(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 261/04 20060101AFI20230313BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
C07D261/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020515529
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017459
(87)【国際公開番号】W WO2019208643
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2018086679
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】永田 俊浩
(72)【発明者】
【氏名】志鎌 大介
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512202(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652245(CN,A)
【文献】国際公開第2000/058290(WO,A1)
【文献】新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III,1978年,1325-1328
【文献】Organic Letters,2013年,15,3214-3217
【文献】European Journal of Organic Chemistry,2002年,12,1919-1924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 261/04
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物を、酸触媒または酸塩基触媒の存在下で、ヒドロキシルアミンと反応させることを含む方法であって、
前記酸触媒が、
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上の酸であり、
前記酸塩基触媒の酸が、
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上の酸であり、
反応温度の範囲は20℃~60℃である、方法:
【化1】
(式(3)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;置換されていてもよい(C3-C6)シクロアルキル;置換されていてもよい(C2-C6)アルケニル;置換されていてもよい(C2-C6)アルキニル;置換されていてもよい(C1-C6)アルコキシ;又は置換されていてもよいフェニルであり;あるいはR
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、4~12員の炭素環を形成し、ここで形成された環は置換されていてもよい。式(1)中、R
1及びR
2は、上記の定義の通りである。)。
【請求項2】
式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、水の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%以上の水の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~1000mol%の水の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸触媒が、トリフルオロ酢酸である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸塩基触媒の酸が、トリフルオロ酢酸である、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリン、モルホリン及びピロリジンからなる群より選ばれる1個以上の塩基である、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリンである、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ヒドロキシルアミンがフリーのヒドロキシルアミン水溶液又はヒドロキシルアミン塩である、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ヒドロキシルアミンが45%~55%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンである、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ヒドロキシルアミンがヒドロキシルアミン塩であり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ヒドロキシルアミンが塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンであり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム又はアンモニアである、請求項
11又は請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
反応が、アセトニトリル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びジクロロメタンから選ばれる1個以上の溶媒、及び水溶媒の存在下で行われる、請求項1から請求項
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
反応が、水とジクロロベンゼンの組み合わせの溶媒の存在下で行われる、請求項1から請求項
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(1)の化合物がプレナールであり、式(3)の化合物が5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールである、請求項1から請求項
15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(3):
【0002】
【0003】
(式中、R1及びR2は、後述の通りである。)の化合物、すなわち5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法に関する。本明細書中、式(3)の化合物は5,5-ジ置換-2-イソオキサゾリンとも言う。
【背景技術】
【0004】
式(3)の5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、医薬及び農薬等の製造中間体として有用である。WO2002/062770(特許文献1)は有用な除草剤を開示する。その中でも、ピロキサスルホン(Pyroxasulfone)は優れた除草活性を有する除草剤としてよく知られている。更に、特表2013-512202(特許文献2)は、式(3)の5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールが特許文献1に記載の除草剤の重要中間体であることを開示する。
【0005】
特表2013-512202(特許文献2)は、5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法を開示する。
【0006】
特許文献2のスキーム2:
【0007】
【0008】
上図に示すように、特許文献2に記載の方法では、酸触媒又は酸塩基触媒の存在下で式(II)のオキシムを式(III)のカルボニル化合物(β-ジ置換-α,β-不飽和アルデヒド)と反応させて、式(I)の5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを得る。
【0009】
Synlett 2008, No. 6, 827-830(非特許文献1)及びChem. Eur. J. 2010, Vol. 16, 11325-11339(非特許文献2)は、ケトンオキシムを用いて4,5-ジヒドロイソオキサゾール誘導体を製造する方法を開示する。
【0010】
上記式(3)の化合物の工業的な重要性から、従来技術よりもさらに工業的に好ましい式(3)の化合物の製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2002/062770号
【文献】特表2013-512202号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Synlett 2008, No. 6, 827-830
【文献】Chem. Eur. J. 2010, Vol. 16, 11325-11339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記式(3)の化合物、すなわち目的の5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの工業的に好ましい製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡単な操作により、且つ効率的に、目的化合物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような状況に鑑み、本発明者が式(3)の化合物の製造方法について鋭意研究した。その結果、意外にも、式(3)の化合物の以下の製造方法を提供することにより、前記課題が解決可能であることが見出された。本発明者はこの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、一つの態様では、本発明は以下の通りである。
【0016】
〔I-1〕 式(3)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物を、触媒の存在下で、ヒドロキシルアミンと反応させることを含む方法:
【0017】
【0018】
(式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;置換されていてもよい(C3-C6)シクロアルキル;置換されていてもよい(C2-C6)アルケニル;置換されていてもよい(C2-C6)アルキニル;置換されていてもよい(C1-C6)アルコキシ;又は置換されていてもよいフェニルであり;あるいはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、4~12員の炭素環を形成し、ここで形成された環は置換されていてもよい。式(1)中、R1及びR2は、上記の定義の通りである。)。
【0019】
〔I-2〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0020】
〔I-3〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して50mol%以上の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0021】
〔I-4〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%以上の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0022】
〔I-5〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して150mol%以上の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0023】
〔I-6〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して50mol%~6000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0024】
〔I-7〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して50mol%~3000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0025】
〔I-8〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して50mol%~1000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0026】
〔I-9〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~6000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0027】
〔I-10〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~3000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0028】
〔I-11〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~1500mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0029】
〔I-12〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~1000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0030】
〔I-13〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~500mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0031】
〔I-14〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して150mol%~6000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0032】
〔I-15〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して150mol%~3000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0033】
〔I-16〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して150mol%~1000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0034】
〔I-17〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して150mol%~400mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0035】
〔I-18〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して180mol%~6000mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0036】
〔I-19〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して180mol%~350mol%の水の存在下で行われる、〔I-1〕に記載の方法。
【0037】
〔I-20〕 触媒が、酸触媒である、〔I-1〕から〔I-19〕のいずれか1項に記載の方法。
【0038】
〔I-21〕 酸触媒が、鉱酸類、カルボン酸類、スルホン酸類及びリン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0039】
〔I-22〕 酸触媒が、鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0040】
〔I-23〕 酸触媒が、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0041】
〔I-24〕 酸触媒が、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0042】
〔I-25〕 酸触媒が、硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0043】
〔I-26〕 酸触媒が、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1~3個、(好ましくは1又2個、より好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0044】
〔I-27〕 酸触媒が、トリフルオロ酢酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1又2個(好ましくは1個)の酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0045】
〔I-28〕 酸触媒が、トリフルオロ酢酸である、〔I-20〕に記載の方法。
【0046】
〔I-29〕 酸触媒の使用量が、式(1)の化合物1モルに対して、0.01~0.30モルである、〔I-20〕から〔I-28〕のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
〔I-30〕 ヒドロキシルアミンの量が、式(1)の化合物1モルに対して0.9~1.1モルである、〔I-20〕から〔I-29〕のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
〔I-31〕 ヒドロキシルアミンの量が、式(1)の化合物1モルに対して1.0~1.1モルである、〔I-20〕から〔I-29〕のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
〔I-32〕 触媒が、酸塩基触媒である、〔I-1〕から〔I-19〕のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
〔I-33〕 酸塩基触媒の酸が、鉱酸類、カルボン酸類、スルホン酸類及びリン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0051】
〔I-34〕 酸塩基触媒の酸が、鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0052】
〔I-35〕 酸塩基触媒の酸が、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0053】
〔I-36〕 酸塩基触媒の酸が、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0054】
〔I-37〕 酸塩基触媒の酸が、硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0055】
〔I-38〕 酸塩基触媒の酸が、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1~3個、(好ましくは1又2個、より好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0056】
〔I-39〕 酸塩基触媒の酸が、トリフルオロ酢酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1又2個(好ましくは1個)の酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0057】
〔I-40〕 酸塩基触媒の酸が、トリフルオロ酢酸である、〔I-32〕に記載の方法。
【0058】
〔I-41〕 酸塩基触媒の酸の使用量が、式(1)の化合物1モルに対して、0.005~0.10モルである、〔I-32〕から〔I-40〕のいずれか1項に記載の方法。
【0059】
〔I-42〕 酸塩基触媒の塩基が、1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の第2級アミンである、〔I-32〕から〔I-41〕のいずれか1項に記載の方法。
【0060】
〔I-43〕 酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリン、モルホリン及びピロリジンからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の塩基である、〔I-32〕から〔I-41〕のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
〔I-44〕 酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリンである、〔I-32〕から〔I-41〕のいずれか1項に記載の方法。
【0062】
〔I-45〕 酸塩基触媒の塩基の使用量が、式(1)の化合物1モルに対して、0.005~0.10モルである、〔I-32〕から〔I-44〕のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
〔I-46〕 ヒドロキシルアミンの量が、式(1)の化合物1モルに対して0.90モル以上1.00モル未満である、〔I-32〕から〔I-45〕のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
〔I-47〕 ヒドロキシルアミンの量が、式(1)の化合物1モルに対して0.90モル以上0.99モル以下である、〔I-32〕から〔I-45〕のいずれか1項に記載の方法。
【0065】
〔I-48〕 ヒドロキシルアミンの量が、式(1)の化合物1モルに対して0.90モル以上~0.98モル以下である、〔I-32〕から〔I-45〕のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
〔I-49〕 ヒドロキシルアミンがフリーのヒドロキシルアミン水溶液又はヒドロキシルアミン塩である、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0067】
〔I-50〕 ヒドロキシルアミンがフリーのヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンである、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0068】
〔I-51〕 ヒドロキシルアミンが45%~55%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンである、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0069】
〔I-52〕 ヒドロキシルアミンが45%~50%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンである、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0070】
〔I-53〕 ヒドロキシルアミンがヒドロキシルアミン塩であり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0071】
〔I-54〕 ヒドロキシルアミンが塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンであり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-48〕のいずれか1項に記載の方法。
【0072】
〔I-55〕 中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム又はアンモニアである、〔I-53〕又は〔I-54〕に記載の方法。
【0073】
〔I-56〕 中和剤が水酸化ナトリウムである、〔I-53〕又は〔I-54〕に記載の方法。
【0074】
〔I-57〕 反応が、アセトニトリル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びジクロロメタンから選ばれる1個以上(好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個)の溶媒、及び水溶媒の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-56〕のいずれか1項に記載の方法。
【0075】
〔I-58〕 反応が、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びジクロロメタンから選ばれる1個以上(好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個)の溶媒、及び水溶媒の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-56〕のいずれか1項に記載の方法。
【0076】
〔I-59〕 反応が、アセトニトリル及びジクロロメタンから選ばれる1個以上(好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個)の溶媒、及び水溶媒の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-56〕のいずれか1項に記載の方法。
【0077】
〔I-60〕 反応が、水とジクロロベンゼンの組み合わせの溶媒(すなわち、水とジクロロベンゼンの混合溶媒)の存在下で行われる、〔I-1〕から〔I-56〕のいずれか1項に記載の方法。
【0078】
〔I-61〕 反応が0℃~80℃で行われる、〔I-1〕から〔I-60〕のいずれか1項に記載の方法。
【0079】
〔I-62〕 反応が20℃~80℃で行われる、〔I-1〕から〔I-60〕のいずれか1項に記載の方法。
【0080】
〔I-63〕 反応が40℃~60℃で行われる、〔I-1〕から〔I-60〕のいずれか1項に記載の方法。
【0081】
〔I-64〕 反応が20℃~40℃で行われる、〔I-1〕から〔I-60〕のいずれか1項に記載の方法。
【0082】
〔I-65〕 R1及びR2が、それぞれ独立して、(C1-C6)アルキル;(C1-C6)ハロアルキル;(C3-C6)シクロアルキル;(C2-C6)アルケニル;(C2-C6)アルキニル;(C1-C6)アルコキシ;又は、ハロゲン原子、(C1-C4)アルキル及び(C1-C4)ハロアルキルから独立して選択される1~5個の置換基により置換されていてもよいフェニルであり;あるいは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、4~6員の炭素環を形成する、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0083】
〔I-66〕 R1及びR2が、それぞれ独立して、(C1-C4)アルキル;(C1-C4)ハロアルキル;(C3-C6)シクロアルキル;(C2-C4)アルケニル;(C2-C4)アルキニル;(C1-C4)アルコキシ;又はハロゲン原子、(C1-C4)アルキル及び(C1-C4)ハロアルキルから独立して選択される1~5個の置換基により置換されていてもよいフェニルであり;あるいは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、4~6員の炭素環を形成する、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0084】
〔I-67〕 R1及びR2が、それぞれ独立して、(C1-C4)アルキル又は(C1-C4)ハロアルキルである、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0085】
〔I-68〕 R1及びR2が、それぞれ独立して、(C1-C4)アルキルである、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0086】
〔I-69〕 R1及びR2がメチルである、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0087】
〔I-70〕 式(1)の化合物がプレナールであり、式(3)の化合物が5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールである、〔I-1〕から〔I-64〕のいずれか1項に記載の方法。
【0088】
別の態様では、本発明は以下の通りである。
【0089】
〔II-1〕 式(3)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物を、触媒の存在下で、ヒドロキシルアミンと反応させることを含む方法:
【0090】
【0091】
(式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;置換されていてもよい(C3-C6)シクロアルキル;置換されていてもよい(C2-C6)アルケニル;置換されていてもよい(C2-C6)アルキニル;置換されていてもよい(C1-C6)アルコキシ;又は置換されていてもよいフェニルであり;あるいはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、4~12員の炭素環を形成し、ここで形成された環は置換されていてもよい。式(1)中、R1及びR2は、上記の定義の通りである。)。
【0092】
〔II-2〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、水の存在下で行われる、〔II-1〕に記載の方法。
【0093】
〔II-3〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%以上の水の存在下で行われる、〔II-1〕に記載の方法。
【0094】
〔II-4〕 式(1)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応が、式(1)の化合物1モルに対して100mol%~1000mol%の水の存在下で行われる、〔II-1〕に記載の方法。
【0095】
〔II-5〕 触媒が、酸触媒である、〔II-1〕から〔II-4〕のいずれか1項に記載の方法。
【0096】
〔II-6〕 酸触媒が、鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔II-5〕に記載の方法。
【0097】
〔II-7〕 酸触媒が、硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔II-5〕に記載の方法。
【0098】
〔II-8〕 酸触媒が、トリフルオロ酢酸である、〔II-5〕に記載の方法。
【0099】
〔II-9〕 触媒が、酸塩基触媒である、〔II-1〕から〔II-4〕のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
〔II-10〕 酸塩基触媒の酸が、鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔II-9〕に記載の方法。
【0101】
〔II-11〕 酸塩基触媒の酸が、硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸である、〔II-9〕に記載の方法。
【0102】
〔II-12〕 酸塩基触媒の酸が、トリフルオロ酢酸である、〔II-9〕に記載の方法。
【0103】
〔II-13〕 酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリン、モルホリン及びピロリジンからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の塩基である、〔II-9〕から〔II-12〕のいずれか1項に記載の方法。
【0104】
〔II-14〕 酸塩基触媒の塩基が、N-メチルアニリンである、〔II-9〕から〔II-12〕のいずれか1項に記載の方法。
【0105】
〔II-15〕 ヒドロキシルアミンがフリーのヒドロキシルアミン水溶液又はヒドロキシルアミン塩である、〔II-1〕から〔II-14〕のいずれか1項に記載の方法。
【0106】
〔II-16〕 ヒドロキシルアミンが45%~55%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンである、〔II-1〕から〔II-14〕のいずれか1項に記載の方法。
【0107】
〔II-17〕 ヒドロキシルアミンがヒドロキシルアミン塩であり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、〔II-1〕から〔II-14〕のいずれか1項に記載の方法。
【0108】
〔II-18〕 ヒドロキシルアミンが塩酸ヒドロキシルアミン又は硫酸ヒドロキシルアミンであり、反応が、さらに中和剤の存在下で行われる、〔II-1〕から〔II-14〕のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
〔II-19〕 中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム又はアンモニアである、〔II-17〕又は〔II-18〕に記載の方法。
【0110】
〔II-20〕 反応が、アセトニトリル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びジクロロメタンから選ばれる1個以上(好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個)の溶媒、及び水溶媒の存在下で行われる、〔II-1〕から〔II-19〕のいずれか1項に記載の方法。
【0111】
〔II-21〕 反応が、水とジクロロベンゼンの組み合わせの溶媒(すなわち、水とジクロロベンゼンの混合溶媒)の存在下で行われる、〔II-1〕から〔II-19〕のいずれか1項に記載の方法。
【0112】
〔II-22〕 式(1)の化合物がプレナールであり、式(3)の化合物が5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールである、〔II-1〕から〔II-21〕のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0113】
本発明により式(3)の化合物の新規な製造方法が提供される。本発明によれば、より工業的に好ましい、式(3)の化合物の製造方法が提供される。また、本発明によれば、簡単な操作により、且つ効率的に、式(3)の化合物を製造できる。
【0114】
特表2013-512202(特許文献2)並びにSynlett 2008, No. 6, 827-830(非特許文献1)及びChem. Eur. J. 2010, Vol. 16, 11325-11339(非特許文献2)に記載の方法では、アセトン又はジエチルケトンのようなケトンを副生成物として生成するケトンオキシムを原料として用いていた。しかしながら、本発明によれば、ケトンオキシムは不要であることが見出された。従って、本発明の方法では、副生成物及び/又は廃棄物としてのケトンが生成しない。言い換えれば、目的化合物のオキシイミノ部分(-O-N=)を導入するために必要な最小限の構造を有する原料は、ヒドロキシルアミン(HO-NH2)であることが判明した。その結果、本発明者は、ケトンオキシムを用いないで、目的化合物を製造することに成功したのである。本発明のヒドロキシルアミンを用いる式(3)の化合物の製造方法は、副生成物及び/又は廃棄物の生成を抑制し、原子効率を改善する。従って、本発明の製造方法は、工業的に好ましく、経済的であり、そして環境にも優しい。
【0115】
また本発明の一つの実施形態では、式(3)の化合物の製造は水の存在下で行われる。当該実施形態においては、爆発性が高く、危険な無水ヒドロキシルアミンではなく、安全性の高い50%ヒドロキシルアミン水溶液を用いることができる。
特表2013-512202(特許文献2)に記載の方法では、式(3)の化合物の製造は非水条件で行われる。当該方法の反応中間体であるオキシムは、水の存在下では加水分解してアルデヒドとヒドロキシルアミンに戻ると予想される。更に、水の存在下では、触媒としての酸が希釈されて不活性化されるから、反応は進行し難いと予想される。
実際に、後述の参考例1に示す通り、特許文献2の方法において水が反応系内に存在することは、収率の著しい低下を招く。従って、当業者は、式(3)の化合物の製造において水が存在することは好ましくないと理解する。
非水条件で行われる特許文献2に記載の方法において、ケトンオキシムに代えてヒドロキシルアミンを用いるとすれば、危険性の高い無水ヒドロキシルアミンを用いざるを得ないと考えられる。
しかしながら、本発明者らは、あえてヒドロキシルアミンを水の存在下で使用し反応を行った結果、驚くべきことに、良好な収率で反応が進行することを見出した。すなわち、本発明者らは、特許文献2の示唆にもかかわらず、ヒドロキシルアミンを水の存在下で使用することで、安全かつ効率的に式(3)の化合物が得られることを見出した。
【0116】
従って、本発明によれば、簡単な操作により、且つ効率的に、目的化合物を製造できる。更に、本発明により、副生成物及び/又は廃棄物の生成を抑制でき、そして原子効率を改善できる。結果として、本発明によりピロキサスルホン等の除草剤の製造中間体を簡便且つ安価に工業的規模で製造できる方法が提供された。従って、本発明の方法は、工業的に好ましく、経済的であり、そして環境にも優しく、高い工業的な利用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0118】
本明細書において用いられる用語及び記号について以下に説明する。
【0119】
ハロゲン原子の例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。
【0120】
(Ca-Cb)は、炭素原子数がa~b個であることを意味する。例えば、「(C1-C4)アルキル」の「(C1-C4)」は、アルキルの炭素原子数が1~4であることを意味する
【0121】
本明細書中、「アルキル」のような一般的用語は、ブチル及びtert-ブチルのような直鎖及び分枝鎖の両方を含むと理解される。しかしながら、「ブチル」のような具体的な用語が使用された場合は、これは「ノルマルブチル」、すなわち「n-ブチル」に対して特異的である。言い換えれば、具体的な用語「ブチル」は直鎖の「ノルマルブチル」を意味する。そして「tert-ブチル」のような分枝鎖異性体は、意図した場合に具体的に言及される。
【0122】
接頭語「n-」、「s-」及び「sec-」、「i-」、「t-」及び「tert-」、[neo-]、「c-」及び「cyc-」、「o-」、「m-」、並びに「p-」は、それらの以下の通常の意味を有する:ノルマル、セカンダリー(「s-」及び「sec-」)、イソ、ターシャリー(「t-」及び「tert-」)、ネオ、シクロ(「c-」及び「cyc-」)、オルソ、メタ、並びにパラ。
【0123】
本明細書中、以下の略語が使用されることがある:
「Me」はメチルを意味する。
「Et」はエチルを意味する。
「Pr」、「n-Pr」及び「Pr-n」はプロピル(すなわち、ノルマルプロピル)を意味する。
「i-Pr」及び「Pr-i」はイソプロピルを意味する。
「Bu」、「n-Bu」及び「Bu-n」はブチル(すなわち、ノルマルブチル)を意味する。
「s-Bu」及び「Bu-s」はsec-ブチルを意味する。
「i-Bu」及び「Bu-i」はイソブチルを意味する。
「t-Bu」及び「Bu-t」はtert-ブチルを意味する。
「Pen」、「n-Pen」及び「Pen-n」はペンチル(すなわち、ノルマルペンチル)を意味する。
「Hex」、「n-Hex」及び「Hex-n」はヘキシル(すなわち、ノルマルヘキシル)を意味する。
「Dec」、「n-Dec」及び「Dec-n」はデシル(すなわち、ノルマルデシル)を意味する。
「c-Pr」及び「Pr-c」はシクロプロピルを意味する。
「c-Bu」及び「Bu-c」はシクロブチルを意味する。
「c-Pen」及び「Pen-c」はシクロペンチルを意味する。
「c-Hex」及び「Hex-c」はシクロヘキシルを意味する。
「Ph」はフェニルを意味する。
「Bn」はベンジルを意味する。
【0124】
「Ms」はメチルスルホニル(CH3SO2-)を意味する。
「Ts」はトシル(4-CH3-C6H4SO2-)を意味する。
「Tf」はトリフルオロメチルスルホニル(CF3SO2-)を意味する。
「Ac」は、アセチル(CH3CO-)を意味する。
【0125】
(C1-C6)アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C6)アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル,ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0126】
(C1-C4)アルキルは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。(C1-C4)アルキルの例は、上記の(C1-C6)アルキルの例のうちの適切な例である。
【0127】
(C1-C6)ハロアルキルとは、同一又は異なる1~13個のハロゲン原子により置換されている、炭素原子数が1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する(ここで、ハロゲン原子は上記の定義と同じ意味を有する。)。(C1-C6)ハロアルキルの例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3-フルオロプロピル、3-クロロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、ヘプタフルオロプロピル、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル、4-フルオロブチル、4-クロロブチル、4-ブロモブチル、2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシル等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
(C1-C4)ハロアルキルは、同一又は異なる1~9個のハロゲン原子により置換されている、炭素原子数が1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する(ここで、ハロゲン原子は上記の定義と同じ意味を有する。)。(C1-C4)ハロアルキルの例は、上記の(C1-C6)ハロアルキルの例のうちの適切な例を含むが、これらに限定されない。
【0129】
(C3-C6)シクロアルキルは、3~6個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。(C3-C6)シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0130】
(C2-C6)アルケニルは、2~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニルを意味する。(C2-C6)アルケニルの例は、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル等を含むが、これらに限定されない。
【0131】
(C2-C4)アルケニルは、2~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニルを意味する。C2~C6アルケニルの例は、上記の(C2-C6)アルケニルの例のうちの適切な例を含むが、これらに限定されない。
【0132】
(C2-C6)アルキニルは、2~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニルを意味する。(C2~C6)アルキニルの例は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、1-ヘキシニル等を含むが、これらに限定されない。
【0133】
(C2-C4)アルキニルは、2~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニルを意味する。(C2-C4)アルキニルの例は、上記の(C2-C6)アルキニルの例のうちの適切な例を含むが、これらに限定されない。
【0134】
(C1-C6)アルコキシは、(C1-C6)アルキル-O-を意味する(ここで、(C1-C6)アルキル部分は上記の定義と同じ意味を有する。)。(C1-C6)アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0135】
(C1-4)アルコキシは、(C1-C4)アルキル-O-を意味する(ここで、(C1-C4)アルキル部分は上記の定義と同じ意味を有する。)。(C1-C4)アルコキシの例は、上記の(C1-C6)アルコキシの例のうちの適切な例を含むが、これらに限定されない。
【0136】
環式の炭化水素基は、環を構成する原子が全て炭素原子である芳香族又は非芳香族の、単環式又は多環式の環式基を意味する。
【0137】
一つの態様では、環式の炭化水素基の例は、芳香族又は非芳香族の、単環式、二環式又は三環式の3~14員(好ましくは5~14員、より好ましくは5~10員)の環式の炭化水素基を含むが、これらに限定されない。別の態様では、環式の炭化水素基の例は、芳香族又は非芳香族の、単環式又は二環式(好ましくは単環式)の4~8員(好ましくは5~6員)の環式の炭化水素基を含むが、これらに限定されない。
【0138】
環式の炭化水素基の例は、シクロアルキル、アリール等を含むが、これらに限定されない。
【0139】
アリールは、上記で定義した通りの環式の炭化水素基のうち、芳香族の環式基である。
【0140】
上記で定義又は例示した通りの環式の炭化水素基は、可能であれば、非縮合環式(例えば、単環式又はスピロ環式)及び縮合環式の環式基を包含してもよい。
【0141】
上記で定義又は例示した通りの環式の炭化水素基は、可能であれば、不飽和、部分飽和又は飽和のいずれでもよい。
【0142】
上記で定義又は例示した通りの環式の炭化水素基は炭素環基とも言う。
【0143】
炭素環は、上記で定義又は例示した通りの環式の炭化水素基に相当する環である。
【0144】
本明細書中、用語「置換されていてもよい」における「置換基」については、それらが化学的に許容され、本発明の効果を示す限りは、特に制限はない。
【0145】
本明細書中、「置換されていてもよい」との用語に関する「置換基」の例は、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~4個の置換基)を含むが、これらに限定されない。
【0146】
置換基群(a)は、ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシ基;アミノ基;(C1-C6)アルキル;(C1-C6)ハロアルキル;(C3-C6)シクロアルキル;(C2-C6)アルケニル;(C2-C6)アルキニル;(C1-C6)アルコキシ;フェニル;フェノキシ等を含む群である。
【0147】
加えて、置換基群(a)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~4個の置換基)は、それぞれ独立して、置換基群(b)から独立して選択される1以上の置換基(好ましくは1~4個の置換基)を有していてもよい。
【0148】
ここで、置換基群(b)は置換基群(a)と同じである。
【0149】
本明細書中、異性体を有する化合物は、全ての異性体と任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。例えば、キシレンは、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン及び任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。例えば、ジクロロベンゼンは、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン及び任意の割合のそれらの任意の混合物を含む。
【0150】
例えば、ある化合物に幾何異性体(cis-trans異性体)が存在する場合は、
(E)-異性体(anti-異性体)、(Z)-異性体(syn-異性体)及びそれらの混合物が本発明の範囲に含まれる。
【0151】
本発明による方法は、以下のスキーム(式中、R1及びR2は、上記の〔1〕に記載の通りである。)を含む。
【0152】
【0153】
本発明による方法は、式(1)の化合物(β-ジ置換-α,β-不飽和アルデヒド)とヒドロキシルアミン(NH2OH)とを、触媒の存在下で、反応させて、式(3)の化合物(5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾール)を製造する工程を含む。
【0154】
本発明による方法は、式(1)の化合物を用いる。式(1)の化合物は公知の化合物であるか、又は公知の化合物から公知の方法に準じて製造することができる。
【0155】
(原料;式(1)の化合物)
式(1)の化合物の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;3-メチル-2-ブテン-1-アール(3-methyl-2-butene-1-al)(3-メチル-2-ブテン-1-アールは3-メチル-2-ブテナール、3-メチルブタ-2-エナール(3-methylbut-2-enal)又はプレナール(prenal)とも言う)、3-メチル-2-ペンテン-1-アール、3-エチル-2-ペンテン-1-アール、3,4-ジメチル-2-ペンテン-1-アール、3,4,4-トリメチル-2-ペンテン-1-アール、4-クロロ-3-メチル-2-ブテン-1-アール、4,4,4-トリフルオロ-3-メチル-2-ブテン-1-アール、3-シクロプロピル-2-ブテン-1-アール、2-シクロブチリデンアセトアルデヒド、2-シクロペンチリデンアセトアルデヒド、2-シクロヘキシリデンアセトアルデヒド、3-メチル-2-ヘプテン-1-アール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-アール、3,7-ジメチル-2-オクタン-1-アール、2-(9H-フルオレン-9-イリデン)アセトアルデヒド、3,3-ジフェニル-2-プロペン-1-アール、3,3-ビス(4-フェニル)-2-プロペン-1-アール、3,3-ビス(4-メトキシフェニル)-2-プロペン-1-アール、3,3-ビス(4-メトキシフェニル)-2-プロペン-1-アール、3-フェニル-2-ブテン-1-アール、3-(4-メチルフェニル)-2-ブテン-1-アール、3-(4-メトキシフェニル)-2-ブテン-1-アール、3-(4-クロロフェニル)-2-ブテン-1-アール等。生成物の有用性等の観点から、式(1)の化合物の好ましい具体的な例は、3-メチル-2-ブテン-1-アールである。
【0156】
(生成物;式(3)の化合物)
本発明の生成物は、原料として用いた式(1)の化合物に相当する5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールである。式(3)の化合物の具体的な例は、以下を含むが、これらに限定されない;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-エチル-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5,5-ジエチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-イソプロピル-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-(tert-ブチル)-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-(クロロメチル)-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-メチル-5-(トリフルオロメチル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-シクロプロピル-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-オキサ-6-アザスピロ[3.4]オクタ-6-エン、1-メチル-2-メチル[4.4]ノナ-2-エン、1-メチル-2-メチル[4.5]デカ-2-エン、5-ブチル-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-メチル-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-メチル-5-(4-メチルペンチル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、4’H-スピロ[フルオレン-9,5’-イソオキサゾール]、5,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5,5-ビス(4-メチルフェニル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5,5-ビス(4-メトキシフェニル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-メチル-5-フェニル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-エチル-5-フェニル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-(4-メチルフェニル)-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-(4-メトキシフェニル)-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール、5-(4-クロロフェニル)-5-メチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール等。生成物の有用性等の観点から、式(3)の化合物の好ましい具体的な例は、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールである。
【0157】
(ヒドロキシルアミン)
本発明で使用されるヒドロキシルアミンは、反応が進行し且つ安全が確保される限りは、特に限定されない。ヒドロキシルアミンの例は、ヒドロキシルアミン(フリー)及びその塩を含むが、これらに限定されない。ヒドロキシルアミン(フリー)の例は、50%ヒドロキシルアミン水溶液、60%ヒドロキシルアミン水溶液、70%ヒドロキシルアミン水溶液、80%ヒドロキシルアミン水溶液、90%ヒドロキシルアミン水溶液等を含むが、これらに限定されない。一般的に「50%ヒドロキシルアミン水溶液(50% hydroxylamine aqueous solution)」は「ヒドロキシルアミン(50%水溶液)(Hydroxylamine (50% solution in water))」とも言う。ヒドロキシルアミン塩の例は、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミン(例えば、50%水溶液)、炭酸ヒドロキシルアミン、リン酸ヒドロキシルアミン、酢酸ヒドロキシルアミン、シュウ酸ヒドロキシルアミン等を含むが、これらに限定されない。
【0158】
本発明で使用されるヒドロキシルアミン(例えば、ヒドロキシルアミン(フリー)及びその塩)は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。本発明で使用されるヒドロキシルアミンの形態は、反応が進行し且つ安全が確保される限りは、いずれの形態でもよい。反応が進行し且つ安全が確保される範囲で、その形態の例は、固体及び液体、並びに任意の濃度の水溶液及び水以外の溶媒(例えば、有機溶媒)の溶液等を含む。
【0159】
例えば、ヒドロキシルアミン(フリー)を用いるときは、ヒドロキシルアミンの形態は、反応が進行し且つ安全が確保される限りは、いずれの形態でもよい。安全性と経済効率を考慮して、ヒドロキシルアミン(フリー)の形態の好ましい例は、10%以上70%未満の濃度の水溶液、好ましくは45%以上55%以下の濃度の水溶液を含む。
【0160】
加えて、安全性、取り扱いの容易さ、経済効率等の観点から、ヒドロキシルアミンの好ましい例は、フリーのヒドロキシルアミン水溶液及びヒドロキシルアミン塩、より好ましくはフリーのヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、更に好ましくは45%~55%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、更に好ましくは45%~50%ヒドロキシルアミン水溶液、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミンを含む。
【0161】
収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、本発明で使用されるヒドロキシルアミン(例えば、ヒドロキシルアミン(フリー)及びその塩)の使用量は、次のとおりである。
一つの態様では、式(1)の化合物1モルに対して、ヒドロキシルアミン(NH2OH)として、0.9~2.0モル、好ましくは0.9~1.5モル、より好ましくは0.9~1.2モル、更に好ましくは、0.9~1.1モルの範囲を例示できる。
別の態様では、式(1)の化合物1モルに対して、ヒドロキシルアミン(NH2OH)として、1.0~2.0モル、好ましくは1.0~1.5モル、より好ましくは1.0~1.2モル、更に好ましくは、1.0~1.1モルの範囲もまた例示できる。
更に別の態様では、式(1)の化合物1モルに対して、ヒドロキシルアミン(NH2OH)として、0.90モル以上1.00モル未満、好ましくは0.90モル以上0.99モル以下、より好ましくは0.90モル以上0.98モル以下、更に好ましくは0.93モル以上0.97モル以下の範囲もまた例示できる。
【0162】
ヒドロキシルアミン塩(例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)を用いるときは、本発明の反応は好ましくは中和剤を用いて行われる。中和剤は、ヒドロキシルアミン塩を中和してフリーのヒドロキシルアミンを遊離するための塩基である。中和剤の例は、アルカリ金属水酸化物類(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物類(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等)、アルカリ金属炭酸塩類(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ土類金属炭酸塩類(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等)、アルカリ金属炭酸水素塩類(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属カルボン酸塩類(例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン等)、アンモニア(例えば、25~30%アンモニア水、アンモニアガス、好ましくは25~30%アンモニア水)を含むが、これらに限定されない。中和剤の好ましい例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等、アンモニア、より好ましくは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、更に好ましくは水酸化ナトリウムを含む。水酸化ナトリウムの例は、水酸化ナトリウムビーズ、48%水酸化ナトリウム水溶液、25%水酸化ナトリウム水溶液、10%水酸化ナトリウム水溶液、好ましくは48%水酸化ナトリウム水溶液、25%水酸化ナトリウム水溶液、より好ましくは48%水酸化ナトリウム水溶液を含むが、これらに限定されない。中和剤は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。中和剤の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。その形態の例は、中和剤のみの固体、液体及びガス、並びに任意の濃度の水溶液及び水以外の溶媒(例えば、有機溶媒)の溶液等を含む。中和剤の形態は、当業者が適切に選択することができる。
【0163】
中和剤の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。中和剤の使用量としては、ヒドロキシルアミン塩を中和してフリーのヒドロキシルアミンを遊離できる量が例示できる。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、ヒドロキシルアミン塩1当量に対して、0.9~1.1当量、好ましくは0.9~1.0当量を例示できる。しかしながら、その使用量は当業者が適切に調整することができる。
【0164】
(溶媒)
反応の円滑な進行、安全性等の観点から、本発明の反応は溶媒の存在下で実施することが好ましい。溶媒は、本発明の反応が進行し且つ安全が確保される限りは、いずれの溶媒でもよい。溶媒の例は、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール(tert-ブタノールはtert-ブチルアルコールとも言う)等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme)、トリグリム(triglyme)等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)等)、アルキル尿素類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素誘導体類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン(EDC)等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等)及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。しかしながら、ヒドロキシルアミンを用いる安全性の観点から、本発明の反応は水の存在下で行うことが好ましい。なお、いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でも2層に分離してもよい。
【0165】
反応性、収率、安全性、経済効率等の観点から、一つの態様では、溶媒の好ましい例は、水、アルコール類、ニトリル類、エーテル類、芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは水、ニトリル類、芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、更に好ましくは水、芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、特に好ましくは任意の割合の水とハロゲン化脂肪族炭化水素類の組み合わせを含む。溶媒の好ましい具体的な例は、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは水、アセトニトリル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、更に好ましくは水、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、特に好ましくは任意の割合の水とジクロロメタンの組み合わせを含む。ただし、いずれの場合も水の存在が好ましい。いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でも2層に分離してもよい。
【0166】
上記と同様の観点から、別の態様では、溶媒の好ましい例は、水、アルコール類、ニトリル類、エーテル類、芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは水、アルコール類、ニトリル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、更に好ましくは水、ニトリル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、特に好ましくは任意の割合の水とハロゲン化脂肪族炭化水素類の組み合わせを含む。溶媒の好ましい具体的な例は、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、更に好ましくは水、アセトニトリル、ジクロロメタン及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせ、特に好ましくは任意の割合の水とジクロロメタンの組み合わせを含む。ただし、いずれの場合も水の存在が好ましい。いずれの場合も、反応が進行する限りは、溶媒は単層でも2層に分離してもよい。
【0167】
ヒドロキシルアミン水溶液由来の水は、溶媒として理解することができる。ヒドロキシルアミン塩(例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)と共に中和剤を用いたときは、中和剤の水溶液(例えば、48%水酸化ナトリウム水溶液)由来の水もまた、溶媒として理解することができる。中和により生成する水もまた、溶媒として理解することができる。
【0168】
溶媒の使用量は、反応系の撹拌が十分にできる限りは、いずれの量でもよい。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、式(1)の化合物1モルに対して、0(ゼロ)より多く10L(リットル)以下、好ましくは0.001~5L、0.001~0.5L、0.001~0.2L、好ましくは0.01~5L、0.01~0.5L、0.01~0.2L、更に好ましくは0.02~0.5L、更に好ましくは0.02~0.2Lの範囲を例示できる。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0169】
また、ヒドロキシルアミンを用いる安全性の観点から、本発明の反応は水の存在下で行うことが好ましい。安全性、経済効率等の観点から、水の量は以下のとおりである。
一つの態様では、水の量は、例えば、式(1)の化合物1モルに対して、50mol%以上、好ましくは100mol%以上、より好ましくは150mol%以上、更に好ましくは180mol%以上である。
別の態様では、50mol%~6000mol%、好ましくは50mol%~3000mol%、より好ましくは50mol%~1500mol%、更に好ましくは50mol%~1000mol%、更に好ましくは50mol%~800mol%、更に好ましくは50mol%~500mol%、更に好ましくは50mol%~400mol%、更に好ましくは50mol%~350mol%である。
更に別の態様では、100mol%~6000mol%、好ましくは100mol%~3000mol%、より好ましくは100mol%~1500mol%、更に好ましくは100mol%~1000mol%、更に好ましくは100mol%~800mol%、更に好ましくは100mol%~500mol%、更に好ましくは100mol%~400mol%、更に好ましくは100mol%~350mol%である。
更に別の態様では、150mol%~6000mol%、好ましくは150mol%~3000mol%、より好ましくは150mol%~1500mol%、更に好ましくは150mol%~1000mol%、更に好ましくは150mol%~800mol%、更に好ましくは150mol%~500mol%、更に好ましくは150mol%~400mol%、更に好ましくは150mol%~350mol%である。
更に別の態様では、180mol%~6000mol%、好ましくは180mol%~3000mol%、より好ましくは180mol%~1500mol%、更に好ましくは180mol%~1000mol%、更に好ましくは180mol%~800mol%、更に好ましくは180mol%~500mol%、更に好ましくは180mol%~400mol%、更に好ましくは180mol%~350mol%である。
【0170】
(反応温度)
反応温度は、特に制限されない。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、-30℃(マイナス30℃)~160℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは20℃~80℃、更に好ましくは20℃~60℃、更に好ましくは30℃~50℃の範囲を例示できる。
【0171】
触媒に酸触媒を用いる様態では、実施例から理解されるように、工業的に好ましい温度範囲(例えば、40~60℃)で満足に反応が進行する。
触媒に酸塩基触媒を用いる様態では、実施例から理解されるように、比較的低温(例えば、20~40℃)でも満足に反応進行するという更なる利点がある。
しかし、本発明の反応温度は、これらの温度範囲に限定されない。
【0172】
(反応時間)
反応時間は、特に制限されない。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、0.5時間~96時間、好ましくは1時間~50時間、より好ましくは6時間~50時間、更に好ましくは6時間~24時間の範囲を例示できる。
【0173】
(触媒)
反応の円滑な進行等の観点から、本発明の反応は触媒の存在下で行われる。本発明で使用される触媒は、好ましくは、酸触媒又は酸塩基触媒である。
【0174】
(酸触媒)
本発明の一つの様態では、酸触媒の存在下で式(3)の化合物を製造する。酸触媒は、反応が進行する限りは、いずれの酸触媒でもよい。加えて、反応が進行する限りは、以下のいずれの形態が使用されてもよく、本発明の範囲に含まれる。酸触媒として、遊離の酸を使用できる。酸触媒は部分的な塩の形態で使用してもよい。酸触媒が部分的な塩の場合は、酸触媒は単塩でもよく、複塩でもよい。酸触媒は無水物の形態で使用してもよい。酸触媒は水和物の形態で使用してもよい。酸触媒は二量体、三量体又はより高次の多量体の形態で使用してもよい。
【0175】
酸触媒の例は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0176】
a)鉱酸類
酸触媒として、鉱酸を使用することができる。鉱酸の具体的な例は、塩酸、硫酸、硝酸を含むが、これらに限定されない。
【0177】
b)カルボン酸類
酸触媒として、カルボン酸を使用することができる。反応が進行する限りは、カルボン酸は、遊離の酸として使用してもよく、又はその無水物として使用してもよい。
【0178】
一つの態様では、カルボン酸の例は、1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい飽和又は不飽和脂肪族(C1-C8)モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸、並びにハロゲン原子、(C1-C4)アルキル及び(C1-C4)ハロアルキルから独立して選択される1以上の置換基により置換されていてもよい芳香族の(C7-C11)モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸を含む。反応が進行する限りは、ジカルボン酸及びトリカルボン酸等の多価カルボン酸は複数のカルボキシ基が部分的に塩であってもよい。好ましいカルボン酸の例は、1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい飽和又は不飽和脂肪族(C1-C8)カルボン酸を含む。カルボン酸無水物の例は、それらの無水物である。別の態様では、カルボン酸の例は、1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい飽和又は不飽和脂肪族(C1-C8)カルボン酸、並びにハロゲン原子、(C1-C4)アルキル及び(C1-C4)ハロアルキルから独立して選択される1以上の置換基により置換されていてもよい安息香酸を含む。好ましいカルボン酸の例は、1以上のハロゲン原子により置換されていてもよい飽和又は不飽和脂肪族(C1-C8)カルボン酸を含む。カルボン酸無水物の例は、それらの無水物である。
【0179】
カルボン酸の具体的な例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸及びフタル酸を含む。カルボン酸無水物の具体的な例は、無水トリフルオロ酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸を含む。従って、例えば、マレイン酸は無水マレイン酸であってもよい。
【0180】
c)スルホン酸類
酸触媒として、スルホン酸を使用することができる。反応が進行する限りは、スルホン酸は、遊離の酸として使用してもよく、又はその無水物として使用してもよい。スルホン酸の具体的な例は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(TsOH)及び10-カンファースルホン酸(CSA)を含む。本明細書中、「p-トルエンスルホン酸(TsOH)」は「p-トルエンスルホン酸一水和物(TsOH・H2O)」を含む。スルホン酸無水物の具体的な例は、無水メタンスルホン酸及び無水トリフルオロメタンスルホン酸を含む。
【0181】
d)リン酸類及びその誘導体
酸触媒として、リン酸類及びその誘導体を使用することができる。それらが化学的に許容され、本発明の効果を示す限りは、リン酸類及びその誘導体は特に制限されない。リン酸類及びその誘導体の例は以下を含むが、これらに限定されない。
【0182】
d-1)リン酸類
反応が進行する限りは、リン酸は、遊離の酸として使用してもよく、又はその分子中の1以上のOH基が部分的に塩を形成していてもよい。加えて、リン酸はその無水物等であってもよい。リン酸類の具体的な例は、リン酸(オルトリン酸;H3PO4)、リン酸二水素アンモニウム、ポリリン酸、ピロリン酸(二リン酸)及び五酸化二リンを含む。
【0183】
d-2)リン酸モノエステル類
反応が進行する限りは、リン酸モノエステルは、遊離の酸として使用してもよく、又はその分子中の1以上のOH基が部分的に塩を形成していてもよい。リン酸モノエステルは、それが化学的に許容される限りは、その無水物として使用してもよい。リン酸モノエステル類の具体的な例は、リン酸エチル(すなわち、リン酸二水素エチル;(C2H5O)P(=O)(OH)2)及びリン酸フェニル(すなわち、リン酸二水素フェニル;(C6H5O)P(=O)(OH)2)を含む。
【0184】
d-3)リン酸ジエステル類
反応が進行する限りは、リン酸ジエステルは、遊離の酸として使用してもよく、又はそれが化学的に許容される限りは、その無水物として使用してもよい。リン酸ジエステル類の具体的な例は、リン酸ジエチル(すなわち、リン酸水素ジエチル;(C2H5O)2P(=O)OH)及びリン酸ジフェニル(すなわち、リン酸水素ジフェニル;(C6H5O)2P(=O)OH)を含む。
【0185】
e)固体酸類
酸触媒として、固体酸を使用することができる。
【0186】
固体酸の例は、陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、ゼオライト、モンモリロナイト、アルミナ等を含むが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書中、用語「陽イオン交換樹脂」は、特に限定されず、強酸性又は弱酸性の公知の陽イオン交換樹脂を意味する。陽イオン交換樹脂の具体的な例は、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)シリーズ(例えば、ダイヤイオンSK1B、SK110、SK116、P206、WK40等)、ロームアンドハース社製のアンバーライト(登録商標)シリーズ(例えば、アンバーライトIR-120B、IR-200CT、IRC50、IR-124等)、ザ・ダウケミカル・カンパニー社製のダウエックス(登録商標)シリーズ(例えば、50W-X8等)等を含むが、これらに限定されない。
【0188】
ヘテロポリ酸の具体的な例は12モリブド(VI)リン酸n水和物(12-molybdo(VI)phosphoric acid n-hydrate;H3[PMo12O40]・nH2O(n≒30))、12タングスト(VI)リン酸n水和物(12-tungsto(VI)phosphoric acid n-hydrate;H3[PW12O40]・nH2O(n≒30))、12タングスト(VI)ケイ酸n水和物(12-tungsto(VI)silicic acid n-hydrate;H4[SiW12O40]・nH2O (例えばn≒26))等を含むが、これらに限定されない。12モリブド(VI)リン酸n水和物はリンモリブデン酸n水和物(phosphomolybdic acid n-hydrate)とも言う。12タングスト(VI)リン酸n水和物はリンタングステン酸n水和物(phosphotungstic acid n-hydrate)とも言う。12タングスト(VI)ケイ酸n水和物はケイタングステン酸n水和物(silicotungstic acid n-hydrate)とも言う。
酸触媒として、ヘテロポリ酸の塩も使用することができる。ヘテロポリ酸の塩の具体的な例は、12モリブド(VI)リン酸ナトリウムn水和物(sodium 12-molybdo(VI)phosphate n-hydrate;Na3[PMo12O40]・nH2O(n≒30))等を含むが、これに限定されない。12モリブド(VI)リン酸ナトリウムn水和物はリンモリブデン酸ナトリウムn水和物(sodium phsophomolybdate n-hydrate)とも言う。
【0189】
ゼオライトの例は、ZSM-5型、モルデナイト型、L型、Y型、X型及びベータ型、等を含むが、これらに限定されない
【0190】
収率、経済効率等の観点から、酸触媒の好ましい例は、以下の通りであるが、これらに限定されない。
鉱酸類、カルボン酸類、スルホン酸類及びリン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が好ましい。
鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸がより好ましい。
上記と同様の観点から、酸触媒の好ましい具体的な例は、以下の通りであるが、これらに限定されない。
塩酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、リン酸、リン酸エチル、リン酸フェニル、リン酸ジエチル及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸がより好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸もまた更に好ましい。
トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1~3個、(好ましくは1又2個、より好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
トリフルオロ酢酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1又2個(好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
トリフルオロ酢酸が更に好ましい。
【0191】
酸触媒は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。酸触媒の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。その形態の例は、酸触媒のみの固体、液体若しくは気体、又は任意の濃度の水溶液若しくは水以外の溶媒(例えば、有機溶媒)の溶液等を含む。その形態は当業者が適切に選択することができる。
【0192】
酸触媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、式(1)の化合物1モルに対して、0.01~1.0モル、好ましくは0.01~0.30モル、より好ましくは0.02~0.30モル、0.02~0.20モル、0.02~0.10モルの範囲を例示できる。
【0193】
触媒に酸触媒を用いる様態では、ヒドロキシルアミンの使用量は、式(1)の化合物1モルに対して、0.5~2モル、好ましくは0.9~1.5モル、より好ましくは0.9~1.2モル、1.0~1.2モル、更に好ましくは0.9~1.1モル、1.0~1.1モルの範囲を例示できる。
【0194】
(酸塩基触媒)
本発明の別の様態では、酸塩基触媒の存在下で式(3)の化合物を製造する。酸塩基触媒は、酸と塩基の混合物である。酸塩基触媒は、反応が進行する限りは、いずれの酸塩基触媒でもよい。加えて、反応が進行する限りは、いずれの形態が使用されてもよく、本発明の範囲に含まれる。
酸塩基触媒が塩の場合は、酸塩基触媒は単塩でもよく、複塩でもよい。酸塩基触媒は無水物の形態で使用してもよい。酸塩基触媒は水和物の形態で使用してもよい。酸塩基触媒の酸及び/又は塩基は二量体等の形態で使用してもよい。
【0195】
酸塩基触媒は、単独で又は任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。酸塩基触媒の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよい。その形態の例は、酸塩基触媒のみの固体若しくは液体、又は任意の濃度の水溶液若しくは水以外の溶媒(例えば、有機溶媒)の溶液等を含む。その形態は当業者が適切に選択することができる。
【0196】
酸塩基触媒の酸としては、前記の酸触媒として例示された酸を用いることができる。
【0197】
収率、経済効率等の観点から、酸塩基触媒の酸の好ましい例は、以下の通りであるが、これらに限定されない。
鉱酸類、カルボン酸類、スルホン酸類及びリン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が好ましい。
鉱酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が好ましい。
鉱酸類及びカルボン酸類からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸がより好ましい。
上記と同様の観点から、酸塩基触媒の酸の好ましい具体的な例は、以下の通りであるが、これらに限定されない。
塩酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、リン酸、リン酸エチル、リン酸フェニル、リン酸ジエチル及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸及びリン酸ジフェニルからなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸がより好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸もまた更に好ましい。
硝酸、トリフルオロ酢酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1~3個(好ましくは1又2個、更に好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
トリフルオロ酢酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる1~3個、(好ましくは1又2個、より好ましくは1個)の酸もまた更に好ましい。
トリフルオロ酢酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1又2個(好ましくは1個)の酸が更に好ましい。
トリフルオロ酢酸が更に好ましい。
【0198】
酸塩基触媒の塩基としては、アミン類が好ましい。
【0199】
アミン類は、下記式:
【0200】
R3R4R5N
【0201】
(式中、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;置換されていてもよい(C3-C6)シクロアルキル;置換されていてもよい(C2-C6)アルケニル;置換されていてもよい(C2-C6)アルキニル;又は置換されていてもよいアリールであり;あるいはR3、R4及びR5のいずれか2つはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、4~12員の複素環を形成し、ここで形成された環は置換されていてもよい。ここで、R3、R4及びR5の少なくとも一つは水素ではない)
の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、又は複素環式アミンであってよい。
【0202】
第1級アミンの具体的な例は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン等を含むが、これらに限定されない。
【0203】
第2級アミンの具体的な例は、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N-メチルアニリン(PhNHMe)、N-エチルアニリン、ピペリジン、モルホリン等を含むが、これらに限定されない。
【0204】
第3級アミンの具体的な例は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等を含むが、これらに限定されない。
【0205】
複素環式アミンの具体的な例は、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)-ピリジン、4-ピロリジノピリジン、2,6-ルチジン、キノリン、イソキノリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)等を含むが、これらに限定されない。
【0206】
4-(ジメチルアミノ)-ピリジン、4-ピロリジノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)は、3級アミンにも属する。
【0207】
アミン類の例は、イミダゾリノン類もまた含む。イミダゾリノン類の具体的な例は、(2S,5S)-2-tert-ブチル-3-メチル-5-ベンジル-4-イミダゾリノン及びそのジアステレオマー等の光学異性体、並びにそれらの類縁体を含む。しかしながら、イミダゾリノン類は高価であるから、イミダゾリノン類を使用しないことが工業的に好ましい。
【0208】
収率、経済効率等の観点から、酸塩基触媒の塩基の好ましい例は、第2級アミンを含む。酸塩基触媒の塩基の好ましい具体的な例は、N-メチルアニリン、モルホリン及びピロリジン、より好ましくはN-メチルアニリンを含む。
【0209】
酸塩基触媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。酸塩基触媒の酸と塩基の比率は1:1であってもよく、1:1でなくともよい。
酸塩基触媒の酸の使用量は、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、式(1)の化合物1モルに対して、0.001~1.00モル、好ましくは0.005~0.30モル、0.005~0.10モル、より好ましくは0.01~0.10モル、0.01~0.05モルの範囲を例示できる。
酸塩基触媒の塩基の使用量は、収率、副生成物抑制、経済効率等の観点から、式(1)の化合物1モルに対して、0.001~1.00モル、好ましくは0.005~0.30モル、0.005~0.10モル、より好ましくは0.01~0.10モル、0.01~0.05モルの範囲を例示できる。
【0210】
触媒に酸塩基触媒を用いる様態では、ヒドロキシルアミンの使用量は、式(1)の化合物1モルに対して、0.5~2モル、0.9~1.5モル、0.9~1.2モルの範囲を例示できる。収率、経済効率等の観点から、触媒に酸塩基触媒を用いる様態では、ヒドロキシルアミンの使用量は、式(1)の化合物より少ないことが好ましい。一つの態様では、ヒドロキシルアミンの使用量は、式(1)の化合物1モルに対して、1.00モル未満、好ましくは0.99モル以下、より好ましくは0.98モル以下を例示できる。別の態様では、式(1)の化合物1モルに対して、0.90モル以上1.00モル以下、好ましくは0.90モル以上1.00モル未満、より好ましくは0.90モル以上0.99モル以下、更に好ましくは0.90モル以上~0.98モル以下の範囲を例示できる。
【0211】
別段に示されない限り、本明細書で使用される量、大きさ、濃度、反応条件などの特徴を表す数字は、用語「約」によって修飾されると理解される。いくつかの態様では、開示された数値は、報告された有効数字の桁数と、通常の丸め手法を適用して解釈される。いくつかの態様では、開示された数値は、それぞれの試験測定方法に見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を含むと解釈される。
【0212】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されない。
【0213】
本明細書中、実施例及び比較例の分析には、次の機器及び条件を用いた。
【0214】
(1H-NMR:1H核磁気共鳴スペクトル)
機器:JEOL JMN-ECS-300又はJEOL JMN-Lambda-400(JEOL RESONANCE製)、溶媒:CDCl3及び/又はDMSO-d6、内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)及びその他。
【0215】
(13C-NMR:13C核磁気共鳴スペクトル)
1H-NMRと同様の機器、溶媒及び基準物質で13C-NMRを測定した。
【0216】
(GC分析:ガスクロマトグラフィー分析)
GC-2025(株式会社島津製作所製)、検出方法:FID
【0217】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析方法;GC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
文献(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第60~86頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な固定相液体に関しては、第66頁を参照できる。)
文献(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20-1 分析化学」第5版、第121~129頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、中空キャピラリー分離カラムの具体的な使用方法に関しては、第124~125頁を参照できる。)
【0218】
(GC-MS分析:ガスクロマトグラフィー質量分析)
分析装置:6890N Network GC System(Agilent Technologies製)、質量検出器:5973N MSD(Agilent Technologies製)
【0219】
実施例1
酸触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
【0220】
【0221】
10mlフタ付き試験管にプレナール(478μl,比重:0.879(20℃),421mg,純度:98%(GC面積%),4.9mmol,100mol%)をマイクロシリンジで加えた。そこにトリフルオロ酢酸(38μl,比重:1.49(20℃),58mg,0.5mmol,10mol%)を加えた。氷冷下、30℃を超えないように、ヒドロキシルアミン水溶液(294μl,比重:1.122(20℃),330mg,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),5.19mmol,106mol%)を加え、30℃で24時間撹拌した(熟成)。反応混合物をGC(面積百分率)により分析した。
【0222】
実施例2~11
下記の表に示すようにヒドロキシルアミン(NH2OH)の量、酸の種類及び量、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更したことを除いては実施例1と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを製造した。
反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は、(1-a;原料)及び(3-a;目的生成物)のほか、(2-a;中間体)、(9-1-a;二量体中間体のアルデヒド誘導体)及び(9-2-a;二量体中間体のオキシム誘導体)が検出された。なお、本発明において、GC、GC-MS及び1H NMRなどの分析により、(1-a;原料)、(3-a;目的生成物)、(2-a;中間体)、(9-1-a;二量体中間体のアルデヒド誘導体)及び(9-2-a;二量体中間体のオキシム誘導体)は同定された。
【0223】
実施例1~11の反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果を下表に示す。
【0224】
【0225】
NH2OH:ヒドロキシルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
TsOH:p-トルエンスルホン酸一水和物
【0226】
実施例12
有機溶媒を含む溶媒中での、酸触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
10mlフタ付き試験管にプレナール(478μl,比重:0.879(20℃),421mg,純度:98%(GC面積%),4.9mmol,100mol%)をマイクロシリンジで加えた。そこにジクロロメタン(0.5ml,0.1L/mol)とトリフルオロ酢酸(38μl,比重:1.49(20℃),58mg,0.5mmol,10mol%)を加えた。氷冷下、30℃を超えないようにヒドロキシルアミン水溶液(282μl,比重:1.122(20℃),316mg,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),4.98mmol,102mol%)を加え、50℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物をGC(面積百分率)により分析した。
【0227】
実施例13~15
下記の表に示すように溶媒の種類及び量、ヒドロキシルアミン(NH2OH)の量、酸触媒の種類及び量、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更したことを除いては実施例12と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを製造した。
【0228】
実施例12~15の反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果を下表に示す。
【0229】
【0230】
NH2OH:ヒドロキシルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
CH2Cl2:ジクロロメタン
CH3CN:アセトニトリル
t-BuOH:tert-ブタノール
【0231】
実施例16
酸塩基触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
10mlフタ付き試験管にプレナール(478μl,比重:0.879(20℃),421mg,純度:98%(GC面積%),4.9mmol,100mol%)をマイクロシリンジで加えた。そこにトリフルオロ酢酸(19μl,比重:1.49(20℃),29mg,0.25mmol,5mol%,)を加えた。氷冷下、30℃を超えないようにヒドロキシルアミン水溶液(268μl,比重:1.122(20℃),301mg,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),4.73mmol,97mol%)を加えた後、N-メチルアニリン(27μl,比重:0.99(20℃),27mg,0.25mmol,5mol%)を加え、30℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物をGC(面積百分率)により分析した。
【0232】
実施例17~31
下記の表に示すようにヒドロキシルアミン(NH2OH)の量、酸の種類及び量、塩基の種類及び量、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更したことを除いては実施例16と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを製造した。
【0233】
比較例1
下記の表に示すようにヒドロキシルアミン(NH2OH)の量、塩基の種類及び量、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更し、酸を加えないことを除いては実施例16と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造を試みた。
【0234】
実施例16~31及び比較例1の反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果を下表に示す。
【0235】
【0236】
NH2OH:ヒドロキシルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
PhNHMe:N-メチルアニリン
TsOH:p-トルエンスルホン酸一水和物
【0237】
実施例1~6は、酸触媒を使用した例である。酸触媒を使用した場合には、プレナール過剰(実施例2、4、6)及びヒドロキシルアミン過剰(実施例1、3、5)の両方の条件で、良好な収率が得られた。酸触媒を使用した場合には、プレナールとヒドロキシルアミンの量比(モル比)に収率が影響されない効果が得られた。
実施例7~11の結果は、本発明の酸触媒として様々な酸が利用可能であることを示している。
実施例12~15は有機溶媒を含む溶媒中で、酸触媒を使用した例である。様々な有機溶媒の存在下で良好な収率が得られた。
実施例16~25は酸塩基触媒を使用した例である。同量の(等モルの)プレナールとヒドロキシルアミンを用いた実施例17においても良好な収率が得られた。特に、プレナール過剰の条件で反応させた実施例16、18~23は更に優れた収率を得られた。
実施例26~31の結果は、本発明の酸塩基触媒として様々な酸及び塩基が利用可能であることを示している。
比較例1は酸触媒なしで反応を試みた例である。酸触媒なしでは反応はほとんど進行しなかった。
【0238】
参考例1
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
10mlフタ付き試験管にアセトンオキシム(326mg,4.45mmol,91mol%)とプレナール(478μl,比重:0.879(20℃),421mg,純度:98%(GC面積%),4.90mmol,100mol%)を加えた。そこに水(147mg,比重:1.00,147μl,8.17mmol,167mol%)を加えて、氷冷した。トリフルオロ酢酸(3.8μl,比重:1.49(20℃),5.7mg,0.050mmol,1mol%)とN-メチルアニリン(5.4μl,比重:0.99(20℃),5.4mg,0.050mmol,1mol%)を同一ガスタイトシリンジに取り、シリンジ内で混合した。先の試験管にこの混合物を、内温が20℃を超えないように少しずつ何回かに分けて添加し、30℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く主な成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):37%,プレナール(1-a;原料):29%,アセトンオキシム(原料):17%。
【0239】
参考例1では、本発明のヒドロキシルアミンに代えてアセトンオキシムを使用した。特許文献2の実施例1の方法を、特表2013-512202(特許文献2)の実施例1のアセトンオキシムと同じモル数の50%ヒドロキシルアミン水溶液に含まれる量の水の存在下で行ったことに相当する。
参考例1の結果は、明らかに低い収率を示した。この結果は、特許文献2に記載から予想される通り、特許文献2の方法においては水の存在がオキシム化及び/又は環化の妨げとなることを示している。
なお、酸触媒反応と酸塩基触媒反応とでは反応途中で検出された反応中間体類の挙動に差があったが、実施例1~31の上表に示すように、反応完結後には酸触媒でも酸塩基触媒でも本発明の所望の効果が得られた。
一方で、本発明のヒドロキシルアミンを用いた方法では、水の存在下の反応にもかかわらず良好な収率が得られており、本発明の方法は特許文献2に記載の方法とは異質な反応によるものであることが示唆される。
【0240】
実施例32
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
50mlナスフラスコ中でプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)をジクロロメタン(11.7ml,0.1L/mol)に溶解した後、氷冷下でトリフルオロ酢酸(0.89ml,比重:1.49(20℃)),1.33g,11.7mmol,10mol%)を加えた。氷冷下、そこに30℃を超えないようにヒドロキシルアミン水溶液(7.55g,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),118.8mmol,102mol%)を加え、45℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):96%。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)を加えて、撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,9.3g,93.8mmol,収率:81%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
【0241】
実施例33
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
50mlナスフラスコ中でプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)をジクロロメタン(11.7ml,0.1L/mol)に溶解した後、氷冷下でマレイン酸(1.35g,11.7mmol,10mol%)を加えた。氷冷下、そこに30℃を超えないようにヒドロキシルアミン水溶液(7.55g,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),118.8mmol,102mol%)を加え、45℃で24時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):97%。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)を加えて、撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,10.1g,101.9mmol,収率:87%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
【0242】
実施例34及び35
後述の表に示すように溶媒の種類及び量、触媒の種類、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更したことを除いては実施例32及び33と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを製造した。結果は後述の表に示す。
【0243】
実施例37
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
50mlナスフラスコにプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)を加えた後、氷冷下でトリフルオロ酢酸(178μl,比重:1.49(20℃)),266mg,2.33mmol,2mol%)を加えた。氷冷下、そこに30℃を超えないようにヒドロキシルアミン水溶液(7.25g,純度:52%(1.0M塩酸で滴定),114.2mmol,98mol%)を加えた後、N-メチルアニリン(252μl,比重:0.99(20℃),250mg,2.33mmol,2mol%,)を加え、30℃で24時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):96%。
反応終了後、ジクロロメタン(12ml)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)を加えて、撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,9.7g,97.9mmol,収率:84%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm,TMS基準):1.40(s,6H),2.75(d,J=1.9Hz,2H),7.06(s,1H).
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ(ppm):27.0,47.3,82.2,146.2.
沸点:154.9℃/1atm(TG-DTA:熱重量-示差熱同時分析)。TG-DTAには次の機器を用いた。機器:DSC3100S(MAC Science Co.,Ltd.製)。
【0244】
実施例36、38及び39
下記の表に示すように、触媒の種類及び量、並びに撹拌条件(熟成条件)を変更したことを除いては実施例37と同様にして、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを製造した。
【0245】
実施例32~39の結果を下表に示す。
【0246】
【0247】
NH2OH:ヒドロキシルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
PhNHMe:N-メチルアニリン
CH2Cl2:ジクロロメタン
【0248】
実施例40
塩酸ヒドロキシルアミンと酸触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
100mlナスフラスコ中でプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)をジクロロメタン(11.7ml,0.1L/mol)に溶解した後、氷冷下でトリフルオロ酢酸(0.89ml,比重:1.49(20℃)),1.33g,11.7mmol,10mol%)及び塩酸ヒドロキシルアミン(8.26g,118.8mmol,102mol%)を加えた。氷冷下、そこに30℃を超えないように48%水酸化ナトリウム水溶液(9.90g,118.8mmol,102mol%)を加え、45℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):92%。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)を加えて、撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,8.8g,88.6mmol,収率:76%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
【0249】
実施例41
塩酸ヒドロキシルアミンと酸塩基触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
100mlナスフラスコ中でプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)をジクロロメタン(11.7ml,0.1L/mol)に溶解した後、氷冷下でトリフルオロ酢酸(178μl,比重:1.49(20℃)),266mg,2.33mmol,2mol%)、塩酸ヒドロキシルアミン(7.91g,113.9mmol,98mol%)を加えた。氷冷下、そこに30℃を超えないように48%水酸化ナトリウム水溶液(9.49g,113.9mmol,98mol%)を加えた。その後、N-メチルアニリン(252μl,比重:0.99(20℃)),250mg,2.33mmol,2mol%)を加え、30℃で5時間撹拌した。その後、トリフルオロ酢酸(178μl,比重:1.49(20℃),266mg,2.33mmol,2mol%)及びN-メチルアニリン(252μl,比重:0.99(20℃)),250mg,2.33mmol,2mol%)を追加し、30℃で24時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):89%。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)と水(20ml)を加えて、撹拌した。得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,8.6g,87.0mmol,収率:75%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
【0250】
実施例42
硫酸ヒドロキシルアミンと酸触媒を用いた5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a)の製造
100mlナスフラスコ中でプレナール(10.0g,純度:98%(GC面積%),116.5mmol,100mol%)をジクロロメタン(11.7ml,0.1L/mol)に溶解した後、硫酸ヒドロキシルアミン(9.75g,59.4mmol,51mol%,ヒドロキシルアミン(NH2OH)として102mol%)を加えた。そこに15~25℃で48%水酸化ナトリウム水溶液(9.22g,110.7mmol,95mol%)を加えた後、氷冷下でトリフルオロ酢酸(2.68ml,比重:1.49(20℃),3.99g,34.9mmol,30mol%)を加え、45℃で20時間撹拌した(熟成)。反応混合物のGC分析(面積百分率)の結果、反応混合物中の溶媒等を除く成分は次の通りであった;5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物):92%。
反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(12ml)を加えて、撹拌した。析出した固形物を除去するため吸引ろ過した。ろ過後得られた混合物を有機層と水層に分配した。有機層と水層を分離した。水層を少量のジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせた。1,4-ジフェノキシベンゼンを内部標準として用いるGC分析の結果、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a;目的生成物)の収率は79%であった。
合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール(3-a,無色油状物,8.22g,82.9mmol,収率:71%,沸点:75~77℃/50Torr)を得た。
【0251】
実施例40~42の結果を下表に示す。
【0252】
【0253】
NH2OH:ヒドロキシルアミン
CH2Cl2:ジクロロメタン
NH2OH・HCl:塩酸ヒドロキシルアミン
(HONH2)2・H2SO4:硫酸ヒドロキシルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
PhNHMe:N-メチルアニリン
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の方法により製造される式(3)の5,5-ジ置換-4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、医薬及び農薬等、とりわけ除草剤のピロキサスルホンの製造中間体として有用である。本発明によれば、副生成物及び/又は廃棄物の生成を抑制でき、そして原子効率を改善できる。更に、本発明によれば、安全で簡単な操作により、且つ効率的に目的化合物を製造できる。従って、本発明の方法は、安全で工業的に好ましく、経済的であり、そして環境にも優しく、高い工業的な利用価値を有する。要するに、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。