(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ダンパユニット、ダンパ収容ユニット及び開閉ユニット
(51)【国際特許分類】
E05F 5/02 20060101AFI20230313BHJP
E05F 5/10 20060101ALI20230313BHJP
F16F 9/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
E05F5/02 E
E05F5/10
F16F9/00 Z
(21)【出願番号】P 2022028338
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591015511
【氏名又は名称】高千穂交易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 啓輔
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287355(JP,A)
【文献】特開2005-201031(JP,A)
【文献】特開2009-92247(JP,A)
【文献】特開2016-84938(JP,A)
【文献】特開2005-36635(JP,A)
【文献】実開昭57-143369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-5/12
F16F 9/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ及びピストンロッドを含み、前記ピストンロッドが縮む際に衝撃を緩和するリニアダンパと、
収容部材であって、前記シリンダチューブ及び前記ピストンロッドが前記収容部材に対して軸方向に移動可能なように、前記リニアダンパを収容する、収容部材と、
前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記シリンダチューブの移動を規制する第1の規制部材と、
前記シリンダチューブが前記ピストンロッド側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記ピストンロッドの移動を規制する第2の規制部材と、を備え
、
前記第1の規制部材は、前記シリンダチューブの前記収容部材に対する移動に伴って前記収容部材に対して移動可能な部材であり、
前記第1の規制部材は、前記シリンダチューブの径方向に突出した第1の突出部を含み、
前記第2の規制部材は、前記ピストンロッドの前記収容部材に対する移動に伴って前記収容部材に対して移動可能な部材であり、
前記第2の規制部材は、前記ピストンロッドの径方向に突出した第2の突出部を含み、
前記収容部材は、前記第1の突出部又は前記第2の突出部が前記軸方向に移動可能な少なくとも一つの開口を形成する開口形成部を含み、
前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ側への力を受けた場合に、前記第1の突出部と前記開口形成部により形成される開口の前記シリンダチューブ側の縁部が接触し、
前記シリンダチューブが前記ピストンロッド側への力を受けた場合に、前記第2の突出部と前記開口形成部により形成される開口の前記ピストンロッド側の縁部が接触する、
ことを特徴とするダンパユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載のダンパユニットであって、
前記第1の規制部材は、前記ピストンロッド側への力を受ける第1の受け部と、前記第1の受け部において受けた力を前記シリンダチューブに伝達する第1の伝達部を含み、
前記第2の規制部材は、前記シリンダチューブ側への力を受ける第2の受け部と、前記第2の受け部において受けた力を前記ピストンロッドに伝達する第2の伝達部を含む、
ことを特徴とするダンパユニット。
【請求項3】
シリンダチューブ及びピストンロッドを含むリニアダンパを収容する収容部材であって、前記シリンダチューブ及び前記ピストンロッドが前記収容部材に対して軸方向に移動可能なように、前記リニアダンパを収容する、収容部材と、
前記リニアダンパが前記収容部材に収容されている状態において、前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記シリンダチューブの移動を規制する第1の規制部材と、
前記リニアダンパが前記収容部材に収容されている状態において、前記シリンダチューブが前記ピストンロッド側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記ピストンロッドの移動を規制する第2の規制部材と、を備える、
ことを特徴とするダンパ収容ユニット。
【請求項4】
開口を覆う閉位置と、前記開口を露出させる開位置との間で変位する開閉部材と、
請求項1
または2に記載のダンパユニットと、を備え、
前記ダンパユニットは、前記開閉部材が前記開位置へと変位する際、及び前記開閉部材が前記閉位置へと変位する際にダンパ力を発生する、
ことを特徴とする開閉ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパユニット、ダンパ収容ユニット及び開閉ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、収納家具又は電化製品等に設けられる扉には、開閉時の衝撃を緩和するためのダンパが設けられることがある。例えば、特許文献1及び2には、引き戸の開閉時の衝撃を緩衝ダンパにより緩和することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-520744号公報
【文献】特開2009-287355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、二つのシリンダを備えた双方向衝撃吸収装置により、スライド扉の開動作及び閉動作において衝撃を吸収している。一方、特許文献2では、一つのシリンダと一つのピストンロッドとを備えたいわゆる一方向性の緩衝ダンパ(リニアダンパ)により、引き戸の開動作及び閉動作の両方において衝撃の緩和を行う。このため、二つのシリンダを備えた双方向衝撃吸収装置を用いる場合と比べて、コスト削減や構造の簡素化等の点で有利な場合がある。しかしながら、一方向性のリニアダンパを、双方向の衝撃の緩和が可能なように、スライド式や回動式等の各種の開閉体に適用するにあたっては、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、より簡易な構成で、一方向性のリニアダンパを、双方向の衝撃の緩和が可能なように各種の開閉体に適用するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
シリンダチューブ及びピストンロッドを含み、前記ピストンロッドが縮む際に衝撃を緩和するリニアダンパと、
収容部材であって、前記シリンダチューブ及び前記ピストンロッドが前記収容部材に対して軸方向に移動可能なように、前記リニアダンパを収容する、収容部材と、
前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記シリンダチューブの移動を規制する第1の規制部材と、
前記シリンダチューブが前記ピストンロッド側への力を受けた場合に、前記収容部材に対する前記ピストンロッドの移動を規制する第2の規制部材と、を備え、
前記第1の規制部材は、前記シリンダチューブの前記収容部材に対する移動に伴って前記収容部材に対して移動可能な部材であり、
前記第1の規制部材は、前記シリンダチューブの径方向に突出した第1の突出部を含み、
前記第2の規制部材は、前記ピストンロッドの前記収容部材に対する移動に伴って前記収容部材に対して移動可能な部材であり、
前記第2の規制部材は、前記ピストンロッドの径方向に突出した第2の突出部を含み、
前記収容部材は、前記第1の突出部又は前記第2の突出部が前記軸方向に移動可能な少なくとも一つの開口を形成する開口形成部を含み、
前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ側への力を受けた場合に、前記第1の突出部と前記開口形成部により形成される開口の前記シリンダチューブ側の縁部が接触し、
前記シリンダチューブが前記ピストンロッド側への力を受けた場合に、前記第2の突出部と前記開口形成部により形成される開口の前記ピストンロッド側の縁部が接触する、
ことを特徴とするダンパユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より簡易な構成で、一方向性のリニアダンパを、双方向の衝撃の緩和が可能なように各種の開閉体に適用するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るダンパユニットの外観を示す斜視図。
【
図4】(a)及び(b)は、ダンパユニットの開閉ユニットへの適用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(リニアダンパの構成)
図1は、一実施形態に係るダンパユニット1の外観を示す斜視図である。
図2(a)は、
図1のA矢視図であって、後述する収容部材20の一部を取り外した状態を示す図である。また、
図2(b)は、
図1のB矢視図であって、後述する収容部材20の一部を取り外した状態を示す図である。
【0011】
ダンパユニット1は、一方向性のリニアダンパを双方向性のリニアダンパとして用いるためのユニットである。ダンパユニット1は、リニアダンパ10と、収容部材20と、規制部材30と、規制部材40とを含む。
【0012】
リニアダンパ10は、衝撃を緩和する装置である。リニアダンパ10は、軸方向に相対移動可能なシリンダチューブ11及びピストンロッド12を含む。そして、ピストンロッド12が縮む際に衝撃を緩和する。また、リニアダンパ10は、ピストンロッド12が縮んだ状態において外力が解放された際に、ピストンロッド12を伸長位置に復帰させる復帰スプリング(不図示)を含む。
【0013】
リニアダンパ10としては、油圧式又は空気圧式のダンパ等、公知のものを適宜用いることができる。例えば油圧式の場合、シリンダチューブ11にオイルが密閉され、ピストンロッド12のピストンがシリンダチューブ11内を移動すると、シリンダチューブ11内のオイルがオリフィスを通過してダンパ力が発生するように構成され得る。
【0014】
収容部材20は、リニアダンパ10を収容する。収容部材20は、組み付け、取り外しが可能な一組の部材21、22を含む。収容部材20は、一組の部材21、22の一方の凸部と他方の凹部が互いに係合することで組み付けられることで、リニアダンパ10を収容する空間を画定する。収容部材20は、例えば樹脂材料で形成される。
【0015】
また、収容部材20は、シリンダチューブ11及びピストンロッド12が軸方向(ピストンロッド12の伸縮方向)に移動可能なように、リニアダンパ10を収容する。さらにいえば、収容部材20は、後述する規制部材30、40により規制されない範囲で、シリンダチューブ11及びピストンロッド12を移動可能に収容する。また、収容部材20は、開口形成部23を含む。
【0016】
開口形成部23は、後述する突出部31又は突出部41が軸方向に移動可能な少なくとも一つの開口が形成される。ここでは、開口形成部23は、部材22の面22aに設けられ、突出部31が移動可能な開口23a、及び突出部41が移動可能な開口23bが形成される。開口23a及び開口23bは軸方向に離間して設けられ、それぞれ軸方向に長い形状を有している。また、開口23aはシリンダチューブ11側の縁部24を含み、開口23bはピストンロッド12側の縁部25を含む。なお、開口形成部23に、シリンダチューブ11側の縁部24からピストンロッド12側の縁部25にかけて一つの開口が形成されてもよい。
【0017】
規制部材30は、シリンダチューブ11の移動を規制する部材である。規制部材30は、例えば樹脂材料で形成される。規制部材30は、シリンダチューブ11と軸方向に並んで、収容部材20内においてシリンダチューブ11の外側に配置される。また、規制部材30は、その一部(シリンダチューブ11に近い側)が収容部材20に収容されるとともに、残部(シリンダチューブ11から遠い側)が収容部材20から露出する。なお、ここでは、シリンダチューブ11の移動を規制するとは、例えばシリンダチューブ11が収容部材20に対して相対的に移動できなくなるようにすることであってもよい。
【0018】
規制部材30は、シリンダチューブ11の収容部材20に対する移動に伴って収容部材20に対して移動可能である。さらにいえば、規制部材30は、シリンダチューブ11が(規制部材30を介して)ピストンロッド12側への力を受けた場合にシリンダチューブ11とともにシリンダチューブ11側に移動する。その一方、規制部材30は、ピストンロッド12がシリンダチューブ11側への力を受けた場合には、規制部材30自身の収容部材20に対する移動が規制されることにより、収容部材20に対するシリンダチューブ11の移動を規制する。規制部材30は、突出部31と、受け部32と、伝達部33と、側部34と、を含む。
【0019】
突出部31は、シリンダチューブ11の径方向に突出した部分である。さらにいえば、突出部31は、側部34からシリンダチューブ11の径方向に突出する。突出部31は、開口23a内を軸方向に移動する。詳しくは後述するが、突出部31とシリンダチューブ11側の縁部24が接触することで規制部材30の移動が規制され、それによってシリンダチューブ11の移動も規制される。
【0020】
受け部32は、ピストンロッド12側への力を受ける部分である。受け部32は、軸方向において側部34のシリンダチューブ11から遠い方の端部に接続する。伝達部33は、受け部32において受けた力をシリンダチューブ11に伝達する。伝達部33は、軸方向において側部34のシリンダチューブ11に近い方の端部に接続し、シリンダチューブ11の底面と接触する。すなわち、本実施形態では、規制部材30は、受けた外力をシリンダチューブ11に伝達する伝達部材としても機能する。側部34は、規制部材30の側面を形成する。側部34は、収容部材20の収容空間を画定する部分に対して摺動可能である。
【0021】
規制部材40は、ピストンロッド12の移動を規制する部材である。規制部材40は、例えば樹脂材料で形成される。規制部材40は、ピストンロッド12と軸方向に並んで、収容部材20内においてピストンロッド12の外側に配置される。また、規制部材40は、その一部(ピストンロッド12に近い側)が収容部材20に収容されるとともに、残部(ピストンロッド12から遠い側)が収容部材20から露出する。なお、ここでは、ピストンロッド12の移動を規制するとは、例えばピストンロッド12が収容部材20に対して相対的に移動できなくなるようにすることであってもよい。
【0022】
規制部材40は、ピストンロッド12の収容部材20に対する移動に伴って収容部材20に対して移動可能である。さらにいえば、規制部材40は、ピストンロッド12が(規制部材40を介して)シリンダチューブ11側への力を受けた場合にピストンロッド12とともにピストンロッド12側に移動する。その一方、規制部材40は、シリンダチューブ11がピストンロッド12側への力を受けた場合には、規制部材40自身の収容部材20に対する移動が規制されることにより、収容部材20に対するピストンロッド12の移動を規制する。規制部材40は、突出部41と、受け部42と、伝達部43と、側部44と、を含む。
【0023】
突出部41は、ピストンロッド12の径方向に突出した部分である。さらにいえば、突出部41は、側部44からピストンロッド12の径方向に突出する。突出部41は、開口23a内を軸方向に移動する。詳しくは後述するが、突出部41とピストンロッド12側の縁部25が接触することで規制部材40の移動が規制され、それによってピストンロッド12の移動も規制される。
【0024】
受け部42は、シリンダチューブ11側への力を受ける部分である。受け部42は、軸方向において側部44のピストンロッド12から遠い方の端部に接続する。伝達部43は、受け部42において受けた力をピストンロッド12に伝達する。伝達部43は、軸方向において側部44のピストンロッド12に近い方の端部に接続し、ピストンロッド12の底面と接触する。すなわち、本実施形態では、規制部材40は、受けた外力をピストンロッド12に伝達する伝達部材としても機能する。側部44は、規制部材40の側面を形成する。側部44は、収容部材20の収容空間を画定する部分に対して摺動可能である。
【0025】
(動作例)
図3は、ダンパユニット1の動作説明図である。ここでは、ダンパユニット1が軸方向に往復移動する場合における動作を説明する。本動作は、例えば、引き戸において開動作及び閉動作の両方においてダンパ力を発生させる場合等の動作である。ダンパユニット1は、ダンパ支持部110により支持されながら往復移動し、当接部111又は当接部112と当接した際に衝撃を緩和する。当接部111はダンパユニット1の受け部32と当接し、当接部112はダンパユニット1の受け部42と当接する。
【0026】
状態ST1は、ダンパユニット1が当接部111及び当接部112のいずれとも当接していない中立状態である。このとき、リニアダンパ10のピストンロッド12は、不図示の復帰スプリングにより伸長位置に位置している。そのため、規制部材30の突出部31はシリンダチューブ11側の縁部24と当接し、規制部材40の突出部41はピストンロッド12側の縁部25と当接している。
【0027】
状態ST2は、状態ST1からダンパユニット1が左方向に移動し、受け部42と当接部112とが当接した直後の状態である。また、状態ST3は、状態ST2からさらにダンパユニット1が左方向に移動し、ピストンロッド12が縮んだ状態である。順を追って説明すると、まず、受け部42と当接部112が互いに離間した状態から当接すると、ダンパユニット1の受け部42は当接部112からシリンダチューブ11側の力(図面右方向の力)を受ける。受け部42が右方向の力を受けると、伝達部43がその右方向の力をシリンダチューブ11に伝達する。
【0028】
このとき、突出部31とシリンダチューブ11側の縁部24が当接していることから、規制部材30は図面右方向に移動できない状態であり、シリンダチューブ11も規制部材30によって図面右方向への移動が規制されている。一方で、突出部41は開口23bを図面右方向に移動可能であるので、規制部材40は図面右方向に移動可能であり、したがってピストンロッド12も図面右方向に移動可能である。
【0029】
したがって、ピストンロッド12が伝達部43から力を伝達されると、シリンダチューブ11が収容部材20に対して固定された状態でピストンロッド12が収容部材20に対して図面右方向に移動するので、ピストンロッド12が縮むことになる。そしてピストンロッド12が縮む際にダンパ力が発生する。
【0030】
一方、状態ST4は、状態ST1からダンパユニット1が右方向に移動し、受け部32と当接部111とが当接した直後の状態である。また、状態ST5は、状態ST4からさらにダンパユニット1が右方向に移動し、シリンダチューブ11が縮んだ状態である。順を追って説明すると、まず、受け部32と当接部111が互いに離間した状態から当接すると、ダンパユニット1の受け部32は当接部111からピストンロッド12側の力(図面左方向の力)を受ける。受け部32が左方向の力を受けると、伝達部43がその左方向の力をピストンロッド12に伝達する。
【0031】
このとき、突出部41とピストンロッド12側の縁部24が当接していることから、規制部材40は図面左方向に移動できない状態であり、ピストンロッド12も規制部材40によって図面左方向への移動が規制されている。一方で、突出部31は開口23aを図面左方向に移動可能であるので、規制部材30は図面左方向に移動可能であり、したがってシリンダチューブ11も図面左方向に移動可能である。
【0032】
したがって、シリンダチューブ11が伝達部43から力を伝達されると、ピストンロッド12が収容部材20に対して固定された状態でシリンダチューブ11が収容部材20に対して図面左方向に移動するので、シリンダチューブ11が縮むことになる。そしてシリンダチューブ11が縮む際にダンパ力が発生する。
【0033】
このように、ダンパユニット1は、受け部32が当接部111に当接した場合も受け部42が当接部112に当接した場合もダンパ力を発生させることができる。換言すれば一方向性のリニアダンパ10がシリンダチューブ11の側及びピストンロッド12の側のどちらの側から力を受けても、ダンパ力を発生させることができる。すなわち、一方向性のリニアダンパ10を、双方向性のダンパとして用いることができる。そして、本実施形態では、一方向性のリニアダンパ10を双方向性のダンパとして用いるための構成がユニット化されている。したがって、より簡易な構成で、一方向性のリニアダンパ10を、双方向の衝撃の緩和が可能なように各種の開閉体に適用することができる。
【0034】
また、本実施形態では、収容部材20並びに規制部材30及び規制部材40といった簡易な構成のみで、一方向性のリニアダンパ10を双方向性のダンパとして用いることができる。また、汎用の一方向性のリニアダンパ10のサイズやストロークに合わせてリニアダンパ10以外の構成部材を作成することで、汎用の一方向性のリニアダンパを容易に双方向性のダンパとして用いることができる。結果として、製造の容易性や製造コストの削減等にも寄与することができる。
【0035】
(開閉ユニットへの適用例)
図4(a)及び
図4(b)は、ダンパユニット1の開閉ユニット201への適用例を示す図である。開閉ユニット201は、回動動作により開閉する開閉部材210を備えるユニットである。開閉ユニット201は、例えば、家具、家電等のドア等に適用され得る。開閉ユニット201は、ダンパユニット1と、開閉部材210と、回動軸部材211と、ダンパ支持部212と、筐体220と、二つの当接部230、231と、を含む。
【0036】
開閉部材210は、筐体220に対して開閉可能な部材である。開閉部材210は板状の形状を有し、閉位置(
図4(a))において筐体220の開口221を覆うように配置される。開閉部材210は、回動軸部材211を回動軸として閉位置と開位置(
図4(b))との間で回動する。すなわち、開閉部材210は、開口221を覆う閉位置と、開口221を露出させる開位置との間で変位する。
【0037】
ダンパ支持部212は、ダンパユニット1を支持する。ダンパ支持部212は、開閉部材210に取り付けられており、開閉部材210の回動に連動してダンパ支持部212も回動する。
【0038】
筐体220は、回動軸部材211を回動可能に支持する。すなわち、筐体220に対して開閉部材210が回動可能に設けられている。また、筐体220の前面には開口221が形成されている。開閉部材210が閉位置の場合には開口221が塞がれ、開閉部材210が開位置の場合には開口221が開放される。
【0039】
当接部230、231は、ダンパ支持部212に支持されるダンパユニット1の規制部材30、規制部材40がそれぞれ当接する。当接部230、231は、例えば筐体220の側面に設けられている。一例として、開閉部材210が閉位置にある場合に当接部230と規制部材30とが当接し、開閉部材210が開位置にある場合に当接部231と規制部材40とが当接する。すなわち、開閉部材210が開く際には当接部231と規制部材40との接触によりダンパ力が発生し、開閉部材210が閉じる際には当接部230と規制部材30との接触によりダンパ力が発生する。
【0040】
このように、本実施形態では、ダンパユニット301は、開閉部材210が開位置へと変位する際、及び開閉部材210が閉位置へと変位する際にダンパ力を発生する。したがって、一方向性のリニアダンパ10を用いながらも、開閉部材210の開動作及び閉動作の両方でダンパ力を発生させることができる。
【0041】
なお、ここでは、開閉部材210が回動するタイプの開閉ユニット201を例に説明したが、開閉部材がスライドするタイプの開閉ユニットにもダンパユニット1を用いることができる。開閉部材がスライドするタイプの開閉ユニットとしては、家具、家電等に設けられた引き出しや引き戸等が挙げられる。また、ここでは、開閉部材210が筐体220に対して開閉可能な例を説明したが、引き戸や開き戸等の住宅用のドア等にも開閉ユニット201は適用可能である。
【0042】
また、ここでは、当接部230、231が筐体220に固定され、ダンパユニット1が開閉部材210の回動動作に連動して移動する構成を説明した。しかしながら、ダンパユニット1の収容部材20が筐体220に固定的に支持され、当接部230、231が開閉部材210の回動動作に連動して移動してもよい。つまり、開閉部材210が回動した際にダンパユニット1と当接部230、231が相対的に移動し、開閉部材210の移動範囲の端部においてダンパユニット1と当接部230、231とが接触するような関係にあればよい。開閉部材がスライドするタイプの開閉ユニットでも同様である。
【0043】
(変形例)
図5は、ダンパユニット1の変形例としてのダンパユニット301を示す図である。以下、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。ダンパユニット301は、リニアダンパ10と、収容部材320と、規制部材330と、規制部材340とを含む。本変形例では、主として、規制部材の配置位置及び構造が上記実施形態と異なる。
【0044】
収容部材320は、リニアダンパ10を収容する。本例では、収容部材320はリニアダンパ10の軸方向の中央側の一部を収容している。よって、シリンダチューブ11及びピストンロッド12の端部付近は収容部材320から露出するように配置されている。
【0045】
収容部材320は、上記実施形態の収容部材20と同様、組み付け、取り外しが可能な一組の部材で構成され得る。また、収容部材320は、シリンダチューブ11及びピストンロッド12が軸方向(ピストンロッド12の伸縮方向)に移動可能なように、リニアダンパ10を収容する。
【0046】
収容部材320は、開口形成部223を含む。開口形成部223は、規制部材330が移動可能な開口323a、及び側面部340が移動可能な開口323bを形成する。また、また、開口323aはシリンダチューブ11側の縁部324を含み、開口323bはピストンロッド12側の縁部325を含む。なお、シリンダチューブ11側の縁部324からピストンロッド12側の縁部325にかけて一つの開口が形成されてもよい。
【0047】
規制部材330は、シリンダチューブ11の移動を規制する部材である。規制部材330は、シリンダチューブ11の側面から径方向に突出するように設けられている。規制部材330は、シリンダチューブ11の外形を形成する部材と一体に形成されてもよいし、シリンダチューブ11と別部材で形成されてシリンダチューブ11に取り付けられてもよい。
【0048】
規制部材340は、ピストンロッド12の移動を規制する部材である。規制部材340は、ピストンロッド12の側面から径方向に突出するように設けられている。規制部材340は、ピストンロッド12の外形を形成する部材と一体に形成されてもよいし、ピストンロッド12と別部材で形成されてシリンダチューブ11に取り付けられてもよい。
【0049】
ダンパユニット301の動作について説明する。ここでは、ピストンロッド12が当接部360と当接してダンパ力を発生させる場合、及びシリンダチューブ11が当接部370と当接してダンパ力を発生させる場合についてそれぞれ説明する。
【0050】
図5の状態ST301は、ダンパユニット301が当接部360及び当接部370のいずれとも当接していない中立状態である。このとき、リニアダンパ10のピストンロッド12は、不図示の復帰スプリングにより伸長位置に位置している。そのため、規制部材330はシリンダチューブ11側の縁部324と当接し、規制部材340はピストンロッド12側の縁部325と当接している。
【0051】
状態ST302は、状態ST301からダンパユニット1が左方向に移動し、ピストンロッド12が縮んだ状態である。このときの動作は上記実施形態の場合と同様である。概略を述べると、まずピストンロッド12が当接部370に当接すると、ピストンロッド12は図面右方向の力を受ける。これにより、シリンダチューブ11も図面右方向の力を受けるが、規制部材330がシリンダチューブ11側の縁部324と当接しているので、シリンダチューブ11は収容部材320に対する移動が規制される。この状態でピストンロッド12がさらに図面右方向への力を受けるので、ピストンロッド12が縮んでダンパ力が発生する。
【0052】
一方、状態ST303は、状態ST301からダンパユニット1が右方向に移動し、ピストンロッド12が縮んだ状態である。このときの動作は上記実施形態の場合と同様である。概略を述べると、まずシリンダチューブ11が当接部360に当接すると、シリンダチューブ11は図面左方向の力を受ける。これにより、ピストンロッド12も図面左方向の力を受けるが、規制部材340がピストンロッド12側の縁部325と当接しているので、ピストンロッド12は収容部材320に対する移動が規制される。この状態でシリンダチューブ11がさらに図面左方向への力を受けるので、ピストンロッド12が縮んでダンパ力が発生する。
【0053】
このような態様によっても、一方向性のリニアダンパ10がシリンダチューブ11の側及びピストンロッド12の側のどちらの側から力を受けても、ダンパ力を発生させることができる。すなわち、一方向性のリニアダンパ10を、双方向性のダンパとして用いることができる。
【0054】
また、他の変形例として、収容部材の側に突出部が設けられ、規制部材又はダンパユニット1自体に、収容部材の突出部が軸方向に移動可能な溝や凹部等が設けられる構成も採用可能である。つまり、ダンパユニット1が所定の外力受けたときに、収容部材に対するシリンダチューブ11及びピストンロッド12の相対移動が規制されるような構造であればよい。
【0055】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:ダンパユニット、10:リニアダンパ、20:収容部材、30:規制部材、40:規制部材
【要約】
【課題】一方向性のリニアダンパを、より簡易な構成で双方向性のリニアダンパとして用いるための技術を提供すること
【解決手段】
ダンパユニットは、リニアダンパと、収容部材と、第1の規制部材と、第2の規制部材と、を備える。リニアダンパは、シリンダチューブ及びピストンロッドを含み、ピストンロッドが縮む際に減衰力を発生する。収容部材は、シリンダチューブ及びピストンロッドが収容部材に対して軸方向に移動可能なように、リニアダンパを収容する。第1の規制部材は、ピストンロッドがシリンダチューブ側への力を受けた場合に、収容部材に対するシリンダチューブの移動を規制する。第2の規制部材は、シリンダチューブがピストンロッド側への力を受けた場合に、収容部材に対するピストンロッドの移動を規制する。
【選択図】
図3