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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】過酸化水素の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 15/013 20060101AFI20230313BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C01B15/013
H01L21/304 647Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021508296
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2019001135
(87)【国際公開番号】W WO2020036274
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0096017
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドクユン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンイル
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03260578(EP,A1)
【文献】特表2002-500612(JP,A)
【文献】特表2007-507411(JP,A)
【文献】特開平07-312451(JP,A)
【文献】特開2012-196619(JP,A)
【文献】特開平03-026390(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/013
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素の粗生成物を1次精製システムを利用して精製する段階と、
1次精製された過酸化水素溶液を2次精製システムを利用して精製する段階と、を含み、
前記1次精製システム及び前記2次精製システムの中で1つは、電気脱イオンシステムを含み、
前記1次精製システム及び前記2次精製システムの中で他の1つは、蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、及びこれらの組合システムの中で少なくとも1つを含み、
前記電気脱イオンシステムは、
第1電極及び第2電極と、
第1濃縮室、第2濃縮室、及び前記第1及び第2濃縮室の間の希釈室と、
前記希釈室内に提供されたイオン交換樹脂と、
前記第1濃縮室と前記希釈室との間の陰イオン交換膜と、
前記第2濃縮室と前記希釈室との間の陽イオン交換膜と、
前記第1電極と前記第1濃縮室間及び前記第2電極と前記第2濃縮室間に提供された冷却システムを含み、
前記冷却システムは前記希釈室内の過酸化水素溶液を冷却し、
前記陽イオン交換膜及び陽イオン交換樹脂は1wt%乃至10wt%の酸溶液で前処理されたことを特徴とする過酸化水素の精製方法。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極に直流電圧が印加され、
前記希釈室内の前記過酸化水素溶液内の陰イオン不純物は、前記陰イオン交換膜を通過して前記第1濃縮室に移動し、
前記希釈室内の前記過酸化水素溶液内の陽イオン不純物は、前記陽イオン交換膜を通過して前記第2濃縮室に移動することを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項3】
第1濃縮液及び第2濃縮液が各々前記第1濃縮室及び前記第2濃縮室に投入され、
前記第1濃縮液及び前記第2濃縮液は水(water)であることを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項4】
前記1次精製システムは、蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、及びこれらの組合システムの中で少なくとも1つを含み、
前記2次精製システムは、電気脱イオンシステムを含むことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項5】
前記1次精製システムを利用して精製する段階は、
過酸化水素の粗生成物に蒸留工程を遂行する段階と、
蒸留された過酸化水素溶液に樹脂工程を遂行する段階と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項6】
前記1次精製システムを利用して精製する段階は、
過酸化水素の粗生成物に樹脂工程を遂行する段階と、
前記樹脂工程を経た過酸化水素溶液に逆浸透工程を遂行する段階と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項7】
1次精製された前記過酸化水素溶液を熱交換器に通過させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項8】
前記1次精製システムは、電気脱イオンシステムを含み、
前記2次精製システムは、蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、及びこれらの組合システムの中で少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の精製方法。
【請求項9】
請求項1にしたがって精製した過酸化水素を利用して半導体基板上に洗浄工程を遂行することを含むことを特徴とする洗浄工程を含む半導体素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過酸化水素の精製方法に係り、より詳しくは電気脱イオン工程を含む過酸化水素の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は強い酸化力があり、分解水が無害であるので、酸化剤、絹糸や羊毛等の漂白剤、及びプラスチック工業でビニール重合の触媒として使用されている。
さらに、過酸化水素は上記の用途の外に半導体ウエハ洗浄(wafer cleaning)にも使用される。半導体ウエハを洗浄する技術は湿式洗浄と乾式洗浄に区分することができる。
洗浄工程は半導体ウエハ表面上の物質を除去するという点で食刻工程と類似であるが、半導体ウエハ表面に存在する不純物を選択的に除去するという点で差がある。
代表的な湿式洗浄方法としては、過酸化水素を利用した化学的湿式方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、高純度の過酸化水素を生成することができる過酸化水素の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の過酸化水素の精製方法は、過酸化水素の粗生成物を1次精製システムを利用して精製する段階と、1次精製された過酸化水素溶液を2次精製システムを利用して精製する段階と、を含み、前記1次精製システム及び前記2次精製システムの中で1つは電気脱イオンシステムを含み、前記1次精製システム及び前記2次精製システムの中で他の1つは蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、及びこれらの組合システムの中で少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0005】
本発明の半導体素子の製造方法は、過酸化水素の精製方法にしたがって精製した過酸化水素を利用して半導体基板上に洗浄工程を遂行することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、本発明の過酸化水素の精製方法は、電気脱イオンシステムを通じて高純度の過酸化水素を高い収率及び大容量で得ることができる。
得られた過酸化水素は半導体基板の洗浄工程に使用され、半導体工程の欠陥の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図2図1の過酸化水素精製システムの電気脱イオンシステムを説明するための概略図である。
図3】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図4】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図5】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図6】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図7】本発明の実施形態による電気脱イオンシステムを説明するための概略図である。
図8】本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
図9】本発明の実施形態にしたがって精製された過酸化水素を利用した半導体基板の洗浄工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付した図面を参照して本発明の望ましい実施形態を説明する。
しかし、本発明は以下に開示される実施形態に限定されることなく、様々な形態に具現することができ、多様な変更を加えることができる。
単なる、本実施形態の説明を通じて本発明の開示を完全たるものにし、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
本明細書で、ある構成要素が他の構成要素上にあると言及される場合に、それは他の構成要素上に直接形成されるか、又はそれらの間に第3の構成要素が介在されることができることを意味する。
また、図面において、構成要素の厚さは技術的な内容の効率的な説明のために誇張されることがある。
明細書の全体に亘って同一の番号で表示された部分は同一の構成要素を示す。
【0009】
本明細書の多様な実施形態で第1、第2、第3等の用語が多様な構成要素を技術するために使用されたが、これらの構成要素がこのような用語によって限定されてはならない。
これらの用語は単なる一構成要素を他の構成要素と区別するために使用されただけである。
ここに説明され、例示される実施形態はそれの相補的な実施形態も含む。
本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
本明細書で、単数形は文言で特に言及しない限り、複数形も含む。
明細書で使用される「含む(comprises)」及び/又は「包含する(comprising)」は言及された構成要素は1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
【0010】
図1は本発明の実施形態による過酸化水素の精製システムを説明するための概略図である。
図2図1の過酸化水素精製システムの電気脱イオンシステムを説明するための概略図である。
図1及び図2に示したとおり、過酸化水素精製システムは、1次精製システムPFS1及び2次精製システムPFS2を含む。
過酸化水素の粗生成物Rは順次的に1次精製システムPFS1及び2次精製システムPFS2を経て精製され、最終的に過酸化水素の粗生成物Rから精製された過酸化水素Pを得ることができる。
【0011】
過酸化水素の粗生成物Rはアルキルアントラキノン工程によって生成されることができる。
過酸化水素の粗生成物Rは、アルキルアントラキノン水素化-酸素化反応によって合成された生成物である。
過酸化水素の粗生成物Rは、蒸留のような精製工程を経ていないアルキルアントラキノン工程の生成物である。
具体的に、アルキルアントラキノンに水素を添加してハイドロキノンを生成した後、ハイドロキノンを空気の中で酸素と反応させれば、再びアントラキノンに酸化されながら、過酸化水素が生成される。
酸化反応の生成物であるアントラキノン及び過酸化水素に水を投入して抽出することにより過酸化水素の粗生成物を得ることができる。
【0012】
アルキルアントラキノン工程によって生成された過酸化水素の粗生成物Rは、10ppb以上の濃度を有するFe、Cr、Al、及びNaのような金属不純物、10ppb以上の濃度を有するPO 3-、SO 2-、NO 及びClのような陰イオン不純物及び100ppm以上の濃度を有するTOC(total organic carbon:総有機炭素)を含む。
過酸化水素の粗生成物Rが1次精製システムPFS1に投入されることが好ましい。
1次精製システムPFS1は蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、又はこれらの組合システムを含むことができる。
換言すれば、1次精製システムPFS1を利用して過酸化水素の粗生成物Rに蒸留工程、樹脂工程、逆浸透工程、又はこれらの組合工程が遂行される。
【0013】
一実施形態として、蒸留システムは蒸留塔を含む。蒸留システムを利用して過酸化水素の粗生成物Rに蒸留工程(distillation process)が遂行される。
具体的に、前記蒸留工程を通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物は蒸留塔の下端部に濃縮される。蒸留塔の上端部から蒸留された過酸化水素溶液を得ることができる。
結果的に、蒸留システムを通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物(例えば、金属不純物、陰イオン不純物、及びTOC)が一部除去され、純度が高くなった過酸化水素溶液を得ることができる。
【0014】
一実施形態として、樹脂システムは前処理樹脂を含むことができる。
前処理樹脂は多孔性高分子を含む樹脂、陽イオン/陰イオン作用基を有するイオン交換樹脂、又はこれらの組合を含むことができる。
一例として、前処理樹脂はDow社AMBERLITE SCAV Resin又はPurolite社PAD Resinのような商業的に市販されている樹脂を利用することができる。
使用された前処理樹脂はスチーム或いはメタノール、塩酸等の化学的処理により再生されることができる。
樹脂システムは有機炭素を除去することができる複数の吸着フィルターを追加に含むことができる。
樹脂システムを利用した樹脂工程を通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物の一部が除去される。
【0015】
一実施形態として、逆浸透システムはベッセル(vessel)及びベッセル内の逆浸透膜を含むことができる。
逆浸透システムを利用した逆浸透工程を通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物の一部が除去される。
結果的に、1次精製システムPFS1を通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物の一部が除去され、1次精製された過酸化水素溶液PSを得ることができる。
1次精製された過酸化水素溶液PSが2次精製システムPFS2に投入される。
2次精製システムPFS2は電気脱イオンシステムEDIを含む。
電気脱イオンシステムEDIを利用して過酸化水素溶液PSに電気脱イオン工程(electrodeionization process)が遂行される。
【0016】
図2を再び参照すれば、電気脱イオンシステムEDIは第1電極ELa、第2電極ELc、第1濃縮室(concentrate chamber、CC1)、第2濃縮室CC2、及び第1及び第2濃縮室CC1、CC2の間の希釈室(dilute chamber、DC)を含む。
第1及び第2濃縮室CC1、CC2及び希釈室DCは第1及び第2電極ELa、ELcの間に介在される。
一例として、第1電極ELaはアノード(anode)であり、第2電極ELcはカソード(cathode)である。
【0017】
第1及び第2電極ELa、ELcの間に陰イオン交換膜EMa及び陽イオン交換膜EMcが交互に配置される。
例えば、第1濃縮室CC1と希釈室DCとの間及び第2濃縮室CC2と第2電極ELcとの間に各々陰イオン交換膜EMaが介在される。
第2濃縮室CC2と希釈室DCとの間及び第1濃縮室CC1と第1電極ELaとの間に各々陽イオン交換膜EMcが介在される。
陰イオン交換膜EMaは陰イオンを透過させ、陽イオンは透過させない。
陽イオン交換膜EMcは陽イオンを透過させ、陰イオンは透過させない。
【0018】
希釈室DC内にイオン交換樹脂ERが提供されることができる。
イオン交換樹脂ERは陰イオン交換樹脂ERa及び陽イオン交換樹脂ERcを含む。
陰イオン交換樹脂ERaは陰イオンを吸着して陰イオン交換膜EMaに移動させることができる。陽イオン交換樹脂ERcは陽イオンを吸着して陽イオン交換膜EMcに移動させることができる。
一例として、イオン交換樹脂ERは過酸化水素溶液PS内のイオンの濃度が低くなっても、過酸化水素溶液PSの抵抗が高くなることを防止することができる。
【0019】
本発明にしたがう電気脱イオンシステムEDIの陽イオン交換膜EMc及び陽イオン交換樹脂ERcは酸(acid)で前処理される。
一例として、陽イオン交換膜EMc及び陽イオン交換樹脂ERcは1wt%乃至10wt%の酸溶液(HCl、HSO、HNO等)で前処理される。
したがって、陽イオン交換膜EMc及び陽イオン交換樹脂ERcの末端基であるNa(Sodium Form)をH(Hydrogen Form)に転換することができる。
このため、過酸化水素溶液PSに対する電気脱イオンシステムEDIの安定性を改善することができる。
【0020】
電気脱イオンシステムEDIの入口INに過酸化水素溶液PS、水が投入される。前記水は電気伝導度が低い精製された水である。
投入される過酸化水素溶液PSの過酸化水素の濃度は1wt%乃至70wt%である。
過酸化水素溶液PSは希釈室DCに投入され、前記水は第1濃縮室CC1及び第2濃縮室CC2に投入される。
第1濃縮室CC1に投入された第1濃縮液WF1及び第2濃縮室CC2に投入された第2濃縮液WF2内の過酸化水素の濃度は1wt%以下である。
【0021】
第1及び第2電極ELa、ELcの間に直流電源を印加して、第1電極ELaから第2電極ELcに電流が流れる。
希釈室DC内の過酸化水素溶液PSの陽イオン(例えば、金属不純物)は、直流電源を通じて発生される静電気的引力によって陽イオン交換膜EMcを通過して第2濃縮室CC2の第2濃縮液WF2に移動する。
希釈室DC内の過酸化水素溶液PSの陰イオン(例えば、陰イオン不純物)は、直流電源を通じて発生される静電気的引力によって陰イオン交換膜EMaを通過して第1濃縮室CC1の第1濃縮液WF1に移動する。
【0022】
希釈室DCの入口INから出口OUTに行くほど、過酸化水素溶液PSのイオンの濃度が減少する。
換言すれば、希釈室DCの入口INから出口OUTに行くほど、過酸化水素溶液PSの不純物の濃度が減少することになる。
希釈室DCの出口OUTを通じて精製された過酸化水素Pが排出される。
【0023】
第1及び第2濃縮室CC1、CC2の出口OUTを通じて第1濃縮液WF1及び第2濃縮液WF2が排出される。
排出された第1濃縮液WF1及び第2濃縮液WF2は過酸化水素溶液PSから除去された不純物が濃縮されている。
一例として、排出された第1濃縮液WF1及び第2濃縮液WF2は廃棄されることになる。
他の例として、第1濃縮液WF1及び第2濃縮液WF2は濾過されて電気脱イオンシステムEDIの入口INに再び投入されることができる。
即ち、第1濃縮液WF1及び第2濃縮液WF2は電気脱イオンシステムEDI内で循環されることができる。
【0024】
希釈室DCの入口INから出口OUTに行くほど、過酸化水素溶液PSのイオンの濃度が減少するので、出口OUTに隣接する希釈室DCの一領域では過酸化水素溶液PSの抵抗が高くなる。
したがって、希釈室DCの前記一領域で電圧降下が発生して水分解及び/又は過酸化水素の分解が発生することになる。
水分解及び/又は過酸化水素の分解によって水素イオン及び水酸化イオンが生成され、生成された水素イオン及び水酸化イオンはイオン交換樹脂ERを再生させることができる。
したがって、本発明の電気脱イオンシステムEDIはイオン交換樹脂ERの再生のための別の工程を必要としないことがあり得る。
【0025】
本発明の実施形態による過酸化水素精製システムは、過酸化水素の2次精製システムPFS2に電気脱イオンシステムEDIを利用することによって、高純度の過酸化水素を高い収率で得ることができる。
さらに電気脱イオンシステムEDIは相対的に高い流量(例えば、1乃至10m/hr)で運転が可能であるので、高純度の過酸化水素を大容量で得ることができる。
【0026】
図3は本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴についての詳細な説明は省略し、相違点に対して詳細に説明する。
図3に示したとおり、1次精製システムPFS1は蒸留システムDIS及び樹脂システムRESを含むことができる。
過酸化水素の粗生成物Rは蒸留システムDISに先ず投入されて、蒸留工程を経る。蒸留された過酸化水素溶液DSは続いて樹脂システムRESに投入されて樹脂工程を経ることができる。
1次精製システムPFS1を通過した過酸化水素溶液PSが2次精製システムPFS2に投入される。
【0027】
実施例1
図3を参照して説明した過酸化水素の精製工程を利用して過酸化水素を精製した。
具体的に、アルキルアントラキノン工程によって生成された過酸化水素の粗生成物を蒸留し、前処理樹脂工程を通じて1次精製した。
1次精製された過酸化水素溶液を本発明による電気脱イオンシステムEDIを利用して2次精製した。
1次精製された過酸化水素溶液の不純物の濃度と電気脱イオン工程で2次精製された過酸化水素溶液の不純物の濃度を測定して下の表1に示した。
【表1】
【0028】
表1を参照すれば、1次精製された過酸化水素溶液を電気脱イオン工程で2次精製した結果、TOCは83%除去され、金属不純物は90%以上除去され、陰イオン不純物も90%以上除去されたことを確認することができる。
結果的に、1次精製された過酸化水素溶液に電気脱イオン工程で2次精製工程を追加的に遂行した場合、超高純度の過酸化水素溶液を得ることを確認することができた。
【0029】
図4は本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴について詳細な説明は省略し、相違点に対して詳細に説明する。
図41次精製システムPFS1を省略する例を示した。
即ち、過酸化水素の粗生成物Rは2次精製システムPFS2である電気脱イオンシステムEDIに直ちに投入され
【0030】
参考例1
図4に示した過酸化水素の精製工程を利用して過酸化水素を精製した。
実施例1と異なり、アルキルアントラキノン工程によって生成された過酸化水素の粗生成物を蒸留や1次精製することなく、直ちに電気脱イオンシステムEDIを利用して精製した。
過酸化水素の粗生成物の不純物の濃度と電気脱イオン工程で精製された過酸化水素溶液の不純物の濃度を測定して下の表2で示した。
【表2】
【0031】
表2を参照すれば、過酸化水素の粗生成物を電気脱イオン工程で精製した結果、TOCは46%除去され、Naを除いた金属不純物は約80%以上除去され、Clを除いた陰イオン不純物は約15%除去されたことを確認することができる。
本実施形態にしたがって得られた精製された過酸化水素溶液の不純物の濃度は先に実施例1で精製された過酸化水素溶液の不純物の同度より高いことを確認することができる。
即ち、1次精製工程を経た過酸化水素溶液を電気脱イオン工程で2次追加精製する場合、より高純度の過酸化水素溶液を得ることができることを確認した。
【0032】
図5は本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴について詳細な説明は省略し、相違点に対して詳細に説明する。
図5に示したとおり、1次精製システムPFS1は樹脂システムRES及び逆浸透システムROSを含む。
【0033】
過酸化水素の粗生成物Rは樹脂システムRESに先ず投入されて、樹脂工程を経ることができる。
樹脂工程を過酸化水素の粗生成物溶液は続いて逆浸透システムROSに投入されて逆浸透工程を経ることができる。
過酸化水素の粗生成物R内の不純物は逆浸透膜を損傷させることから、過酸化水素の粗生成物Rが先ず樹脂工程を経ることにより、不純物の一部が除去されて逆浸透膜の寿命が延長することができる。
【0034】
図6は本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴について詳細な説明は省略し、相違点について詳細に説明する。
図6に示したとおり、過酸化水素精製システムは1次精製システムPFS1及び2次精製システムPFS2の間に配置された熱交換器HEをさらに含むことができる。
1次精製された過酸化水素溶液PSは熱交換器HEを通過し、その温度が調節される。
熱交換器HEは過酸化水素溶液PSの温度を-20℃乃至20℃に調節することができる。
換言すれば、-20℃乃至20℃の温度を有する過酸化水素溶液PSが2次精製システムPFS2である電気脱イオンシステムEDIに投入されることになる。
【0035】
過酸化水素は強い酸化剤であるので、電気脱イオンシステムEDIの希釈室DC内で接触するイオン交換媒介体を酸化し、劣化(aging)させる。
これにより、希釈室内の抵抗が減少して過酸化水素が分解されて発生された酸素によって電気脱イオンシステムEDI内の圧力が増加することになる。
過酸化水素の温度が高いほど、酸素の生成量は急激に増加する。
仮に酸素が過度に生成された場合、電気脱イオンシステムEDI内の圧力が過度に増加して電気脱イオンシステムEDIが損傷を受け、精製工程の効率が低下することになる。
【0036】
本実施形態によれば、熱交換器HEを通じて電気脱イオンシステムEDIに投入される過酸化水素溶液PSの温度を適切に調節して、酸素が過度に生成されることを防止することができる。
結果的に、電気脱イオンシステムEDIの損傷を防止し、過酸化水素の精製効率を増加させることができる。
【0037】
図7は本発明の実施形態による電気脱イオンシステムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴について詳細な説明は省略し、相違点について詳細に説明する。
図7に示したとおり、電気脱イオンシステムEDIは冷却システムCLSをさらに含むことができる。
冷却システムCLSは第1電極ELaと第1濃縮室CC1との間及び第2電極ELcと第2濃縮室CC2との間に提供されることができる。
冷却システムCLSは希釈室DCを流れる過酸化水素溶液PSを冷却させる。
【0038】
先に図6を参照して説明したように、過酸化水素溶液PSの温度が高くなる場合、酸素が過度に生成されて工程リスクを誘発することがある。
本実施形態によれば、冷却システムCLSを通じて希釈室DC内の過酸化水素溶液PSを冷却させることによって、酸素が過度に生成されることを防止することができる。
【0039】
図8は本発明の実施形態による過酸化水素精製システムを説明するための概略図である。
本実施形態では、先に図1及び図2を参照して説明したことと重複する技術的特徴について詳細な説明は省略し、相違点について詳細に説明する。
図8に示したとおり、過酸化水素の粗生成物Rが1次精製システムPFS1に投入される。
1次精製システムPFS1は電気脱イオンシステムEDIを含むことができる。
電気脱イオンシステムEDIを通じて過酸化水素の粗生成物R内の不純物の一部が除去され、1次精製された過酸化水素溶液PSを得ることができる。
【0040】
1次精製された過酸化水素溶液PSが2次精製システムPFS2に投入される。
2次精製システムPFS2は電気脱イオンシステムEDI、蒸留システム、樹脂システム、逆浸透システム、又はこれらの組合システムを含むことができる。
換言すれば、1次精製システムPFS1を利用して過酸化水素の粗生成物Rに電気脱イオン工程、蒸留工程、樹脂工程、逆浸透工程、又はこれらの組合工程を遂行される。
2次精製システムPFS2を通じて過酸化水素溶液PS内の不純物が除去され、精製された過酸化水素Pを得ることができる。
【0041】
上述した本発明の実施形態による過酸化水素の精製方法を通じて高純度の過酸化水素を得ることができる。
図9は本発明の実施形態により精製された過酸化水素を利用した半導体基板の洗浄工程を説明するための概略図である。
図9に示したとおり、半導体素子の製造方法は半導体基板SUBの洗浄工程を含むことができる。
具体的に、半導体基板SUBの洗浄工程は半導体基板SUB上に本発明の精製方法で精製された過酸化水素Pを適用する。
一例として、半導体基板SUBはシリコン、ゲルマニウム、又はシリコン-ゲルマニウムを含むことができる。
【0042】
仮に前記洗浄工程に不純物を含有する過酸化水素を使用する場合、前記不純物が半導体基板SUB上の物質と反応して半導体工程の欠陥を誘発する。
一方、本発明にしたがう精製された過酸化水素Pは不純物の含量が非常に低いので、半導体工程の欠陥発生を防止することができる。
【0043】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更しなくとも、他の具体的な形態で実施することができることを理解することができる。
したがって、上記した実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないことと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0044】
CC1 第1濃縮室(concentrate chamber)
CC2 第2濃縮室
CLS 冷却システム
DC 希釈室(dilute chamber)
DIS 蒸留システム
DS 過酸化水素溶液
EDI 電気脱イオンシステム
ELa 第1電極、アノード(anode)
ELc 第2電極、カソード(cathode)
EMa 陰イオン交換膜
EMc 陽イオン交換膜
ER イオン交換樹脂
ERa 陰イオン交換樹脂
ERc 陽イオン交換樹脂
HE 熱交換器
P 精製された過酸化水素
PFS1 1次精製システム
PFS2 2次精製システム
PS 1次精製された過酸化水素溶液
R 粗生成物
RES 樹脂システム
ROS 逆浸透システム
SUB 半導体基板
WF1 第1濃縮液
WF2 第2濃縮液
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9