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特許7242694エポキシ配合物のための脂環式アミン:エポキシ系のための新規な硬化剤
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  • 特許-エポキシ配合物のための脂環式アミン:エポキシ系のための新規な硬化剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】エポキシ配合物のための脂環式アミン:エポキシ系のための新規な硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20230313BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230313BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230313BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C08G59/50
C08L63/00 C
C08K7/02
C08G59/20
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020546398
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055237
(87)【国際公開番号】W WO2019170563
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/638,413
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】プリテッシュ ジー. パテル
(72)【発明者】
【氏名】ガミニ アナンダ ヴェディジ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ディビアス
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-122754(JP,A)
【文献】特開2010-047574(JP,A)
【文献】特開2017-119812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
(a)エポキシ樹脂成分とアミン系硬化剤成分とを組み合わせる工程であって、前記アミン系硬化剤成分は、以下の構造式:
【化1】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化2】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、工程;ならびに
(b)前記アミン系硬化剤成分と前記エポキシ樹脂成分とを反応させて、硬化エポキシ樹脂組成物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のアミン成分が、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を含有する第3のアミン成分をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および(b)を、第1の周囲温度で実施し;かつ
工程(a)および(b)の間、前記第1の周囲温度よりも175℃を超えない最高内部温度を維持することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の前にエポキシ樹脂組成物を強化繊維に適用することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記強化繊維が、織布もしくは非捲縮布、不織布ウェブもしくはマット、繊維スタンド、連続もしくは不連続繊維で形成されたステープル繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記強化繊維が、繊維ガラス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ナノ複合材繊維、ポリアラミド繊維、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、アラミドケブラー繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高密度および低密度ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維、天然繊維、生分解性繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
エポキシ樹脂組成物が、樹脂注入、真空アシスト樹脂転写成形(VARTM)、樹脂転写成形(RTM)、フィラメント巻取り(FW)、圧縮成形(CM)、ウェット/ハンドレイアップ、真空バギング、射出成形、プリプレグ、繊維含浸、鋳造、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスにより作製される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
以下の構造式:
【化3】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化4】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、エポキシ硬化剤。
【請求項11】
前記第1のアミン成分が、前記エポキシ硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、請求項10記載のエポキシ硬化剤。
【請求項12】
第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を含有する第3のアミン成分をさらに含む、請求項10記載のエポキシ硬化剤。
【請求項13】
前記第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、請求項12記載のエポキシ硬化剤。
【請求項14】
エポキシ樹脂成分;および
アミン系硬化剤成分
の反応生成物を含む組成物であって、前記アミン系硬化剤成分が、以下の構造式:
【化5】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化6】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、組成物。
【請求項15】
前記第1のアミン成分が、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を含有する第3のアミン成分をさらに含む、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
前記第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記エポキシ樹脂成分が、前記組成物の1重量%~99重量%を構成する、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記エポキシ樹脂成分が、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
エポキシ樹脂組成物が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ノボラック樹脂、およびそれらの組み合わせのグリシジルエーテルの群から選択される少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項21】
前記エポキシ樹脂成分が、以下の構造式:
【化7】
[式中、mは0~25であり、かつRは二価の炭化水素基である]の少なくとも1種の二価フェノールを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項22】
前記エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラート;ジシクロペンタジエンジエポキシド、3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項23】
フィラメント巻き管および継手、フィラメント巻き圧力容器、低圧および高圧の管および継手、低圧および高圧の容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、石油およびガスの浮力モジュール、リグ、坑井プラグ、現場硬化パイプ(CIPP)、構造用接着剤および積層体、封止剤、半導体、耐食性コーティング、複合材ライナーの製造、および他の適切なエポキシ含有用途のための、請求項14記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
脂環式アミンは、熱硬化された構造的複合材用途のためのエポキシ硬化剤としてよく使用されている。硬化剤として使用されるアミンのクラスは、硬化物の最終性能を達成するために不可欠である。第一級または第二級の各アミンクラスは、完全な硬化を達成するために特定の温度で硬化される。硬化温度は、Tで示される最終的な使用温度を決定する。一般に、エポキシ樹脂は、主に第一級および第二級アミンで硬化される。第三級アミンは一般に、第一級および第二級アミンと組み合わせて共硬化剤または触媒として使用されている。
【0002】
エポキシ樹脂系は、複合材を含むさまざまな構造部品の製造に使用されている。エポキシ樹脂系から製造するために評価されている物品の例は、複合材パイプ、圧力容器、自動車部品および風車ブレードを含む。このような部品の製造は、特に複雑な製造プロセスが使用される場合に、効果的な製造のための多くの要件を含む。これらのプロセスは、樹脂注入、樹脂トランスファー成形、フィラメント巻取りおよび大型鋳造を含むが、これらに限定されない。当該技術分野における1つの必要性は、物品のより厚い部分における物品のエポキシ樹脂系硬化中の発熱放出を低減することである。なぜなら、このような部分では、硬化中に放出された発熱を、物品から容易に追い出すことができないからである。硬化プロセス中に過度の温度に達した場合、「高温スポット」で硬化樹脂の熱劣化が発生し、製造された部品の機械的特性が失われる。
【0003】
加えて、硬化中に、複合材部品は、熱収縮を受けることがある。硬化エポキシ樹脂の熱収縮により、ゲル化時またはゲル化後に到達した最高温度からの冷却中に複合材に応力が蓄積される。応力は、場合により、物品に層間亀裂を発生させ、結果として機械的特性を失わせることがある。ゲル化点後の硬化中に到達する温度が高いほど、冷却中に物品に蓄積される応力の量が大きくなる。
【0004】
構造部品を製造するための標準的なエポキシ系は、脂肪族アミン、通常、第一級アミンの化学量論量で硬化される。系は、一般的に高い硬化発熱温度を有し、直径3インチのシリンダー内に含まれる質量100グラムの樹脂/硬化剤混合物の中心部は、70℃のオーブンで硬化させた場合に250℃以上のピーク温度に到達することが多い。あるいは、無水物ベースの硬化剤で硬化されたエポキシ系は、多くの場合、第一級アミンで硬化されたものよりも低い硬化発熱放出を有し得る。しかしながら、無水物硬化系では、通常、許容可能な硬化度および硬化特性レベルに到達するために、第一級脂肪族アミンで硬化した系よりも高い成形型温度が必要である。
【0005】
エポキシ配合物において目下使用されている脂環式アミンは、短時間で完全な硬化を達成するために、より高い温度(2時間>130℃)を必要とすることが知られている。このような高温で完全な硬化を達成するためのいくつかの制限は、(1)揮発性の高い成分を吸い込む可能性のある製造現場の労働者にとっては、環境への懸念や安全でない労働条件を生じさせる、エポキシ基と架橋する前のアミンの発煙/揮発性の増加、および(2)部品に高温(焼けた)スポットを生じさせ、熱可塑性ライナー(例えば、フィラメント巻き圧力容器に使用されるHDPEライナー)を溶融させる可能性がある、硬化プロセス中の過度の発熱温度(>200℃)を含む。
【0006】
より高い性能を達成するための高度な複合材では、多官能性の樹脂および硬化剤がしばしば使用されている。多官能性材料は、通常、非常に高い開始粘度を有する。配合物粘度を下げるために、熱がよく使用されている。このアプローチは反応性を高めるため、いくつかの処理上の問題を引き起こす。複合材部品が大きく厚くなるにつれて、強化材(例えば、ガラス、カーボン、ケブラー、天然繊維等)を最適に湿潤させるためには、配合物粘度を低くする必要がある。
【0007】
複合材加工のための系では、樹脂系が基材の繊維および織物を通って十分に流れるために粘度が高くなりすぎる前に、強化繊維プリフォームを樹脂で完全に湿潤させることができるように、十分に低い初期混合粘度および十分に低い含浸温度での粘度上昇率が必要となる。低い初期粘度および長いポットライフの要件は、複合材部品のサイズが大きくなるほど厳しくなる。
【0008】
国際公開第2016208618号には、エポキシ樹脂組成物を使用して得られる繊維強化複合材材料であって、該エポキシ樹脂組成物が、芳香環を含みかつ2以上の官能価を有するエポキシ樹脂およびアミン系硬化剤または酸無水物系硬化剤を含む、繊維強化複合材材料が開示されている。
【0009】
上記に照らして、従来技術の樹脂組成物と比較した場合、発熱放出を低減し、所望の硬化機械的特性を兼ね備えたエポキシ樹脂系を製造するための改良された硬化剤が当該技術分野で必要とされている。このような硬化剤は、揮発性物質放出などの望ましくない特徴があってはならない。
【0010】
発明の簡単な概要
脂環式アミン、好ましくはN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)および4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物は、脂環式アミン系硬化剤で通常見られる硬化物の機械的特性、熱的特性および化学的特性にマイナスの影響を与えることなく、エポキシ樹脂組成物のための主要な硬化剤として使用することができることが発見されている。脂環式アミンの主な欠点は、完全な硬化を実現するために、より高い硬化温度または処理温度を必要とすることである。APCHAと、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物とを主な硬化剤として使用する場合、目下の脂環式アミン硬化剤よりも有意に低い温度で完全に硬化する。試験の結果は、APCHAと、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物とを主な硬化剤として使用することで、硬化エポキシ組成物で優れた機械的特性、熱的特性および化学的性能を維持し、他の脂環式アミンの機械的特性を超えることを示している。さらに、APCHAと、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物とを含む配合物は、目下の脂環式アミン硬化剤を使用する硬化エポキシ組成物と比較して、粘度を下げ、ポットライフを長くし、低温Tを発生させ、そして硬化中の発熱を下げる。APCHAと、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物とは、望ましい特性をさらに高めるために、共硬化剤として第一級アミンと第二級アミンとを組み合わせて使用することもできる。APCHAの粘度が低いと、繊維の湿潤が促進される。APCHAと、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物とを、複合材用途(フィラメント巻き管・継手、風力ブレード、高圧容器、構造用積層体、自動車車体部品、航空宇宙等)に使用した予備的な結果は、極めて有望である。
【0011】
本発明の態様は、第1のアミン成分、第2のアミン成分、および任意で、第3のアミン成分を含むエポキシ硬化剤である。第1のアミン成分は、以下の式:
【化1】
で表される、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)である。
【0012】
第2のアミン成分は、以下の式:
【化2】
[式中、RはNHである]で表される。第2のアミン成分は、4,4’-メチレンジアニリンプロセスでオリゴマー構造の水素化生成物として形成される。第2のアミン成分は、ホルムアルデヒド、ベンゼンアミンを含むポリマー、水素化物(MPCA、CAS#135108-88-2)である。第3のアミン成分は、少なくとも1種の第一級アミン、少なくとも1種の第二級アミン、および/または少なくとも1種の第三級アミンからなる。第3のアミン成分は、好ましくは、ポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む。
【0013】
一実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも1重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも10重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも30重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも50重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも70重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、エポキシ硬化剤の少なくとも90重量%を構成する。
【0014】
本発明の別の態様は、エポキシ樹脂成分とアミン系硬化剤成分との反応生成物を含有する組成物である。アミン系硬化剤成分は、第1のアミン成分、第2のアミン成分、および任意で、第3のアミン成分を有する。第1のアミン成分は、以下の式:
【化3】
で表される、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)である。
【0015】
第2のアミン成分は、以下の式:
【化4】
[式中、RはNHである]で表される。第2のアミン成分は、4,4’-メチレンジアニリンプロセスでオリゴマー構造の水素化生成物として形成される。第2のアミン成分は、ホルムアルデヒド、ベンゼンアミンを含むポリマー、水素化物(MPCA、CAS#135108-88-2)である。第3のアミン成分は、少なくとも1種の第一級アミン、少なくとも1種の第二級アミン、および/または少なくとも1種の第三級アミンからなる。第3のアミン成分は、好ましくは、ポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む。
【0016】
一実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも10重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも30重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも50重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも70重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも90重量%を構成する。
【0017】
本発明の別の態様は、硬化エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、(a)第1のアミン成分および第2のアミン成分を含むアミン系硬化剤成分とエポキシ樹脂成分とを組み合わせる工程;および(b)アミン系硬化剤成分とエポキシ樹脂成分とを反応させて硬化エポキシ樹脂組成物を形成する工程を含む、製造方法である。第1のアミン成分は、以下の式:
【化5】
で表されるN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)であり、第2のアミン成分は、以下の式:
【化6】
[式中、RはNHである]で表される。第2のアミン成分は、4,4’-メチレンジアニリンプロセスでオリゴマー構造の水素化生成物として形成される。第2のアミン成分は、ホルムアルデヒド、ベンゼンアミンを含むポリマー、水素化物(MPCA、CAS#135108-88-2)である。一実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも10重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも30重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも50重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも70重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも90重量%を構成する。
【0018】
エポキシ樹脂とN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンと第2のアミンとの重量比は、1:0.05:0.95~1:0.95:0.05である。別の実施形態では、重量比は、1:0.95:0.05である。さらなる実施形態では、重量比は、1:0.29:0.4である。
【0019】
アミン系硬化剤成分は、さらに第3のアミン成分を含み得る。第3のアミン成分は、少なくとも1種の第一級アミン、少なくとも1種の第二級アミンおよび/または少なくとも1種の第三級アミンからなる。第3のアミン成分は、好ましくは、ポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む。
【0020】
ポリエーテルアミンは、式:HNCH(CH)CH-[OCHCH(CH)]NH(式中、xは2~70である)を有し得る。第3のアミンは、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンおよびポリエーテルアミン:HNCH(CH)CH[OCHCH(CH)]2.5NHの混合物を含み得る。
【0021】
マンニッヒ塩基、ポリアミド化合物、アミン-エポキシ付加物などの変性アミン化合物、およびそれらの組み合わせは、本明細書に記載されるN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン化合物と共に使用するための共硬化剤として使用され得る。
【0022】
エポキシ樹脂成分は、脂肪族グリコール、脂環式グリコール、トリオール、ポリオール、ポリグリコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物のポリグリシジルエーテルを含み得る。エポキシ樹脂系は、ポリオールのポリアクリレートまたはポリメタクリレートエステルをさらに含み得る。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明のエポキシ樹脂系は、少なくとも1種のエポキシ樹脂成分と第1のアミン成分および第2のアミン成分を含むアミン系硬化剤成分との反応生成物を含む。第1のアミン成分は、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)であり、第2のアミン成分は、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物である。本発明は、特に複合材用途または周囲および熱硬化コーティング用途におけるエポキシ樹脂のための硬化剤としての、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物と組み合わせたAPCHAの使用を含む。アミン系硬化剤成分は、少なくとも1種の第一級アミン、少なくとも1種の第二級アミン、および/または少なくとも1種の第三級アミンからなる第3のアミン成分をさらに含み得る。
【0024】
従来技術のエポキシ樹脂系では、アミン硬化剤は、通常、系内のエポキシ基のそれぞれについて硬化剤中に1個の反応性水素原子が存在するような量でエポキシに添加されている。これらは、化学量論量として知られている。しかしながら、本発明の一態様は、第一級および第二級アミンが、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)との共硬化剤として使用される場合、第一級および/または第二級アミンの-NH結合は、エポキシ基に対して化学量論比≦1で提供され得る。
【0025】
化学量論量の第一級および/または第二級アミンを有するエポキシ樹脂の混合物に基づく従来技術の系と比較して、本明細書に記載されたエポキシ樹脂系は、予想外にも驚くべきことに、硬化収縮時の制御を改善するとともに硬化発熱温度の低下および発熱の低減という利点をもたらし、場合により、より低い温度下でより迅速な硬化速度をもたらした(サイクル時間の短縮を可能にした)。
【0026】
本明細書で使用される、用語「アミン系硬化剤」は、アミンが、アミン硬化剤の全重量の少なくとも80(重量)%を構成する硬化剤を意味する。
【0027】
本明細書で使用される、用語「アミン」または「アミン化合物」は、アルキル基またはアリール基が、窒素に結合した1個以上の水素原子と置き換わったアンモニアの誘導体を意味する。用語「第一級アミン」または「第一級アミン化合物」は、アンモニア中の3個の水素原子の1個が、アルキル基または芳香族基(C-N結合)で置き換えられたアミンを意味する。用語「第二級アミン」または「第二級アミン化合物」は、2個の水素の代わりに2個のアルキル基またはアリール基を有するアミンを意味する。用語「第三級アミン」または「第三級アミン化合物」は、3個の水素の代わりに3個のアルキル基またはアリール基を有するアミンを意味する。1個を上回るクラスのアミン官能基を有するアミンは、1個を上回るクラスのアミン(第一級、第二級、または第三級)に従って分類され得る。
【0028】
図1を参照すると、APCHA100%を含むエポキシ樹脂組成物の40℃での粘度プロファイルは、APCHAと4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物との組み合わせを含むエポキシ樹脂組成物の粘度プロファイルと比較される。組成物の反応性の時間(分)は、APCHAの存在下で著しく増加する。
【0029】
エポキシ樹脂組成物
本発明の一態様は、エポキシ樹脂成分とN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)を含む硬化剤成分との反応生成物、および4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物を含む、エポキシ樹脂組成物を含む。以下、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる硬化剤の部分は、第1のアミン成分と呼ばれ、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物からなる硬化剤の部分は、第2のアミン成分と呼ばれる。硬化剤成分は、1種以上の第一級アミン、1種以上の第二級アミン、および/または1種以上の第三級アミンからなる第3のアミン成分をさらに含み得る。
【0030】
エポキシ樹脂組成物では、硬化剤中のエポキシ樹脂成分と第1のアミン成分との重量比は、1:0.05~1:0.95の範囲である。一実施形態では、範囲は、1:0.29である。樹脂とアミンとの当量比は、1:0.1~1:0.5である。エポキシ樹脂成分と第2のアミン成分との重量比は、1:0.05~1:0.95の範囲である。
【0031】
一実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも1重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも10重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも30%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも50重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも70重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、硬化剤の全重量の少なくとも90重量%を構成する。
【0032】
一実施形態では、エポキシ成分は、エポキシ樹脂系の全重量の30(重量)%~99(重量)%を構成する。別の実施形態では、エポキシ成分は、エポキシ樹脂系の全重量の40(重量)%~92(重量)%を構成する。別の実施形態では、エポキシ成分は、エポキシ樹脂系の全重量の50(重量)%~85(重量)%を構成する。
【0033】
エポキシ樹脂成分
エポキシ樹脂成分は、単一の樹脂からなるか、または相互に相溶性のエポキシ樹脂の混合物であってもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAおよびビスフェノールF樹脂などの二官能性エポキシを含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される多官能性エポキシ樹脂は、1分子あたり2個以上の1,2-エポキシ基を含有する化合物を表す。この種のエポキシド化合物は、当業者によく知られており、Y. Tanaka, “Synthesis and Characteristics of Epoxides”, C. A. May編, Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988年)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
エポキシ樹脂成分に使用するのに適したエポキシ樹脂の1つのクラスは、二価フェノールのグリシジルエーテルを含む、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む。例示的な例は、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(商業的にはビスフェノールAとして知られる)、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン(商業的にはビスフェノールFとして知られ、さまざまな量の2-ヒドロキシフェニル異性体を含み得る)等、またはそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルを含むが、これらに限定されない。さらに、式(1)の構造の高度な二価フェノール:
【化7】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、上記の二価フェノールなどの二価フェノールの二価炭化水素基である]も本開示において有用である。
【0035】
式(1)による材料は、二価フェノールとエピクロロヒドリンとの混合物を重合させることにより、または二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの混合物を高度にすることにより調製され得る。任意の所与の分子において、mの値は整数であるが、材料は常に混合物であり、必ずしも整数ではないmの平均値によって特徴付けることができる。0~約7のmの平均値を有するポリマー材料は、本開示の一態様で使用され得る。他の実施形態では、エポキシ成分は、2,2’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンジアニリン、m-キシレンジアニリン、ヒダントイン、およびイソシアネートのうちの1種以上からのポリグリシジルアミンであり得る。
【0036】
エポキシ樹脂成分は、脂環式(脂環の)エポキシドであり得る。適切な脂環式エポキシドの例は、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;および他の適切な脂環式エポキシドなどのジカルボン酸の脂環式エステルのジエポキシドを含む。ジカルボン酸の脂環式エステルの他の適切なジエポキシドは、例えば、特許出願公開番号の国際公開第2009/089145号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
他の脂環式エポキシドは、3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレートを含む。他の適切な3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、例えば、米国特許第2,890,194号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、エポキシ成分は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラヒドロフランまたはそれらの組み合わせからのポリオールポリグリシジルエーテルを含み得る。
【0038】
別の態様では、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルであるエポキシノボラック樹脂は、本開示に従った多官能性エポキシ樹脂として使用され得る。さらに別の態様では、少なくとも1種の多官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの高度または高分子量のバージョン、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、またはそれらの任意の組み合わせである。DGEBAの高分子量バージョンまたは誘導体は、過剰なDGEBAがビスフェノールAと反応してエポキシ末端生成物を生成する高度化プロセス(advancement process)によって調製される。かかる生成物のエポキシ当量(EEW)は、約450~3000以上の範囲である。これらの生成物は、室温で固体であるため、しばしば固体エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0039】
DGEBAまたは高度化DGEBA樹脂は、しばしばそれらの低コストと一般的に高性能の特性との組み合わせにより構造的配合物に使用される。約174~約250、より一般的には約185~約195の範囲のEEWを有する商用グレードのDGEBAは、容易に入手可能である。これらの低分子量では、エポキシ樹脂は、液体であり、しばしば液体エポキシ樹脂と呼ばれる。純粋なDGEBAは174のEEWを有するので、ほとんどのグレードの液体エポキシ樹脂は、わずかにポリマーであることが当業者に理解されている。250~450の間のEEWを有する樹脂は、一般に、高度化プロセスによって調製され、室温で固体と液体との混合物であるため、半固体エポキシ樹脂と呼ばれている。一般に、約160~約750の固形分に基づくEEWを有する多官能性樹脂は、本開示において有用である。別の態様では、多官能性エポキシ樹脂は、約170~約250の範囲のEEWを有する。
【0040】
最終用途に応じて、エポキシ樹脂成分を変更することによって、本開示の組成物の粘度を下げることは有益であり得る。少なくとも1種の多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分は、単官能性エポキシドをさらに含む。モノエポキシドの例は、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、およびフェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C~C14アルコールのグリシジルエーテル等、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。多官能性エポキシ樹脂は、溶液またはエマルション中に存在することもでき、希釈剤は、水、有機溶媒、またはそれらの混合物である。
【0041】
硬化剤成分
上記のように、硬化剤成分は、第1のアミン成分および第2のアミン成分を有するアミン系硬化剤である。第1のアミン成分は、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)からなる。第2のアミン成分は、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物からなる。硬化剤成分は、少なくとも1種の第一級アミン、少なくとも1種の第二級アミン、および/または少なくとも1種の第三級アミンからなる第3のアミン成分をさらに含み得る。
【0042】
第1のアミン成分
第1のアミン成分は、以下の式:
【化8】
によって表される、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)である。
【0043】
第2のアミン成分
第2のアミン成分は、以下の式:
【化9】
[式中、Rは、NHである]によって表される、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物である。
【0044】
第3のアミン成分
第3のアミン成分は、単一のアミンまたはアミンの混合物からなり得る。第3のアミン成分中のアミンは、第一級、第二級、および/または第三級アミンである。
【0045】
いくつかの用途では、以下のものは、第3のアミン成分として適している:ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせ。エポキシ樹脂とN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンと第2のアミンとの重量比は、1:0.05:0.95~1:0.95:0.05である。別の実施形態では、重量比は、1:0.4:0.6である。別の実施形態では、重量比は、1:0.29:0.4である。ポリアミンは、脂肪族ポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N-アミン)、N,N’-1,2-エタンジイルビス-1,3-プロパンジアミン(N-アミン)、またはジプロピレントリアミン;アリール脂肪族ポリアミン、例えば、m-キシリレンジアミン(mXDA)、またはp-キシリレンジアミン;脂環式ポリアミン、例えば、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン(PACM)、1,2-ジアミノシクロヘキサン、または4,4’-メチレンビス-(2-メチル-シクロヘキシル-アミン);芳香族ポリアミン、例えば、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、またはジアミノジフェニルスルホン(DDS);複素環式ポリアミン、例えば、N-アミノエチルピペラジン(NAEP)、または3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン;アルコキシ基がオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ-1,2-ブチレン、オキシ-1,4-ブチレンまたはそれらのコポリマーであり得るポリアルコキシポリアミン、例えば、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、1-プロパンアミン、3,3’-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコールANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α-(2-アミノメチルエチル)ω-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D-400)、トリエチレングリコールジアミンおよびオリゴマー(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-504、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-512)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α,α’-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス(ω-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-511)、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル));a-ヒドロ-w-(2-アミノメチルエトキシ)エーテルおよび2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(3:1)(JEFFAMINE(登録商標)T-403);ならびにジアミノプロピルジプロピレングリコールのうちの1種以上から選択される。JEFFAMINE(登録商標)は、Huntsman Petrochemical LLCの登録商標である。
【0046】
特に適切なポリアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン(PACM)、3,3’-ジメチルPACM(ANCAMINE(登録商標)2049)、N-アミノエチルピペラジン(NAEP)、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン,l-プロパンアミン,3,3’-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス-(ANCAMINE(登録商標)1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α-(2-アミノメチルエチル)ω-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D230、D-400)、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、トリエチレングリコールジアミン(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-504)、およびポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))α,α’-(オキシ(ジ-2,1-エタンジイル))ビス(ω-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ-511)またはそれらの混合物を含む。ANCAMINE(登録商標)は、Evonik Degussa GmbHの登録商標である。
【0047】
適切な第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン、N-ヒドロキシプロピルピペリジン、2-メチル-N-ヒドロキシエチルピペリジン、N-ヒドロキシメチルピペリジン、N-ヒドロキシエチルモルホリン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、N-シクロヘキシル-N,N-ジメチルアミン、N-シクロヘキシル-N,N-ジエチルアミン、N-シクロヘキシル-N-エチル-N-メチルアミン、N,N-ジメチル-N-(2-メチルシクロヘキシル)アミン、N,N-ジシクロヘキシル-N-メチルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-シクロヘキシル-N-メチルアミン、N-シクロヘキシル-N,N-ジプロピルアミン、N-シクロヘキシル-N,N-ジオクチルアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30、K54)、TEDA、N,N-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、およびそれらの組み合わせを含む。
【0048】
第3のアミン成分を形成するのに適した追加のアミンは、構造(3):
【化10】
[式中、Rは、CHCHCHNHであり;R、RおよびRは、独立して、HまたはCHCHCHNHであり;かつXは、CHCHまたはCHCHCHである]の少なくとも1種以上の多官能性アミンを含むポリアミンである。一実施形態では、RおよびRは、同時にHではない。
【0049】
任意選択の添加剤
複合材のためのエポキシ系配合物は、任意に、添加剤、例えば、非反応性可塑剤、充填剤、加工助剤、安定化剤、脱泡剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、および/または衝撃調整剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0050】
ポリオールの任意選択のアクリレートまたはメタクリレートエステルは、それぞれ100部のエポキシ樹脂成分に対して0部から約100部までの重量比のエステルでエポキシ樹脂成分とブレンドされる。別の実施形態では、ポリオールのアクリレートまたはメタクリレートエステルは、それぞれ100部のエポキシ樹脂成分に対して5部~約100部の重量比のエステルでエポキシ樹脂とブレンドされる。
【0051】
ナノ材料/充填剤が含まれてもよい。用語「ナノ材料」は、多壁炭素または窒化ホウ素ナノチューブ、単壁炭素、炭素または窒化ホウ素ナノ粒子、炭素または窒化ホウ素ナノファイバー、炭素または窒化ホウ素ナノロープ、炭素または窒化ホウ素ナノリボン、ナノクレー;チューブを含むナノクレー;層状無機粘土材料;タルク;カーボンブラック;セルロースファイバー;シリカ;およびアルミナを含むが、これらに限定されない。
【0052】
強化繊維もまた、エポキシ樹脂系に含まれてもよい。適切な繊維は、有機もしくは無機繊維、天然繊維または合成繊維を含み、かつ織布もしくは非捲縮織物、不織布ウェブもしくはマットの形で存在してよく、また、繊維スタンド(ロービング)の形、または連続もしくは不連続繊維で形成されたステープル繊維、例えば、繊維ガラス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ナノ複合材繊維、ポリアラミド繊維、例えば、商品名KEVLAR(登録商標)で販売されているもの、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、例えば、商品名ZYLON(登録商標)で販売されているもの、超高分子量ポリエチレン繊維、例えば、商品名SPECTRA(登録商標)で販売されているもの、高密度および低密度ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維、天然繊維、生分解性繊維、およびそれらの組み合わせの形で存在してもよい。
【0053】
これらの繊維(織布または不織布)は、標準的な含浸方法、特にフィラメント巻取り(FW)、引き抜き、シート成形コンパウンド、バルク成形コンパウンドオートクレーブ成形、樹脂注入、真空アシスト樹脂転写成形(vacuum assisted resin transfer molding)(VARTM)、樹脂転写成形(RTM)、ウェット/ハンドレイアップ、真空バギング、樹脂含浸、プリプレグ、繊維含浸、圧縮成形(CM)、ブラッシング、スプレー、またはディッピング、鋳造、射出成形、またはそれらの組み合わせのための標準的な含浸方法により、溶剤または溶剤を含まないエポキシ樹脂混合物で被覆され得る。
【0054】
硬化エポキシ組成物の形成
エポキシ樹脂組成物を形成するための硬化剤成分とエポキシ成分との混合は、2成分のエポキシ組成物のための当該技術分野で知られている任意の適切な手段によって、任意の順序で行われ得る。混合は、磁気撹拌機による混合、高せん断混合、手練り、機械的混合、または他の適切な混合方法を含むがこれらに限定されない、任意の公知の混合方法に従って達成されてもよい。硬化成分の混合は、好ましくは0~150℃、好ましくは30~60℃の範囲の温度で行われる。
【0055】
本明細書に記載された硬化性エポキシ樹脂組成物および硬化物は、他の用途の中でも、構造用および電気用の積層体、コーティング、鋳造、航空宇宙産業用の構造部品、および電子産業用の回路基板等として有用であり得る。本明細書に開示された硬化性エポキシ樹脂組成物は、また、電気ワニス、封止剤、半導体、一般成形粉、フィラメント巻き管および継手、フィラメント巻き圧力容器、低圧および高圧の管および継手、低圧および高圧の容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、石油およびガスの浮力モジュール、リグ、坑井プラグ、現場硬化パイプ(CIPP)、構造用接着剤および積層体、複合材ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティング、および他の適切なエポキシ含有製品でも使用され得る。
【0056】
硬化性エポキシ樹脂組成物は、強化繊維基材上に複合材材料を形成するために使用され得る。強化繊維基材は、1つ以上のガラス繊維材料の層であり得る。強化繊維基材とエポキシ樹脂系との接触は、ハンドラミネーション、注入プロセス、フィラメント巻取り、引き抜き、樹脂転写成形、繊維予備含浸プロセス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される適用プロセスを含み得る。
【0057】
一実施形態では、硬化エポキシ樹脂組成物の製造方法は、(a)エポキシ樹脂成分とアミン系硬化剤成分とを組み合わせる工程であって、該アミン系硬化剤成分は、以下の構造式:
【化11】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化12】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、工程;ならびに(b)少なくとも1種のアミン成分と、エポキシ樹脂とを反応させて、硬化エポキシ樹脂組成物を形成する工程を含む。方法工程(a)および(b)は、第1の周囲温度、ならびに工程(a)および(b)の間、第1の周囲温度よりも175℃を超えないように維持される最大内部温度で、オーブン内で実行され得る。第1の周囲温度は、25℃である。最大内部温度は、200℃以下である。アミン系硬化剤成分は、第一級、第二級、および/または第三級アミンからなる第3のアミン成分をさらに含み得る。一実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも10重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも30重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも50重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも70重量%を構成する。別の実施形態では、第1のアミン成分は、アミン系硬化剤の少なくとも90重量%を構成する。
【0058】
硬化した場合、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分との反応生成物は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるように2時間未満の硬化時間で70℃以上のTを示し得る。ガラス転移温度(T)は、本発明に従って100℃で2時間硬化されたエポキシド系組成物のDSCを使用して測定された。硬化した組成物20mgをアルミニウム皿で注意深く測定し、蓋で密封した。この硬化した組成物のサンプルは、25℃で開始し、250℃まで10℃/分で加熱し、冷却して2回目に250℃までスキャンするプログラムを使用して、DSC(TA Instruments QA20)により分析された。1回目のスキャンでは、残留ピーク発熱があれば、その残留ピーク発熱と反応熱が得られ、2回目のスキャンでは、ガラス転移温度が確認される。硬化時、エポキシ樹脂成分と硬化剤との反応生成物は、50℃未満の最高発熱温度または70℃のオーブンで質量100グラムの場合はそれより低い最高発熱温度を示し得る。
【0059】
エポキシ樹脂成分と硬化剤とから形成された生成物は、形成中に50℃以下の最高発熱温度を示し得る。生成物は、強化繊維基材をさらに含み得る。生成物は、さまざまな構造部品の形であり得る。生成物は、2%以上のひずみで70MPaを超える曲げ強度および40GPaを超える横引張弾性率、40MPaを超える面内層間せん断強度を示し得る。
【0060】
以下の本発明は、以下の態様を対象とする:
<1>硬化エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、
(a)エポキシ樹脂成分とアミン系硬化剤成分とを組み合わせる工程であって、該アミン系硬化剤成分は、以下の構造式:
【化13】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化14】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、工程;ならびに
(b)アミン系硬化剤成分とエポキシ樹脂成分とを反応させて、硬化エポキシ樹脂組成物を形成する工程
を含む、方法。
<2>第1のアミン成分が、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、態様<1>記載の好ましい方法。
<3>第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を有する第3のアミン成分をさらに含む、態様<1>記載の好ましい方法。
<4>第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、態様<3>記載の好ましい方法。
<5>工程(a)および(b)を、第1の周囲温度で実施し;かつ工程(a)および(b)の間、第1の周囲温度よりも175℃を超えない最高内部温度を維持することをさらに含む、態様<1>記載の好ましい方法。
<6>工程(b)の前にエポキシ樹脂組成物を強化繊維に適用することをさらに含む、態様<1>記載の好ましい方法。
<7>強化繊維が、織布もしくは非捲縮布、不織布ウェブもしくはマット、繊維スタンド、連続もしくは不連続繊維で形成されたステープル繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様<6>記載の好ましい方法。
<8>強化繊維が、繊維ガラス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ナノ複合材繊維、ポリアラミド繊維、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、アラミドケブラー繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高密度および低密度ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維、天然繊維、生分解性繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様<6>記載の好ましい方法。
<9>エポキシ樹脂組成物が、樹脂注入、真空アシスト樹脂転写成形(VARTM)、樹脂転写成形(RTM)、フィラメント巻取り(FW)、圧縮成形(CM)、ウェット/ハンドレイアップ、真空バギング、射出成形、プリプレグ、繊維含浸、鋳造、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスから作製される、態様<6>記載の好ましい方法。
<10>以下の構造式:
【化15】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化16】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、エポキシ硬化剤。
<11>第1のアミン成分が、エポキシ硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、態様<10>記載の好ましいエポキシ硬化剤。
<12>第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を有する第3のアミン成分をさらに含む、態様<10>記載の好ましいエポキシ硬化剤。
<13>第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、態様<12>記載の好ましいエポキシ硬化剤。
<14>エポキシ樹脂成分とアミン系硬化剤成分との反応生成物を含む組成物であって、該アミン系硬化剤成分が、以下の構造式:
【化17】
によって表される第1のアミン成分、および以下の構造式:
【化18】
[式中、RはNHである]によって表される第2のアミン成分を含む、組成物。
<15>第1のアミン成分が、アミン系硬化剤の少なくとも1重量%を構成する、態様<14>記載の好ましい組成物。
<16>第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンの群から選択される少なくとも1種のアミン化合物を有する第3のアミン成分をさらに含む、態様<14>記載の好ましい組成物。
<17>第3のアミン成分が、少なくとも1種のポリエーテルアミン、ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、直鎖状脂肪族アミン、脂環式アミン、多脂環式アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせを含む、態様<16>記載の好ましい組成物。
<18>エポキシ樹脂成分が、組成物の約1重量%~約99重量%を構成する、態様<14>記載の好ましい組成物。
<19>エポキシ樹脂成分が、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、態様<14>記載の好ましい組成物。
<20>エポキシ樹脂組成物が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、ノボラック樹脂、およびそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、態様<14>記載の好ましい組成物。
<21>エポキシ樹脂成分が、以下の構造式:
【化19】
[式中、mは0~25であり、Rは二価の炭化水素基である]の少なくとも1種の二価フェノールを含む、態様<14>記載の好ましい組成物。
<22>エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラート;ジシクロペンタジエンジエポキシド、3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、態様<14>記載の好ましい組成物。
<23>フィラメント巻き管および継手、フィラメント巻き圧力容器、低圧および高圧の管および継手、低圧および高圧の容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、石油およびガスの浮力モジュール、リグ、坑井プラグ、現場硬化パイプ(CIPP)、構造用接着剤および積層体、封止剤、半導体、耐食性コーティング、複合材ライナーの製造、および他の適切なエポキシ含有用途のための、任意で強化繊維と組み合わせた、態様<14>記載の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、APCHAを含むエポキシ樹脂組成物の40℃での粘度プロファイルを示す。
【0062】
実施例
これらの実施例は、本発明の特定の態様を例示するために提供されており、本明細書に添付された特許請求の範囲を限定するものではない。
【0063】
実施例1
この実施例では、硬化剤ブレンドの調製および試験について説明する。
【0064】
N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)を、4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA、CAS#135108-88-2)からのオリゴマー構造の水素化生成物と混合し、液体硬化成分を作る。
【表1】
【0065】
第1表では、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物(MPCA)を、様々な比率でN-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)と混合し、粘度を下げるためのそれらの効率を決定した。複合材用途では、配合された硬化剤を液体の形で使用することが望ましい。4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA)からのオリゴマー構造の水素化生成物は、25℃で半固体または40℃で高粘度である。N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)は、4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA)からのオリゴマー構造の水素化生成物の粘度を有意に低下させる、非常に低い負荷(10%)で非常に効果的な反応性溶媒であることがわかった。N-シクロヘキシル-1,3-プロパンとエポキシ樹脂との反応性により、複合材用途にとって望ましい物理的特性、熱的特性、および化学的特性が維持された。
【0066】
実施例2
この実施例では、エポキシ硬化剤ブレンドの調製および硬化エポキシ樹脂配合物の試験について説明する。
【表2】
【0067】
いくつかの硬化剤配合物を調製した。4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA)からのオリゴマー構造の水素化生成物を、様々な比率でN-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)と混合し、エポキシ樹脂のための硬化剤を作った。双方の生成物を、第2表に示す量で混合した。混合を容易にするために、4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA)からのオリゴマー構造の水素化生成物とN-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)との双方を、別々に50℃で1時間予熱した。硬化剤3~5を、50℃で1時間、1000rpmにて磁気撹拌機で混合した。得られた硬化剤を使用し、第3表に示す化学量論比を変化させてエポキシ樹脂(エポキシ当量(EEW)180)を硬化させた。液体エポキシ樹脂(LER)(EEW180)EPON(登録商標)826。EPON(登録商標)は、Hexion Specialty Chemicals, Inc.の登録商標である。
【0068】
第2表および第3表に示した全ての配合物の粘度を、スピンドル番号27のブルックフィールド粘度計RVを用いて40℃で測定した。12グラムのエポキシ樹脂組成物を使用して粘度を測定した。
【0069】
図1に示した全ての配合物の反応性を、スピンドル番号27のブルックフィールド粘度計RVを用いて40℃で測定した。12グラムのエポキシ樹脂組成物を使用して反応性を測定した。
【0070】
図1は、第2表および第3表に列挙した配合物2~5を示す。配合物1の反応性試験は、その高い粘度および均質な混合物を得ることの難しさのために行わなかった。図1に示した反応性試験に基づくと、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(APCHA)およびEpon 826と一緒に使用した場合、4,4’-メチレンジアニリンプロセス(MPCA)からのオリゴマー構造の水素化生成物の70%までを使用することが可能である。通常、複合材用途では、複合材部品を適切に処理するには、1,500cPs未満の粘度が許容される。
【表3】
【0071】
第3表に示したエポキシ成分とアミン硬化剤とを、40℃で3~5分間、手で混合した。混合物を遠心分離機に5分間、または混合物が透明になるまで入れることにより、閉じ込められた空気を除去した。次に、混合物を1/8インチのアルミニウム成形型に注いだ。成形型内の系を、80℃で2時間、さらに150℃で3時間硬化した。硬化したサンプルを取り出す前に、成形型を室温まで冷却した。引張試験(ASTM D638)、曲げ試験(ASTM D790)、および圧縮試験(ASTM D695)の機械的試験を実施するために、ASTMの方法に従って鋳造サンプルから試験片を準備した。追加の1インチ×3インチ×1/8インチのサンプルを、様々な試薬で耐薬品性試験を行うために準備した。
【0072】
第3表に示した全ての配合物の反応性を、スピンドル番号27のブルックフィールド粘度計RVを用いて40℃で測定した。12グラムのエポキシ樹脂組成物を使用して反応性を測定した。
【0073】
TECHNE(登録商標)ゲルタイマーを使用して、第3表に示した全ての配合物のゲル化時間を測定した。金属棒の一端を、TECHNE(登録商標)ゲルタイマーに、もう一端を、直径1インチの皿に接続した。エポキシ成分および硬化剤を、25℃で別々に予熱した。合計150グラムの混合物(エポキシ成分および硬化成分)を、3~5分間混合した。直径1インチの皿を、ビーカー内容混合物に浸し、正確な読み取り値を得るためにゲル時間をすぐにオンにした。
【0074】
配合物2~5の結果を、第3表に報告する。本開示によれば、配合物2、4および5は、同様の初期粘度<350cPsをもたらす。しかしながら、配合物2および5は、約100分のポットライフ(10,000cPsになるまでの時間)を有し、配合物3および4は、約80分のポットライフを有する。配合物3および4は、110℃~125℃の範囲のTgをもたらし、配合物2および5は、90℃~95℃の範囲のTgをもたらす。配合物中にN-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミンが存在すると、非常に高い伸びが得られ、4,4’-メチレンジアニリンプロセスからのオリゴマー構造の水素化生成物の添加により、硬化した配合物の弾性率が向上する。
【0075】
実施例3
この実施例では、化学浸漬後の硬化エポキシ樹脂配合物の試験について説明する。
【表4】
【0076】
実施例2に記載のプロセスを用いて、配合物2~5のニートキャストパネルを調製した。曲げ試験片(1/2インチ×3インチ×1/8インチ)を、ASTM D790に従って機械加工した。試験片を様々な試薬に30日間@25℃で浸漬し、浸漬前後の曲げ弾性率の保持を把握した。使用した試薬は、水、アセトン、トルエン、メタノール、エタノール、25%酢酸、10%硝酸、および10%水酸化アンモニウムであった。配合物2の曲げ弾性率は、アセトンまたはメタノールのいずれかで破砕された試験片を除いて、ほとんどの試薬で保持された。これらの試薬は、エポキシ架橋網目構造を付けるのに非常に積極的であると考えられている。配合物3~5では、4,4’-メチレンジアニリンからのオリゴマー構造の水素化生成物を、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミンに組み込むことで、これらの配合物の曲げ弾性率が向上する。これらの配合物における曲げ弾性率は、特有のアミンの組み合わせを有することにより回復した。
図1