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特許7242683バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行うための方法及び管理システム並びにバッテリパック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行うための方法及び管理システム並びにバッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20230313BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230313BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230313BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230313BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230313BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230313BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230313BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20230313BHJP
【FI】
H02J7/04
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020537656
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2018097110
(87)【国際公開番号】W WO2019134891
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】102018200144.8
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ベーレント,ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】ライエフスキー,ミコラ
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104697(JP,A)
【文献】特開2013-041448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/02
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 58/12
B60L 58/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパック(5)における複数のバッテリセル(2)の制御及び監視を行う方法であって、
少なくとも1つの検出ユニット(20)が、各バッテリセル(2)から状態変数のデータセットを検出して選択ユニット(32)に送信し、
前記選択ユニット(32)が、前記状態変数の複数のデータセットから、状態変数の仮想データセットを構成する個々の状態変数を選択し、
シミュレーションユニット(34)が、仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリセルのシミュレーションをした仮想セル(8)のモデルを生成し、
データ処理ユニット(36)が、前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から、前記バッテリパック(5)における複数のバッテリセル(2)を充電するための充電電流(I)の限界値を計算する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記選択ユニット(32)が、前記状態変数の当該複数のデータセットから、前記仮想セル(8)の起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数を選択する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、エネルギー予測ユニット(37)が、前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から前記バッテリセル(2)に貯蔵可能な電気エネルギーを予測する、方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法であって、出力予測ユニット(38)が、前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から、前記バッテリセル(2)から取り出すことができる最大電力を予測する、方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法であって、
前記バッテリーセル(2)の状態変数の各データセットが、少なくとも
前記バッテリーセル(2)の電圧、
前記バッテリーセル(2)の温度、
前記バッテリーセル(2)のアノード(11)の過電圧、
前記バッテリーセル(2)のカソード(12)の過電圧、
前記バッテリーセル(2)の当該アノード(11)の充電状態、及び
前記バッテリーセル(2)の当該カソード(12)の充電状態を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法であって、
前記仮想セル(8)の状態変数の当該仮想データセットが、少なくとも
前記バッテリーセル(2)の電圧、
前記バッテリーセル(2)の温度、
前記バッテリーセル(2)のアノード(11)の過電圧、
前記バッテリーセル(2)のカソード(12)の過電圧、
前記バッテリーセル(2)の当該アノード(11)の充電状態、及び
前記バッテリーセル(2)の当該カソード(12)の充電状態を含む、方法。
【請求項7】
バッテリパック(5)における複数のバッテリセル(2)の制御及び監視を行う管理システム(30)であって、
送信されてきた状態変数の複数のデータセットから、状態変数の仮想データセットを構成する状態変数を選択する選択ユニット(32)と、
仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリセルのシミュレーションをした仮想セル(8)のモデルを生成するシミュレーションユニット(34)と、
前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から、前記バッテリパック(5)のバッテリセル(2)を充電するための充電電流(I)の限界値を計算するデータ処理ユニット(36)と
を備える管理システム(30)。
【請求項8】
請求項7に記載の管理システム(30)であって、前記選択ユニット(32)は、前記状態変数の当該複数のデータセットから、前記仮想セル(8)の起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数を選択する、管理システム(30)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の管理システム(30)であって、前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から、前記バッテリセル(2)に貯蔵可能な電気エネルギーを予測するエネルギー予測ユニット(37)をさらに備える管理システム(30)。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれか1項に記載の管理システム(30)であって、前記仮想セル(8)の仮想データセットの当該選択された状態変数から、前記バッテリセル(2)から取り出すことができる最大電力を予測する出力予測ユニット(38)をさらに備える管理システム(30)。
【請求項11】
バッテリパック(5)であって、
請求項7から10までのいずれか1項に記載の管理システム(30)と、
互いに直列に接続された複数のバッテリセル(2)と、
各バッテリセル(2)の当該状態変数の1つのデータセットを検出し、該データセットを前記管理システム(30)の当該選択ユニット(32)に送信する少なくとも1つの検出ユニット(20)と
を備えるバッテリパック(5)。
【請求項12】
請求項11に記載の少なくとも1つのバッテリパック(5)を備えた電気自動車における、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックのバッテリセルの状態変数を検出し、状態変数からバッテリパックのバッテリセルを充電するための充電電流の限界値を計算することによって、バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行う方法に関する。本発明は、バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行うための管理システムにも関する。さらに本発明は、本発明による管理システムと複数のバッテリセルとを含むバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
将来的に、特に電気自動車においてバッテリシステムがますます使用されることが明らかであり、このようなバッテリシステムには、信頼性、性能、安全性、及び耐用年数に関して高い要求が課される。このような用途では、リチウムイオンバッテリセルを有するバッテリシステムが特に適している。リチウムイオンバッテリセルは、とりわけ、高いエネルギー密度、熱安定性、及び極めて低い自己放電により優れている。リチウムイオンバッテリセルには、高い機能安全性要件がある。バッテリセルの不適切な動作は、発火及び/又は脱ガスまでの発熱反応を引き起こす可能性がある。
【0003】
バッテリセルは、負極端子に接続されたアノードと、正極端子に接続されたカソードとを有する。そのような複数のバッテリセルが、特に互いに直列に電気的に接続され、バッテリモジュール又はバッテリパックを構成する。このような複数のバッテリモジュール又はバッテリパックは相互接続され、電気自動車のバッテリシステムを構成する。バッテリパックは、バッテリセルの動作を監視し、バッテリセルが耐用年数に関して安全で持続的に動作するようにバッテリセルの制御を行うバッテリ管理システムを含む。
【0004】
このことを実現するために、バッテリ管理システムは、バッテリパックの各バッテリセルについて現在の動作状態を決定する。動作状態は、様々なパラメータ、例えば、充電状態、劣化状態、内部抵抗、キャパシタンス、温度、電圧、電極の過電圧、及びバッテリセル内のリチウム濃度で記述することができる。動作状態をできるだけ正確に決定するために、複雑な電気化学的モデルの記述が使用される。
【0005】
バッテリセルの動作状態に基づいて、例えばバッテリセルの様々な動作状態用の電流制限値といったバッテリパックのパラメータがバッテリ管理システムの他の機能で計算される。前記パラメータは、バッテリ管理システムから電気自動車の中央制御装置に通信される。
【0006】
複数のエネルギー貯蔵装置を含む電気自動車用エネルギー貯蔵システムが、米国特許出願公開第2013/154572号から知られている。状態情報、特に電流、総電圧、セル電圧、及び温度を検出する複数の状態情報検出装置が提供されている。当該エネルギー貯蔵システムを動作させる場合には、当該検出された状態情報のうちの最も劣悪な場合の値が考慮される。
【0007】
米国特許出願公開第2015/0258897号から、複数のバッテリセルを含む電気自動車用のバッテリシステムが知られている。例えば電流及び総電圧などのデータを検出する検出ユニットが提供されている。さらに充電状態などのデータが計算される。これらのデータに基づいて最も劣悪なバッテリセルが特定される。
【発明の概要】
【0008】
発明の開示
バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行う方法が提案される。このバッテリパックは、特に電気自動車で使用されることを想定している。このような電気自動車には、純粋に電気的に駆動される車両、ハイブリッド車、及びプラグインハイブリッド車が含まれてもよい。バッテリパックは、携帯電話、タブレットPC、ノートブック、又は電動工具などの家電製品にも使用することができる。バッテリパックのバッテリセルは、好ましくは、互いに直列に電気的に接続されている。
【0009】
本発明による方法によれば、少なくとも1つの検出ユニットによって、各バッテリセルから状態変数のデータセットが検出されて選択ユニットに送信される。各バッテリセルに検出ユニットが割り当て可能である。複数のバッテリセルの状態変数のデータセットを検出する検出ユニットが設けられてもよい。状態変数のデータセットからバッテリセルの状態を決定することができる。
【0010】
次いで、選択ユニットによって、当該送信された状態変数の複数のデータセットから個々の状態変数が選択される。当該選択された状態変数は、状態変数の仮想データセットを構成する。したがって、仮想データセットの当該選択された状態変数は、様々なバッテリセルの状態変数のデータセットに由来するものとすることができる。
【0011】
次に、シミュレーションユニットによって、仮想データセットの当該選択された状態変数から仮想セルのモデルが生成される。よって、仮想セルは、以前に生成された状態変数の仮想データセットを用いてバッテリセルのシミュレーションをしたものである。状態変数の仮想データセットから仮想セルの状態を決定することができる。
【0012】
次いで、データ処理ユニットによって、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリパックのバッテリセルを充電するための充電電流の限界値が計算される。このようにして計算された充電電流の限界値は、例えば電気自動車の中央制御装置に送信される。よって、中央制御装置は、バッテリパックのバッテリセルを充電する場合に、この限界値に基づいて充電電流を制限することができる。
【0013】
バッテリセルの状態に依っては、過剰な充電電流がバッテリセルを損傷させることがある。したがって、バッテリセルの各々には、当該バッテリセルを損傷させない許容充電電流のみの充電が許される。当該許容充電電流はそれぞれバッテリセルの状態に依存する。バッテリセルの状態が劣悪であればあるほど、許容充電電流は小さくなる。バッテリセルの状態が良好であればあるほど、許容充電電流は大きくなる。
【0014】
本発明によれば、バッテリパックのバッテリセルを充電するための充電電流の限界値は、仮想セルの当該選択された状態変数から1回だけ計算される。バッテリパックのいくつかの、又は全てのバッテリセルについて許容充電電流を別個に計算する必要はない。バッテリパックのバッテリセルが互いに直列に電気的に接続されている場合には、常に同じ充電電流が全てのバッテリセルに流れる。
【0015】
好ましくは、前記選択ユニットは、状態変数の複数のデータセットから、仮想セルの起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数を選択する。したがって、仮想セルの状態は、バッテリパック内のいずれのバッテリセルの状態よりも良好とはいえない。これにより、そのように計算された充電電流の限界値がバッテリパック内のいずれのバッテリセルの許容充電電流を超えないことが保証される。よって、充電電流の最小限界値が計算されている。
【0016】
本発明の有利な実施形態によれば、エネルギー予測ユニットによって、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリパックのバッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーがさらに予測される。このように予測された、バッテリセルに蓄積可能な電気エネルギーは、例えば、電気自動車の中央制御装置に送信される。中央制御装置は、例えば電気自動車の到達範囲を決定する場合に、そのように予測された、バッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーを考慮することができる。
【0017】
いずれか1つのバッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーは、バッテリセルの状態に依存する。バッテリセルの状態が劣悪であればあるほど、バッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーは小さくなる。バッテリセルの状態が良好であればあるほど、バッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーは大きくなる。
【0018】
好ましくは、選択ユニットによって、状態変数の複数のデータセットから、仮想セルの起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数が選択される。したがって、仮想セルの状態は、バッテリパック内のいずれのバッテリセルの状態よりも良好とはいえない。これにより、バッテリセルに貯蔵可能な予測電気エネルギーが当該バッテリセルに実際に貯蔵可能な電気エネルギー超えないことが保証される。
【0019】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、出力予測ユニットによって、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリパックのバッテリセルから取り出すことができる最大電力がさらに予測される。次いで、バッテリセルから取り出すことができた最大電力は、例えば、電気自動車の中央制御装置に送信される。中央制御装置は、例えば、バッテリパックの放電電流を制限するために、そのように予測された、バッテリセルから取り出すことができる最大電力を考慮することができる。
【0020】
いずれか1つのバッテリセルから取り出すことができる電力は、バッテリセルの状態に依存している。バッテリセルの状態が劣悪であればあるほど、バッテリセルから取り出すことができる電力は小さくなる。バッテリセルの状態が良好であればあるほど、バッテリセルから取り出すことができる電力は大きくなる。
【0021】
好ましくは、選択ユニットによって、状態変数の複数のデータセットから、仮想セルの起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数が選択される。したがって、仮想セルの状態は、バッテリパック内のいずれのバッテリセルの状態よりも良好とはいえない。これにより、バッテリセルから取り出すことができる予測電力が当該バッテリセルから実際に取り出すことができる電力を超えないことが保証される。
【0022】
有利には、バッテリセルの状態変数の各データセットは、少なくとも、バッテリセルの電圧、バッテリセルの温度、バッテリセルのアノードの過電圧、バッテリセルのカソードの過電圧、バッテリセルのアノードの充電状態、及びバッテリセルのカソードの充電状態を含む。前述の状態変数からバッテリセルの状態を十分な精度で決定することができる。
【0023】
有利には、仮想セルの状態変数の仮想データセットは、少なくとも、バッテリセルの電圧、バッテリセルの温度、バッテリセルのアノードの過電圧、バッテリセルのカソードの過電圧、バッテリセルのアノードの充電状態、及びバッテリセルのカソードの充電状態を含む。前述の状態変数からバッテリセルの状態を十分な精度で決定することができる。
【0024】
バッテリパックにおける複数のバッテリセルの制御及び監視を行うための管理システムも提案される。本発明による管理システムは、送信されてきた状態変数の複数のデータセットから個々の状態変数を選択する選択ユニットを含む。当該選択された状態変数は、状態変数の仮想データセットを構成する。
【0025】
好ましくは、検出ユニットが、前記バッテリパックの各バッテリセルから状態変数のデータセットを検出し、当該検出された状態変数のデータセットを前記管理システムの選択ユニットに送信する。
【0026】
本発明による管理システムは、仮想データセットの当該選択された状態変数から仮想セルのモデルを生成するシミュレーションユニットも含む。仮想セルは、当該生成された状態変数の仮想データセットを用いてバッテリセルのシミュレーションをしたものである。
【0027】
本発明による管理システムは、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリパックのバッテリセルを充電するための充電電流の限界値を計算するデータ処理ユニットをさらに含む。このようにして計算された充電電流の限界値は、電気自動車の中央制御装置に送信され得るので、中央制御装置は、バッテリパックのバッテリセルを充電する場合に、この限界値に基づいて充電電流を制限することができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、選択ユニットは、状態変数の複数のデータセットから、仮想セルの起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数を選択する。
【0029】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、管理システムは、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーを予測するエネルギー予測ユニットをさらに含む。このように予測された、バッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーは、電気自動車の中央制御装置に送信され得、中央制御装置は、例えば、電気自動車の到達範囲を決定する場合に、そのようなバッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーを考慮することができる。
【0030】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、管理システムは、仮想セルの仮想データセットの当該選択された状態変数から、バッテリセルから取り出すことができる最大電力を予測する出力予測ユニットをさらに含む。このように予測された、バッテリセルから取り出すことができる最大電力は電気自動車の中央制御装置に送信され得、中央制御装置は、例えばバッテリパックの放電電流を制限するために、そのように予測された、バッテリセルから取り出すことができる最大電力を考慮することができる。
【0031】
バッテリパックも提案される。このバッテリパックは、本発明による管理システムと、互いに直列に接続された複数のバッテリセルと、各バッテリセルの状態変数のデータセットを検出して管理システムの選択ユニットに当該データセットを送信する少なくとも1つの検出ユニットとを備える。
【0032】
各バッテリセルに個別の検出ユニットが割り当て可能である。ただし、複数のバッテリセルの状態変数のデータセットを検出する検出ユニットが設けられてもよい。
【0033】
本発明による方法は、本発明による少なくとも1つのバッテリパックを含む電気自動車において有利に使用される。電気自動車は、とりわけ、純粋に電気的に駆動される自動車、ハイブリッド車、及びプラグインハイブリッド車であってもよい。
【0034】
発明の利点
本発明は、バッテリパックのバッテリセルの安全で持続可能な動作のために重要なパラメータを、比較的簡単な方法で、比較的低い計算能力を用いて計算又は予測することを可能にする。前記パラメータは、とりわけ、バッテリセルを充電するための充電電流の限界値、バッテリセルから取り出すことができる最大電力、並びにバッテリセルに貯蔵可能な電気エネルギーを含む。前記パラメータを各バッテリセルについて別々に計算もしくは予測し、続いて、互いにリンクさせる必要なしに、前記パラメータを1度だけ計算又は予測すればよい。したがって、管理システムにおける計算能力及び所要メモリが有利に低減される。バッテリパックにおける全てのバッテリセルの安全で持続可能な動作が可能となるように上記パラメータが常に計算もしくは予測されることが保証される。
【0035】
図面及び以下の説明に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】バッテリパックを示す概略図である。
図2】バッテリパック5の管理システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の本発明の実施形態の説明では、同一又は類似の要素には同一の参照符号を付し、これらの要素については個別に繰り返し説明しない。図面は、本発明の主題を概略的にのみ表ものである。
【0038】
図1は、特に電気自動車に使用することが想定されているバッテリパック5の概略図である。バッテリパック5は、管理システム30を備えており、このケースでは、管理システム30は、選択ユニット32、シミュレーションユニット34及びデータ処理ユニット36を有する。
【0039】
バッテリパック5は、互いに直列に電気的に接続された複数のバッテリセル2をさらに含む。各バッテリセル2は、それぞれアノード11及びカソード12を有する電極ユニットを備える。電極ユニットのアノード11は、バッテリセル2の負極集電体15に接続されている。電極ユニットのカソード12は、バッテリセル2の正極集電体16に接続されている。、アノード11とカソード12との間にはセパレータ18が配置されている。バッテリパック5における複数のバッテリセル2を直列に接続するために、あるバッテリセル2の負極集電体15は、隣接するバッテリセル2の正極集電体16と電気的に接続されている。
【0040】
ここで図面では、バッテリパック5の複数のバッテリセル2には充電電流Iが流れる。複数のバッテリセル2が電気的に直列に接続されていることにより、同じ充電電流Iが複数のバッテリセル2の各々に流れる。
【0041】
このケースでは、バッテリパック5は複数の検出ユニット20も含む。各バッテリセル2には検出ユニット20が割り当てられている。複数の検出ユニット20の各々は、当該割り当てられたバッテリセル2の状態変数のデータセットを検出する。あるいは、複数のバッテリセル2又は全てのバッテリセル2の状態変数のデータセットを検出する検出ユニット20が設けられてもよい。
【0042】
複数のバッテリセル2と当該バッテリセル2に割り当てられた検出ユニット20とは、バッテリユニット7を構成する。したがって、バッテリパック5は管理システム30とバッテリユニット7とを備えている。
【0043】
このケースでは、いずれか1つのバッテリセル2の状態変数の各データセットは、正極集電体16と負極集電体15との間に位置するバッテリセル2の電圧を含む。さらに、状態変数のデータセットの各々は、バッテリセル2の温度、アノード11の過電圧、カソード12の過電圧、アノード11の充電状態、及びカソード12の充電状態を含む。データセットは、さらなる状態変数を含むこともできる。
【0044】
バッテリセル2の検出された状態変数のデータセットは、検出ユニット20から管理システム30の選択ユニット32に送信される。したがって、選択ユニット32には、バッテリパック5の各バッテリセル2について、上述の状態変数を含むデータセットが提供されている。
【0045】
検出ユニット20はバッテリセル2の近傍に配置されることができ、管理システム30に接続されてもよい。ただし、検出ユニット20は、管理システム30に組み込まれてもよく、複数のバッテリセル2の異なるサイズを測定するための対応するセンサに接続されてもよい。
【0046】
管理システム30の選択ユニット32によって、バッテリセル2の状態変数のデータセットから個々の状態変数が選択される。そして、当該選択された状態変数は状態変数の仮想データセットを構成する。この仮想データセットは上述の状態変数も含む。仮想データセットの当該選択された状態変数は、このケースでは全て単一のバッテリセル2に由来するものでもよい。ただし、一般には、仮想データセットの当該選択された状態変数は、様々なバッテリセル2の状態変数のデータセットに由来するものである。
【0047】
選択ユニット32によって、バッテリセル2の状態変数の複数のデータセットから、それぞれ、起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数が選択される。例えば、全てのデータセットから、バッテリセル2の最高電圧、バッテリセル2の最高温度、バッテリセル2のアノード11での最低過電圧、バッテリセル2のカソード12での最高過電圧、バッテリセル2のアノード11での最高充電状態、及びバッテリセル2のカソード12での最低充電状態が選択される。
【0048】
管理システム30のシミュレーションユニット34によって、仮想データセットの当該選択された状態変数から仮想セル8のモデルが生成される。仮想セル8は、以前に生成された状態変数の仮想データセットを用いてバッテリセル2のシミュレーションをしたものである。したがって、仮想セル8は、それぞれ起こり得る最も劣悪な状態を表す状態変数を有する。
【0049】
管理システム30のデータ処理ユニット36によって、仮想セル8の当該選択された状態変数から、バッテリパック5のバッテリセル2を充電するための充電電流Iの限界値が計算される。このようにして計算された充電電流Iの制限値は、電気自動車の中央制御装置40に送信される。したがって、中央制御装置40は、バッテリパック5のバッテリセル2を充電する場合にこの限界値に基づいて充電電流Iを制限することができる。
【0050】
図2は、バッテリパック5の管理システム30の概略図を示す。図1に示す管理システム30とは異なり、図2に示す管理システム30は、エネルギー予測ユニット37と出力予測ユニット38とをさらに備える。選択ユニット32、シミュレーションユニット34及びデータ処理ユニット36は変更されていない。このケースでは、選択ユニット32は、単一の検出ユニット20とのみ接続されており、全てのバッテリセル2の状態変数のデータセットを検出し送信する。
【0051】
仮想セル8の当該選択された状態変数からは、エネルギー予測ユニット37によって、バッテリパック5のバッテリセル2に貯蔵可能な電気エネルギーがさらに予測される。このように予測された、バッテリセル2に貯蔵可能な電気エネルギーは、同様に、電気自動車の中央制御装置40に送信される。したがって、中央制御装置40は、電気自動車の到達範囲を決定する場合に、そのように予測された、バッテリセル2に貯蔵可能な電気エネルギーを考慮することができる。
【0052】
仮想セル8の当該選択された状態変数からは、出力予測ユニット38によって、バッテリパック5のバッテリセル2から取り出すことができる最大電力がさらに予測される。このように予測された、バッテリセル2から取り出すことができる最大電力も電気自動車の中央制御装置40に送信される。したがって、中央制御装置40は、例えば電気自動車が加速した場合にバッテリパック5の放電電流を制限するために、そのように予測された、バッテリセル2から取り出すことができる最大電力を考慮することができる。
【0053】
本発明は、ここに例として記載された実施形態及びこれらに強調された態様に制限されるものではない。むしろ、特許請求の範囲で特定される範囲において、専門知識の枠内で多数の変更が可能である。
図1
図2