(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】吻合部を持つ漏斗形胃壁裏張り
(51)【国際特許分類】
A61B 17/11 20060101AFI20230313BHJP
A61F 2/04 20130101ALI20230313BHJP
【FI】
A61B17/11
A61F2/04
(21)【出願番号】P 2021139720
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2020500139の分割
【原出願日】2017-07-07
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】チー チャン
(72)【発明者】
【氏名】シェリフ エー.エスカロス
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ケー.ムーニー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0110413(KR,A)
【文献】特表2012-507376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174987(US,A1)
【文献】特表2017-517309(JP,A)
【文献】特表2016-507333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350658(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0092892(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0176884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B、A61F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の側、第二の側およびそれらの間の中央ルーメンを有する折り畳み可能フレームであって、前記中央ルーメンから前記第一の側へ放射状に広がる1組の織り込まれたリングに形成された複数の細長い要素を含みおよび前記中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、
前記折畳み可能フレームを被覆する膜であって、前記折畳み可能フレーム及び前記膜が、患者の胃への腔内送達に適する折畳み構成と、前記胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成とを与える、膜と、
前記折畳み可能フレームの前記中央ルーメンから前記第二の側へ延び、前記胃壁の第1孔及び前記患者の小腸の第2孔を貫通して前記胃壁の前記第1孔と前記小腸の前記第2孔との間に密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分と、
を備え、
食物が幽門を通らないように、前記漏斗が、患者の食道を介して前記胃へ進入する食物を前記広い開口の中へ導き、前記漏斗を通過して前記吻合構成部分を介して前記小腸の中へ導くように構成されるように、前記拡張構成において前記折り畳み可能フレームの前記第一の側は前記第二の側より
直径で大きく拡張するように構成されている、
吻合装置。
【請求項2】
前記吻合構成部分が、前記折畳み可能フレームから延び、前記胃壁の前記第1孔及び前記小腸の前記第2孔を貫通して、前記吻合装置が前記患者内に埋植されたとき前記小腸の内壁に平置きされるように構成される支持構造体を備える、請求項1に記載の吻合装置。
【請求項3】
前記膜が、前記吻合構成部分の前記支持構造体を被覆する、請求項2に記載の吻合装置。
【請求項4】
前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分が、前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分の前記支持構造体の少なくとも一部分を形成するモノリシックフレーム要素を含む、請求項2~3のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項5】
前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分の前記支持構造体がカットチューブ構造体から形成される、請求項2~4のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項6】
前記折畳み可能フレームが、前記拡張構成のとき、前記胃の胃底部及び大彎を被覆するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項7】
前記折畳み可能フレームが、前記拡張構成のとき、前記胃壁の前記内面の裏張り部分からの栄養分接触を制限するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項8】
前記患者の前記小腸の前記第2孔が前記患者の空腸に通じる、請求項1~7のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項9】
前記膜が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項10】
更に、前記小腸の前記裏張り内面からの栄養分接触を制限するために前記吻合構成部分から前記小腸の中へ延びて前記小腸の内面を裏張りするように構成された管状ライナーを備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の吻合装置。
【請求項11】
前記管状ライナーが、フレーム要素及び前記膜を備えるステントグラフトを含む、請求項10に記載の吻合装置。
【請求項12】
内視鏡送達カテーテルと、
請求項1~11のいずれか1項に記載の吻合装置と、
を備える、組立体。
【請求項13】
更に、患者内への前記吻合装置の展開を容易にするために前記内視鏡送達カテーテルの遠位端から前記吻合装置を押し出すように構成されたプランジャを備える、請求項12に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置特に(限定的でなく)外科的肥満治療に関する。
【背景技術】
【0002】
米国及びその他の場所において多数の成人が肥満である。肥満体の多くの成人は、2型真性糖尿病(T2DM)及び/又は高血圧にさらに苦しむ。糖尿病を含めて肥満関連の疾患は、米国及び世界中のヘルスケア制度にとって年間何十億ドルもの支出を課す。
【0003】
垂直スリーブ胃切除術(vertical sleeve gastrectomy)及びRoux-en-Y胃バイパス法などの肥満病手術は、肥満及びT2DMの両方にとって効果的な処置である。最近の臨床研究の結果、肥満病手術は、概略的に生活様式及び医学療法に比べて肥満患者の過剰体重の大幅な減量になることが分かった。いくつかの研究は、肥満病手術の患者の半分超が、手術から1年以内に糖尿病の寛解を得たことを示した。
【0004】
肥満病手術に関連する安全性、初期及び長期合併症、副作用及びコストは、患者及び主治医にとって主要な障害の一部となる。しばしば、肥満病手術に適する患者は、これらの障害の1つ又はそれ以上を考慮して、この処置を控えてしまう。侵襲性がより低くかつコスト効率がより良い処置があれば、患者の結論を改善できるだろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、内視鏡送達及び埋植に適する吻合装置に関する。吻合装置は、患者の胃壁内面を被覆し、胃へ進入する食物を漏斗を通って吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成され、それによって栄養分摂取を制限する漏斗を含む。これによって、患者の大幅な減量を導くことができる。
【0006】
1つの実施例において、本開示は、中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜と、を備える吻合装置に関する。折畳み可能フレーム及び膜は、患者の胃への腔内送達に適する折畳み構成と、胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成と、を与える。吻合装置は、更に、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延びて、患者の胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通過し胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間に密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分を含む。漏斗は、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き、漏斗を通過して、吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成される。
【0007】
別の実施例において、本開示は、内視鏡送達カテーテルと、吻合装置と、を備える組立体に関する。吻合装置は、中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜と、を含む。折畳み可能フレーム及び膜は、患者の胃への腔内送達に適する折畳み構成と、胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成と、を与える。吻合装置は、更に、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延びて、患者の胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通過して胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間の密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分を含む。漏斗は、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き、漏斗を通過して、吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成される。折畳み可能フレーム及び膜は、胃内での吻合装置の内視鏡送達及び埋植を容易にするために内視鏡送達カテーテルの遠位端内において折畳み構成である。
【0008】
別の実施例において、本開示は、患者の胃内に吻合装置を埋植する方法に関する。方法は、患者の胃内に内視鏡送達カテーテルの遠位端を配置するために患者の食道を通して内視鏡送達カテーテルを挿入することと、胃の胃壁に第1孔を開けることと、患者の小腸に第2孔を開けることであって、第2孔が概ね第1孔と一致する、開けることと、折畳み構成の吻合装置を内視鏡送達カテーテルを介して胃へ送達することと、を含む。吻合装置は、中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜と、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延びる吻合構成部分と、を含む。方法は、更に、胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間に密閉接続部を形成するために胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通して吻合構成部分を挿入することと、吻合装置を折畳み構成から拡張構成へ拡張し胃壁の内面を裏張りする(line)ために内視鏡送達カテーテルの遠位端から吻合装置を展開することと、を含む。展開されたら、漏斗は、実質的に幽門を閉鎖して、食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き、漏斗を通過して、吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成される。
【0009】
本開示を更によく理解できるように添付図面が含まれ、添付図面は、本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を成し、実施形態を説明し、記載と一緒に、本開示の原則を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、漏斗と吻合構成部分とを含む吻合装置を示し、吻合装置はいくつかの実施例に従った内視鏡送達及び患者の胃内における埋植に適する。
【
図1B】
図1Bは、漏斗と吻合構成部分とを含む吻合装置を示し、吻合装置はいくつかの実施例に従った内視鏡送達及び患者の胃内における埋植に適する。
【0011】
【
図2A】
図2Aは、いくつかの実施例に従った
図1A~1Bの吻合装置の内視鏡埋植の概念的説明である。
【
図2B】
図2Bは、いくつかの実施例に従った
図1A~1Bの吻合装置の内視鏡埋植の概念的説明である。
【
図2C】
図2Cは、いくつかの実施例に従った
図1A~1Bの吻合装置の内視鏡埋植の概念的説明である。
【
図2D】
図2Dは、いくつかの実施例に従った
図1A~1Bの吻合装置の内視鏡埋植の概念的説明である。
【0012】
【
図3】
図3は、いくつかの実施例に従った、患者の小腸の中まで延びるように構成された管状ライナーを含む埋植された吻合装置の概念的説明である。
【0013】
【
図4】
図4は、平面断面図で示す管腔並置金属ステント(lumen apposing metal stent)の領域を示す。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【
図8A】
図8Aは、
図4の管腔並置金属ステントの1組の花弁形の漸進式展開を示す。
【
図8B】
図8Bは、
図4の管腔並置金属ステントの1組の花弁形の漸進式展開を示す。
【
図8C】
図8Cは、
図4の管腔並置金属ステントの1組の花弁形の漸進式展開を示す。
【
図8D】
図8Dは、
図4の管腔並置金属ステントの1組の花弁形の漸進式展開を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
当業者は、本開示の様々な形態が意図される機能を果たすように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることが分かるはずである。本明細書において参照する添付図面は必ずしも縮尺通りではなく、本開示の様々な形態を説明するために誇張される場合があることが分かるはずであり、その点に関して、図面は限定的に解釈されるべきではない。
【0019】
本開示は、器官組織構造間の物質の流れを容易にする吻合を生じるために器官組織構造間に直接通路を生成する(例えば、胃と消化管の一部を接続する)ことなどによって、例えば、導管又は器官閉塞を迂回するために器官と他の組織構造を接続するための埋植可能装置に関する。本明細書において説明する装置は、カテーテルを介して内視鏡により展開又は送達可能であり、組織構造間の確実な接続を容易にする自己拡張式並置機構を含むことができる(このような接続は、例えば「シャント」、「通路」、「シャント通路」又は「トンネル」と呼ぶこともできる)。このような設計の特徴は、埋植を単純化し、合併症の可能性を減少する。いくつかの実施形態において、本明細書において提示する装置は、埋植後に取外し可能に構成される。いくつかの実施例において、装置は、体が装置の周りの組織吻合を成長させるまで埋植されたままであり、その後取り外される。他の実施形態において、装置の中への及び/又は周りでの組織内方成長が、装置を永久的に埋植し、装置は取り外されない。本明細書において説明する装置は、他のタイプの処置(垂直スリーブ胃切除術及びRoux-en-Y胃バイパス術など)に適さない患者のため、及び/又は他のタイプの処置の既知の合併症を避けるための代替的処置を提供できる。
【0020】
図1A~1Bは、2つの器官、空間、組織構造、導管及びこれと類似するもの及びその組合せの間の流体接続を生成するために患者内に埋植できる、本明細書において提示するいくつかの実施形態に従った吻合装置10を示す。いくつかの実施例において、吻合装置10は、内視鏡送達及び患者内への埋植に適する。具体的には、
図1Aは、吻合装置10の上面図であり、
図1Bは、吻合装置10の側面図である。吻合装置10は、折畳み可能フレーム20と、折畳み可能フレーム20を被覆する膜30と、吻合構成部分40と、を含む。
【0021】
折畳み可能フレーム20は、中央ルーメン25へ向かって狭くなる広い開口27を持つ漏斗を形成する。折畳み可能フレーム20は、中央ルーメン25から放射状に広がる1組の同心的に織り込まれた又は相互接続された波形リング21、22、23を形成するような形状を持つ1つ又は複数の細長い要素から形成される。別の実施例において、波形リングは、別個のリングであるか、又はリング21、22、23のうちの複数例えば全てのリングを形成するようにコイル状に配列された単一のワイヤを含むことができる。第1波形リング21は、中央ルーメン25を取り囲む一連の山と谷を形成する。第2波形リング22は、一連の山と谷を形成して、谷は、第1波形リング21の山と織り込まれる又は相互接続される。第3波形リング23は、一連の山と谷を形成し、谷は、第2波形リング22の山と織り込まれる又は相互接続される。例えば、重なる頂点は、接着剤又はグラフト材料で所定の場所に保持できる。
【0022】
波形リング21、22、23の同心配列は、
図2Aに示すように患者の胃への内視鏡送達に適する折畳み構成並びに
図2Cに示すように胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成を与えるのを助ける。同心配列は、それに加えて又はその代わりに、装置の可撓性、屈曲性、順応性、又はその他の特性を得るのを助けることができる。様々な実施例において、折畳み可能フレーム20は、拡張構成のとき、例えば蠕動中又はその他の胃壁の動きにおいて胃壁の内面との接触を保つためにコンプライアントである。
【0023】
いくつかの実施例において、折畳み可能フレーム20は、部分的に又は全面的に金属ワイヤなどの金属材料から形成できる。いくつかの実施例において、折畳み可能フレーム20は、部分的に又は全面的にニチノールワイヤなどの超弾性材料から形成できる。このような実施例は、拡張構成の弾性変形によって内視鏡送達に適した折畳み構成を可能にする。それに加えて又はその代わりに、折畳み可能フレーム20は、部分的に又は全面的に、ニチノールチューブなどのカットチューブから形成できる。このような実施例は、波形リング21、22、23の間に相互接続部を与える。
【0024】
折畳み可能フレーム20は、膜30を支持するためのスケルトンとして役立ち、膜30は、折畳み可能フレーム20を被覆する。膜30は、吻合装置10が胃の胃壁の内面に裏張りされたとき、栄養分接触を制限するのに適する。いくつかの実施例において、膜30は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む又は完全に又は主に(例えば80%以上)ePTFEから形成できる。ePTFEを使用することによって、胃壁の内張り面からの栄養分接触を制限するために薄く、耐久性があり、不透過の材料を与えることができる。いくつかの実施例において、膜30は、蠕動及び患者のその他の動きにおいて胃壁の内面との接触を保つために膜30がコンプライアントであるようにするために、エラストマ吸収又は折り重ね構造を含むことができる。患者内に埋植されるとき、折畳み可能フレーム20及び膜30によって形成された漏斗は、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して胃へ進入する食物を広い開口27の中へ導き、漏斗を通過して、吻合構成部分40を介して小腸の中へ導くように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態において、膜30は、ePTFE重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素重合体を含む。いくつかの実施形態において、膜30は、ポリエステル、シリコーン、ウレタン、その他の生体適合性重合体、ポリエチレンテレフタレート(例えばDacron(登録商標))、共重合体又はこれらの組合せを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、膜30(又はその部分)は、材料の1つ又は複数の特性を強化する1つ又は複数の化学的又は物理的プロセスによって修正される。例えば、いくつかの実施形態において、材料の湿潤性及びエコートランスルーセンシーを改良するために、親水性コーティングが膜30に塗布される。いくつかの実施形態において、膜30又はその部分は、細胞付着、細胞移動、細胞増殖及び血栓形成に対する抵抗又は促進の1つ又はそれ以上を助長する化学部分(chemical moieties)で修正される。いくつかの実施形態において、膜30又はその部分は、生物付着に抵抗するように修正される。いくつかの実施形態において、膜30又はその部分は、1つ又は複数の共有結合的付着医薬物質(例えば、ヘパリン、抗生物質及びこれに類似するもの)で修正されるか、又は前記の1つ又は複数の医薬物質が浸透される。医薬物質は、治癒を助長するため、組織の炎症を低減するため、感染を低減又は防止するため及びその他の様々な治療処置及び成果を助長するためにインシテューで放出できる。いくつかの実施形態において、医薬物質は、例えば、コルチコステロイド、ヒト成長因子、抗有糸分裂剤、抗血栓形成剤、幹細胞物質又はデキサメタゾンリン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、薬剤は、組織治癒又は組織成長を助長するために、膜30とは別個に標的部位へ送達される。
【0027】
コーティング及び処理は、膜30が吻合装置10の枠組みに接合又は配置される前又は後に膜30に加えることができる。更に、膜30又はその部分の片面又は両面にコーティングできる。いくつかの実施形態において、特定のコーティング及び/又は処理は、吻合装置10のいくつかの部分に配置された膜30の部分に適用されることができ、他のコーティング及び/又は処理が、吻合装置10の他の部分に配置された材料に適用される。いくつかの実施形態において、複数のコーティング及び/処理の組合せが、膜30又はその部分に適用される。いくつかの実施形態において、膜30の特定の部分はコーティング及び/又は処理が施されないままである。いくつかの実施形態において、吻合装置10は、細胞付着、細胞移動、細胞増殖及び血栓形成への抵抗又は助長など(但し、これらに限定されない)の生物学的反応を助長又は阻害するために、完全に又は部分的にコーティングされる。
【0028】
いくつかの実施形態において、膜30の第1部分は、第1材料で形成され、膜30の第2部分は、第1材料とは異なる第2材料で形成される。いくつかの実施形態において、膜30は複数層の材料を含み、層は同じ又は異なる材料とすることができる。いくつかの実施形態において、膜30の部分は、吻合装置10の生体内X線撮影可視化を強化するために付着された1つ又は複数の放射線不透過マーカー、又は超音波可視性を強化するための1つ又は複数のエコー源性エリアを持つ。
【0029】
いくつかの実施形態において、膜30の1つ又は複数の部分は、折畳み可能フレーム20及び/又は吻合構成部分40の支持構造体などの吻合装置10の枠組みに付着される。付着は、膜30を吻合装置10の枠組みに縫い付ける、膜30を吻合装置10の枠組みに接着する、クリップ又は棘を使用して吻合装置10の細長い部材の部分を包囲するように複数層の膜30を重ねる、又は吻合装置10の枠組みの開口を通じて複数層の膜30を一緒に重ねるなど(但し、これに限定されない)、多様な技法によって実施できる。いくつかの実施形態において、膜30は、一連の離散的場所において吻合装置10の枠組みに付着され、それによって、枠組みの可撓性を助長する。いくつかの実施形態において、膜30は、吻合装置10の枠組みに緩やかに付着される。膜30が他の技法又は上述の技法の組合せを使用して吻合装置10の枠組みに付着できることが分かるであろう。
【0030】
いくつかの実施形態において、吻合装置10の枠組み(又はその部分)は、枠組みへの膜30の付着を容易にするために接着剤(例えば、フッ化エチレンプロピレン又はその他の適切な接着剤)でコーティングされる。このような接着剤は、接触コーティング、パウダーコーティング、浸漬コーティング、噴霧コーティング又はその他の任意の適切な手段を使用して枠組みに塗布できる。
【0031】
膜30は、様々な様式で折畳み可能フレーム20の長さ及び/又は直径の変化に適応できる。第1実施例において、膜30は、膜30が吻合装置10の長さ及び/又は直径の変化に対処するために伸張できるように、弾性とすることができる。第2実施例において、膜30は、低プロフィルの送達構成において弛んだ材料を含むことができ、材料は、吻合装置10が拡張構成のとき弛みが少なくなるか又は全く弛みが無くなる。第3実施例において、膜30は、低プロフィル構成に折り重ねられる折重ね部分(例えばプリーツ)を含むことができ、吻合装置10が拡張構成のとき折重ねが少なくなるか又は完全に折りが伸びる。他の実施形態において、軸方向調節部材は膜30に触れない。いくつかの実施形態において、膜30が折畳み可能フレーム20の長さ及び/又は直径の変化に対処できるように、上記の技法の組合せ、及び/又はその他の技法を使用できる。
【0032】
吻合構成部分40は、中央ルーメン25付近の胃の孔を小腸の対応する孔まで密閉することによって患者の食道を介して胃へ進入する食物を小腸の中へ導くように機能する。いくつかの実施例において、吻合構成部分40は、胃の孔に密着するための第1組織並置部分と、小腸の穴に密着するための第2組織並置部分とを含むことができる。吻合構成部分40の組織並置部分は、中央ルーメン25を取り囲む一連の花弁形ワイヤフレームを含むことができるが、ワイヤフレーム花弁形ではなく中実花弁形など、任意の他の多様な構成の吻合構成部分40が適切な対応策として役立つ。吻合構成部分40の同格力(apposition force)が、花弁形303を持つフランジ302を含む(
図4~7B)ステント300に関して説明するように、胃壁の外面に適用される。ステント300と異なり、折畳み可能フレーム20は、対称形ではなく片側の方がずっと大きく拡張するが、吻合構成部分40は、ステント300と機能的に同じであるか同様とすることができる。
【0033】
いくつかの実施例は、吻合構成部分40の第1端部から吻合構成部分40の第2端部まで長手方向に延びる伸長中央ルーメン25を与える、ステント300のバレル304など(
図4~7B)その間の任意の中央部分を含む。いずれの場合にも、中央ルーメン25は、胃が腸と流体連絡するように胃と腸との間の接続部(例えばシャント通路)として作用する。いくつかの実施例において、中央ルーメンは、例えば組織の弾性による締まり嵌めによって、密閉を助けるために孔に対して僅かに外向きの半径方向の力を与えるために、胃及び腸の組織の孔より大きくすることができる。
【0034】
多数の吻合構成が吻合構成部分40として適するが、適切な実施例のいくつかは、Toddによる米国特許出願公開第2015/0313598号明細書(題名「吻合装置」)において開示される。
【0035】
いくつかの実施例において、吻合構成部分40の支持構造体は、金属ワイヤなどの金属材料から成形できる。同じ又は別の実施例において、吻合構成部分40の支持構造体は、ニチノール材料などの超弾性材料から形成できる。このような実施例は、拡張構成の弾性変形によって内視鏡送達に適した折畳み構成を可能にする。吻合構成部分40の支持構造体は、折畳み可能フレーム20の材料と実質的に同様の材料から形成できる。例えば、折畳み可能フレーム20及び吻合構成部分の支持構造体40は、折畳み可能フレーム20及び吻合構成部分40の支持構造体の少なくとも一部分を形成するモノリシックフレーム要素を含むことができる。いくつかの実施例において、折畳み可能フレーム20及び吻合構成部分40の支持構造体は、ニチノールワイヤなど単一の金網から形成できる。又は、折畳み可能フレーム20及び吻合構成部分40の支持構造体は、ニチノールカットチューブなどのカットチューブ構造体から形成できる。別の実施形態において、折畳み可能フレーム20及び吻合構成部分40の支持構造体は、ワイヤ要素及び/又はカットチューブ要素の任意の組合せを含めて複数の要素から形成できる。
【0036】
様々な実施例において、膜30は、吻合構成部分40の支持構造体を被覆するか、又は吻合構成部分40の支持構造体を被覆しなくてもよい。いくつかの特定の実施例において、吻合構成部分40は、内方成長及び付着に抵抗する材料で被覆できる。これによって、胃壁102の周囲組織に著しい傷を与えることなく、吻合装置10を後に取り除くことができるようにできる。
【0037】
折畳み可能フレーム20のフレーム要素及び吻合構成部分40の支持構造体に適する材料は、形状記憶、弾性及び超弾性特性を示す合金を含めて多様な金属性材料を含む。形状記憶は、臨界温度超に加熱することによって塑性変形した後に元来記憶された形状へ戻る材料の能力を意味する。弾性は、荷重下で変形しかつ荷重が除かれたときその元来の形状へ戻る又は実質的に戻る材料の能力である。ほとんどの金属は、少量の歪みまで弾性的に変形する。超弾性は、その変形を永久的にすることなく、典型的弾性合金よりずっと大きい程度まで歪みを受けたとき変形する材料の能力を意味する。例えば、本明細書において提示するいくつかの吻合装置の実施形態のフレーム要素に含まれる超弾性材料は、かなりの折り曲げ及び屈曲量に耐えて、その後変形なしにフレームの元来の形状へ戻る又は実質的に戻ることができる。いくつかの実施形態において、適切な弾性材料は、高いバネ力を生じるように物理的、化学的及びその他の処理が加えられた各種のステンレス鋼、コバルトクロム合金などの金属合金(例えば、ELGILOY(商標)、MP35N、L605)、プラチナ/タングステン合金を含む。形状記憶及び超弾性合金の態様は、NiTi合金、NiTiPt、NiTiCo、NiTiCrなどの三元形状記憶合金(ternary shape memory alloy)又は銅系形状記憶合金などのその他の形状記憶合金を含む。外層がニチノールで構成され、内核がプラチナ又はタンタルなどの放射線不透過材料である複合金属チューブ(drawn filled tube)など、付加的な材料が、形状記憶及び弾性合金の両方を結合できる。このような構成においては、外層は超弾性特性を与え、内核は低曲げ応力なので弾性を保つ。
【0038】
いくつかの実施形態において、様々な装置実施例を構成するために使用されるフレーム要素は、X線撮影の可視化を強化するために装置の放射線不透過性を増大するために様々に処理できる。いくつかの実施形態において、装置は、少なくとも部分的に内核において放射線不透過性が強化された材料など異なる材料を含むNiTiの複合金属タイプである。いくつかの実施形態において、装置は、放射線不透過性クラッド又はメッキを含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の放射線不透過性マーカーが装置に付着される。いくつかの実施形態において、細長いフレーム要素及び/又は本明細書において提示される装置のその他の部分は、超音波によっても可視化される。
【0039】
図2A~2Dは、患者の胃100内における吻合装置10の内視鏡埋植を説明する。吻合装置10は、内視鏡送達カテーテル50内において折畳み構成で組立体60の一部として胃100へ導入される。
図2A~2Dにおいて図示する患者の身体部分は、胃100、食道110、幽門112、十二指腸114及び患者の小腸の空腸116を含む。胃100は、胃壁102、洞部104及び胃底部106を含む。
【0040】
図2Aに示すように、吻合装置10は、内視鏡送達カテーテル50を介して胃100へ送達される。いくつかの実施例において、吻合装置10は、内視鏡送達カテーテル50の遠位端52内で胃100の中へ運ばれる。他の実施例において、内視鏡送達カテーテル50は、例えば内視鏡送達カテーテル50の中央ルーメンの長さに沿って進行する前にまず内視鏡送達カテーテル50の近位端(図示せず)に吻合装置10を装填することによって、吻合装置10が内視鏡送達カテーテル50の中央ルーメンの中を押し進められる前に胃100内に遠位端52を配置するために、食道110を通り抜けることができる。このような実施例において、内視鏡送達カテーテル50は、カメラ、手術具及び複数の吻合装置10など、複数のツール及びインプラントの胃100への内視鏡送達を容易にするために使用できる。
【0041】
胃100内に吻合装置10を埋植する1つの技法例において、医師は、まず、胃100内に内視鏡送達カテーテル50の遠位端52を配置するために食道110を通して内視鏡送達カテーテル50を挿入する。内視鏡送達カテーテル50は、画像化設備及び手術具のために胃100への接近路を与える。医師は、その後、内視鏡送達カテーテル50を通して胃壁102の内面の場所まで切断器具(図示せず)を挿入する。医師は、胃壁102に第1孔103を開け、第2孔117を患者の小腸(例えば、空腸116)に開ける。第2孔117は、第1孔103と概ね一致する。
【0042】
医師は、その後内視鏡送達カテーテル50から切断器具を引き戻し、
図2Aに示すようにプランジャ53で内視鏡送達カテーテル50の中央ルーメンを通過するように吻合装置10を押すことによって、内視鏡送達カテーテル50を介して折畳み構成の吻合装置10を胃100に送達できる。
【0043】
図2Bに示すように、医師は、その後孔103に近接して内視鏡送達カテーテル50の遠位端52を配置して、内視鏡送達カテーテル50の遠位端52から突出する吻合構成部分40の遠位端が孔103、117を通過するように方向を定める。
【0044】
図2Cに示すように、吻合構成部分40の遠位端が孔103、117を通って延びたら、医師は、内視鏡送達カテーテル50の遠位端52から吻合装置10を部分的に展開できる。展開されたら、吻合構成部分40は、胃壁102の第1孔103と空腸116の第2孔117との間に密閉接続部を形成する。次に、医師は、例えば、プランジャ53で内視鏡送達カテーテル50の中央ルーメンを通過するように吻合装置10を押すことによって、内視鏡送達カテーテル50の遠位端52から吻合装置10を展開できる。
【0045】
図2Dに示すように、展開されると、吻合装置10は、内視鏡送達カテーテル50の中央ルーメン内における折畳み構成から拡張構成へ拡張する。拡張構成において、折畳み可能フレーム20及び膜30は、胃壁102の内面を裏張りする。この拡張構成において、折畳み可能フレーム20は、折畳みフレーム20及び膜30が胃壁102の内面の裏張り部分からの栄養分接触を制限するように、胃壁102の内面に平置き(lay flat)される。例えば、拡張構成において、折畳み可能フレーム20及び膜30は、胃底部106及び胃100の大彎を被覆するように構成できる。このような胃の裏張りは、ホルモン生成胃細胞(hormone producing stomach cell)の大きな部分を効果的に排除して、垂直スリーブ胃切除を模倣できる。
【0046】
更に、吻合装置10が展開されたら、折畳み可能フレーム20の漏斗及び膜30は、実質的に幽門112を閉鎖して、食道110を介して胃100へ進入する食物を広い開口27の中へ導き、漏斗を通過して吻合構成部分40を介して小腸の中へ導くように構成される。折畳み可能フレーム20の漏斗部分は、コンプライアントであり蠕動中に胃壁102の内面との接触を保つように、低半径方向剛性である。折畳み可能フレーム20の漏斗部分は、任意の関連する形状に合わせたサイズ及び形状を持つことができる。このようにして、吻合装置10は、胃100の裏張り部分及び十二指腸114を効果的に排除して、空腸116への食物送達をまた加速して、Roux-en-Y胃バイパス手術を模倣できる。
【0047】
図3は、埋植された吻合装置210の概念図である。吻合装置210は、吻合装置10及び上で説明した全ての変形及びその同等物と実質的に同様であるが、管状ライナー250が追加される。管状ライナー250は、吻合構成部分40を越えて患者の小腸の空腸116の中まで延びるように構成される。吻合装置210の他の全ての要素は、吻合装置10について記載したので、簡潔化のために、吻合装置210に関連しては管状ライナー250についてのみ記載する。
【0048】
管状ライナー250は、ルーメン25に流体接続された中央ルーメンを形成する。管状ライナー250は、小腸の内面を裏張りして小腸の裏張り内面からの栄養分接触を制限するために、吻合構成部分40から空腸116の中など、小腸の中へ延びるように構成される。これによって、栄養分摂取に利用可能な小腸の部分を更に制限することによって、吻合装置10に比べてより大きい効率を患者のために付加できる。さらに、管状ライナー250は、胃100内での吻合装置210の固定を助ける機能を果たすことができる。
【0049】
管状ライナー250は、フレーム要素252と膜254とを含む。いくつかの実施例において、管状ライナーは、ステントグラフトであることができる。いくつかの実施形態において、フレーム要素252は、折畳み可能フレーム20及び/又は吻合構成部分40の支持構造体の延長部とすることができる。他の実施例において、フレーム要素252は、別個の構成要素とすることができる。いずれに場合にも、折畳み可能フレーム20及び/又は吻合構成部分40の支持構造体に関する変形及び上の説明が、フレーム要素252にも適用可能である。例えば、フレーム要素252は、金網又は個別のリング要素から形成するか又はカットチューブから形成できる。これらの実施例にいずれにおいても、フレーム要素252は、ニチノール又はステンレス鋼から形成でき、自己拡張式、バルーン拡張式又はこの組み合わせのいずれかとすることができる。
【0050】
更に、膜254は、膜30と同じ又は同様とすることができ、又はその延長とすることも可能である。例えば、膜254は、ePTFE膜又はPVDFなどのフッ素重合体を含むことができる。いくつかの実施形態において、膜30は、ポリエステル、シリコーン、ウレタン、その他の生体適合性重合体、ポリエチレンテレフタレート(例えば、Dacron(登録商標))、共重合体、又はその組合せを含む。
【0051】
いくつかの実施例において、吻合装置210の埋植の一部として、内視鏡送達カテーテル50は、空腸116内など小腸内での管状ライナー250の展開を容易にするために孔103、117を通過して小腸の中へ導かれる。例えば、管状ライナー250が自己拡張式の場合、内視鏡送達カテーテル50は、展開前に小腸内で管状ライナー250を折畳み構成に維持する機能を果たすことができる。
【0052】
図4は、平面断面図で示す管腔並置金属ステント300の領域を示す。いくつかの実施例において、ステント300は、自己拡張式被覆ニチノールステントとすることができる。同じ又は異なる実施例において、ステント300は、埋植可能内部胆のう排液装置として適するか、又はステント300の設計は、吻合装置10又は吻合装置210の吻合構成部分40を形成できる。様々な実施例において、ステント300は、内部胆のう排液を含めて侵襲性の小さい超音波内視鏡(EUS)案内による経腔的排液用とすることができる。
【0053】
ステント300は、円筒形バレル304によって接続された2つのフランジ302を含み、フランジ302とフランジ302との間に移行領域305を持つ。いくつかの実施例において、これらのフランジは、吻合装置10又は吻合装置210の吻合構成部分40の要素に対応できる。ステント300は、フランジ302の各々が接続された各組織の腔内側に配置され、バレル304が両方の組織壁の結合厚みに広がるように、埋植できる。これによって、内容物がバレル304を通過するための導管ができる。
【0054】
図4に示すように、バレル304は、ステント300の円筒部分を構成するストラットによって画定される。移行領域306は、バレル軸に対して直角を成して曲がりフランジ302を形成する花弁形にバレル304を接続するストラットを含む。フランジ302は、形状設定されると集合形としてフランジ302を画定する個別の花弁形を形成するストラットによって形成される。いくつかの実施例において、バレル304及び移行部分306は対称形である。同じ又は別の実施例において、バレル304及び移行領域306内の全てのストラットは、同じ長さ及び幅を持つことができる。同じ又は別の実施例において、フランジ302は、等しい設計を持つか、又は1つのフランジは他のフランジより大きいか、又は吻合装置10及び吻合装置210と同様に付加的ストラットを含むことができる。同じ又は別の実施例において、フランジ302の花弁形は、各花弁形が対向する2つのフランジ花弁形の間で等しく整列するように、チューブ円周から1/2n(n=#花弁形)オフセットできる。
【0055】
図5は、ステント300のフランジ302の花弁形303を示す。花弁形303は、花弁形を画定する花弁形ストラット312と、花弁形ストラット312に沿ってほぼ中ほどで移行ストラット316に接続するテザーストラット313との両方を含む。テザーストラット313は、クラッシュ負荷時に、接続された移行ストラット頂点317を引き下げて、装置の一貫したクラッシュプロフィルを促すように構成される。
【0056】
図6は、ステント300の断面図である。ステント300の断面は、ステント300をその最終形状に形成するために使用された工具類のプロフィルも表すことができる。具体的には、
図6は、フランジ直径318、バレル直径320、バレル平面322及びバレル長さ324を示す。バレル長さ324は、意図される処置範囲の予想される結合最大組織厚みを適切に収容するサイズを持つ。
図6は、更に、花弁形ギャップ326、移行半径328、花弁形半径330、花弁形先端長さ332、花弁形先端角度334及び花弁形反曲半径336を示す。花弁形ギャップ326は、バレル長さ324より小さく、意図される治療範囲の最小組織厚みより概ね大きくないので、花弁形303は、吻合装置10又は吻合装置210が埋植されると、吻合装置の中に胃及び小腸などの結合組織厚みを収容するために外向きに移動するように構成される。これによって、花弁形303及び移行ストラット316に歪みが生じ、これによって生じた同格力が組織壁の接触を維持する。
【0057】
図7A及び7Bは、ステント300の上面図及び側面図である。
図7Aは、バレル304を見降ろす前面図である。図示するように、ステント300は、フランジ302当たり5つの花弁形303を含む。花弁形は、各々2つの対向する花弁形周りで中心があるように回転方向に36度オフセットする。このオフセットは、ステント300がフランジ302の間の組織壁に加えるピーク圧力点を制限できる。更に、このオフセットは、ステントフレーム内でのサイズアップ及びクラッシュ歪みの均衡を取るのを助けることができる。
図7Bは、円筒形バレル304及びフランジ302を示す側面図である。フランジのプロフィルは
図6と同じであることに留意されたい。
【0058】
図8A~8Dは、ステント300の1つのフランジ302をカテーテル350から漸進的に展開するところを示す。移行半径328及び花弁形半径330(
図6)は、例えば所望の同格力のために設計しかつクラッシュ負荷時に弾性変形を可能にすることによって、展開及び生体内性能を助長するように選択される。ステント300がクラッシュ負荷時に曲率に対して逆に曲がるとき、歪みは、花弁形303の長さに沿って誘発される。この歪みは、ステント300が展開時に拘束が解除されるとき解放される。ステント300が漸進的に展開されるとき、遠位フランジ302が開いて広がり、一方、バレル304及び近位領域はクラッシュプロフィルにおいて維持される(
図8D)。この時点で、ステント300は、ステントに加えられた牽引力に抵抗し、これによって2つの体腔が引っ張られて並置されることができる。
【0059】
2つの体腔が引っ張られて並置されたら、バレル及び近位フランジは完全に展開される(
図7B)。再び、移行半径328及び花弁形半径330(
図6)において誘発された歪みは速やかに回復されて、これが近位フランジ302をパッと開いて組織壁を捕捉させる。これは、ステント300が完全に解除されると直ちに送達カテーテル350との接点を失い、組織並置のために使用者が加えた牽引力が失われて、組織壁の捕捉は速やかに生じて、身体構造はほぼ生来の位置へ復帰するので、速やかに生じるはずである。
【0060】
完全に展開されたら、ステントは、両方の組織壁に同格圧力を加えるように設計される。同格圧力は、花弁形ギャップ326(
図6)がその初期値より大きくされるとき花弁形フレームに沿って誘発される歪みによって生じる。この変位は、生体内組織の厚みが花弁形ギャップ326より大きいことによって生じる。いずれかのフランジ302の花弁形303は、移行ストラット316及びバレルストラット314(
図5)によって相互に直接接続され、その両方が軸方向に剛性である。これによって、各花弁形303は、他方のフランジ302の対向物に直接対抗できる。これによって、両方のフランジ302によって生成される同格圧力全体を釣り合わせて、装置が自動心立て(self-center:自己中心)できるようにする。
【0061】
いくつかの実施例において、上述のように、花弁形303は、ステント300のクラッシュ歪みを均衡化するためにいずれかのフランジ302においてオフセットできる。このオフセットは、また花弁形先端に生じる同格圧力をフランジ302の円周の周りに更にまた分散させることができる。
【0062】
IGBDステント300は、体腔並置金属ステントの1つの応用である。但し、本開示は、吻合装置10又は流路転換、排液、接近路、固定又は孔の閉塞の必要がある任意の用途のための他の装置設計との組合せを含めて、他の用途にも応用される。
【0063】
様々な実施例において、本開示は、下記の項目並びに下に示す請求項の各々をカバーするが、本開示は、列記される項目及び請求項によって限定されない。
【0064】
第1項-中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜であって、折畳み可能フレーム及び膜が、患者の胃への腔内送達に適する折畳み構成と、胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成とを与える、膜と、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延び、胃壁の第1孔及び患者の小腸の第2孔を貫通して胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間に密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分と、を備え、漏斗が、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き、漏斗を通過して吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成される、吻合装置。
【0065】
第2項-吻合構成部分が、折畳み可能フレームから延び、胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を貫通して吻合装置が患者内に埋植されたとき小腸の内壁に平置きされるように構成される支持構造体を備える、第1項に記載の吻合装置。
【0066】
第3項-膜が吻合構成部分の支持構造体を被覆する、第2項に記載の吻合装置。
【0067】
第4項-折畳み可能フレーム及び吻合構成部分が、折畳み可能フレーム及び吻合構成部分の支持構造体の少なくとも一部分を形成するモノリシックフレーム要素を含む、第1項に記載の吻合装置。
【0068】
第5項-折畳み可能フレーム及び吻合構成部分の支持構造体がカットチューブ構造体から形成される、第1項に記載の吻合装置。
【0069】
第6項-折畳み可能フレームが、拡張構成のとき、胃の胃底部及び大彎を被覆するように構成される、第1項に記載の吻合装置。
【0070】
第7項-折畳み可能フレームが、拡張構成のとき、胃壁の内面の裏張り部分からの栄養分接触を制限するように構成される、第1項に記載の吻合装置。
【0071】
第8項-患者の小腸の第2孔が患者の空腸に通じる、第1項に記載の吻合装置。
【0072】
第9項-膜が延伸ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)を含む、第1項に記載の吻合装置。
【0073】
第10項-更に、小腸の裏張り内面からの栄養分接触を制限するために吻合構成部分から小腸の中へ延びて小腸の内面を裏張りするように構成された管状ライナーを備える、第1項に記載の吻合装置。
【0074】
第11項-管状ライナーがフレーム要素及び膜を備えるステントグラフトを含む、第10項に記載の吻合装置。
【0075】
第12項-内視鏡送達カテーテルと、吻合装置であって、中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜であって、折畳み可能フレーム及び膜が、患者の胃への腔内送達に適した折畳み構成と胃の胃壁の内面に裏張りするのに適する拡張構成とを与える、膜と、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延びて患者の胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を貫通して胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間に密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分と、を備える吻合装置と、を備える組立体であって、漏斗が、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き、漏斗を通過して、吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成され、折畳み可能フレーム及び膜が、吻合装置の内視鏡送達及び胃内での埋植を容易にするために内視鏡送達カテーテルの遠位端内で折畳み構成である、組立体。
【0076】
第13項-吻合構成部分が、折畳み可能フレームから延びて、胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を貫通して、吻合装置が患者内に埋植されたとき小腸の内壁に平置きされるように構成される支持構造体を備える、第12項に記載の組立体。
【0077】
第14項-折畳み可能フレーム及び吻合構成部分が、折畳み可能フレーム及び吻合構成部分の支持構造体の少なくとも一部分を形成するモノリシックフレーム要素を含む、第12項に記載の組立体。
【0078】
第15項-折畳み可能フレームが拡張したとき...第12項に記載の組立体。
【0079】
第16項-折畳み可能フレームが、拡張構成のとき、胃壁の内面の裏張り部分からの栄養分接触を制限するように構成される、第12項に記載の組立体。
【0080】
第17項-膜が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む、第12項に記載の組立体。
【0081】
第18項-更に小腸の裏張り内面からの栄養分接触を制限するために、吻合構成部分から小腸の中へ延びて小腸の内面を裏張りするように構成された管状ライナーを備える、第12項に記載の組立体。
【0082】
第19項-患者の胃内に吻合装置を埋植する方法であって、方法が、患者の胃内に内視鏡送達カテーテルの遠位端を配置するために患者の食道を通して内視鏡送達カテーテルを挿入することと、胃の胃壁に第1孔を開けることと、患者の小腸に第2孔を開けることであって、第2孔が第1孔と概ね一致する、開けることと、折畳み構成の吻合装置を内視鏡送達カテーテルを介して胃へ送達することであって、吻合装置が、中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、折畳み可能フレームを被覆する膜と、折畳み可能フレームの中央ルーメンから延びる吻合構成部分と、を備える、送達することと、胃壁の第1孔と小腸の第2孔との間に密閉接続部を形成するために胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通して吻合構成部分を挿入することと、吻合装置を折畳み構成から拡張構成に拡張して胃壁の内面を裏張りするために内視鏡送達カテーテルの遠位端から吻合装置を展開することであって、展開されると、漏斗が、実質的に幽門を閉鎖して、食道を介して胃へ進入する食物を広い開口の中へ導き漏斗を通過して吻合構成部分を介して小腸の中へ導くように構成される、展開することと、を含む、方法。
【0083】
第20項-密閉接続部を形成するために胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通して吻合構成部分を挿入することが、少なくとも部分的に内視鏡送達カテーテルの遠位端付近において吻合装置が折畳み構成のとき胃壁の第1孔及び小腸の第2孔を通過して吻合構成部分の支持構造体の遠位部分を配置することと、吻合構成部分の支持構造体が小腸の内壁に張り付いて小腸の内壁に吻合構成部分を密着させるように、吻合装置が折畳み構成から拡張構成へ移行できるようにするために内視鏡送達カテーテルの遠位端から吻合装置を展開することと、を含む、第19項に記載の方法。
【0084】
本出願の発明について、上で一般的に並びに具体的実施形態の両方に関して説明した。実施形態には本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更の両方を加えることができることが、当業者には明らかであろう。したがって、実施形態は、請求項及びその均等の範囲内にある限り本発明の修正及び変更をカバーするものとする。
(態様)
(態様1)
中央ルーメンへ向かって狭くなる広い開口を持つ漏斗を形成する折畳み可能フレームと、
前記折畳み可能フレームを被覆する膜であって、前記折畳み可能フレーム及び前記膜が、患者の胃への腔内送達に適する折畳み構成と、前記胃の胃壁の内面を裏張りするのに適する拡張構成とを与える、膜と、
前記折畳み可能フレームの前記中央ルーメンから延び、前記胃壁の第1孔及び前記患者の小腸の第2孔を貫通して前記胃壁の前記第1孔と前記小腸の前記第2孔との間に密閉接続部を形成するように構成される吻合構成部分と、
を備え、
前記漏斗が、実質的に幽門を閉鎖して、患者の食道を介して前記胃へ進入する食物を前記広い開口の中へ導き、前記漏斗を通過して前記吻合構成部分を介して前記小腸の中へ導くように構成される、
吻合装置。
(態様2)
前記吻合構成部分が、前記折畳み可能フレームから延び、前記胃壁の前記第1孔及び前記小腸の前記第2孔を貫通して、前記吻合装置が前記患者内に埋植されたとき前記小腸の内壁に平置きされるように構成される支持構造体を備える、態様1に記載の吻合装置。
(態様3)
前記膜が、前記吻合構成部分の前記支持構造体を被覆する、態様2に記載の吻合装置。
(態様4)
前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分が、前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分の前記支持構造体の少なくとも一部分を形成するモノリシックフレーム要素を含む、態様1~3のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様5)
前記折畳み可能フレーム及び前記吻合構成部分の前記支持構造体がカットチューブ構造体から形成される、態様1~4のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様6)
前記折畳み可能フレームが、前記拡張構成のとき、前記胃の胃底部及び大彎を被覆するように構成される、態様1~5のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様7)
前記折畳み可能フレームが、前記拡張構成のとき、前記胃壁の前記内面の裏張り部分からの栄養分接触を制限するように構成される、態様1~6のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様8)
前記患者の前記小腸の前記第2孔が前記患者の空腸に通じる、態様1~7のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様9)
前記膜が延伸ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)を含む、態様1~8のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様10)
更に、前記小腸の前記裏張り内面からの栄養分接触を制限するために前記吻合構成部分から前記小腸の中へ延びて前記小腸の内面を裏張りするように構成された管状ライナーを備える、態様1~9のいずれか1項に記載の吻合装置。
(態様11)
前記管状ライナーが、フレーム要素及び前記膜を備えるステントグラフトを含む、態様10に記載の吻合装置。
(態様12)
内視鏡送達カテーテルと、
態様1~11のいずれか1項に記載の吻合装置と、
を備える、組立体。
(態様13)
更に、患者内への前記吻合装置の展開を容易にするために前記内視鏡送達カテーテルの遠位端から前記吻合装置を押し出すように構成されたプランジャを備える、態様12に記載の組立体。
(態様14)
患者の胃内に態様1~11のいずれか1項に記載の吻合装置を埋植する方法であって、前記方法が、
前記患者の前記胃内に内視鏡送達カテーテルの遠位端を配置するために前記患者の食道を通して前記内視鏡送達カテーテルを挿入することと、
前記胃の胃壁に第1孔を開けることと、
前記患者の小腸に第2孔を開けることであって、前記第2孔が第1孔と概ね一致する、開けることと、
前記折畳み構成の前記吻合装置を前記内視鏡送達カテーテルを介して前記胃へ送達することと、
前記胃壁の前記第1孔と前記小腸の前記第2孔との間に密閉接続部を形成するために前記胃壁の前記第1孔及び前記小腸の前記第2孔を通して前記吻合構成部分を挿入することと、
前記吻合装置を前記折畳み構成から拡張構成に拡張して前記胃壁の内面を裏張りするために前記内視鏡送達カテーテルの遠位端から前記吻合装置を展開することと、
を含み、
展開されると、前記漏斗が、実質的に前記幽門を閉鎖して、前記食道を介して前記胃へ進入する食物を前記広い開口の中へ導き前記漏斗を通過して前記吻合構成部分を介して前記小腸の中へ導くように構成される、方法。
(態様15)
前記密閉接続部を形成するために前記胃壁の前記第1孔及び前記小腸の前記第2孔を通して前記吻合構成部分を挿入することが、
少なくとも部分的に前記内視鏡送達カテーテルの前記遠位端付近において前記吻合装置が前記折畳み構成のとき前記胃壁の第1孔及び前記小腸の第2孔を通して前記吻合構成部分の支持構造体の遠位端を配置することと、
前記吻合構成部分の前記支持構造体が前記小腸の内壁に平置きされて前記小腸の前記内壁に前記吻合構成部分を密着させるように、前記吻合装置が前記折畳み構成から前記拡張構成へ移行できるようにするために前記内視鏡送達カテーテルの前記遠位端から前記吻合装置を展開することと、
を含む、態様14に記載の方法。