、示されるが、態様は、本教示および発明(1つまたは複数)から逸脱することなく、種々に組み合され得るかまたは分離され得ることが意図され理解される。例えば、本明細書に記載されかつ示される全ての特徴は、本明細書に記載されかつ示される発明(1つまたは複数)の全ての局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0113】
文脈および使用からそうではないと理解されない限り、語句「の少なくとも1つ」は個々に、該語句の後に記載される物のそれぞれおよび記載される物の2つ以上の種々の組合せを含むことが理解されるべきである。3つ以上の記載される物に関しての語句「および/または」は、文脈からそうではないと理解されない限り、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0114】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」または「含む(containing)」の使用は、それらの文法上の同等物を含めて、そうではないと具体的に記されるかまたは文脈から理解されない限り、一般的に開放型であり非限定的であり、例えば記載されないさらなる因子または工程を排除しないと理解されるべきである。
【0115】
本明細書の種々の場所において、ウイルス、組成物、系、プロセスおよび方法またはそれらの特徴は、群または範囲において開示される。該記載は、かかる群および範囲の構成メンバーのそれぞれおよび全ての個々の下位組合せ(subcombination)を含むことが具体的に意図される。他の例として、1~20の範囲の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20を個々に開示することが具体的に意図される。
【0116】
用語「約」の使用が量的値の前にある場合、そうではないと具体的に記されない限り、本発明は特定の量的値自身も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されるかまたは推測されることがない限り、名目上の値から±10%の変動をいう。
【0117】
工程の順序または特定の行為を行う順序は、本発明が操作可能なままである限りは重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または行為は、同時に行われてもよい。
【0118】
本明細書における任意および全ての例または例示的な用語、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、特許請求されない限り本発明の範囲に対して限定を与えない。本明細書における、用語は、本発明の実施についての必須のものとして、任意の特許請求されない因子を示すと解釈されるべきではない。
【実施例
【0119】
実施例
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することを意図しない。
【0120】
実施例1:プラスミドおよびアデノウイルス構築
この実施例には、E1aプロモーター領域中のTATAおよび/またはCAATボックスを含む欠失を有する、組み換え5型(Ad5)アデノウイルスの産生が記載される。
【0121】
Ad5ゲノムの5'部分を保有するアデノウイルスベクタープラスミドpXC1は、Microbix Biosystem (Toronto, Canada)から獲得した。pXC1ベクタープラスミドのヌクレオチド配列は本明細書において配列番号:2に示される。Ad5ゲノムNCBI参照配列AC_000008.1は本明細書において配列番号:8に示される。図1Fは、CAATボックスおよびTATAボックスの位置を示す、E1a遺伝子の開始コドンまでの野生型Ad5の5'末端のヌクレオチド配列を示す。
【0122】
配列番号:2のヌクレオチド352~551に対応する200ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド353~552に対応する)の欠失を有し、E1aプロモーター中にCAATボックスおよびTATAボックスを含む改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-Δ350と称し、そこから産生される任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-Δ350と称する。pXC1-Δ350の5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を配列番号:20に示す。pXC1-Δ350の全長ヌクレオチド配列を配列番号:4に示す。Ad-Δ350の5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を図1Aおよび配列番号:3に示す。pXC1ベクタープラスミド(および任意の改変されたpXC1ベクタープラスミド)の5'末端の21ヌクレオチドは野生型アデノウイルス配列とは異なるが、これらのヌクレオチドは組換えアデノウイルスを作製するプロセスの間に野生型アデノウイルス配列に変換される。
【0123】
示される場合、pXC1-Δ350は、治療的トランスジーンの挿入を容易にするために、E1b-19k領域の開始部位にSalI部位およびSalI部位の200塩基対3'にXhoI部位を有するようにさらに改変された。改変されたE1b-19k領域のヌクレオチド配列を配列番号:5に示す。得られたベクタープラスミドは、以降pXC1-Δ350-Δ19kと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-Δ350-Δ19kと称する。
【0124】
示される場合、マウスGM-CSFの遺伝子を、改変されたE1b-19k領域中SalI部位とXhoI部位の間でpXC1-Δ350-Δ19kにクローニングした。マウスGM-CSFのアミノ酸配列を配列番号:6に示す。生じたベクタープラスミドは、以降pXC1-Δ350-mGM-CSFと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-Δ350-mGM-CSFと称する。
【0125】
配列番号:2のヌクレオチド467~474に対応する8ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド468~475に対応する)の欠失を有し、E1aプロモーター中にTATAボックスを含むさらなる改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-TATAと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-TATAと称する。pXC1-TATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を配列番号:21に示す。Ad-TATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を図1Bおよび配列番号:15に示す。
【0126】
配列番号:2のヌクレオチド422~430に対応する9ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応する)の欠失を有し、E1aプロモーター中にCAATボックスを含むさらなる改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-CAATと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-CAATと称する。pXC1-CAATの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を配列番号:22に示す。Ad-CAATの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を図1Cおよび配列番号:16に示す。
【0127】
E1aプロモーター中にCAATボックスを含む配列番号:2のヌクレオチド422~430に対応する9ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応する)の欠失、およびE1aプロモーター中にTATAボックスを含む配列番号:2のヌクレオチド467~474に対応する8ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド468~475に対応する)の欠失を有する、さらなる改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-CAAT-TATAと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-CAAT-TATAと称する。pXC1-CAAT-TATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を配列番号:23に示す。Ad-CAAT-TATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を図1Dおよび配列番号:17に示す。
【0128】
E1aプロモーター中にCAATボックスを含む配列番号:2のヌクレオチド422~430に対応する9ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド423~431に対応する)の欠失、およびE1aプロモーター中にTATAボックスの4ヌクレオチドTATA配列を含む配列番号:2のヌクレオチド471~474に対応する4ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド472~475に対応する)の欠失(以降最小TATAまたはmTATA欠失と称する)を有する、さらなる改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-CAAT-mTATAと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-CAAT-mTATAと称する。pXC1-CAAT-mTATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を配列番号:25に示す。Ad-CAAT-TATAの5'末端のE1a遺伝子の開始コドンまでのヌクレオチド配列を図1Eおよび配列番号:26に示す。
【0129】
(米国特許第9,073,980号に以前に記載されるように)E1a発現を癌選択的にする配列番号:2のヌクレオチド194~243に対応する50ヌクレオチド(配列番号:8のヌクレオチド195~244およびE1a開始部位の上流のヌクレオチド-304~-255に対応する)の欠失を有する、さらなる改変されたpXC1ベクタープラスミドを作製した。変異したベクタープラスミドは、以降pXC1-TAV-255と称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-TAV-255と称する。示される場合は、pXC1-TAV-255は、上述のように治療的トランスジーンの挿入を容易にするために、E1b-19k領域の開始部位にSalI部位およびSalI部位の200塩基対3'にXhoI部位を有するようにさらに改変した。生じたベクタープラスミドは、以降pXC1-TAV-Δ19kと称し、そこから産生された任意の生じたウイルス粒子は、以降Ad-TAV-Δ19kと称する。
【0130】
種々の改変されたpXC1プラスミドを、プラスミドpJM17と共にHEK-293A細胞に共トランスフェクションして、組み換えウイルスを救出するように相同組み換えさせた。ウイルスを回収して、2ラウンドのプラーク精製および配列決定に供し、必要な場合は対応する欠失の存在について試験した。
【0131】
実施例2:正常細胞および癌性細胞におけるAd-Δ350からのE1a発現
この実施例には、癌性細胞および正常細胞における改変されたアデノウイルスAd-Δ350からのウイルスタンパク質発現の間の比較が記載される。
【0132】
Panc1細胞(ヒト膵臓癌細胞)およびWI-38細胞(非癌性ヒト肺線維芽細胞)に、実施例1に記載されるように調製したAd-Δ350またはAd-TAV-255ウイルスを感染させた。感染後の示される時間でウエスタンブロットによりE1a発現をアッセイした。
【0133】
図2Aおよび2Bに示されるように、Ad-Δ350ウイルスでの感染後、WI-38細胞は、Panc1細胞よりも低いレベルおよび遅い時点でアデノウイルスタンパク質E1aを発現した。
【0134】
Panc1細胞およびA549細胞(ヒト肺癌細胞)に、3または5の感染多重度(MOI)でAd-TAV-255またはAd-Δ350を感染させ、感染後72時間でウエスタンブロットによりE1a発現をアッセイした。図3A(Panc1細胞)および図3B(A549細胞)に示されるように、両方の癌細胞株は、Ad-Δ350またはAd-TAV-255ウイルスからの高レベルのE1a発現を支持する。
【0135】
合わせると、これらの結果は、E1a TATAボックスを含むAd5中の200ヌクレオチド領域は、非癌性細胞におけるE1a発現に必要である一方で、この領域は腫瘍細胞におけるE1a発現には重要ではないことを示す。
【0136】
実施例3:正常細胞および癌性細胞におけるAd-Δ350、Ad-CAAT、Ad-TATA、Ad-CAAT-TATAおよびAd-CAAT-mTATA由来の細胞傷害性
この実施例には、癌性細胞および正常細胞における改変されたアデノウイルスAd-Δ350、Ad-CAAT、Ad-TATA、Ad-CAAT-TATAおよびAd-CAAT-mTATAから生じる細胞傷害性の間の比較が記載される。
【0137】
HCT116細胞(ヒト結腸癌細胞)、Panc1細胞およびA549細胞に、実施例1に記載されるように調製したAd-Δ350を感染させた。細胞は、示されるMOIで感染させたかまたは非感染対照として維持し、感染後の示された時に生存細胞を青色に染色するクリスタルバイオレットで染色した。図4Aに示されるように、癌性細胞株のそれぞれは、感染の4~5日後に大規模な細胞死を示した。
【0138】
癌性細胞株のパネルに、実施例1に記載されるように調製したAd-CAAT、Ad-TATA、Ad-CAAT-TATAまたはAd-CAAT-mTATAを感染させた。パネルはA549、Panc1、HCT116、Hep3b、ADS-12m ASPC 1、HT-29およびMeWo細胞を含んだ。細胞は、5のMOIで感染させ、感染の3~4日後にクリスタルバイオレットで染色した。対照として、感染なしまたは先に記載された腫瘍崩壊性ウイルスAd-TAV-Δ19kを感染させたかいずれかの細胞株を培養した。結果を図5~11に示す。全てのヒト癌性細胞株は、感染後、特に感染の5日後までに大規模な細胞死を示し、一方でマウス細胞株ADS-12は、各ウイルスの感染後に一定でない(variable)細胞死を示した。
【0139】
非癌性MRC5細胞(ヒト肺線維芽細胞)およびWI38細胞に、実施例1に記載されるように調製したAd-Δ350またはAd-TAVを感染させた。細胞は、示されるMOIで感染させ、感染の10日後にクリスタルバイオレットで染色した。感染後4~5日以内に殺傷された癌性細胞とは対照的に、図4Bに示されるように、非癌性細胞は感染の10日後にも生存したままであった。
【0140】
非癌性WI38細胞に、実施例1に記載されるように調製したAd-CAAT、Ad-TATA、Ad-CAAT-TATA、Ad-Δ350およびAd-TAV-Δ19kを、3および5のMOIで感染させ、感染後4日目(図12)または6日目(図13)にクリスタルバイオレットで染色した。結果は、それぞれのウイルスについて感染後に最小の細胞傷害性があったことを示す。
【0141】
合わせると、これらの結果は、E1a TATAボックスを含むAd5内の200ヌクレオチド領域は、非癌性細胞におけるAd5媒介性細胞傷害性に必要である一方で、この領域は腫瘍細胞におけるAd5媒介性細胞傷害性には重要ではないことを示す。同様に、E1aプロモーター中TATAボックス単独、CAATボックス単独またはTATAボックスとCAATボックスの両方のいずれかの欠失を有するAd5ウイルスは、癌選択的細胞傷害性を示した。
【0142】
実施例4:正常細胞および癌性細胞におけるAd-Δ350からの治療的トランスジーンの発現
ウイルスE1b-19k遺伝子の代わりに治療的トランスジーンを備えさせるそれらの可能性についてΔ350欠失を有するアデノウイルスをさらに調べた。以下のウイルス:Δ350欠失を保有し、19k領域が欠失しており、その後の任意のトランスジーンの挿入を有さないウイルスAd-Δ350-Δ19k;Δ350欠失を保有し、SalIとXhoIの間でE1b-19k領域にクローニングされたマウスGM-CSFの遺伝子を保有するウイルスAd-Δ350-mGM-CSF;およびTAV-255欠失を保有し、19k領域が欠失しており、その後の任意のトランスジーンの挿入を有さないウイルスAd-TAV-Δ19kは実施例1に記載されるように作製した。
【0143】
癌性のPanc1細胞、A549細胞およびADS12細胞(マウス肺癌腫)に、示されたMOIでAd-Δ350-Δ19kを感染させ、感染の5日後にクリスタルバイオレットで染色した。図14に示されるように、癌性細胞株は用量依存的な様式で殺傷された。
【0144】
癌性のPanc1細胞、A549細胞およびADS12細胞に、示されるMOIでAd-Δ350-mGM-CSFを感染させ、感染の5日後にクリスタルバイオレットで染色した。図15に示されるように、マウスGM-CSFの遺伝子を保有するウイルスは腫瘍崩壊活性を保持した。
【0145】
A549、HCT116、Hep3bおよびMeWo細胞に、5のMOIでAd-Δ350-mGM-CSF、Ad-Δ350-Δ19kおよびAd-TAV-Δ19kを感染させ、感染の3~5日後にクリスタルバイオレットで染色した。図16~21に示されるように、Ad-Δ350-mGM-CSFは、Ad-Δ350-Δ19kおよびAd-TAV-Δ19kと同等の細胞溶解活性を維持した。
【0146】
A549細胞に、10MOIでAd-Δ350-Δ19kまたはAd-Δ350-mGM-CSFウイルスを感染させた。感染の4日後のコンディションドメディウムを、mGM-CSFについてのELISAにおいて使用した。図22に示されるように、Ad-Δ350-mGM-CSFはmGM-CSFの発現を誘導した。
【0147】
ADS12細胞に示されるMOIでAd-Δ350-Δ19kまたはAd-Δ350-mGM-CSFを感染させ、感染の4日後のコンディションドメディウムをmGM-CSFについてのELISAにおいて使用した。図23に示されるように、Ad-Δ350-mGM-CSFは、このマウス癌細胞株においてmGM-CSFの発現を誘導した。
【0148】
合わせると、これらの結果は、E1a TATAボックスおよびCAATボックスを含むAd5中の200ヌクレオチド領域は、非癌性細胞におけるE1b-19k発現部位からの治療的トランスジーン発現に必要である一方で、この領域は、腫瘍細胞におけるE1b-19k発現部位からの治療的トランスジーンの発現には重要でないことを示す。
【0149】
実施例5:Ad-Δ350の抗癌活性
この実施例には、実施例1に記載されるように産生したTATAボックスおよび/またはCAATボックスの欠失を有する組み換えアデノウイルスの抗癌活性が記載される。
【0150】
マウス(株129S4)にADS-12細胞(マウス肺癌)を皮下注射し、腫瘍を形成させた。腫瘍が約50~100mm3の体積に達した後、マウスをAd-Δ350-Δ19k、Ad-TAV-Δ19k(有効な腫瘍崩壊性ウイルスについての陽性対照として)またはバッファ(陰性対照として)による治療に対して無作為化した。マウスに、3回の投与について4日毎に与えられる示される治療の腫瘍内注射を投与した。図24に示されるように、バッファで治療したマウスは迅速な腫瘍増殖を有し、Ad-Δ350-Δ19kまたはAd-TAV-Δ19kのいずれかで治療したマウスはそれらの腫瘍サイズの減少を有し、多くの場合で検出可能な残存腫瘍を有さなかった。
【0151】
この結果は、ウイルスE1A遺伝子についてのプロモーターのCAATボックスおよびTATAボックスの両方を除去する欠失を保有するAd-Δ350-Δ19kは、有効な癌治療であることを示唆する。
【0152】
実施例6:Ad35におけるTATAボックス欠失
この実施例には、TATAボックスを含むE1aプロモーター領域に欠失を有する組み換え35型(Ad35)アデノウイルスの産生が記載される。
【0153】
アデノウイルス35型(Ad35)のE1aプロモーターは、配列番号:24のヌクレオチド477~484に対応するヌクレオチドにTATAボックスを含む。
【化1】
(配列番号:18;TATAボックスに下線)の天然配列の
【化2】
(配列番号:19)への変換によりTATAボックスを欠く組み換えAd35アデノウイルスを作製した。
【0154】
HEK-293細胞に、TATA欠失Ad35ウイルスについてのゲノムをトランスフェクトして、図25に示されるようにウイルス増殖を示す細胞病理学的効果を生じさせた。これらの結果は、組み換えAd35アデノウイルスはTATAボックスを欠いて作製され、腫瘍崩壊性ウイルスとして適切であり得ることを示唆した。
【0155】
参照による援用
本明細書に参照される特許文献および科学論文のそれぞれの全開示は、全ての目的で参照により援用される。
【0156】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。そのため、前述の態様は、全ての局面において本明細書に記載される発明の限定ではなく例示とみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内にある全ての変更が本発明に含まれることが意図される。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
(i)遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーター、ここで該改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にする、および/または
(ii)遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーター、ここで該改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にする、
を含む組み換えウイルス。
項2
遺伝子に操作可能に連結された改変されたTATAボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスであって、該改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にする、組み換えウイルス。
項3
遺伝子に操作可能に連結された改変されたCAATボックス系プロモーターを含む組み換えウイルスであって、該改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にする、組み換えウイルス。
項4
組み換え型のワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV1)、粘液腫ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス(MV)およびニューカッスル病ウイルス(NDV)から選択される、項1~3いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項5
組み換えアデノウイルスである、項4記載の組み換えウイルス。
項6
5型アデノウイルスおよび35型アデノウイルスから選択される、項5記載の組み換えウイルス。
項7
該アデノウイルスが5型アデノウイルスである、項6記載の組み換えウイルス。
項8
該改変されたTATAボックス系プロモーターが初期遺伝子プロモーターである、項1~2または4~7のいずれか一項記載の組み換えウイルス。
項9
該改変されたTATAボックス系プロモーターが、E1aプロモーター、E1bプロモーターまたはE4プロモーターである、項8記載の組み換えウイルス。
項10
該改変されたTATAボックス系プロモーターがE1aプロモーターである、項9記載の組み換えウイルス。
項11
改変されたTATAボックス系プロモーターに含まれる改変が全TATAボックスの欠失を含む、項1~2または4~10のいずれか一項記載の組み換えウイルス。
項12
E1aプロモーターの-27~-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項1~11いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項13
E1aプロモーターの-31~-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項12記載の組み換えウイルス。
項14
E1aプロモーターの-44~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項13記載の組み換えウイルス。
項15
E1aプロモーターの-146~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項14記載の組み換えウイルス。
項16
Ad5ゲノム(配列番号:8)の472~475に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項1~11いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項17
Ad5ゲノム(配列番号:8)の468~475に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項16記載の組み換えウイルス。
項18
Ad5ゲノム(配列番号:8)の455~552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項17記載の組み換えウイルス。
項19
Ad5ゲノム(配列番号:8)の353~552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項18記載の組み換えウイルス。
項20
配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)および/またはTATTCCCG(配列番号:13)を含むウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む、項1~19いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項21
E1aプロモーター領域の-27~-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む5型アデノウイルスである、組み換えウイルス。
項22
E1aプロモーター領域の-31~-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項21記載の組み換えウイルス。
項23
E1aプロモーター領域の-44~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項22記載の組み換えウイルス。
項24
E1aプロモーター領域の-146~+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項23記載の組み換えウイルス。
項25
Ad5ゲノム(配列番号:8)の472~475に対応するヌクレオチドの欠失を含む5型アデノウイルスである、組み換えウイルス。
項26
Ad5ゲノム(配列番号:8)の468~475に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項25記載の組み換えウイルス。
項27
Ad5ゲノム(配列番号:8)の455~552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項26記載の組み換えウイルス。
項28
Ad5ゲノム(配列番号:8)の353~552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項27記載の組み換えウイルス。
項29
5型アデノウイルスである組み換えウイルスであって、配列CTAGGACTG(配列番号:7)、AGTGCCCG(配列番号:12)またはTATTCCCG(配列番号:13)を含む5型アデノウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む、組み換えウイルス。
項30
5型アデノウイルスである組み換えウイルスであって、配列CTAGGACTG(配列番号:7)を含む5型アデノウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む、組み換えウイルス。
項31
該改変されたCAATボックス系プロモーターが、初期遺伝子プロモーターである、項1または3~20いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項32
該改変されたCAATボックス系プロモーターが、E1aプロモーター、E1bプロモーターまたはE4プロモーターである、項31記載の組み換えウイルス。
項33
該改変されたCAATボックス系プロモーターがE1aプロモーターである、項32記載の組み換えウイルス。
項34
改変されたCAATボックス系プロモーターに含まれる改変が全CAATボックスの欠失を含む、項1、3~20または31~33いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項35
E1aプロモーターの-76~-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項1~34いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項36
Ad5ゲノム(配列番号:8)の423~431に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項1~34いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項37
配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)を含むウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む、項1~36いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項38
E1aプロモーター領域の-76~-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む5型アデノウイルスである、組み換えウイルス。
項39
Ad5ゲノム(配列番号:8)の423~431に対応するヌクレオチドの欠失を含む5型アデノウイルスである、組み換えウイルス。
項40
5型アデノウイルスである組み換えウイルスであって、配列TTCCGTGGCG(配列番号:14)を含む5型アデノウイルスを生じるポリヌクレオチド欠失を含む、組み換えウイルス。
項41
Ad35ゲノム(配列番号:24)の477~484に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項1~40いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項42
Ad35ゲノム(配列番号:24)の477~484に対応するヌクレオチドの欠失を含む35型アデノウイルスである、組み換えウイルス。
項43
改変されたTATAボックス系プロモーターまたはCAATボックス系プロモーターに含まれる改変が、別の機能性プロモーター配列の付加または別の機能性プロモーター配列による置換を含まない、項1~42いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項44
治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、項1~43いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項45
該治療的トランスジーンが、癌タンパク質、腫瘍サプレッサーポリペプチド、酵素、サイトカイン、免疫調節ポリペプチド、抗体、溶解性ペプチド、ワクチン抗原、体細胞における遺伝子欠失を補完するポリペプチドおよび細胞死をもたらすプロセスを触媒するポリペプチドから選択される治療ポリペプチドをコードする、項44記載の組み換えウイルス。
項46
該治療的トランスジーンが、アポトーシス剤、抗体、CTL応答性ペプチド、サイトカイン、細胞溶解性剤、細胞傷害性剤、酵素、腫瘍細胞の表面上に発現されて免疫応答を誘発する異種抗原、免疫刺激剤または免疫調節剤、インターフェロン、溶解性ペプチド、癌タンパク質、細胞死をもたらすプロセスを触媒するポリペプチド、体細胞における遺伝子欠失を補完するポリペプチド、腫瘍サプレッサータンパク質、ワクチン抗原およびそれらの任意の組合せから選択される治療ポリペプチドをコードする、項44記載の組み換えウイルス。
項47
該治療的トランスジーンが、アセチルコリン、抗PD-1抗体重鎖または軽鎖、抗PD-L1抗体重鎖または軽鎖、BORIS/CTCFL、CD19、CD20、CD80、CD86、CD137L、CD154、DKK1/Wnt、ICAM-1、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-17、IL-23、IL-23A/p19、インターフェロンγ、TGF-β、TGF-βトラップ、FGF、IL-24、IL-27、IL-35、MAGE、NY-ESO-1、p53およびチミジンキナーゼから選択される治療ポリペプチドをコードする、項44記載の組み換えウイルス。
項48
治療的トランスジーンがTGF-βトラップをコードする、項44記載の組み換えウイルス。
項49
該治療的トランスジーンが、アンチセンスRNAおよびリボザイムから選択される治療核酸をコードする、項44記載の組み換えウイルス。
項50
該アデノウイルスが、E1b-19KおよびE1b-55Kの開始部位を含み、該治療的トランスジーンをコードするヌクレオチド配列が、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に挿入される、項44~49いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項51
過増殖細胞において選択的に複製する、項1~50いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項52
非増殖停止細胞において選択的に複製する、項1~51いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項53
過増殖細胞において細胞溶解活性を選択的に有する、項1~52いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項54
非増殖停止細胞において細胞溶解活性を選択的に有する、項1~53いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項55
過増殖細胞においてE1aおよび/またはE1bを選択的に発現する、項5~54いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項56
非増殖停止細胞においてE1aおよび/またはE1bを選択的に発現する、項5~55いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項57
過増殖細胞において治療的トランスジーンを選択的に発現する、項44~56いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項58
非増殖停止細胞において治療的トランスジーンを選択的に発現する、項44~57いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項59
過増殖細胞が、癌細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞および/または免疫細胞である、項1~58いずれか一項記載の組み換えウイルス。
項60
過増殖細胞が癌細胞である、項59記載の組み換えウイルス。
項61
癌細胞が、肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌および甲状腺癌の細胞からなる群より選択される、項60記載の組み換えウイルス。
項62
癌細胞が、肺癌細胞、結腸癌細胞および膵臓癌細胞から選択される、項60記載の組み換えウイルス。
項63
過増殖細胞におけるウイルスの選択的な発現を可能にする改変されたかまたは欠失されたウイルス制御配列を含む、組み換えウイルス。
項64
項1~63いずれか一項記載の組み換えウイルスおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物。
項65
標的細胞を、項44~63いずれか一項記載の組み換えウイルスの有効量に暴露して、標的トランスジーンを発現させる工程を含む、標的細胞において治療的トランスジーンを発現させる方法。
項66
腫瘍細胞を、項1~63いずれか一項記載の組み換えウイルスの有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項67
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項1~63いずれか一項記載の組み換えウイルスの有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項68
癌の治療を必要とする被験体に、項1~63いずれか一項記載の組み換えウイルスの有効量を投与して、該被験体において癌を治療する工程を含む、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法。
項69
癌が、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝細胞癌、胆管癌、脳癌、子宮内膜癌、神経内分泌癌、メルケル細胞癌、胃腸管間質腫瘍、肉腫および膵臓癌から選択される、項68記載の方法。
項70
癌が、肛門癌、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、癌腫、胆管癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃食道癌、胃腸(GI)癌、胃腸管間質腫瘍、肝細胞癌、婦人科学の癌、頭頸部癌、血液癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、神経内分泌癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、小児癌、前立腺癌、腎細胞癌、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、皮膚の扁平上皮癌、胃癌、精巣癌および甲状腺癌から選択される、項68記載の方法。
項71
組み換えウイルスが、手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与される、項67~70いずれか一項記載の方法。
項72
過増殖疾患の治療を必要とする被験体に、項1~63いずれか一項記載の組み換えウイルスの有効量を投与して、該被験体において過増殖疾患を治療する工程を含む、過増殖疾患の治療を必要とする被験体において過増殖疾患を治療する方法。
項73
過増殖疾患が、アテローム硬化症、関節リウマチ、乾癬、狼瘡、特発性肺線維症、強皮症肺高血圧(sclerodermapulmonary hypertension)、喘息、腎臓線維症、COPD、嚢胞性線維症、DIP、UIP、黄斑変性、再狭窄、網膜症、過増殖線維芽細胞障害、強皮症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性細小血管症症候群、移植片拒絶、糸球体症および肝硬変から選択される、項72記載の方法。
項74
過増殖疾患が、アテローム硬化症、関節リウマチ、乾癬、狼瘡、特発性肺線維症、強皮症および肝硬変から選択される、項72記載の方法。
項75
組み換えウイルスの有効量が10 2 ~10 15 プラーク形成単位(pfu)である、項65~74いずれか一項記載の方法。
項76
被験体がヒトである、項67~75いずれか一項記載の方法。
項77
改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルス性TATAボックス系プロモーターを改変する工程を含む、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法。
項78
改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルス性CAATボックス系プロモーターを改変する工程を含む、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法。
項79
改変されたTATAボックス系プロモーターが機能性TATAボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルス性TATAボックス系プロモーターを改変する工程、および/または改変されたCAATボックス系プロモーターが機能性CAATボックスを欠き、過増殖細胞における遺伝子の選択的発現を可能にするように、遺伝子に操作可能に連結されたウイルス性CAATボックス系プロモーターを改変する工程を含む、腫瘍崩壊性ウイルスを作り変える方法。
項80
配列番号:3、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22および配列番号:23から選択されるヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
項81
配列番号:3のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
項82
配列番号:4のヌクレオチド配列を含む、項81記載の単離された核酸。
項83
項80~82いずれか一項記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
項84
(a) 項83記載の宿主細胞を、組み換えウイルスを産生する条件下で増殖させる工程;および
(b) 組み換えウイルスを精製する工程
を含む、組み換えウイルスを作製する方法。
項85
被験体における抗原に対する免疫応答を測定する工程をさらに含む、項65~76いずれか一項記載の方法。
項86
組み換えウイルスの有効量が、被験体における抗原に対する免疫応答を測定することにより同定される、項65~76または85いずれか一項記載の方法。
項87
抗原に対する免疫応答が、被験体の皮膚上の注射部位で被験体に抗原を注射することおよび注射部位での硬変のサイズを測定することにより測定される、項85または86記載の方法。
図1-1】
図1-2】
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【配列表】
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