IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロフェシーの特許一覧

特許7242697イベントベースの画像センサおよびその操作方法
<>
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図1
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図2
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図3
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図4
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図5
  • 特許-イベントベースの画像センサおよびその操作方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】イベントベースの画像センサおよびその操作方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/77 20230101AFI20230313BHJP
【FI】
H04N25/77
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020552117
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018084348
(87)【国際公開番号】W WO2019115517
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】17306740.6
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520207608
【氏名又は名称】プロフェシー
【氏名又は名称原語表記】PROPHESEE
【住所又は居所原語表記】74 rue du Faubourg Saint Antoine, 75012 PARIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポッシュ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】マトリン、ダニエル
【審査官】西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-045379(JP,A)
【文献】特表2010-510732(JP,A)
【文献】特開2002-033962(JP,A)
【文献】特開2003-169251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ(2)と、アドレスイベント表現回路(3)と、ピクセル配列を形成する複数のピクセル回路(1)とを備えたイベントベースの画像センサであって、前記コントローラ(2)は、前記ピクセル回路(1)を制御するために各々の前記ピクセル回路(1)に接続されており、各々の前記ピクセル回路(1)は、
感光素子(101)と出力(11)とを有し、前記出力(11)において、前記感光素子(101)に衝突する光に由来する感光体電流(IPRout)を供給するように構成された感光体回路(10)と、
読み出しユニットに選択的に接続され、前記感光体回路(10)の前記出力(11)が選択的に接続されたアナログバス(20)と、
前記アナログバス(20)に接続された電流記憶セルのバンクであって、各々の前記電流記憶セル(IS)が、前記アナログバス(20)を流れる電流を選択的に保存し、前記電流記憶セル(IS)内に保存された電流を前記アナログバス(20)に選択的に供給するように適合される、バンクと、を備え、
各々の前記ピクセル回路(1)は、前記感光体電流(IPRout)の変化を検出するように構成された電流比較器(50)を含み、前記電流比較器(50)は、
前記アナログバス(20)に接続され、比較された電流と閾値電流とから生じる、前記アナログバス(20)を流れる電流の値の符号を決定するように構成された電流符号検出器(51)であって、前記比較された電流が、少なくとも前記感光体電流と電流記憶セルに記憶された以前の感光体電流との差から生じる、電流符号検出器(51)と、
前記電流符号検出器(51)の出力(52)に接続され、前記電流符号検出器(51)の前記出力によって条件付けられた状態を有する少なくとも1つの記憶セル(53、54)であって、前記少なくとも1つの記憶セル(53、54)の前記状態は、前記感光体電流と、前記閾値電流より大きい前記以前の感光体電流との間の変化を表す、少なくとも1つの記憶セル(53、54)と、を含み、
前記少なくとも1つのデジタル記憶セル(53、54)が前記アドレスイベント表現回路(3)に接続されていることにより、前記アドレスイベント表現回路(3)が前記記憶セル(53、54)の前記状態を監視して前記感光素子(101)に当たる光の変化を決定し、
前記読み出しユニットに対する前記アナログバス(20)の接続を介したピクセル回路の読み出しは、前記少なくとも1つのデジタル記憶セル(53、54)の前記状態によって調整される、イベントベースの画像センサ。
【請求項2】
前記電流比較器(50)は、それぞれが前記電流符号検出器(51)の前記出力(52)に接続され、前記電流符号検出器(51)の前記出力(52)によって調整された状態を有する第1の記憶セル(53)および第2の記憶セル(54)を含み、前記第1の記憶セル(53)の状態は第1の閾値電流の値よりも大きい比較された電流の値を表し、前記第2の記憶セル(54)の状態は第2の閾値電流の値よりも低い比較された電流の値を表す、請求項1に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項3】
前記比較された電流は、前記感光体電流を保存する電流記憶セル(IS1)と以前の前記感光体電流を保存する電流記憶セル(IS2)とを前記アナログバス(20)に接続して、前記比較された電流を電流記憶セルに保存することによって得られ、前記閾値電流は別の電流記憶セルに保存されている、請求項1又は2に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項4】
前記アドレスイベント表現回路(3)は、ピクセル回路(1)のデジタル記憶セル(53、54)の状態の変化の検出時に、そのデジタル記憶セルの状態が変化した前記ピクセル回路(1)のアドレスを決定するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項5】
前記コントローラ(2)は、前記ピクセル回路(1)に命令を送るように構成されており、ピクセル回路(1)による少なくとも1つの命令の実行は、少なくとも1つの記憶セル(53、54)の状態によって条件付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項6】
前記ピクセル回路(1)の前記感光体回路(10)は対数感光体回路であり、前記感光体電流は、前記感光素子(101)に衝突する前記光の対数に比例する、請求項1~5のいずれか一項に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項7】
較正電流源(4)をさらに含み、ピクセル回路(1)の前記感光体回路(10)は、較正手順中に、前記較正電流源(4)によって供給される基準較正電流から導出される較正電流を、前記感光体回路(10)の前記出力(11)において供給するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のイベントベースの画像センサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のイベントベースの画像センサを動作させる方法であって、ピクセル回路(1)の感光体回路(10)の感光素子(101)に当たる光の変化を検出するための変化検出サイクルを含み、前記変化検出サイクルは、
a)前記感光体回路(1)が、前記感光体回路(10)の出力(11)において前記感光素子(101)の露光から得られる感光体電流(IPRout)を供給し、前記感光体電流(IPRout)が電流記憶セルの記バンクの第1の電流記憶セル(IS1)に書き込まれるステップ(S01)と、
b)第2の電流記憶セル(IS2)に記憶された前記感光体電流と以前の感光体電流との差から生じる比較された電流が、別の電流記憶セルに記憶されるステップ(S02)と、
c)前記電流符号検出器(51)が、前記比較された電流の値を別の電流記憶セルに記憶された閾値電流の値と比較し、前記比較された電流の前記値が前記閾値電流の前記値を超える場合、デジタル記憶セルの前記状態が第1の状態に設定されるステップ(S03)と、
d)前記記憶セル(53、54)が第1の状態にある場合、前記感光体電流の読み出しが実行され(S06)、前記感光体電流が第2の電流記憶セル(IS2)に書き込まれ(S07)、前記記憶セル(53、54)の状態が第2の状態に設定されるステップ(S08)と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記ピクセル回路(1)の電流比較器(50)は、それぞれが前記電流比較器(50)の電流符号検出器(51)の前記出力(52)に接続されるとともに前記電流符号検出器(51)の出力(52)により条件付けられた状態を有する第1の記憶セル(53)および第2の記憶セル(54)を備え、前記第1の記憶セル(53)の前記状態は第1の閾値電流の値よりも大きい前記比較された電流の値を表し、前記第2の記憶セル(54)の前記状態は第2の閾値電流の値よりも低い前記比較された電流の値を表し、ステップc)は、
c1)前記電流符号検出器(51)が、前記比較された電流の値を、第4の電流記憶セル(IS4)に記憶された第1の閾値電流の値と比較し、前記比較された電流の前記値が前記第1の閾値電流の前記値を超える場合、前記第1の記憶セル(53)の状態が第1の状態に設定されるステップと、
c2)前記電流符号検出器(51)が、前記比較された電流の反対の値を第5の電流記憶セル(IS5)に記憶された第2の閾値電流の値と比較し、前記比較された電流の前記反対の値が前記第2の閾値電流の前記値を超える場合、前記第2の記憶セル(54)の前記状態が第1の状態に設定されるステップと、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ピクセル配列の読み出し手順中、第1の状態である記憶セル(53、54)を有するピクセル回路(1)のみが、それらの感光体電流を読み取らせるために選択される、請求項8~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変化検出サイクルのステップd)の前に実行される較正手順を含み、前記較正手順は、
前記ピクセル回路(1)の前記感光体回路(10)が、較正電流源(4)によって供給される基準較正電流から導出される較正電流を前記感光体回路(10)の出力(11)に供給するように、ピクセル回路(1)の感光体回路(10)における感光素子(101)の代わりに前記較正電流源(4)を接続するステップと、
前記感光体回路(10)の前記出力(11)から前記較正電流が記憶される第6の電流記憶セル(IS6)に前記較正電流を転送するステップと、を含む、
請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ピクセル回路(1)の読み出し中に、前記第6の電流記憶セル(IS6)に記憶された前記較正電流が、前記感光体電流から差し引かれる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イベントベースの画像センサおよびその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像センサは、所定のフレームレートで時間量子化された視覚情報を取得する。各フレームは、最後のフレームが取得されてからこの情報が変更されたかどうかに関係なく、すべてのピクセルからの情報を保持する。このアプローチは明らかに、シーンの動的コンテンツに応じて、記録された画像データに多かれ少なかれ高度な冗長性をもたらす。最新の画像センサがより高い空間分解能および時間分解能に進歩するにつれて問題は悪化する。データの後処理に必要なハードウェアは、複雑さおよびコストが増加し、伝送帯域幅およびデータ記憶容量の需要が急増し、消費電力が増加するため、要求の厳しい高速産業用視覚システムからモバイル、バッテリー駆動の民生機器まで、あらゆる種類の視覚アプリケーションに厳しい制限が生じる。
【0003】
ビデオデータの時間的冗長性を処理する方法の1つとして、フレーム差分符号化がある。この最も単純な形式のビデオ圧縮には、最初のキーフレームの後、フレーム間で規定された輝度変化閾値を超えるピクセル値のみを送信することが含まれる。既知のフレーム差分撮像装置は、画像データのフルフレームの取得と処理に依存しており、時間的冗長性を首尾一貫して抑制し、リアルタイムの圧縮ビデオ出力を提供することができない。さらに、処理と差分量子化とがピクセルレベルで行われる場合でも、すべてのフレームベースの撮像装置と同様に、シーンダイナミクスの取得の時間分解能は、達成可能なフレームレートに制限され、このフレームレートに時間量子化される。
【0004】
冗長データを最初に記録せず、センサ出力レベルにおいてデータ量を直接減らすことにより、データ冗長性の悪影響が最も効果的に回避される。直接的な利点は、データ送信と後処理とに必要な帯域幅、記憶容量、および計算能力の要件が削減されるため、システムのパワー、複雑さ、およびコストが削減されることである。さらに、従来のCMOSまたはCCD画像センサのフレームベースのクロック動作原理では、シーンダイナミクスがピクセルの視野が読み取られるフレームレートに量子化されるため、時間分解能が制限され、ダイナミックレンジが低下することになる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、(記録可能なおよび処理可能な光強度の)広いダイナミックレンジにわたって、高い時間分解能および強度分解能で観測された動的シーンの完全な視覚情報を継続的に取得し、それによって必要最小限のデータ量を生成するための画像センサおよびその動作方法を提供することである。したがって、生成されたデータは、すべてのピクセルの画像情報を含む一連のフレームではなく、ピクセル自体によって個々のピクセルの視野内における実際の光の強度変化が検出された場合にのみ記録および送信される個々のピクセルの変化と強度(つまりグレーレベル)情報のストリームで構成される。
【0006】
この方法では、データに同じまたはそれ以上の情報コンテンツが含まれている場合でも、従来の画像センサで一般的な画像情報の時間的冗長性が完全に抑制されるため、生成データが大幅に削減される。上述の方法を実現する画像センサ用のピクセルおよび必要な非同期データ読み出しメカニズムは、電子回路に基づいて実現することができる。このような多数の画素を備えた画像センサは、典型的には、統合されたシステム・オン・チップ技術、たとえばCMOSとして実現され、製造される。
【0007】
そのようなセンサを実装し、従来の画像データ取得の上記の欠点を回避することは、産業用高速視覚(例:高速物体認識、動きの検出および分析、物体追跡など)、自動車(例:衝突の警告および回避のためのリアルタイム3Dステレオビジョン、インテリジェントなバックミラーなど)、監視およびセキュリティ(シーン監視)またはロボット工学(自律航法、SLAM)、ならびに生物医学および科学的な画像処理アプリケーションを含む幅広い人工視覚アプリケーションに有益である。センサの動作は人間の網膜の動作原理に着想を得ているため、1つの有利な適用例として、そのようなセンサによって配信されるデータに基づく埋め込み型人工装置による盲目の患者の変性網膜の治療がある。
【0008】
上記の完全な時間的冗長性抑制を達成するための解決策は、イベント管理され、条件付きで(すなわち、シーンの変化が検出されたときのみ)、ピクセル個別の前処理と画像情報の取得に基づいている。以下で説明するように、画像データ取得の制御はピクセルレベルに移行する。
【0009】
過渡検出器と呼ばれることが多い電子回路は、米国特許第7728269号明細書に記載されているように、たとえば光学過渡センサや動体視力センサ(DVS:dynamic vision sensor)の場合、個々の自律的に動作するピクセルが受け取った照明強度の変化を検出するために使用される。ただし、このような過渡検出回路には大きなスイッチドキャパシタが必要であり、変化の評価に使用される電圧比較器間の不一致が問題になり得る。
【0010】
米国特許第8780240号明細書は、過渡検出器回路、すなわち露光強度変化検出回路と条件付き露光測定回路との組み合わせを開示している。過渡検出回路は、ピクセルの視野で特定の大きさの明るさの変化が検出された場合にのみ、その直後に、個別かつ非同期に新しい露出測定の測定を開始する。このようなピクセルは、外部タイミング信号に依存せず、通信する新しいグレースケール値がある場合にのみ、(非同期で調停された)出力チャネルへのアクセスを個別に要求する。その結果、視覚的に刺激されないピクセルは出力を生成しない。さらに、非同期操作により、フレームベースの取得とスキャン読み出しの時間量子化とが回避される。
【0011】
各ピクセル回路について、過渡検出回路は、閾値を超える相対電圧変化を検出するための第1フォトダイオードから得られた感光体電圧を監視する。そのような検出時に、過渡検出回路は、同じピクセルの露出測定回路が絶対強度測定、すなわち絶対グレーレベル測定を開始するための命令を出力する。露出測定回路は、第1フォトダイオードに隣接して配置された、ピクセルの第2フォトダイオードを使用して、瞬間的な光電流でフォトダイオードの接合容量を放電する時間からその測定値を導き出す。
【0012】
しかしながら、米国特許第8780240号明細書に開示されたピクセル回路は、直接光電流積分による時間ベースの露出測定が未知の積分時間後にのみ利用可能であるため最適ではない。さらに、対応する小さな光電流のために、特に低いピクセル照度レベルでは、新しい露出値の測定時間が非常に長くなることがよくある。最後に、変化の検出と露出の測定に2つの別々のフォトダイオードを使用することにより、画像データ取得プロセスの空間発散と動き方向の依存性につながり、画像品質が低下する。
【0013】
米国特許出願公開第2016/0227135号明細書は、
単一のフォトダイオードを含むとともに出力を有するフロントエンド回路であって、上記フロントエンド回路は、上記単一のフォトダイオードの露光から得られた感光体信号を上記出力に供給するように構成される、フロントエンド回路と、
上記出力に供給された上記感光体信号の変化を検出するように構成された過渡検出回路と、
上記過渡検出器回路による上記感光体信号の変化の検出時に上記出力に供給される上記感光体信号を測定するように構成された露出測定回路であって、上記露出測定回路は、第1のスイッチによって上記フロントエンド回路の上記出力に接続されたキャパシタを有する、露出測定回路と、
を備えたピクセル回路を開示している。
【0014】
ただし、露出測定は、依然として露出測定回路における未知の積分時間の後にのみ利用できる。さらに、ピクセルの出力間の不一致が問題になり得る。たとえば、ピクセルの不一致の補正方法がない場合、対数感光体回路の露出測定値を直接使用することは、ピクセル配列において問題があり得る。
【0015】
米国特許第9631974号明細書は、複数のセルを備えた画面配列を開示しており、各々の上記セルは、
それぞれのセルに衝突する光の強度に比例する光電流を生成するように構成された手段と、
光電流を生成するためのそれぞれの手段に接続された変化検出回路であって、上記変化検出回路は、上記強度が閾値量だけ変化する変化イベントが発生した場合にのみ出力信号を生成するように構成される、変化検出回路と、
各々の上記セルの輝度を表す信号を読み取ることができるように構成された輝度読み出し回路と、
を含む。
【0016】
ただし、画面配列は、固定露光時間での輝度(グレーレベル)値の従来のフレームベースの読み出しを使用する。輝度の読み出しは、個々のピクセルの変化検出回路によって直接トリガされるのではなく、従来の画像センサと同様に外部制御からフレーム単位で実行される。
【0017】
米国特許第9528738号明細書は、ハイパスフィルタを有する光変化検出器を備えたピクセルセルを開示している。しかしながら、ピクセルの出力間の不一致が問題となり得る。たとえば、ピクセルの不一致の補正方法がない場合、ピクセル配列において対数感光体回路の露出測定値を直接使用することが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第7728269号明細書
【文献】米国特許第8780240号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0227135号明細書
【文献】米国特許第9631974号明細書
【文献】米国特許第9528738号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、より小さい面積要件を備えたピクセル回路を備えたイベントベースの画像センサを提供することを目的とし、より大きい配列サイズまたはより小さいセンサチップ寸法を可能にする。本発明はまた、個々の測定プロセスを高速化し、その結果、時間分解能を高めることを目的とする。本発明はまた、2つの別個のフォトダイオードの使用によって引き起こされる変化検出と露出測定との間の空間的発散を回避し、測定精度を改善し、結果として画像品質を改善することを目的とする。本発明はまた、変化を検出した直後に、各単一ピクセルに対して個別に利用可能な露出測定を提供することを目的とする。本発明はまた、ピクセル回路間の不一致を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この点に関し、本発明は、コントローラと、アドレスイベント表現回路と、ピクセル配列を形成する複数のピクセル回路とを備えるイベントベースの画像センサに関し、コントローラは、各ピクセル回路に接続されて上記ピクセル回路を制御し、各々のピクセル回路は、
感光素子と出力とを有し、上記出力において、感光素子に衝突する光に由来する感光体電流を供給するように構成された感光体回路と、
読み出しユニットに選択的に接続され、感光体回路の出力が選択的に接続されたアナログバスと、
アナログバスに接続された電流記憶セルのバンクであって、各々の電流記憶セルが、アナログバスを流れる電流を選択的に保存し、上記電流記憶セル内に保存された電流を上記アナログバスに選択的に供給するように適合される、バンクと、を備え、
各々のピクセル回路は、感光体電流の変化を検出するように構成された電流比較器を含み、上記電流比較器は、
アナログバスに接続され、比較された電流と閾値電流とから生じる、アナログバスを流れる電流の値の符号を決定するように構成された電流符号検出器であって、上記比較された電流が、少なくとも感光体電流と電流記憶セルに記憶された以前の感光体電流との差から生じる、電流符号検出器と、
電流符号検出器の出力に接続され、上記電流符号検出器の出力によって条件付けられた状態を有する少なくとも1つの記憶セルであって、上記少なくとも1つの記憶セルの状態は、感光体電流と、閾値電流より大きい以前の感光体電流との間の変化を表す、少なくとも1つの記憶セルと、を含み、
上記少なくとも1つのデジタル記憶セルがアドレスイベント表現回路に接続されていることにより、アドレスイベント表現回路が記憶セルの状態を監視して感光素子に当たる光の変化を決定し、
読み出しユニットに対するアナログバスの接続を介したピクセル回路の読み出しは、上記少なくとも1つのデジタル記憶セルの状態によって調整される。
【0021】
従来技術のイベントベースの画像センサとは対照的に、ここでのピクセル回路はより大きな回路またはスイッチドキャパシタ回路を必要としない、より単純な回路である。さらに、記憶セルはフラグとして使用され、アドレスイベント表示回路に光の変化が発生したことを示し、感光体電流は直ちに読み出しに使用できる。
【0022】
他の限定的ではないが好ましい画像センサの態様は以下の通りであり、分離され、または技術的に実現可能な組み合わせにより、
電流比較器は、それぞれが電流符号検出器の出力に接続され、上記電流符号検出器の出力によって調整された状態を有する第1の記憶セルおよび第2の記憶セルを含み、第1の記憶セルの状態は第1の閾値電流の値よりも大きい比較された電流の値を表し、第2の記憶セルの状態は第2の閾値電流の値よりも低い比較された電流の値を表し、
比較された電流は、感光体電流を保存する電流記憶セルと以前の感光体を保存する電流記憶セルとをアナログバスに接続して電流記憶セルに保存することによって得られ、閾値電流は別の電流記憶セルに保存されており、
アドレスイベント表現回路は、ピクセル回路のデジタル記憶セルの状態の変化の検出時に、そのデジタル記憶セルの状態が変化したピクセル回路のアドレスを決定するように構成されており、
コントローラは、ピクセル回路に命令を送るように構成されており、ピクセル回路による少なくとも1つの命令の実行は、少なくとも1つの記憶セルの状態によって条件付けられ、
感光体回路ピクセル回路は対数感光体回路であり、感光体電流は、感光素子に衝突する光の対数に比例し、
較正電流源をさらに含み、ピクセル回路の感光体回路は、較正手順中に、較正電流源によって供給される基準較正電流から導出される較正電流を、上記感光体回路の出力において供給するように構成されている。
【0023】
本発明はまた、本発明のイベントベースの画像センサを動作させる方法であって、ピクセル回路の感光体回路の感光素子に当たる光の変化を検出するための変化検出サイクルを含み、上記変化検出サイクルは、
a)感光体回路が、上記感光体回路の出力において感光素子の露光から得られる感光体電流を供給し、感光体電流が記憶バンクの第1の電流記憶セルに書き込まれるステップと、
b)第2の電流記憶セルに記憶された感光体電流と以前の感光体電流との差から生じる比較された電流が、別の電流記憶セルに記憶されるステップと、
c)電流符号検出器が、比較された電流の値を別の電流記憶セルに記憶された閾値電流の値と比較し、比較された電流の値が閾値電流の値を超える場合、デジタル記憶セルの状態が第1の状態に設定されるステップと、
d)記憶セルが第1の状態にある場合、感光体電流の読み出しが実行され、感光体電流が第2の電流記憶セルに書き込まれ、記憶セルの状態が第2の状態に設定されるステップと、
を含む、方法にも関する。
【0024】
他の限定的ではないが好ましい方法の態様は以下の通りであり、分離され、または技術的に実現可能な組み合わせにより、
ピクセル回路の電流比較器は、それぞれが電流比較器の電流符号検出器の出力に接続されるとともに上記電流符号検出器の出力により条件付けられた状態を有する第1の記憶セルおよび第2の記憶セルを備え、第1の記憶セルの状態は第1の閾値電流の値よりも大きい比較された電流の値を表し、第2の記憶セルの状態は第2の閾値電流の値よりも低い比較された電流の値を表し、ステップc)は、
c1)電流符号検出器が、比較された電流の値を、第4の電流記憶セルに記憶された第1の閾値電流の値と比較し、比較された電流の値が第1の閾値電流の値を超える場合、第1の記憶セルの状態が第1の状態に設定されるステップと、
c2)電流符号検出器が、比較された電流の反対の値を第5の電流記憶セルに記憶された第2の閾値電流の値と比較し、比較された電流の反対の値が第2の閾値電流の値を超える場合、第2の記憶セルの状態が第1の状態に設定されるステップと、を含み、ピクセル配列の読み出し手順中、第1の状態である記憶セルを有するピクセル回路のみが、それらの感光体電流を読み取らせるために選択され、
検出サイクルのステップd)の前に実行される較正手順を含み、上記較正手順は、
ピクセル回路の感光体回路が、較正電流源によって供給される基準較正電流から導出される較正電流を上記感光体回路の出力に供給するように、ピクセル回路の感光体回路における感光素子の代わりに較正電流源を接続するステップと、
上記感光体回路の出力から上記較正電流が記憶される第6の電流記憶セルに較正電流を転送するステップと、を含み、
ピクセル回路の読み出し中に、第6の電流記憶セルに記憶された較正電流が、感光体電流から差し引かれる。
【0025】
本発明の他の態様、目的、および利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照してなされる、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むとより明らかになるであろう。
すべての図において、同じ参照文字は同一のまたは類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の可能な実施形態によるイベントベースの画像センサの簡略図を示す。
図2】本発明の可能な実施形態によるピクセル回路の簡略図を示す。
図3】感光体回路の例示的な可能な実施形態の簡略図を示す。
図4】記憶セルの例示的な可能な実施形態の簡略図を示す。
図5】本発明の可能な実施形態によるピクセル回路を動作させる方法の図を示す。
図6】本発明の可能な実施形態によるピクセル回路を動作させる方法の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
可能な実施形態によるイベントベースの画像センサの簡略図が図1に示されている。イベントベースの画像センサは、ピクセル配列を形成する複数のピクセル回路1を含む。図1は、明確にするために、限られた数のピクセル回路1を示している。ピクセル配列は、例えば256×256ピクセルを超える寸法を有する多数のピクセル回路1を含むことが理解される。イベントベースの画像センサは、コントローラ2と、アドレスイベント表現(AER:address-event representation)回路3とを含み、較正電流源4も含み得る。
【0028】
コントローラ2は、ピクセル回路1を制御するためにピクセル回路1に命令を送るように構成される。したがって、ピクセル回路はコントローラ2に接続される。コントローラ2は、同じ命令を同時にすべてのピクセル回路1に送信するように構成される。コントローラ2およびピクセル回路1は、単一の命令、複数のデータ(SIMD:single instruction,multiple data)処理アーキテクチャを形成する。
【0029】
図2にピクセル回路1の例を示す。ピクセル回路は、出力11を有し、前記出力11で感光体電流を送出するように構成された感光体回路10を備えている。感光体電流は、感光体回路の感光要素に衝突する光から得られる。
【0030】
図3は、使用され得る感光体回路10の例を示す。感光体回路10は対数感光体回路であり、感光体電流IPRoutは、感光素子101に入射する光の対数に比例する。感光体回路10は、接地に接続され、スイッチS2を介して反転増幅器103の入力102に接続されている、フォトダイオードなどの感光素子101を備える。N型MOSFETトランジスタ104は、そのドレインが供給電圧端子110に接続され、そのソースが反転増幅器103の入力102に接続されている。反転増幅器103の出力105は、トランジスタ104のゲートに接続されている。反転増幅器103は、その出力105において、感光素子101の露光から得られる感光体電圧VPRを供給する。反転増幅器103の出力はまた、感光体電圧VPRを、電圧-電流変換器106の出力により構成される感光体回路11の出力11に供給される感光体電流IPRoutに変換する電圧-電流(V/I)変換器106の入力に接続される。較正電流源4は、基準電流Icalを入力102に送るためのスイッチS1を介して入力102に接続されてもよい。他の種類の感光体回路10を使用してもよい。例えば、感光体回路10は、感光素子101に当たる光に線形に比例する電流を供給する線形感光体回路10であってもよい。好ましくは、感光体電流IPRoutはまた、上記で引用した従来技術の参考文献に記載されているように、感光素子101を流れる電流の所与の時間にわたる積分から生じるキャパシタの電圧から導出される電流であってもよい。同じピクセル回路内で、対数感光体回路を、積分キャパシタを備えた別の感光体回路と組み合わせることも可能である。
【0031】
ピクセル回路はまた、電流が流れることができるアナログバス20を含む。感光体回路10の出力11は、フロントエンドスイッチSPRを介して上記アナログバス20に接続される。アナログバス20は、電流読み出しユニットに接続されている。より正確には、読み出しスイッチSroは、アナログバス20を上記現在の読み出しユニットに接続する。ピクセル回路が読み取られるように選択されると、スイッチSroは閉じられる。電流読み出しユニットは、例えば、列電流読み出しユニットである。電流読み出しユニットは、選択されたピクセル回路のアナログバスを流れる電流が送られる電流電圧変換器ブロックと、アナログデジタル変換器(ADC)とを含み得る。
【0032】
ピクセル回路1は、バスに接続された記憶セルIS(i=1…6)のバンクも含む。図示の実施形態では、記憶セルISのバンクは、6つの記憶セルISを含む。ただし、バンク内の記憶セルISの数は変化し得る。記憶セルISの数は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらにより好ましくは6以上である。各記憶セルISは、アナログバス20を流れる電流を選択的に保存し、上記記憶セルIS内に保存された電流を上記アナログバス20に選択的に供給するように適合されている。
【0033】
図4は、ピクセル回路1で使用され得る電流記憶セルISの概略例を示す。記憶セルISは、ソースが接地されたN型電界効果トランジスタ40(例えば、MOSFET)を含む。キャパシタ41は、接地に接続された第1の端子と、トランジスタ40のゲートに接続されている第2の端子とを含む。したがって、キャパシタ40の両端の電圧VGSは、トランジスタ40のゲートとソースとの間の電圧に対応する。また、キャパシタ41の第2端子は、ゲートスイッチSを介してトランジスタ40のドレインに接続されている。トランジスタ40のドレインは、ドレインスイッチSを介してアナログバス20に接続されている。ドレインスイッチSが閉じられると、記憶セルISはアナログバス20に接続される。電流源42は、トランジスタ40のドレインに接続され、基準電流Irefが両方向に流れることを可能にする。電流源42は、記憶セルISの外側にあってもよく、ピクセル回路のバンクの記憶セルISによって、またはピクセル配列全体の記憶セルISによって共有されてもよい。他のタイプの電流記憶セルISを使用してもよい。たとえば、J.B.Hughes and K.W.Mouldingの記事“S2I:A switched-current technique for high performance“,Electron.Lett.,vol.29,no.16,pp.1400-1401,Aug.1993参照。
【0034】
ドレインスイッチSおよびゲートスイッチSが閉じているとき、電圧VGSは、アナログバス20からトランジスタ40を介して流れる電流が流れるのに必要な値をとる。これにより、記憶セルISに入力電流が書き込まれる。ドレインスイッチSおよびゲートスイッチSが開いているとき、電圧VGSは一定値を保つ。電流は記憶セルISに保存される。ゲートスイッチSが開いていて、ドレインスイッチSが閉じているとき、トランジスタ40のゲートにおける電圧VGSは維持される(ゲートスイッチSが開いているため)が、(トランジスタ40のゲートの電圧VGSのため)アナログバス20に電流が流れる。電流は記憶セルISから読み取られる。
【0035】
ピクセル回路1は、同じアナログバス20に接続されたいくつかの電流記憶セルISを含むので、上記電流を書き込み、記憶し、読み取ることにより、電流の算術演算を行うことができる。さらに、電流を反転させて、1つの電流記憶セルISから別の電流記憶セルISに複製することができる。これらの算術演算の結果もまた、電流記憶セルISに保存できる電流である。これらの動作は単にキルヒホフの電流法則に従う。
【0036】
たとえば、2つの記憶セルにそれぞれ保存されている2つの電流の加算を実行するには、上記2つの記憶セルをアナログバス20に接続し、同時に(つまり、ドレインスイッチSを閉じてゲートスイッチSを開いたまま保持することにより)読み取る必要がある。結果として生じる電流は、同時に(ドレインスイッチSおよびゲートスイッチSの両方を開くことによって)別の電流記憶セルに書き込まれ得る。
【0037】
電流記憶セルISが読み取られ、別の電流記憶セルISが書き込まれているとき、読み取られた電流記憶セルからアナログバス20に入る電流は、キルヒホフの電流法則に従い、書き込まれるべきアナログバス20を出る電流の反対であることに留意されたい。結果として、アナログバス20の場合、2つの電流記憶セルIS間の基本的な転送動作は、転送された電流の値(すなわち、転送された電流の強度)を打ち消すことを含む。結果として、2つの電流を加算する前に、第1の電流を1つの電流記憶セルから別の電流記憶セルに転送することにより、第2の電流の値から第1の電流の値を基礎にすることができる。
【0038】
ピクセル回路1はまた、感光体電流IPRoutの変化を検出するように構成された電流比較器50を備えている。電流比較器50は、比較器スイッチScompによってアナログバス20に接続された入力を備えた電流符号検出器51を備えている。電流符号検出器51は、アナログバス20を流れる電流の値(すなわち、電流の方向)の符号を決定するように構成されている。好ましくは、電流符号検出器51は、その入力における(すなわち、比較器スイッチScompを通る)電流が正である場合にのみ値を出力するように構成される。
【0039】
電流比較器50はまた、電流符号検出器51の出力52に接続された2つの記憶セル53、54を含む。第1の記憶セル53は、第1のフラグスイッチSを介して接続され、第1のフラグAを構成する。第2の記憶セル54は、第2のフラグスイッチSを介して接続され、第2のフラグBを構成する。記憶セル53、54は、2つの状態、「真」として指定された第1の状態、および「偽」として指定された第2の状態を有し得る。記憶セル53、54のデフォルト状態は「偽」である。記憶セル53、54は、上記記憶セル53、54がリセットされるまでその状態を維持する。リセット信号rstを記憶セル53、54に提供して、それらを強制的に第2の状態(すなわち、偽)にすることができる。したがって、記憶セル53、54は、ラッチと見なすことができる。記憶セル53、54はまた、それらが2進値として解釈され得る2つの状態しか有し得ないため、デジタル記憶セルと呼ばれ得る。
【0040】
2つのデジタル記憶セル53、54は、アドレスイベント表現回路3に接続されている。アドレスイベント表現回路3は、すべてのピクセル回路1のデジタル記憶セル53、54の状態を監視する。
【0041】
図5および図6を参照して、ピクセル回路1の検出サイクルを以下に説明する。図5および図6は、同じサイクルの異なる側面を示している。すなわち、図5は、電流の使用方法を示しており、図6は、スイッチと電流記憶セルISの使用方法を示している。以下の説明のステップでは、記憶セルISが書き込みモードにあるとき、上記記憶セルISのドレインスイッチSおよびゲートスイッチSが閉じられる。記憶セルISが読み取りモードにあるとき、上記記憶セルISのドレインスイッチSは閉じられ、ゲートスイッチSは開いたままである。記憶セルISがアイドルモードにあるとき、すなわち、書き込みモードにも読み取りモードにもないとき、ドレインスイッチSおよびゲートスイッチSは開いている。アイドルモードの記憶セルISは、アナログバス20から切り離され、電流を保存する。電流記憶セルISがステップ中に記述されていない場合、電流記憶セルISはアイドルモードと見なされる。特に明記しない限り、スイッチ、したがって変化検出サイクルのステップの操作は、コントローラ2から送信された命令によって制御される。コントローラ2により、同じ命令が同時にすべての画素回路1に送られる。
【0042】
第1のステップS01では、感光体回路10は、上記感光体回路10の出力11において、感光素子101の露光から導出された感光体電流IPRoutを送出し、感光体電流IPRoutは、記憶バンクIS1の第1の電流記憶セルに書き込まれる。より正確には、フロントエンドスイッチSPRが閉じられ(ステップS11)、感光体回路10の出力11をアナログバス20に接続する。したがって、感光体電流IPRoutは、アナログバス20に流れ込む。第1の電流記憶セルIS1が書き込みモードにあるため、感光体電流IPRoutは第1の電流記憶セルIS1に書き込まれる。次に、フロントエンドスイッチSPRが開かれる。
【0043】
ステップS02において、第2の電流記憶セルIS2に最後に記憶された以前の感光体電流IPRoutが、第1の電流記憶セルIS1に記憶された感光体電流IPRoutから差し引かれ、第3の電流記憶セルIS3に記憶される比較電流が生じる。より正確には、第1の電流記憶セルIS1および第2の電流記憶セルIS2は読み出しモードにあり、第3の電流記憶セルIS3は書き込みモードにある(ステップS12)。記憶セルISに電流を書き込んだ後に記憶セルISを読み取ることは、アナログバス20上の電流の流れ方向を逆にするので、電流の値の符号を逆にする。その結果、第1の電流記憶セルIS1から読み出された電流は、IPRoutの値を有する。第1電流記憶セルIS1と第2電流記憶セルIS2とを同時に読み出すことにより、第3電流記憶セルIS3に書き込まれた比較電流は、IPRout+IPRout,lastの値を有する。
【0044】
ステップS03において、電流符号検出器51は、第1の比較電流の値と第4電流記憶セルIS4に記憶されている第1の閾値電流の値とを比較する。第1のデジタル記憶セル53の状態は、比較結果に依存するであろう。そうするために(ステップS13)、第3の電流記憶セルIS3および第4の電流記憶セルIS4は、Icomparedと表される第1の比較電流の値-(-IPRout+IPRout,last)、および第1の閾値電流をそれぞれアナログバス20に送るために、読み取りモードにある。たとえば、感光体電流の値がIPRout=1.11μAであり、前の感光体電流の値がIPRout,last=1μAである場合、比較電流の値はIcompared=0.11μAである。電流値の例は、単なる例示としてここにおよび以下に与えられており、本発明の実施形態で使用される実際の電流値を反映していない場合があることに留意されたい。
【0045】
したがって、結果として生じるアナログバス20上の電流は、Icompared+IthAの値を示し、Ithaは、第1の閾値電流の値である。比較器スイッチScompは、電流符号検出器51をアナログバス20に接続するために閉じられる。第1のフラグスイッチSも閉じられて、第1の記憶セル53が電流符号検出器51の出力52に接続される。アナログバス20を流れる比較された電流Icomparedの値を第1の閾値電流IthAの値と比較するために、電流符号検出器51は、アナログバス20を流れる結果として生じる電流の電流の符号(すなわち、電流の強度または値の符号)を判定するように構成されている。結果として生じる電流の値が正の場合、Icompared+IthAは正であり、このことは、第1の比較電流Icomparedの値が第1の閾値電流IthAの値の反対より大きいことを意味する。これは、感光体電流と以前の感光体電流との間の正の変化が第1の閾値電流の反対よりも大きく、したがって、感光素子101に当たる光が前の変化検出サイクル以来増加したことを意味する。このようにして、かかる変化が検出される。たとえば、Itha=0.1μAの場合、Icompared+IthA=0.01μAとなり、正になる。実際、1.11μAの感光体電流は、以前の感光体電流1μAを、第1の閾値電流の反対の値-0.1μAを超えて上回っている。
【0046】
逆に、結果として生じる電流の値が負の符号を有する場合、これは、感光素子101に当たる光が、変化の検出を正当化するために前の変化検出サイクルに対して十分に増加していないか、または減少したことを意味する。
【0047】
電流符号検出器51は、その出力52に比較結果を出力する。デジタル記憶セル53の状態は、比較結果に応じて、変化するかまたは変化しない。つまり、第1の閾値電流を超える変化が検出される場合、第1の記憶セル53の状態は、第1の状態、すなわち真に変化し、逆に、第1の閾値電流を超える変化が検出されない場合、デジタル記憶セル53の状態は変化せず、第2の、デフォルト状態、すなわち偽の状態に維持される。次いで、第1のフラグスイッチSを開いて、第1の記憶セル53の状態を維持する。
【0048】
ステップS04では、前回の感光体電流IPRout,lastから感光体電流IPRoutを減算する。これは、ステップS02の反対である。感光体電流IPRoutと前の感光体電流IPRout,lastとの間の差に応じた比較電流Icomparedは、すでに第3の電流記憶セルIS3に保存されているので、この比較された電流Icomparedは、その値の符号を変更するために別の記憶セル、例えば、第1の電流記憶セルIS1に書き込まれるだけでよい。したがって、ステップS14において、第3の電流記憶セルIS3は読み出しモードにあり、第1の電流記憶セルIS1は書き込みモードにある。比較電流Icomparedは、アナログバス20を介して第3の電流記憶セルIS3から第1の電流記憶セルIS1に伝搬し、その値の符号を変化させる。感光体回路1から感光体電流を、および第2の電流記憶セルIS2から前の感光体電流IPRout,lastを検索することもできるであろう。
【0049】
ステップS05において、電流符号検出部51は、比較電流の値と、第5の電流記憶セルIS5に記憶されている第2の閾値電流の値とを比較する。第2のデジタル記憶セル54の状態は、比較結果に依存する。そうするために、第1の電流記憶セルIS1および第5の電流記憶セルIS5は、-Icomparedで表される比較電流値IPRout+IPRout,last、および第2の閾値電流の値IthBをそれぞれアナログバス20に送るために、読み取りモードにある。したがって、結果として生じるアナログバス20上の電流は、IthB-Icomparedの値を示す。比較器スイッチScompは、電流符号検出器51をアナログバス20に接続するために閉じられる。第2のフラグスイッチSも閉じられて、第2の記憶セル54が電流符号検出器51の出力52に接続される。結果として得られる電流の値が正の場合、IthB-Icomparedは正であり、このことは、比較電流Icomparedの値が、第2の閾値電流IthBの値よりも低いことを意味する。これは、感光体電流と以前の感光体電流との間の負の変化が第2の閾値電流よりも大きく、したがって、感光素子101に当たる光は、前回の変化検出サイクルから十分に減少したことを意味する。このようにして、かかる変化が検出される。
【0050】
逆に、得られる電流の値が負である場合、それは、感光素子101に当たる光が、変化を検出することを正当化する前の変化検出サイクルに対して十分に減少していないか、または増加したことを意味する。たとえば、Icompared=0.11μA、およびIthB=-0.1μAの場合、IthB-Icompared=-0.21μAである。その結果生じる電流は負であり、これは、1.11μAの感光体電流が、以前の感光体電流1μAよりも、第2の閾値電流の反対の値-0.1μAを超えて下回らないからである。
【0051】
電流符号検出器51は、その出力52に比較結果を出力する。第2のデジタル記憶セル54の状態は、比較結果に応じて変化するかまたは変化しない。つまり、第2の閾値電流を超える負の変化が検出される場合、第2のデジタル記憶セル54の状態は、第1の状態、つまり、真に変化し、逆に、第1の閾値電流を超える負の変化が検出されない場合、第2のデジタル記憶セル54の状態は変化せず、第2の、デフォルト状態、すなわち偽の状態に維持される。次いで、第2のフラグスイッチSを開いて、第2のデジタル記憶セル54の状態を維持する。
【0052】
ここで閾値電流が使用される順序は純粋に例示であり、ステップS02およびS03は、必要に応じて、ステップS04およびS05の後に実行され得ることに留意されたい。数値例では、閾値電流は同じ値を有し、したがって、第1の閾値電流および第2の閾値は、1つの単一の閾値電流であり得る。ただし、第1の閾値電流および第2の閾値電流は、正または負の異なる変化を検出するために、異なる値を有し得る。好ましくは、第1の閾値電流および第2の閾値電流は、感光体電流が正であるため、負の値を有する。ただし、電流記憶セルを使用することによって電流の符号を変更することは容易であるため、当業者は、その説明で言及された電流の符号が各電流に対して個別に容易に変更され得ることを理解するであろう。
【0053】
ステップS03およびS05の結果として、フラグAおよびBの状態が決定されている。アドレスイベント表現(AER:address-event representation)回路3は、フラグAおよびBの状態を監視する。ピクセル回路1の記憶セル53、54の1つが真になった場合、AER回路3は、他の外部条件が満たされた場合、その特定のピクセル回路1の配列アドレス(すなわち、x、y配列アドレス)の構築を実行することができる。このアドレスと、どのフラグ(AまたはB)が真であるかについての情報とは、AER回路3によってアドレス読み出しシステムに送信され得る。外部条件は、例えば、AER回路3の状態、外部計算または測定の結果に依存し得る。
【0054】
ピクセル回路1の読み出しは、まず露出測定を含む。ステップS06は、感光素子101の露出測定を決定するための感光体電流IPRoutの測定である。それは、記憶セル53、54の状態によって調整される。コントローラ2によってすべてのピクセル回路1に露出測定命令が送信されるが、デジタル記憶装置53、54が真の状態にあるピクセル回路1だけがこの読み出し命令を実行する。デジタル記憶装置53、54が真の状態にあるピクセル回路1は、アクティブなピクセル回路1として示される。露出測定命令の実行は、図5および図6においてグローバル条件「EM有効」として要約されている他の条件によってさらに条件付けられ得る。
【0055】
好ましくは、アクティブなピクセル回路1によってピクセル内較正露出測定が実行される。較正電流は、感光体電流IPRoutから差し引かれ、結果として生じる電流は、アナログバス20を介して電流読み出しユニットに送られる。較正電流は、第6の電流記憶セルIS6に保存される。第6の電流記憶セルIS6への較正電流の保存は、例えば変化検出サイクルの開始時またはその前にいつでも実行され得る較正手順の間に行われる。好ましくは、較正手順は、コントローラ2からの指示に応答して、すべてのピクセル回路1によって同時に実行される。
【0056】
較正手順の間、感光素子101と反転増幅器103の入力102との間のスイッチS2が開かれる。感光体回路10のスイッチS1は閉じられ、その結果、較正電源4は、感光素子101の代わりに入力102に接続される。較正電源4は、トランジスタ104の電源でもある入力102に外部基準較正電流Icalを供給する。その結果、感光体回路10の出力11における電流は、基準較正電流Icalから導出された較正電流IPRout,calである。出力11をアナログバス20に接続するためにフロントエンドスイッチSPRが閉じられる。第6の電流記憶セルIS6は書き込みモードにあり、較正電流IPRout,calを保存する。較正手順の終わりに、スイッチS1が再び開かれ、スイッチS2が閉じられ、それにより、感光体回路10をその通常の構成に戻す。
【0057】
外部基準較正電流Icalが感光体電流IPRoutと同じ経路をたどって、保存された較正電流IPRout,calとなるため、ピクセル回路1の保存された較正電流IPRout,calは、感光体電流IPRoutに影響を与え得る特定のピクセル回路1の電気的特性の変動を反映する。その結果、ピクセル回路1の構成要素の特性は、特に感光体回路10に起因して1つのピクセル回路1と別のピクセル回路1とで異なるので、ピクセル回路1の較正電流IPRout,calは、各ピクセル回路1に固有かつ特有である。これはデバイス不一致と呼ばれる。感光体電流IPRoutから較正電流IPRout,calを差し引くことにより、露出測定結果からデバイス不一致の影響を取り除くことができる。特に、図4に示すような対数感光体の場合、露出測定の結果は、デバイス不一致が原因で、応答の対数特性によって増幅される大きな誤差の影響を受け得る。
【0058】
変化検出サイクルまたは読み出しごとに新しい較正電流を書き込む必要はなく、複数の変化検出サイクルまたは露出測定中に同じ較正電流を使用してもよい。ただし、第6の電流記憶セルIS6に記憶された較正電流は、好ましくは、ピクセル回路1に影響を与える要因(温度、干渉など)の変動を反映するのに十分な頻度で更新される。
【0059】
較正された露出測定を実行するために、第6の電流記憶セルIS6は読み取りモードにあり、フロントエンドスイッチSPRは閉じているので、アナログバス20に結果として生じる電流は、読み取り電流IPRout-IPRout,calである(ステップS16)。読み出しスイッチSroが閉じられると、アナログバス20は電流読み出しユニットに接続され、読み出し電流は、電流-電圧(I/V)変換器および/またはアナログ-デジタル変換器(ADC)を介して上記電流読み出しユニットに送られる。これにより、ピクセル回路1が読み出される。
【0060】
少なくとも読み出しスイッチSroの閉鎖は、すべてのアクティブなピクセル回路1によって同時に実行されるわけではない。アクティブなピクセル回路1は順次選択されて読み出される。最初に、例えばアクティブな行、すなわち少なくとも1つのアクティブなピクセル回路1を有する行が選択される。アクティブな行は、フラグAおよびフラグBの状態の監視を通じて決定されたアクティブなピクセル回路1のアドレスに基づき、各行をスキャンしてアクティブなピクセル回路1の存在を検出することによって選択されるか、AER回路3のAERアービタによって直接選択され得る。
【0061】
次に、選択された各行について、読み出しスイッチSroを閉じることにより、各々のアクティブなピクセル回路1が読み取られる。これは、(特に、列I/V変換器および/または列ADCを備えた)列読み取り装置が提供されている場合、列(つまり、少なくとも1つのアクティブなピクセル回路1を有するアクティブな列)ごとに、またはすべてのアクティブな行に対して並列に実行できる。あるいは、列方向の読み出しでは、行ごとのすべてのアクティブなピクセル回路1を並列に読み出すことができる。
【0062】
最初のアプローチの場合、変化検出サイクルを再開または再始動する前に画像センサのすべてのアクティブなピクセル回路1が読み取られる。これにより、読み出し手順の継続時間、さらには変化検出サイクルの継続時間が、アクティブなピクセル回路1の数、つまり変化を検出し、フラグを真に設定したアクティブなピクセル回路1の数に依存するという意味で、不均一な「フレームレート」になる。したがって、フレームレートは、イベントベースの画像センサによって取得されたシーンの活動、つまり光の変化に依存する。
【0063】
第2のアプローチでは、変化検出サイクルを再開または再始動する前に、すべてのアクティブなピクセル回路1が必ずしも読み取られるとは限らない。変化検出サイクルは、たとえば一定の時間が経過した後、または一定の量のピクセル回路1が読み取られた後など、すべてのアクティブなピクセル回路1が読み取られる前に、再始動または再開され得る。読み出しに割り当てられた時間の長さは、固定されている(つまり、固定された「フレームレート」)か、または変動し得る。同様に、読み取られたアクティブなピクセル回路1の数は、固定されている(すなわち、固定された「フレームレート」)か、または変動し得る。
【0064】
たとえば、ピクセル回路が多すぎて読み取れない場合、すべてのアクティブなピクセル回路1が読み取られたとき、または特定の時間が経過した(一定量のピクセル回路1が読み込まれた)ときに、変化検出サイクルを再開または再始動することによって、2つのアプローチを組み合わせることもできる。
【0065】
ステップS07において、ピクセル回路1のフラグの1つが真に設定されている場合、すなわち、記憶セル53、54の1つが第1の状態にある場合、新しい変化検出サイクルに使用されるための新しい以前の感光体電流として、以前の感光体電流IPRout,lastが感光体電流IPRoutに置き換えられる。そうするために、第2の電流記憶セルIS2に感光体電流IPRoutが書き込まれる。
【0066】
感光体電流IPRoutの値の符号の変化を回避するために、感光体電流IPRoutは、まず別の記憶セルに書き込まれる。例えば、ステップS17では、フロントエンドスイッチSPRが閉じられて、感光体回路10の出力11がアナログバス20に接続され、感光体電流IPRoutがアナログバス20上で利用可能になる。第1の電流記憶セルIS1は書き込みモードにあり、感光体電流IPRoutを書き込む。次に、フロントエンドスイッチSPRが開かれ、第1の電流記憶セルIS1が読み取りモードになり、第2の電流記憶セルIS2が書き込みモードになる。第1の電流記憶セルIS1から第2の電流記憶セルIS2に感光体電流IPRoutが転送される。そうすることにより、感光体電流IPRoutの値の符号は、再度読み取られるときに2回変更される。第2の電流記憶セルIS2に保存された電流は、ピクセル回路1の次の変化検出サイクルの間、以前の感光体電流IPRoutとして使用される。
【0067】
感光体回路10を再び明示的に使用して感光体電流IPRoutを得るのではなく、電流記憶セルに既に保存されている電流を使用することができる。たとえば、第1の電流記憶セルIS1と第3の電流記憶セルIS3に保存された比較電流Icomparedおよびその逆の-Icomparedは、±(IPRout-IPRout,last)に対応するため、感光体電流IPRoutを取得するために使用され得る。感光体電流IPRoutはまた、露出測定中に、第1の電流記憶セルIS1または第3の電流記憶セルIS3などのその変化検出サイクルではもはや使用されない電流記憶セルに保存されてもよい。
【0068】
最後に、変化検出サイクルの終わりのステップS08において、フラグがクリアされ、すなわちデフォルト状態である偽にリセットされる。リセット信号rstが記憶セル53、54に送信され(ステップS18)、それらを強制的に第2の状態(すなわち、偽)にする。すべてのアクティブなピクセル回路1が読み取られた場合、すべてのフラグがクリアされてもよく、コントローラ2からすべてのピクセル回路1にリセット信号rstが送信されてもよい。
【0069】
ただし、例えば、そのために割り当てられた時間が経過したために、いくつかのアクティブなピクセル回路1が読み出し手順中に読み取られなかった場合、未読のアクティブなピクセル回路1のフラグをクリアしないことが好ましい。したがって、リセット信号rstは、読み出し手順中に読み出される各ピクセル回路1に選択的に送られ得る。したがって、未読のアクティブなピクセル回路1はアクティブのまま、つまりフラグが真の状態にあり、次の読み出し手順で読み込まれる。好ましくは、アクティブなピクセル回路1は、後続の読み出し手順中に同じ順序で読み取られないので、読み出し手順を読み取られなかったアクティブなピクセル回路1は、次の読み出し手順中に最初に読み取られるものとなる。
【0070】
同様に、ステップS07は、好ましくは、読み出し手順中に読み込まれなかったアクティブなピクセル回路1によって実行されず、読み出し手順中に読み込まれたアクティブなピクセル回路によってのみ実行される。これは、ステップS07を読み出し手順の一部として実行することによって実行され得る。
【0071】
上述の変化検出サイクルにおいて、電流比較器50は、2つの記憶セル53、54を含み、第1の記憶セル53の状態は、感光体電流の値の増加を表し、第2の記憶セル54の状態は、感光体電流の値の減少を表す。したがって、AER回路3は、記憶セル53、54の状態の監視を通じて、感光体電流がどのように変化したか、すなわち、増加イベントまたは減少イベント(イベントなしは変化なしを意味する)を判定し得る。ただし、電流符号検出器51に接続されたただ1つの記憶セルを有することが可能である。この場合、AER回路3は、ピクセル回路1の感光体電流に変化が生じたことのみを判定し得る。変化の検出は、主に、ピクセル回路1のアドレスを判定するため、およびピクセル回路1の読み出しを調整するために使用されるので、これで十分であり得る。動作方法において、アナログバスを流れる比較電流の値と閾値電流の値との間の第2の比較は、一意のフラグの状態によって条件付けられ得る。実際、フラグの状態が第1の比較で変更されている場合、第2の比較を行う必要はない。2つの記憶セル53、54がある場合、第1の記憶セル53の状態によって条件付けられた第2の比較を行うことも可能である。
【0072】
本発明を特定の好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明は決してそれに限定されず、説明した手段のすべての技術的等価物およびそれらの組み合わせを含むことは明らかである。特に、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6