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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】放射線治療及び画像診断のための製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/08 20060101AFI20230313BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230313BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
A61K51/08 200
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/20
A61K51/08 100
A61P35/00
A61K103:00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019544941
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 AU2017051205
(87)【国際公開番号】W WO2018081860
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】2016904515
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519156661
【氏名又は名称】クラリティー・ファーマシューティカルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジョン・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】エレン・マリアン・ヴァン・ダム
(72)【発明者】
【氏名】シャーメイン・マリー・ジェフリー
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510477(JP,A)
【文献】国際公開第2008/009444(WO,A1)
【文献】特表平06-510539(JP,A)
【文献】特表2000-515847(JP,A)
【文献】J. Nucl. Med., 1995, Vol.36, pp.2315-2325
【文献】Dalton Trans., 2014, Vol.43, pp.1386-1396
【文献】Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering, 2006, Vol.6097, 609703/1-609703/8,10.1117/12.648096
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/00
A61K 49/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩
【化1】
を含む、非経口投与のための水性製剤であって、
7~13%(v/v)のエタノール;
0.3~1.2%(w/v)の塩化ナトリウム;及び
0.02~0.1%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩
を更に含み、
酢酸塩を含み、
4~8の間のpHを有する、水性製剤。
【請求項2】
10%(v/v)のエタノール;
0.9%(w/v)の塩化ナトリウム;
0.06%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩
を含み、
酢酸塩を含み、
6.0のpHを有する、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項3】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩
【化2】
を含む、非経口投与のための水性製剤であって、
7~13%(v/v)のエタノール;
0.3~1.2%(w/v)の塩化ナトリウム;
0.02~0.1%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩;及び
1.0~4.0mg/mLのL-メチオニン又はその塩
を更に含み、
酢酸塩を含み、
4~8の間のpHを有する、水性製剤。
【請求項4】
10%(v/v)のエタノール;
0.9%(w/v)の塩化ナトリウム;
0.06%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩;及び
2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩
を含み、
酢酸塩を含み、
6.0のpHを有する、請求項3に記載の水性製剤。
【請求項5】
式(I)の化合物が、酢酸塩の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項6】
酢酸塩を緩衝剤として含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項7】
ゲンチシン酸塩が、ゲンチシン酸ナトリウムである、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項8】
ゲンチシン酸又はその塩の濃度が、0.056%(w/v)以下である、請求項1又は3に記載の水性製剤。
【請求項9】
Cuイオンが、Cu放射性同位体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項10】
Cu放射性同位体が、60Cu、61Cu、64Cu及び67Cuからなる群から選択される、請求項9に記載の水性製剤。
【請求項11】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を含む水性製剤を調製するための方法であって、
i)酢酸塩の緩衝溶液を調製する工程であって、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を更に含む、工程;
ii)式(I)の化合物又はその塩を、工程i)から得られた緩衝溶液に溶解する工程;
iii)Cuイオンの溶液を、工程ii)から得られた溶液に添加する工程;
iv)工程iii)から得られた溶液を、固定相上に濾過捕集する工程;及び
v)工程iv)の固定相を、エタノール及び生理食塩水で洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む水性製剤を回収する工程
を含む、方法。
【請求項12】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を含む水性製剤を調製するための方法であって、
i)酢酸塩の緩衝溶液を調製する工程であって、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を更に含む、工程;
ii)式(I)の化合物又はその塩を、工程i)から得られた緩衝溶液に溶解する工程;
iii)Cuイオンの溶液を、工程ii)から得られた溶液に添加する工程;
iv)工程iii)から得られた溶液を、固定相上に濾過捕集する工程;及び
v)工程iv)の固定相を、エタノール及び生理食塩水で洗浄し、L-メチオニンの溶液に入れて、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む水性製剤を回収する工程
を含む、方法。
【請求項13】
緩衝溶液の酢酸塩が、酢酸アンモニウムである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
酢酸塩の緩衝溶液の濃度が、0.1mol/Lである、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
エタノールが、緩衝溶液中に4%~10%(v/v)の濃度で存在する、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
緩衝溶液が、ゲンチシン酸ナトリウムを含有する、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Cuイオンの溶液が、塩酸中の溶液である、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
塩酸溶液の濃度が、0.01~0.10mol/Lである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
塩酸溶液の濃度が、0.02mol/Lである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
Cuイオンが、60Cu、61Cu、64Cu及び67Cuからなる群から選択されるCu放射性同位体である、請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Cuイオンが、Cuイオンの塩化物塩から得られる、請求項11から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
L-メチオニンの溶液の濃度が、2.5mg/mLである、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物、又はその塩:
【化4】
を含む、非経口投与のための水性製剤を作製するためのキットであって、
式(I)の凍結乾燥化合物又はその塩を含む容器;
Cuイオンの溶液を含む容器;
酢酸塩、エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩の緩衝溶液を含む容器;及び
酢酸塩、エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩の緩衝溶液を添加する指示を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性製剤を調製するための指示書
を含む、キット。
【請求項24】
酢酸塩、エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩の緩衝溶液を含む容器が、L-メチオニン又はその塩を更に含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
対象のがんを放射線画像化するための方法において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項26】
対象のがんを診断又は処置するための方法において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療及び画像診断に有用な放射性標識化合物の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性標識化合物又はリガンドは、放射線治療又は画像診断等の用途における放射性医薬品として使用することができる。特に有用なのは、インビボにおける特定の部位(例えば、特定の受容体)を選択的に標的化し、その後、放射性同位体を所望の作用部位に送達する何らかの傾向を示す放射性標識化合物である。これには、リガンドが、放射性同位体と複合体化するための構成成分、及び所望の部位を標的化するための更なる構成成分を含むことが必要である。
【0003】
このようなリガンドに関連する公知の問題の1つは、リガンド-放射性同位体複合体が作用部位に到達する前の放射性同位体の早期解離である。これにより複合体の効力が低減するだけでなく、放射線治療効果が意図されていない領域へと放射性同位体を損失することが有害な結果をもたらす可能性もある。
【0004】
リガンドからの放射性同位体の解離は、放射性同位体がインビボで別の生物学的リガンドに移るトランスキレート化の結果として起こり得る。繰り返しになるが、これは、治療効果の低減、及び処置を必要としない領域への放射性同位体の送達にもつながる。
【0005】
放射性標識されるべきリガンド、及び放射性同位体は、通常、投与前の解離に関する上記問題を最小限に抑えるために、別個の容器に入れて貯蔵され、患者に輸送される。リガンドは、化合物の安定性を長期化させるために低温で凍結乾燥粉末として輸送されてもよい。次いで、投与直前に放射性同位体をリガンドと合わせて放射性医薬品を形成することができ、これは、複合体が作用部位に達する前の放射性同位体の解離を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0006】
放射性標識化合物に関連する別の問題は、放射性同位体の使用が放射線分解、又はリガンドの破壊をもたらし得ることである。放射性同位体に自然崩壊及びその後の放射線の放出が起こるとき、このエネルギーは、結合の切断を誘発してその後のリガンドの破壊を引き起こすには十分であり得る。放射性医薬品の効力の低減に加えて、放射性同位体の放出も起こり、望ましくない部位への放射線の送達をもたらす。
【0007】
多くの放射性医薬品が、非経口的に、すなわち経口的でなく、通常、溶液として投与されるように設計されるため、リガンド自体が、薬学的に許容される溶媒又は担体に可溶性でなければならない。当技術分野で公知の通り、任意の所与の溶媒中の特定の化合物の可溶性は予測できない場合がある。特定の溶媒中の特定の化合物の可溶性は公知かもしれないが、異なる溶媒系中の化合物の類似体の可溶性は全く異なる可能性がある。したがって、このことは、化合物の製剤、特に薬学的に許容される注入可能な製剤を開発しようとする者に困難をもたらす。
【0008】
医薬製剤は典型的には、化合物の溶解性の向上させる、又は溶液中にある間の化合物の安定性を高める等、何らかの形で化合物に影響を与える1つ又は複数の賦形剤を含む。或いは、保存剤、緩衝剤等、追加の賦形剤を使用して、他の特徴を製剤に付与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Dalton Trans.、2015、43、1386頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
何千ものリガンド-放射性同位体複合体の製剤が文書化されているが、このような製剤中で使用される賦形剤が、任意の新たに開発された複合体の必要とされる溶解性及び生物学的利用能を提供することを予期することはできない。更には、賦形剤の特定の組合せが更に、放射性同位体の解離を防止するか若しくは最小限に抑え、又は放射線分解が起こるのを最小限に抑えることを予期することはできない。
【0011】
したがって、リガンド-放射性同位体複合体の望ましい製剤は、放射線分解及び放射性同位体の解離に関して必要な安定性を示すと共に、薬学的にも許容されるようにあつらえる(tailor)ことが必要である。本発明は、特異的なリガンド複合体に関するこれらの問題に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様において、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩:
【0013】
【化1】
【0014】
を含む、非経口投与のための水性製剤であって、
約7~約13%(v/v)のエタノール;
約0.3~約1.2%(w/v)の塩化ナトリウム;
約0.02~約0.1%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩
を更に含み、
約4~約8の間のpHを有する、水性製剤が提供される。
【0015】
本発明の別の態様において、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩:
【0016】
【化2】
【0017】
を含む、非経口投与のための水性製剤であって、
約7~約13%(v/v)のエタノール;
約0.3~約1.2%(w/v)の塩化ナトリウム;
約0.02~約0.1%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩;及び
約1.0~約4.0mg/mLのL-メチオニン又はその塩
を更に含み、
約4~約8の間のpHを有する、水性製剤が提供される。
【0018】
一実施形態において、及び上記2つの態様に関して、式(I)の化合物は、酢酸塩として提供される。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を含む水性製剤を調製するための方法であって、
i)酢酸塩の緩衝溶液を調製する工程であって、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を更に含む、工程;
ii)式(I)の化合物又はその塩を、工程i)から得られた緩衝溶液に溶解する工程;
iii)Cuイオンの溶液を、工程ii)から得られた溶液に添加する工程;
iv)工程iii)から得られた溶液を、固定相上に濾過捕集する工程;及び
v)工程iv)の固定相を、エタノール及び生理食塩水で洗浄して、それによりCuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む水性製剤を回収する工程
を含む、方法が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を含む水性製剤を調製するための方法であって、
i)酢酸塩の緩衝溶液を調製する工程であって、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を更に含む、工程;
ii)式(I)の化合物又はその塩を、工程i)から得られた緩衝溶液に溶解する工程;
iii)Cuイオンの溶液を、工程ii)から得られた溶液に添加する工程;
iv)工程iii)から得られた溶液を、固定相上に濾過捕集する工程;及び
v)工程iv)の固定相を、エタノール及び生理食塩水で洗浄し、L-メチオニン又はその塩の溶液を含有するバイアルに入れて、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む水性製剤を回収する工程
を含む、方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、先の態様で定義した通りの方法により調製される水性製剤が提供される。
【0022】
本発明の水性製剤は、製剤のある特定の成分をパーツのキットとして提供することにより調製してもよく、キットは、少なくとも式(I)の化合物又はその塩、及び式(I)の化合物との複合体化が意図されるCuイオンを含み、式(I)の化合物又はその塩、及びCuイオンはキットにおいて別個に提供されており、投与前に合わせて前述の複合体を形成することができる。
【0023】
したがって、別の態様において、本発明は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む、非経口投与のための水性製剤を作製するためのキットであって、
式(I)の凍結乾燥化合物
【0024】
【化3】
【0025】
又はその塩を含む容器;
Cuイオンの溶液を含む容器;及び
エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩の緩衝溶液を添加する指示を含む、先の態様で定義した通りの水性製剤を調製するための指示書
を含む、キットを提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む、非経口投与のための水性製剤を作製するためのキットであって、
式(I)の凍結乾燥化合物
【0027】
【化4】
【0028】
又はその塩を含む容器;
Cuイオンの溶液を含む容器;及び
エタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩の緩衝溶液を添加する指示を含む、前述で定義した通りの水性製剤を調製するための指示書
を含む、キットを提供する。
【0029】
本発明の更なる態様は、非経口投与のための先の態様で定義した通りの水性製剤を作製するためのキットであって、
式(I)の凍結乾燥化合物又はその塩
【0030】
【化5】
【0031】
を含む容器;
Cuイオンの溶液を含む容器;
エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩の緩衝溶液を含む容器;及び
先の態様で定義した通りの水性製剤を調製するための指示書
を含む、キットを提供する。
【0032】
本発明の更なる態様は、非経口投与のための前述した通りの水性製剤を作製するためのキットであって、
式(I)の凍結乾燥化合物又はその塩
【0033】
【化6】
【0034】
を含む容器;
Cuイオンの溶液を含む容器;
エタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩の緩衝溶液を含む容器;及び
先の態様で定義した通りの水性製剤を調製するための指示書
を含む、キットを提供する。
【0035】
本発明の別の態様は、がんを放射線画像化、診断又は処置するための方法であって、それを必要とする対象に先の態様で定義した通りの水性製剤を投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】調製直後の実施例1の低用量64Cu-SARTATE製剤のガンマシンチレーション検出器-高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析を使用した、面積パーセントの報告(放射線化学収量=606MBq)であり、検出された64Cuの97.3%が64Cu-SARTATEとして存在することを表す。
図2】ガンマシンチレーション検出器を使用した、24時間にわたる実施例1の低用量64Cu-SARTATE製剤の反復HPLC分析のグラフであり、64Cu-SARTATEの放射化学的純度が、時間が経過しても安定したまま(>90%)であることを表す。
図3】調製直後の実施例2の高用量64Cu-SARTATE製剤のガンマシンチレーション検出器-HPLC分析を使用した、面積パーセントの報告(放射線化学収量=3500MBq)であり、検出された64Cuの98.2%が64Cu-SARTATEとして存在することを表す。
図4】ガンマシンチレーション検出器を使用した、45時間にわたる実施例2の高用量64Cu-SARTATE製剤の反復HPLC分析のグラフであり、64Cu-SARTATEの放射化学的純度が、時間が経過しても安定したまま(>90%)であることを表す。
図5】調製直後の実施例3の67Cu-SARTATE製剤のガンマシンチレーション検出器-HPLC分析を使用した、面積パーセントの報告(放射線化学収量=3922MBq)であり、検出された67Cuの98.6%が67Cu-SARTATEとして存在することを表す。
図6】ガンマシンチレーション検出器を使用した、11時間にわたる実施例3の67Cu-SARTATE製剤の反復HPLC分析のグラフであり、67Cu-SARTATEの放射化学的純度が、時間が経過しても安定したまま(>90%)であることを表す。
図7】新鮮ヒト血清中でのインキュベーション後、43時間にわたる実施例2の64Cu-SARTATE製剤の反復HPLC分析のグラフである。
図8】インキュベーションの増加期間にわたる、SSTR2過剰発現細胞株A427-7における64Cu-SARTATEのインビトロ内部移行(黒塗り記号)及び過剰のTyr3-オクトレオテートと一緒の64Cu-SARTATEのインビトロ内部移行(白抜き記号)である。
図9】インキュベーションの増加期間にわたる、SSTR2過剰発現細胞株A427-7における64Cu-SARTATEの細胞表面結合(黒塗り記号)及び過剰のTyr3-オクトレオテートと一緒の64Cu-SARTATEのインビトロ内部移行(白抜き記号)である。
図10】2時間にわたるA427-7及びA427親細胞株における64Cu-SARTATEの正規化した取り込みの比較である(p<0.0001)。
図11】2時間及び24時間の時点でのA427-7腫瘍保有Balb/cマウスからの選択組織における64Cu-SARTATEのインビボ生体内分布である。2時間後では、過剰のTyr3-オクトレオテートを同時注入することにより、ブロッキング研究を実施して、SSTR2に対する64Cu-SARTATEの特異性を確認した。
図12】過剰のTyr3-オクトレオテートの同時注入がある場合とない場合の、64Cu-SARTATEの注入後2時間及び24時間の時点でのA427-7腫瘍保有Balb/cマウスの小動物PET最大強度投影画像を使用した64Cu-SARTATEのインビボPET画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、特異的な放射性同位体-リガンド複合体の安定な製剤に関する。本発明者らは、本明細書に開示される複合体の製剤が、リガンドからの放射性同位体の解離を最小限に抑え、且つ/又は放射性同位体から生じるリガンドの放射線分解を最小限に抑えることを見出した。
【0038】
本明細書で言及される放射性同位体-リガンド複合体の製剤は、溶液中及び生理的条件下で一定の時間安定である。放射性同位体に解離が起こり得、又は複合体に放射線分解が起こり得る場合、製剤の安定性は、複合体の安定性に関連する。複合体の安定性は、製剤の放射化学的純度を検討することにより測定することができる。放射化学的純度は、製剤中に存在する放射性同位体の合計量の百分率として表される、サルコファギンリガンドにより複合体化した放射性同位体の量として定義される。放射性同位体は、サルコファギンリガンドとの複合体として、遊離放射性同位体として、又は放射線分解生成物の一部として製剤中に存在し得る。
【0039】
オクトレオテート含有リガンドは、ソマトスタチン受容体、すなわちタイプ2(SSTR2)及びタイプ5(SSTR5)受容体を標的とすることが既に判明している。オクトレオテートを含有するリガンドの例は、MeCOSar-オクトレオテート、すなわちMeCOSar-D-Phe-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr-OH(式中、MeCOSarは、大環状サルコファギンリガンド5-[[8-アミノ-3,6,10,13,19-ヘキサアザビシクロ-[6.6.6]エイコ-1-イル)アミノ]-5-オキソ-ペンタニルであり、オクトレオテートは、D-Phe-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr-OHである]である。当業者であれば、オクトレオテートが環状オクタペプチドであり、Cys-Cysジスルフィド結合の形成により対応する直鎖状ペプチドから誘導されることを理解するであろう。当業者であれば、サルコファギン(「sar」)が、遷移金属イオン、本発明の文脈ではCuイオン等のドナー原子を複合体化することができる窒素含有六座大環状配位子であることも理解するであろう。
【0040】
MeCOSar-オクトレオテート(本明細書で「SARTATE」とも呼ばれる)は式(I)に示す通りでもある。
【0041】
【化7】
【0042】
式(I)の化合物は、サルコファギンリガンドとオクトレオテート環状ペプチドとの間のカップリング反応により生成することができ、大環状サルコファギン及びオクトレオテートフラグメントはカップリングの前に個別に合成される。式(I)のサルコファギン自体は、脂肪族カルボキシレート基とカップリングされたアミノでキャップされた大環状リガンドから誘導される。式(I)の化合物、並びにその構成成分であるサルコファギン及びオクトレオテートフラグメントにアクセスするための合成経路は、Dalton Trans.、2015、43、1386頁に既に開示されている。
【0043】
本発明は、特許請求される製剤の一部として、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の使用も企図する。式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の例としては、対応する酢酸塩、ナトリウム塩、塩酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩又はアンモニウム塩を挙げることができる。一実施形態において、式(I)の化合物は、酢酸塩として提供される。
【0044】
本発明の投与可能な製剤は、式(I)の化合物又はその塩と、放射性同位体との複合体を含む。放射性同位体は、放射性核種と呼ぶこともでき、金属又は金属イオンであってもよい。本明細書のリガンドは、銅イオン、特にCu2+イオンを複合体化することに特に成功していることが判明している。銅イオン放射性同位体を含む、式(I)の複合体は、Dalton Trans.、2015、43、1386頁に既に開示されている。当業者であれば、式(I)の化合物又はその塩が放射性同位体と複合体化するように、式(I)の化合物又はその塩を、複合体化される放射性同位体に接触させることにより、式(I)と放射性同位体との複合体を達成することができることも理解するであろう。これには、式(I)の化合物又はその塩、及び放射性同位体を適切な溶媒系(本明細書に具体的に記載したもの等)中で混合することを伴うこともある。
【0045】
一実施形態において、リガンドはCuイオンと複合体化する。銅イオンは放射活性であり得、したがって銅の放射性核種又は放射性同位体であり得る。一実施形態において、リガンドは60Cuと複合体化する。別の実施形態において、リガンドは61Cuと複合体化する。別の実施形態において、リガンドは64Cuと複合体化する。別の実施形態において、リガンドは67Cuと複合体化する。好ましい実施形態において、リガンドは64Cuと複合体化する。別の好ましい実施形態において、リガンドは67Cuと複合体化する。
【0046】
本発明の製剤は、エタノールを成分として含む。製剤に使用されるエタノールは、無水エタノールであってもよい。或いは、製剤に使用されるエタノールは、乾燥プロセスに供したことがなくてもよく、水和されていてもよい。エタノールは、好ましくは医薬品グレードのエタノールである。製剤中に存在するエタノールは、式(I)の放射性標識複合体の放射線分解を防止するのに更に役立ち得る。
【0047】
一実施形態において、エタノールは、約7%~約13%(v/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、エタノールは、約7%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約8%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約9%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約10%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約11%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約12%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約13%(v/v)の量で製剤中に存在する。好ましい実施形態において、エタノールは、約10%(v/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明は、前述の量の間の範囲のエタノールも企図する。
【0048】
本発明の製剤は、塩化ナトリウムも成分として含む。本発明の製剤中の塩化ナトリウムは、生理食塩溶液として提供されてもよい。生理食塩溶液は、塩化ナトリウムの水溶液として定義される。例えば、通常の生理食塩水は、0.9%(w/v)の濃度の塩化ナトリウムの水溶液として定義される。本発明の一実施形態において、製剤の塩化ナトリウムは、生理食塩溶液により提供される。
【0049】
一実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.6%~1.2%(w/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.6%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.7%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.8%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.9%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.0%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.1%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.2%(w/v)の量で存在する。好ましい実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.9%(w/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明は、前述の量の間の範囲の塩化ナトリウムも企図する。
【0050】
本発明の製剤は、ゲンチシン酸、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは水和物を成分として含む。ゲンチシン酸は、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシサリチル酸又はヒドロキノンカルボン酸としても公知である。ゲンチシン酸の塩は、ナトリウム塩及びナトリウム塩水和物を含み得る。ゲンチシン酸へのいかなる言及も、関連する場合には、その塩への言及を含み得る。本発明者らは、本製剤内のゲンチシン酸又はその塩が、式(I)の放射性標識複合体の放射線分解を防止する又は最小限に抑えるのに役立つことをつきとめた。
【0051】
一実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.02%~約0.1%(w/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.02%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.025%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.03%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.035%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.04%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.045%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.05%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.055%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.6%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.065%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.07%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.075%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.08%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.085%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.09%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.095%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、約0.1%(w/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明は、前述の量の間の範囲のゲンチシン酸又はその塩も企図する。好ましい実施形態において、ゲンチシン酸又はその塩は、0.056%(w/v)以下の量で製剤中に存在する。
【0052】
本発明の製剤は、約4~約8のpHを有する。当業者であれば、製剤のpHが、式(I)の化合物又はその複合体と製剤の残りの賦形剤との組合せに起因する製剤の固有の特性であることを理解するであろう。本発明者らは、このpH範囲が最適な放射性標識効率を提供することを見出した。
【0053】
一実施形態において、製剤のpHは約4~約8である。一実施形態において、製剤のpHは約4である。別の実施形態において、製剤のpHは約4.5である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.0である。一実施形態において、製剤のpHは約5.5である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.6である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.7である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.8である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.9である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.0である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.1である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.2である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.3である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.4である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.5である。別の実施形態において、製剤のpHは約7.0である。別の実施形態において、製剤のpHは約7.5である。別の実施形態において、製剤のpHは約8.0である。好ましい実施形態において、製剤のpHは約6.0である。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.06%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。一実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。当業者であれば、水性製剤中に存在する式(I)-Cuイオン複合体の量は、様々なニーズに合わせるために修正することができることを理解すると予想される。
【0055】
一実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.06%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。一実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0056】
一実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.06%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。一実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0057】
一実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.06%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.056%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0058】
一実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.06%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び約0.056%のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム及び0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0059】
本発明の水性製剤は、緩衝塩として酢酸塩も含んでもよい。酢酸塩は、酢酸アンモニウム又は酢酸ナトリウムであってもよい。
【0060】
本発明者らは、製剤をL-メチオニン又はその塩の添加により更に安定化し得ることも見出した。式(I)の化合物、エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩を含む製剤にL-メチオニンを添加することで、式(I)の放射性標識複合体の放射線分解を防止する又は最小限に抑えることにより製剤の安定性は更に高まる。本発明者らは、式(I)の化合物及びCuイオンを含む製剤にL-メチオニンを添加することにより、CuイオンがCuの放射性同位体である場合、より高い開始放射活性を有する製剤が得られることも見出した。
【0061】
したがって、本発明は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩:
【0062】
【化8】
【0063】
を含む、非経口投与のための水性製剤であって、
約7~約13%(v/v)のエタノール;
約0.3~約1.2%(w/v)の塩化ナトリウム;
約0.02~約0.1%(w/v)のゲンチシン酸又はその塩;及び
約1~約4mg/mLのL-メチオニン又はその塩
を更に含み、
約4~約8の間のpHを有する、水性製剤が提供される。
【0064】
一実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約1mg/mL~約4mg/mLの量で製剤中に存在する。一実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約1.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約1.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約2.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約2.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約3.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約3.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニン又はその塩は、約4.0mg/mLの量で製剤中に存在する。
【0065】
更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.06%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。当業者であれば、水性製剤中に存在する式(I)-Cuイオン複合体の量は、様々なニーズに合わせるために修正することができることを理解するであろうと予想される。
【0066】
更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.06%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。一実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、0.9%(w/v)以下の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0067】
更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.06%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。一実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、0.9%(w/v)以下の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0068】
更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.06%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、64Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0069】
更なる実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.06%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%(v/v)のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、約0.056%のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。別の実施形態において、本発明の水性製剤は、67Cuイオンと複合体化した、酢酸塩としての式(I)の化合物、約10%のエタノール、約0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、0.056%以下のゲンチシン酸又はその塩、及び約2.5mg/mLのL-メチオニン又はその塩を含み、約6.0のpHを有する。
【0070】
本発明によれば、64Cuと式(I)の化合物との複合体の製剤は、少なくとも45時間の時間にわたって少なくとも約90%の放射化学的純度を有し得る。これは、製剤中に存在する64Cu放射性同位体の少なくとも約90%が、製剤の調製後、少なくとも45時間、式(I)の化合物又はその塩と複合体化していることを意味する。製剤中に存在する64Cu放射性同位体が式(I)の化合物又はその塩と複合体化していない場合、64Cu放射性同位体は、遊離64Cuイオンとして、又は放射線分解生成物の一部として存在し得る。
【0071】
一実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約90%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約91%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約92%である。
【0072】
別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約93%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約94%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約95%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約96%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約97%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約98%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約45時間の時点で約99%である。
【0073】
一実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製直後、約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約1時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約3時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約6時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約9時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約12時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約15時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約18時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約21時間後に約99%である。別の実施形態において、64Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約24時間後に約99%である。
【0074】
本発明によれば、67Cuと式(I)の化合物との複合体の製剤も、少なくとも11時間の時間にわたって少なくとも90%の放射化学的純度を有し得る。これは、製剤中に存在する67Cu放射性同位体の少なくとも約90%が、製剤の調製後、少なくとも11時間、式(I)の化合物又はその塩と複合体化していることを意味する。製剤中に存在する67Cu放射性同位体が式(I)の化合物又はその塩と複合体化していない場合、67Cu放射性同位体は、遊離67Cuイオンとして、又は放射線分解生成物の一部として存在し得る。
【0075】
一実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約90%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約91%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約92%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約93%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約94%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約95%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約96%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約97%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約98%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約11時間の時点で約99%である。
【0076】
一実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製直後、約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約1時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約3時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約6時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約9時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約12時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約15時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約18時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約21時間後に約99%である。別の実施形態において、67Cuと式(I)の化合物又はその塩との複合体を含む本発明の製剤の放射化学的純度は、製剤の調製後、約24時間後に約99%である。
【0077】
本発明の水性製剤の調製
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩は、緩衝溶液の存在下で式(I)の化合物又はその塩をCuイオンの溶液と混合することにより得ることができる。次いで、溶液を濾過し、その後、洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む製剤を得ることができる。したがって、本発明は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を含む水性製剤を調製するための方法であって、
i)酢酸塩の緩衝溶液を調製する工程であって、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を更に含む、工程;
ii)式(I)の化合物又はその塩を、工程i)から得られた緩衝溶液に溶解する工程;
iii)Cuイオンの溶液を、工程ii)から得られた溶液に添加する工程;
iv)工程iii)から得られた溶液を、固定相上に濾過捕集する工程;及び
v)工程iv)の固定相を、エタノール及び生理食塩水で洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩を含む水性製剤を回収する工程
を含む、方法を提供する。
【0078】
緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの溶液であってもよい。或いは、緩衝溶液は、酢酸ナトリウムの溶液であってもよい。酢酸塩を用いる緩衝溶液を使用して、式(I)の化合物又はその塩と、Cuイオンとの最大で迅速な複合体化を可能にする範囲にpHを維持する。緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.08~約0.12mol/Lの間の濃度で含んでいてもよい。一実施形態において、緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.08mol/Lの濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.09mol/Lの濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.1mol/Lの濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.11mol/Lの濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、酢酸アンモニウムの水溶液を約0.12mol/Lの濃度で含む。好ましい実施形態において、緩衝溶液は、0.1mol/Lの水溶液を含む。
【0079】
緩衝溶液は、エタノールも成分として含む。既に記載した通り、エタノールは、無水であってもよいし、又は当技術分野で公知の乾燥手順に既に供されていてもよい。緩衝溶液は、エタノールを約3~約11%(v/v)の間の濃度で含んでいてもよい。一実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約3%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約3.5%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約4%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約4.5%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約5%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約6%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約7%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約8%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約9%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約10%(v/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約11%(v/v)の濃度で含む。好ましい実施形態において、緩衝溶液は、エタノールを約10%(v/v)の濃度で含む。
【0080】
緩衝溶液は、ゲンチシン酸又はその塩も成分として含む。既に記載した通り、ゲンチシン酸の塩は、ナトリウム塩又はナトリウム塩水和物を含み得る。ゲンチシン酸の他の塩もまた企図される。緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.1~約0.55%(w/v)の間の濃度で含んでもよい。一実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.1%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.15%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.2%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.25%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.3%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.35%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.4%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.45%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.5%(w/v)の濃度で含む。別の実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.55%(w/v)の濃度で含む。好ましい実施形態において、緩衝溶液は、ゲンチシン酸ナトリウムを約0.228%(w/v)の濃度で含む。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を酢酸アンモニウムの水溶液と混合することにより調製することができる。緩衝溶液は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を酢酸アンモニウムの水溶液に順次添加することにより調製してもよいし、或いは、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を酢酸アンモニウムの溶液に一緒に添加してもよい。本発明の一実施形態において、緩衝溶液は、約4~11%(v/v)の濃度のエタノール及び約0.5%(w/v)の濃度のゲンチシン酸又はその塩と共に、約0.1Mの濃度の酢酸アンモニウムを含む。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物又はその塩は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。式(I)の化合物又はその塩は、固体として得ることができる。一実施形態において、式(I)の化合物又はその塩は、凍結乾燥粉末として得られる。一実施形態において、凍結乾燥粉末として得られた式(I)の化合物又はその塩は、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。一実施形態において、凍結乾燥粉末として約15μg~約65μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約15μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約20μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約25μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約30μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約35μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約40μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約45μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約50μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約55μgの式(
I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約60μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。別の実施形態において、凍結乾燥粉末として約65μgの式(I)の化合物又はその塩が、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液と混合される。
【0083】
Cuイオンの溶液は、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物に添加され、一定の時間静置される。
【0084】
一実施形態において、Cuイオンの溶液は、Cu塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、銅を含有する塩化物塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、塩化銅(II)塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、60Cu放射性同位体を含有する銅塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、61Cu放射性同位体を含有する塩化物塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、64Cu放射性同位体を含有する塩化物塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、67Cu放射性同位体を含有する塩化物塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、放射活性塩化銅(II)塩の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、塩化銅(II)塩の溶液であり、銅は61Cu同位体である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、塩化銅(II)塩の溶液であり、銅は64Cu同位体である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、塩化銅(II)塩の溶液であり、銅は67Cu同位体である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、[61Cu]CuCl2の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、[64Cu]CuCl2の溶液である。別の実施形態において、Cuイオンの溶液は、[67Cu]CuCl2の溶液である。
【0085】
Cuイオンの溶液は、水溶液として提供される。Cuイオンは、塩酸の水溶液中で提供され得る。一実施形態において、Cuイオンは、約0.01~約0.1mol/Lの間の塩酸の溶液中で提供される。一実施形態において、Cuイオンは、約0.01mol/Lの塩酸の溶液中で提供される。別の実施形態において、Cuイオンは、約0.02mol/Lの塩酸の溶液中で提供される。別の実施形態において、Cuイオンは、約0.05mol/Lの塩酸の溶液中で提供される。別の実施形態において、Cuイオンは、約0.075mol/Lの塩酸の溶液中で提供される。別の実施形態において、Cuイオンは、約0.1mol/Lの塩酸の溶液中で提供される。好ましい実施形態において、Cuイオンは、約0.05mol/Lの塩酸の溶液中の[64Cu]CuCl2として提供される。別の好ましい実施形態において、Cuイオンは、約0.05mol/Lの塩酸の溶液中の[67Cu]CuCl2として提供される。
【0086】
64Cu-放射性同位体の溶液は、約750~約3500MBqの間の放射活性を有する水溶液として提供される。一実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約750MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約1000MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約1250MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約1500MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約1750MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約2000MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約2250MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約2500MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約2750MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約3000MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約3250MBqである。別の実施形態において、64Cu-放射性同位体溶液の放射活性は、約3500MBqである。
【0087】
67Cu-放射性同位体の溶液は、約1000~約5000MBqの間の放射活性を有する水溶液として提供される。一実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約1000MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約1500MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約2000MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約2500MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約3000MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約3500MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約4000MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約4500MBqである。別の実施形態において、67Cu-放射性同位体の放射活性は、約5000MBqである。
【0088】
Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、室温で静置してもよい。混合物を撹拌しながら静置してもよいし、或いは、混合物は撹拌することなく静置される。混合物は約5~約25分間静置してもよい。一実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約5分間静置される。別の実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約10分間静置される。別の実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約15分間静置される。別の実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約20分間静置される。別の実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約25分間静置される。好ましい実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約15分間静置される。別の好ましい実施形態において、64Cu-放射性同位体と、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、撹拌することなく約20分間静置される。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、Cuイオンと、式(I)の化合物又はその塩と、エタノール及びゲンチシン酸又はその塩を含む酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、濾過される。混合物は、溶液中に残っている可能性がある酢酸塩を除去するために濾過され得る。混合物は固相抽出プロセスに通して濾過してもよい。混合物は固相抽出プロセスに通して濾過してもよく、固相抽出カートリッジの固定相は、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物又はその塩、いずれかの複合体化していない式(I)の化合物又はその塩、及びいくらかの存在する塩の形態のゲンチシン酸、例えばゲンチシン酸ナトリウムを保持する。本明細書で使用される場合、用語「固定相」は、固相抽出カートリッジ内に保持されおり、化合物の極性に基づく化合物の分離を可能にする樹脂状物質を指す。
【0090】
本明細書に記載の通りの固相抽出プロセスは、逆相固定相を使用し得る。本明細書で使用される場合、固定相に関して用語「逆相」は、固定相が疎水性又は非荷電の分子に対して親和性を有するような性質上疎水性である固定相を指す。逆相固定相の例としては、Phenomenex Strata-X 33u Polymeric Reversed Phase、Waters tC18又はWaters C18を挙げることができる。他の同様の固定相を使用してもよい。固相抽出プロセスが逆相固定相を使用するとき、緩衝溶液からの酢酸アンモニウム、いずれかの遊離Cuイオン、及び大部分の残っているゲンチシン酸又はその塩は、固定相により保持されず、これらの成分は廃棄される。
【0091】
一実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物と、酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、固相抽出カートリッジに通して濾過される。一実施形態において、Cuイオンと、式(I)の化合物、酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジに通して濾過される。一実施形態において、緩衝溶液からの酢酸アンモニウム及びゲンチシン酸は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジにより除去される。一実施形態において、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジにより保持される。好ましい実施形態において、64Cu-放射性同位体と、式(I)の化合物と、酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジに通して濾過される。好ましい実施形態において、64Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジにより保持される。別の好ましい実施形態において、67Cu-放射性同位体と、式(I)の化合物と、酢酸アンモニウムの緩衝水溶液との混合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジに通して濾過される。別の好ましい実施形態において、67Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物は、逆相固定相を有する固相抽出カートリッジにより保持される。
【0092】
Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物は、溶媒で洗浄することにより、固定相を含有する固相抽出カートリッジから溶出される。固相抽出カートリッジが逆相固定相を含有するとき、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を溶出するには、固定相をエタノール、生理食塩水及び/又は別の溶媒で洗浄する必要がある。一実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノールで洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を溶出する。別の実施形態において、固相抽出カートリッジを生理食塩水で洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を溶出する。別の実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を溶出する。好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を溶出する。好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、本発明の製剤を得る。好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物、及びいずれかの保持された成分、例えばゲンチシン酸又はその塩を溶出する。
【0093】
上述のように、本発明者らは、L-メチオニンを更に含む、Cuイオンと複合体化した式(I)の製剤が、放射線分解に対して更に大きな安定性を示すことを見出した。別の好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物、及びゲンチシン酸又はその塩を溶出し、生理食塩水中のL-メチオニンの溶液に入れた。別の好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物、酢酸アンモニウム及びゲンチシン酸又はその塩を溶出し、生理食塩水中のL-メチオニンの溶液に入れた。別の好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジを洗浄して入れる生理食塩溶液中L-メチオニンの濃度は約2.5mg/mLである。別の好ましい実施形態において、固相抽出カートリッジをエタノール及び生理食塩水で順次洗浄して、本発明の製剤を得る。
【0094】
当業者であれば、製剤の賦形剤が、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物を固定相から溶出するために使用される溶媒を含むこと、及び使用される各溶媒の量が本発明の製剤中の各賦形剤の量に関連することを理解すると予想される。
【0095】
当業者であれば、本開示が、本発明による製剤を製造するための手動の方法を提供することを理解するであろう。当業者であれば、本発明による製剤を得るために、本明細書に記載の工程を、適切な自動化放射性合成モジュールを使用することにより自動化することができることを理解すると予想される。
【0096】
本発明者らは、本明細書に開示される製剤が、より高い開始放射活性に鑑みて、より大きな安定性を有し、低減した放射線分解を示すことを見出した。この向上した安定性は、所与の放射活性での製剤の放射化学的純度の増加に起因し得る。本発明の製剤の安定性は、64Cu-SARTATEの製剤については製造後45時間まで、67Cu-SARTATEの製剤については製造後11時間までの時間、観察され得る。本発明の製剤が処置又は治療の目的に使用される場合、より大きな安定性は、複数の遠隔地における複数の患者のための用量を単一の施設で同時に調製することができることを意味し得る。これは、製造のための資源が必要とされるのが複数の施設ではなく、単一の施設においてであり、製剤の生産でより高い効率を達成することができることを意味し得る。本発明の製剤が画像化目的に使用される場合、臨床画像化現場が、注入の準備がされた剤形を受け取ることができるので、更なる利点がもたらされ得る。このことは、専用の放射性医薬品生産施設が存在しない臨床現場に特に有利である可能性がある。
【0097】
本発明の製剤は、リガンド-放射性同位体複合体を含み、リガンドは、式(I)の化合物又はその塩である。式(I)の化合物又はその塩、及び放射性同位体は、別個の容器で提供してもよい。或いは、式(I)の化合物又はその塩、及び放射性同位体は、リガンド-放射性同位体複合体として一緒に提供してもよい。
【0098】
式(I)の化合物又はその塩からなる容器は、式(I)の化合物又はその塩を凍結乾燥粉末として提供することができる。容器は、-20℃~20℃の間の温度で提供されてもよい。
【0099】
製剤は、放射性同位体の容器と、リガンドが入った別個の容器と、本発明の水性製剤を作製するための指示書とを含むキットとして提供されてもよい。一実施形態において、本発明のキットは、64Cu放射性同位体の溶液を提供する容器、及び式(I)の化合物又はその塩を提供する別個の容器を含む。放射性同位体を提供する容器は、金属が放射性核種である、金属塩の溶液を含有してもよい。
【0100】
一実施形態において、本発明のキットは、64Cu放射性同位体の溶液が入った容器を含む。更なる実施形態において、本発明のキットは、64Cu放射性同位体を含有する銅塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、64Cu放射性同位体を含有する塩化物塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、放射活性塩化銅(II)塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、塩化銅(II)塩の溶液が入った容器を含み、銅イオンは64Cu同位体である。別の実施形態において、本発明のキットは、[64Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含む。
【0101】
一実施形態において、本発明のキットは、67Cu放射性同位体の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、67Cu放射性同位体を含有する銅塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、67Cu放射性同位体を含有する塩化物塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、放射活性塩化銅(II)塩の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、塩化銅(II)塩の溶液が入った容器を含み、銅イオンは67Cu同位体である。別の実施形態において、本発明のキットは、[67Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含む。
【0102】
放射性同位体の溶液は、典型的には、水溶液として提供される。一実施形態において、本発明のキットは、放射性同位体を水溶液の形態で提供する。更なる実施形態において、本発明のキットは、放射性同位体を酸性水溶液の形態で提供する。別の実施形態において、本発明のキットは、放射性同位体を塩酸中溶液として提供する。放射性同位体は、約0.01~約0.1mol/Lの間の濃度の塩酸中溶液として提供されてもよい。
【0103】
一実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含む。一実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.02mol/Lの濃度である。一実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.05mol/Lの濃度である。一実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.1mol/Lの濃度である。
【0104】
一実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[67Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[67Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.02mol/Lの濃度である。別の実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[67Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.05mol/Lの濃度である。別の実施形態において、本発明のキットは、塩酸中の[67Cu]CuCl2の溶液が入った容器を含み、塩酸は約0.1mol/Lの濃度である。
【0105】
キットは、緩衝溶液中のエタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸からなる容器を更に含んでいてもよい。この容器は、水溶液中のエタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸を提供してもよいし、或いは、容器は、エタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸のみからなっていてもよい。一実施形態において、キットは、酢酸アンモニウム緩衝溶液中のエタノール、塩化ナトリウム及びゲンチシン酸又はその塩からなる容器を含む。
【0106】
キットは、緩衝溶液中のエタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩からなる容器も含んでいてもよい。キットの容器は、水溶液中のエタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩を提供してもよいし、或いは、容器は、エタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩及びL-メチオニン又はその塩のみからなっていてもよい。一実施形態において、キットは、エタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩からなる容器を含む。一実施形態において、キットは、酢酸アンモニウム緩衝溶液中のエタノール、塩化ナトリウム、ゲンチシン酸又はその塩、及びL-メチオニン又はその塩からなる容器を含む。
【0107】
本発明の製剤の使用
本発明の製剤は、医学における診断及び処置の目的に特に有用であり得る。適当な標的フラグメントを有するリガンドとの複合体を使用して、特異的組織型の位置を特定することができる。このような複合体がインビボでの診断及び処置における使用に適していると見なされるためには、複合体は、溶液中の複合体の必要な溶解性及び安定性の特性に加えて、生理的条件下での適当な動態、安定性及びクリアランスの特性を示さなければならない。本明細書で使用される場合、用語「複合体」は、金属イオンが放射活性同位体である、或いは金属イオンが非放射活性同位体である、リガンド-金属イオン複合体に関するものであり得る。
【0108】
したがって、本発明は、本明細書で定義した通りの製剤の有効量を対象に投与することを含む、放射線画像化のための方法、対象における疾患を診断するための方法、又は対象における疾患の治療のための方法を提供する。本発明者らは、本発明の製剤を、がんの、放射線画像化のための方法、診断のための方法、又は治療のための方法に使用することができることを見出した。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「がん」は、身体の他の部分に浸潤又は拡散する可能性がある異常な細胞増殖を特徴とする新生物疾患のクラスを広く包含する。これらは、身体の他の部分に拡散しない良性腫瘍と対比されるべきであり、したがって、本明細書で使用される定義は、全ての悪性(がん性)疾患状態を含む。したがって、用語は、腫瘍の処置を包含する。
【0110】
したがって、用語「腫瘍」は、任意の悪性のがん性又は前がん性細胞増殖を定義するために一般に使用され、白血病を含み得るが、固体腫瘍又は癌腫、例えば、黒色腫、結腸、肺、卵巣、皮膚、乳房、膵臓、咽頭、脳、前立腺、CNS、及び腎臓のがん(並びに他のがん)を特に対象とする。
【0111】
ソマトスタチン受容体、特にSSTR2はまた、膵臓、胃腸及び肺神経内分泌腫瘍(NET)、下垂体腺腫、乳癌、髄膜腫、神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、褐色細胞腫及び傍神経節腫を含む、ある特定の腫瘍及びがんの原形質膜で高度に発現する。このような腫瘍上にソマトスタチン受容体が存在することは、安定なソマトスタチン受容体の開発及び臨床応用、例えばオクトレオテートモチーフを有する化合物につながっている。本発明者らは、本発明の製剤に見られるような式(I)の化合物とCuイオンとの複合体が、ソマトスタチン受容体、特にサブタイプ2及びサブタイプ5のソマトスタチン受容体への結合に特に有用性を示していることを見出した。ある特定の実施形態において、製剤を、ソマトスタチン受容体が発現する又は高度に発現するがんの放射線画像化、診断又は処置で使用してもよい。
【0112】
本発明の製剤は、ソマトスタチンの臨床的に有用な類似体、オクトレオチドに類似するオクトレオテートモチーフを含有する式(I)の化合物を含む。ソマトスタチンは、胃腸管の神経内分泌細胞により放出され、5つのソマトスタチン受容体サブタイプ(SSTR1~5)を通して作用する。オクトレオテートモチーフのオクトレオチドに類似する性質を考慮に入れると、式(I)の化合物は、ソマトスタチン受容体が存在する特定の部位に局在化及び結合し得る。同様に、Cuイオンと複合体化した式(I)の化合物も、同じ部位に局在化及び結合し得る。
【0113】
本発明の放射性同位体-リガンド複合体は、64Cu等の放射性同位体を含んでもよい。64Cu同位体は約12.7時間の半減期を有し、陽電子放射及びベータ崩壊の両方により崩壊し、そのため64Cu-標識複合体の使用は放射線画像化の様々なモードでの使用に適している。特に、64Cuの崩壊特性及び半減期のため、この放射性同位体は、陽電子放射断層撮影(PET)及び単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)で使用するのに有利な選択肢となる。本発明の放射性同位体-リガンド複合体は、61Cu等の放射性同位体を含んでもよい。61Cu同位体は約3時間の半減期を有し、陽電子放射により崩壊し、そのため61Cu-標識複合体の使用は放射線画像化の様々なモードでの使用に適している。本発明の放射性同位体-リガンド複合体は、67Cu等の放射性同位体も含んでもよい。67Cu同位体は約61.8時間の半減期を有し、ベータ放射により崩壊し、そのため67Cu-標識複合体の使用はSPECT画像化での使用に適している。67Cu-標識複合体は、放射線治療処置としての使用に適している場合もある。
【0114】
式(I)の化合物及びCu放射性同位体、例えば60Cu、61Cu、64Cu又は67Cuを含む製剤の有効量の投与は、式(I)の化合物とCu放射性同位体との複合体がソマトスタチン受容体に結合することにつながり得る。ソマトスタチン受容体が腫瘍の表面上に発現する場合、式(I)の化合物とCuイオンとの複合体はソマトスタチン受容体に結合し得る。一実施形態において、本発明は、式(I)の化合物及びCuイオンを含む製剤を対象に投与することを含む、放射線画像化のための方法を提供する。一実施形態において、式(I)の化合物及び64Cu又は67Cuイオンを含む製剤を、放射線画像化のための方法で使用することができる。式(I)の化合物及びCu放射性同位体を含む製剤を投与された対象を、例えばPET又はSPECTによりモニターすることにより、腫瘍部位の視覚化及びその後の検出が可能となる。放射線画像化により得られる視覚化情報は、任意のこのような腫瘍部位の位置に関する情報を提供し得る。放射性標識複合体を投与された対象を、例えばSPECTによりモニターすることにより、腫瘍部位の視覚化及びその後の検出が可能となる。これは、存在する場合には腫瘍の位置に関する情報を提供する。より後の時点での繰り返し画像化によって、放射性同位体-リガンド複合体のクリアランスをモニターすることが可能となり、これにより線量測定推定値を計算することができる。当業者であれば、放射線画像化を容易にするために投与すべき量は、変動する可能性があり、それに続いて、画像化の対象及び意図する部位の性質に依存することを理解すると予想される。
【0115】
複合体が放射線画像化目的に適したものとなるためには、放射性同位体-リガンド複合体は、十分な代謝安定性、すなわち、必要な時間、放射性同位体がリガンドに結合して複合体が無傷のままであることを示さなければならない。本発明は、放射性同位体損失及び代謝分解の不存在により証明される通り45時間まで無傷のままである、式(I)の化合物と64Cuとの複合体を提供する。
【0116】
本発明の製剤は、放射線画像化、診断又は治療の目的のために対象に投与することができる。投与は非経口経路によるが、静脈内注射による投与が好ましい。或いは、本発明の製剤を、体循環内への送達のために、動脈内又は他の経路により与えてもよい。次いで、製剤が投与される対象をPETスキャナに入れ、放射性同位体-リガンド複合体の局在、続いて任意の腫瘍の位置を示す画像を得る。次いで、これにより腫瘍の診断及び検出が可能となる。或いは、本発明の製剤に曝露された試料(例えば、血液又は組織試料)を、放射線画像を得るためにガンマ線分光分析、ガンマ線計数、液体シンチレーション計数、オートラジオグラフィー又はベータプローブにより分析することができる。
【0117】
一実施形態において、本発明は、腫瘍又はがんの放射線画像化のための方法における、式(I)の化合物を含む製剤の使用を提供する。当業者であれば、対象の放射線画像化から得られる情報を、対象における腫瘍又はがんの診断で使用することができることを理解するであろう。一実施形態において、本発明は、腫瘍又はがんの診断のための方法を提供する。更なる実施形態において、腫瘍又はがんは、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍又はがんであってもよい。一実施形態において、腫瘍又はがんは、神経内分泌腫瘍である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、下垂体腺腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、神経芽細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、髄膜腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、髄芽細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、乳癌である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、褐色細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、傍神経節腫である。別の実施形態において、腫瘍は、膵臓腫瘍である。別の実施形態において、腫瘍は、胃腸腫瘍である。
【0118】
本発明の製剤が式(I)の化合物及びCu放射性同位体を含む場合、製剤の投与は、腫瘍又はがんを処置し得る。上述のように、式(I)の化合物は、腫瘍又はがんの部位の表面上のソマトスタチン受容体に結合する場合があり、化合物が、ソマトスタチン受容体がある位置に結合することにより、Cu放射性同位体もこの位置に近接することになる。Cu放射性同位体に放射性崩壊が起こり、崩壊モードが、選択された正確な放射性同位体に依存するとき、腫瘍又はがんが式(I)の化合物及びCu放射性同位体に近接しているため、崩壊の生成物は腫瘍又はがんの処置に有用であり得る。
【0119】
一実施形態において、本発明は、腫瘍又はがんの処置のための方法における、式(I)の化合物及びCu放射性同位体を含む製剤の使用を提供する。一実施形態において、腫瘍又はがんは、神経内分泌腫瘍である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、下垂体腺腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、神経芽細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、髄膜腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、髄芽細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、乳癌である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、褐色細胞腫である。別の実施形態において、腫瘍又はがんは、傍神経節腫である。別の実施形態において、腫瘍は、膵臓腫瘍である。別の実施形態において、腫瘍は、胃腸腫瘍である。
【0120】
本明細書におけるいかなる先行刊行物(若しくはそれに由来する情報)、又は公知のいかなる事柄に対する言及も、その先行刊行物(若しくはそれに由来する情報)又は公知の事柄が、本明細書が関連する努力傾注分野における共通の一般知識の一部を形成することの承認又は容認又は何らかの形の示唆とは見なされず、見なされるべきでもない。
【0121】
本明細書及び後に続く特許請求の範囲の全体にわたって、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記載された完全体若しくは工程又は完全体若しくは工程の群を包含することを意味するが、任意の他の完全体若しくは工程又は完全体若しくは工程の群を排除することを意味しないことは理解されると予想される。
【実施例
【0122】
(実施例1)
放射線分解を低減するためにエタノール及びゲンチシン酸ナトリウムを賦形剤として組み入れた低用量64Cu-SARTATE製剤の調製
0.1M酢酸アンモニウムの緩衝溶液を調製し、緩衝溶液が4~10%(v/v)の濃度でエタノールも含有するようにする。緩衝溶液がゲンチシン酸ナトリウムも含有するようにし、5mL容量の緩衝溶液が38mgのゲンチシン酸ナトリウムを含有するようにする。
【0123】
式(I)の化合物を凍結乾燥粉末として得る。20μgの凍結乾燥形態の式(I)の化合物を、5mLの調製した緩衝溶液に溶解する。
【0124】
0.05M塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液を調製し、300μL容量のこの溶液が1500MBqの[64Cu]を含有するようにする。300μL容量のこの[64Cu]CuCl2溶液を、酢酸アンモニウム緩衝液中の式(I)の化合物及びゲンチシン酸ナトリウムを含有する溶液に添加する。この合わせた溶液を、撹拌することなく室温で15分間静置する。
【0125】
次いで、溶液を固相抽出カートリッジに通して濾過する。次いで、カートリッジを1.0mLのエタノール、次いで9.0mLの生理食塩溶液で溶出して滅菌生成物バイアルに入れて、10mLの容量のエタノール/生理食塩溶液中の64Cu-SARTATEを得る。得られた溶液のHPLC分析は、図1で見ることができ、97%を超える放射化学的純度を示す。複数の時点にわたって得られた同じ生成物溶液の更なるHPLC分析は、図2で見ることができ、放射化学的純度が、11時間を超えて>90%のままであることを示す。
【0126】
(実施例2)
放射線分解を低減するためにエタノール、ゲンチシン酸ナトリウム及びL-メチオニンを賦形剤として組み入れた高用量64Cu-SARTATE製剤の調製
0.1M酢酸アンモニウムの緩衝溶液を調製し、緩衝溶液が4~10%(v/v)の濃度でエタノールも含有するようにする。緩衝溶液がゲンチシン酸ナトリウムも含有するようにし、5mL容量の緩衝溶液が114mgのゲンチシン酸ナトリウムを含有するようにする。
【0127】
式(I)の化合物を凍結乾燥粉末として得る。20μgの凍結乾燥形態の式(I)の化合物を、5mLの調製した緩衝溶液に溶解する。
【0128】
0.05M塩酸中の[64Cu]CuCl2の溶液を調製し、300μL容量のこの溶液が4650MBqの[64Cu]を含有するようにする。300μL容量のこの[64Cu]CuCl2溶液を、酢酸アンモニウム緩衝液中の式(I)の化合物及びゲンチシン酸ナトリウムを含有する溶液に添加する。この合わせた溶液を、撹拌することなく室温で15分間静置する。
【0129】
次いで、溶液を固相抽出カートリッジに通して濾過する。次いで、カートリッジを1.0mLのエタノール、次いで16.0mLの生理食塩溶液で溶出して、20mLの容量のエタノール/生理食塩溶液中の64Cu-SARTATEを得る。得られた溶液のHPLC分析は、図3で見ることができ、98%を超える放射化学的純度を示す。複数の時点にわたって得られた同じ生成物溶液の更なるHPLC分析は、図4で見ることができ、放射化学的純度が、45時間を超えて>90%のままであることを示す。
【0130】
(実施例3)
放射線分解を低減するためにエタノール、ゲンチシン酸ナトリウム及びL-メチオニンを賦形剤として組み入れた67Cu-SARTATE製剤の調製
0.1M酢酸アンモニウムの緩衝溶液を調製し、緩衝溶液が4~10%(v/v)の濃度でエタノールも含有するようにする。緩衝溶液がゲンチシン酸ナトリウムも含有するようにし、5mL容量の緩衝溶液が114mgのゲンチシン酸ナトリウムを含有するようにする。
【0131】
式(I)の化合物を凍結乾燥粉末として得る。60μgの凍結乾燥形態の式(I)の化合物を、5mLの調製した緩衝溶液に溶解する。
【0132】
0.05M塩酸中の[67Cu]CuCl2の溶液を調製し、300μL容量のこの溶液が4650MBqの[64Cu]を含有するようにする。300μL容量のこの[67Cu]CuCl2溶液を、酢酸アンモニウム緩衝液中の式(I)の化合物及びゲンチシン酸ナトリウムを含有する溶液に添加する。この合わせた溶液を、撹拌することなく室温で15分間静置する。
【0133】
次いで、溶液を固相抽出カートリッジに通して濾過する。次いで、カートリッジを1.0mLのエタノール、次いで16.0mLの生理食塩溶液で溶出して、L-メチオニンの溶液(3mLの生理食塩溶液中50mg)を含有する滅菌生成物バイアルに入れて、20mLの容量のエタノール/生理食塩溶液中の67Cu-SARTATEを得る。得られた溶液のHPLC分析は、図5で見ることができ、98%を超える放射化学的純度を示す。複数の時点にわたって得られた同じ生成物溶液の更なるHPLC分析は、図6で見ることができ、放射化学的純度が、11時間を超えて>90%のままであることを示す。
【0134】
(実施例4)
64Cu-SARTATEのインビトロ血清安定性
64Cu-SARTATE(放射化学的純度>99%)と新鮮ヒト血清とのインキュベーションは、高い代謝安定性を実証した。得られた64Cu-SARTATEとインキュベートした血清のHPLC分析は、図7で見ることができ、3時間、20時間、23時間、26時間及び34時間の時点での非タンパク質結合画分における>90%の放射活性が依然として、無傷の放射性ペプチドを表すキレート剤結合であったことを示し、銅の損失又は測定可能な代謝分解が43時間まで検出されなかったことを示す。
【0135】
(実施例5)
64Cu-SARTATEのインビトロ内部移行及び細胞表面結合
64Cu-SARTATE内部移行及び細胞表面結合研究を、ソマトスタチン受容体2を有するA427-7細胞を使用して実施した。内部移行した、タンパク質1mg当たりの合計添加放射活性(%AR/mgタンパク質)の百分率は、時間と共に増加し、120分の時点で23.9±0.7に達した(図8)。30分以内に、40.2±0.7%AR/mgのタンパク質が細胞表面に結合する(図9)。この値は減少し、60分の時点で31.2±1.2、120分の時点で35.2±1.3となった。受容体媒介性内部移行及び細胞表面結合の両方を、培地への冷Tyr3-オクトレオテートの添加により部分的に阻害した。親A427細胞における64Cu-SARTATEの正規化した取り込みは、SSTR2発現A427-7細胞におけるものよりも著しく少なく、受容体特異的蓄積の有意性を実証している(図10)。
【0136】
(実施例6)
64Cu-SARTATEのインビボ生体内分布
Cu-SARTATEの生体内分布を、A427-7腫瘍保有Balb/cヌードマウスにおいて64Cu-SARTATEを使用して調査した(図11)。64Cu-SARTATEは、2時間の時点で有効な血液クリアランスを有し(0.4±0.2%ID/g、%ID/gは組織1g当たりの注入用量の百分率)、24時間の時点で更なるクリアランスを有した(0.1±0.02%ID/g)。肝臓(3.1±1.3%ID/g)及び腎臓(35.2±5.4%ID/g)による64Cu-SARTATEの取り込みは、投与後2時間の時点で最も高かった。投与後24時間までに、64Cu SARTATEの腎臓取り込みは71%下がって10.1±3.5%ID/gになり、64Cu-SARTATEの有効な腎クリアランスを示唆した。投与後24時間の時点で、肺及び脾臓(すなわち、非標的臓器)における64Cu-SARTATEの取り込みは、それぞれ0.6±0.3%ID/g及び0.8±0.2%ID/gである一方、筋肉蓄積は24時間の時点で0.1±0.01%ID/gであった。投与後2時間の時点での64Cu-SARTATEの腫瘍取り込みは31.2±13.1%ID/gと高く、24時間の時点で31.4±14.0%ID/gになり、高いままであった。受容体をブロックするための過剰のTyr3-オクトレオテート(XS Y3-TATE)の同時投与によって、2時間の時点での64Cu-SARTATEの腫瘍取り込みは有意に81%低減して5.9±0.3%ID/gになる一方、非標的組織取り込みは、腎臓で135%増加して47.7±6.3%ID/gになったことにより示される通り増加した。
【0137】
(実施例7)
64Cu-SARTATEのインビボPET画像化
過剰のTyr3-オクトレオテートによるブロッキングがある場合とない場合の、2時間及び24時間の時点でのA427-7腫瘍保有Balb/cマウスの小動物PET画像を図12に示す。腫瘍は、64Cu-SARTATEの注入後2時間の時点で、平均の腫瘍対バックグラウンド比が48であり、明確に視認できる。24時間の時点での腫瘍対バックグラウンド比は45で一定のままであったが、これ複合体の高度な特異的結合及び安定性を示している。過剰のTyr3-オクトレオテートの同時投与は、腫瘍取り込みを効果的にブロックし、腫瘍対バックグラウンド比は2時間の時点で3.1になり、24時間の時点で定量限界未満になった。ブロッキング実験は、64Cu-SARTATEのSSTR2に対する特異性及び低レベルの非特異的結合を更に示唆する。腎臓及び膀胱における実質的な取り込みは全ての動物で明らかであり、腎クリアランスが主要な排泄経路であることを示唆した。腫瘍対腎臓比は2時間の時点で1.6であり、24時間の時点で2.8に増加した。
【0138】
(実施例8)
SARTATEのインビボ毒性学
Sprague Dawleyラットにおける単回投与前臨床毒性研究を行って、静脈内注射により投与された場合のSARTATEの潜在的な毒性を評価した。試験は、1:1の比のSARTATE-銅-複合体(SCC)の溶液及び未標識SARTATEリガンド(SL)の溶液で実施した。研究は、OECD GLP原則の要件に従って行った。
【0139】
試験アイテムを、3mL/kgの容量のビヒクル中、50、250及び1000μg/kgの3種の用量で、各群10匹のラット(5匹/性別)で6群に1回投与した。各群10匹のラット(5匹/性別)の2つのビヒクル対照群には、同じ容量の用量でビヒクルのみ(0.9%塩化ナトリウム及び0.056%ゲンチシン酸中10%エタノール)を投与した。
【0140】
主研究からの4群のラット(ビヒクルの1群、並びに50、250及び1000μg/kgの試験アイテムで処置した3群)を、2日目に屠殺した。回復研究からの各群10匹のラット残りの4群(ビヒクルの1群、並びに50、250及び1000μg/kgの試験アイテムで処置した3群)を14日間の無処置期間観察し、15日目に屠殺して、任意の毒性の可逆性を評価した。
【0141】
以下のパラメータを評価した:死亡数、毎日の臨床観察、1週間毎の体重、1週間毎の食物消費、血液学、生化学、尿検査、臓器質量、及び屠殺の日の肉眼的剖検。徹底的な組織病理学的検査を全ての動物に実施した。
【0142】
処置に関連する死亡は、処置及び回復の両方の期間中、ビヒクル群又は処置群のいずれにおいても観察されなかった。試験アイテムは、2日間及び15日間の実験期間中、いずれの動物においても、処置に関連する臨床的異常を生じなかった。処置群及びビヒクル対照群は、2日間及び15日間の実験期間にわたって、同等の体重増加を示した。食餌摂取量は、2日間及び15日間の実験期間、対照群及び処置群において同様であった。血液学、血液生化学及び尿分析では、試験アイテム関連の影響は認められなかった。肉眼的異常は、全ての動物の剖検中に確認されなかった。臓器質量、及びこの研究において組織病理学的に検査した全ての組織に対して、何らかの試験アイテム関連の影響があるという証拠は存在しなかった。
【0143】
研究の条件下、Sprague Dawleyラットにおいて50、250及び1000μg/kgで静脈内投与された試験アイテムは、毒性作用を生じなかった。したがって、無毒性量(No Observed Adverse Effect level)(NOAEL)は、1000μg/kg(1mg/kg)である。
【0144】
ラットにおける1mg/kgのNOAELは、0.16mg/kgのヒト等価用量(HED)、又は70kgの質量を有する患者における11.2mgの総用量に相当する。この臨床試験における最大可能総用量は、患者1人当たり0.02mg(20マイクログラム)ということになる。したがって、NOAELは、SARTATEの最大ヒト用量の50倍の安全マージンを表す。患者に投与される64Cu-SARTATEの用量は活性(200MBq)により決まるので、実際に注入されるSARTATEの見込み用量は総可能用量の一部になると予期され、これにより安全マージンは実質的に増加する。
【0145】
(実施例9)
SARTATEのインビトロ遺伝毒性
SARTATEの突然変異誘発能を評価するために、GLP AMES試験を、1:1の比のSARTATE-銅-複合体(SCC)の溶液及び未標識SARTATEリガンド(SL)の溶液で実施した。SL:SCC溶液は、適当なビヒクル対照の1プレート当たりの平均復帰突然変異体に対する、1プレート当たりの平均復帰突然変異体の適当な数倍増加を誘発しなかった。SL:SCC溶液は、5種のテスター株のうちのいずれで使用した用量レベルでもいかなる細胞毒性も示さなかった。生成物は非突然変異誘発性であると考えられる。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12