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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】再生リチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230313BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230313BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0525
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021043768
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143313
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 才昇
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041615(JP,A)
【文献】特開2014-203551(JP,A)
【文献】特開2015-011930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/058、10/052、10/44、10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが小さい(CPn>CNn)再生前リチウムイオン二次電池から、
上記正極不可逆容量CPnよりも上記負極不可逆容量CNnが大きい(CPn<CNn)再生リチウムイオン二次電池を製造する
再生リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
上記再生前リチウムイオン二次電池を、20~25℃の第1電池温度範囲内の第1充電時電池温度下で、2~13%の第1SOC範囲内の第1SOCに調整する第1SOC調整工程と、
上記第1SOCに調整した上記再生前リチウムイオン二次電池を、正負端子開放状態で、5~25時間の第1期間範囲内の第1エージング期間に亘り、60~65℃の第1環境温度範囲内の第1エージング環境温度下に置く第1高温エージング工程と、を備える
再生リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の再生リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
上記再生前リチウムイオン二次電池は、
正負極容量比RCが、RC=1.02~1.40である
再生リチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)向けリチウムイオン二次電池(以下、単に電池ともいう)では、高出力な電池が求められる傾向にあるが、電気自動車(EV),プラグインハイブリッド自動車(PHV)などに用いる電池においては、高容量、コンパクトな電池を広いSOC範囲(例えば、SOC10%以下からSOC95%以上)に亘って使用することを求められる場合もある。なお、このような電池に関連する従来技術として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/024250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように広いSOC範囲で使用される電池においては、SOCが変化しても、電池抵抗の大きさが余り変化しないのが好ましい。SOCの大きさによって電池抵抗が異なる電池を用いる場合には、SOCに応じて電池の制御手法を変化させるなどの考慮が必要になるからである。
【0005】
ところで、電池の製造に当たっては、未充電電池を製造した後、初充電を行い、更に、高温エージングを行う等して電池を完成する。このような初充電及び高温エージングを行うと、正極及び負極にはそれぞれ、正極活物質の一部の結晶構造が崩れたり、電解液に含まれる電解質成分が分解したSEI(Solid Electrolyte Interphase)が堆積するなどによって、概ね正極容量CPや負極容量CNの大きさに比例した、不可逆容量(正極不可逆容量CPn及び負極不可逆容量CNn)が発生する。
さらに、その後に電池の置かれた温度などの環境や充電状態や使用状況によっては、正極不可逆容量CPn及び負極不可逆容量CNnの両方或いは一方が徐々に増加する場合もある。即ち、電池によっては、正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが小さい(CPn>CNn)状態となっている電池も生じ得る。
【0006】
しかるに、このような正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが小さい(CPn>CNn)電池では、例えば低SOC範囲(例えばSOC20%以下,但しSOC0%より大きい)範囲で、電池を放電させて電池電圧を徐々に低下させると、負極電位が上昇するよりも前に、正極電位が大きく低下し、電池抵抗(DC-IR)が大きくなる不具合が生じる。即ち、電池抵抗が低SOCの範囲で他の範囲よりも高くなる特性の電池となる場合がある。放電により正極活物質内にLiイオンが多く充填されると、正極活物質内でLiイオンの移動がし難くなり、正極電位が低下すると共に、電池抵抗が上昇するのがその原因の1つと考えられる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、低SOC領域においても電池抵抗の上昇を抑制した再生リチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが小さい(CPn>CNn)再生前リチウムイオン二次電池から、上記正極不可逆容量CPnよりも上記負極不可逆容量CNnが大きい(CPn<CNn)再生リチウムイオン二次電池を製造する再生リチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記再生前リチウムイオン二次電池を、20~25℃の第1電池温度範囲内の第1充電時電池温度下で、2~13%の第1SOC範囲内の第1SOCに調整する第1SOC調整工程と、上記第1SOCに調整した上記再生前リチウムイオン二次電池を、正負端子開放状態で、5~25時間の第1期間範囲内の第1エージング期間に亘り、60~65℃の第1環境温度範囲内の第1エージング環境温度下に置く第1高温エージング工程と、を備える再生リチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0009】
この製造方法では、第1SOC調整工程において2~13%の低い第1SOCに調整した後の再生前リチウムイオン二次電池(以下、単に再生前電池ともいう)を、第1高温エージング工程で高温の第1エージング環境温度下に置く。このように、低い第1SOCで高温エージングを行うので、負極板の負極不可逆容量CNnを選択的に増大させることができ、正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが大きい再生リチウムイオン二次電池(以下、単に再生電池ともいう)とすることができる。
そしてこれにより、低SOC領域においても電池抵抗の上昇を抑制した再生電池を製造できる。
【0010】
(2)(1)に記載の再生リチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記再生前リチウムイオン二次電池は、正負極容量比RCが、RC=1.02~1.40である再生リチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
【0011】
この製造方法では、再生前電池として、正負極容量比RCが比較的小さい、RC=1.02~1.40の再生前電池を用いる。
このような再生前電池は、正極容量CPに対する負極容量CNが余り大きくないので、使用条件などによって、正極において正極不可逆容量が増加すると、容易に正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが小さい(CPn>CNn)状態の再生前電池となり易い。
これに対し、本件では、第1SOC調整工程及び第1高温エージング工程を行うので、正極不可逆容量CPnよりも上記負極不可逆容量CNnが大きい(CPn<CNn)再生電池を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係り、再生前電池及び再生電池の縦断面図である。
図2】実施形態に係る再生電池の製造工程を示すフローチャートである。
図3】実施形態に係り、再生前電池及び再生電池の特性を示し、上段は充電電荷量(容量)と電極電位及び電池電圧との関係を示すグラフであり、下段は充電電荷量(容量)と電池抵抗Rb(DC-IR)との関係を示すグラフである。
図4】実施形態の第1SOC調製工程及び第1高温エージング工程に相当する第1初充電工程及び第1高温エージング工程に加え、第2初充電工程及び第2高温エージング工程を行って製造した使用前電池において、第1初充電工程(第1SOC調製工程に相当)のSOC及び第1高温エージング工程の第1エージング期間を変更した場合の、電池抵抗Rbの変化を示すグラフである。
図5】製造時の電池、製造後の使用前電池、使用後の再生前電池の特性を示し、上段は充電電荷量(容量)と電極電位及び電池電圧との関係を示すグラフであり、下段は充電電荷量(容量)と電池抵抗Rb(DC-IR)との関係を示すグラフである。
図6】使用前電池の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態及び参考形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態に係る再生電池1、再生前電池1B、参考形態に係る使用前電池1A、及び未充電電池1Xの縦断面図を示す。これらの電池1,1B,1A,1Xは、直方体箱状の電池ケース10と、この内部に収容された扁平状捲回型の電極体20及び電解液15と、電池ケース10に支持された正極端子部材60及び負極端子部材70等から構成されている。
【0014】
このうち電極体20は、帯状の正極板30と帯状の負極板40とを一対の帯状のセパレータ50を介して捲回してなる。正極板30の正極活物質層に含まれる正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的にはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を用いている。また、負極板40の負極活物質層に含まれる負極活物質として、炭素材料、具体的には黒鉛を用いている。ここで、正極板30の正極容量をCP(Ah)とし、負極40の負極容量をCN(Ah)とする(図3図5参照)。
【0015】
なお前述したように、負極板40の負極活物質層(図示しない)と正極板30の正極活物質層(図示しない)とは、セパレータを介して対向して配置されるが、負極活物質層を正極活物質層よりも広くし、且つ、負極活物質層は正極活物質層が対向する範囲を含むように(即ち、正極活物質層のどの部位にも対向する負極活物質層が存在するように)配置する必要があり、正極活物質層よりも広くしなければならない。また、負極活物質層における単位面積当たりの負極容量を、正極活物質層における単位面積当たりの正極容量よりも大きくしておく必要もある。再生電池1等の充電の際に、負極板40にLi金属が析出するのを防止するためである。また、電極体20として、セパレータを介した正極板30と負極板40との組付け要件(位置決め精度など)をも考慮すると、負極40の負極容量CNは、正極板30の正極容量CPよりも若干大きくしておく必要があり、再生前電池1B(再生電池1等でも等しい)の正負極容量比RC(=CN/PC)は、少なくともRC=1.02以上に設定する必要があると考えられる。
【0016】
一方、負極40の負極容量CNを正極板30の正極容量CPに比して十分大きくした場合には、後述する第1SOC調整工程S4及び第1高温エージング工程S5を行わなくとも、正極不可逆容量CPnよりも負極不可逆容量CNnが大きく(CPn<CNn)なり易い。この点を考慮すると、正負極容量比RC(=CN/CP)が、概ねRC=1.40以下の再生前電池1B(再生電池1等でも同じ)について、本発明を適用するのが好ましい。本実施形態の再生電池1(再生前電池1B,使用前電池1A,未充電電池1Xも同じ)における正負極容量比RCは、RC=CN/CP=1.38とした。
【0017】
なお、電解液15としては、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒中に含む非水電解液が用いられる。電解液15に用いる支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li(CF3SO22N、LiCF3SO3等のリチウム塩が例示される。かかる支持塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい例として、LiPF6が挙げられ,本実施形態でもLiPF6を用いる。また、電解液15は、例えば、支持塩の濃度が0.7~1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
【0018】
また、電解液15に用いる非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒を適宜選択して使用することができる。特に好ましい非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。これら有機溶媒は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、ECとDMCとEMCとを体積比2~5:2~5:2~5程度で混合したものを用いることができる。
【0019】
また、無水マレイン酸、無水コハク酸などのカルボン酸無水物およびシュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸から選択される一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて、凡そ0.1~1質量%程度添加することができる。またさらに、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチレンサルファイト、およびフルオロエチレンカーボネートから選択される一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて凡そ0.1~1質量%程度添加することもできる。
【0020】
(未充電電池、使用前電池、再生前電池)
ここで、公知の手法で組立てた未充電電池1X(図1参照)に初充電及び高温エージングを行って使用前電池1Aを製造(図6参照)し、この使用前電池1Aを使用して再生前電池1Bとした場合における、各電池1X,1A,1Bの特性について、図5を用いて説明する。
【0021】
まず「積層荷重付与工程」SJ1において、未充電電池1X(後の使用前電池1A)を複数(本例では10個)積層し、拘束治具(図示しない)を用いて、予め定めた荷重BLJ(本例ではBLJ=9kN)を付与して拘束する。このようにして複数の未充電電池1X(使用前電池1A)に荷重BLを掛けたまま状態で、各々の使用前電池1Aについて、各工程SJ2~SJ8を行う(図6参照)。
【0022】
積層荷重付与工程SJ1の後、「第1初充電工程」SJ2に進み、未充電電池1Xの電池温度TBを、第1充電時電池温度TBJ1(本例ではTBJ1=20.0℃)とした上で、第1初充電SOCがSCJ1(本例ではSCJ1=10%)になるまで充電する。具体的には、拘束治具で拘束されている未充電電池1Xの両端子部材60,70に充放電装置(不図示)を接続して、定電流定電圧(CCCV)充電により、未充電電池1Xの電池電圧VBが予め定めた値(本例では、SCJ1=10%に相当するVB=3.44V)になるまで、未充電電池1Xを第1初充電する。
【0023】
次に、「第1高温エージング工程」SJ3において、第1初充電SOCまで初充電した使用前電池1Aを、正極端子部材60及び負極端子部材70を開放した状態で、第1エージング期間EPJ1(本例ではEPJ1=20hrs)に亘り、第1エージング環境温度TEJ1(本例ではTEJ1=63℃)下に置く第1高温エージングを行う。このように低SOC下で高温エージングを行うと、使用前電池1Aの正極板30及び負極板40のうち、特に負極板40において選択的にSEIの生成が進行し、負極不可逆容量CNnaの一部が発生すると考えられる(図5参照)。
【0024】
その後、「第1冷却放置工程」SJ4において、第1冷却環境温度TCJ1(本例ではTCJ1=20℃)下の冷却室(図示しない)内で使用前電池1Aを第1冷却期間CPJ1(本例ではCPJ1=20分間)に亘りファンで強制冷却する。さらに、第1環境温度TKJ1(本例ではTKJ1=20.0℃)とした放置室(図示しない)に使用前電池1Aを移送し、第1放置期間HPJ1(本例ではHPJ1=30分間)に亘って放置して、使用前電池1Aの電池温度TBを第1環境温度TKJ1と同じ第2充電時電池温度TBJ2(本例ではTBJ2=20.0℃)とする。
【0025】
さらに「第2初充電工程」SJ5に進み、第2充電時電池温度TBJ2とした未充電電池1Xを、第2初充電SOCがSCJ2(本例ではSCJ2=91%)になるまで充電する。定電流定電圧(CCCV)充電により、未充電電池1Xの電池電圧VBが予め定めた値(本例では、SCJ2=91%に相当するVB=3.97V)になるまで、未充電電池1Xを第2初充電する。
【0026】
次に、「第2高温エージング工程」SJ6において、第2初充電SOCまで第2初充電した使用前電池1Aを、正極端子部材60及び負極端子部材70を開放した状態で、第2エージング期間EPJ2(本例ではEPJ2=20hrs)に亘り、第2エージング環境温度TEJ2(本例ではTEJ2=63℃)下に置く高温エージングを行う。このように高いSOC下で高温エージングを行うと、使用前電池1Aの負極板40の表面において、SEIの生成が進行し、負極不可逆容量CNnaが増大すると考えられる。一方、正極板30においては、電解液15をなすフッ素を含む支持塩(LiPF6など)と水分が反応してフッ酸が発生し正極活物質の結晶構造を破壊することによる正極容量の低下によって、正極不可逆容量CPnaが発生すると考えられる(図5参照)。
【0027】
その後、「第2冷却放置工程」SJ7において、第2冷却環境温度TCJ2(本例ではTCJ2=20℃)下の冷却室(図示しない)内で使用前電池1Aを第2冷却期間CPJ2(本例ではCPJ2=20分間)に亘りファンで強制冷却する。さらに、第2環境温度TKJ2(本例ではTKJ2=20.0℃)とした放置室(図示しない)に使用前電池1Aを移送し、第2放置期間HPJ2(本例ではHPJ2=30分間)に亘って放置して、使用前電池1Aの電池温度TBを第2環境温度TKJ2と同じ検査時電池温度TBJ3(本例ではTBJ3=20.0℃)とする。
【0028】
その後は、後述する実施形態と同じく「検査工程」SJ8で、検査時電池温度TBJ3=20.0℃とされた使用前電池1Aについて、自己放電の大小を検査する自己放電検査、使用前電池1Aの容量の大小を検査する容量検査など各種の検査(詳細は省略する)を行い、良品の使用前電池1Aを残す。かくして、正負極容量比RC=CN/CP=1.38の使用前電池1Aが得られる。
【0029】
この使用前電池1Aは、上述のように、通常の第2初充電工程SJ5及び第2高温エージング工程SJ7のみならず、これに先立って、第1初充電工程SJ2及び第1高温エージング工程SJ3による低SOC下での高温エージングを行って、負極板40において選択的にSEIの生成を進行させた上で、負極板40にSEIを生成したり、正極板30に不可逆容量を生成している。このため、使用前電池1Aは、正負極容量比RC=1.38の、比較的正負極容量比RCの低い電池であるが、図5の上段のグラフにおいて、二点鎖線で示すように、正極不可逆容量CPnaよりも負極不可逆容量CNnaを大きくできる(CPna<CNna)。
【0030】
なお、図5の上段のグラフは、未充電電池1X(破線)、使用前電池1A(二点鎖線)及び再生前電池1B(実線)における、充電電荷量と、正極板30及び負極板40に発生する正極電位PE及び負極電位NEとの関係を示すグラフである。即ち、未充電電池1Xを初充電する際には、破線で示す経路を通るが、正極不可逆容量CPna及び負極不可逆容量CNnaを生じた使用前電池1Aでは、放電しても二点鎖線で示す経路を通る。
【0031】
一方、図5の下段のグラフは、各電池1X,1A,1Bにおける、充電電気量と電池抵抗Rb(DC-IR)との関係を示す。充電電気量が低い領域(図5の下段のグラフにおいて左側の領域)において、電池抵抗RBが増加しているのは、放電により正極活物質内にLiイオンが多く充填された状態(充電電気量が少ない状態)では、正極活物質内でLiイオンの移動がし難くなり、正極電位が低下すると共に、電池抵抗Rbが上昇すると考えられる。
【0032】
使用前電池1Aのように、正極不可逆容量CPnaに比して負極不可逆容量CNnaが大きい(CPna<CNna)電池では、図5の上段のグラフにおいて二点鎖線で示すように、例えば、放電が進んで、徐々にSOC10%以下などの低SOCの状態となった場合、正極電位PEが大きく低下するよりも先に、負極電位NEが大きく上昇して、正極電位PEと負極電位NEとの差で与えられる電池電圧VBが低下する(例えば、本参考形態では、SOC0%に対応するVB1a=3.0Vに近づく)ので、図5の下段のグラフにおいて二点鎖線で示すように、(SOC0%以下の範囲となる)正極電位PEが大きく低下した範囲での電池の使用はされず、低SOC領域でも電池抵抗Rbは余り上昇しない。
【0033】
ところで使用前電池1Aを使用していると、その不可逆容量CPna,CNnaの大きさが変化する場合がある。図5の上段のグラフにおいて二点鎖線で示す使用前電池1Aが、例えば、満充電(SOC100%)付近のSOCで高温下に長時間に亘って置いていたなど、使用前電池1Aを使用する状況によっては、使用後の再生前電池1Bとなり、図5の上段のグラフにおいて実線で示すように、負極不可逆容量CNnaが負極不可逆容量CNnbに若干増加するのに比して、正極不可逆容量CPnaから正極不可逆容量CPnbに大きく増加し、正極不可逆容量CPnbよりも負極不可逆容量CNnbが小さく(CPnb>CNnb)なる場合がある。
【0034】
この再生前電池1Bのように、正極不可逆容量CPnbに比して負極不可逆容量CNnbが小さい(CPnb>CNnb)電池では、前述とは逆に、例えば放電が進んで、SOC10%以下などの低SOCの状態となった場合、図5の上段のグラフにおいて下側の実線に沿って負極電位NEが大きく上昇するよりも先に(図5においてSOCの大きい右側の領域で)、上側の実線に沿って正極電位PEが大きく低下して、電池電圧VBが低下し、SOC0%に対応するVB1b=3.0Vに近づく。従って、この再生前電池1Bでは、低SOC領域において、正極電位PEが大きく低下した範囲が使用されることになり、図5の下段のグラフに実線で示すように、低SOCの領域において、電池抵抗Rbが上昇した特性の再生前電池1Bとなり好ましくない。
【0035】
(実施形態)
そこで、本実施形態では、上述の再生前電池1Bを用いて再生電池1を製造する。以下に、再生電池1の製造方法について、図2を参照して説明する。まず「第1検査工程」S1において、再生前電池1Bにおける正極不可逆容量CPnb及び負極不可逆容量CNnbの大小を検知する。続く「不可逆容量選別工程」S2において、CPnb>CNnbであるか否かを判断し、No、即ち、CPnb≦CNnbの場合には、各工程S2~S6をスキップして、工程S7に進む。一方、Yes、即ち、CPnb>CNnbの場合には、工程S3に進む。
【0036】
「荷重付与工程」S3では、再生前電池1B(後の再生電池1)拘束治具を用いて、予め定めた第1荷重BL1(本実施形態ではBL1=9kN)を付与して拘束する。このようにして再生電池1(再生前電池1B)に第1荷重BL1を掛けたまま状態で、第1SOC調整工程S4から第2SOC調整工程S8までを行う。
【0037】
まず「第1SOC調整工程」S4において、再生前電池1Bの電池温度TBを、20~25℃の第1電池温度範囲TA1内の第1電池温度TB1(本実施形態ではTB1=20.0℃)とした上で、2~13%の第1SOC範囲SA1内の第1SOCSC1(本実施形態ではSC1=10%)になるように充電或いは放電により再生前電池1BのSOCを調整する。具体的には、拘束治具で拘束されている再生前電池1Bの両端子部材60,70に充放電装置(不図示)を接続して、定電流定電圧(CCCV)の充電又は放電により、再生前電池1Bの電池電圧VBが予め定めた値(本実施形態では、SC1=10%に相当するVB=3.44V)になるまで、再生前電池1Bを充電又は放電する。
【0038】
次に、「第1高温エージング工程」S5において、第1SOC調整工程S4で第1SOC(SC1=10%)に調整した再生電池1を、正極端子部材60及び負極端子部材70を開放した状態で、5~25時間の第1期間範囲EA1内の第1エージング期間EP1(本実施形態ではEP1=20hrs)に亘り、60~65℃の第1環境温度範囲TD1内の第1エージング環境温度TE1(本実施形態ではTE1=63℃)下に置く、第1高温エージングを行う。このように第1高温エージングを行うと、再生電池1のうち、特に負極板40において、選択的にSEIの生成が進行し、負極不可逆容量CNncが増大する。
【0039】
次に、「第1冷却放置工程」S6において、第1冷却環境温度TC1(本実施形態ではTC1=20℃)下の冷却室(図示しない)内で再生電池1を第1冷却期間CP1(本実施形態ではCP1=20分間)に亘りファンで強制冷却する。さらに、第1環境温度TK1(本実施形態ではTK1=20.0℃)とした放置室(図示しない)に再生電池1を移送し、第1放置期間HP1(本実施形態ではHP1=30分間)に亘って放置して、再生電池1の電池温度TBを第1環境温度TK1と同じ第2電池温度TB2(本実施形態ではTB2=20.0℃)とする(図2参照)。
【0040】
その後は、「第2検査工程」S7で、第2電池温度TB2=20.0℃とされた再生電池1について、必要な検査、例えば、自己放電の大小を検査する自己放電検査、再生電池1の容量の大小を検査する容量検査など各種の検査(詳細は省略する)を行い、良品の再生電池1を残す。
【0041】
次いで、良品の再生電池1について、第2SOCSC2(本実施形態ではSC2=90%)になるように再生電池1のSOCを調整(充電)する。かくして、再生電池1が製造される。
【0042】
本実施形態に係る再生電池1及び再生前電池1Bの特性について、図3を参照して説明する。なお、図3の上段のグラフは、再生前電池1B(実線)及び再生電池1(上側の実線と下側の一点鎖線)における、充電電荷量と、正極板30及び負極板40に発生する正極電位PE及び負極電位NEとの関係を示すグラフであり、このうち、実線で示す再生前電池1B(実線)は図5の上段において実線で示すグラフと同じである。一方、図3の下段のグラフは、図5の下段の実線のグラフと同じであり、再生前電池1B及び再生電池1における、充電電気量と電池抵抗Rb(DC-IR)との関係を示す。
【0043】
図3の上段のグラフにおいて上側及び下側の実線で示す再生前電池1Bでは、正極不可逆容量CPnbよりも負極不可逆容量CNnbが小さく(CPnb>CNnb)なっている。このため、前述したように、低SOCの領域に、上側の実線で示す正極電位PEが大きく低下した領域を含み、図3の下段の実線のグラフで示すように、電池抵抗Rbが大きく上昇した領域を含む特性の再生前電池1Bとなり好ましくない。
【0044】
これに対し、図3の上段のグラフにおいて上側の実線と下側の一点鎖線で示す、本実施形態の再生電池1では、正極不可逆容量CPncは再生前電池1Bの正極不可逆容量CPnbとほぼ同じであるが、負極不可逆容量CNncは再生前電池1Bの負極不可逆容量CNnbよりも増加している。上述の第1SOC調整工程S4及び第1高温エージング工程S5における、低SOC下での高温エージングにより、選択的に負極板40の負極不可逆容量CNncを増大し得たためである。これにより、破線で示す再生電池1では、正極不可逆容量CPncよりも負極不可逆容量CNncが大きく(CPnc<CNnc)なっている。
【0045】
このため、本実施形態の再生電池1では、再生前電池1Bとは逆に、例えば放電が進んで、SOC10%以下などの低SOCの状態となった場合、上側の実線に沿って正極電位PEが大きく低下するよりも先に(図3においてSOCの大きい右側の領域で)、下側の一点鎖線に沿って負極電位NEが大きく上昇して、両者の差である電池電圧VBが低下し、SOC0%に対応するVB1c=3.0Vに近づく。従って、この再生電池1では、低SOCの領域でも、正極電位PEが大きく低下した範囲は使用されず、図3の下段のグラフに示すように、低SOCの領域においても、電池抵抗Rbが大きく上昇した領域を使用しない。つまり、低SOC領域においても電池抵抗Rbの上昇を抑制した再生電池1を得ることができる。
【0046】
次いで、使用済の再生前電池1Bを用いた調査ではないが、前述の使用前電池1Aの製造おける第1初充電工程SJ2(第1SOC調製工程S4に相当)における第1初充電SOCのSCJ1の大きさ、及び、第1高温エージング工程SJ3(第1高温エージング工程S5に相当)の第1エージング期間EPJ1の長さと、SOC21%における電池抵抗Rbの大きさとの関係について調査したので、その結果(図4参照)について検討する。
【0047】
まず、上述の使用前電池1Aと同じであるが、第1初充電工程SJ2、第1高温エージング工程SJ3及び第1冷却放置工程SJ4を行わないで、積層荷重付与工程SJ1の後、各工程SJ5~SJ8を行った使用前電池について、電池温度TB=25℃、電池電圧VBをSOC21%に相当するVB=3.50Vとした上で測定した電池抵抗Rb(DC-IR)を、図4において二点鎖線で示す基準とした。なお、この例は、第1エージング期間EPJ1=0における、電池抵抗Rbに相当する。
【0048】
また、第1初充電工程SJ2において、第1初充電SOCをSCJ1=10%(VB=3.18Vに対応)とし、第1高温エージング工程SJ3における第1エージング期間EPJ1を、5,10,20hrsの3段階に変化させた場合を、凡例に「SOC10%エージング」と記載して示す。一方、第1初充電工程SJ2において、第1初充電SOCをSCJ1=20%(VB=3.49Vに対応)とし、第1高温エージング工程SJ3における第1エージング期間EPJ1を、5,10,20hrsの3段階に変化させた場合を、凡例に「SOC20%エージング」と記載して示す。
【0049】
また、電池抵抗Rbは、DC-IR測定法により取得する。具体的には、供試した使用前電池1Aを電池温度TB=25℃とした上で、使用前電池1Aを充放電機に接続し、定電流定電圧(CCCV)の充電又は放電により、使用前電池1AをSOC=21%の充電状態とする。即ち、電池電圧VBをSOC21%に相当するVB=3.50Vとする。その後、所定の放電レート(本例では30C)の電流値Iで定電流放電(CC放電)をさせ、放電開始から、0.1秒~10秒の間に電池に生じる電池電圧低下量ΔVを得る。そして、電池抵抗Rb=ΔV/Iにより、電池抵抗Rbを得る。
なお、放電開始から0.1秒までの期間に生じる電圧降下を考慮しないのは、電流を流し始めた直後に生じる電圧降下には、使用前電池1Aの直流抵抗の影響が含まれるので、これを除くためである。
【0050】
図4から容易に理解できるように、破線で結ぶSOC20%エージングの場合、即ち、第1初充電工程SJ2において、第1初充電SOCの大きさSCJ1をやや高いSCJ1=20%に設定した場合には、第1エージング期間EPJ1を変化させても、電池抵抗Rbは、殆ど変化しない。このことから、第1初充電工程SJ2における第1初充電SOCの大きさSCJ1を、SCJ1=20%とするなど大きくし過ぎると、第1初充電工程SJ2及び第1高温エージング工程SJ3において、負極板40(負極活物質層)にSEIを選択的に生成することが難しくなることが判る。
一方、実線で示すSOC10%エージングの場合、即ち、第1初充電工程SJ2において、第1初充電SOCの大きさSCJ1を比較的低いSCJ1=10%に設定した場合には、第1エージング期間EPJ1の増加と共に、電池抵抗Rbが低下することが判る。
【0051】
これらの結果は、再生前電池1Aについて、第1SOC調整工程S4及び第1高温エージング工程S5を行い、負極板40(負極活物質層)にSEIを選択的に生成して、再生電池1を製造する場合にも、適用できると考えられる。
即ち、図4から、使用前電池1Aの製造(図6参照)において、第1初充電工程SJ2における第1初充電SOCの大きさSCJ1は、20%よりも小さくするのが良いと言える。また、別途、負極板40におけるSEIの形成のしやすさから、SCJ1を13%以下の範囲から選択するのが良い。さらに好ましくは、図4で示したように、SCJ1を10%以下の大きさとすると良好な電池抵抗Rbが得られることが判る。なお、負極板の負極活物質層(負極活物質粒子)にSEIを形成できる量のLiイオンを供給する必要があることから、第1初充電工程SJ2における第1初充電SOCの大きさSCJ1は、少なくともSCJ1=2%以上の範囲から選択するのが良く、好ましくは5%以上とするのが好ましい。
【0052】
従って同様に、再生前電池1Bからの再生電池1の製造(図2参照)において、第1SOC調整工程S4における第1SOCの大きさSC1は、20%よりも小さくするのが良いと言える。また負極板40におけるSEIの形成のしやすさから、SC1も13%以下の範囲から選択すると良く、さらに好ましくは、SC1を10%以下の大きさとすると良好な電池抵抗Rbが得られる。一方、SC1も少なくともSC1=2%以上の範囲から選択するのが良く、好ましくは5%以上とするのが好ましい。
【0053】
また、図4から、使用前電池1Aの製造(図6参照)において、第1高温エージング工程SJ3における第1エージング期間EPJ1の長さは、EPJ1=5時間以上とするのが良く、更にはEPJ1=10時間以上とするのが好ましいことが判る。一方、第1エージング期間EPJ1の長さを長くしすぎると、工程のスループットが低下することから、EPJ1=25時間以下とするのが良く、さらには、図4で示したように、EPJ1=20時間以下とするのが好ましい。
【0054】
従って同様に、再生前電池1Bからの再生電池1の製造(図2参照)においても、第1高温エージング工程S5における第1エージング期間EP1の長さは、EP1=5時間以上とするのが良く、更にはEP1=10時間以上とするのが好ましい。一方、EP1=25時間以下とするのが良く、さらには、EP1=20時間以下とするのが好ましい。
【0055】
また、前述の図4に示す調査では、第1高温エージング工程SJ3における第1エージング環境温度TEJ1を、TEJ1=63℃としたが、第1高温エージング工程SJ3の効果(負極におけるSEIの生成)を生じるのには、TEJ1=60℃以上とするのが良い。一方、高温とし過ぎることによる正極の劣化を考慮すると、TEJ1=65℃以下とするのが良い。
【0056】
従って同様に、再生前電池1Bからの再生電池1の製造(図2参照)においても、第1高温エージング工程S5における第1エージング環境温度TE1として、TE1=60℃以上とするのが良い。一方、高温とし過ぎることによる正極の劣化を考慮すると、TE1=65℃以下とするのが良い。即ち、再生電池1の製造に当たり、第1エージング環境温度TE1の取り得る第1環境温度範囲TD1は、TD1=60~65℃の範囲とすると良い。
【0057】
なお、図3図5の上段のグラフ、及び、使用前電池1A、再生前電池1B及び実施形態の再生電池1における正極不可逆容量CPna,CPnb,CPnc、及び、負極不可逆容量CNna,CNnb,CNncの大きさは、以下のようにして得た。
組立工程S1において未充電電池1X(図1参照)を組み立てるのに際し、Li金属箔からなる参照極(図示しない)を電解液15に浸かるように配置し、また、参照極に接続したリード線を外部に延出させて、参照極付きの未充電電池1Xを組み立てる。その後、前述した各工程(SJ1~SJ8、図6参照)により参照極付きの使用前電池1Aを製造する。
その後、1/3Cの定電流でSOC=100%に相当する電池電圧VB2=4.1VまでCCCV充電を行う。次いで、1/3Cの定電流で電池電圧VB=0VになるまでCC放電を行う。
【0058】
この間の各工程及びCCCV充電及びCC放電において、参照極と正極(正極端子部材60)との間に生じる正極電位PE、参照極と負極(負極端子部材70)との間に生じる負極電位NE、及び正極(正極端子部材60)と負極(負極端子部材70)との間に生じる電池電圧VBを取得し、図5の上段の破線及び二点鎖線のグラフを得る。
【0059】
さらに、電池の高SOC下での厳しい使用を模して、参照極付きの使用前電池1AをSOC100%(電池電圧VB2=4.1V)に維持したまま、60℃の高温下に100時間放置して、参照極付きの再生前電池1Bとした。
【0060】
その後、この参照極付きの再生前電池1Bについて、1/3Cの定電流でSOC=100%(電池電圧VB2=4.1V)までCCCV充電を行い、次いで、1/3Cの定電流で電池電圧VB=0VになるまでCC放電を行う。この間のCCCV充電及びCC放電において、正極電位PE、負極電位NE、及び電池電圧VBを取得し、図5及び図3の上段の実線のグラフを得た。
【0061】
その後、参照極付きの再生前電池1Bに対し、前述した本実施形態の各工程(S1~S8、図2参照)を行い、参照極付きの再生電池1を製造した。さらに、参照極付きの再生前電池1Bと同様にして、正極電位PE、負極電位NE、及び電池電圧VBを取得し、図3の上段の一点鎖線のグラフを得た。
【0062】
なお、CC放電によって電池電圧VB=0Vとなる際には、正極電位PE及び負極電位NEは、図5及び図3の上段のグラフにおいて、二点鎖線、実線、或いは一点鎖線で示す経路を通り、充電電気量=0の当初の状態には戻らない。図5及び図3の上段の各グラフに示すように、正極電位PEの経路を示す上側の各線のうち、低い充電電気量側の端点(グラフにおいて左側の端点)に相当する充電電気量を、使用前電池1A、再生前電池1B及び実施形態の再生電池1における正極不可逆容量CPna,CPnb,CPncとする。同様に、負極電位NEの経路を示す下側の各線のうち、低い充電電気量側の端点(グラフにおいて左側の端点)に相当する充電電気量を、使用前電池1A、再生前電池1B及び実施形態の再生電池1における負極不可逆容量CNna,CNnb,CNncとする。
【0063】
また、上述の各工程を経て製造した使用前電池1A、再生前電池1B及び再生電池1について、各充電電気量(各SOC)における電池抵抗Rbを、前述のDC-IR測定法で取得し、図3図5の下段のグラフを得た。
【0064】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 再生電池
1B 再生前電池
TB 電池温度
30 正極板
40 負極板
50 セパレータ
CP (正極板の)正極容量
CN (負極板の)負極容量
RC 正負極容量比
CPn,CPna,CPnb,CPnc 正極不可逆容量
CNn,CNna,CNnb,CNnc 負極不可逆容量
PE 正極電位
NE 負極電位
VB 電池電圧
VB1,VB1a,VB1b,VB1c SOC0%電池電圧
VB2 SOC100%電池電圧
S4 第1初充電工程
TA1 第1電池温度範囲
TB1 第1電池温度
SA1 第1SOC範囲
SC1 第1SOC
S5 第1高温エージング工程
EA1 第1期間範囲
EP1 第1エージング期間
TD1 第1環境温度範囲
TE1 第1エージング環境温度
S7 第2検査工程
TB2 第2電池温度
S8 第2SOC調整工程
SC2 第2SOC
S7 第2高温エージング工程
EA2 第2期間範囲
EP2 第2エージング期間
TD2 第2環境温度範囲
TE2 第2エージング環境温度
S9 検査工程
TB3 検査電池温度
Rb 電池抵抗(DC-IR)
図1
図2
図3
図4
図5
図6