(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】極低温装置用高温超電導電流リードアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H01F6/06 150
H01F6/06 ZAA
H01F6/06 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082001
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジャンイン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ロンジー・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】リヤン・イェ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・ポール・フェルサム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エドワード・モラン
(72)【発明者】
【氏名】アーンスト・ウルフギャング・スタウトナー
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-297025(JP,A)
【文献】特開昭50-118284(JP,A)
【文献】特開昭59-113674(JP,A)
【文献】実開昭56-091411(JP,U)
【文献】特開2016-076344(JP,A)
【文献】特表平08-504300(JP,A)
【文献】特開昭61-002307(JP,A)
【文献】特開2015-230981(JP,A)
【文献】特表2019-534409(JP,A)
【文献】特開昭61-082487(JP,A)
【文献】特開平02-207506(JP,A)
【文献】特表2000-502842(JP,A)
【文献】特開平09-069427(JP,A)
【文献】実開昭63-049264(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 6/04
H01F 6/00
H01L 39/04
B33Y 10/00
B33Y 50/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温システム(100)のリードアセンブリ(112)を製造する方法(900)であって、
第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)の3次元(3D)モデルを開発するステップ(902)であって、前記熱交換器(202)は、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記熱交換器(202)を通って長手方向に延在する複数のチャネル(212)を含み、前記複数のチャネル(212)は前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)は横断面(214)を有する、ステップ(902)と、
前記
横断面の面積を減少させることおよび前記複数の熱表面(216)を増加させることの少なくとも一方によって前記3Dモデルを修正するステップ(904)と、
前記修正された3Dモデルに従って導電性かつ熱伝導性材料を使用して前記熱交換器(202)を積層造形するステップ(906)と、
HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリ(118)を提供するステップと、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部で前記HTSアセンブリ(118)を前記熱交換器(202)に接続するステップと、
を含む方法(900)。
【請求項2】
前記3Dモデルを修正するステップは、
前記熱交換器(202)の前記
横断面の前記面積を最小化するステップと、
前記熱交換器(202)の前記複数の熱表面(216)を最大化するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項3】
前記熱交換器(202)は、軸方向に延在し、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のフィン(228)を含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項4】
前記複数のチャネル(212)は螺旋状である、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項5】
前記熱交換器(202)は、前記熱交換器(202)の内部でジグザグ状になり、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のバッフル(802)を含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項6】
前記HTSアセンブリ(118)を提供するステップは、前記HTSストリップをエンクロージャ(1102)で封入するステップをさらに含み、前記エンクロージャ(1102)は、
G-10で構成される、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項7】
前記第1の端部における前記熱交換器(202)の温度を約150ケルビン(K)に維持しながら、前記第2の端部における前記熱交換器(202)の温度を試験するステップと、
前記第2の端部における前記熱交換器(202)の前記温度が50Kよりも大きい場合には、前記3Dモデルを修正するステップを繰り返すステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項8】
温度を試験するステップは、前記熱交換器(202)の熱交換のコンピュータシミュレーションに基づいて前記熱交換器(202)の前記温度を試験するステップをさらに含む、請求項
7に記載の方法(900)。
【請求項9】
極低温システム(100)
の製造方法であって、
前記極低温システムは、
極低温装置(104)を収容する容器(102)と、
前記容器(102)に埋め込まれ、前記極低温装置(104)に電流を供給するように構成されたリードアセンブリ(112)と、を含み、前記リードアセンブリ(112)は、
導電性かつ熱伝導性材料で構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)であって、前記第1の端部と前記第2の端部との間で前記熱交換器(202)を通って延在する複数のチャネル(212)をさらに含み、前記複数のチャネル(212)が前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)が横断面を有する、熱交換器(202)と、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部において前記極低温装置(104)と前記熱交換器(202)との間に結合され、HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリと、を含み、
前記極低温システムの製造方法は、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部における温度が前記極低温装置(104)のランピング中に前記HTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、
前記熱交換器(202)の前記横断面および前記複数の熱表面(216)を、積層造形プロセスにおいて動的に修正
する
ことを含む、極低温システム(100)
の製造方法。
【請求項10】
前記熱交換器(202)は、軸方向に延在し、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のフィン(228)を含む、請求項
9に記載の極低温システム(100)。
【請求項11】
前記複数のチャネル(212)は螺旋状である、請求項
9に記載の極低温システム(100)。
【請求項12】
前記熱交換器(202)は、前記熱交換器(202)の内部でジグザグ状になり、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のバッフル(802)を含む、請求項
9に記載の極低温システム(100)。
【請求項13】
前記HTSアセンブリ(118)は、前記HTSストリップを封入するエンクロージャ(1102)をさらに含み、前記エンクロージャ(1102)は、
G-10で構成される、請求項
9に記載の極低温システム(100)。
【請求項14】
極低温システム(100)のリードアセンブリ(112)
の製造方法であって、前記極低温システム(100)は極低温装置(104)を収容する容器(102)を含み、前記リードアセンブリ(112)は、
導電性かつ熱伝導性材料で構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)であって、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記熱交換器(202)を通って延在する複数のチャネル(212)をさらに含み、前記複数のチャネル(212)が前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)が横断面を有する、熱交換器(202)と、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部において前記熱交換器(202)に結合され、前記極低温装置(104)に結合するように構成された高温超伝導体(HTS)アセンブリであって、HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリと、を含み、
前記リードアセンブリ(112)は、前記極低温装置(104)に電流を供給するように構成され、前記容器(102)に埋め込まれるようにさらに構成され、
前記リードアセンブリの製造方法は、
前記熱交換器(202)の寸法および構造を、
積層造形プロセス中に動的に修正することであって、使用時に前記修正された熱交換器(202)の前記第2の端部の温度が前記極低温装置(104)のランピング中に前記HTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、
前記熱交換器(202)の寸法および構造を積層造形プロセス中に動的に修正
する
ことを含む、リードアセンブリ(112)
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、リードアセンブリのシステムおよびリードアセンブリの製造方法に関し、より詳細には、極低温システムの極低温装置用のリードアセンブリを製造するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温システムは、磁気共鳴撮像(MRI)システム用の超伝導磁石、超伝導変圧器、発電機、および電子機器などの極低温装置を含む。極低温装置を超伝導状態で動作させるために、極低温装置を液化ヘリウムなどの冷却源と接触させたままにすることによって極低温装置を冷却する。極低温装置が特定の動作状態に達するために、電力が極低温装置に供給される。例えば、MRIシステムの超伝導磁石を一定の磁場強度(例えば、1.5テスラ(T))まで上昇させる場合、室温の電源から磁石用の超伝導磁石に電力を供給し、電流から磁場を発生させる。電流は、リードアセンブリを介して極低温装置に供給される。
【0003】
さらに、リードアセンブリは、従来、鋳造、機械加工、または金属射出成形などの方法によって製造されている。これらの製造プロセスでは、リードアセンブリの設計を変更する必要があるか、または変更した場合、新しい金型を提供する必要があり、これは時間と費用がかかる可能性がある。
【0004】
少なくともいくつかの公知のリードアセンブリおよびリードアセンブリの公知の設計プロセスは、特定の問題を起こしやすく、リードアセンブリの改善が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
一態様では、極低温システムのリードアセンブリを製造する方法が提供される。本方法は、第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器の3次元(3D)モデルを開発するステップを含む。熱交換器は、第1の端部から第2の端部まで熱交換器を通って長手方向に延在する複数のチャネルを含み、複数のチャネルは熱交換器内に複数の熱表面を形成し、熱交換器は横断面を有する。本方法は、横断面の面積を減少させること、および複数の熱表面を増加させることの少なくとも一方によって3Dモデルを修正するステップをさらに含む。本方法はまた、修正された3Dモデルに従って導電性かつ熱伝導性材料を使用して熱交換器を積層造形するステップを含む。さらに、本方法は、HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリを提供するステップと、熱交換器の第2の端部においてHTSアセンブリを熱交換器に接続するステップと、を含む。
【0007】
別の態様では、極低温システムが提供される。極低温システムは、極低温装置およびリードアセンブリを収容する容器を含む。リードアセンブリは、容器に埋め込まれ、極低温装置に電流を供給するように構成される。リードアセンブリは、熱交換器およびHTSアセンブリを含む。熱交換器は、導電性かつ熱伝導性材料から構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する。熱交換器は、第1の端部と第2の端部との間で熱交換器を通って延在する複数のチャネルをさらに含み、複数のチャネルは、熱交換器内に複数の熱表面を形成する。熱交換器は横断面を有する。HTSアセンブリは、熱交換器の第2の端部において極低温装置と熱交換器との間に結合され、HTSアセンブリはHTSストリップを含む。熱交換器の断面および複数の熱表面は、熱交換器の第2の端部における温度が極低温装置のランピング中にHTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、積層造形プロセスにおいて動的に修正される。
【0008】
さらに別の態様では、極低温システムのリードアセンブリが提供される。極低温システムは、極低温装置を収容する容器を含む。リードアセンブリは、熱交換器およびHTSアセンブリを含む。熱交換器は、導電性かつ熱伝導性材料から構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する。熱交換器は、第1の端部から第2の端部まで熱交換器を通って延在する複数のチャネルをさらに含む。複数のチャネルは、熱交換器内に複数の熱表面を形成する。熱交換器は横断面を有する。HTSアセンブリは、熱交換器の第2の端部において熱交換器に結合され、極低温装置に結合するように構成され、HTSアセンブリはHTSストリップを含む。リードアセンブリは、極低温装置に電流を供給するように構成され、容器内に埋め込まれるようにさらに構成される。熱交換器の寸法および構造は、使用時に、修正された熱交換器の第2の端部における温度が極低温装置のランピング中にHTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、積層造形プロセス中に動的に修正される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1B】
図1Aに示され、1Bとして特定された極低温システムの一部の拡大図である。
【
図2】
図1Aに示す極低温システムの例示的なリードアセンブリを示す図である。
【
図3A】上部コネクタに結合された
図2に示す熱交換器の熱交換器の側面図である。
【
図3B】
図3Aに示す熱交換器および上部コネクタの底部斜視図である。
【
図3C】
図3Aに示す熱交換器および上部コネクタの上部斜視図の一部を示す図である。
【
図4C】
図4Bで特定された熱交換器および上部コネクタの断面の一部の拡大図である。
【
図5B】
図5Aに示す公知の電流リードの熱性能を示す図である。
【
図5C】
図3Aに示す熱交換器の線4A-4Aに沿った断面図である。
【
図6B】
図3Aに示す熱交換器のもう1つの例示的な断面図である。
【
図7A】
図3Aに示す熱交換器のもう1つの例示的な断面図である。
【
図8】本開示の一態様による熱交換器の別の例示的な設計を示す図である。
【
図9A】本開示の一態様による熱交換器のもう1つの例示的な設計を示す図である。
【
図9B】線9B-9Bに沿った
図9Aに示すヘッド交換器の部分断面図である。
【
図10】熱交換器を製造する例示的な方法のフローチャートを示す図である。
【
図11A】
図1Aに示す極低温システムの例示的なリードアセンブリの斜視図である。
【
図12A】例示的な高温超伝導体(HTS)ストリップを示す図である。
【
図13A】リードアセンブリのHTS導体を保護する機構を用いて実装された例示的なリードアセンブリを示す図である。
【
図13B】
図13Aに示すリードアセンブリの熱交換器および上部コネクタの底部斜視図である。
【
図14】リードアセンブリのHTS導体を保護する別の機構を備えた別の例示的なリードアセンブリ実装を示す図である。
【
図15】リードアセンブリの例示的なポカヨーク設計を示す図である。
【
図16A】上部コネクタおよびインターコネクタに結合された例示的な熱交換器を示す図である。
【
図16D】
図16Cに示す熱交換器およびリードアセンブリを封入するスリーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、リードアセンブリのシステム、ならびにリードアセンブリを設計および製造する方法を含む。本明細書に開示するリードアセンブリは、極低温システムに埋め込まれてもよい。極低温システム内の極低温装置を冷却するための極低温剤の蒸発速度は、リードアセンブリの高効率の熱交換器および非熱伝導性高温超伝導体(HTS)アセンブリのために比較的遅い。電流リード設計は、極低温蒸発を最小限にするように最適化される。本明細書で使用される場合、材料は、銅または他の導電性材料と比較して、材料が比較的小さな熱を伝導する場合、熱的に非伝導性である。本明細書に開示するリードアセンブリは、極低温で堅牢であり、熱収縮によって引き起こされる過渡的な熱および応力に耐えることができる。方法の態様は、一部は明らかであり、一部は以下の説明で明示的に説明される。
【0011】
図1Aは、例示的な極低温システム100を示す。
図1Bは、
図1Aに示す極低温システム100の一部の拡大図を示す。極低温システム100は、極低温装置104を収容する容器102を含むことができる。極低温装置104は、磁気共鳴撮像(MRI)システム、核磁気共鳴(NMR)、またはNMR高磁場磁石システムで使用される超伝導磁石であってもよい。いくつかの実施形態では、極低温装置104は、モータ、発電機、故障電流リミッタ、エネルギー貯蔵装置、粒子加速器、中規模磁石、および実験室用磁石であってもよい。超伝導磁石は、超伝導導体のワイヤを有し、超伝導コイル導体に電流を流すことによって磁場を生成する超伝導コイル(図示せず)を含むことができる。超伝導磁石は、極低温装置104が約4K~約10Kの温度範囲内で動作するように、4.2ケルビン(K)の沸点を有する極低温剤、例えば液体ヘリウムによって冷却することができる。この温度範囲内で、超伝導コイルは電気抵抗を有さず、電気から熱を生成しない。
【0012】
極低温システム100は、コールドヘッド極低温冷凍機106をさらに含むことができる。図示するコールドヘッド極低温冷凍機106は、第1のステージ108および第2のステージ110を備えている。第1のステージ108は、第2のステージ110よりも高い動作温度を有してもよい。例えば、第1のステージ108は約50Kの動作温度を有することができ、第2のステージ110は約4Kの動作温度を有することができる。結果として、容器102は約4Kの温度に維持され、極低温剤の蒸発速度は低下または制限される。
【0013】
例示的な実施形態では、極低温システム100は、リードアセンブリ112をさらに含む。リードアセンブリ112は、室温にある電源114に電気的に接続するように構成され、極低温装置104に電流を供給するように構成される。リードアセンブリ112は、特定の通電容量に合わせて設計されている。極低温装置104および電源114と電流ループを形成するために、極低温システム100には2つのリードアセンブリが含まれる。リードアセンブリ112は、約4Kの極低温装置104と電源114との間の電気的接触を約273K以上の室温で提供する。
【0014】
公知の極低温システムでは、極低温装置104の電流は、アクセスネックを通って容器102に挿入され、極低温装置104のランピングプロセス中に極低温装置104に電気的に接続される取り外し可能なリードアセンブリを介して供給される。超伝導磁石の場合、ランピングプロセスは、磁石の磁場をゼロから1.5テスラ(T)、3T、またはそれ以上などの所望の磁場強度にランプアップするプロセスであり、電流リード設計は磁場強度の増加と共に変化し、熱交換器の再設計を必要とする場合がある。極低温装置104が所望の状態に達した後に、例えば、超伝導磁石が所望の磁場強度に達すると、取り外し可能なリードアセンブリは、リードアセンブリも熱伝導性であるため、容器102への熱の伝導および極低温剤の蒸発速度の増加を回避するために取り外される。取り外し可能なリードアセンブリと極低温装置104との間の電気的接続は信頼性が低く、効果的な電気的接続を確立するための追加の手段、例えば、インジウムのような比較的柔らかい金属でのはんだ付けまたは締結具によるクランプまたは潤滑による恒久的な接続を含む手段を必要とする場合がある。取り外し可能なアセンブリはまた、容器102内に過剰な熱を伝導する大きなコアを有し、これは過剰な量の極低温剤を蒸発させ、極低温装置104をランプアップするコストを増加させる。さらに、取り外し可能なアセンブリの挿入および取り外しは、容器102内に空気を導入し、容器102内に深刻な氷結を引き起こし、極低温装置104へのアクセスネックまたは電気端子へのアクセスを遮断する。
【0015】
別の公知の極低温システムでは、リードアセンブリは、容器102のアクセスネックに恒久的に取り付けられるか、またはそれに埋め込まれる。しかしながら、公知の埋め込みリードアセンブリは、容器102に永久的な熱負荷を加え、容器102内の極低温剤の蒸発速度を増加させる。
【0016】
例示的な実施形態では、リードアセンブリ112は、高温超伝導体(HTS)アセンブリ118(
図1A)を含む。HTSアセンブリ118は、HTS導体120を含む。HTSは、絶対ゼロよりも高い臨界超伝導温度、例えば約90Kの臨界超伝導温度を有する超伝導導体である。臨界超伝導温度は、電流に対して超伝導性である材料の最高温度である。しかしながら、HTS導体120は熱的に非伝導性である。さらに、HTSアセンブリ118は、全体として熱的に非伝導性であるように構成される。HTSアセンブリ118は、必ずしもそうである必要はないが、コールドヘッド極低温冷凍機106に結合されてもよい。HTSアセンブリ118は、50Kで動作するときに電気から熱を生成せず、熱的に非伝導性であるため、HTSアセンブリ118を通る容器102への熱負荷は常に制限され、極低温剤の蒸発速度を著しく低下させる。いくつかの実施形態では、リードアセンブリが電流を伝導していないとき、HTSアセンブリ118は熱的に非伝導性であり、HTSアセンブリ118の温度は電流が流れていないため、超伝導臨界温度以下に維持する必要がないため、極低温剤の蒸発速度はゼロまたはゼロ付近であり得る。
【0017】
図2は、例示的なリードアセンブリ112を示す。HTSアセンブリ118に加えて、リードアセンブリ112は熱交換器202を含む。熱交換器202は、熱交換器202における極低温剤の特定の滞留時間および/または熱交換器202にわたる特定の圧力降下のために設計される。熱交換器202は、第1の端部204および第2の端部205を含む。熱交換器202は、銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金、複合材料、セラミックなどの導電性かつ熱伝導性を有する材料で構成される。熱交換器202は、第1の端部204で電源114に電気的に接続するように構成される。熱交換器202は、第2の端部205でHTSアセンブリ118に結合される。熱交換器202は、極低温装置104のランピング中にHTSアセンブリ118をHTS導体120の臨界超伝導温度以下に維持するように構成される。その結果、リードアセンブリ112をコールドヘッド極低温冷凍機106に接続する必要がなくなり、極低温剤の蒸発速度の低下により、極低温装置104のランピングコストを低減することができる。さらに、リードアセンブリ112をコールドヘッド極低温冷凍機106に接続する必要がないので、リードアセンブリ112は、独立型リードアセンブリであってもよく、これは極低温システム100の残りの部分とは別個に制御され、リードアセンブリ112を制御することにより電源を遠隔でオンに切り替えることによって極低温システム100を自動ランピングさせるように遠隔制御されてもよい。加えて、リードアセンブリ112の冷却機構は単純化され、従来のリードアセンブリにおける熱交換器202およびHTS118のための別個の冷却機構の代わりに、熱交換器202およびHTS118の両方が極低温剤によって冷却される。
【0018】
リードアセンブリ112は、熱交換器202およびHTSアセンブリ118を封入するスリーブ206をさらに含む。リードアセンブリ112は、上部コネクタ208および下部コネクタ210をさらに含むことができる。上部コネクタ208および下部コネクタ210は、ろう付け銅などの導電性材料からなる。上部コネクタ208は、電源114に電気的に接続し、熱交換器の第1の端部204で熱交換器202に結合するように構成される。下部コネクタ210は、極低温装置104に電気的に接続し、電力を供給するように構成される。下部コネクタ210は、HTSアセンブリ118に結合され、HTSアセンブリ118のHTS導体120に電気的に接続される。
【0019】
動作中、ランピング中、リードアセンブリ112は電源114に電気的に接続され、極低温装置104に電流を供給する。電源114と極低温装置104との間の電気的接続は、上部コネクタ208、熱交換器202、HTSアセンブリ118のHTS導体120、および下部コネクタ210を介して確立される。ランピングが完了すると、電源114はリードアセンブリ112から切り離される。HTSアセンブリ118は熱伝導性ではないため、容器102への熱負荷は制限される。その結果、リードアセンブリ112を容器102に埋め込むことができ、極低温剤の蒸発をほとんど引き起こさない。
【0020】
図3A~
図3Cは、例示的な上部コネクタ208に結合された例示的な熱交換器202の側面図(
図3A)、下部斜視図(
図3B)、および上部斜視図(
図3C)を示す。
図4A~
図4Cは、熱交換器202の断面図を示す。
図4Aは、
図3Aの横断面線4A-4Aに沿った熱交換器202の軸方向断面図を示す。
図4Bは、断面線4B-4Bに沿った熱交換器202の長手方向断面図を示す。
図4Cは、
図4Bの一部の拡大図である。
【0021】
例示的な実施形態では、熱交換器202は、複数のチャネル212を含む。一例では、チャネルはフィン228によって形成される。チャネル212は、熱交換器202の第1の端部204から熱交換器202の第2の端部205まで熱交換器202を通って長手方向に延在する。蒸気および/または熱は、チャネル212を通ってリードアセンブリ112およびHTSアセンブリ118の外部に/から流れる。チャネル212は、
図4Aの横断面214に示されている。チャネル212はまた、蒸気と接触する熱表面216を画定する。熱交換器202の第1の端部204において、断面214上のフィン228などの中実構造は、熱交換器に出入りする蒸気の流れを妨げる。一方、チャネル212の熱表面216は、蒸気と熱交換器との間の熱交換を容易にする。したがって、チャネルの構成および組み合わせ、ならびに断面214の面積は、熱交換のために圧力降下を減少させ、熱表面の表面積を増加させて、制御された蒸気流を可能にするように設計される。このような設計は、熱交換器202の熱交換効率を高める。いくつかの実施形態では、断面214の面積が最小化され、熱表面216が最大化される。一例では、熱表面216をさらに増加させ、熱の対流を増加させるために乱流を導入するために、熱表面216を粗面化または未研磨にして粗さを増加させることができる。
【0022】
図5A~
図5Dは、断面526を有する公知の電流リード502と本明細書に開示する熱交換器202との熱性能の対比を示す。
図5Aは、公知の電流リード502の断面526を示し、
図5Bは、公知の電流リード502の熱性能を示す。
図5Cは、熱交換器202の断面214を示し、
図5Dは、熱交換器202の熱性能を示す。
図5Bおよび
図5Dは、熱交換器202、502の熱性能をモデル化する有限要素解析(FEA)などのコンピュータシミュレーションの結果である。公知の電流リード502は、公知の電流リード502の内部506に沿って等間隔に配置された10個の溝504を含む。一方、熱交換器202は、複数のフィン228を有する。
図5Cに示す熱交換器202の断面214は縮尺通りではない。第1の端部204、508における熱交換器202、502の温度は、273Kに設定される。公知の電流リード502の断面526および熱交換器202の断面214の外径224は、同じままである。熱交換器202、502は、同じ長さ232を有する(
図4B参照)。両方の熱交換器202、502は、6.25リットル/時(L/時)の速度で気体ヘリウムによって冷却される。
図5Bに示すように、第2の端部510における公知の電流リード502の温度は約228Kである。対照的に、第2の端部205における熱交換器202の温度は約27Kであり、これはHTS導体120が超伝導状態で動作するのに適している。長さ232、外径224、およびチャネルサイズは、第1の端部204および第2の端部205の温度などの用途に応じて調整されてもよい。
【0023】
図6Aおよび
図6Bは、熱交換器202の断面の設計を示す。
図6Aおよび
図6Bに示す例では、熱交換器202の断面602、604の外径224は同じである。
図6Aでは、熱交換器202は、
図5Cに示す熱交換器202と同様の設計を有し、熱交換器202は、フィン228の厚さ221が
図5Cに示す熱交換器202よりも小さく、隣接するフィン228間の間隙223が
図6Aに示す熱交換器202の方が大きいことを除いて、フィン228間に間隙223を有するフィン228を含む。厚さ221および間隙223は、熱交換器202が本明細書に開示するように機能することを可能にする他の寸法であってもよい。
図6Bでは、熱交換器202は、横断面604に円形孔212として示されている円筒状構成のチャネル212を有する。断面604における全中実面積238に対する全空隙面積236の比は、熱交換器の熱性能を最適化するように選択される。全空隙面積236は、すべての孔212によって占められている断面604の総面積である。全中実面積238は、孔212によって占められていない断面604の総面積である。比率の一例は、約1:2または0.5である。いくつかの実施形態では、熱交換器202は、断面604に約100個の孔を有することができる。孔212の直径234および全中実面積238に対する全空隙面積236の比は、熱交換器202の熱性能要件に応じて変化してもよい。
【0024】
図7Aおよび
図7Bは、熱交換器202の別の例示的な設計を示す。
図7Aは、熱交換器202の断面702を示す。
図7Bは、熱交換器202の一部の斜視図を示す。
図5Cおよび
図6Aに示す熱交換器202とは異なり、熱交換器202は、熱交換器202を第1のセクション706と第2のセクション708とに分割するために、第1の端部204から第2の端部205まで長手方向に、かつ横方向に延在する隔壁704をさらに含む。フィン228は、断面702の隔壁704から延在する。第1のセクション706および第2のセクション708におけるフィン228の厚さ221および間隙223は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1のおよび第2のセクション706、708の隔壁704から延在するフィン228の位置および向きは、第1のセクション706のフィン228が第2のセクション708の間隙223の位置で隔壁704から延在するようにフィンが交互配置されることをもたらし、逆もまた同様である。交互配置されたフィンを有する熱交換器202は、交互配置されていないフィンを有する熱交換器202よりも、機械加工などの従来のプロセスで製造することが比較的容易である。
【0025】
図8、
図9A、および
図9Bは、熱交換器202のより例示的な設計を示す。熱交換器202は、螺旋状チャネル812(
図8)を含むことができる。螺旋状チャネル812は、直線チャネル212を有する前述の例示的な熱交換器のチャネルによって提供される表面積とは対照的に、熱表面216によって提供される表面積を増加させる。
図8には2つの螺旋状チャネル812が示されているが、螺旋状チャネル812の数は、熱交換器202が本明細書に開示するように機能することを可能にする1つ、3つ、または他の数であってもよい。
図9Aおよび
図9Bは、ジグザグ状チャネル1812を有する熱交換器202を示す。
図9Aは、熱交換器202の縦断面図を示す。
図9Bは、
図9Aの線9B-9Bに沿った部分縦断面図である。
図9Aおよび
図9Bでは、熱交換器202は、複数のバッフル802を含む。バッフル802は、熱交換器202の内側にあり、熱交換器202を通るジグザグ経路を生成するために交互に横方向に、熱交換器202の内部を横切って内側および部分的に横方向に延在し、ジグザグ状チャネル1812を形成する。ジグザグ状チャネル1812が1つ含まれる場合には、チャネル1812は、熱交換器202の内側横断面と同じ幅であってもよい(
図9Bを参照)。ジグザグ状チャネル1812はまた、直線チャネル212に対して熱交換器202の熱表面216を増加させる。1つのジグザグ状チャネルが示され説明されているが、熱交換器202は、熱交換器202が本明細書に記載のように機能することを可能にする1つ、2つ、3つ、または他の数のジグザグ状チャネル1812を含んでもよい。熱交換器202は、円筒形であってもよく、または直方体などの他の形状であってもよい(
図9Aおよび
図9B)。
【0026】
熱交換器202は、焼結、鋳造、機械加工、および金属射出成形などの従来の金属製造プロセスによって製造することができる。従来の金属製造プロセスと比較して、積層造形プロセスを使用した熱交換器202の設計の調整および微調整は、鋳造、金型、または製造システムの複雑な変更を必要とする従来の製造方法に関連する課題なしに達成することができる。
【0027】
図10は、熱交換器を積層造形する例示的な方法900のフローチャートである。積層造形法は3D印刷とも呼ばれる。積層造形法では、3Dモデルに基づいて3D対象物が製造される。3Dモデルは、コンピュータ支援設計(CAD)モデルであってもよい。3Dモデルが積層造形システムに提供された後に、システムは、3Dモデルに基づいて3D対象物を生成し、材料が一緒に追加され、例えば液体分子または粉末粒子が一緒に、通常は層ごとに融着される。例示的な実施形態では、方法900は、熱交換器の3次元(3D)モデルを開発するステップ902を含む。熱交換器は、本明細書に開示する例示的な熱交換器202のいずれかである。方法900は、3Dモデルを動的に修正するステップ904をさらに含むことができる。3Dモデルは、熱交換器が使用される環境の性能要件を満たすように修正される。3Dモデルの1つまたは複数の構造的特徴は、所望の熱交換器性能を達成するように修正することができる。3Dモデルは、熱交換器のフィンの厚さを減少させるなど、熱交換器の断面積を減少させることによって修正することができる。熱交換器の熱表面は、調整中に増加させることができる。熱交換器内のチャネルの形状は、調整中に変更することができる。熱交換器の断面積および熱表面は、熱交換器の熱交換効率に影響を及ぼす2つの重要な要因である。断面積の減少および/または熱表面の増加は、熱交換器の熱交換効率を高める。したがって、熱交換器の3Dモデルは、断面積を最小化すること、および/または熱表面を最大化することによって修正することができる。いくつかの実施形態では、熱交換器および上部コネクタは、積層造形プロセスによって単一の一体部品として製造されてもよい。
【0028】
一実施形態では、本明細書に記載の熱交換器のいずれかを含むベース設計が提供される。熱交換器の熱性能は、FEAプログラムでシミュレートおよび推定される。次いで、熱交換器は、3D積層造形プロセスで印刷され、極低温システムで試験される。試験結果およびシミュレーション結果は、シミュレーションが指定された許容レベル内の熱交換器の熱性能を表すかどうかを評価するために比較される。指定された許容誤差レベルが満たされている場合には、シミュレーションを使用して、別の熱交換器を印刷する前に、シミュレーションにおける熱交換器の設計を動的に修正することができる。設計、シミュレーション、サンプル試験、および設計の改善のプロセスを繰り返すことができる。熱交換器の設計は、最小特徴厚さ、最小間隙距離、および特徴垂直角度などの3D印刷の限界によって制限され得る。熱交換をさらに増加させるために、螺旋状および/またはジグザグ状のチャネルを熱交換器に含めることができる。
【0029】
例示的な実施形態では、方法900は、修正された3Dモデルに従って熱交換器を積層造形するステップ906をさらに含む。例示的な積層造形プロセスは、電子ビーム積層造形または選択的レーザ溶融であってもよい。製造された熱交換器は、例えば、特定の条件下で第2の端部の熱交換器の温度が50K以下であるなど、必要な熱性能を満たすかどうかを確認するために試験することができる。例えば、熱交換器を極低温システムに含め、熱交換器の第2の端部の温度を監視することによって、熱交換器を試験することができる。いくつかの実施形態では、熱交換器は、極低温システムにおける熱交換器の熱性能をシミュレートするFEA解析などのコンピュータシミュレーションによって試験することができる。熱交換器が必要な熱性能を満たさない場合には、3Dモデルは、断面を縮小し、熱表面を増加させ、および/またはチャネルの形状または設計を変更することによって調整される。熱交換器が必要な熱性能を満たすまで、試験および修正を繰り返すことができる。
【0030】
積層造形プロセスは、例えば必要な表面積に関して熱交換器の微調整を可能にする。適切な3Dモデルが設計されると、焼結または金網などの従来の製造方法を使用して、3Dモデルを使用してリードアセンブリを製造することができる。
【0031】
図11Aは、リードアセンブリ112のための例示的なHTSアセンブリ118を示す。
図11Bは、HTSアセンブリ118の分解図を示す。HTSアセンブリ118に含まれるHTS導体120は、HTSストリップ120であってもよい。HTSアセンブリ118は、エンクロージャ1102をさらに含んでもよい。エンクロージャ1102は、別個の部分1102a~1102dを含むことができる。エンクロージャ1102は、非導電性かつ非熱伝導性の材料で構成される。例示的な材料はG-10である。HTSアセンブリ118は、端子1104をさらに含んでもよい。端子1104は、HTS導体120の各端部でHTS導体120に電気的に接続され、HTS導体120に電気的接続を提供する。端子1104は、銅などの導電性材料からなる。
【0032】
HTSアセンブリを組み立てるために、エンクロージャの部分1102a~1102dは、HTS導体120を内部に封入し、HTS導体120の端部で端子1104を保持するように互いにクランプ締めされてもよい。端子1104は、HTS導体120の端部にはんだ付けまたは圧力でクランプ締めされてもよい。エンクロージャ1102は、蒸気流によって引き起こされる振動からHTS導体120を保護する。エンクロージャ1102はまた、HTS導体120の形状を維持するための剛性構造を提供する。
【0033】
図12A~
図12Bは、例示的なHTS導体120および銅導体との比較を示す。HTS導体120は、HTSストリップである(
図12A)。HTS導体120は、希土類バリウム銅酸化物(ReBCO)で被覆された導体であってもよい。HTS導体120は、絶対ゼロ(0K)よりも高い温度、例えば約50~60Kの超伝導状態で電気を伝導する。超伝導状態では、HTS導体120は電気抵抗を有さず、電気から熱を生成しない。銅導体1202などの従来の導体と比較して、HTS導体は、従来の銅導体1202よりも、本明細書に記載のプロセスによって開発された熱交換器設計とより効果的に結合することができる電流リードアセンブリのよりコンパクトな設計を可能にする。銅導体はかさばり、HTS導体では、同じ量の電流を運ぶために必要な材料は、銅導体1202よりも少量でよい(
図12Bを参照)。HTS導体120は、同じ量の電流を搬送するための銅導体1202よりもはるかに軽量である。さらに、電気と熱の両方を伝導する銅導体1202と比較して、HTS導体120は、銅導体1202よりもはるかに小さい熱伝導率を有する。例えば、極低温では、銅導体1202は1000W/m・Kを超える熱伝導率を有するが、HTS導体120は約10~20W/m・Kの熱伝導率を有する。したがって、HTS導体120を通って極低温装置104に伝達される熱は制限される。
【0034】
例示的な実施形態では、極低温装置104のランピング中に、HTS導体120を通って流れる電流量は、1000アンペア(A)を超えることができる。HTS導体120を囲む温度がHTS導体120の超伝導臨界温度を超えると、HTS導体120は超伝導条件下では動作せず、代わりにHTS導体120が電気抵抗を有する通常の条件下で動作する。1000Aを超える電流がHTS導体120を通って流れると、電気から大量の熱が発生し、HTS導体120を損傷または焼損する可能性がある。
【0035】
図13A~
図13Bは、温度センサ1302を含むことによってHTS導体120を保護する例示的な機構を示す。
図13Aは、温度センサ1302に含まれるリードアセンブリ112を示す。
図13Bは、熱交換器202および上部コネクタ208を含むリードアセンブリ112の上側部分の底部斜視図を示す。温度センサ1302は、熱交換器202の底部1304に設置されてもよく、熱交換器202は、HTSアセンブリ118と接触する。温度センサ1302は、リードアセンブリ112が過熱するのを防止するためにHTSアセンブリ118に設置されてもよい。複数の温度センサ1302は、上部コネクタ208または熱交換器上の他の位置など、リードアセンブリ112上の他の位置に設置されてもよい。温度センサ1302は、HTSアセンブリ118および/またはリードアセンブリ112の温度を監視するために使用される。HTSアセンブリ118が50Kなどの所定のしきい値に達すると、保護動作を開始することができる。保護動作は、HTSアセンブリ118を保護するための動作を行うためにオペレータに警報を鳴らすこと、極低温剤からの蒸気冷却を増加させて温度を下げること、または電流をオフにすることのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0036】
図14は、HTS導体120を保護する別の例示的な機構を示す。HTSアセンブリ118は、熱伝導性金属の層1402を含むことができる。層1402は、HTS導体120にはんだ付けされてもよい。層1402は、比較的低い熱伝導率を有する。層1402の例示的な材料は真鍮である。HTS導体120が超伝導条件下で動作しない場合、HTS導体120によって生成された熱は、層1402に伝達され、熱交換器202および容器102に送出されて、HTS導体120が過熱されないようにすることができる。層1402が容器102内に熱を伝導するため、熱は常に容器102内に漏れ、その結果、極低温剤損失に関連するコストが増加する。
【0037】
HTS導体120の導通状態は温度に敏感であるため、リードアセンブリ112は、ポカヨーク設計(
図15)を含むことができる。この設計では、リードアセンブリ112は、上部コネクタ208を覆うカバー1502を含むことができる。カバー1502は、ゴムまたはシリコーンなどの非導電性材料からなる。カバー1502は、電気的接続を行う前に取り外さなければならない。したがって、HTSアセンブリ118の温度が超伝導臨界温度以下でない場合に、電気が誤ってHTSアセンブリ118を通って流れることはない。
【0038】
図16A~
図16Fは、リードアセンブリ112を組み立てるプロセスの段階を示す。
図16Aおよび
図16Bは、第2の端部205で熱交換器202に結合され得るインターコネクタ1602を示す。
図16Bは、インターコネクタ1602の底部斜視図を示す。インターコネクタ1602は、ろう付けされた銅で構成されてもよい。インターコネクタ1602は、第1のスロット1604および第2のスロット1606を有してもよい。第1のスロット1604は、熱が通過することを可能にし、冷却に使用され得る。第2のスロット1606は、HTSアセンブリ118の端子1104(
図11Aおよび
図11B参照)を挿入してはんだ付けし、HTSアセンブリ118と熱交換器202との間の電気的接触を確立するために使用されてもよい。
図16Cは、HTSアセンブリ118がインターコネクタ1602で熱交換器202に結合されることを示す。スリーブ1608を使用して、熱交換器202およびHTSアセンブリ118(
図16D)を覆うことができる。スリーブ1608は、リードアセンブリ112の構造的支持を提供し、リードアセンブリ112をリードアセンブリ112の周囲から電気的に絶縁する。スリーブ1608は、G-10で構成されてもよい。
図16Eは、その後に、下部コネクタ210がHTSアセンブリ118の他方の端子1104(
図11Aおよび
図11B参照)に結合されてスリーブ1608に結合されることを示す。スリーブ1608は、温度センサ1302を設置することができるように、1つまたは複数の窓1601を含むことができる。温度センサ1302が設置された後に、窓1601はパッチが当てられ、シールされる。インターコネクタ1602、HTSアセンブリ118、下部コネクタ210、および/または上部コネクタなどの導電性構成要素の結合は、はんだ付けによって達成されてもよい。
【0039】
本明細書に記載のシステムおよび方法の少なくとも1つの技術的効果は、(a)ランピング中に極低温剤の蒸発の減少を引き起こす極低温装置用の埋め込みリードアセンブリ、(b)リードアセンブリに電流が流れていないときに極低温剤の蒸発が0またはほぼ0である埋め込みリードアセンブリ、(c)埋め込みリードアセンブリ用の高効率熱交換器、(d)積層造形法を用いて熱交換器およびリードアセンブリを設計および製造する工程、および(e)極低温システムの極低温装置に電力を供給するためにHTSアセンブリに結合された熱交換器を有する埋め込みリードアセンブリを含む極低温システムを含む。
【0040】
ノイズおよびアーチファクトを低減するシステムおよび方法の例示的な実施形態が、詳細に上述されている。システムおよび方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、むしろ、システムの構成要素および/または方法の動作は、本明細書に記載の他の構成要素および/または動作とは独立してかつ別個に利用されてもよい。さらに、記載された構成要素および/または動作はまた、他のシステム、方法、および/または装置において定義されるか、またはそれらと組み合わせて使用されてもよく、本明細書に記載されたシステムのみによる実施に限定されない。
【0041】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴は、いくつかの図面に示され、他の図面には示されない場合があるが、これは単に便宜上のものである。本発明の原理によれば、図面の任意の特徴は、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または特許請求することができる。
【0042】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意の装置またはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。このような他の実施例が請求項の字義通りの文言と異ならない構造要素を有する場合、または、それらが請求項の字義通りの文言と実質的な差異がない等価な構造要素を含む場合には、このような他の実施例は特許請求の範囲内であることを意図している。
【0043】
[実施態様1]
極低温システム(100)のリードアセンブリ(112)を製造する方法(900)であって、
第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)の3次元(3D)モデルを開発するステップ(902)であって、前記熱交換器(202)は、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記熱交換器(202)を通って長手方向に延在する複数のチャネル(212)を含み、前記複数のチャネル(212)は前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)は横断面(214)を有する、ステップ(902)と、
前記断面の面積を減少させることおよび前記複数の熱表面(216)を増加させることの少なくとも一方によって前記3Dモデルを修正するステップ(904)と、
前記修正された3Dモデルに従って導電性かつ熱伝導性材料を使用して前記熱交換器(202)を積層造形するステップ(906)と、
HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリ(118)を提供するステップと、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部で前記HTSアセンブリ(118)を前記熱交換器(202)に接続するステップと、
を含む方法(900)。
[実施態様2]
前記3Dモデルを修正するステップは、
前記熱交換器(202)の前記断面の前記面積を最小化するステップと、
前記熱交換器(202)の前記複数の熱表面(216)を最大化するステップと、
をさらに含む、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様3]
前記熱交換器(202)は、軸方向に延在し、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のフィン(228)を含む、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様4]
前記複数のチャネル(212)は螺旋状である、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様5]
前記熱交換器(202)は、前記熱交換器(202)の内部でジグザグ状になり、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のバッフル(802)を含む、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様6]
前記HTSアセンブリ(118)を提供するステップは、前記HTSストリップをエンクロージャ(1102)で封入するステップをさらに含み、前記エンクロージャ(1102)は、非導電性かつ非熱伝導性材料で構成される、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様7]
前記材料はG-10である、実施態様6に記載の方法(900)。
[実施態様8]
前記第1の端部における前記熱交換器(202)の温度を約150ケルビン(K)に維持しながら、前記第2の端部における前記熱交換器(202)の温度を試験するステップと、
前記第2の端部における前記熱交換器(202)の前記温度が50Kよりも大きい場合には、前記3Dモデルを修正するステップを繰り返すステップと、
をさらに含む、実施態様1に記載の方法(900)。
[実施態様9]
温度を試験するステップは、前記熱交換器(202)の熱交換のコンピュータシミュレーションに基づいて前記熱交換器(202)の前記温度を試験するステップをさらに含む、実施態様8に記載の方法(900)。
[実施態様10]
極低温システム(100)であって、
極低温装置(104)を収容する容器(102)と、
前記容器(102)に埋め込まれ、前記極低温装置(104)に電流を供給するように構成されたリードアセンブリ(112)と、を含み、前記リードアセンブリ(112)は、
導電性かつ熱伝導性材料で構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)であって、前記第1の端部と前記第2の端部との間で前記熱交換器(202)を通って延在する複数のチャネル(212)をさらに含み、前記複数のチャネル(212)が前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)が横断面を有する、熱交換器(202)と、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部において前記極低温装置(104)と前記熱交換器(202)との間に結合され、HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリと、を含み、
前記熱交換器(202)の前記断面および前記複数の熱表面(216)は、前記熱交換器(202)の前記第2の端部における温度が前記極低温装置(104)のランピング中に前記HTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、積層造形プロセスにおいて動的に修正される、極低温システム(100)。
[実施態様11]
前記熱交換器(202)は、軸方向に延在し、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のフィン(228)を含む、実施態様10に記載の極低温システム(100)。
[実施態様12]
前記複数のチャネル(212)は螺旋状である、実施態様10に記載の極低温システム(100)。
[実施態様13]
前記熱交換器(202)は、前記熱交換器(202)の内部でジグザグ状になり、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のバッフル(802)を含む、実施態様10に記載の極低温システム(100)。
[実施態様14]
前記HTSアセンブリ(118)は、前記HTSストリップを封入するエンクロージャ(1102)をさらに含み、前記エンクロージャ(1102)は、非導電性かつ非熱伝導性材料で構成される、実施態様10に記載の極低温システム(100)。
[実施態様15]
極低温システム(100)のリードアセンブリ(112)であって、前記極低温システム(100)は極低温装置(104)を収容する容器(102)を含み、前記リードアセンブリ(112)は、
導電性かつ熱伝導性材料で構成され、電源に電気的に接続するように構成された第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部と、を有する熱交換器(202)であって、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記熱交換器(202)を通って延在する複数のチャネル(212)をさらに含み、前記複数のチャネル(212)が前記熱交換器(202)内に複数の熱表面(216)を形成し、前記熱交換器(202)が横断面を有する、熱交換器(202)と、
前記熱交換器(202)の前記第2の端部において前記熱交換器(202)に結合され、前記極低温装置(104)に結合するように構成された高温超伝導体(HTS)アセンブリであって、HTSストリップを含む高温超伝導体(HTS)アセンブリと、を含み、
前記リードアセンブリ(112)は、前記極低温装置(104)に電流を供給するように構成され、前記容器(102)に埋め込まれるようにさらに構成され、前記熱交換器(202)の寸法および構造は、使用時に前記修正された熱交換器(202)の前記第2の端部の温度が前記極低温装置(104)のランピング中に前記HTSストリップの臨界超伝導温度以下になるように、積層造形プロセス中に動的に修正される、リードアセンブリ(112)。
[実施態様16]
前記熱交換器(202)の前記断面の面積が最小化され、前記熱交換器(202)の前記複数の熱表面(216)が最大化される、実施態様15に記載のリードアセンブリ(112)。
[実施態様17]
前記熱交換器(202)は、軸方向に延在し、前記複数のチャネル(212)を形成する複数のフィン(228)を含む、実施態様15に記載のリードアセンブリ(112)。
[実施態様18]
前記複数のチャネル(212)は螺旋状である、実施態様15に記載のリードアセンブリ(112)。
[実施態様19]
前記HTSアセンブリ(118)は、前記HTSストリップを封入するエンクロージャ(1102)をさらに含み、前記エンクロージャ(1102)は、非導電性かつ非熱伝導性材料で構成される、実施態様15に記載のリードアセンブリ(112)。
[実施態様20]
前記材料はG-10である、実施態様15に記載のリードアセンブリ(112)。
【符号の説明】
【0044】
100 極低温システム
102 容器
104 極低温装置
106 コールドヘッド極低温冷凍機
108 第1のステージ
110 第2のステージ
112 リードアセンブリ
114 電源
118 HTSアセンブリ
120 HTS導体/HTSストリップ
202 熱交換器
204 第1の端部
205 第2の端部
206 スリーブ
208 上部コネクタ
210 下部コネクタ
212 チャネル/孔
214 横断面
216 熱表面
221 厚さ
223 間隙
224 外径
228 フィン
232 長さ
234 直径
236 全空隙面積
238 全中実面積
502 電流リード/熱交換器
504 溝
506 電流リードの内部
508 第1の端部
510 第2の端部
526 断面
602 断面
604 断面
702 断面
704 隔壁
706 第1のセクション
708 第2のセクション
802 バッフル
812 螺旋状チャネル
900 方法
902 ステップ
904 ステップ
906 ステップ
1102 エンクロージャ
1102a エンクロージャの部分
1102b エンクロージャの部分
1102c エンクロージャの部分
1102d エンクロージャの部分
1104 端子
1202 銅導体
1302 温度センサ
1304 底部
1402 層
1502 カバー
1601 窓
1602 インターコネクタ
1604 第1のスロット
1606 第2のスロット
1608 スリーブ
1812 ジグザグ状チャネル