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特許7242554液化ガス及び/又は液化ガスから生じる自然ボイルオフガスを冷却するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】液化ガス及び/又は液化ガスから生じる自然ボイルオフガスを冷却するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230313BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B25/16 D
B63B25/16 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019562593
(86)(22)【出願日】2018-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061729
(87)【国際公開番号】W WO2018206510
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】1754186
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】マルタン、ビュイッサール
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ、デレトレ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ、ハカン
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0000334(US,A1)
【文献】特開2014-104847(JP,A)
【文献】特開2009-204026(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0115126(KR,A)
【文献】特表2014-514513(JP,A)
【文献】国際公開第2017/007167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備(12、112)用の自然ボイルオフガスを冷却するための装置(10、110)であって、
前記装置(10、110)は、
‐第1自然ボイルオフガス出口(45、145)を含む、液化ガスを貯蔵するためのメインタンク(14、114)と、
‐前記メインタンク内の液化ガスを取り込み、当該液化ガスを冷却するための冷却手段(170)と、
‐前記冷却手段により冷却された液化ガスを貯蔵するように構成された、冷却液化ガス用の二次タンク(30、130)と、
‐第1熱交換回路(40、140)であって、前記メインタンクの前記第1自然ボイルオフガス出口に接続される入口を含むことにより当該第1熱交換回路で自然ボイルオフガスが循環する、第1熱交換回路(40、140)と、
を備え、
前記第1熱交換回路を通過する前記自然ボイルオフガスが、前記二次タンクに貯蔵された冷却液化ガス、又は前記二次タンクから到来する冷却液化ガスにより冷却されるように、前記第1熱交換回路は前記二次タンクと協働するように構成される、
ことを特徴とする装置(10、100)。
【請求項2】
前記装置(10、110)は、第1分離ドラム(50、150)を更に含み、
前記第1分離ドラム(50、150)の入口が、前記第1熱交換回路(40、140)の出口に接続されて、前記第1分離ドラムに冷却された自然ボイルオフガス、及び再凝縮して冷却液化ガスを形成する自然ボイルオフガスが供給され、
前記第1分離ドラムは、第1自然ボイルオフガス出口と、第2冷却液化ガス出口と、を含み、
前記第2冷却液化ガス出口は、冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように前記メインタンクに接続される、
請求項1に記載の装置(10、110)。
【請求項3】
前記装置(10、110)は、第1分離ドラム(50、150)と、少なくとも1つの第1コンプレッサ(26、126)と、を含み、
前記第1コンプレッサ(26、126)の入口が、前記メインタンク(14、114)の前記第1自然ボイルオフガス出口、及び/又は前記第1分離ドラム(50、150)の前記第1自然ボイルオフガス出口に接続される、
請求項1または2に記載の装置(10、110)。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記二次タンク(30、130)内の液化ガス、又は前記二次タンク(30、130)から到来する液化ガスと熱交換により協働することが意図される第2熱交換回路(172)を含み、
前記第2熱交換回路において、前記液化ガスを冷却して冷却液化ガスを生成するように冷却流体が循環する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項5】
前記冷却手段は、
‐第2ドラム(24)であって、前記第2ドラム(24)の入口が、第1パイプ(18、118)の第1端部に接続され、前記第1パイプ(18、118)の第2端部が、前記メインタンク(14、114)に収容された前記液化ガスに浸漬されることが意図され、前記第1パイプは、前記第2ドラムに液化ガスを供給するように適合された第2ドラム(24)と、
‐第2パイプ(31)であって、前記第2パイプ(31)の第1端部が、前記第2ドラムの第1冷却液化ガス出口に接続され、前記第2パイプ(31)の第2端部が、前記二次タンクに接続されて、前記二次タンク(30、130)に冷却液化ガスが供給される第2パイプ(31)と、
を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項6】
前記装置(10、100)は、第1熱交換器(60)を含み、
前記第1熱交換器(60)の一次回路(60a)が、前記メインタンク(14)の液化ガス出口に接続される入口と、前記二次タンクに液化ガスを供給するように前記二次タンク(30)の入口に接続される出口と、を有し、
二次回路(60b)が、前記第1パイプ(18)に接続される入口と、前記第2ドラム(24)の前記入口に接続される出口と、を有する、
請求項5に記載の装置(10、110)。
【請求項7】
‐前記第1パイプ(18、118)の前記第2端部に接続される第1ポンプ(16a、116a)であって、液化ガスを前記第1パイプを介して前記メインタンクから前記第2ドラム(24)へ強制的に循環させるように、前記メインタンク(14、114)に収容された前記液化ガスに浸漬されることが意図された第1ポンプ(16a、116a)と、
‐冷却液化ガスを前記第2ドラム(24)から前記二次タンク(30、130)へ強制的に循環させるように、前記第2パイプ(31)に接続される第2ポンプ(35)と、
を含む、請求項5又は6に記載の装置(10、110)。
【請求項8】
前記第1パイプ(18、118)は、蒸発手段(19)を含む、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項9】
前記装置(10、110)は、少なくとも1つの第2コンプレッサ(28、128)を含み、
前記第2コンプレッサ(28、128)の入口が、前記メインタンク(14、114)の前記第1自然ボイルオフガス出口(45、145)に接続され、
前記第2コンプレッサは、前記第1熱交換回路(40、140)の前記入口に接続される出口を含む、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項10】
前記装置(10、110)は、第1分離ドラム(50、150)と、少なくとも1つの第2コンプレッサ(28、128)と、を含み、
前記第2コンプレッサ(28、128)の入口が、前記メインタンク(14、114)の前記第1自然ボイルオフガス出口(45、145)に接続され、
前記第2コンプレッサは、前記第1熱交換回路(40、140)の前記入口に接続される出口を含み、
前記第2コンプレッサ(28、128)の前記入口は、前記第2ドラム(24)の第2ガス出口、及び/又は前記第1分離ドラム(50、150)の第2ガス出口に更に接続される、
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項11】
前記装置(10、110)は、第1分離ドラム(50、150)と、少なくとも1つの第1コンプレッサ(26、126)と、を含み、
前記第1コンプレッサ(26、126)の入口が、前記メインタンク(14、114)の前記第1自然ボイルオフガス出口、及び/又は前記第1分離ドラム(50、150)の前記第1自然ボイルオフガス出口に接続され、
前記第2コンプレッサ(28)の前記入口は、前記第1コンプレッサ(26)の前記出口に接続される、
請求項9又は10に記載の装置(10、110)。
【請求項12】
前記装置(10、110)は、少なくとも1つの第1コンプレッサ(26、126)を含み、
前記第1又は第2コンプレッサ(26、28、126)は、特に前記エネルギー生産設備(12、112)に燃料ガスを供給するように適応された出口を含む、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項13】
前記装置(10、110)は、少なくとも1つの第1コンプレッサ(26、126)を含み、
前記第1熱交換回路(40、140)の前記入口は、前記第1又は第2コンプレッサ(26、28、126)の前記出口に、第2熱交換器(42、142)の一次回路(42b、142b)により接続され、
前記第2熱交換器は、二次回路(42a、142a)を含み、
前記二次回路(42a、142a)の入口が、前記メインタンク(14、114)の前記第1自然ボイルオフガス出口(45、145)に接続され、
前記二次回路(42a、142a)の出口が、前記第1又は第2コンプレッサの前記入口に接続される、
請求項9乃至12のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項14】
前記二次タンク(30、130)は、第3冷却液化ガスパイプ(32、132)の第1端部に接続され、
前記第3冷却液化ガスパイプ(32、132)の第2端部は、前記メインタンク(14、114)に接続され、
前記第3冷却液化ガスパイプは、前記冷却液化ガスの少なくとも一部を、前記二次タンクから前記メインタンクへ送るように適合される、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置(10、110)。
【請求項15】
前記第3冷却液化ガスパイプは、前記メインタンク(14、114)に収容された前記液化ガスに浸漬されることが意図された浸漬チューブ(34、134)、及び/又は、冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように前記メインタンクに配置された噴霧マニホルド(22、122)を含む、
請求項14に記載の装置(10、110)。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの装置(10、110)を含む、特に液化ガスを輸送するための船舶。
【請求項17】
特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備(12、112)に、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の装置(10、100)によって燃料ガスを供給するための方法であって、前記方法は、前記エネルギー生産設備によるガス消費の少なくとも1つのパラメータの監視と、
‐前記パラメータの値が所定の閾値を超える場合、冷却液化ガスを調製して、前記二次タンクに貯蔵するステップと、
‐前記パラメータの値が所定の閾値未満である場合、前記メインタンクにおいて過剰に生成された自然ボイルオフガスを再凝縮させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
自然ボイルオフガスの生成が前記エネルギー生産設備のガス消費を満たすのに不十分である場合、冷却液化ガスが調製される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記メインタンクに収容された液化ガス相を取り込み、膨張させ、分離することにより、液化ガスが冷却される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
特に前記二次タンク内の自然ボイルオフガスの利用可能な量が前記エネルギー生産設備の必要量より多い場合に、前記冷却液化ガスを前記メインタンク内に貯蔵して、前記二次タンク内の自然ボイルオフガスを凝縮させる、
請求項17乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備用の液化ガス及び/又は液化ガスから生じる自然ボイルオフガスを冷却するための装置及び方法に関する。船舶は、例えば、液化ガスを輸送する。又は船舶の機械が液化ガスを使用する。
【背景技術】
【0002】
従来技術には、特に文書EP‐A1 2 670 274号が含まれる。
【0003】
天然ガス等のガスをより簡単に長距離に亘って輸送するために、ガスを、通常、大気圧において極低温まで、例えば-163℃まで冷却することで液化させる(ことで液化天然ガス(LNG)にする)。その後、液化ガスを専用船に搬入する。
【0004】
例えば、液化ガスを輸送するためのメタンタンカータイプの船舶には、船舶の運転、特に船舶の推進及び/又は搭載機器用の電気の生産に必要なエネルギーを提供するように、エネルギー生産設備が設けられている。
【0005】
このタイプの設備には、通常、船舶の単数又は複数のタンクで輸送される液化ガスの積荷から給電されるエバポレータからのガスを消費する熱機械が含まれる。
【0006】
文書FR‐A‐2 837 783号は、このタイプのエバポレータ、及び/又は船舶のタンクの底部に浸漬されたポンプを用いた推進に必要な他のシステムへの給電について規定している。
【0007】
液化ガスの蒸発を制限するために、液化ガスを、当該液化ガスの気液平衡曲線に沿って移動するように加圧して貯蔵することで、その蒸発温度を上昇させることが知られている。したがって、液化ガスをより高い温度で貯蔵することができ、ガスの蒸発を制限する効果が得られる。
【0008】
ガスの自然蒸発は避けられないものであるが、この現象は、強制ボイルオフ(蒸発)ガス(FBOG)に対して、自然ボイルオフガス(NBOG)として知られている。船舶のタンク内で自然に蒸発するガスは、一般に上述の設備に供給するように使用される。自然に蒸発するガスの量が設備の燃料ガス必要量に対して不十分である場合(第1ケース)、強制蒸発後に、より多くの燃料ガスを供給すべくタンクに沈めたポンプを作動させる。蒸発するガスの量が設備の必要量に対して多すぎる場合(第2ケース)、過剰なガスを一般にガス燃焼ユニットで燃焼させる。これは、燃料ガスの損失を意味する。
【0009】
最新技術において、タンクの改良により、液化ガスの自然蒸発速度(BOR‐ボイルオフ速度)が段々と抑えられている一方、船舶の機器は段々と高性能となっている。この結果、上述の各第1及び第2ケースにおいて、蒸発により自然発生するガスの量と、船舶の設備が必要とするガスの量との間に多大な差が生じる。
【0010】
したがって、WO‐A1‐2016/075399号に記載のような、例えば再液化又は冷却ユニット等の、貯蔵タンクに収容された液化ガスを冷却し、タンク内で生成されたBOGを管理する解決策に対する関心が高まっている。本文書の根拠となる考え方は、液化ガスを冷却することで液化ガスの自然ボイルオフ(蒸発)を制限可能としつつ、液化ガスをある熱力学的状態に維持してその長期保存を可能とする装置を提供することである。しかしながら、上記文書に記載の熱交換器技術は、高価である割に効果が薄く、以下に詳細に説明する他の欠点を有している。
【0011】
更に、液体の動きや周囲状態等、多数のパラメータがNBOGの生成に影響を与える。船舶において必要なエネルギー量も、実施される操作やその航行速度によって大きく変動する。これにより、NBOGの過剰量が大幅に変動し得るため、効果的なBOG管理に対する解決策を実現することは困難である。
【0012】
本発明は、単純で効果的且つ経済的な、現行の技術水準に対する改善を提案する。
【発明の概要】
【0013】
第1態様によれば、本発明は、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備用の液化ガスを冷却するための装置であって、
メイン液化ガス貯蔵タンクと、
‐第1冷却液化ガス分離ドラムであって、第1冷却液化ガス分離ドラムの入口が、第1パイプの第1端部に接続され、第1パイプの第2端部が、前記メインタンクにおいて好適には前記タンクの底部に収容された液化ガスに浸漬されることが意図され、前記第1パイプは、前記第1ドラムに液化ガスを供給するように適合される、第1冷却液化ガス分離ドラムと、
‐前記第1ドラム内の圧力を前記メインタンクに対して低下させるための手段であって、前記第1ドラムに、前記メインタンク内の圧力より低い動作圧力を適用するように構成される手段と、
‐前記第1パイプ及び/又は前記第1ドラムの前記入口に設けられる蒸発手段であって、これにより、ボイルオフガスと呼ばれる、前記第1ドラムに供給される液化ガスの少なくとも一部を蒸発させるとともに、冷却液化ガスと呼ばれる、液化ガスの少なくとも他の一部(例えば残り)が、前記第1ドラムにおいて前記動作圧力で飽和温度まで冷却され、前記第1ドラムは、前記蒸発ガスと前記冷却液化ガスとを分離させるように構成される、蒸発手段と、
‐前記メインタンクに前記第1ドラムに収容された前記冷却液化ガスを供給し、前記メインタンク内に収容された液化したガス、及び/又は気体状態にあるガスを冷却するための手段と、
を備えることを特徴とする装置を提案する。
【0014】
ここで、冷却される、又は更に冷却されるのは、液化ガスである。液化ガスは冷却して使用される。メインタンクに収容された液化ガスの温度を制御するように意図される。
【0015】
第1ドラムは、真空エバポレータとして機能し、真空蒸発コンプレッサとして機能する第1コンプレッサと対応付けられる。ガスの蒸発や減圧が冷却エネルギーを放出することが知られている。したがって、蒸発手段は、冷却手段とみなされ得る。更に、蒸発手段、圧力低下手段、減圧手段という用語は、本発明の文脈において類似の又は同一の意味を有する。本発明によれば、蒸発手段は、第1パイプ及び/又は第1パイプを第1ドラムに接続する入口を備える。以下に説明するように、第1ドラムは、(相補的な)蒸発手段を更に形成し得る。
【0016】
したがって、本発明は、従来技術の交換器を真空エバポレータに交換することを提案する。これにより、より高い冷却力を得ることができるため、メインタンク内に収容された液化されたガス、及び/又は気体形態にあるガスの冷却効果を向上させることができる。
【0017】
メインタンクは、本発明による装置の一部を形成する、またはしないと考えられ得る点で任意選択的である。装置は、例えば、メインタンクを有さずに出荷される場合があるので、メインタンクは装置の一部を形成しない。或いは、船舶に装着した後に、装置がメインタンクに対応付けられ、メインタンクは本発明による装置の一部を形成する。
【0018】
膨張又は蒸発ステップ中に作動可能な熱交換器がないことが有利である(この欠点は、ピンチ効果による冷却損失が発生することである)。従来技術においては、このタイプの熱交換器を使用することにより、特に減圧後も液体のままであるガスの軽質フラクションを蒸発させる交換器によって、全ての軽質フラクションを完全に蒸発させる。しかしながら、重質フラクションを蒸発させるには、減圧及び交換器では不十分である。
【0019】
本願において、重質フラクション及び軽質フラクションとは、それぞれ、重いガス、すなわち高いモル重量を有するガス、及び軽いガス、すなわち低いモル重量を有するガスを意味する。一実施形態において、液化ガスは液化天然ガスである。この場合、軽いガスはメタンである。液化天然ガスでは、軽質フラクションに少量の窒素が含まれている場合がある。少量の重質フラクションには、例えば、液化ガスの場合、プロパン、ブタン及びエタンが含まれる(したがって、これは、より高い温度、又は例えば動作圧力より低い圧力において蒸発する)。液化ガスにおいて、重質フラクションは、液化ガスの総質量の5.2%乃至49.8%に相当する。重質フラクションは、例えば、軽質フラクションのモル質量より25%乃至500%大きいモル質量を有する。
【0020】
装置により提供される改良点は数多い。以下に例を記載する。
‐冷却プロセスをメインタンクの完全に外側で実施可能であることによる、よりシンプルな構造、よりシンプルな制御、及びより安全な使用。
‐WO‐A1‐2016‐075399号に記載のような従来技術の交換器で発生し得るピンチ効果の抑制による効率の改善。動作圧力とこれに伴う温度降下を考えると、1℃乃至2℃のピンチ効果は、およそ15%の損失に相当する。
‐冷却電力は、必要に応じて供給可能であり使用可能であるとともに、後の使用のために貯蔵も可能である冷却液化ガスの状態で生成される。このことは、この電力が、冷却電力より加熱電力が必要とされるフェーズに対応するNBOGが不足しているフェーズにおいて、強制ボイルオフガスからエネルギーを回収することで生成可能であるため、特に有利である。
‐反対に、特に船舶におけるメインタンクの典型的な寸法、このタイプのタンクに貯蔵されるガスの量、及び上記の先願に記載される必要な冷却機器のサイズを考慮すると、このような機器により回収される冷却電力は、その貯蔵やその後の使用には不十分である。
‐液化ガスは、ドラム内で相分離されることが意図されている。設備で使用され得るガスのみが、コンプレッサ等の減圧手段により吸引されることが意図されている。したがって、コンプレッサが液滴を吸引してこれを損なうリスクがない。液化ガスの動作圧力範囲、温度及び組成を考慮すると、ほとんどの場合、液化ガスは、上記の先願に記載のような熱交換器において完全には蒸発しない。例えば、120mbaraでの初期構造の液体の比率は、0.12%以上32%以下であり、800mbaraでは(交換器におけるピンチ効果を理由として、先願で提案されたような950mbaraの圧力は想定できない)、0.8%以上92%以下である(液化ガスの組成が異なるため変動が大きい)。
‐先願においては、設備に供給するために必要な全てのフロー、すなわち消費ユニットに意図される全てのフローは、コンプレッサを通過する必要がある。これは、本発明において必ずしも必要ではない。本発明では、必要量の強制ボイルオフガスのみが、生成された自然ボイルオフガスの量を補充するように使用される。したがって、コンプレッサの容量が小さいため、初期投資コストや運用コストが抑えられる。更に、装置の各部品に損失が生じるため、装置内を循環するフローを制限することが全体的により効果的である。最後に、提案された装置は、船舶の従来の消費設備に接続するのが容易であるため、既存環境への影響が制限されるとともに、燃料ガスを使用する船舶の機械をより柔軟に設計できる。
‐ドラムは、メインタンクの外側に配置することが好適である。これにより、装置が簡易化されるとともに安全になる。
【0021】
全体として、ポンプにより熱交換器に液化ガスを供給することで追加のBOGが生成される船舶に設置される通常の装置に比較すると、装置は、蒸発に対する総エネルギー消費を31%乃至38%削減する。主たる目的は、船舶において典型的に消費アイテムである蒸発エネルギーを回収することにより冷気を生成することである。船舶の特性、特に航行速度プロファイルやその機器の効率性等にもよるが、装置は、船舶の航海中(商用利用及び水路への進入待機を入れた復路を含む)に生成される熱の最大175%までの冷却電力を生成することを可能にする。
【0022】
静水圧により、メインタンク内の圧力はタンク内の深さに応じて変動し得る。
【0023】
本発明の文脈において、タンクの「底部」とは、タンクの底壁から1メートル未満にある位置を意味する。底壁とは、動作中に地球の中心の最も近くにあるタンクの壁である。また、可能な限り最も低い充填レベルまで機能するように、各ポンプもできる限り底部付近にあることが好適である(底部に近すぎるポンプは呼び水しにくいため、底部からの距離には制限がある)。
【0024】
本発明による装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を、互いに別個に又は互いに組み合わせて有し得る。
‐前記第1ドラムは、分離及び/又は膨張ドラムである。
‐前記第1ドラムの少なくとも一部、及び/又は前記第1パイプの少なくとも一部、及び/又は前記蒸発手段の少なくとも一部は、前記メインタンクに収容される、又は収容されることが意図されている。
‐前記第1ドラムは、液化ガスのみが供給されるように構成される。
‐前記第1パイプ内の液化ガスの圧力は、好適には、前記メインタンク内の前記第1パイプの水没部分により生成される静水圧より高い。
‐前記減圧手段の前方の前記第1パイプの直径は、好適には、当該パイプ内の液化ガスの冷却を制限するように(冷損制限)、可能な限り小さい。
‐前記第1パイプは、好適には、前記メインタンクに取り込まれた液化ガスが前記減圧手段に至るまで、液体のままであるように構成される。メインタンクにおける浸漬深さが浅いことによる静水圧のため第1パイプ内で圧力は降下するが、全てのガスが液体のままであるように、圧力は十分高いままである。
‐減圧手段の入口での第1パイプ内の圧力は、例えばおよそ1barである。第1パイプにおいて液化ガスはわずかに加熱されるが、液化ガスは、およそ1barにおいてこれが液体状である温度(例えば、およそ-160℃)を保ち続ける。
‐前記蒸発手段は、JT又はジュール‐トムソンバルブ等のバルブ、及び/又は特にバルブの下流に位置する第1パイプの一部を含む。
‐取り込んだ液化ガスは、好適には、バルブの直後の前記第1パイプ部分において(その大部分又は80%更には90%を超えて)蒸発させる。また、「フラッシュ」蒸発効果による圧力低下(自然圧力低下)により、液化ガスはこのパイプ部分において冷却される。
‐ボイルオフガスはより大きな体積を占めるため、特に十分な流量を得るように、このパイプ部分は、バルブの前方に位置する第1パイプ部分の直径より大きな直径を有し得る。
‐或いは、バルブと第1ドラムとの間のパイプ部分が短い又は存在しない場合、蒸発は、前記第1ドラムにおいて大部分又は部分的にのみ(80%を超えて)実施され得る。この場合、第1ドラムが十分な容量を有さなければ、連続運転ができないことがある。したがって、第1ドラムを空にするように特に後述の二次タンクに移す(「フラッシュ」)減圧後、液化ガスの蒸発及び冷却現象の終了を、新しい圧力での沸点よりわずかに低い温度において待つ必要があるかもしれない。更にこの場合、特に、例えばJTバルブであるバルブを、単純な2状態バルブ(オールオアナッシング、すなわち100%閉鎖/100%開放)に交換することが可能であり得る。
‐前記減圧手段は、少なくとも第1コンプレッサを含む。第1コンプレッサの入口は、前記第1ドラムの第1ガス出口に接続され、第1コンプレッサの出口は、特に前記設備に燃料ガスを供給可能である。前記第1コンプレッサは、前記第1ドラムで蒸発した前記ガスの少なくとも一部を吸引し、前記動作圧力を前記第1ドラムに適用することが可能である。これに代えて又はこれに加えて、減圧手段は、少なくとも1つのポンプを含む。ポンプの入口は、前記第1ドラムの液体出口に接続される。この変形例において、少なくとも1つのコンプレッサが、前記第1ドラムに収容された蒸発ガスを吸引するように使用され得る。
‐前記供給手段は、第2パイプを含む。第2パイプの第1端部は、前記第1ドラムの第2冷却液化ガス出口に接続され、第2パイプの少なくとも1つの第2端部は、前記メインタンクに注ぐことが意図されている。前記第2パイプは、前記冷却液化ガスの少なくとも一部を、前記第2ドラムから前記メインタンクに注入することが可能である。第2パイプを介した第1ドラムの前記メインタンクへの接続は、直接であっても間接であってもよい。換言すれば、第2パイプは、他の流体連通部品を含むかこれに対応付けられ得る、又は複数セクションに分割され、その間にこのような部品が配置され得る。これは、本発明の文脈において言及される全てのパイプに適用され得る。
‐液体及び/又は気体状態のガスが、特に前記第2パイプにより前記メインタンクに注入され得る。気体と蒸気の混合物がメインタンクに注入され得る。このような混合物がタンクの底部に再注入された場合、混合物の気体部分は、ガスの静水圧及びメインタンク内の液化天然ガスの温度により再凝縮する傾向がある。これにより、メインタンクにおける圧力低下が抑えられ得る。
装置は、
第1ポンプを含む。第1ポンプは、前記第1パイプの前記第2端部に接続されるとともに、前記メインタンクに収容された前記液化ガスに、好適にはタンクの底部において浸漬されて、液化ガスを前記第1パイプを介して前記第1ドラムへ強制的に循環させることが意図されている。或いは、装置はこのような第1ポンプを有さない。これは、例えば、第1ドラム及び第1パイプが前記第1タンクの内部にあるような場合である。
‐装置は、第2ポンプを含む。第2ポンプは、前記第2パイプに接続されて、前記冷却液化ガスの少なくとも一部を前記第2パイプを介して前記第1ドラムから前記メインタンクへ強制的に循環させる。或いは、この第2ポンプは必要でないこともある。これは、例えば、第1ドラムに液化ガスが所定の充填レベルまで供給され、次いでその圧力を低下させて液化ガスを冷却して部分的に蒸発させることで、前記第1ドラム内の圧力が、メインタンク内の圧力に実質的に近似する値であって、第2ポンプを任意選択的なものにするのに十分な値まで上昇する非連続運転のような場合である。
‐第1パイプにはオールオアナッシングバルブが装備されて、例えば、前記第1ドラム内で減圧が生じたときに閉鎖するように適合されている。
‐第1又は第2ポンプは、船舶に装備された燃料ポンプ又は乾燥ポンプである。このタイプのポンプは、典型的には、およそ25‐30t/hの最大流量を提供可能である。或いは、より大きい最大流量を有するポンプを、特に第1ポンプとして使用できる。例えば、このポンプは、300t/h、又は好適には2500t/hまでの最大流量を提供可能である。
‐第1ドラム、第1コンプレッサ、及び第1ポンプにより形成されるシステムは、真空蒸発手段(又は真空エバポレータ)として機能する。一般的に言えば、本発明の場合、ドラム、コンプレッサ、及びポンプにより形成されるシステムは、真空蒸発手段に類似している。
‐蒸発手段は、好適には、ガスの圧力を、第1ドラムの動作圧力まで低下させるように構成される。
‐前記第1コンプレッサの前記第2出口は、第2コンプレッサの入口に接続される。第2コンプレッサの出口は、前記設備に燃料ガスを供給可能である。
‐冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように、前記第2パイプは、前記メインタンクに収容された液化ガスに浸漬されることが意図された浸漬チューブ、及び/又は前記メインタンクにおける噴霧マニホルドを含む、又は接続される。したがって、冷却液化ガスを、メインタンクに収容されたガス及び/又は液化ガスに注入することができる。
‐前記第1ドラムの前記第2出口は、二次タンクの第1入口に接続され、当該タンクに冷却液化ガスを供給して当該タンクに冷却液化ガスを貯蔵する。
‐二次タンクは、冷却液化ガスを、前記第1ドラム内の前記動作圧力よりも高い圧力で収容するように構成される。したがって、二次タンクは、第1ドラムより高い圧力、例えば大気圧である。このため、二次タンクは、大量のガスを貯蔵するように設計され得るため、コストを抑えることができる。これが当該二次タンクの利点である。したがって、設備の必要量が自然蒸発より多い場合、冷却されたガスは第1ドラムに蓄積する。そして、設備の必要量が自然蒸発より少なくなると、自然ボイルオフを抑えるように、メインタンクに移される。
‐二次タンクに収容された冷却液化ガスは、サブクールされた液化ガスとみなすことができる。「サブクール」とは、ガスが、ガスに受ける圧力において沸点(すなわち飽和温度)より厳密に低い温度にあることを意味する。二次タンクにおいて、液化ガスは、サブクール状態とみなされ得るような圧力にある。
‐二次タンクは、流体、特にBOGを冷却する熱交換器として機能する。
‐前記第2ポンプは、前記第1ドラムの前記第2出口と、前記二次タンクの前記第1入口との間に配置される。
‐前記二次タンクは、前記第2パイプに接続された前記冷却液化ガスの少なくとも一部のための第1出口を含む。前記第2パイプは、前記冷却液化ガスの少なくとも一部を、前記二次タンクから前記メインタンクへ送ることができる。
‐前記装置は、少なくとも1つの熱交換回路を含む。熱交換回路は、当該回路を循環する流体を、前記二次タンクに貯蔵された、又は前記二次タンクから到来する冷却液化ガスの少なくとも一部を使用して冷却するように構成される。この熱交換回路は、二次タンク内に、又は二次タンクに隣接して乃至対応付けて、又は二次タンクから間隔を置いて配置され得る。別の熱交換器の一部を形成し得る冷却液化ガスパイプが、例えば、前記熱交換回路に供給するように使用され得る。或いは、前記熱交換回路を循環する流体を冷却するように使用される冷却液化ガスは、例えばメインタンクや第1ドラム等の他の源から到来してもよい。
‐前記二次タンクと前記熱交換回路とを組み合わせることで、自然ボイルオフガスを非常に高い効率で再処理することができる。なぜならば、特に液化ガスが冷却されるという事実により、自然ボイルオフガス(例えば-160℃以上-80℃以下、より正確には-140℃以上-100℃以下の温度を有する、二次タンクの入口における気相のガス)と液化ガスとの温度差に比較して、交換器に関するピンチ効果が小さいからである。当然ながら、二次タンクが存在しない場合でも、前記第1ドラムからの又は前記メインタンクからの冷却ガスとの交換により同じ利点が得られ得る、換言すれば、冷却液化ガスは、二次タンク、第1ドラム、及び/又はメインタンクに貯蔵され得る。
‐前記熱交換回路は、前記メインタンクの自然ボイルオフガス出口に接続される入口を含む。この文脈において、前記熱交換回路は、メインタンク内の自然ボイルオフガスを非常に高い効率で再処理することができる。なぜならば、特に液化ガスが冷却されるという事実により、自然ボイルオフガスと液化ガスとの温度差に比較して、交換器に関するピンチ効果が小さいからである。
‐前記回路の前記入口は、前記メインタンクの出口から到来する自然ボイルオフガスが供給される前記第1又は第2コンプレッサ等の少なくとも1つのコンプレッサの前記出口に接続される。したがって、自然ボイルオフガスは、冷却液化ガスとともに、交換器又は交換回路に進入する前に圧縮される(温度が上昇する)。
‐前記回路の前記入口は、第1又は第2コンプレッサ等の少なくとも1つのコンプレッサの前記出口に、第1熱交換器の一次回路により接続される。前記第1熱交換器は、二次回路を含む。二次回路の入口は、前記メインタンクの前記自然ボイルオフガス出口に接続され、二次回路の出口は、前記第1又は第2コンプレッサの前記入口に接続される。メインタンク内に取り込まれた自然ボイルオフガスは、二次回路に入る前に加熱され得る。これは、自然ボイルオフガスが設備への供給に使用される際にはいずれにしても加熱する必要があるので問題ではない。一部が設備に供給される全ての自然ボイルオフガスと自然ボイルオフガスの圧縮部分との間での事前の交換が有利に実施され、設備の消費量を超える余剰分は再凝縮される。自然ボイルオフガスは冷却液化ガスより低温でないため、交換は事前に実施されなくてはならない。
‐前記熱交換回路は、第2ドラムの入口に接続される出口を含む。冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように、前記第2ドラムは、前記第2パイプに接続される第1冷却液化ガス入口を含む。或いは、装置は、メインタンクに、例えばタンクの底部において、メインタンク内のガスの静水圧及び液化ガスの温度により再凝縮する傾向のあり得る混合物の気体部分を再注入するように構成され得る。
‐前記第2ドラムは、相分離ドラムである。
‐断熱膨張によりガスの温度を低下させるように、前記回路の前記出口は、前記第2ドラムの前記入口に、ジュール‐トムソン(JT)効果バルブ等のバルブによって接続される。したがって、自然ボイルオフガスを膨張させ得る。交換器又は熱交換回路のいずれかの側の圧縮/減圧により、自然ボイルオフガスの低い温度を得ることができ、したがって、より多くの自然ボイルオフガスを凝縮させることができる。
‐装置は、第2熱交換器を含む。第2熱交換器の一次回路は、前記メインタンク内の液化ガスに浸漬されることが意図された第3ポンプの出口に接続される入口と、冷却液化ガス出口と、を有する。二次回路は、前記第1パイプに接続される入口と、前記第1ドラムの入口に接続される出口と、を有する。
‐前記第2熱交換器は、前記メインタンク内の液化ガスに浸漬されていない、又は前記メインタンクに装着されていない。
‐前記二次タンクに冷却液化ガスを供給するように、前記第2熱交換器の一次回路の出口は、前記二次タンクの入口に接続される。
‐装置は、前記メインタンクに収容された液化ガスに浸漬されたポンプ及び/又はパイプ以外の部品を有していない。
‐前記液化ガスは、純(ピュア)ガス又は物体を含むいわゆるピュアフラクションを含む。前記冷却液化ガス及び前記ボイルオフガスは、前記少なくとも1つのピュアフラクションを含む。液化ガスが液化天然ガスである場合、このタイプのピュアフラクションはメタンで構成され得る。
【0025】
本願において、「純/ピュア」とは、複数の物体や種の混合物に対して、単一の物体又は化学種を意味する。前記純ガスは、例えば、軽質ガス又は重質ガスである。
【0026】
本発明は、更に、上述の少なくとも1つの装置を含む、特に液化ガスを輸送するための船舶に関する。
【0027】
本発明は、更に、上述の装置により、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備用の液化ガスを冷却する方法に関し、前記方法は、
‐前記メインタンクに収容された液化ガスを取り込むステップAであって、前記液化ガスは、前記第1パイプに取込温度において取り込まれるステップAと、
‐前記取込ガスを、前記取込温度で取り込まれた前記ガスの飽和蒸気圧より低い膨張圧力まで膨張させて、前記取込ガスの一部を膨張効果により蒸発させるとともに、特に前記取込ガスを前記膨張圧力において飽和温度まで冷却させるため、前記取込ガスの残りの部分は液体のまま、前記取込温度より低い温度まで冷却されるステップBと、
‐前記第1ドラムに液化ガスを充填し、前記ドラムにおいて、特に重力により前記蒸発ガスと前記冷却された液化ガスとを分離するステップCと、
‐前記設備に、前記第1ドラムに収容された前記蒸発ガスの少なくとも一部を供給するステップDと、
‐前記メインタンクに収容された液化ガスを、前記第1ドラムに収容された冷却液化ガスにより冷却して、前記メインタンクに収容されたガスを冷却するステップEと、
を含むことを特徴とする。
【0028】
飽和蒸気圧は、閉鎖システム内の所定の温度において、物質の気相が液相又は固相と平衡状態になる圧力である。
【0029】
本発明によれば、蒸発エンクロージャでの減圧及び冷却や、ドラムにおいて当該蒸発エンクロージャと液化ガスとの間で熱交換することによりメインタンクに移された液化ガスを冷却することに代えて、ドラムにおいてフラッシュ蒸発を利用し、結果として冷却された液体はメインタンクに戻される。この利点は、主に、蒸発エンクロージャとドラムからの液化ガスとの熱交換のピンチ効果が抑制されることである。
【0030】
一実施形態によれば、取り込まれる液化ガスは、純ガス、例えばメタンからなる。本例において、前記第1パイプ内を循環する液化ガスは、この純ガスを含む混合物、例えばメタンを含む液化天然ガスから構成されてもよい。
【0031】
本発明による方法は、以下のステップのうちの1つ以上を、又は以下の特徴の1つ以上を、互いに別個に又は互いに組み合わせて含み得る、又は有し得る。
‐ステップEは、冷却液化ガスを前記第2パイプで循環させることでこれを前記メインタンクに注入し、メインタンクに収容された液化ガスを冷却することを含む。
‐本方法は、前記メインタンクに収容されたガスであって、メインタンクに収容された液化ガスのレベルの上方に位置するガスに、冷却液化ガスの液滴を噴霧するステップを含む。
‐本方法は、前記第1ドラムの第1出口を出たガスを圧縮するステップを含む。
‐前記第1ドラム内の圧力は、120mbara以上950mbara以下である、及び/又は前記メインタンク内の圧力は、特に大気圧でのタンクについて、20mbarg以上700mbarg以下、20mbarg以上350mbarg以下、又は20mbarg以上250mbarg以下、加圧タンクについて最大10mbaraの圧力である、及び/又は膨張は、0.94%以上15.18%以下の蒸発率をもたらす、及び/又は第1パイプにおける流量は、18.09/h以上374.7/h以下である、及び/又は第1ドラムにおける冷却液化ガスの生産率は、15.35t/h以上371.6t/h以下である、及び/又は二次タンクは、1312m以上86037m以下の内容積又は容量を有する、及び/又は液化ガス又は自然ボイルオフガスを取り込んで当該ガスを冷却した後の冷却ガスの温度は、-180.4°以上-159°以下である、及び/又は圧縮自然ボイルオフガスの蒸発は、81.63%以上100%以下の蒸発率をもたらす。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた液化ガスを、前記第1ドラムにおいて部分的に又は完全に蒸発させ得る前記液化ガスの膨張後であって注入前に、前記一次回路を循環する流体との熱交換により、予熱するステップを含む。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた液化ガスを、前記二次タンクに注入する前に、前記二次回路を循環する流体との熱交換により、予冷するステップを含む。
‐本方法は、前記第1又は第2コンプレッサを出るガスを、前記二次タンクに収容された冷却液化ガスとの熱交換により、冷却するステップを含む。
‐本方法は、前記第1又は第2コンプレッサを出たガスを、前記二次タンクで冷却する前に、前記メインタンク内に取り込まれた自然ボイルオフガスとの熱交換により、予冷するステップを含む。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた自然ボイルオフガスを、前記第1又は第2コンプレッサにより圧縮する前に、予熱するステップを含む。
‐本方法は、前記第2ドラムの充填前に、前記第2ドラムに供給することが意図されたガスの圧力及び/又は温度を低下させるステップを含む。
‐本方法は、冷却液化ガスを前記メインタンクに前記第2パイプによって注入するステップを含む。この注入により、メインタンクに収容された液化ガスを冷却することに関与してBOGの生成を制限することができる。
‐本方法は、前記第2ドラムから前記第2コンプレッサへガスを送るステップを含む。このガスは、圧縮後に設備で使用され得る。
【0032】
また、本発明は、上述の装置により、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備に燃料ガスを供給する方法であって、
‐前記メインタンクに収容された液化ガスを取り込むステップAであって、前記液化ガスは、前記第1パイプに取込温度において取り込まれるステップAと、
‐前記取込ガスを、前記取込温度で取り込まれた前記ガスの飽和蒸気圧より低い膨張圧力まで膨張させて、前記取込ガスの一部を膨張効果により蒸発させるとともに、特に前記取込ガスを前記膨張圧力において飽和温度まで冷却させるため、前記取込ガスの残りの部分は液体のまま、前記取込温度より低い温度まで冷却されるステップBと、
‐前記第1ドラムに液化ガスを充填し、前記第1ドラムにおいて、特に重力により前記液化ガスを前記冷却された液化ガスから分離するステップCと、
‐二次タンクに前記第1ドラムからの冷却液化ガスを供給し、前記二次タンクに前記冷却液化ガスを貯蔵するステップFと、
‐前記メインタンクに自然ボイルオフガスを取り込んで、当該ガスを予熱するステップGと、
‐前記第1ドラムからのボイルオフガス及び予熱した自然ボイルオフガスの両方を圧縮するステップHと、
‐前記設備に前記圧縮ガスを供給するステップIと、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0033】
本発明による方法は、以下のステップのうちの1つ以上を、又は以下の特徴の1つ以上を、互いに別個に又は互いに組み合わせて含み得る、又は有し得る。
‐ステップA、B、C及びFは、連続的に実施される。
‐ステップA、B、C及びFと同時に、又はステップGと同時に、又はステップA、B、C、F及びGと同時に、本方法は、前記二次タンクから冷却液化ガスを取り込んで当該ガスを前記メインタンクに注入し、前記メインタンクに収容された液化ガスを冷却するステップを含む。
‐冷却液化ガスは、前記メインタンク内の液化ガス及び/又はボイルオフガスに直接注入される。
【0034】
第2態様によれば、本発明は、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備用の自然ボイルオフガスを冷却するための装置であって、
前記装置は、
‐第1自然ボイルオフガス出口を含む、液化ガスを貯蔵するための任意選択的なメインタンクと、
‐前記メインタンク内の液化ガスを取り込んで、当該液化ガスを冷却するための手段と、
‐前記冷却手段により冷却された液化ガスを貯蔵するように構成された、冷却液化ガス用の二次タンクと、
‐第1熱交換回路であって、前記メインタンクの前記第1出口に接続される入口を含み、当該回路で自然ボイルオフガスが循環する、第1熱交換回路と、
を備え、
前記第1回路を通過する前記自然ボイルオフガスが、冷却され前記二次タンクに収容された液化ガス、又は前記二次タンクから到来する液化ガスにより冷却されるように、前記第1回路は前記二次タンクと協働するように構成される、
ことを特徴とする装置を提案する。
【0035】
メインタンクは、本発明による装置の一部を形成する、又はしないとみなされ得る範囲で任意選択的である。装置は、例えば、メインタンクを有さずに供給され得る。この場合、メインタンクは装置の一部を形成しない。或いは、例えば船舶に装着後の装置は、メインタンクと組み合わされるので、本発明による装置の一部を形成する。
【0036】
したがって、本解決策は、BOGを冷却することにより、例えば船舶の要求に適合した装置においてBOGの管理の改善を提案するとともに、以下のことを可能とする。
‐冷却に使用される手段の能力を、NBOG生産ピークの管理に必要な能力ではなく、過剰NBOGの管理に必要な能力に限定する。
‐連続的に使用され得る手段、必要に応じて貯蔵可能な冷却液化ガス等の冷熱源の使用率を最適化する。
‐必要時に、生成された冷却電力が正しく使用されることを確実にする。
【0037】
本解決策は、流体を冷却するあらゆるタイプの手段に適合している。ここで、流体は、タンクから到来し、二次タンクで冷却され、最終的に、タンクに戻ってここで冷却状態とされるであろうBOGである。
【0038】
本発明による装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を、互いに別個に又は互いに組み合わせて有し得る。
‐第1分離ドラムであって、前記第1分離ドラムの入口が、前記第1回路の出口に接続されて、冷却された自然ボイルオフガス、及び再凝縮して冷却液化ガスを形成する自然ボイルオフガスが前記第1ドラムに供給される第1分離ドラム。前記第1ドラムは、第1自然ボイルオフガス出口と第2冷却液化ガス出口とを含む。前記第2冷却液化ガス出口は、冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように前記メインタンクに接続される。
‐前記第2タンクは、前記第1ドラムの動作圧力より高い圧力の冷却液化ガスを収容するように構成される。
‐装置は、少なくとも1つの第1コンプレッサを含む。第1コンプレッサの入口は、前記メインタンクの前記第1自然ボイルオフガス出口、及び/又は前記第1ドラムの前記第1自然ボイルオフガス出口に接続される。
‐前記冷却手段は、前記二次タンク内の液化ガス、又は前記前記二次タンクから到来する液化ガスと熱交換により協働することが意図される第2熱交換回路を含み、前記第2熱交換回路において、前記液化ガスを冷却するように冷却流体が循環して、冷却液化ガスが前記二次タンクに直接生成されることで、冷却液化ガスを生成する。
‐前記冷却手段は、
・第2ドラムであって、前記第2ドラムの入口が、第1パイプの第1端部に接続され、前記第1パイプの第2端部が、前記メインタンクに収容された前記液化ガスに浸漬され、前記第1パイプは、前記第2ドラムに液化ガスを供給するように適合された第2ドラムと、
・第2パイプであって、前記第2パイプの第1端部が、前記第2ドラムの第1冷却液化ガス出口に接続され、前記第2パイプの第2端部が、前記二次タンクに接続されて、前記二次タンクに冷却液化ガスが供給される第2パイプと、
を含む。
‐前記第2ドラムは、分離及び/又は膨張ドラムである。
‐装置は、第1熱交換器を含み、前記第1熱交換器の一次回路が、前記メインタンクの液化ガス出口に接続される入口を有し、
二次回路が、前記第1パイプに接続される入口と、前記第2ドラムの前記入口に接続される出口と、を有する。
‐前記第2熱交換器は、前記メインタンク内の液化ガスに浸漬されていない、又は前記メインタンクに装着されていない。
‐前記第2熱交換器の一次回路の出口は、前記二次タンクの入口に接続されて、冷却液化ガスが前記二次タンクに供給される。
‐装置は、前記メインタンクに収容された液化ガスに浸漬されたポンプ及び/又はパイプ以外の部品を有していない。
‐前記一次回路の前記入口は、前記メインタンク内の液化ガスに浸漬されることが意図された第3ポンプの出口に接続される。
‐装置は、
・前記第1パイプの前記第2端部に接続される第1ポンプであって、前記第1パイプを介して前記メインタンクから前記第2ドラムへ液化ガスを強制的に循環させるように、前記メインタンクに収容された前記液化ガスに浸漬されることが意図された第1ポンプと、
・前記第2ドラムから前記二次タンクへ冷却液化ガスを強制的に循環させるように、前記第2パイプに接続される第2ポンプと、
を含む。
‐前記第1パイプは、前記蒸発手段を含む。
‐装置は、少なくとも1つの第2コンプレッサを含み、前記第2コンプレッサの入口が、前記メインタンクの前記第1自然ボイルオフガス出口に接続される。
‐前記第2コンプレッサは、前記第1回路の前記入口に接続される出口を含む。
‐前記第2コンプレッサの前記入口は、前記第2ドラムの第2ガス出口、及び/又は前記第1ドラムの第2ガス出口に更に接続される。
‐前記第2コンプレッサの前記入口は、前記第1コンプレッサの前記出口に接続される。
‐前記第1又は第2コンプレッサは、特に前記設備に燃料ガスを供給するように適合された出口を含む。
‐前記第1回路の前記入口は、前記第1又は第2コンプレッサの前記出口に、第2熱交換器の一次回路により接続され、前記第2熱交換器は、二次回路を含み、前記二次回路の入口が、前記メインタンクの前記第1自然ボイルオフガス出口に接続され、前記二次回路の出口が、前記第1又は第2コンプレッサの前記入口に接続される。
‐前記二次タンクは、第3冷却液化ガスパイプの第1端部に接続され、第3冷却液化ガスパイプの第2端部は、前記メインタンクに接続されることが意図され、前記第3パイプは、前記冷却液化ガスの少なくとも一部を、前記二次タンクから前記メインタンクへ送るように適合される。
‐前記第3パイプは、前記メインタンクに収容された前記液化ガスに浸漬されることが意図された浸漬チューブ、及び/又は、冷却液化ガスを前記メインタンクに注入するように前記メインタンクに配置された噴霧マニホルドを含む。
‐前記第1回路の前記入口は、前記第1又は第2コンプレッサ等の少なくとも1つのコンプレッサの前記出口に、第2熱交換器の一次回路により接続され、前記第2熱交換器は、二次回路を含み、前記二次回路の入口が、前記メインタンクの前記第1自然ボイルオフガス出口に接続され、前記二次回路の出口が、前記第1又は第2コンプレッサの前記入口に接続される。したがって、全ての自然ボイルオフガス(その一部は設備に向かう)と自然ボイルオフガスの圧縮部分(再凝縮された設備の消費量を超える余剰分)との間での事前の交換があり得る(自然ボイルオフガスは、冷却液化ガスほど低温でないため、交換は事前でなくてはならない)。
‐装置は、前記メインタンクに収容された液化天然ガスに浸漬されたポンプ及び/又はパイプ以外の部品を有していない。
【0039】
本発明の第1態様の装置の特徴について上述した効果及び利点は、当然ながら、第2態様の装置の同一の特徴に適用可能であり、逆もまた同様である。
【0040】
更に、本発明は、上述の少なくとも1つの装置を含む、特に液化ガスを輸送するための船舶に関する。
【0041】
本発明による方法は、以下のステップのうちの1つ以上を、又は以下の特徴の1つ以上を、互いに別個に又は互いに組み合わせて含み得る、又は有し得る。
‐本方法は、
・前記メインタンクの前記第1出口からのガスを圧縮するステップ、及び/又は、
・前記第1ドラムの前記第2出口からのガスを圧縮するステップ、及び/又は、
・前記第2ドラムの前記第2出口からのガスを圧縮するステップ、
を含む。
‐本方法は、圧縮ガスを前記二次タンクにおいて冷却する前に、この圧縮ガスを、前記メインタンク内に取り込まれて前記第2交換器の前記二次回路を循環する自然ボイルオフガスとの熱交換により、予冷するステップを含む。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた自然ボイルオフガスを、当該ガスの圧縮前に、前記第2交換器の前記一次回路を循環する流体との熱交換により、予熱するステップを含む。
‐本方法は、前記二次タンクに収容された液化ガスを冷却するステップを含む。
‐本方法は、液化ガスを膨張させて、前記ガスの一部を膨張効果により蒸発させるとともに、前記ガスの残りは液体のまま冷却されるステップを含む。
‐本方法は、前記第2ドラムを充填し、特に重力により、前記第1ドラムにおいて、前記冷却液化ガスに対して前記蒸発ガスを分離するステップを含む。
‐本方法は、前記二次タンクに冷却液化ガスを供給するステップを含む。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた液化ガスを、前記液化ガスの膨張後であって前記第2ドラムに注入する前に、前記第1交換器の前記一次回路を循環する流体との熱交換により、予熱するステップを含む。
‐本方法は、前記メインタンク内で取り込まれた液化ガスを、前記二次タンクに注入する前に、前記第1交換器の前記二次回路を循環する流体との熱交換により、冷却するステップを含む。
【0042】
本発明の第1態様の方法の特徴及びステップについて上述した効果及び利点は、当然ながら、第2態様の方法の同一の特徴及びステップに適用可能であり、逆もまた同様である。
【0043】
本発明は、更に、上述の装置により、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備用の液化ガス及び/又は液化ガスの蒸発から生じるガスを冷却する方法であって、
‐前記二次タンク内で冷却液化ガスを調製するステップAと、
‐前記二次タンク内の冷却液化ガスを取り込むステップBと、
‐前記冷却液化ガスを、メインタンクに収容された前記ボイルオフガス及び/又は前記液化ガスに注入するステップCと、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0044】
本発明は、更に、上述の装置により、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備に燃料ガスを供給する方法であって、前記方法は、前記設備によるガス消費の少なくとも1つのパラメータの監視と、
‐前記パラメータの値が所定の閾値を超える場合、冷却液化ガスを調製して、例えば前記二次タンクに貯蔵するステップと、
‐前記パラメータの値が所定の閾値未満である場合、前記メインタンクにおいて過剰に生成された自然ボイルオフガスを再凝縮させるステップと、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0045】
本方法は、自然ボイルオフガスの生成を制限するように、前記冷却液化ガスを使用して、前記メインタンクに収容されたガスを冷却するステップを含み得る。
【0046】
所定の閾値は、例えば、船舶の航海中に変動し得る。機能的には、この閾値は、メインタンク内の圧力を監視する必要をなくすように、メインタンクから引き出されるNBOGのフローに対応し得る。
【0047】
有利には、自然ボイルオフガスの生成が前記設備のガス消費を満たすのに不十分である場合、冷却液化ガスが調製される。
【0048】
好適には、前記メインタンク内に収容された液化ガス相を取り込み、膨張させ、分離することにより、液化ガスが冷却される。
【0049】
自然ボイルオフは、多くの方法で抑えることができる。例えば、(例えば、冷却液化ガスをタンクに噴霧するマニホルドを介して、又はメインタンクへの単純な出口によって)冷却液化ガスをタンクに移すことにより、又は自然ボイルオフガスと、自然ボイルオフガスの再凝縮(場合によりタンクに戻される)を可能にする冷却ガスとの間で冷気を交換する(すなわち、交換器による)ことにより、自然ボイルオフは抑えられる。
【0050】
自然ボイルオフの抑制が望まれる場合、液化ガスがサブクールであるという事実により、ボイルオフガスが生成され得ない。貯蔵により、非常に高価な液化ユニットであって、コストがその容量に依存する液化ユニットを使用しなくても、容量の限られた二次タンクでの再凝縮に対する高度な要求に対処することが可能になる。
【0051】
或いは、特にメインタンク内の自然ボイルオフガスの利用可能な量が設備の必要量より多い場合、メインタンク内に冷却ガスを貯蔵して、メインタンク内の自然ボイルオフガスを凝縮させる。冷却ガスはメインタンク内の残りのガスより高い濃度を有するため、メインタンクの底部の、例えば液体出口より下方の液化ガスから生じる自然ボイルオフガスを、例えば、冷却/再凝縮する必要がある。交換器を、例えばこの位置に設けてもよいし、この位置に貯蔵された冷却ガスを自然ボイルオフガスとともに(例えばタンクの外部に配置された)熱交換器に供給するパイプを設けてもよい。
【0052】
以下に記載の場合、有利である。
‐前記自然ボイルオフガスは、前記冷却液化ガスとの熱交換により凝縮される、及び/又は、
‐前記自然ボイルオフガスは、前記熱交換の前に圧縮される、及び/又は、
‐前記自然ボイルオフガスは、前記熱交換の後に減圧される、及び/又は、
‐前記自然ボイルオフガスは、前記減圧後に相分離される。
【0053】
本発明の第1態様の装置及び方法の特徴やステップは、第2態様の装置及び方法の特徴やステップと組み合わせることができ、逆もまた同様である。
【0054】
本発明は、非限定的な例として、添付図面を参照してなされる以下の説明を読むことで、より良く理解されるとともに、本発明の他の詳細、特徴及び利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の第1実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
図2図1に対応する、本発明による方法のステップを示す概略図。
図3図1に対応する、本発明による方法のステップを示す概略図。
図4図1に対応する、本発明による方法のステップを示す概略図。
図5図1に対応する、本発明による方法のステップを示す概略図。
図6図1に対応する、本発明による方法のステップを示す概略図。
図7】本発明の第2実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
図8】本発明の第3実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
図9】本発明の第4実施形態による、船舶に装備される装置の概略図であって、本発明によるステップを示す概略図。
図10】本発明の第4実施形態による、船舶に装備される装置の概略図であって、本発明によるステップを示す概略図。
図11】本発明の第5実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
図12】本発明の第6実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
図13】本発明の第7実施形態による、船舶に装備される装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、液化ガスの冷却、及び/又は液化ガスから生じる自然ボイルオフガスの冷却を可能にすると考えられる、本発明の第1実施形態による装置10を示す。
【0057】
装置10は、液化ガスを輸送する船舶等の船舶に燃料ガスを供給するのに特に適しているが、これに限定されない。したがって、装置10は、特に船舶に搭載されたエネルギー生産設備12に燃料ガスを供給するように使用され得る。
【0058】
船舶は、液化ガスを貯蔵するための単数のタンク14又は複数のタンク14を含む。ガスは、例えば、メタン、又はメタンを含むガス混合物である。タンク14又は各タンク14は、所定の圧力及び所定の温度、例えば大気圧及び-160℃の温度の液化状態のガスを収容し得る。船舶の単数又は複数のタンク14は、本発明による装置10により設備12に接続され得る。したがって、タンクの基数は、本発明を限定せず、例えば、1基乃至6基である。各タンク14は、1000m乃至50000mの容量を有し得る。
【0059】
以下、「タンク」という表現は、「タンク又は各タンク」を意味するものとして解釈されたい。
【0060】
タンク14は、液化ガス14aと、タンク14内の液化ガス14aのボイルオフ(蒸発)、特に自然ボイルオフから生じるガス14bと、を収容する。液化ガス14aは、タンク14の底部に自然に貯蔵されるのに対し、ボイルオフガス14bは、文字Nで概略的に表されるタンク内の液化ガスのレベル(高さ)より上方に位置する。
【0061】
以下では、「LNG」は、液化ガスすなわち液体状態のガスを意味し、「BOG」はボイルオフガスを意味し、「NBOG」は自然ボイルオフガスを表し、「FBOG」は強制ボイルオフガスを意味するものとする。これらの略語は、該当する英単語の最初の文字に対応しており、当業者に公知である。
【0062】
図1に示す実施形態において、ポンプ16a、16bが、タンク14内のLNGに浸漬されている。好適には、LNGのみが供給されることを保証するように、ポンプ16a、16bはタンクの底部に配置される。
【0063】
ここでは2つのポンプ16a、16bが存在する。ポンプ16aは、パイプ18の一端部、ここでは下端部に接続される。ポンプ16bは、パイプの20の一端部、ここでは下端部に接続される。或いは、ポンプ16a、16bの冗長性を確保するように、又は船舶に既に存在する噴霧ポンプ等の既存のポンプを使用するように(この場合、ポンプ16bの機能は、4つの別個のタンクのそれぞれに存在する4つの噴霧ポンプにより提供され得る)、各タイプの更なるポンプが存在し得る。
【0064】
パイプ20は上端部を有し、この上端部は、タンク14の上部においてレベルNより上方に位置する、LNGの液滴を噴霧するマニホルド22に接続される。したがって、マニホルド22は、LNGの液滴をNBOGに噴霧するように構成される。これにより、タンク14内のNBOGを強制的に再凝縮させることができる。ポンプ16bは、LNGをパイプ20においてタンク14の底部からマニホルド22へ強制的に循環させるとともに、LNGが液滴の形態で噴霧されることを保証するように構成される。実際に、NBOGがパイプ内で循環し得る間に、メインタンクにはガス環境が存在し得る。
【0065】
ポンプ16aは、LNGを、パイプ18においてタンク14の底部からパイプ18の一端部、例えば上端部に接続されたドラム24へ強制的に循環させるように構成される。パイプ18は、パイプ18内を循環するLNGをドラム24に到達する前に減圧するJTバルブ等の減圧手段19を含む。有利には、手段19は、パイプ18内を循環するLNGの圧力を、ドラム24の動作圧力まで低下させるように構成される。手段19は、例えば、JTバルブ(後述)を含む。
【0066】
したがって、パイプ18内及び減圧手段19を通るLNGの循環により、ドラム24への供給前にLNGは少なくとも部分的に蒸発する。
【0067】
したがって、ドラム24には、タンク14から到来する、一部が蒸発したLNGが供給されることが意図されている。ドラム24内部の動作圧力は、LNGがタンク14の内部に貯蔵される圧力より低い。ドラム24にLNGを供給することにより、LNGの相補的な蒸発がもたらされる。これにより、ドラム24内でFBOGが生成される一方で、ドラム内に残っているLNGが冷却され、「冷却液化ガス」と呼ばれる。ドラム24は、所定の圧力及び所定の温度における液化状態のガスを収容する。
【0068】
したがって、ドラム24は、冷却液化ガス24aと、タンク14から到来した液化ガス14aの蒸発による、ここでは強制蒸発によるガス24bと、を収容する。冷却液化ガス(LNGs)24aは、ドラム24の底部に貯蔵されるのに対し、ボイルオフガス(すなわちFBOG)24bは、文字Lで概略的に表されるドラム24内の液化ガスレベルの下方に位置する。
【0069】
ドラム24は、3つの流体連通ポート、すなわち、パイプ18に接続されたLNG入口と、FBOG出口と、LNGs出口と、を有する。
【0070】
FBOG出口は、コンプレッサ26の入口に接続される。コンプレッサ26の出口は、コンプレッサ28に接続される。コンプレッサ26、28は、2つの独立したコンプレッサであっても、同一のコンプレッサの2つの圧縮段であってもよい。したがって、コンプレッサ26、28は共通化され得る。
【0071】
ここで、コンプレッサ26は、ドラム24内に動作圧力を適用するように使用される。したがって、コンプレッサ26は、タンク14に対してドラム24内の圧力を低下させるように構成される。これらの間の圧力差は、タンクからドラム24へLNGを強制的に循環させるのに十分であり得る。したがって、この場合、ポンプ16aは明らかに任意選択的である。コンプレッサ26がドラム24に課す条件は、膨張ドラムにおいてLNGsが生成されるように決定される。
【0072】
ドラム24内のLNGsの量が多すぎて閾値レベルに達する危険性があるような場合、LNGsは、ドラム24のLNGs出口から二次タンク30のLNGs入口に移送され得る。
【0073】
ここで、ドラム24と二次タンク30は、例えばバルブ33及びポンプ35を含むパイプ31によって接続される。ポンプ35は、LNGsをドラム24から二次タンク30へ強制的に循環させるように構成される。ポンプ35は、タンク30がドラム24より高い圧力にある場合に、特に有用である。二次タンク30は、所定の圧力及び所定の温度でLNGを収容する。
【0074】
二次タンク30は、ドラム24で生成された過剰なLNGを貯蔵するように構成される。したがって、タンク30は、冷却液化ガス30aと、タンク14から到来した液化ガス14の蒸発、特に自然蒸発から生じたガス30bと、を収容する。冷却液化ガス(すなわちLNGs)30aは、二次タンク30の底部に貯蔵される一方、ボイルオフガス30bは、文字Mで概略的に表される当該タンクの液化ガスレベルの上方に位置する。
【0075】
二次タンク30は、LNGs出口を含む。図示例において、この出口は、パイプ32によって、一方でタンク14又は各タンク14の噴霧マニホルド22に接続されるとともに、他方でタンク内のLNGに浸漬される又は浸されることが意図された浸漬チューブ34に接続される。したがって、LNGsを噴霧マニホルド22に供給することでタンク14内のBOGにLNGsの液滴を噴霧することが可能であるとともに、LNGsを浸漬チューブ34に供給することでLNGsをタンク14内のLNGに直接注入することが可能であることが明らかである。
【0076】
パイプ32は、バルブ36により二次タンク30のLNGs出口に接続され得る。パイプは、浸漬チューブ34及びマニホルド22に、3ポートバルブ38により接続され得る。
【0077】
ここで、二次タンク30は、気体又は液体等の流体、ここではメインタンク14からのBOGを冷却するために使用される。ここで、熱交換回路40が、二次タンク30に対応付けられている。ここで、「対応付ける」という用語は、広義に理解されるべきである。よって、回路40は、例えば、二次タンク30に収容されたLNGsに浸漬された蛇行パイプであり得る。或いは、回路40は、タンク30の外側に配置され得る。回路40は、回路40を循環する流体と二次タンク30に収容されたLNGsとの間で熱交換が行われるように構成される。回路40を循環する流体は、一般にLNGsより高温であるため、回路40を循環していないときに、LNGsは流体を冷却する。回路は、入口及び出口を有する。
【0078】
回路40の入口は、メインタンク14のBOG出口45に接続される。BOG出口45は、タンクの上端部に位置している。タンク14のBOG出口45は、熱交換器42の二次回路42aの入口に接続されており、熱交換器42の出口は、コンプレッサ28の入口に接続される。
【0079】
コンプレッサ28の出口は、一般に設備12に燃料ガスを供給するようにこれに接続される。コンプレッサ28を出る燃料ガスの一部は、3ポートバルブ46によりコンプレッサ28の出口に接続され得るパイプ44を介して取り込まれ再び送られ得る。
【0080】
コンプレッサ28は、ガス(例えば、タンクからのNBOG)を設備12での使用に適した使用圧力に圧縮するように構成される。
【0081】
パイプ44は、交換器42の一次回路42bの入口に接続されており、交換器42の出口は、回路40の入口に接続される。
【0082】
回路40の出口は、パイプ48により、ドラム24とは別個のドラム50に接続される。パイプ48は、断熱膨張によりガスの温度を低下させるように、好適にはジュール‐トムソン効果バルブであるバルブ52を含む。
【0083】
ジュール‐トムソン膨張は、ガス流をプラグ(一般に綿束又は生糸)を通して断熱水平パイプに流すことによりもたらされるゆっくりとした定常層膨張であり、プラグの左右への圧力が異なる。実際のガスに対して、ジュール‐トムソン膨張は、一般に、ジュール‐トムソン効果である温度変化を伴う。交換器42、回路40、及びバルブ52は、BOGを冷却して部分的に(再)凝縮させる。
【0084】
ドラム50は、タンク14に(再)凝縮したBOGが供給される前に、(再)凝縮したBOG50aから、気体状態のままであるBOG50bを分離することが意図されている。再凝縮したBOG50aは、ドラム50の底部に自然に貯蔵される一方、ボイルオフガス(BOG)50bは、文字Oで概略的に表されるドラム50内の液化ガスレベルの上方に位置する。
【0085】
ドラム50は、3つの流体連通ポート、すなわち、パイプ48に接続されたBOG入口と、気体BOG出口と、(再)凝縮BOG出口と、を含む。ここで、気体BOG出口は、コンプレッサ28の入口に接続される。ここで、(再)凝縮BOG出口は、(再)凝縮BOGをタンク14に注入するように、浸漬チューブ34、パイプ32、及び/又は噴霧マニホルド22に接続される。
【0086】
ポンプ16a、減圧手段19、ドラム24、及びコンプレッサ26によって形成される真空蒸発手段により、従来技術のエバポレータでは通常消費されて蒸発潜熱を回収し、FBOG及び特にメインタンク14に収容されているLNGを冷却するように利用される冷却電力を生成することが可能となる。
【0087】
LNGsは、必要とされないとき、例えば、生成されるNBOGの量が需要量を満たすのに不十分であるフェーズにおいて、二次タンク30に貯蔵可能な冷却電力を形成する。
【0088】
蒸発潜熱は、上述の装置10、特にドラム24によって回収される。ドラム24の動作圧力は、タンク14の動作圧力より小さく、例えば-20mbarg(ゲージmbar(ゲージ圧))以上250mbarg以下(又は-20mbarg以上350mbarg以下、又は-20mbarg以上700mbarg以下)である。ドラム24の動作圧力は、好適には、300mbara(mbara絶対(絶対圧))以上800mbara以下である。
【0089】
LNGがタンク14に貯蔵される圧力に相当する飽和平衡でタンク14から到来するLNGは、タンク14より低い圧力にあるドラム24に送られる。したがって、このLNGは、手段19による減圧時には過熱状態にあり、飽和平衡に至るように、LNGはその過剰な熱を蒸発により放出する。次いで、LNGは、ドラム24内でLNGとFBOGとに分離される。この割合は、特にドラム24の動作圧力によって決まる。
【0090】
例えば、300mbaraの動作圧力では、ドラム24に供給されるLNGの蒸発量は、9.5%以上10%以下である。800mbaraでは、その量は2.3%以上3%以下である。残りの部分は、ドラム24の動作圧力における飽和平衡に対応する温度まで冷却された液体である。例えば、300mbaraの動作圧力では、LNGは-172℃乃至-175℃の温度まで冷却され(-12℃乃至-15℃の温度低下)、800mbaraでは、LNGは-163℃乃至164℃の温度まで冷却される(-3℃乃至-4℃の温度低下)。
【0091】
次いで、LNGsはポンプ35により排出されて、好適には二次タンク30に送られ得る。ポンプ35は、LNGsの圧力を上昇させるように使用され得る。LNGsを二次タンク30に貯蔵することにより、発熱量を保持することが可能になる。
【0092】
動作において、ドラム24に供給されたLNGのうちの蒸発部分は、当該ドラムに蓄積する。ドラム24内の圧力を所定値(例えば、300mbara乃至800mbara)に設定するように、ドラム24で生成されたFBOGは、好適には連続的に抽出される。これは、コンプレッサ26が実施する。コンプレッサ26は、ドラム24の動作圧力に対応する入口圧力と、例えばLNGがタンク14に貯蔵される圧力と同様の出口圧力とにおいて、ドラム24に収容されたガスを吸引するように構成される。このようにして処理されたガスは、使用しやすい。なぜならば、このガスは、タンク14で生成されたNBOGの圧力と同様の圧力であり、このNBOGと共に同一のコンプレッサ28に供給可能であるからである。このコンプレッサ28は、設備12において直接使用可能な燃料ガスを生成して例えば船舶の推進機器に供給するように構成される。
【0093】
上述の装置10では、設備12によるガス消費に対処するように、タンク14で生成されたNBOGはコンプレッサ28に送られ、コンプレッサ28はこのNBOGを使用圧力まで圧縮する。需要を満たすために必要な補充BOGは、ドラム24に供給されるとともに次いでコンプレッサ26及び28に連続的に供給されるLNGの強制蒸発により生成される。特にタンクの高さ又はレベルNが10m以上50m以下である場合、ドラム24にタンク14からのLNGを供給するようにポンプ16aが必要であるとされている。このような場合には、ドラム24の減圧だけでは、LNGをパイプ内18で受動的に循環させるには不十分であるかもしれない。
【0094】
したがって、ドラム24には、設備12の燃料ガス消費需要量を満たすために、NBOGとともに十分な流量のLNGを供給する必要がある。例えば、ドラム24で生成されるFBOGの補充流量は、0kg/h以上4000kg/h以下であり得る。したがって、LNGの組成及びドラム24の動作圧力に応じて、タンク14からドラム24への流量は、0t/h以上17.5t/h以下であり得る。
【0095】
ドラム24で生成されたLNGsは、二次タンク30に貯蔵される。タンク30は、LNGsを貯蔵及び保存するように構成され、したがって有利には断熱されている。二次タンク30内の圧力は、圧力を柔軟に管理し得るように、例えば、0.3bara以上10bara以下である。タンク30のLNGsの温度は、ドラム24内のLNGsの温度に近似しており、例えば、-175℃以上-161℃以下である。必要であれば、例えばNBOGが過剰なフェーズにおいて、二次タンク30に収容されたLNGsをパイプ32において噴霧ランプ22に送り、LNGsの液滴をタンク14に収容されたBOGに噴霧してこのBOGを冷却してもよい。また、LNGを直接冷却するように、LNGsを浸漬チューブ34を介してタンク内のLNGに再注入してもよい。
【0096】
設備12の需要量に対して過剰に生成したNBOGは、取り出されてコンプレッサ28に送られる。次いで、このNBOGは、バルブ46を介して二次タンク30の回路40に再び導かれ、ここで、上述のように既に貯蔵されているLNGsとの熱交換によって冷却される。続いて、過剰NBOGはバルブ52に導かれ、当該バルブ52を通過してタンク14内の貯蔵圧力に近似する圧力まで減圧され得る。例えば、タンクが大気圧のタンクである場合、過剰NBOGは0bar乃至1barに減圧され得る。次いで、過剰NBOGは、ドラム50に供給され、ここで(再)凝縮BOGと気体BOGとに相分離される。気体BOGは、タンク14内で生成され得るNBOGと同一条件でパイプ51によりコンプレッサ28に送られる。一方、(再)凝縮BOGは、LNGを貯蔵するようにタンク14に注入される。
【0097】
図2乃至図6は、図1の装置の動作フェーズを示す。これらの動作フェーズは、当該装置を装備した船舶の動作フェーズに対応し得る。
【0098】
液化ガス冷却方法を、3つのフェーズにおいて説明する。
1.FBOGフェーズとも称される、NBOGの量が不十分なフェーズ(図2及び図3)。例えば、単数又は複数のタンク14で生成されたNBOGにBOGを追加する必要がある速度で船舶が航行している場合。追加のBOG又はFBOGが、装置10により供給されて冷却電力が生成される。
2.過剰NBOGが生成されるフェーズ(図4及び図5)。例えば、船舶が低速で航行する又は停泊中の場合。過剰NBOGを、安全且つ環境に優しい方法で管理する必要がある。
3.船舶のメインタンク14が冷却されるフェーズ(図6)。例えば、(単数又は複数のタンク14が事実上空であるため、BOG管理は一般的に不要である)帰航後の積み込み前。
【0099】
1.FBOGフェーズとも称される、NBOGの量が不十分なフェーズ(図2及び図3)。
【0100】
図2は、FBOG及びLNGsが装置によってともに生成される第1フェーズにおけるステップを示す。
【0101】
タンク14内の圧力を制御するように、NBOGは、当該タンクから出口45を介して取り込まれ、コンプレッサ28に供給される。コンプレッサ28は、設備12が許容可能な圧力、例えばおよそ6‐7bar、15‐17bar、又は300‐315barの燃料ガスを生成し得る。ガス量を補充し、且つ設備12の消費必要量に対処するように、タンク14からのLNGは、ポンプ16a及びパイプ18により減圧手段19に送られ、ここでLNGの圧力をドラム24の動作圧力まで低下させる。LNGは当該ドラムの動作圧力においてドラム24に到達する。ドラム24とタンク14との圧力差によって引き起こされる飽和平衡オフセットを原因として、減圧手段19とドラムとの間でLNGの一部が蒸発する(これがフラッシュ現象である)。そして、残りの部分が、ドラムの動作圧力においてLNGの飽和温度まで冷却される。上述のように、タンク14から十分なフローを取り込むことが必要である。次いで、ドラム24に収容されたFBOGを排出し、コンプレッサ26によって、LNGがタンク14に貯蔵される圧力まで圧縮する。次いで、FBOGを、コンプレッサ28により設備12に必要な圧力まで再び圧縮する。特にドラムのLNGの充填レベルが特定の閾値レベル、例えば50%に達した場合、ドラム24を過剰に充填しないように、当該ドラムからのLNGを二次タンク30に送る。
【0102】
図3は、LNGsが二次タンク30に貯蔵される第1フェーズにおける他のステップを示す。
【0103】
二次タンク30の容量が、生成されたLNGを貯蔵するのに十分でない場合、タンク30に収容されたLNGsをタンク14の底部にパイプ32及び浸漬チューブ34を介して移送し、タンク14内のLNGを、タンク14の貯蔵圧力におけるLNGの飽和温度未満に冷却するようにすることができる。
【0104】
2.過剰NBOGが生成されるフェーズ(図4及び図5)。
【0105】
図4は、過剰NBOGを再凝縮させる第2フェーズのステップを示す。
【0106】
タンク14内で生成されたNBOGは、設備12の必要量を満たすのに十分又はそれ以上の量である。タンク14内の圧力を制御するように、BOGをタンクから取り込んでコンプレッサ28に供給し、設備12に必要な圧力にする。設備で消費できない過剰BOGは、コンプレッサ28の出口から交換器42に送られ、そこで、タンク14から出口45を介して直接取り込まれた低温のNBOGとの熱交換によって冷却される。次いで、過剰BOGは、二次タンク30の回路40に送られ、そこで上述のようにタンクに貯蔵されたLNGsと熱交換することにより再び冷却される。次いで、過剰BOGは、バルブ52により減圧され、ドラム50に供給されて、そこで、交換器42、回路40及びバルブ52により(再)凝縮させたBOGが、気体BOGから分離される。残りの気体BOGは、コンプレッサ28に戻されて設備12に供給される。
【0107】
図5は、LNGsが噴霧される第2フェーズのステップを示す。
【0108】
専用ラインを介して過剰NBOGを再凝縮させることに代えて、二次タンク30に収容されたLNGsをパイプ32に、そして噴霧マニホルド22に移送し、タンク14に収容されたBOGを直接再凝縮させることが可能である。
【0109】
3.船舶のメインタンクが冷却されるフェーズ(図6)。
【0110】
図6は、最終フェーズのステップを示す。
【0111】
典型的には、船舶に貨物を積み込む再液化ターミナルでは、瞬間的に蒸発する(フラッシュ蒸発)LNGの量を制限するように、積み込み前にタンク14が低温であることが必要である。これは、一般に、マニホルド22及び対応するポンプ16bを使用して既にタンク14に収容されているLNGを噴霧して当該タンク内のBOGを冷却することにより達成される。装置10により、本操作は、マニホルド22に二次タンク30からのLNGs、したがってタンク14に収容されているLNGより低温のLNGを供給することで実施される。同様に、タンク14に収容されたBOGが設備12に供給するのに十分でない場合、二次タンク30に収容されるLNGsが、第1フェーズと同じ方法で生成され得る。
【0112】
図7は、装置の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、更なる熱交換器60を含むという点で図1と異なる。熱交換器60は、2つの回路、すなわち、一次回路60a及び二次回路60bを含む。
【0113】
二次回路60bは、ここでは減圧手段19の下流においてパイプ18に接続される入口を有する。二次回路60bは、ドラム24のLNG入口に接続される出口を有する。
【0114】
一次回路60aは、3ポートバルブ62によりタンク14のポンプ16b及び噴霧マニホルド22にそれぞれ接続される入口を有する。一次回路60aは、二次タンク30のLNG入口に接続される出口を有する。
【0115】
二次回路60bは低温回路であり、この回路を循環する流体、本例において減圧されたLNGは、当該回路での循環により加熱されて蒸発する(FBOGになる)ことが意図されている。一次回路60aは、高温回路であり、この回路を循環する流体、本例においてタンク14からのLNGは、本回路での循環により冷却されることが意図されている。しかしながら、回路60aは、より重い成分(エタン、プロパン等)を蒸発させることができない場合がある。二次回路60bの上流での減圧により、蒸発温度が低下し、これにより、タンク内で取り込まれて一次回路を循環するLNGとの熱交換からFBOGを生成可能であることが明らかである。FBOGをもたらす蒸発は、一次回路を循環するLNGにより提供される熱の入力を必要とするため、これは一次回路を循環するLNGを冷却するための低温源である。
【0116】
したがって、タンク14からのLNGは、ポンプ16aによって減圧手段19に送られ、その後交換器60の二次回路すなわち低温回路を循環する。この間、タンクからのLNGは、ポンプ16bにより交換器60の一次回路すなわち高温回路に送られる。この結果、これらの回路同士の熱交換により以下がもたらされる。
‐減圧され一部が蒸発したLNGが加熱されてその蒸発が継続する。その後、LNGはドラムに送られて相分離される。
‐二次タンク30に供給されたLNGが冷却され、その後の使用のためにそこに貯蔵される。
【0117】
その後、装置は、図1乃至図6を参照して最初に説明したように機能する。交換器60による効果を以下に記載する。
‐NBOGに加えて設備12の必要量を満たすのに十分なFBOGを形成するように、ポンプ16aが所定の最大量のLNGのみを循環させるようなサイズとされ得る。このタスクは、一般的に船舶に設置される燃料ポンプにより達成され得る。
‐LNGの供給流量がより小さいため、ドラム24の容量が減少され得る(FBOGの補充フローのみが、設備12の燃料ガス需要量を満たすように使用され得る)。
‐熱交換器の温度ピンチ効果により、冷却電力の生産量が減少する(500mbaraの動作圧力に基づいておよそ15%のロス)。
‐本解決策では、循環するLNG及びLNGsの流量が小さい。このため、ポンプのエネルギー消費が削減されることにより、システムのエネルギー消費を削減することができる。
【0118】
図8は、液化ガスの冷却、及び/又は液化ガスから生じる自然ボイルオフガスの冷却を可能にし得ると考えられる、本発明による装置110の別の実施形態を示す。
【0119】
装置110は、液化ガスを輸送する船舶等の船舶に燃料ガスを供給するのに特に適合しているが、これに限定されない。したがって、装置は、船舶に搭載されたエネルギー生産設備112に燃料ガスを供給するように使用され得る。
【0120】
船舶は、液化ガスを貯蔵するための単数のタンク114又は複数のタンク114を含む。ガスは、例えば、メタン、又はメタンを含むガス混合物、例えば液化天然ガスである。タンク114又は各タンク114は、所定の圧力及び所定の温度、例えば大気圧及び-160℃の温度の液化状態のガスを収容し得る。船舶の単数又は複数のタンク114は、本発明による装置110により設備112に接続され得る。したがって、タンクの基数は、本発明を限定せず、例えば、1基以上6基以下である。各タンク114は、1000m以上50000m以下の容量を有し得る。
【0121】
以後、「タンク」という表現は、「タンク又は各タンク」を意味するものとして解釈されたい。
【0122】
タンク114は、液化ガス114aと、タンク114内の液化ガス114aの蒸発、特に自然ボイルオフから生じるガス114bと、を収容する。液化ガス114aは、タンク114の底部に自然に貯蔵されるのに対し、ボイルオフガス114bは、文字Nで概略的に表されるタンク内の液化ガスのレベルより上方に位置する。
【0123】
以下では、「LNG」は、液化ガスすなわち液状のガスを意味し、「BOG」はボイルオフガスを意味し、「NBOG」は自然ボイルオフガスを意味し、「FBOG」は強制ボイルオフガスを意味するものとする。これらの略語は、該当する英単語の最初の文字に対応しており、当業者に公知である。
【0124】
図8に示す実施形態において、タンク114は、タンクの上部においてレベルNより上方に位置する、LNGの液滴を噴霧するマニホルド122を含む。したがって、マニホルド122は、LNGの液滴をBOGに噴霧するように構成される。これにより、タンク14内のBOGを強制的に再凝縮させることができる。
【0125】
ここで、装置110は、LNGsを貯蔵するための二次タンク130に対応付けられた冷却手段170を含む。
【0126】
冷却手段170は、例えば、タンク130に対応付けられた熱交換回路172を含む。二次タンク130は、所定圧力及び所定温度のLNGsを収容する。
【0127】
二次タンク130は、LNGsを貯蔵するように構成される。したがって、タンク130は、冷却液化ガス130aと、液化ガス130aの蒸発から生じるガス130bと、を収容する。冷却液化ガス(LNGs)130aは、二次タンク130の底部に自然に貯蔵される一方、ボイルオフガス130bは、文字Mで概略的に表される液化ガスレベルの上方に位置する。
【0128】
二次タンク130は、LNGs出口を含む。図示例において、この出口は、パイプ132によって、一方でタンク114又は各タンク114の噴霧マニホルド122に接続されるとともに、他方でタンク114内のLNGに浸漬される又は浸されることが意図された浸漬チューブ134に接続される。したがって、LNGsを噴霧マニホルド122に供給することでタンク114内のBOGにLNGsの液滴を噴霧することが可能であるとともに、LNGsを浸漬チューブ134に供給することでLNGsをタンク114内のLNGに直接注入することが可能であることが明らかである。
【0129】
パイプ132は、バルブ136により二次タンク130のLNGs出口に接続され得る。パイプは、浸漬チューブ134及びマニホルド122に、3ポートバルブ138により接続され得る。
【0130】
ここで、二次タンク130は、気体又は液体等の流体、ここではメインタンク114からのBOGを冷却するために使用される。ここで、更なる熱交換回路140が、二次タンク130に対応付けられている。ここで、各回路140、172を二次タンク130に対応付けるとは広義に理解されるべきである。そして、回路172及び140は、例えば、二次タンク130に収容されたLNGsに浸漬された蛇行パイプであり得る。代替的に、これらの回路は、タンク130の外部に配置され得る。回路140は、当該回路を循環する流体と二次タンク130に収容されたLNGsとの間で熱交換が行われるように構成される。回路140を循環する流体は、一般にLNGsより高温であるため、LNGsは、流体を、これが回路140を循環する際に冷却する。回路は、入口及び出口を有する。
【0131】
回路140の入口は、メインタンク114のBOG出口145に接続される。ここでは、BOG出口145は、タンクの上端に位置している。タンク140のBOG出口145は、熱交換器142の二次回路142aの入口に接続されており、熱交換器142の出口は、コンプレッサ128の入口に接続される。
【0132】
コンプレッサ128の出口は、一般に設備112に燃料ガスを供給するようにこれに接続される。コンプレッサ128を出る燃料ガスの一部は、3ポートバルブ146によりコンプレッサ128の出口に接続され得るパイプ144によって取り込まれ送られ得る。
【0133】
コンプレッサ128は、ガスを設備112での使用に適した使用圧力に圧縮するように構成される。
【0134】
パイプ140は、交換器142の一次回路142bの入口に接続されており、交換器142の出口は、回路140の入口に接続される。
【0135】
回路140の出口は、パイプ148によりドラム150に接続される。パイプ148は、断熱膨張によりガスの温度を低下させるように、ジュール‐トムソン効果バルブ等のバルブ152を含む。
【0136】
交換器142、回路140、及びバルブ152は、BOGの一部を凝縮させる(換言すれば、(再)液化させる)。
【0137】
ドラム150は、(再)凝縮させたBOGを気体状態のままであるBOGから分離することが意図されている。
【0138】
したがって、ドラム150は、(例えば、交換器142、回路140及びバルブ152を含む凝縮ラインによって)(再)凝縮させたBOG150aと、気体BOG150bと、を収容する。凝縮BOG150aは、ドラム150の底部に貯蔵され、気体BOG150は、文字Oで概略的に表されるドラム150内の液化ガスレベルの上方に位置する。
【0139】
ドラム150は、3つの流体連通ポート、すなわち、パイプ148に接続されたBOG入口と、気体BOG出口と、液体BOG出口と、を含む。ここで、凝縮BOG出口は、コンプレッサ126の入口に、パイプ151によって接続される。ここで、液体BOG出口は、LNGをタンク114に貯蔵するように、浸漬チューブ134、パイプ132、及び/又は噴霧マニホルド122に接続される。
【0140】
図9は、装置110の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、冷却手段170において図8の装置と異なる
【0141】
したがって、冷却手段170は、タンク114内のLNGに浸漬されるポンプ116aであって、好適にはLNGのみを供給されることが保証されるようにタンクの底部に配置されるポンプ116aを含む。
【0142】
ポンプ116aは、パイプ118の一端部、ここでは下端部に接続される。パイプ118は、LNGsをタンクに供給するように二次タンク130のLNGs入口に接続された上端部を有する。パイプ118は、真空エバポレータ等の低温発生器を通過するか、又はこれを含む。先の実施形態に示すように、低温発生器は、コンプレッサに対応付けられたドラムを含み得る。
【0143】
ポンプ116aは、LNGsを二次タンク130に供給してLNGsが二次タンク130に貯蔵されるように、LNGをパイプ118においてタンク114の底部から二次タンク130に強制的に循環させるように構成される。
【0144】
図8及び図9に示す装置において、本発明の解決策は、冷却手段170を船舶の環境に組み込むことで、当該機器を最大限に活用して船舶の要請に応えるものである。冷却手段170は、使用において以下のようなものとされる。
図9に示すタイプの場合、LNGは、タンク114からポンプ116aにより冷却手段170に送られ、そこで冷却されてから二次タンク130に注入され貯蔵される。タンク130の容量がLNGsを貯蔵するのに十分でない場合、LNGsはパイプ132に送られ、次いで浸漬チューブ134を介してタンク114に入り得る。これにより、タンク114内のLNGが冷却され得る。
図8に示す第2タイプの場合、冷却手段170は、LNGと直接接触することにより、二次タンク130に貯蔵されたLNGを直接冷却してLNGsを生成する。
【0145】
いずれの場合においても、結果としてLNGsが二次タンク130に貯蔵される。LNGsの温度は、好適には-180℃以上-160℃以下であり、これは、典型的には、-0.5℃乃至-20℃のLNGの温度低下に相当する。二次タンク130に熱が進入することにより、一部のLNGは蒸発してBOG130bに変換され得る。二次タンク130内の圧力が所定の閾値に達した場合、圧力はコンプレッサ126を使用してBOGの一部を除去することで制御され得る。二次タンク130はその使用に応じて設計され、例えば海上でBOGを管理するには50m乃至500mの容量、又は停泊地でBOGを管理(2日乃至5日)するには1500m乃至10000mの容量を有する。二次タンク130内の圧力は、圧力及びボイルオフガス130bを柔軟に管理するために、例えば、0.3bara以上10bara以下である。
【0146】
冷却手段170は、本発明の解決策及びその環境から独立して使用され得る。冷却手段170は、冷却電力が今必要であるかどうかにかかわらず、連続的に動作することが好適である。
【0147】
冷却電力が今必要であれば、例えばタンク114に、パイプ132又は浸漬チューブ134によってLNGsを送り、タンク114に収容されたLNGの圧力又は温度を制御すればよい。
【0148】
典型的には、タンク114内の圧力は、NBOGをコンプレッサ126によりタンク114のNBOG出口145を介して吸引することで、NBOGをタンク114から取り込むことにより制御される。次いで、コンプレッサ126から到来したNBOGは、設備112に供給されるように使用される。設備112の負荷が全てのNBOGを消費するのに十分でない場合、管理の必要な過剰NBOGが存在することになる。この場合、上述のように、タンク114に収容されたLNGや全てのNBOGではなく、過剰NBOGのみに働きかけることが好適である。このような解決策により、設備112の動作圧力で(船舶の設備タイプに応じて、例えば、6‐7bar又は15‐17bar又は300‐315bar)コンプレッサ126から到来した過剰NBOGは、熱交換器142に送られ、これを通過することでタンク114のNBOG出口145を介して取り出されたNBOGと熱交換して冷却されるであろう。次いで、過剰NBOGは、タンク130の熱交換回路140に送られ、これを通過することでタンク130に収容されたLNGsと熱交換して冷却されるであろう。次いで、過剰NBOGは、ドラム150に供給される前に、JTバルブ152によりドラム150の動作圧力まで減圧される。ドラム150は、タンク114での貯蔵圧力に近似した圧力を有するように調整されている。(熱交換器142、回路140、JTバルブ152及びドラム150を含む)BOG凝縮ラインが設けられていることにより、過剰NBOGの一部が凝縮される。最後に、ドラム150に回収された凝縮NBOGは、浸漬チューブ134を介してタンク114に再び注入される。このようにNBOGを(再)凝縮することにより、タンク114内のNBOGの圧力を低下させることができる。
【0149】
上述の装置は、多くの利点を有する。例を以下に記載する。
‐冷却手段170は、全ての過剰NBOGを処理し、中容量で連続的に動作することができる。冷却手段170は、典型的には、最大過剰NBOGを管理し、過剰NBOGの実際の変動を管理するように低容量で、又はその容量を超える過剰NBOGが失われるバランス容量で動作するように寸法決めされる。装置110により、冷却手段170は、全ての過剰NBOGを管理可能でありつつ、過剰NBOGの平均容量に応じてサイズ決めされ得る。標準的な船舶の場合、平均的な過剰NBOGは、最大過剰NBOGの25%乃至50%の範囲にある。一方では冷却電力の生成における変動を受容し、他方では冷却電力の需要量を受容するこのような柔軟性は、タンク114に貯蔵されたLNGよりも低温のLNGsを貯蔵可能である二次タンク130により提供される。このようにして、冷却電力をLNGsに集結させて必要な時にすぐ使用できる。これに対し、従来技術では、冷却電力は大容量のタンク114内で希薄である。
‐冷却電力は、典型的には、タンク114にLNGsを噴霧するために使用される。タンク114内の気相を冷却し、その一部を凝縮させる。エネルギー面から、これは理想的ではない。なぜならば、過剰NBOGの一部が設備112に供給するように使用され得るからである。装置110により、NBOGの一部が設備112に供給するように使用され、冷却電力は過剰NBOGに対してのみ使用される。典型的な船舶の場合、停泊時のガス消費量は、NBOGの15%乃至30%の範囲である。
‐船舶に装備されたコンプレッサ126により、過剰NBOGは、設備112の入口圧力(典型的には、6‐7bar又は15‐17bar又は300‐315bar)まで圧縮され、その後LNGsにより冷却され、相分離されてから、メインタンク114に戻る。これは、メインタンク114の気相にLNGsを噴霧するより効率的である。これは、過剰NBOGをより強力に冷却できるため、圧力差によってより多くの過剰NBOGを凝縮させることができるためである。
‐特定の条件下において、何らかの冷却手段が使用され得る。例えば、上述の真空エバポレータは、設備112に供給するNBOGに加えて必要な補充FBOGから単に冷気を生成し得る。生成された冷却電力は、装置110によって必要な時に必要に応じて使用され得る。
【0150】
図9及び図10は、図9の装置の動作フェーズを示す。これらは、図8の装置に当然に適用可能であるとともに、装置を装備した船舶の動作フェーズに対応し得る。
1.タンク状態(圧力及び温度)の制御‐図9
2.過剰NBOGの管理‐図10
【0151】
1.タンク状態(圧力及び温度)の制御‐図9
【0152】
二次タンク130にタンク114からLNGを供給する必要がなく(例えば、必要なエネルギーが他のエネルギー源から供給される)、且つタンク114の状態(例えば、積み込み前の湿潤圧力又は温度)を制御する必要がある場合、二次タンク130に収容されたLNGsは、これをパイプ132及び浸漬チューブ134を介して送ることで、タンク114に収容されたLNGを冷却するように使用され得る。
【0153】
2.過剰NBOGの管理‐図10
【0154】
上述のように、過剰NBOGは、交換器142、熱交換回路140、JTバルブ152及びドラム150によって形成された凝縮ラインを循環させることで管理され得る。
【0155】
図11は、代替例を示す。
【0156】
典型的には、タンク114内での貯蔵圧力よりも大きい入口圧力で設備にガスを供給する必要があるため、コンプレッサ126は、NBOGを設備112において許容可能な圧力を有した状態で送ることができるようにする。NBOGは、この圧縮中に加熱される。好適には交換器142は、タンク114から到来する冷気の一部を回収するように使用される。この構成は、性能向上のために想定可能であるが、根本的でなく必須ではない。したがって、図11の実施形態において、この構成は省略される。このため、3ポートバルブ146の出口は回路140の入口に直接接続され、タンクのNBOG出口145はコンプレッサ126の入口に直接接続される。
【0157】
図12は、装置の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、更なる熱交換器180を含むという点で図9の装置と異なる。熱交換器180は、2つの回路、すなわち一次回路180a及び二次回路180bを含む。
【0158】
二次回路180は、二次タンク130に収容されたLNGsに浸漬されたポンプ182に接続された入力部と、タンク130のLNGs入口に接続された出口と、を有する。この目的は、LNGsが交換器180の一次回路を循環する流体と熱交換した後に、これを熱交換タンクに再注入することである。一次回路180は、上述の熱交換回路140に類似している。
【0159】
一次回路180aは高温回路であり、この回路内を循環する流体、本例において圧縮BOGは、当該回路内での循環により冷却されることが意図されている。二次回路180bは冷却回路であり、この回路内を循環する流体、本例においてタンク330から到来するLNGsは、当該回路内での循環により冷却されることが意図されている。
【0160】
図13は、装置10の変形実施形態を示す。この変形実施形態は、ドラム24及び二次タンク30がプールされて、タンク14からのLNGの強制ボイルオフ及びこのようにして生成されたLNGsの貯蔵のための単一のタンク90を形成且つ規定するという点で図1の装置と異なる。
【0161】
以下の表1は、種々の範囲(幅、中央値、最適値)に対する本発明による装置の種々の動作パラメータの例を示す。
【0162】
【表1】
【0163】
表2は、同一種類のパラメータを示すが、より一般的な液化ガス組成、特にメタン又はメタンを含むガス混合物等の液化天然ガスを対象としている。
【0164】
【表2】
【0165】
パイプ18の下端部(ポンプは一般に安定した深さにある)の静水圧は、メインタンクの充填レベルに応じて変動する。
【0166】
ドラム24内の液化ガスの温度は、「回路40により冷却されるBOGの温度(℃)」から例えば2℃を引いたものに等しく、これは、交換器の「ピンチ効果」に対応する。
【0167】
減圧後に蒸発するガスの割合は、以下の式で得られる。
X=(Hl、u-Hl、d)/(Hv、d-Hl、d)
ここで、
Xは、蒸発した液体の質量割合、
Hl、d(J/kg)は、上流の液体の上流温度及び圧力でのエンタルピー、
Hv、d(J/kg)は、下流圧力での飽和温度に対応する蒸発ガスのエンタルピー、
Hl、d(J/kg)は、下流圧力での飽和温度に対応する残留液体のエンタルピー、である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13