(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及び繊維強化樹脂マトリックス複合材料
(51)【国際特許分類】
C08G 59/18 20060101AFI20230313BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20230313BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C08G59/18
C08G65/18
C08J5/24 CFC
(21)【出願番号】P 2020520016
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054662
(87)【国際公開番号】W WO2019074795
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-06
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アスピン, イアン
(72)【発明者】
【氏名】ドルイユ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン, ジョナサン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-028132(JP,A)
【文献】特表2011-509339(JP,A)
【文献】国際公開第2009/089145(WO,A1)
【文献】特開平09-104740(JP,A)
【文献】特開2001-302765(JP,A)
【文献】特開平04-279626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00- 59/72
C08G65/00- 67/48
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物を含む硬化性樹脂であって、前記化合物は、モル当量のエポキシド基、オキセタノ基、又はこれらの混合物の量を有する、硬化性樹脂と、
(b)モル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の、モル当量のエポキシド基、オキセタノ基、又はこれらの混合物に対する、1:25~1:
2の比の量のルイス酸:ルイス塩基錯体から選択された1つ以上の硬化剤と、
(c)モル当量の無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する1:1ま
での比の量の硬化促進量の1つ以上の無水物化合物と、
を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
20分以下の時間、100℃~180℃の温度での硬化後、85%以上の硬化変換率及び210℃以上のガラス転移温度を示す、請求項1に記載の
硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物の100pbwに基づいて、50~80pbwの1つ以上の非芳香族エポキシ化合物、及び任意で、30pbwまでの合計した量の1つ以上の芳香族エポキシ化合物及び/又はモノエポキシド化合物を含む、請求項1に記載の
硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
無水物化合物が
、500g/モル以上の分子量を有し、分子当たり1つ以上の無水物官能基を有する無水物ポリマー又はオリゴマーである、請求項1に記載の
硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
100℃~180℃の温度で初期硬化速度を示し
、初期硬化速度を遅延するのに有効である量の窒素塩基化合物を更に含む、請求項1に記載の
硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維を含む、硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料。
【請求項7】
請求項6に記載の
硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料を硬化させることにより作製された繊維強化樹脂マトリックス複合品。
【請求項8】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を繊維に含浸させることを含む、硬化性樹脂含浸繊維材料を作製するための方法。
【請求項9】
硬化性樹脂組成物が、樹脂組成物の粘度を500ポアズ以上に増加させるのに有効な量で樹脂組成物に可溶な1つ以上の熱可塑性ポリマーを更に含み、熱可塑性ポリマーの非存在下での樹脂組成物の粘度が、50ポアズ以下であり、繊維を含浸させる工程は、
熱可塑性ポリマーを、ルイス酸:ルイス塩基
錯体及び無水物成分以外の硬化性樹脂組成物の成分と、30℃~150℃の温度でブレンドする工程と、
40℃~70℃の温度で、ブレンドされた熱可塑性ポリマー及び樹脂組成物にルイス酸:ルイス塩基
錯体及び無水物成分を添加して、硬化性樹脂組成物を形成する工程と、
硬化性樹脂組成物を押し出す工程と、
押し出された硬化性樹脂組成物と繊維を接触させることにより、繊維に硬化性樹脂組成物を含浸させる工程と、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化性樹脂組成物含浸繊維の2つ以上の層を積み重ねる工程と、積み重ねられた層を100℃~180℃の温度で20分以下の時間加熱して、硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより繊維強化樹脂マトリックス複合品を形成する工程とを含む、繊維強化樹脂マトリックス複合品を作製するための方法。
【請求項11】
硬化性樹脂、硬化剤及び無水物化合物を組み合わせて、50ポアズ以下の粘度を示す硬化性樹脂組成物を提供する工程と、
硬化性樹脂組成物を繊維のトウに含浸させる工程と、
硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維トウをマンドレルに巻き付けて、フィラメント巻き付け繊維強化樹脂マトリックス複合材料を形成する工程と、
フィラメント巻き付け繊維強化樹脂マトリックス複合材料を室温で4~7時間反応させ、硬化性樹脂組成物が50,000~300,000ポアズの粘度を示すようにする工程と、
フィラメント巻き付け繊維強化樹脂マトリックス複合材料をマンドレルから取り除く工程と、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項
11に記載のフィラメント巻き付け繊維強化樹脂マトリックス複合材料を100℃~180℃の温度で20分以下の時間プレス成形して
、硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより繊維強化樹脂マトリックス複合品を形成する工程を含む、繊維強化樹脂マトリックス複合品を作製するための方法。
【請求項13】
硬化性樹脂、硬化剤及び無水物化合物を組み合わせて、50ポアズ以下の粘度を示す硬化性樹脂組成物を提供する工程と、型にて繊維プリフォームに硬化性樹脂組成物を含浸させ
て硬化性樹脂組成物含浸繊維プリフォームを形成する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の硬化性樹脂組成物含浸繊維プリフォームを20分以下の時間100℃~180℃の温度に加熱して硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより繊維強化樹脂マトリックス複合品を形成する工程を含む、繊維強化樹脂マトリックス複合品を作製するための方法。
【請求項15】
1分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、
1分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含む少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物、及び1つ以上のルイス酸
:ルイス塩基錯体を含む硬化剤を
樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量で含む硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物に、硬化促進量の1つ以上の無水物化合物を添加する工程を含む、硬化性樹脂組成物の硬化を促進する方法
であって、前記硬化促進量が、モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり0.5モル当量未満の無水物基の量である、方法。
【請求項16】
任意の他のポリマー強化剤が実質的に存在しない場合に、
1分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、
1分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含む少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物、及び1つ以上のルイス酸
:ルイス塩基錯体を含む硬化剤を
樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量で含む硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物に、硬化促進量の1つ以上のポリマー無水物化合物を添加する工程を含む、樹脂組成物を強化する方法
であって、前記硬化促進量が、モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり0.5モル当量未満の無水物基の量である、方法。
【請求項17】
樹脂組成物は、100℃~180℃の温度で20分以下の時間硬化した後、ASTM D-5045-99によるノッチ付き衝撃試験により測定される、0.3MPa・m
1/2以上の破壊靱性を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)
1分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、
1分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含む少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又は
これらの混合物を含む硬化性樹脂と、
(b)樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量での、ルイス酸:ルイス塩基錯体から選択される1つ以上の硬化剤と、
(c)それぞれが
1分子当たり少なくとも1つの無水物基を含む、モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり0.5モル当量未満の無水物基の硬化促進量での、1つ以上の無水物化合物と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
(a)
1分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、
1分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含む少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物を含む硬化性樹脂と、
(b)
樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量での、ルイス酸:ルイス塩基錯体から選択される1つ以上の硬化剤と、
(c
)500g/モル以上の分子量を有し、分子当たり1つ以上の無水物官能基を有する硬化促進量の1つ以上の無水物ポリマー又はオリゴマー
であって、前記硬化促進量が、モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり0.5モル当量未満の無水物基の量である、無水物ポリマー又はオリゴマーと、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物は、
1分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含み、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物は、
1分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含み、1つ以上の無水物ポリマー又はオリゴマーはそれぞれ、
1分子当たり少なくとも1つの無水物基を含み、樹脂組成物は、
樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量で存在
する1つ以上の硬化剤と、
モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり、0.5モル当量未満の無水物基の硬化促進量で存在する
1つ以上の無水物ポリマー又はオリゴマー
を含む、請求項
19に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂、繊維と硬化性樹脂とを含む繊維強化樹脂マトリックス複合材料、並びにこれによって作製された繊維強化樹脂マトリックス複合品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素及び/又はガラス強化炭素繊維複合材料は、例えば、軽量の高性能が要求される航空宇宙及び自動車用途などの高性能用途で使用される。
【0003】
自動車産業では、長年にわたって、自動車、特に高性能車、及びトラックの部品に繊維強化複合材料(FRC)を使用してきた。高速製造技術を使用することにより、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)複合材料を連続生産車に移すことができる。こうした技術の1つは、急速硬化プレス成形である。このプロセスで使用される基材は、プリプレグから又はフィラメント巻き付け材料から得られることができる。後者では、樹脂を事前に含浸させた、又はより一般的には1列で(in-line)含浸させた炭素繊維のトウが、回転するマンドレルの周りに巻き付けられる。巻き付けヘッドがマンドレルに沿って前後に移動すると、多数の噛み合わせ角度を有する様々な織物製品を構築できる。マンドレルから繊維強化樹脂マトリックス複合材料を除去すると、プリプレグ材料と同様の方法で急速プレス硬化用の基板として使用できる長方形の「ブランク」が作成される。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物を含む硬化性樹脂と、
(b)ルイス酸:ルイス塩基錯体から選択される1つ以上の硬化剤と、
(c)硬化促進量の1つ以上の無水物化合物と、を含む硬化性樹脂組成物に関する。
【0005】
樹脂組成物の一実施形態では、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物は、こうした化合物の分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含み、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物は、こうした化合物の分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含み、1つ以上の無水物化合物はそれぞれ、こうした化合物の分子当たり少なくとも1つの無水物基を含み、樹脂組成物は、
モル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の、モル当量のエポキシド基、オキセタノ基、又はこうした基の混合物に対する1:25~1:2、好ましくは1:20~1:5の比を提供するのに有効な1つ以上の硬化剤の量と、
モル当量の無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する1:1まで、好ましくは1:20~1:1の比を提供するのに有効な1つ以上の無水物化合物の量と、を含む。
【0006】
別の実施形態では、硬化性樹脂組成物は、
(a)こうした化合物の分子当たり少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、こうした化合物の分子当たり少なくとも1つのオキセタノ基を含む少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこうした化合物の混合物を含む硬化性樹脂と、
(b)樹脂組成物100重量部当たり1~20重量部の1つ以上の硬化剤の量での、ルイス酸:ルイス塩基錯体から選択される1つ以上の硬化剤と、
(c)それぞれがこうした化合物の分子当たり少なくとも1つの無水物基を含む、モル当量のエポキシド基、オキセタン基、又はこれらの混合物当たり0.5モル当量未満の無水物基の硬化促進量での、1つ以上の無水物化合物と、を含む。
【0007】
別の実施形態では、無水物化合物は、約500g/モル以上の分子量を有し、分子当たり1つ以上の無水物官能基を有する無水物ポリマー又はオリゴマーである。
【0008】
第2の態様では、本発明は、硬化性樹脂組成物の硬化を促進する方法に関し、この方法は、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物、及び1つ以上のルイス酸-ルイス塩基錯体を含む硬化剤を含む硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物に硬化促進量の1つ以上の無水物化合物を添加する工程を含む。
【0009】
促進された硬化により、1つ以上のルイス酸-ルイス塩基錯体又は1つ以上の無水物化合物のいずれかを欠く類似の樹脂組成物と比較して、後硬化を必要とせずに、より短い時間、典型的には20分以下、より典型的には1~15分、更により典型的には1分~10分の時間、より低い温度、典型的には60℃以上、より典型的には100℃~180℃、更により典型的には120℃~160℃の温度で、本発明の樹脂組成物を完全に硬化させることが可能になる。
【0010】
第3の態様では、本発明は、任意の他のポリマー強化剤が実質的に存在しない場合に、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物、及び1つ以上のルイス酸-塩基錯体を含む硬化剤を含む硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物に、硬化促進量の1つ以上のポリマー無水物化合物を添加する工程を含む、硬化された樹脂組成物を強化する方法に関する。
【0011】
硬化性樹脂組成物は、適度な温度で急速に硬化することができる。一実施形態では、樹脂組成物は、20分以下、より典型的には1~15分、更により典型的には1分~10分の時間、60℃以上、より典型的には100℃~180℃、更により典型的には120℃~160℃の温度で硬化した後、DSC(残留エンタルピー)によって測定される、典型的には85%以上、より典型的には90%以上、更により典型的には95%以上の高い度合の硬化変換率、及びDMA(貯蔵弾性率遷移)によって測定される、典型的には210℃以上、より典型的には215℃以上、更により典型的には220℃以上の高いガラス転移温度、並びに良好な機械的強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1及び比較例C1~C3の樹脂組成物の硬化中の示差走査熱量測定によって測定される、熱流(W/g)対温度のプロットを示す。
【
図2】本発明の実施例1、5、6、7、8及び比較例C1の樹脂組成物の硬化中の示差走査熱量測定によって測定される、熱流(W/g)対温度のプロットを示す。
【
図3】本発明の実施例9及び比較例C4の樹脂組成物の硬化中の示差走査熱量測定により測定される、熱流(W/g)対温度のプロットを示す。
【
図4】本発明の実施例1及び12の樹脂組成物の硬化中の示差走査熱量測定によって測定される、W/g)対温度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、「脂肪族」という用語は、有機化合物が直鎖又は分岐鎖構造を有し、任意のアリール又は脂環式環部位を欠くことを意味し、この場合に、鎖は、それぞれの単、二重、又は三重結合によって結合された炭素原子を含み、典型的には、酸素、窒素、及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されることができ、鎖の炭素原子員は、典型的には、アルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキルから選択される任意のアリール又は脂環式環部位を欠く1つ以上の有機基でそれぞれ任意に置換されることができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アクリル」という用語は、有機置換基を有する炭素原子、典型的にはアルキル、アルケニル又はアリール基、及び二重結合によって炭素原子に結合している酸素原子からなる一価の有機ラジカルを意味する。
【0015】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、「脂環式」という用語は、化合物が1つ以上の非芳香族環部位を含み、アリール環部位を欠き、この場合に、1つ以上の非芳香族環部位の員は、炭素を含み、1つ以上の非芳香族環部位のそれぞれは、典型的には酸素、窒素、及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されることができ、1つ以上の非芳香族環部位の炭素原子員は、典型的にはアルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキルから選択される1つ以上の非アリール有機基でそれぞれ任意に置換されることができることを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、不飽和の直鎖、分岐、又は環式のラジカル、より典型的には、例えば、エテニル、n-プロペニル、及びイソ-プロペニル、及びシクロペンテニルなどの、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、不飽和の直鎖、分岐、又は環式の(C2~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、飽和の直鎖又は分岐アルキルエーテルラジカル、より典型的には、(C1~C22)アルキルエーテルラジカル、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、及びノノキシなどを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」という用語は、1つ以上のアルコキシ置換基、より典型的には、メトキシメチル、及びエトキシブチルなどの、(C1~C22)アルキルオキシ(C1~C6)アルキルラジカルで置換されているアルキルラジカルを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、及びn-ヘキサデシルなどの、一価の直鎖又は分岐の飽和(C1~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、メチレン、ポリメチレン、並びに、例えば、ジメチレン、テトラメチレン、及び2-メチルトリメチレンなどのアルキル置換ポリメチレンラジカルを含む二価の非環式飽和炭化水ラジカルを意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、エチニル及びブチニルなどの、ラジカル当たり1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の直鎖又は分岐の、(C2~C22)炭化水素ラジカルを指す。
【0022】
有機化合物又はラジカルに関して本明細書で使用される場合、「無水物」という用語は、同じ酸素原子に結合した2つのアシル基を有する化合物又はラジカルであり、この場合に、2つのアシル基のそれぞれの炭素原子は、連結して、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、フタル酸無水物などの環式構造を形成することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語は、1つ以上のアリール基で置換されたアルキル基、より典型的には、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、及びトリフェニルメチルなどの1つ以上の(C6~C14)アリール置換基で置換された(C1~C18)アルキルを意味する。
【0024】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、「芳香族」という用語は、1つ以上のアリール部位を含む有機化合物が、典型的には、酸素、窒素、及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意に中断されることができ、1つ以上のアリール部位の1つ以上の炭素原子は、典型的にはアルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキルから選択される1つ以上の有機基で任意に置換されることができることを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、非局在化共役π系を有し、nが0又は正の整数である4n+2に等しいいくつかのπ電子を有する環式の共平面5又は6員有機基を意味し、環員のそれぞれがベンゼンなどの炭素原子である化合物、1つ以上の環員が、典型的には、例えば、フラン、ピリジン、イミダゾール、及びチオフェン、並びにナフタレン、アントラセン、及びフルオレンなどの縮合環系などの、酸素、窒素及び硫黄原子から選択される、ヘテロ原子である化合物を含み、この場合に、環炭素の1つ以上は、典型的には、アルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アリール、アルカリール、ハロ基、例えば、フェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、ノニルフェニル、クロロフェニル、又はトリクロロメチルフェニルなどから選択される1つ以上の有機基で置換されることができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、有機基に関する専門用語「(Cn~Cm)」(式中、n及びmはそれぞれ整数である)は、基が、1基当たりn個の炭素原子からm個の炭素原子までを含み得ることを示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「硬化する」及び「硬化」という用語は、硬化性樹脂組成物の重合及び/又は架橋を含み得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「硬化剤」という用語は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性樹脂成分の重合を開始できる1つ以上の種を提供するために解離できる化合物又は錯体を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」という用語は、単一の環式環、及び環炭素の間の少なくとも炭素-炭素二重結合を有する環式(C5~C22)アルケニルラジカルを指し、これは、例えば、シクロペント-3-エニル、シクロヘキサ-2-エニル、及びシクロオクト-3-エニルなどの1~3のアルキル基で任意に置換されることができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、例えば、シクロペンチル、シクロオクチル、及びアダマンタニルなどの1つ以上の環式アルキル環を含む飽和(C5~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「エポキシド基」は、隣接エポキシ基、即ち、1,2-エポキシ基を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「繊維」という用語は、当業者に知られているその通常の意味を有し、粒子、フレーク、ウィスカー、短繊維、連続繊維、シート、撚糸、及びこれらの組み合わせのいずれかの形態をとることができる複合材料の強化に適合した1つ以上の繊維材料を含み得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「繊維プリフォーム」という専門用語は、樹脂注入プロセスにおいて液体硬化性樹脂組成物を受け入れるように構成された繊維、繊維の層、布地又は布地撚りの層の組立体を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ、又はヨード、より典型的にはクロロを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、クロロエチル及びトリクロロメチルなどの1つ以上のハロ置換基で置換されているアルキルラジカルを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキルラジカル、より典型的には、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシデシルなどの、1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、(C1~C22)アルキルラジカルを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ルイス酸:ルイス塩基錯体」という用語は、BF3、ZnCl2、SnCl4、FeCl3、及びAlCl3、YbCl3、BCl3、AlF3、
などのルイス酸の、ルイス塩基との結合により形成された分子、例えば、同時に脱離基を失わない、脂肪族又は芳香族アミン、アセトニトリル、ジエチルエーテラート、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロチオフェン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「非芳香族エポキシ化合物」という用語は、分子当たり少なくとも1つ、より典型的には少なくとも2つのエポキシド基を含む非芳香族化合物を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「非芳香族オキセタン化合物」は、分子当たり少なくとも1つの、いくつかの実施形態では2つのオキセタノ基を含む非芳香族化合物を意味する。
【0040】
本明細書で言及される場合、「非捲縮布」又は「NCF」は、一方向繊維の2つ以上の撚りからなる布地を意味し、その繊維は、縫合された、製編された、編組された、不連続の繊維、又は接着剤で結合された細断された繊維マットであり得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「オキシアルキレン」は、例えば、オキシメチレン及びオキシジメチレンなどのオキシ基で置換されたアルキレンラジカルを含む二価ラジカルを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「プリプレグ」という用語は、硬化性樹脂組成物で完全に又は部分的に事前含浸された繊維強化材、又は樹脂硬化性樹脂組成物で事前含浸された繊維の織られたトウから作製された布地を意味する。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物、又はこれらの混合物を含む。一実施形態では、樹脂組成物は、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物を含む。一実施形態では、樹脂組成物は、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物を含む。一実施形態では、樹脂組成物は、少なくとも1つの非芳香族エポキシ化合物と、少なくとも1つの非芳香族オキセタン化合物とを含む。
【0044】
適切な脂環式エポキシ化合物には、例えば、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルとエチレングリコールとのコポリマー、ジシクロペンタジエンジエポキシド、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9-ジエポキシリモネン(リモネンジオキシド)、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)スピロ[1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン]、アリルシクロペンテニルエーテルのジエポキシド、1,4-シクロヘキサジエンジエポキシド、1,4-シクロヘキサンメタノールジグリジカルエーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジグリシダール1,2-シクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3-(オキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビス(2,3-エポキシプロピル)シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボキシレート、4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ポリ[オキシ(オキシラニル-1,2-シクロヘキサンジイル)]α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-エーテル、ビ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンなどの既知の化合物を含む、分子当たり2つ以上のエポキシド基を有する脂環式化合物が含まれる。
【0045】
一実施形態では、脂環式エポキシ化合物は、例えば、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルとエチレングリコールのコポリマー、4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及び3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどの既知の化合物を含む、脂環式エポキシ化合物のエポキシド基の少なくとも1つが、脂環式エポキシ化合物の脂肪族環の2つの炭素原子員のそれぞれに結合した酸素原子を含む、1つ以上の脂環式エポキシ化合物を含む。
【0046】
適切な脂肪族エポキシ化合物は、例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル、エポキシ化ポリブタジエン、二酸化ジペンテン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビス[2-(2-ブトキシエチレンオキシ)エチル)エチル]アジペート、ヘキサンジオールジグリシダルエーテル、及び水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂などの既知の化合物を含む、分子当たり2つ以上のエポキシド基を有する脂肪族化合物である。
【0047】
適切な非芳香族オキセタン化合物には、例えば、3-エチル-3[[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル]オキセタン、オキセタン-3-メタノール、3,3-ビス-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-ブチル-3-メチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3,3-ジプロピルオキセタン、及び3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタンなどの既知の化合物が含まれる。
【0048】
一実施形態では、本発明の樹脂組成物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂肪族環を含む脂環式エポキシ化合物から選択される1つ以上の非芳香族エポキシ化合物を含む。
【0049】
適切な非芳香族エポキシ化合物及び非芳香族オキセタン化合物には、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキサンメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation)及びARADITE CY 179(Huntsman Advanced Materials))、ビ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(CELLOXIDE(商標)8010(Daicel Corporation))、ポリ[オキシ(オキシラニル-1,2-シクロヘキサンジイル)]、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-エーテルと2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(EHPE 3150(Daicel))の3:1混合物などの既知の市販の化合物が含まれる。
【0050】
一実施形態では、本発明の硬化性樹脂組成物は、100重量部(「pbw」)の樹脂組成物に基づいて、20~95pbw、より典型的には30~80pbw、更により典型的には50~80pbwの1つ以上の非芳香族エポキシ化合物を含む。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、非芳香族樹脂成分に加えて、100pbwの樹脂組成物に基づいて、50pbwまで、より典型的には30pbwまで、更により典型的には1~20pbwまでの合計した量の1つ以上の芳香族エポキシ化合物及び/又はモノエポキシド化合物を更に含み得る。
【0052】
適切な芳香族エポキシ化合物には、分子当たり2つ以上のエポキシド基を有する芳香族化合物が含まれ、例えば、フェノール及びポリフェノールのポリグリシジルエーテル、例えば、ジグリシジルレゾルシノール、1,2,2-テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、又は1,1,1-トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールC(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン)、及びビスフェノールS(4,4’-スルホニルジフェノール)のジグリシダルエーテル、これらのオリゴマーなど、フルオレン環含有エポキシ化合物、ナフタレン環含有エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン改質フェノール性エポキシ化合物、エポキシ化ノボラック化合物、及びエポキシ化クレゾールノボラック化合物、N,N-ジグリシダールアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、トリグリシジルアミノフェノール(TGAP)、トリグリシジルアミノクレゾール、又はテトラグリシジルキシレンジアミンなどのアミンのポリグリシド付加物、或いはトリグリシダルアミノフェノールなどのアミノアルコール、ジグリシダルフタレートなどのポリカルボン酸のポリグリシド酸付加物、トリグリシダルシアヌレートなどのポリグリシダルシアヌレート、スチレングリシダルメタクリレートなどのグリシダル(メタ)アクリレートと共重合可能なビニル化合物のコポリマーなどの既知の化合物を含む。
【0053】
適切なモノエポキシド化合物には、分子当たり1つのエポキシド基を有する芳香族、脂肪族、及び脂環式化合物が含まれ、例えば、3,3’-ビス(クロロメチル)オキサシクロブタンなどの飽和脂環式モノエポキシド、イソブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロドデカジエンモノエポキシド、3,4-エポキシ-1-ブテンなどのオレフィンモノエポキシドなどの既知の化合物が含まれる。
【0054】
一実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールAのジグリシダールエーテル及びそのオリゴマー、ビスフェノールF及びそのオリゴマー、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、及びフェノールノボラックエポキシ樹脂から選択される1つ以上の芳香族エポキシ化合物を含む。
【0055】
適切な芳香族エポキシ化合物には、ビスフェノールAのジグリシダルエーテル(EPON(商標)828、(Hexion)、及びALRALDITE(商標)LY1556(Huntsman Advanced Materials))、及びエポキシノボラック樹脂(ARALDITE(商標)ECN 1138エポキシノボラック樹脂(Huntsman Advanced Materials))などの既知の市販の化合物が含まれる。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤として1つ以上のルイス酸:ルイス塩基錯体を含む。適切なルイス酸:ルイス塩基錯体は、例えば、BCl3:アミン錯体、BF3:アミン錯体、例えば、BF3:モノエチルアミン、BF3:プロピルアミン、BF3:イソプロピルアミン、BF3:ベンジルアミン、BF3:クロロベンジルアミン、BF3:トリメチルアミン、BF3:ピリジン、BF3:THF、AlCl3:THF、AlCl3:アセトニトリル、及びZnCl2:THFなどの錯体を含む。
【0057】
一実施形態では、硬化剤は、BF3:モノエチルアミン、BF3:ベンジルアミン、BF3:イソプロピルアミンから選択される1つ以上のルイス酸:ルイス塩基錯体を含む。
【0058】
適切なルイス酸:ルイス塩基錯体は、既知の化合物であり、BCl3:アミン錯体(DY9577錯体(Huntsman))、BF3:MEA錯体(Ato-Tech)、ベンジルアミンとイソプロピルアミンで錯体化されたBF3、(ANCHOR(商標)1040錯体(Evonik Industries))、イソプロピルアミン付加物で錯体化されたBF3(ANCHOR(商標)1115錯体(Evonik Industries))、クロロベンジルアミンで錯体化されたBF3(ANCHOR(商標)1170錯体(Evonik Industries))、及びBF3:Cl3錯体(OMNICURE(商標)BC-120錯体(CVC Thermoset Specialties)など、市販されている。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物は、1つ以上のルイス酸:ルイス塩基錯体を、硬化性樹脂組成物が意図される硬化条件に曝されたときに硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化を開始するのに有効な量で含む。
【0060】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、100pbwの樹脂組成物に基づいて、1~20pbw、より典型的には1~16pbw、更により典型的には2~12pbwの1つ以上のルイス酸:ルイス塩基錯体を含む。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤として1つ以上の無水物化合物を含む。
【0062】
硬化促進剤として適切な無水物化合物には、例えば、脂肪族無水物、例えば、ドデセニルコハク酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、脂環式無水物、例えば、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、芳香族無水物、例えば、フタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、及びポリマー無水物が含まれる。
【0063】
一実施形態では、無水物は、約500g/モル以上の分子量を有し、分子当たり1つ以上の無水物官能基を有する無水物ポリマー又はオリゴマーである。
【0064】
無水物ポリマーは、典型的には、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される、モル当たり1,000グラムを超える、より典型的には2,000~20,000g/モル、更により典型的には3,000~10,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0065】
一実施形態では、無水物ポリマーは、50℃以下、より典型的には40℃以下の融点を有する。一実施形態では、無水物ポリマーは、硬化性樹脂組成物の樹脂化合物成分に可溶性又は混和性である。
【0066】
無水物ポリマーは、典型的には、ポリマーの100モルパーセントに基づいて、1~50、より典型的には5~30、更により典型的には5~15モルパーセントの無水物官能基を含む。無水物ポリマーは、典型的には、ポリマーの1000グラムに基づいて、0.01~20、より典型的には0.1~10、更により典型的には0.5~5のモル当量の無水物を含む。
【0067】
一実施形態では、ポリマー無水物は、1つ以上のペンダント環式無水物基が基材ポリマー鎖(ポリマー「主鎖」)にグラフトされている無水物グラフトコポリマーであり、ポリマー主鎖は、合成ホモポリマーなどの合成ポリマー、或いはランダム、交互、又はブロックコポリマーなどのコポリマー、或いは天然油などの天然ポリマーであり得る。
【0068】
適切な無水物グラフトコポリマーには、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、シトラコン酸無水物、又はイタコン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸の1つ以上の無水物が、ポリマー主鎖にグラフトされて、無水物グラフトコポリマーのペンダント環式無水物基を形成するものが含まれる。
【0069】
適切なポリマー主鎖は、ポリブタジエン、ポリ(イソプレン)、ポリ(クロロプレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン)コポリマー、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)トリブロックポリマー、及び(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)ブロックコポリマーなどのポリジエンホモポリマー及びコポリマー、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(プロピレン-アクリル酸)コポリマー、ポリ(プロピレン-スチレン)コポリマーなどのポリアルキレンホモポリマー及びコポリマーであり得る。
【0070】
また、天然油は、無水物基でグラフト化することができ、例えば、ココナッツ油、パーム油、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油を含む。
【0071】
一実施形態では、無水物ポリマーは、
(a)1つ以上の環式無水物官能性モノマー単位と、
(b)1つ以上の第2のモノマー単位であって、そのそれぞれに環式無水物官能基が存在しないモノマー単位とを含むランダム、交互、又はブロックコポリマーである。
【0072】
無水物ポリマーの環式無水物官能性モノマー単位を得るのに適した不飽和ジカルボン酸無水物には、不飽和、より典型的にはモノ不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、エチルマレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、ベンジルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、ジベンジルマレイン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、及びこれらの混合物、より典型的には、マレイン酸無水物又はコハク酸無水物が含まれる。
【0073】
第2のモノマー単位を得るのに適した不飽和モノマーは、無水物ポリマーの環式無水物モノマー単位が由来する不飽和ジカルボン酸無水物と共重合可能な、分子当たり1つ以上の不飽和部位を有する有機化合物を含み、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンなどのオレフィンコモノマー、スチレン、クロロスチレンなどのビニル官能性コモノマー、並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸とそのエステルなどを含む。
【0074】
適切な無水物ポリマーは、既知の方法で合成されることができ、例えば、ポリプロピレン-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリブタジエン-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(プロピレン-co-アクリル酸)-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(プロピレン-スチレン)-グラフト-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(スチレン-co-マレイン酸無水物)コポリマー、ポリ(スチレン-co-ブタジエン-co-マレイン酸無水物)コポリマー、ポリ(スチレン-co-イタコン酸無水物)ポリマー、及びポリ(スチレン-co-シトラコン酸無水物)を含む。
【0075】
適切な無水物ポリマーには、マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA 75ポリマー無水物(Evonik Industries)、RICON(商標)184MA6マレイン化ブタジエンスチレンコポリマー(Cray Valley USA、LLC))などの既知の市販の化合物が含まれる。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物が意図される硬化条件に曝されたときに、1つ以上の無水物化合物を欠く他の類似の硬化性樹脂組成物と比較して硬化性樹脂組成物の硬化を促進するのに有効な量の1つ以上の無水物化合物を含む。
【0077】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、100pbwの樹脂組成物に基づいて、1~50pbw、より典型的には5~45pbw、更により典型的には10~40pbwの1つ以上の無水物化合物を含む。
【0078】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、モル当量のエポキシド基及び/又はオキセタン基当たり、0超から、又は0.005から、又は0.01から、又は0.015から、又は0.02からのモル当量の無水物基、モル当量のエポキシド基及び/又はオキセタン基当たり、0.5未満まで、又は0.4まで、又は0.3まで、又は0.25まで、又は0.2までのモル当量の無水物基を含む。
【0079】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、モル当量のエポキシド基及び/又はオキセタン基当たり、0超から0.5未満、又は0.005~0.4、又は0.01~0.3、又は0.015~0.3、又は0.02~0.25、又は0.02~0.2のモル当量の無水物基を含む。
【0080】
一実施形態では、本発明の硬化性樹脂組成物は、100pbwの樹脂組成物のルイス酸:ルイス塩基錯体成分当たり20~50pbw、より典型的には20~40pbw、更により典型的には25~35pbwの1つ以上の無水物化合物を含む。
【0081】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、約1:2まで、典型的には1:25~1:2、より典型的には1:20~1:5、更により典型的には1:10~1:5の、モル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の、樹脂組成物の樹脂成分のモル当量のエポキシド及び/又はオキセタノ基に対する比の量のルイス酸:ルイス塩基複合体を含む。
【0082】
一実施形態では、硬化性樹脂組成物は、約1:1まで、典型的には1:20~1:1、より典型的には1:15~1:3、更により典型的には1:5~1:10の、無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する比の量のポリマー無水物を含む。
【0083】
一実施形態では、本発明の硬化性樹脂組成物は、
100pbwの樹脂組成物当たり20~95pbwの1つ以上の非芳香族エポキシ化合物と、
任意で、100pbwの樹脂組成物当たり50pbwまでの合計した量の1つ以上の芳香族エポキシ化合物及び/又はモノエポキシド化合物と、
1:25~1:2、より典型的には1:20~1:5、更により典型的には1:15~1:5の、モル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の、樹脂組成物の樹脂成分のモル当量のエポキシド及び/又はオキセタノ基に対する比の量のルイス:酸ルイス塩基錯体と、
約1:1まで、典型的には1:20~1:1、より典型的には1:15~1:3、更により典型的には1:5~1:10の、モル当量の無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する比の量のポリマー無水物と、を含む。
【0084】
一実施形態では、ルイス:酸ルイス塩基錯体の量は、樹脂組成物の樹脂成分のモル当量のエポキシド及び/又はオキセタノ基に対するモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の1:20~1:5の比であり、ポリマー無水物の量は、モル当量の無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する、約1:1まで、典型的には1:20~1:1の比であり、これにより、モル当量のエポキシド基当たり、0.2まで、より典型的には0.0025~0.2の量のモル当量の無水物基をもたらす。
【0085】
一実施形態では、ルイス:酸ルイス塩基錯体の量は、樹脂組成物の樹脂成分のモル当量のエポキシド及び/又はオキセタノ基に対するモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体の1:15~1:3の比であり、ポリマー無水物の量は、モル当量の無水物基の、樹脂組成物のモル当量のルイス酸:ルイス塩基錯体成分に対する、約1:3まで、典型的には1:15~1:3の比であり、これにより、モル当量のエポキシド基当たり、0.167まで、より典型的には0.0027~0.167の量のモル当量の無水物基をもたらす。
【0086】
一実施形態では、本発明の樹脂組成物は、好ましくは硬化時間を大幅に延長する又は硬化された樹脂組成物の特性を大幅に変更することなく、樹脂組成物の初期硬化速度を遅くするのに有効な量の窒素塩基化合物を更に含む。窒素塩基化合物の添加は、本発明の樹脂組成物の硬化速度の微調整を可能にする。
【0087】
適切な窒素塩基化合物には、イミダゾール化合物が含まれ、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、及び4,5-ビス[(2-シアノエトキシ)メチル]-2-フェニル-1H-イミダゾール-1-プロピオノニトリル、及びこれらの混合物が含まれ、非イミダゾール窒素塩基には、脂肪族、芳香族及びアルキルアリールアミン、特にジメチルベンジルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミンを含む3級脂肪族アミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、及びこれらの混合物が含まれる。
【0088】
硬化時間を大幅に延長する又は硬化された樹脂組成物の特性を大幅に変更することなく、樹脂組成物の初期硬化速度を遅くするのに有効なイミダゾール化合物の量は、窒素塩基化合物とルイス酸:ルイス塩基錯体の100pbwの合計量当たり、典型的には6pbwまで、より典型的には0.1超~5pbw、より典型的には0.1~4pbwである。
【0089】
未硬化組成物又は硬化した複合構造体に特定の特性を付与するために、硬化性樹脂組成物に1つ以上の添加剤を添加することができる。添加剤は、硬化した又は硬化性樹脂組成物の機械的、レオロジー的、電気的、光学的、化学的、難燃性及び/又は熱的特性の1つ以上に影響を与えるために添加されることができる。こうした添加剤の例としては、難燃剤、紫外線(UV)安定剤、無機充填剤、導電性粒子又はフレーク、流動調整剤、熱促進剤(thermal enhancer)、密度調整剤、強化添加剤(コアシェル粒子、熱可塑性樹脂など)、及び短繊維(無機又は有機)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0090】
一実施形態では、組成物の無水物成分がポリマー無水物を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、ニート(neat)の樹脂として硬化した場合、即ち、強化繊維がない場合、任意の他の強化添加剤が実質的に存在しない場合に(ASTM D-5045-99によるノッチ付き衝撃試験で測定される)破壊エネルギーの向上が示すように、ポリマー無水成分を欠いている類似の組成物と比較して向上した靭性を示す。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物の実施形態は、典型的には、100℃~180℃の温度で20分以下の時間で硬化した後、ASTM D-5045-99によるノッチ付き衝撃試験で測定される、メガパスカル・メートル1/2(MPa・m1/2)で、0.3以上、より典型的には0.5以上の破壊靭性(KIC)を示す。
【0091】
一実施形態では、本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤が最初に組み合わされると、組成物は、50ポアズ以下の粘度を示し、4~7時間、約20℃~30℃の温度、より典型的には室温で組成物を反応させた後、組成物は50,000~300,000ポアズの粘度を示す。
【0092】
硬化性樹脂組成物は、硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料、即ち、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維を含む材料におけるマトリックスとして有用である。
【0093】
硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料の繊維成分として使用するのに適した繊維には、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維、例えば、Eガラス繊維、セラミック繊維、例えば、炭化ケイ素繊維、合成ポリマー繊維、例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、及びポリベンゾオキサゾール繊維が含まれる。こうした繊維の単層又は断面の面積重量は、50~600g/m2で変動し得る。一実施形態では、繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は炭素繊維とガラス繊維の両方を含む。一実施形態では、繊維は、例えば、3.5ギガパスカル(「GPa」)以上の引張り強度及び200GPa以上の引張り弾性率を示す炭素繊維等の炭素繊維を含む。適切な炭素繊維は、例えば、Tenax E STS40 F13 24k繊維(Toho Tenax Co.,Ltd.)及びTorayca T800S繊維(Toray)などの市販されている公知の材料である。
【0094】
本発明の硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料は、典型的には、100pbwの硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料に基づいて、50~80pbw、より典型的には60~70pbwの繊維を含む。
【0095】
硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料は、繊維を本発明の硬化性樹脂組成物と組み合わせることによって作製される。一実施形態では、繊維は、本発明の硬化性樹脂組成物で予備含浸されて、プリプレグを形成する。別の実施形態では、繊維は、フィラメント巻き付けプロセスによって本発明の硬化性樹脂組成物で予備含浸される。別の実施形態では、繊維プリフォームは、樹脂注入プロセスを使用して硬化性樹脂組成物で含浸される。それぞれの場合において、硬化性樹脂組成物は、選択された手法に適合するように硬化性繊維強化樹脂マトリックス複合材料の特性を調整するために、例えば、材料からの樹脂組成物の流れを最小限にするために、及び/又は選択された粘着性又は剛性を有する材料を提供するために配合及び/又は部分的に硬化される。
【0096】
本発明では、樹脂、ルイス酸:ルイス塩基錯体、及び無水物促進剤は、硬化性樹脂組成物を繊維と組み合わせる前に一緒に混合される。樹脂を予熱して、非混合及び混合粘度を適宜調整することができる。次いで、混合樹脂組成物を、静的又は動的混合ノズルのいずれかを介して分配し、混合硬化性樹脂組成物を繊維トウに直接塗布することができる。
【0097】
樹脂、ルイス酸:ルイス塩基錯体、無水物促進剤、及び任意で窒素塩基化合物の混合比を広範囲に調整できるため、混合樹脂の特性を調整できる。また、最終硬化前のBステージ化(B-staged)材料の粘着性と柔軟性の量は、樹脂組成物のエポキシド又はオキセタン官能性樹脂成分、ルイス酸:ルイス塩基錯体、及び無水物促進剤の相対量を調整することによって制御できる。
【0098】
プリプレグでの使用に適した硬化性樹脂組成物の実施形態は、典型的には、硬化性樹脂組成物の粘度を典型的には約5,000~30,000Pas増大するのに有効な量で樹脂組成物に溶解する熱可塑性ポリマーを更に含む。一実施形態では、プリプレグは、熱可塑性ポリマーと、ルイス酸:ルイス塩基及び無水物成分以外の組成物の成分を、30℃~150℃、より典型的には50℃~100℃の温度でホットメルトブレンドし、続いて、必要に応じてブレンドした樹脂とポリマーを冷却した後、ブレンドした樹脂とポリマーが約40℃~70℃の温度であるときに、ブレンドした樹脂とポリマーにルイス酸:ルイス塩基と無水物成分を加え、次いですぐに又は後の段階で一方向の繊維又は布地に統合できるフィルムとして樹脂組成物を押し出すことにより作製される。代替の実施形態では、プリプレグは、硬化性樹脂組成物の成分を溶媒に溶解し、溶液を繊維又は布地に塗布し、続いて蒸発により溶媒を除去することによって作製される。熱又は溶媒は、硬化性樹脂組成物の粘度を下げて繊維の含浸を可能にするために使用される。硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグを冷却すると、又は別の実施形態では、溶媒を除去すると、硬化性樹脂組成物の粘度が増加し、プリプレグからの樹脂組成物のいかなる流れも最小限に抑えられ、得られるプリプレグはより容易に扱われることができる。
【0099】
プリプレグ用途での使用に適した本発明の硬化性樹脂組成物の1つの実施形態では、硬化性樹脂組成物は、100pbwの硬化性樹脂組成物当たり、5~50pbw、より典型的には10~40pbwの合計した量の樹脂組成物に可溶する1つ以上の熱可塑性ポリマーを含む。適切な可溶性熱可塑性ポリマーには、硬化性樹脂組成物に可溶であり、例えば、150℃までの高温で安定性を維持する熱可塑性ポリマーが含まれ、例えば、ポリスルホンポリマー、ポリエーテルスルホンポリマー、ポリエーテルエーテルスルホンポリマー、ポリエーテルイミドポリマー、ポリフェニレンオキシドポリマー、アクリロニトリルとブタジエンのコポリマー、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーと他の化合物との付加物及びこれらの混合物が含まれる。
【0100】
典型的には、プリプレグの層は、積み重ね配列で互いに隣接して配置される。特定の実施形態では、スタック内のプリプレグ、又は「レイアップ(layup)」は、互いに対して選択された方向で配置されることができる。プリプレグは、選択された方向からのこれらの相対的な動きを抑制するために、糸材料と一緒に任意に縫い合わされることができる。
【0101】
レイアップは、完全に含浸されたプリプレグ、及び部分的に含浸されたプリプレグの任意の組み合わせを含み得る。プリプレグレイアップは、典型的には、手動レイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、及び/又は自動繊維配置(AFP)によって製造される。
【0102】
プリプレグ手法に代わるものでは、複合材料の繊維は、フィラメント巻き付けにおいて本発明の硬化性樹脂組成物で含浸され、繊維のトウは、1列のプロセスを使用して含浸され、その後、マンドレルに沿って前後に移動する巻き付けヘッドを介して回転マンドレルの周りに巻き付けられる。この技術により、様々な繊維の方向、及びその結果として、繊維の様々な噛み合わせ角度を構築することができる。
【0103】
フィラメント巻き付け用途では、低粘度の樹脂組成物が必要とされるため、プリプレグでの使用に樹脂組成物を適合させるために使用される熱可塑性ポリマー成分が省略される。本発明によるフィラメント巻き付け繊維強化樹脂マトリックス複合材料は、樹脂組成物を周囲温度で4~8時間反応させることにより「Bステージ化」することができ、その間に樹脂組成物は、材料からの樹脂組成物の流れを最小限に抑え、フィラメント巻き付け材料の扱いを容易にする粘度、典型的には約50,000~300,000ポアズに達する。マンドレルからのフィラメント巻き付け材料の除去により、プリプレグ材料の上述の使用と同様の方法で基材として使用できる「ブランク」が作成される。
【0104】
典型的には、レイアップは、加熱、真空引き、及び加圧の1つ以上の作用の下で統合され、これにより、硬化性樹脂組成物は、レイアップのボイドスペースからガスを追い出し、プリプレグにおける繊維の間の空隙空間とプリプレグ層の間の空隙空間を占める、理想的には完全に充填するように流動する。
【0105】
一実施形態では、プリプレグのレイアップは、真空バッグにて統合される。この手法では、硬化性のプリプレグのレイアップをツールと接触させて配置し、次いで不浸透性の膜で囲む。ツールは、比較的平面の表面、湾曲した表面、又は他の三次元の構成を有することができる。一実施形態では、非含浸ガラス繊維シートなどの発散層が、表面発散のためにレイアップの水平面の少なくとも1つに隣接して配置される。必要に応じて、典型的には、封止テープを使用して、ツールと膜の間にほぼ真空の気密シールを作成する。レイアップの縁に隣接して1つ以上のダムを配置して、レイアップの外側の硬化性樹脂組成物の流れを抑制する、又はガスの流れを改善することができる。穴あき剥離フィルム、例えば、穴あきポリエステルフィルムは、発散層とプリプレグのレイアップとの間に挿入することができ、また、固体剥離フィルム、例えば、(穴が開いていない)ポリエステルフィルムは、セットアップからの統合された複合材料の取り外しを容易にするために、プリプレグのレイアップとツールの間に挿入されることができる。
【0106】
囲まれた容積が排気され、レイアップは加熱されて固化する。加熱は、真空バッグのセットアップを、オーブンに又は圧力下に、典型的には、オートクレーブにて約90ポンド/平方インチのゲージ圧下に置くことによって適用できる。加熱は、マトリックスの粘度を低下させ、マトリックス樹脂組成物が流動することを可能にする圧力差を誘発するために、例えば、オートクレーブで圧力を用いて、又は例えば、オーブンで圧力なしで行うことができる。続いて、統合されたレイアップを同じオートクレーブ又はオーブン内でより高い高温で硬化させ、最終的な複合部品を作製する。
【0107】
代替の実施形態では、統合工程を必要とせずに、レイアップ又はマンドレルからの除去の直後に、硬化性複合材料を、例えば、上記の温度条件下及び約90ポンド/平方インチの圧力下でプレス硬化されることができる。例えば、本発明によるフィラメント巻き付けによって作製された硬化性複合材料は、硬化した複合部品を作製するために急速プレス成形プロセスで使用されることができる。これは、一般的には2つの段階で行われる。樹脂が繊維トウに塗布された後、トウは、上記のようなフィラメント巻き付けプロセスでマンドレルの周りに巻き付けられる。適切な巻き付けパターン、多層の厚さが達成されたら、含浸された織り構造体をマンドレルから取り外し平らに置く。硬化の最初の部分は、プリプレグ状のブランクが得られるように樹脂の粘度を上げるための樹脂のBステージ化であり、即ち、樹脂の低い流動、保護フィルムへの低い樹脂トランスファー、及び硬化性プリプレグ複合材料と同様のある量の柔軟性と粘着性の保持を示す硬化性複合材料である。
【0108】
一実施形態では、プリプレグ及びフィラメント巻き付けブランク材料は、-18℃未満、より典型的には-25~-15℃の温度で保存された場合、1~30日、より典型的には1~10日の貯蔵寿命を有する。
【0109】
フィラメント巻き付け材料は、Bステージ化の前に、又はより典型的には、Bステージ化の後の扱いの困難さ、及び繊維の配置と方向の歪みを回避するために、最終部品に硬化されることができる。Bステージ化は、硬化性フィラメント巻き付け複合材料を、硬化性樹脂組成物に応じて、硬化性樹脂組成物の粘度を、所望のプリプレグのような特性を有するブランクが得られるところまで増加させることができる、時間の長さ及び温度で反応させることを含む。例えば、本出願の実施例1の組成物は、周囲温度で5~8時間後に適切なプリプレグ状状態にBステージ化することができる。
【0110】
プリプレグ又はフィラメント巻き付けブランクは、高い硬化変換率まで硬化することができ、これにより、プレス(圧縮成形)、オートクレーブで、又は真空バッグオーブン法により、硬化繊維強化樹脂マトリックス複合品を形成することができる。硬化サイクルは、組成物、並びにプレス又は他の機器の温度に依存する。例えば、本出願の実施例1の組成物は、145℃で5分の硬化サイクルを使用してプレス硬化されることができる。
【0111】
一実施形態では、繊維プリフォームは、樹脂注入プロセスを使用して硬化性樹脂組成物で含浸される。
【0112】
繊維プリフォームは、例えば、連続繊維:一方向連続繊維テープのプライ、3次元織布、不織の非連続繊維マット、又は非捲縮布を含み得る。
【0113】
一実施形態では、従来の樹脂注入技術を使用して繊維プリフォームに本発明の硬化性樹脂組成物を注入し、繊維強化樹脂マトリックス複合材料を形成し、その後、20分以下の時間100℃~180℃の温度で硬化させて、硬化した繊維強化樹脂マトリックス複合品を形成する。
【0114】
一実施形態では、樹脂注入プロセスは、2パートの樹脂トランスファー成形(RTM)プロセス、又は高圧樹脂トランスファー成形(HP-RTM)プロセスである。RTM(及びHP-RTM)プロセスは、樹脂組成物を乾燥繊維プリフォームを含む密閉された型に導入するプロセスである。繊維プリフォームは強化繊維で構成され、連続繊維又は織布の層の形態をとることができる。繊維プリフォームは、複合部品の作製に適した所望の三次元構成に成形することができる。硬化性樹脂組成物は、低圧又は真空下に維持されている型に注入される。例えば、RTMの場合、繊維プリフォームの最適な型の充填と湿潤を得るために、50~100℃の射出温度で1ポイズ以下の粘度などの、射出温度で比較的低い粘度を示す樹脂組成物を使用することが望ましい。更に、樹脂システムは、完全に型を充填して繊維プリフォームを注入するのに十分な時間、この低い粘度を維持する必要がある。RTM処理の場合、こうした時間は、樹脂の可使時間について測定されることが多く、所定の温度で樹脂が5ポアズに到達するのに必要な時間として定義できる。型が充填された後、樹脂組成物が注入された繊維プリフォームは、適切な硬化スケジュールに従って加熱されて、硬化性樹脂組成物を硬化させる。次いで、得られた成形部品を型から取り除き、必要に応じて後硬化させ得る。
【0115】
本発明の繊維強化樹脂マトリックス複合材料は、成形及び硬化されて、例えば、航空宇宙、自動車、石油及びガス田、風力タービンブレード、並びにスポーツ用品用途の部品などの硬化繊維強化樹脂マトリックス物品を形成する。
【0116】
一実施形態では、本発明の繊維強化複合材料のプリプレグ及びフィラメント巻き付けブランクは、-18℃未満、より典型的には-25~-15℃の温度で保存した場合、1~30日、より典型的には1~10日の貯蔵寿命を有し、60℃以上、より典型的には100℃~180℃、更により典型的には120℃~160℃の温度で、20分以下、より典型的には1~15分、更により典型的には1分~10分の時間で硬化でき、典型的には85%以上、より典型的には90%以上、更により典型的には95%以上の高度の硬化変換率、及び典型的には210℃以上、より典型的には215℃以上、更により典型的には220℃以上の高いガラス転移温度、並びに良好な機械的強度、及びポリマー無水物を含む実施形態では、良好な破壊靭性を示す樹脂マトリックスを有する硬化繊維強化樹脂マトリックス複合品を得る。
【実施例】
【0117】
実施例1及び比較例C1、C2、及びC3
実施例1の樹脂組成物は、75pbw(0.5769モル当量のエポキシド基)の脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbw(0.0514モル当量のBF3)のBF3:アミン錯体(BF3:アミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び25pbw(0.0356モル当量の無水物基)のポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75ポリマー(Evonik Industries))とを混合することにより作成し、エポキシド基のモル当量当たり0.0892モル当量のBF3 基とエポキシド基のモル当量当たり0.0618モル当量の無水物基との比が得られた。
【0118】
比較例C1の樹脂組成物は、6pbw(0.0343モル当量BF3)のルイス酸:ルイス塩基錯体(BF3:ベンジルアミン錯体、ANCHOR(商標)1040錯体(Evonik Industries))を組み合わせた、100pbw(0.7692モル当量のエポキシド基)の脂環式樹脂3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))を混合することにより作成した。
【0119】
比較例C2の樹脂組成物は、75pbw(0.5769モル当量のエポキシド基)の脂環式樹脂3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、25pbw(0.0579モル当量の無水物基)のポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75(Evonik Industries))とを混合することにより作成した。
【0120】
比較例C3の樹脂組成物は、75pbw(0.5769モル当量のエポキシド基)の脂環式樹脂(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、1.6pbw(0.0098モル当量のイミダゾール基)のルイス塩基(1-(シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール)及び25pbw(0.0356モル当量の無水物基)のポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75(Evonik Industries))とを混合することにより作成した。
【0121】
実施例1及び比較例C1、C2、及びC3の樹脂組成物の試料を作成し、以下の表1に示される硬化条件に従って硬化した。
【0122】
硬化中の発熱は、10℃/分の勾配速度でTA Instruments Q2000を使用して示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定し、DSCの結果のプロットを、本発明の実施例1の樹脂組成物及び比較例C1~C3の樹脂組成物の硬化中に測定される、熱流(W/g)対温度として表1に示す。
【0123】
硬化変換率の度合いは、DSC測定によって決定された残留エンタルピー法によって測定した。
【0124】
実施例1及び比較例1の硬化組成物のそれぞれのガラス転移温度は、TA Instruments Q800動的機械分析機器を使用した動的機械分析によって測定した。比較例2の組成物のガラス転移温度は、1Hzの周波数及び50ミクロンの振幅で5℃/分の温度勾配中、貯蔵弾性率の増加の開始によって測定した。比較例3の組成物のガラス転移温度は測定されなかった。表1に示されている値は、米国特許第5,962,586号明細書で、TMAによって測定される251℃として、200℃で少なくとも30分間硬化した試料について報告された。
【0125】
実施例1の樹脂組成物は、145℃で、5分間硬化した場合、ASTM D-5045-99によるノッチ付き衝撃試験で測定される、0.6MPa・m1/2の破壊靭性を示した。
【0126】
DSCピーク発熱の開始温度、硬化変換率(%)、及び最小ガラス転移温度(℃)として、硬化条件と結果を以下の表Iに示す。
【0127】
【0128】
表1に示す結果は、実施例1の樹脂組成物が、硬化された樹脂の特性を損なうことなく、比較例C1、C2、又はC3よりも速く硬化することを示している。実施例1の樹脂組成物は、比較例C1、C2、又はC3よりもより容易に、即ちより迅速且つ低温で硬化し、比較例C1、C2、及びC3と同様の硬化変換率で、比較例C1、C2、及びC3と同様のガラス転移温度を有するポリマーを形成した。
【0129】
実施例2
実施例1の樹脂組成物を、フィラメント巻き付けプロセスを用いて炭素繊維に塗布した。プリプレグを部分的に硬化して、必要な剛性と粘着性レベルを得た。最後に、プリプレグの組立体をプレス硬化して、自動車用途の強化炭素複合材料を作製した。
【0130】
実施例3~8
実施例3の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化スチレン-ブタジエンコポリマー(RICON(商標)184MA6(Cray Valley USA LLC))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0892モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.0263モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0131】
実施例4の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化ポリブタジエン(RICON(商標)131MA20(Cray Valley USA LLC))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0892モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.0875モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0132】
実施例5の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能基化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)EP MA120(Evonik Industries))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0892モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.1004モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0133】
実施例6の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び41pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)EP MA120(Evonik Industries))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0892当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.1647モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0134】
実施例7の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び16.78pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)EP MA120(Evonik Industries))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0892モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.0674モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0135】
実施例8の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:イソプロピルアミン錯体(ANCHOR(商標)1115錯体(Air Products))及び41pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能基化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)EP MA120(Evonik Industries))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.1229モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.1004モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0136】
実施例3~8の組成物はそれぞれ、145℃で5分間硬化した。
【0137】
硬化中の発熱は、10℃/分の勾配速度でTA instruments Q2000を使用してDSCにより測定し、DSCの結果のプロットは、実施例1、5、6、7及び8並びに比較例C1の樹脂組成物の硬化中に測定される、熱流(W/g)対温度のプロットとして
図2に示す。
【0138】
実施例5、7、及び8の硬化した組成物のそれぞれのガラス転移温度は、TA Instruments Q800動的機械分析機器を使用した動的機械分析によって測定した。
【0139】
使用したBF3:アミン錯体、BF3:アミン錯体の反応基のエポキシド基に対するモル比、無水物基のエポキシド基に対するモル比、DSCピーク発熱の開始温度(℃)、及び硬化した組成物の最小ガラス転移温度(℃)を、実施例3~8の組成物について以下の表2に示す。
【0140】
【0141】
実施例9
実施例9の樹脂組成物は、75pbwの脂環式エポキシ化合物(ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(CY184、Huntsman))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))及び25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75(Evonik))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.1153モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.0799モル当量の無水物基の反応基のモル比が得られた。
【0142】
比較例C4の樹脂組成物は、100pbwの脂環式エポキシ化合物(ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(CY184、Huntsman))と、3pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0288モル当量のBF3の比が得られた。
【0143】
実施例9及び比較例C4の組成物のそれぞれを、145℃で5分間硬化した。
【0144】
硬化中の発熱は、10℃/分の勾配速度でTA Instruments Q2000を使用してDSCによって測定し、DSCの結果のプロットは、実施例9及び比較例C4の樹脂組成物の硬化中に測定される、熱流(W/g)対温度のプロットとして
図3に示される。
【0145】
実施例9及び比較例C4の硬化組成物のそれぞれのガラス転移温度は、TA Instruments Q800動的機械分析機器を使用した動的機械分析によって測定した。
【0146】
BF3:アミン錯体の反応性基のエポキシド基に対するモル比、無水物基のエポキシド基に対するモル比、DSCピーク発熱の開始温度(℃)、及び硬化した組成物の最小ガラス転移温度(℃)を、以下の表3の実施例9及び比較例C4について示す。
【0147】
【0148】
実施例10~15
実施例11~13の樹脂組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75(Evonik Industries))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))と0.0225、0.0450、又は0.0900pbwのイミダゾール化合物(2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール-1-プロパンニトリル)とを混合することにより作成し、これにより、エポキシド基のモル当量当たり0.0889、0.0887、0.0883モル当量のBF3とエポキシド基のモル当量当たり0.0618モル当量の無水物基の反応基のモル比、並びに以下の表4に示されるイミダゾール化合物の量が得られた。
【0149】
実施例14及び15の組成物は、75pbwの脂環式化合物3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CELLOXIDE(商標)2021P樹脂(Daicel Corporation))と、25pbwのポリマー無水物(マレイン酸無水物官能化1,4-シスポリブタジエン(POLYVEST(商標)MA75(Evonik Industries))と、9pbwのBF3アミン錯体(BF3:ベンジルアミン錯体(ANCHOR(商標)1040錯体(Air Products))と以下の表4に示される量の3級アミン(ベンジルジメチルアミン)とを混合することにより作成した。
【0150】
実施例1、11、12及び13の組成物の試料は、それぞれ130℃、140℃及び145℃で硬化した。実施例14及び15の組成物の試料は、それぞれ145℃で硬化した。
【0151】
硬化中の発熱は、10℃/分の勾配速度でTA instruments Q2000を使用してDSCにより測定され、DSCの結果のプロットは、本発明の実施例1及び12の樹脂組成物の硬化中の示差走査熱量測定によって測定される、W/g)対温度のプロットとして
図4に示す。
【0152】
弾性率と貯蔵弾性率の間のクロスオーバーによって示される、実施例10~15の組成物のそれぞれのゲル化時間は、ThermoMars40レオメーターを使用して、周波数0.1Hz、歪み1、及び周囲温度から150℃まで2℃/分の温度掃引で40mm直径プレートツープレート(plate to plate)法を使用して測定した。
【0153】
実施例1及び11~15の硬化組成物のそれぞれのガラス転移温度は、TA Instruments Q800動的機械分析機器を使用した動的機械分析によって測定した。
【0154】
実施例1及び11~15のそれぞれの組成物のイミダゾールの量、130℃、140℃、及び145℃でのゲル化時間、並びにガラス転移温度(℃)を、以下の表4に示す。
【0155】