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特許7242856ロボット制御システム及びロボット制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ロボット制御システム及びロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021528628
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024823
(87)【国際公開番号】W WO2020255410
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】岡本 実幸
(72)【発明者】
【氏名】菊川 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 信夫
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-099382(JP,A)
【文献】特開2019-063954(JP,A)
【文献】特開2011-083882(JP,A)
【文献】特開2018-176348(JP,A)
【文献】特開2017-050376(JP,A)
【文献】特開2014-104529(JP,A)
【文献】特開2018-103352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラと、前記ロボットの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御システムにおいて、
前記エンドエフェクタに保持したワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したときに当該ワークの下端を検出することで、当該ワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことを検出するセンサ部を備え、
前記制御部は、前記エンドエフェクタに保持したワークを前記カメラで撮像する際に、当該ワークの下端を前記センサ部が検出する位置まで下降させることで、当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサ部が前記ワークの下端を検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで、当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて前記ワーキングディスタンスを一定に保つ、請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラと、前記ロボットの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御システムにおいて、
ワークを保持していない前記エンドエフェクタの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことを検出するセンサ部を備え、
前記制御部は、前記センサ部が前記エンドエフェクタの下端を検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、前記エンドエフェクタにワークを保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記ワークの下方への突出寸法(ΔZ)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御システム。
【請求項4】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラと、前記ロボットの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御システムにおいて、
前記エンドエフェクタに保持した治具の下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことを検出するセンサ部を備え、
前記制御部は、前記センサ部が前記エンドエフェクタに保持した治具の下端を検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、前記エンドエフェクタにワークを保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記ワークの下方への突出寸法(ΔZ1)と、前記エンドエフェクタに前記治具を保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記治具の下方への突出寸法(ΔZ2)との差分(ΔZ1-ΔZ2)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ1-ΔZ2)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記エンドエフェクタで保持するワークのサイズが変わる毎に、前記ワーク撮像時の目標Z座標を設定し直す、請求項2乃至4のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記エンドエフェクタを取り替える毎に、前記ワーク撮像時の目標Z座標を設定し直す、請求項2乃至5のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記エンドエフェクタでワークを保持して前記撮像位置と前記作業位置へ移動させる動作を繰り返す場合に、同一経路で前記撮像位置と前記作業位置へ移動させる、請求項1乃至6のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項8】
前記センサ部は、検出対象が接触したことを検出するタッチセンサである、請求項1乃至7のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項9】
前記センサ部は、光を水平方向に向けて照射して検出対象を検出する光センサである、請求項1乃至7のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項10】
前記センサ部は、レーザ光を水平方向に向けて照射して検出対象を検出するレーザセンサである、請求項1乃至7のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項11】
前記エンドエフェクタは、ワークの上面を吸着する吸着具である、請求項1乃至10のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項12】
前記エンドエフェクタは、ワークの側面を把持するチャックであり、ワークの側面を把持するときに当該ワークの上面に当接して当該ワークの側面の高さ方向の把持位置を一定に保つ把持位置規制部を備えている、請求項1乃至10のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項13】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラとを備え、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御方法において、
前記エンドエフェクタに保持したワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したときに当該ワークの下端を検出することで、当該ワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部で検出し、
前記エンドエフェクタに保持したワークを前記カメラで撮像する際に、当該ワークの下端を前記センサ部が検出する位置まで下降させることで、当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御方法。
【請求項14】
前記センサ部が前記ワークの下端を検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで前記ワーキングディスタンスを一定に保つ、請求項13に記載のロボット制御方法。
【請求項15】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラとを備え、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御方法において、
ワークを保持していない前記エンドエフェクタの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部で検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、前記エンドエフェクタにワークを保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記ワークの下方への突出寸法(ΔZ)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、
以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御方法。
【請求項16】
アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラとを備え、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御方法において、
前記エンドエフェクタに保持した治具の下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部で検出したときの前記エンドエフェクタの高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、前記エンドエフェクタにワークを保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記ワークの下方への突出寸法(ΔZ1)と、前記エンドエフェクタに前記治具を保持したときの前記エンドエフェクタの下端からの前記治具の下方への突出寸法(ΔZ2)との差分(ΔZ1-ΔZ2)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ1-ΔZ2)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、
以後、前記ワークと同じサイズのワークを前記エンドエフェクタに保持して前記カメラで撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、前記エンドエフェクタのZ座標を前記目標Z座標に制御することで当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つ、ロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ロボットのアーム先端のエンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラを備えたロボット制御システム及びロボット制御方法に関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットのアーム先端のエンドエフェクタにワークを保持する毎に、そのワークの位置が少しずつ位置ずれするため、特許文献1(特開2018-103352号公報)に記載されているように、エンドエフェクタに保持したワークをその下方からカメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットすることで、当該ワークの位置決め精度を確保するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-103352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンドエフェクタに保持したワークの下端とカメラとの間の距離であるワーキングディスタンスが変化すると、撮像画像の分解能(1ピクセル当たりの撮像部位の実際の長さ[μm/ピクセル])が変化して、エンドエフェクタに保持したワークの位置を正確に認識できないため、ワーク撮像時にはワーキングディスタンスを一定に保つ必要がある。この場合、カメラの位置は固定されているため、ワーキングディスタンスを一定に保つには、ワーク撮像時のワークの下端の高さ位置を一定に保つ必要がある。
【0005】
しかし、エンドエフェクタで保持するワークのサイズは様々であるため、ワーク撮像時のワークの下端の高さ位置を一定に保つには、ワーク撮像時のエンドエフェクタの高さ位置をワークのサイズに応じて調整する必要がある。
【0006】
また、エンドエフェクタがワークの側面を把持するチャックの場合など、ワークの保持状態が異なる場合にも、ワーク撮像時のエンドエフェクタの高さ位置を適切に調整する必要がある。
【0007】
これらの調整作業は、ワークのサイズ毎やエンドエフェクタの種類毎にユーザーが行う必要があるため、ユーザーにとって甚だ手間のかかる作業となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、アーム先端のエンドエフェクタに保持したワークを所定の作業位置にセットする作業を行うロボットと、前記エンドエフェクタに保持したワークをその下方から撮像するカメラと、前記ロボットの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラから上方に所定距離離れた位置を撮像位置とし、前記ロボットのアームを動作させて前記エンドエフェクタに保持したワークの下端を前記撮像位置まで下降させた状態で当該ワークを前記カメラで撮像して、その画像を処理することで当該ワークの位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワークを所定の作業位置に位置決めしてセットする、ロボット制御システムにおいて、前記エンドエフェクタに保持したワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したときに当該ワークの下端を検出することで、当該ワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことを検出するセンサ部を備え、前記制御部は、前記エンドエフェクタに保持したワークを前記カメラで撮像する際に、当該ワークの下端を前記センサ部が検出する位置まで下降させることで、当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させて当該ワークの下端と前記カメラとの間の距離であるワーキングディスタンスを一定に保つようにしたものである。
【0009】
この構成によれば、エンドエフェクタに保持したワークの下端が撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したときに前記ワークの下端を検出することで、前記ワークの下端が前記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことを検出するセンサ部を備えているため、ワーク撮像時に当該ワークの下端を前記センサ部が検出する位置まで下降させることで、当該ワークの下端を前記撮像位置まで下降させてワーキングディスタンスを自動的に一定に保つことができて、ワークのサイズ毎やエンドエフェクタの種類毎にユーザーがワーク撮像時のエンドエフェクタの高さ位置を調整する手間のかかる作業を行わずに済む。また、アーム動作の制御精度がそれほど高くない安価なロボットを使用した場合でも、ワークの位置認識精度(位置決め精度)を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施例1のロボット制御システムの外観を示す正面図である。
図2図2は実施例1のロボット制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は実施例2のワーキングディスタンスを検出する構成を示す正面図である。
図4図4は実施例3のエンドエフェクタの構成を示す正面図である。
図5図5は実施例5のワーキングディスタンスを検出する方法を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書に開示した5つの実施例1~5を説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてロボット11の構成を説明する。
【0013】
ロボット11は、例えば5軸垂直多関節ロボットであり、工場フロア12に設置された固定ベース13と、この固定ベース13上に第1関節軸14(J1)を中心に回転可能に設けられた第1アーム15と、この第1アーム15の先端に第2関節軸16(J2)によって旋回可能に設けられた第2アーム17と、この第2アーム17の先端に第3関節軸18(J3)によって旋回可能に設けられた第3アーム19と、この第3アーム19の先端に第4関節軸20(J4)によって旋回可能に設けられた手首部21(アーム先端)と、この手首部21に第5関節軸22(J5)を中心に回転可能且つ交換可能に取り付けられたエンドエフェクタ23とから構成されている。これにより、手首部21に取り付けたエンドエフェクタ23は、その手首部21の関節軸である第4関節軸20によって旋回動作するようになっている。
【0014】
この場合、エンドエフェクタ23は、例えば、ワーク24の上面を吸着する吸着ノズルや吸着パッド等の吸着具、ワーク24の側面を把持するチャックのいずれであっても良く、要は、ワーク24を吸着や把持等によって保持できるものであれば良い。尚、図1には、エンドエフェクタ23として吸着具を使用した例を示している。
【0015】
ロボット11の第1~第5の各関節軸14,16,18,20,22は、それぞれサーボモータ25~29(図2参照)により駆動されるようになっている。図2に示すように、各サーボモータ25~29には、それぞれ回転角を検出するエンコーダ31~35が設けられ、各エンコーダ31~35で検出した回転角の情報がサーボアンプ36を経由して制御部37にフィードバックされる。これにより、制御部37は、各エンコーダ31~35で検出した各サーボモータ25~29の回転角が各々の目標回転角と一致するようにサーボアンプ36を介して各サーボモータ25~29をフィードバック制御することで、ロボット11の各アーム15,17,19と手首部21とエンドエフェクタ23の位置を各々の目標位置にフィードバック制御する。図2の構成例では、サーボアンプ36は、複数のサーボモータ25~29をフィードバック制御する多軸アンプであるが、サーボモータ25~29を1台ずつ別々のサーボアンプでフィードバック制御するようにしても良い。
【0016】
ロボット11のアーム可動領域(手首部21先端側のエンドエフェクタ23が移動可能な領域)内に設定された撮像位置の下方には、エンドエフェクタ23に保持したワーク24をその下方から撮像するカメラ41が上向きにカメラ台42上に固定されている。
【0017】
エンドエフェクタ23に保持したワーク24をその下方からカメラ41で撮像する際には、当該ワーク24の下端とカメラ41のレンズ41aとの間の距離であるワーキングディスタンスWDを一定に保って撮像画像の分解能(1ピクセル当たりの撮像部位の実際の長さ[μm/ピクセル])を一定に保つために、カメラ41のレンズ41aから上方に所定のワーキングディスタンスWDだけ離れた高さ位置に撮像位置を設定して、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端を撮像位置まで下降させてワーキングディスタンスWDを一定にした状態で当該ワーク24をその下方からカメラ41で撮像するようにしている。
【0018】
カメラ台42上のうちのカメラ41の両側には、センサ取付フレーム43a,43bが垂直上向きに固定され、各センサ取付フレーム43a,43bの上端が撮像位置よりも少し高い位置まで延びている。このセンサ取付フレーム43a,43bの上端付近には、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端が撮像位置まで下降したことを検出するセンサ部として、光センサ44の投光素子44aと受光素子44bが水平方向に対向するように取り付けられている。この光センサ44の投光素子44aは、撮像位置と同じ高さ位置から光を水平方向に向けて照射してその光を受光素子44bで受光するように配置され、投光素子44aと受光素子44bとの間の水平方向に延びる光路が検出対象であるワーク24の下端で遮られることで、ワーク24の下端が撮像位置まで下降したことを検出するように構成されている。本実施例1では、光センサ44の投光素子44aと受光素子44bとの間の水平方向に延びる光路がカメラ41の垂直上向きの光軸と直交するように構成されている。更に、本実施例1では、カメラ台42上にカメラ41と光センサ44とを上述した所定の位置関係で組み付けたカメラユニットとして構成され、このカメラユニットを他のロボットにも設置可能となっている。
【0019】
以上のように構成したロボット11の動作を制御するロボット制御ユニット51は、図2に示すように、画像処理部45、制御部37及びサーボアンプ36等を備えた構成となっている。制御部37は、ロボット11の各アーム15,17,19と手首部21を動作させてエンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端を撮像位置まで下降させた状態で当該ワーク24をその下方からカメラ41で撮像して、その画像を画像処理部45で処理することで、エンドエフェクタ23に対する当該ワーク24の相対的な位置を認識し、その認識結果に基づいて当該ワーク24を所定の作業位置に位置決めしてセットする作業を行う。更に、制御部37は、エンドエフェクタ23でワーク24を保持して撮像位置と作業位置へ移動させる動作を繰り返す場合に、ロボット11のバックラッシ(ヒステリシス)を一定にするために、同一経路で撮像位置と作業位置へ移動させる。
【0020】
ところで、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端とカメラ41のレンズ41aとの間の距離であるワーキングディスタンスWDが変化すると、撮像画像の分解能(1ピクセル当たりの撮像部位の実際の長さ[μm/ピクセル])が変化して、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の位置を正確に認識できないため、ワーク撮像時にはワーキングディスタンスWDを一定に保つ必要がある。この場合、カメラ41の位置は固定されているため、ワーキングディスタンスWDを一定に保つには、ワーク撮像時のワーク24の下端の高さ位置を一定に保つ必要がある。
【0021】
そこで、本実施例1では、制御部37は、エンドエフェクタ23に保持したワーク24をカメラ41で撮像する際に、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端が撮像位置まで下降したことを検出する光センサ44の検出結果に基づいて当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させて当該ワーク24の下端とカメラ41のレンズ41aとの間の距離であるワーキングディスタンスWDを一定に保った状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像する。
【0022】
この場合、制御部37は、エンドエフェクタ23にワーク24を保持する毎に、毎回、光センサ44が当該ワーク24の下端を検出するまでエンドエフェクタ23を下降させて当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させた状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像するようにしても良い。
【0023】
また、同じサイズのワーク24を所定の作業位置に位置決めしてセットする作業を繰り返して行う場合には、最初に1回だけワーク24の下端を光センサ44で検出して当該ワーク24をカメラ41で撮像し、以後、同じサイズのワーク24をエンドエフェクタ23で保持する毎に、最初の光センサ44の検出結果を利用してワーク24の下端を撮像位置まで下降させて当該ワーク24をカメラ41で撮像するようにしても良い。
【0024】
具体的には、制御部37は、最初にエンドエフェクタ23に保持したワーク24を下降させて光センサ44が当該ワーク24の下端を検出したときのエンドエフェクタ23の高さ方向(Z方向)の座標であるZ座標をワーク撮像時の目標Z座標に設定して、当該ワーク24をカメラ41で撮像し、以後、当該ワーク24と同じサイズのワーク24をエンドエフェクタ23に保持する毎に、光センサ44で検出する処理を省略して、ワーク24を保持したエンドエフェクタ23のZ座標を目標Z座標に制御することで、当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させてワーキングディスタンスWDを一定に保った状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像するようにしても良い。
【0025】
この場合、ロボット11のアーム動作は、ロボット座標系で比較的精度良く制御できるため、最初に光センサ44がワーク24の下端を検出したときのエンドエフェクタ23のZ座標をワーク撮像時の目標Z座標に設定すれば、以後、エンドエフェクタ23のZ座標を目標Z座標に制御することで、ワーキングディスタンスWDを一定に保った状態でワーク24をカメラ41で撮像することができる。この場合、制御部37は、エンドエフェクタ23で保持するワーク24のサイズが変わる毎に、ワーク撮像時の目標Z座標を設定し直し、また、手首部21に取り付けたエンドエフェクタ23を取り替える毎に、ワーク撮像時の目標Z座標を設定し直すようにすれば良い。
【0026】
以上説明した本実施例1によれば、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端が撮像位置まで下降したことを検出する光センサ44を備えているため、ワーク撮像時に光センサ44の検出結果に基づいてワーキングディスタンスWDを自動的に一定に保つことができて、ユーザーがワーク24のサイズ毎やエンドエフェクタ23の種類毎にワーク撮像時のエンドエフェクタ23の高さ位置を調整する手間のかかる作業を行わずに済む。また、アーム動作の制御精度がそれほど高くない安価なロボットを使用した場合でも、ワーク24の位置認識精度(位置決め精度)を確保できる。
【0027】
しかも、カメラ台42上にカメラ41と光センサ44の投光素子44aと受光素子44bを所定の位置関係で組み付けたカメラユニットとして構成されているため、このカメラユニットを他のロボットにも設置可能であり、容易に本発明を実施できる。また、ロボット11とカメラユニットとの間の相対的な位置関係がずれたり変更された場合でも、ユーザーがワーク撮像時のエンドエフェクタ23の高さ位置を調整する手間のかかる作業を行わずに済む。
【0028】
尚、本実施例1では、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端が撮像位置まで下降したことを検出するセンサ部として、光センサ44を用いたが、レーザ光を水平方向に向けて照射して検出対象を検出するレーザセンサを用いても良い。
【実施例2】
【0029】
次に、図3を用いて実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0030】
本実施例2では、エンドエフェクタ23に保持したワーク24の下端が撮像位置と同じ高さ位置まで下降したことを検出するセンサ部として、検出対象であるワーク24の下端が接触したことを検出するタッチセンサ52がセンサ取付フレーム43aの上端付近に水平に取り付けられ、このタッチセンサ52の上面が撮像位置と同じ高さ位置となっている。タッチセンサ52の位置は、カメラ41の視野から外れた位置(ワーク24の撮像に邪魔にならない位置)で、撮像位置に近い位置に設定されている。
【0031】
本実施例2では、制御部37は、最初にエンドエフェクタ23に保持したワーク24を下降させて当該ワーク24の下端をタッチセンサ52に接触させることで、当該ワーク24の下端をタッチセンサ52で検出したときのエンドエフェクタ23の高さ方向(Z方向)の座標であるZ座標をワーク撮像時の目標Z座標に設定すると共に、当該ワーク24を横方向に移動させて当該ワーク24の下端を撮像位置に位置させた状態でカメラ41で撮像し、以後、当該ワーク24と同じサイズのワーク24をエンドエフェクタ23に保持する毎に、タッチセンサ52で検出する処理を省略して、ワーク24を保持したエンドエフェクタ23のZ座標を目標Z座標に制御することで、当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させてワーキングディスタンスWDを一定に保った状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像する。
【0032】
以上説明した本実施例2においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0033】
次に、図4を用いて実施例3を説明する。但し、前記実施例1又は2と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0034】
本実施例3では、エンドエフェクタとして、ワーク24の側面を把持するチャック53を用いている。このチャック53は、ワーク24の側面を把持するときに当該ワーク24の上面に当接して当該ワーク24の側面の高さ方向の把持位置を一定に保つ把持位置規制部54を備えている。
【0035】
このチャック53は、把持位置規制部54によってワーク24の側面の高さ方向の把持位置を一定に保つことができるため、ワーク24の上面を吸着する吸着ノズル等の吸着具を用いる場合と同様に、前記実施例1又は2で説明した制御方法によってワーク撮像時のワーキングディスタンスWDを一定に保つことができる。
【実施例4】
【0036】
次に、実施例4を説明する。但し、前記実施例1~3と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0037】
前記実施例1~3では、エンドエフェクタ23又は53に保持したワーク24の下端が撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部(光センサ44、レーザセンサ、タッチセンサ52等)で検出するようにしたが、本実施例4では、ワーク24を保持していないエンドエフェクタ23又は53の下端が記撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部(光センサ44、レーザセンサ、タッチセンサ52等)で検出するようにしている。
【0038】
この場合、制御部37は、センサ部がエンドエフェクタ23又は53の下端を検出したときのエンドエフェクタ23又は53の高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、エンドエフェクタ23又は53にワーク24を保持したときのエンドエフェクタ23又は53の下端からのワーク24の下方への突出寸法(ΔZ)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワーク24と同じサイズのワーク24をエンドエフェクタ23又は53に保持してカメラ41で撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、エンドエフェクタ23又は53のZ座標を前記目標Z座標に制御することで当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させて当該ワーク24の下端とカメラ41との間の距離であるワーキングディスタンスWDを一定に保った状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像する。
【0039】
この場合、エンドエフェクタ23がワーク24の上面を吸着する吸着ノズル等の吸着具である場合は、エンドエフェクタ23にワーク24を保持したときのエンドエフェクタ23の下端からのワーク24の下方への突出寸法(ΔZ)は、ワーク24の高さ寸法と一致する。一方、図4に示すようなチャック53を用いる場合は、チャック53の下端からのワーク24の下方への突出寸法(ΔZ)は、ワーク24の高さ寸法よりもチャック53の把持量分だけ小さくなる。
【0040】
以上説明した本実施例4においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0041】
次に、図5を用いて実施例5を説明する。但し、前記実施例1~3と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0042】
本実施例5では、エンドエフェクタ23に保持した治具55の下端が撮像位置又はそれと同じ高さの位置まで下降したことをセンサ部(光センサ44、レーザセンサ、タッチセンサ52等)で検出するようにしている。ここで、治具55は、例えば分解能等を測定するキャリブレーション治具であっても良いし、サンプル部品等であっても良く、要は、治具55の高さ寸法が既知であれば良い。尚、エンドエフェクタとして、図4に示すようなチャック53を用いる場合には、チャック53の下端からの治具55の下方への突出寸法(ΔZ2)が既知であれば良い。
【0043】
この場合、制御部37は、センサ部がエンドエフェクタ23又は53に保持した治具55の下端を検出したときのエンドエフェクタ23又は53の高さ方向の座標であるZ座標(Z)を、エンドエフェクタ23又は53にワーク24を保持したときのエンドエフェクタ23又は53の下端からのワーク24の下方への突出寸法(ΔZ1)と、エンドエフェクタ23又は53に治具55を保持したときのエンドエフェクタ23又は53の下端からの治具55の下方への突出寸法(ΔZ2)との差分(ΔZ1-ΔZ2)だけ上方にオフセットさせたZ座標(Z+ΔZ1-ΔZ2)をワーク撮像時の目標Z座標に設定し、以後、前記ワーク24と同じサイズのワーク24をエンドエフェクタ23又は53に保持してカメラ41で撮像する際に、前記センサ部で検出する処理を省略して、エンドエフェクタ23又は53のZ座標を前記目標Z座標に制御することで、当該ワーク24の下端を撮像位置まで下降させて当該ワーク24の下端とカメラ41との間の距離であるワーキングディスタンスWDを一定に保った状態で当該ワーク24をカメラ41で撮像する。
【0044】
以上説明した本実施例5においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
尚、本発明は、上述した各実施例1~5に限定されず、例えば、ロボット11の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
11…ロボット、14…第1関節軸、15…第1アーム、16…第2関節軸、17…第2アーム、18…第3関節軸、19…第3アーム、20…第4関節軸、21…手首部(アーム先端)、22…第5関節軸、23…エンドエフェクタ、24…ワーク、25~29…サーボモータ、31~35…エンコーダ、36…サーボアンプ、37…制御部、41…カメラ、42…カメラ台、43a,43b…センサ取付フレーム、44…光センサ(センサ部)、44a…投光素子、44b…受光素子、45…画像処理部、51…ロボット制御ユニット、52…タッチセンサ(センサ部)、53…チャック(エンドエフェクタ)、54…把持位置規制部、55…治具
図1
図2
図3
図4
図5