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特許7242567ヒータへの電力を制御するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ヒータへの電力を制御するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
H05B3/00 310D
H05B3/00 320Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019569414
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018046195
(87)【国際公開番号】W WO2019112652
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/543,457
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス-ブレイトロウ、スタントン
(72)【発明者】
【氏名】ヘントゲス、ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ボーリンガー、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】イェンダー、マシュウ
(72)【発明者】
【氏名】ネス、ケイス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、カート
(72)【発明者】
【氏名】メーチ、エリック
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ブリタニー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ、ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ロゼック、ジェフリー
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522565(JP,A)
【文献】特開2001-128361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345384(US,A1)
【文献】特開平11-345030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0287377(US,A1)
【文献】特表2001-523041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加熱素子を含むヒータを制御する制御システムであり、前記制御システムは、
前記ヒータに調整可能な電圧出力を供給するように動作可能な電力コンバータであって、電源からの電圧入力を前記電圧入力以下の電圧出力に変換するように構成される前記電力コンバータと、
前記ヒータの加熱素子の電気的特性を測定するように構成されたセンサ回路であって、前記電気的特性は、電流および電圧の少なくとも一方を含む前記センサ回路と、
前記ヒータの基準領域の基準温度を測定する基準温度センサと、及び、
前記電力コンバータを操作して前記ヒータへの前記電圧出力を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、複数のモードで動作し、前記複数のモードは、操作モード及び学習モードを含み、
前記学習モードでは、前記コントローラは、前記ヒータを駆動して、ヒータ-負荷相関データを作成し、前記ヒータ-負荷相関データは、前記加熱素子の一次温度を前記基準温度に関連づけたものであり、
前記操作モードの際に、前記コントローラは、
前記電気的特性に基づいて前記加熱素子の前記一次温度を計算し、
前記基準温度と前記一次温度の少なくとも一方に基づいて、前記ヒータに印加される前記電圧出力を決定し、
前記ヒータに前記電圧出力が供給されている時に1つ以上の保護プロトコルを実行する、制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記基準温度と前記一次温度との差が予め設定された閾値よりも大きいことに応じて、前記ヒータへの電力を低減または遮断するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記基準温度センサは、赤外線カメラ、熱電対、および抵抗温度検出器のうちの1つである、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記学習モードにおいて、前記コントローラは、前記ヒータへの電力を徐々に増加させて、前記ヒータにより生成される熱を増加させ、複数の一次温度を決定し、前記一次温度を前記基準温度センサによって検出されるそれぞれの基準温度と相関させて、ヒータ負荷相関データを生成するように構成される、請求項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電力が増加している期間に亘って、前記一次温度および前記基準温度の変化をマッピングするように構成される、請求項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記基準温度センサは、前記ヒータ上に配置された負荷および前記ヒータの表面の少なくとも一方の温度を測定するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記操作モードにおいて、前記コントローラは、ブースト補償を実行して、所定の設定点温度まで、負荷が加熱される時間のレートを増加させる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの加熱素子は、所望のゾーンに設けられ、少なくとも1つの追加加熱素子は、前記所望のゾーンに隣接する1つ以上のゾーンに設けられ、
前記コントローラは、前記電気的特性に基づいて、前記所望のゾーンの少なくとも1つの加熱素子のそれぞれの一次温度を決定するように構成され前記隣接するゾーンについて、前記コントローラは、前記一次温度に基づいて前記隣接するゾーンの一つ以上の前記追加加熱素子に供給される電力を調整して、ヒータ全体の温度変動を制御するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記隣接する1つ以上のゾーンのうち、隣接するゾーンの温度よりも高い温度を有する1つのゾーンに応じて、前記1つのゾーンへの電力を低減するように構成される、請求項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記操作モードにおいて、前記コントローラは、前記基準温度及び前記一次温度の少なくとも1つに基づいて、前記ヒータの動作状態として、複数の所定の状態モデル制御の中から、1つの状態モデル制御を選択するように構成される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記複数の所定の状態モデル制御は、パワーアップ制御、ソフトスタート制御、設定レート制御、および定常状態制御のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
前記状態モデル制御のそれぞれは、それぞれの状態モデル制御のためのヒータを制御するために、1つ以上の操作設定を定義する、請求項10に記載の制御システム。
【請求項13】
前記1つ以上の操作設定は、前記動作状態を終了して他の1つの状態モデル制御へ遷移する条件を定義する遷移条件を含む、請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
ヒータと、
請求項1に記載の制御システムと、
を備える熱システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年8月10日出願の米国仮出願第62/543,457号の利益および優先権を主張し、2017年6月15日に出願された「熱システム用の電力コンバータ」というタイトルの米国出願第15/624,060の一部継続出願である。当該出願は、2016年6月15日に出願された米国仮出願第62/350,275号の利益を享受する。上記の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ヒータを有する熱システムを制御するためのシステム及び/又は方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本セクションの記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成しない場合がある。
【0004】
一般に、負荷を加熱するためのペデスタルヒータなどのヒータは、制御システムによって制御される加熱素子を含む。例えば、ペデスタルヒータは、セラミック基板、及び当該セラミック基板に埋め込まれ、複数の加熱ゾーンを規定する複数の抵抗加熱素子を有する加熱プレートを含む。典型的には、ヒータ起動中に同じランプレートで同じ電力が複数の抵抗加熱素子に印加される。
【0005】
抵抗加熱素子に同じ電力が印加されるにもかかわらず、例えば、ヒートシンクに対する加熱ゾーンの位置及び不均一な製造に起因する特性の違いにより、いくつかの抵抗加熱素子は他の加熱素子よりも速く加熱され得る。ある加熱ゾーンが隣接する加熱ゾーンよりも速く加熱されると、隣接する加熱ゾーン間の温度差により、異なる熱膨張が生じ、その結果、隣接する加熱ゾーン間で熱応力が生じる。大きな熱応力は、セラミック基板に熱亀裂が発生を引き起こす。これらおよび他の問題は、本開示により対処される。
【発明の概要】
【0006】
本セクションは、本開示の一般的な要約を提供し、その全範囲またはその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0007】
一形態において、本開示は、少なくとも1つの加熱素子を含むヒータを制御する制御システムに関連する。制御システムは、電力コンバータと、センサ回路と、基準温度センサと、コントローラを含んでいる。電力コンバータは、ヒータに調整可能な電圧出力を供給するように動作可能なであって、電源からの電圧入力を電圧入力以下の電圧出力に変換するように構成される。センサ回路は、ヒータの加熱素子の電気的特性を測定し、電気的特性は、電流および電圧の少なくとも一方を含む。基準温度センサは、ヒータの基準の基準温度を測定する。コントローラは、電力コンバータを操作してヒータへの電圧出力を制御するように構成される。コントローラは、電気的特性に基づいて加熱素子の一次温度を計算し、基準温度と一次温度の少なくとも一方に基づいて、ヒータに印加される電圧出力を決定する。コントローラは、操作モードと学習モードの少なくとも1つで動作し、前記ヒータに電圧出力が供給されている時に1つ以上の保護プロトコルを実行するように構成される。
【0008】
別の形態において、コントローラは、基準温度と一次温度との差が予め設定された閾値よりも大きいことに応じて、ヒータへの電力を低減または遮断するように構成される。
【0009】
さらに別の形態において、基準温度センサは、赤外線カメラ、熱電対、および抵抗温度検出器のうちの1つである。
【0010】
一形態において、学習モードにおいて、コントローラは、ヒータを操作して、加熱素子の温度をヒータに配置された負荷の温度に関連付けるヒータ-負荷相関データを生成するように構成される。
【0011】
別の形態において、学習モードにおいて、コントローラは、ヒータへの電力を徐々に増加させて、ヒータにより生成される熱を増加させ、複数の一次温度を決定し、一次温度を基準温度センサによって検出されるそれぞれの基準温度と相関させて、ヒータ負荷相関データを生成するように構成される。
【0012】
さらに別の形態において、コントローラは、電力が増加している期間に亘って、一次温度及び基準温度の変化をマッピングするように構成される。
【0013】
一形態において、基準温度センサは、ヒータ上に配置された負荷及びヒータの表面の少なくとも一方の温度を測定するように構成される。
【0014】
別の形態において、操作モードにおいて、コントローラは、ブースト補償を実行して、加熱素子が熱を生成して基準を所定の設定点温度まで加熱するレートを増加させる。
【0015】
さらに別の形態において、コントローラは、電気的特性に基づいて各加熱素子の一次温度を決定し、隣接ゾーンについて、一次温度に基づいて隣接ゾーンの一つ以上の加熱素子に供給される電力を調整して、ヒータ全体の温度変動を制御するように構成される。
【0016】
一形態において、コントローラは、隣接するゾーンの温度よりも高い温度を有する1つのゾーンに応じて、1つのゾーンへの電力を低減するように構成される。
【0017】
別の形態において、操作モードにおいて、コントローラは、基準温度及び一次温度の少なくとも1つに基づいて、ヒータの動作状態として、複数の所定の状態モデル制御の中から、1つの状態モデル制御を選択するように構成される。
【0018】
さらに別の形態において、複数の所定の状態モデル制御は、パワーアップ制御、ソフトスタート制御、設定レート制御、および定常状態制御のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
一形態において、状態モデル制御のそれぞれは、それぞれの状態モデル制御のためのヒータを制御するために、1つ以上の操作設定を定義する。
【0020】
別の形態において、1つ以上の操作設定は、操作状態を終了して他の1つの状態モデル制御へ遷移する条件を定義する遷移条件を含む。
【0021】
さらに別の形態において、本開示は、ヒータと、上述の制御システムと、を備える熱システムである。
【0022】
適用可能性のあるさらなる分野は、本明細書で提供される説明から明らかになる。説明及び特定の実施例は、例示の目的のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示を十分に理解できるようにするために、添付図面を参照して、例として与えられるその様々な形態について説明する。
【0024】
図1図1は、本開示の教示による、ヒータ及び制御システムを有する熱システムを示す。
【0025】
図2図2は、本開示の教示による電力コンバータを示す。
【0026】
図3図3は、図1の制御システムのブロック図である。
【0027】
図4図4は、本開示の教示による複数の状態モデルによって定義される例示的な状態モデル制御プログラムを示す図である。
【0028】
図5A-5E】図5A図5B図5C図5D、及び図5Eは、図4の状態モデル制御プログラムの状態モデルの設定を示す。
【0029】
図6図6は、本開示の教示によるメインメニューグラフィカルユーザインターフェースの例である。
【0030】
図7図7は、本開示の教示による制御システムインターフェースの斜視図である。
【0031】
図8図8は、分離回路を有する制御システムのブロック図である。
【0032】
図9図9は、図8の分離回路の構成例である。
【0033】
本明細書で説明される図面は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は本質的に単なる例示であり、本開示、用途、又は使用を限定することを意図するものではない。図面全体を通して、対応する参照符号は、同様又は対応する部品および特徴を示すことを理解されたい。
【0035】
図1を参照すると、本開示の教示に従って構成された熱システム100は、ヒータ102と、ヒータコントローラ106および電力変換システム108を有する制御システム104とを含む。本開示の一形態では、ヒータ102は、ペデスタルヒータであり、加熱プレート110と、加熱プレート110の底面に配置された支持シャフト112とを含む。加熱プレート110は、基板111と、基板111の表面に埋め込まれた、又は表面に沿って配置された複数の抵抗加熱素子(図示せず)とを含む。基板111は、セラミックまたはアルミニウムで形成されていてもよい。抵抗加熱素子は、コントローラ106によって独立して制御され、図中の一点鎖線で示すように複数の加熱ゾーン114を規定する。これらの加熱ゾーン114は単なる例示であり、本開示の範囲内に存在する任意の構成をとることができる。
【0036】
ヒータ102は、温度を決定するために抵抗の変化がコントローラ106に使用され得る「2線式(two-wire)」ヒータであってもよい。そのような2線式システムは、本出願と共通に所有されている米国特許第7,196,295号に開示されており、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。2線式システムでは、熱システムは、適応熱システムであって、当該適応熱システムは、ヒータ設計を、電力、抵抗、電圧、及び電流を、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムに盛り込む制御にマージする。当該フィードバック制御システムは、他を制御しながら1つ以上のこれらのパラメータ(電力、抵抗、電圧、電流等)を制限する。以下でさらに説明するように、一形態では、電力変換システム108により、コントローラ106は安定した連続的な電流及び電圧の読み取り値を取得する。次に、これらの読み取り値を使用して、抵抗、従ってヒータ102の温度を決定することができる。別の形態では、コントローラ106は、米国特許第7,196,295号に記載されているように、ゼロクロッシングでの電圧及び/又は電流を測定するように構成されている。
【0037】
ヒータ102はペデスタルヒータとして説明されるが、本開示の制御システムは、管状ヒータおよび流体ライン用ヒータージャケットなどの他のタイプのヒータを制御することができ、ペデスタルヒータに限定されるべきではない。
【0038】
制御システム104は、例えば電力コンバータ116よりも低い電圧で動作するコントローラ104などのコンポーネントを含む。従って、低電圧コンポーネントを高電圧から保護するために、制御システム104は、高電圧コンポーネントから低電圧コンポーネントを絶縁し、かつ信号を交換可能な電子コンポーネントを含む。図1では、電力線は破線で示されており、データ信号線は実線で示されている。
【0039】
電力変換システム108は、ヒータ102の加熱素子に電力を供給する電力コンバータ116(図中116乃至116)含む。より具体的には、各電力コンバータ116は、電源118からの入力電圧(VIN)を、ヒータ102の加熱素子に印加される出力電圧(VOUT)に調整するように動作する。このとき出力電圧は入力電圧以下である。そのような電力変換システムの一例は、2017年6月15日に出願され、「熱システム用の電力コンバータ」というタイトルの同時係属出願米国出願番号15/624,060に記載されている。当該出願は、本出願およびその内容と共通に所有され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この例では、各電力コンバータは、バックコンバータを含み、当該バックコンバータは、コントローラ106によって動作可能であって、所定のゾーンの1つ以上の加熱素子への所望の出力電圧(VOUT)を生成する。
【0040】
より具体的には、図2に参照されるように、所定の電力コンバータ116は、ドライバ回路120と、電力スイッチとも呼ばれる制御スイッチ124(図中「SW」)を有するバックコンバータ122とを含む。例示の目的で、破線126は、システム100の高電圧セクションからの低電圧セクションの分離を表している。ドライバ回路202は、コントローラ104からの入力信号に基づいて制御スイッチ206を操作し、電源118を調整し、1つ以上の加熱素子128に低減された電圧を出力する。ドライバ回路202は、コントローラ106と通信し、コントローラ106を電力コンバータ116から分離するために、光アイソレータ、変圧器などの電子機器を含んでいる。従って、電力変換システム108は、ヒータ102の加熱ゾーンのそれぞれにカスタマイズ可能な量の電力を提供するように動作可能である。図2には特定の構成要素が示されているが、電力コンバータ116は、本開示の範囲内に留まりながら、他の構成要素を含むことができることは、容易に理解されるべきである。
【0041】
一形態では、制御システム104は、電源118と電力変換システム108との間を流れる電力を制御するために、リレーなどのインターロック129を含む。インターロック129は、本開示で説明するように、電源118から電力変換システム108への電力を遮断する安全機構として、すなわち異常な活動の場合にヒータ102への電力を遮断する安全機構として、コントローラ106によって動作可能である。
【0042】
図1及び図2に参照されるように、ヒータ102の性能をモニターするために、制御システム104は、基準センサ130および1つ以上のヒータセンサ回路132を含んでいる。基準センサ130は、ヒータ102について基準領域の温度(すなわち、基準温度)を測定するように構成される別個のセンサである。例えば、一形態では、基準センサ130は、ヒータ102によって加熱されている負荷(例えば、ウェハ、パイプ)の温度を測定する。当該負荷は基準領域である。別の例では、基準センサ130は、ヒータ102の表面に沿って温度を測定する。基準センサ130は、赤外線カメラ、熱電対、抵抗温度検出器、及び/又は温度測定に適した他のセンサであり得る。加えて、ヒータ102の周りの異なる領域を検出するために、複数の基準センサが使用されてもよい。
【0043】
2線ヒータの使用により、ヒータセンサ回路132(すなわち、センサ回路)は、加熱素子の電気特性を測定するように構成され、次いで加熱素子の性能特性、例えば抵抗、温度、及びその他の適切な情報、を決定するために使用される。一形態では、1つ以上の加熱素子の電気的特性を測定する、所定のヒータセンサ回路132が設けられており、当該加熱素子は、所定の電力コンバータ116から電力を受け取る、例えば、図2は、ヒータセンサ回路132を示しており、当該ヒータセンサ回路132は、電力コンバータ116と加熱素子128との間の電気回路に結合され、加熱素子128の電気特性を測定する。電気特性は、電流及び電圧の少なくとも一方を含んでいる。一形態では、センサ回路132は、電力計測チップ134(図中「PM」)を含んでおり、加熱素子に印加される電力に関係なく電流及び/又は電圧を連続的に測定する。また、センサ回路132は、システムの低電圧部と高電圧部との間で信号を送信するために、他から分離されたアナログ/デジタルコンバータ、光アイソレータ、または変圧器などの他の電子機器を有していてもよい。センサ回路132は、本開示の範囲内にとどまりつつ、米国出願第15/624,060号に記載されているセンサ回路等、他の適切な方法で構成することができる。
【0044】
基準センサ130及び/又はセンサ回路134からのデータは、ヒータ102の動作を制御するための更なる処理のために、ヒータコントローラ106に提供される。一形態では、ヒータコントローラ106は、制御システム104と情報を交換するために、ユーザによって操作可能なコンピューティングデバイス136等の外部デバイスに通信可能に結合される。例えば、コンピューティングデバイス134は、デスクトップコンピュータ、タブレット、ラップトップ等であり、無線通信リンク(例えば、WI-FI、ブルートゥース(登録商標)など)及び/又は有線通信を介してコントローラ10に通信可能に結合され得る。一形態では、コントローラ106は、1つ以上のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介してコンピューティングデバイス136と情報を交換するように構成される。GUIは様々な適切な方法で、動作状態、温度プロファイル、ヒータの電気特性、及び他の適切な情報等、ヒータ102の制御および動作に関連する情報を中継する。GUIは様々な適切な方法で、設定点(温度、電力等)、動作変数(変化レート、PID変数等)、ヒータ102の制御状態の選択(学習モード、キャリブレーション、手動制御、状態制御プログラム等)等のユーザからの入力を受信する。
【0045】
コントローラ106は、1つ以上のマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサによって実行されるコンピュータ読み取り可能命令(すなわち、ソフトウェアプログラム)を格納するメモリ(例えば、RAM、ROMなど)を含む電子機器を含む。コントローラ106は、所定のコンピュータ読み取り可能命令により、1つ以上の制御プロセスを実行するように構成される。当該制御プロセスは、ヒータ学習状態、状態モデル制御、システム保護モニター、及び/又は本開示で説明する他の適切なプロセス等である。
【0046】
図3に参照されるように、一形態では、コントローラ106は、インターフェースモジュール200、性能フィードバックモジュール202、ヒータ学習モジュール204、電力制御モジュール206、状態モデル制御モジュール208、状態選択モジュール210、及びシステム保護モジュール212として動作するように構成される。インターフェースモジュール200は、コンピューティングデバイス136などの1つ以上の外部デバイスと通信するように構成される。コンピューティングデバイスに関して、インターフェースモジュール200は、コントローラ106の他のモジュールによって得られる様々な制御オプションとシステム性能情報をユーザに表示するGUIを表示するように構成される。ユーザが制御オプションを選択した場合、インターフェースモジュール200は、コントローラ106のそれぞれのモジュールにデータを送信する。
【0047】
性能フィードバックモジュール202は、基準センサ130及びヒータセンサ回路132からの電気的応答を測定して、基準温度及びヒータ温度(すなわち、請求項における一次温度)を決定するように構成される。例えば、センサ回路132の電気的特性に基づいて、性能フィードバックモジュール202は、それぞれの加熱素子の平均抵抗を決定し、次いで温度と抵抗を相関させる所定の情報を使用して、加熱素子の温度を決定する。性能フィードバックモジュール202は、使用されている基準センサ130のタイプに基づいて基準温度を決定するように構成される。例えば、基準センサ130がRTDである場合、フィードバックモジュール202は、温度に対する抵抗に関連させる所定の情報を含み、この情報を使用して基準領域の温度を決定する。
【0048】
一形態では、ヒータ学習モジュール204は、互いに関連付けられた2つ以上のパラメータを互いに関連付け、その後他の測定値に基づいて1つのパラメータの値を決定するために使用される、1タイプ以上のタイプの相関データを形成するように構成される。例えば、学習モジュール204は、ヒータ102の性能と加熱される負荷を相関させる、ヒータ102の性能マップを構築するように構成される。具体的には、ヒータ102の温度(すなわち、加熱素子の温度)は、ヒータ102の表面の温度と、ヒータ102に置かれた負荷の温度とは異なる。一形態では、ヒータ学習モジュール204は、ヒータ-負荷温度相関データを生成する。当該ヒータ-負荷温度相関データは、ヒータ102の温度(すなわち、ヒータ温度)、及び、ヒータ温度およびヒータ102に印加される電力に基づいて、負荷が設定点温度に達するのに必要な時間を提供する。例えば、ヒータ温度が500°Cで、負荷温度が470°C、つまりオフセットが30°C、である場合、ヒータ-負荷温度相関データは、所望の期間内に負荷温度を、例えば490°Cに上げるため、適切なヒータ温度を決定するために使用される。
【0049】
ヒータ負荷温度相関データを生成するために、ヒータ学習モジュール204は、ヒータ学習ルーチンを実行するように構成される。当該ヒータ学習ルーチンの間では、加熱のためにヒータ102の上には負荷又はアーチファクトが配置されている。学習モジュール204は、プリセット動作シーケンスに従ってヒータ102を動作させる。当該プリセット動作シーケンスでは、電力制御モジュール206はヒータ102への電力を徐々に増加させてヒータ温度を上昇させる。ヒータ学習モジュール204は、性能フィードバックモジュール202から各加熱素子の平均温度と基準温度を取得する。
【0050】
加熱素子の温度を使用して、学習モジュール204は、全体的なヒータ温度を取得し、加えられる電力、加熱動作の持続時間、及びヒータ温度を相関させる。加えて、ヒータ学習モジュール204は、適用される電力、ルーチン時間、及び測定された基準温度を相関させる。2つの相関データを使用して、ヒータ学習モジュール204は、電力及び時間の変化に亘って一次温度(すなわち、ヒータ温度)をそれぞれの基準温度と相関させて、ヒータ負荷相関データを形成する。一形態では、ヒータ学習ルーチンは、相関データを構築及び更新する時であっても、いかなる時にでも実行される。
【0051】
ヒータ学習モジュール204は、他の適切な方法で構成されてもよい。例えば、負荷温度を測定する代わりに、モジュール204は、基準センサ130を使用してヒータ102の表面を測定し、ヒータと表面温度を相関させてもよい。所定のアルゴリズムを使用して、表面温度に基づいて負荷の温度を推定し、ヒータ-負荷相関データを取得できる。
【0052】
一形態では、ヒータ-負荷相関データは、レート及び手動制御を含むがこれらに限定されない1つ以上の状態モデル制御によって用いられ、負荷温度が上昇するレートを高めるブースト補償を実行する。具体的には、コントローラ106は、相関データを用いて、ヒータ102が特定の温度に達するのにかかる時間を知り、ヒータ温度が何度であるべきか、及び、負荷温度が所望の温度に達するまでの時間を決定する。従って、コントローラ106は、負荷温度が増加するレートを増加させることができる。
【0053】
ヒータ-負荷相関データに加えて、またはその代わりに、ヒータ学習モジュール204は、自動学習抵抗-温度曲線制御を実行して、2線式システムのための抵抗-温度マッピングテーブルを自律的に生成するように構成される。温度曲線に対する抵抗を決定する一例は、米国特許第7,196,295号に開示されている2線式システムに記載されている。一般に、ワイヤの抵抗は、基準温度でのベース抵抗、2線(two-wire)に使用される特定の材料のTCR、及び温度に基づいて決定される。2線式システムは、電圧及び/又は電流に基づいて抵抗を決定でき、その後、抵抗、ベース抵抗、およびTCRを使用して温度を決定できる。抵抗-温度曲線は、例えば、基準温度と2線式システムの間にあるリード線またはオフセットからの追加抵抗に基づいて調整できる。
【0054】
電力制御モジュール206は、各コンバータ116の電力出力コマンドに基づいて各電力コンバータを動作させるように構成される。一形態において、電力出力コマンドは、ヒータ学習モジュール204、状態選択モジュール210、及びシステム保護モジュール212のうちの少なくとも1つによって提供され得る。一形態では、電力制御モジュール206は、ドライバ回路120に制御信号を出力し、ドライバ回路120は返しにそれぞれの電力コンバータ116の制御スイッチ124を操作して、指定された加熱素子の所望の出力電圧に入力電圧を調整する。
【0055】
状態モデル制御モジュール208及び状態選択モジュール210は、状態モデル制御を構築し、所望の状態モデルを選択してヒータ102を動作させるように構成される。一形態では、状態モデル制御モジュール208は、状態モデル制御リポジトリ214内に1つ以上の状態モデルを格納し、ユーザからの入力に基づいて新しい状態モデルを変更又は構築するように構成される。例えば、以下の表1は、異なる状態モデルの例を示している。当該異なる状態モデルとは、設定条件内でヒータ102を制御するためのコンピュータ実行可能プログラムである。なお特定の例が示されているが、本開示の範囲内に留まりつつ、他の状態モデルが使用されてもよい。
【表1】
【0056】
一形態では、状態モデル制御は、それぞれの状態モデル制御のためにヒータ102を制御するための1つ以上の動作設定によって定義される。例えば、表2は、状態モデルコントロールを定義するために使われる様々な設定を示している。特定の例が提供されているが、本開示の範囲内に留まりつつ、他の設定が使用されてもよい。
【表2】
【0057】
異なる設定を使用して、異なる状態モデルを定義することができ、同じタイプの状態モデルの異なるバリエーションも定義することができる。例えば、図4は、6つの異なる状態モデルによって定義される状態モデル制御プログラム250を示す。当該6つの異なる状態モデルには、パワーアップ制御252、ソフトスタート制御254、レート制御256、及び3つのPID制御258、260、262(例えば定常状態制御)が含まれている。図4は、制御プログラム250の所定の状態モデルから別の状態モデルへの遷移を示している。
【0058】
各状態モデルは、コンピューティングデバイス135を介してユーザが固定または調整可能な、1つ以上の設定によって定義される。例えば、図5A乃至5Eは、図4の状態モデル制御プログラム250の状態モデル1乃至5の設定を示す。ユーザが調整可能な設定のタイプ及び/又は数は、熱システム100の使用に基づいてカスタマイズすることができ、従って、調整可能又は固定されるいかなる数が本開示の範囲内である。
【0059】
図5Aは、パワーアップ制御252の設定を示しており、これには以下が含まれる。すなわち、2%/分でパワーアップを実行するための電力設定点;及び、加熱素子の電気特性(HEC)が、ユーザによってあらかじめ定義された又は調整可能なパワーアップ時閾値(THPWR―UP)よりも大きい場合に、状態モデル2(ソフトスタート制御254)に移行するための遷移条件が含まれる。図5Bは、ソフトスタート制御254の設定を示しており、これは以下が含まれる。すなわち、初期電力0%及び最大電力5%の0.5%電力/分のレート設定;及び、電圧出力(VO/P)が5%よりも大きい場合に、制御254を終了し状態モデル3(レート制御256)に移行する遷移条件が含まれる。図5Cは、レート制御256の設定を示しており、これには以下が含まれる。すなわち、12℃/分のレート設定点;200℃の比例帯(PB)、30秒の積分ゲイン(Ti)、及び0秒の(Td)の微分ゲイン;選択可能であるが、現在設定されていない開始アクション;システムが1℃の相対パラメータ(Rel.Param 1)で電力設定値(SP)に近い場合に、状態モデル4(PID-1 258)に移行する遷移条件が含まれる。図5D及び5Eは、状態モデル制御4及び5(すなわち、PID-1 258及びPID-2 260)の設定をそれぞれ示しており、両方とも異なる設定が割り当てられたPID制御である。他の設定とともに、状態モデル制御4には、以下の2つの終了条件が含まれる。すなわち、温度設定点が10℃の相対パラメータ(Rel.Param 1)だけ増加する場合において、状態モデル3(例えばレート256)へ遷移する第1の状態遷移;及び、設定点が10℃の相対パラメータ(Rel.Param 2)だけ減少する場合において、状態モデル5(PID-2 260)へ遷移する第2の状態遷移が含まれる。同様に、状態モデル制御5にも以下の2つの終了条件が含まれる。すなわち、システムが設定点から遠い場合(例えば+/-5℃)において、状態モデル6(PID-3 262)へ遷移する第1の終了状態遷移、及び、あらかじめ定められた時間が経過後、状態モデル4(PID-1 258)へ遷移する第2の終了状態遷移が含まれる。
【0060】
図5A乃至5Cは、特定の制御プログラムの異なる状態モデルの設定例を示している。 異なる状態モデルに他の設定を使用できることは、容易に理解されるべきである。加えて、状態制御プログラムは、2つ以上の状態モデルによって定義されてもよく、本明細書で提供される例に限定されるべきではない。加えて、コントローラ106は、ヒータ102の動作を制御するための複数の状態制御プログラムを含むように構成され得る。従って、
異なるタイプの負荷、ヒータ、及び性能基準に適応する異なる状態モデル制御プログラムが作成され得る。
【0061】
一形態では、コンピューティングデバイス136を介して、ユーザは、選択されたヒータ動作状態として、格納された状態制御モデル及び状態制御プログラムから制御動作を選択する。状態選択モジュール210は、性能フィードバックモジュール202からの情報及び選択されたヒータ状態動作で提供される状態モデルに定義された設定に基づいて、リポジトリ214に格納された、選択されたヒータ動作状態を実行するように構成される。動作中、状態選択モジュール210は、実行される状態モデルの条件を満たすように、各加熱ゾーン114の所望の電力レベルを決定し、電力レベルを電力制御モジュール206に出力する。センサ130及び132からのフィードバック情報を用いつつ、状態選択モジュール210は、ヒータ102への電力を調整することができる。
【0062】
従って、状態モデル制御モジュール208及び状態選択モジュール210は、特定のヒータの制御プログラム(例えば指紋)を開発するために、ユーザが所与の状態モデル制御の制御スキームを動的に変更できるようにする。例えば、ある状態から別の状態に遷移する場合、静的な電力レベルである積分は、ユーザが設定値に設定するか、あるいは温度などの変数で条件付けすることができる。そのため、状態ベースのモデル制御は、各ヒータごとに調整でき、全てのヒータに固定された制御スキームではない。
【0063】
システム保護モジュール212は、ヒータ102及び/又は制御システム104を損傷する可能性のある異常動作について、熱システム100をモニターするように構成される。一形態では、システム保護モジュール212は、以下の保護プロトコルの少なくとも1つを実行する。すなわち、ゾーン間モニター;ゾーン-基準のモニター;変化レートゲージ、及び/又はエネルギー制限制御である。
【0064】
ゾーン間モニター及びゾーン-基準のモニターは、熱システム100がヒータ102に沿って所望の平衡を維持しているかどうかを評価し、ヒータ102への損傷、例えばセラミック破損、を最小化又は防止するためのコヒーレンス制御の例である。例えば、ゾーン間モニターの場合、保護モジュール212は、性能フィードバックモジュール202からの情報に基づいて、加熱ゾーン114の温度を決定し、隣接するゾーン間の温度の差が温度変動閾値(例えば10℃の差)を超えるかどうかを決定する。その場合、保護モジュール212は、熱システム100への損傷を最小化または防止するための保護対策を実行する。
【0065】
ゾーン-基準のモニターは、ヒータ102の平均温度を基準温度と比較して、その2つの間の温度が温度変動閾値を超えるかどうかを判定する。当該温度変動閾値は、ゾーン間モニターに使用されるものと同じ、あるいは異なる。従って、コヒーレンス制御は、例えば、ヒータ102への電力を調整するか、システムをシャットダウンすることにより、熱システム100が変動閾値を超えるのを防ぐことができる。
【0066】
熱システム100が異常動作し得ることに対する別の指標は、印加されている電力に基づいてヒータ102が加熱している時のレートである。具体的には、一形態では、ヒータ102のヒータ温度及び/又は印加電力に基づいた電気的応答の変化におけるレートを、関連付けられているレート範囲閾値と比較して、ヒータ102が仕様内で応答しているかどうかを判定する。例えば、適用される電力が増加してもヒータ温度が増加しない場合、あるいは適用される電力が同じかわずかに増加する場合にヒータ温度が急激に増加する場合、保護モジュール212はそのような動作が異常であるとしてフラグを立て、保護対策を実行する。同様に、エネルギー制限制御は、ヒータ102に適用できる電力量の制限を設定し、保護モジュール212は、熱システム100がそれらの制限を超え、及び/又はそれに近づく場合に、保護対策を出力する。例えば、エネルギー制限制御を使用して、低抵抗起動時の最大電流、および伝送される最大電力を設定する。最大値は、ユーザが設定することも、例えばヒータ102の仕様に基づいて予め決定することもでき、温度範囲にわたって変化させることもできる。
【0067】
システム保護モジュール212によって実行される保護対策は、以下を含むが、これらに限定されない。すなわち、変動を制御するよう、1つ以上の加熱ゾーン114への電力を減らすように電力制御モジュール206に命令する、ヒータ102への電力を遮断する、深刻な温度変動に関するメッセージをコンピューティングデバイス136に出力する、及び/又はインターロック129を操作することにより電力変換システム108に供給される電源を切る、を含む。
【0068】
コントローラ106は、インターフェースモジュール200、性能フィードバックモジュール202、ヒータ学習モジュール204、電力制御モジュール206、状態モデル制御モジュール208、状態選択モジュール210、及びシステム保護モジュール212の動作を実行するための様々な適切な方法で構成されてもよい。例えば、一形態では、コントローラ106は、学習モードで動作して、ヒータ負荷相関データ及び/又は抵抗-温度マッピングテーブルを形成する。またコントローラ106は、操作モードで動作して、状態制御モデルを変更したり、及び/又は、選択したヒータの動作状態を実行する。一形態では、コントローラ106は、ヒータ102に電力が印加されると、システム100の異常動作をモニターする。
【0069】
図6に参照されるように、そのようなモードを選択するために、コントローラ106は、コンピューティングデバイス136を介して、例えば、メインメニューGUI270を表示するように構成される。この例では、様々な制御オプションがボタン(例えば学習モードボタン272A及び272B並びに操作モードボタン274A及び27B)として提供される。所望のボタンの起動により、コントローラ106は、1つ以上のプログラムを実行して、選択された追加情報タスクを要求するための追加GUIを生成することを含む選択された特定のタスクを実行する。
【0070】
学習モードまたは操作モードでコントローラ106を動作させることに加えて、コントローラ106は、ヒータ性能に関する情報を表示するように動作可能である。例えば、ヒータの性能は、以下を含むが、これらに限定されない。すなわち、様々なゾーンの温度を示すための、ヒータ102の表面に沿った温度プロファイル(例えばボタン276A);ヒータ102に印加される電力量、電流、及び/又は電圧を提供する電力出力グラフ(例えばボタン276B);加熱操作中の経時的なヒータ温度および負荷温度を示すためのヒータ-負荷温度チャート(すなわち、ボタン276C)を含む。コントローラ106が他のヒータ性能情報を出力するように構成され得ることは、容易に理解されるべきである。図6はメインメニューGUIの特定の例を示しているが、本開示の範囲内で他のGUIを使用してもよい。
【0071】
制御システム104は、様々な構造的構成で実施することができる。例えば、一形態では、図7は、コントローラ、インターロック、電力変換システム、およびセンサ回路を収容するためのケース302を含む制御システムインターフェース300を示している。インターフェース300は、コンピューティングデバイスなどの1つ以上の外部デバイスに接続するための1つ以上の通信ポート304も含んでいる。使用される基準センサ130のタイプに基づいて、インターフェース300は、基準センサ130からの入力を受け取るための補助ポート(図示せず)も含み、ヒータ102の加熱素子に接続するための電力ポート(図示せず)を含む。
【0072】
図8および図9に参照されるように、一形態において、電源からの高AC電力から制御システムを保護するために、本開示の制御システムは、電源と電力コンバータとの間に絶縁バリアを含む。より詳細には、制御システム350は、電源118と電力変換システム108の電力コンバータ116との間に配置された分離回路352を含む。図示されていないが、制御システム350は、制御システム104の他の構成要素、例えばヒータコントローラ、インターロック、ヒータセンサ回路等、を含むように構成される。
【0073】
他の構成要素と共に、分離回路352は、出力RMSを制御するためにブリッジデューティサイクルを制御するRMS(二乗平均平方根)制御回路354、及び、直流(DC)変圧器356を含む。分離回路352は、入力ライン電力から電力コンバータを電気的に分離する。出力は、アース/グランド及びL1/L2/L3からはフローティングしている。
【0074】
本開示の説明は本質的に単なる例示であり、従って、本開示の本質から逸脱しない変形は本開示の範囲内にあるものとする。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
【0075】
本明細書で使用される場合、A、B、およびCの少なくとも1つというフレーズは、非排他的論理ORを使用する論理(A OR B OR C)を意味すると解釈されるべきであり、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきではない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
少なくとも1つの加熱素子を含むヒータを制御する制御システムであり、前記制御システムは、
前記ヒータに調整可能な電圧出力を供給するように動作可能な電力コンバータであって、電源からの電圧入力を前記電圧入力以下の電圧出力に変換するように構成される前記電力コンバータと、
前記ヒータの加熱素子の電気的特性を測定するように構成されたセンサ回路であって、前記電気的特性は、電流および電圧の少なくとも一方を含む前記センサ回路と、
前記ヒータの基準の基準温度を測定する基準温度センサと、及び、
前記電力コンバータを操作して前記ヒータへの前記電圧出力を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記電気的特性に基づいて前記加熱素子の一次温度を計算し、前記基準温度と前記一次温度の少なくとも一方に基づいて、前記ヒータに印加される前記電圧出力を決定し、
前記コントローラは、操作モードと学習モードの少なくとも1つで動作し、前記ヒータに前記電圧出力が供給されている時に1つ以上の保護プロトコルを実行するように構成される、制御システム。
[2]
前記コントローラは、前記基準温度と前記一次温度との差が予め設定された閾値よりも大きいことに応じて、前記ヒータへの電力を低減または遮断するように構成される、[1]に記載の制御システム。
[3]
前記基準温度センサは、赤外線カメラ、熱電対、および抵抗温度検出器のうちの1つである、[1]に記載の制御システム。
[4]
前記学習モードにおいて、前記コントローラは、前記ヒータを操作して、前記加熱素子の温度を前記ヒータに配置された負荷の温度に関連付けるヒータ-負荷相関データを生成するように構成される、[1]に記載の制御システム。
[5]
前記学習モードにおいて、前記コントローラは、前記ヒータへの電力を徐々に増加させて、前記ヒータにより生成される熱を増加させ、複数の一次温度を決定し、前記一次温度を前記基準温度センサによって検出されるそれぞれの基準温度と相関させて、ヒータ負荷相関データを生成するように構成される、[4]に記載の制御システム。
[6]
前記コントローラは、前記電力が増加している期間に亘って、前記一次温度および前記基準温度の変化をマッピングするように構成される、[5]に記載の制御システム。
[7]
前記基準温度センサは、前記ヒータ上に配置された負荷および前記ヒータの表面の少なくとも一方の温度を測定するように構成される、[1]に記載の制御システム。
[8]
前記操作モードにおいて、前記コントローラは、ブースト補償を実行して、前記加熱素子が熱を生成して前記基準を所定の設定点温度まで加熱するレートを増加させる、[1]に記載の制御システム。
[9]
前記コントローラは、前記電気的特性に基づいて各加熱素子の一次温度を決定し、隣接ゾーンについて、前記一次温度に基づいて前記隣接ゾーンの一つ以上の加熱素子に供給される電力を調整して、ヒータ全体の温度変動を制御するように構成される、[1]に記載の制御システム。
[10]
前記コントローラは、隣接するゾーンの温度よりも高い温度を有する1つのゾーンに応じて、前記1つのゾーンへの電力を低減するように構成される、[9]に記載の制御システム。
[11]
前記操作モードにおいて、前記コントローラは、前記基準温度及び前記一次温度の少なくとも1つに基づいて、前記ヒータの動作状態として、複数の所定の状態モデル制御の中から、1つの状態モデル制御を選択するように構成される、[1]に記載の制御システム。
[12]
前記複数の所定の状態モデル制御は、パワーアップ制御、ソフトスタート制御、設定レート制御、および定常状態制御のうちの少なくとも1つを含む、[11]に記載の制御システム。
[13]
前記状態モデル制御のそれぞれは、それぞれの状態モデル制御のためのヒータを制御するために、1つ以上の操作設定を定義する、[11]に記載の制御システム。
[14]
前記1つ以上の操作設定は、前記操作状態を終了して他の1つの状態モデル制御へ遷移する条件を定義する遷移条件を含む、[13]に記載の制御システム。
[15]
ヒータと、
[1]に記載の制御システムと、
を備える熱システム。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9